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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-154463(P2021-154463A)
(43)【公開日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】ねじ保持機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20210910BHJP
   B25B 23/10 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
   B23P19/06 C
   B25B23/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-59347(P2020-59347)
(22)【出願日】2020年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】315008902
【氏名又は名称】有限会社サワ
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】澤村 捷郎
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BB01
3C038BB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドライバビットによって回転させられるねじ部材と吸着口と間に摩擦が生じることのないねじ保持機を提供する。
【解決手段】保持機10は、真空ポンプが接続される保持機本体と、ねじ部材を真空吸引して保持する吸着口121を有する吸着口部材12とを備え、本体11及び取付部材13から吸着口部材12へと挿通するように、電動ドライバによって回転駆動されるドライバビット20が取り付けられるねじ保持機10。吸着口部材12が、取付部材13に対して、ドライバビット20の回転軸に沿って回転摺動可能に取り付けられており、ドライバビット20が取り付けられた際に吸着口部材12がドライバビット20に係合している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプが接続される保持機本体と、ねじ部材を真空吸引して保持する吸着口を有する吸着口部材とを備え、前記保持機本体から前記吸着口部材へと挿通するように、電動ドライバによって回転駆動されるドライバビットが取り付けられるねじ保持機であって、
前記吸着口部材が、前記保持機本体に対して、前記ドライバビットの回転軸に沿って回転摺動可能に取り付けられており、
前記ドライバビットが取り付けられた際に前記吸着口部材が前記ドライバビットに係合する、ねじ保持機。
【請求項2】
前記吸着口部材が、前記ドライバビットの軸周面上に形成された平坦面に対応する面形状を有する係合部を備え、
前記係合部に前記平坦面が正対することによって、前記ドライバビットが取り付けられた際に前記吸着口部材が前記ドライバビットに係合する、請求項1に記載のねじ保持機。
【請求項3】
前記保持機本体が、前記吸着口部材が取り付けられる管状の取付部を備えており、
前記取付部に前記吸着口部材が回転摺動可能に内挿されている、請求項1又は2に記載のねじ保持機。
【請求項4】
前記保持機本体の前記取付部に前記吸着口部材が取り付けられた状態を維持する係止手段を備える、請求項3に記載のねじ保持機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバビットの先端に保持されたねじ部材をワーク部材に締め付けるためのねじ締付装置において、ねじ部材を真空吸着して保持するねじ保持機に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の組み立てを行う自動組み立てラインにおいて、多数の同一構造のワーク部材にねじ部材を締め付けるために、ねじ締付装置が用いられる。ねじ締付装置は、通常、電動ドライバと、電動ドライバに連結されるドライバビットと、ドライバビットの先端部に取り付けられるねじ保持機とを備え、ロボットアームの先端部に取付ステーを介して設置される。このようなねじ締付装置では、設計データから算出したねじ穴位置のデータに基づき、ねじ保持機によってねじ部材を真空吸引したドライバビットを、ワーク部材に設けられたねじ穴の真上に移動させ、ねじ部材がねじ穴と噛み合う程度の直上に配置したとき、ドライバビットを下降させながらねじ締付軸回り方向に回転させることによって、ねじ部材をワーク部材に締め付ける。
【0003】
ねじ保持機は、通常、本体部にチューブを介して真空ポンプが接続され、本体部の一端にねじ部材を真空吸引して保持する吸着口が設けられており、本体部の他端側からは吸着口へと挿通されるようにドライバビットが取り付けられる。ねじ保持機の内部が真空ポンプにより真空にされてねじ部材を保持した状態で、ドライバビットが電動ドライバによって回転駆動され、ねじ部材がワーク部材に設けられたねじ穴にねじ込まれて締め付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ねじ保持機の吸着口に保持されたねじ部材がドライバビットによって回転させられると、ねじ部材の頭部が吸着口に当接した状態でねじ部材が回転することになり、ねじ部材の回転により吸着口の先端部が摩耗したり、吸着口やねじ部材から生じた粉状の削り屑がワーク部材上に落下したりするという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような問題を解決するために、ドライバビットによって回転させられるねじ部材と吸着口と間に摩擦が生じることのないねじ保持機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、真空ポンプが接続される保持機本体と、ねじ部材を真空吸引して保持する吸着口を有する吸着口部材とを備え、前記保持機本体から前記吸着口部材へと挿通するように、電動ドライバによって回転駆動されるドライバビットが取り付けられるねじ保持機であって、前記吸着口部材が、前記保持機本体に対して、前記ドライバビットの回転軸に沿って回転摺動可能に取り付けられており、前記ドライバビットが取り付けられた際に前記吸着口部材が前記ドライバビットに係合する、ねじ保持機を提供する(発明1)。
【0007】
かかる発明(発明1)によれば、ドライバビットがねじ保持機に取り付けられた際に、ねじ保持機の保持機本体に対して回転摺動可能な吸着口部材がドライバビットに係合しているので、ドライバビットが電動ドライバによって回転駆動されると、吸着口部材がドライバビットと共に回転するため、ドライバビットによって回転させられるねじ部材は吸着口部材とも共に回転することになり、ねじ部材と吸着口と間に摩擦が生じることがなくなる。
【0008】
なお、本発明においてねじ部材とは、螺旋状にねじ山の刻まれた軸部と軸部よりも径の太い頭部からなる一般にねじと呼ばれる固着具のみならず、ボルト、リベット、釘等の平面視円形又は多角形の頭部及び頭部の中心から延設された棒状の軸部を有する部品全般を含む概念である。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記吸着口部材が、前記ドライバビットの軸周面上に形成された平坦面に対応する面形状を有する係合部を備え、前記ドライバビットが取り付けられた際に前記係合部に前記平坦面が正対することによって、前記吸着口部材が前記ドライバビットに係合することが好ましい(発明2)。
【0010】
ねじ保持機の内部から真空ポンプで空気を排出し、吸着口でねじ部材を真空吸引して保持するために、ねじ保持機には、ドライバビットが取り付けられた状態において、吸着口から真空ポンプが接続された本体まで空気の通り道が確保されている必要がある。そのため、ねじ保持機に取り付けられるドライバビットは、通常、円形断面を有する軸の一部を軸線に沿って切削して、少なくとも一つの平坦面がその軸周面上に形成されている。かかる発明(発明2)によれば、ドライバビットの軸周面上に形成された平坦面が、吸着口部材が備える係合部に正対することにより、ドライバビットが回転しようとすると必ずドライバビットの平坦面が吸着口部材の係合部に当接し、ドライバビットの平坦面が吸着口部材の係合部を押しながらドライバビットと共に吸着口部材が回転する。
【0011】
上記発明(発明1,2)においては、前記保持機本体が、前記吸着口部材が取り付けられる管状の取付部を備えており、前記取付部に前記吸着口部材が回転摺動可能に内挿されていることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明3)においては、前記本体の前記取付部に前記吸着口部材が取り付けられた状態を維持する係止手段を備えることが好ましい(発明4)。
【発明の効果】
【0013】
本発明のねじ保持機によれば、ドライバビットがねじ保持機に取り付けられた際に、ねじ保持機の保持機本体に対して回転摺動可能な吸着口部材がドライバビットに係合しているので、ドライバビットが電動ドライバによって回転駆動されると、吸着口部材がドライバビットと共に回転するため、ドライバビットによって回転させられるねじ部材は吸着口部材とも共に回転することになり、ねじ部材と吸着口と間に摩擦が生じることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るねじ締付装置を示す概略構成図である。
図2】同実施形態に係るねじ締付装置を構成するねじ保持機の構造を示す説明図であり、(a)は外観図、(b)はその中央縦断面図である。
図3】同実施形態に係るねじ締付装置を構成するドライバビットを示す説明図である。
図4】同実施形態に係るねじ保持機を構成する吸着口部材の構造を示す説明図であり、(a)は中央縦断面図、(b)は(a)に示すA−B線断面図である。
図5】同実施形態に係る取付部材の構造を示す中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るねじ締付装置、ねじ保持機及びドライバビットについて、適宜図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るねじ締付装置1を示す概略構成図、図2は、ねじ締付装置1を構成するねじ保持機10の構造を示す説明図であり、(a)は外観図、(b)はその中央縦断面図である。図3は、ねじ締付装置1を構成するドライバビット20の形状を示す説明図、図4は、ねじ保持機10の吸着口部材12の構造を示す説明図であり、(a)は中央縦断面図、(b)は(a)に示すA−B線断面図である。図5は、ねじ保持機10の取付部材13の構造を示す中央縦断面図である。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0016】
ねじ締付装置1は、図1に示すように、ねじ部材Sを真空吸引して保持するねじ保持機10と、ねじ保持機10に取り付けられてねじ部材Sを回転させるドライバビット20と、ドライバビット20を回転駆動させる電動ドライバ30とを備える。ねじ締付装置1は取付ステー2を介してロボットアーム3の先端部に設置されており、ロボットアーム3によってワーク部材Wに設けられたねじ穴の真上にねじ締付装置1が移動され、ドライバビット20を下降させながらねじ締付軸回り方向に回転させることによって、ねじ部材Sをワーク部材Wに締め付ける。
【0017】
ねじ保持機10は真空ポンプ(不図示)にチューブ(不図示)を介して接続されており、真空ポンプでねじ保持機10の内部の空気を排出させることにより、ねじ部材Sを真空吸引するものである。ねじ保持機10は、図2(a)及び(b)に示すように、チューブが取り付けられる本体11と、ねじ部材Sを保持する吸着口部材12と、吸着口部材12を本体11に取り付けるための取付部材13とを備えており、吸着口部材12の先端に設けられた吸着口121に後述するビット部22が位置するように、ドライバビット20が本体11から取付部材13、吸着口部材12へと挿通されるべく、内部に空間が設けられている。本実施形態においては、本体11及び取付部材13が本願発明における「保持機本体」に相当する。吸着口121には別部材としてゴム製吸着口(不図示)が取り付けられてもよい。なお、図2(a)及び(b)においては、ねじ保持機10の構造と各部の機能が明確になるよう、ドライバビット20をねじ保持機10に取り付けた状態が描かれているが、図2 (b)においてドライバビット20は断面図として描かれていない。
【0018】
ドライバビット20は、図3に示すように、軸21の先端に、ねじ部材Sの頭部に形成された工具穴(例えば、十字穴、すりわり、四角穴等)に嵌合するビット部22が形成され、ビット部22が形成された先端と反対側の端部には、電動ドライバ30に把持させる把持部23が形成された金属製(例えば、クロムやモリブデン、バナジウム等が添加されて強度を上げた特殊鋼製)の棒状部材である。ビット部22の形状はねじ部材Sの工具穴の形状に合わせて様々であってよく、把持部23の形状も取り付ける電動ドライバによって様々であってよい。
【0019】
軸21はその両端以外の断面形状が概ね円形になっているが、ビット部22近傍の先端部のみ、軸21の一部が軸線に沿って両側から切削されており、平坦面24a、24bが軸周面上に形成されている。このような平坦面24a、24bは、ねじ保持機10の内部から真空ポンプで空気を排出し、吸着口121でねじ部材Sを真空吸引して保持するために、ねじ保持機10にドライバビット20が取り付けられた状態において、吸着口121から真空ポンプが接続された本体11まで空気の通り道を確保するために形成されている。
【0020】
すなわち、ねじ部材Sの締め付け時に電動ドライバ30で回転駆動されるドライバビット20のビット部22がぶれないように、本来は、取付部材12や吸着口部材11の内部に形成された空間を円筒形状にし、その空間の内径を、円形断面を有するドライバビット20の軸21の外径とほぼ同じ径とすることが理想である。しかしながら、そのような構造にした場合、ドライバビット20をねじ保持機10に取り付けた際に、取付部材12や吸着口部材11の内部の空間がドライバビット20で埋められてしまい、真空ポンプで本体11内部の空気を排出しても吸着口121でねじ部材Sを保持するだけの吸引力が生じないという状況が生じ得る。そのため、上述のように、ビット部22近傍の先端部のみ円形断面の軸21の一部を切削して、吸着口121から真空ポンプが接続された本体11まで空気の通り道が確保できるようにしている。
【0021】
ねじ保持機10の本体11は、図2(a)及び(b)に示すように、真空ポンプにより空気が排出される空間を内部に有する中空部材111と、ドライバビット20を中空部材111に取り付けるための連結部材112と、中空部材111の内部の空間に端部が内挿されるスライド部材113と、スライド部材113が中空部材111に内挿されている状態を維持するためのアジャストリング114と、中空部材111の内部の空間に配設され、スライド部材113を中空部材111から離間する方向に付勢するコイルスプリング115と、を主に備える。
【0022】
中空部材111はその内部に円筒形状の空間を有し、ねじ保持機10がねじ締付装置1に組み込まれた状態における電動ドライバ30側(図2における左側)に位置する開口近傍に、軸受部材(ボールベアリング)1111が取り付けられている。ドライバビット20を連結部材112によって軸受部材1111に固定することにより、中空部材111に挿通されたドライバビット20の軸21を軸受部材1111が支持する。このような構造にすることにより、電動ドライバ30によって回転駆動されたドライバビット20は、ねじ保持機10の本体11に拘束されずに、連結部材112と一体になって回転する。
【0023】
中空部材111には、その内部の空間から空気を排出するための排出口1112が設けられている。排出口1112は中空部材111の内部の空間に連通しており、排出口1112にチューブを介して真空ポンプが接続され、真空ポンプを作動させて中空部材111内の空気が排出される。
【0024】
スライド部材113は、中空部材111の内部の空間に端部が内挿され、当該端部が中空部材111の内部の空間の内壁に対して摺動可能に構成されている。スライド部材113の内部にも円筒形状の内部空間が穿設されており、中空部材111に挿通されたドライバビット20がスライド部材113の内部空間に挿通される。
【0025】
アジャストリング114は中央に貫通孔を備えた厚みを持った環状部材である。貫通孔の内周面にはねじ溝が切られており、中空部材111の外周面に形成されたねじ山に螺合されることで、中空部材111に対して回転することにより、回転軸方向に移動自在であるように配設される。このアジャストリング114の貫通孔にスライド部材113を挿通させた状態で、中空部材111の内部の空間に配設されたコイルスプリング115の一端を中空部材111の内部の空間に設けられた当接面に当接させ、かつもう一端をスライド部材113の内部空間に設けられた当接面に当接させて、アジャストリング114を中空部材111に螺合させることで、ねじ保持機10の本体11が組み立てられる。ねじ保持器10にドライバビット20が取り付けられた状態においては、ドライバビット20がコイルスプリング115の内側に挿通される。
【0026】
ねじ保持機10の吸着口部材12は、図4(a)及び(b)に示すように、一端に吸着口121が設けられ、もう一端側には取付部材13に回転摺動可能に取り付けられる摺動部122が形成されている。摺動部122は円筒形状を有し、外周面に周方向に沿って環状の溝1221が形成されており、溝1221には、吸着口部材12を取付部材13に取り付けた際の密閉状態を高めるためにOリング123が取り付けられている。吸着口部材12には、摺動部122側の端面から吸着口121に向かってドライバビット20が挿通されて回転可能なように、貫通孔124が形成されている。
【0027】
ねじ保持機10の取付部材13は、図5に示すように、吸着口部材12の摺動部122が取り付けられる円筒形状の係止部131と、係止部131の吸着口部材12側(図5における右側)の端部において周方向に並設された複数の係止片132と、係止部131の本体11側(図5における左側)の端部において係止部131よりも縮径された円筒形状に形成された縮径部133とを備える。係止片132の先端部は内側に向かってやや突出した係止爪1321を備えており、係止部131に取り付けられた吸着口部材12が係止部131から脱落しないようになっている。また、縮径部133の外周面にはねじ山が形成されており、本体11のスライド部材113の内周面に切られたねじ溝と螺合することで、取付部材13をスライド部材113に取り付けることができるようになっている。取付部材13にも、吸着口部材12と同様に、縮径部133側の端面から係止部131に向かってドライバビット20が挿通可能なように、貫通孔134が形成されている。
【0028】
吸着口部材12の取付部材13への取り付けは、吸着口部材12の摺動部122を取付部材13の係止部131へと内挿することによって実現しているため、吸着口部材12は、取付部材13に対して、ドライバビット20の回転軸に沿って回転摺動可能に取り付けられていることになる。
【0029】
このとき、吸着口部材12(の摺動部122の外周面)と取付部材13(の係止部131の内周面)との間に隙間が生じると、真空ポンプでねじ保持機10内の空気を排出しようとしても、当該隙間から空気がねじ保持機10の内部へと流入してしまい、ねじ部材Sを吸着口部材12の吸着口121で真空吸引できなくなってしまう。そのような隙間が生じることを防止すべく、吸着口部材12の摺動部122の外周面にOリング123が取り付けられている。Oリング123が存在することによって、取付部材13に対する吸着口部材12の回転摺動に影響がある場合、Oリング123の表面にグリース等の潤滑剤を塗布してもよい。
【0030】
吸着口部材12の摺動部122の取付部材13側(図4における左側)の端部には、ドライバビット20の軸周面上に形成された平坦面24a、24bに対応する面形状を有する係合部125が形成されている。具体的には、図4(a)及び(b)に示すように、係合部125は係合面126a、126bをそれぞれ有する二つの半円形状部125a、125bから構成されており、ドライバビット20がねじ保持機10に取り付けられた際に、係合部125(半円形状部125a、125b)の係合面126a、126bにドライバビット20の平坦面24a、24bがそれぞれほぼ隙間なく正対する。なお、本実施形態においては、空気の通り道を確保するために、ドライバビット20の平坦面24a、24b間の距離よりも、係合部125の係合面126a、126b間の距離が若干広く形成されている。
【0031】
このようにドライバビット20の軸周面上に形成された平坦面24a、24bが、吸着口部材12が備える係合部125の係合面126a、126bに正対することにより、ドライバビット20が回転しようとすると必ずドライバビット20の平坦面24a、24bが吸着口部材12の係合部125に当接し、ドライバビット20の平坦面24a、24bが吸着口部材12の係合部125(半円形状部125a、125b)の係合面126a、126bを押しながらドライバビット20と共に吸着口部材12が回転する。
【0032】
なお、本実施形態においては、吸着口部材12を本体11に取り付けるために取付部材13が用いられているが、これは、ねじ部材Sの種類や大きさによって吸着口121の形状や大きさが変わってくるため、吸着口部材12やそれを回転摺動可能に保持する取付部材13も複数の形状や大きさのものを用意する必要があることを考慮したものであり、このような構造にすることにより、一つの本体11で様々な種類・大きさのねじ部材Sに対応することができる。ただし、取付部材13は必ずしも独立した部材である必要はなく、本体11のスライド部材113と取付部材13とが一体になっていてもよい。スライド部材113と取付部材13とが一体になっている場合であっても、取付部材13が独立した部材である場合であっても、ねじ保持機10の保持機本体が、管状の取付部を備えており、当該取付部に吸着口部材12が回転摺動可能に内挿されていることに変わりはない。
【0033】
本実施形態においては、上述の通り、取付部材13には、係止片132の先端部に内側に向かってやや突出した係止爪1321が形成されており、係止部131に取り付けられた吸着口部材12が係止部131から脱落しないようになっており、係止爪1321が、取付部材13に吸着口部材12が取り付けられた状態を維持する係止手段として機能している。
【0034】
この係止手段の変形例として、例えば、取付部材13の外周面にねじ山を形成し、取付部材13に吸着口部材12を取り付けた状態で、吸着口部材12側から中央部が開口し、内周面にねじ溝が形成された袋ナットを取付部材13に被せて螺合させることで、係止部131に取り付けられた吸着口部材12が係止部131から脱落しないように構成してもよい。
【0035】
また、別の係止手段の変形例として、例えば、取付部材13に吸着口部材12を取り付けた状態で、外周面を覆うようにリング状の留め具を取付部材13に取り付けることで、係止部131に取り付けられた吸着口部材12が係止部131から脱落しないように構成してもよい。このとき、留め具の内径を取付部材13の外径よりも部分的にやや小さくしておき、吸着口部材12を取り付けた取付部材13に対して留め具をスライドさせて取り付けることが可能なように構成してもよい。
【0036】
本実施形態のねじ保持機10によれば、ドライバビット20がねじ保持機10に取り付けられた際に、取付部材13を介してねじ保持機10の本体11に対して回転摺動可能な吸着口部材12がドライバビット20に係合しているので、ドライバビット20が電動ドライバ30によって回転駆動されると、吸着口部材12がドライバビット20と共に回転するため、ドライバビット20によって回転させられるねじ部材Sは吸着口部材12とも共に回転することになり、ねじ部材Sと吸着口121と間に摩擦が生じることがなくなる。
【0037】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記各実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0038】
例えば、上述の実施形態においては、吸着口部材12とドライバビット20との係合を二つの面の組み合わせで実現しているが、これに限られるものではなく、一つの面の組み合わせ、例えば、ドライバビット20に形成する平坦面が平坦面24a、24bの二つであったとしても、吸着口部材12の係合部125を半円形状部125aのみとし、ドライバビット20の平坦面24a又は平坦面24bのどちらか一方と、半円形状部125aの係合面126aとが係合することによって、吸着口部材12とドライバビット20との係合を実現してもよい。また、吸着口部材12とドライバビット20との係合を他の方法・構造で実現してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ねじ締付装置
10 ねじ保持機
11 本体
111 中空部材
112 連結部材
113 スライド部材
114 アジャストリング
115 コイルスプリング
12 吸着口部材
121 吸着口
122 摺動部
123 Oリング
124 貫通孔
125 係合部
126a、126b 係合面
13 取付部材
131 係止部
132 係止片
1321 係止爪
133 縮径部
134 貫通孔
20 ドライバビット
30 電動ドライバ
2 取付ステー
3 ロボットアーム
図1
図2
図3
図4
図5