【解決手段】第1生分解性樹脂を含有するコア層11と、コア層11の両面にバリア層12,13と、を有する生分解性積層体であって、コア層11が、第1生分解性樹脂として、下記一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位と、を含む脂肪族ポリエステル樹脂を含有し、バリア層12,13が、第1生分解性樹脂よりも加水分解性が小さい第2生分解性樹脂を含有する、生分解性積層体。(I)[−CHR
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の生分解性積層体について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一例(代表例)であり、この内容に特定されるものではない。
【0015】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。また、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
(生分解性積層体)
本発明の生分解性積層体は、コア層と、当該コア層の両面にバリア層と、を有する。
図1は、一実施形態の生分解性積層体10の構成を示す。
図1に例示する生分解性積層体10は、コア層11、2つのバリア層12及び13を有するシート状の積層体である。各バリア層12及び13は、コア層11の表面を被覆する。
【0017】
本発明において、コア層は第1生分解性樹脂を含有し、バリア層は当該第1生分解性樹脂よりも加水分解性が小さい第2生分解性樹脂を含有する。本発明において、生分解性樹脂とは、自然環境下で分解性を有する樹脂をいう。
【0018】
生分解性樹脂は、加水分解及び酸化分解等によって低分子化した後、低分子に微生物が作用し、その酵素反応によって水、二酸化炭素、及びメタン等に分解される。加水分解は、湿潤環境下で進行するが、大気中の微量水分でも生じ得る。そのため、水分及び微生物との接触が少ない環境条件下においても初期段階から生分解性樹脂の劣化が始まるが、本発明の生分解性積層体は、加水分解性が小さい第2生分解性樹脂を含有するバリア層によってコア層の加水分解を抑えることにより、その後の微生物による分解の開始タイミングを遅らせることができる。したがって、水分及び微生物との接触が少ない使用中は劣化しにくい生分解性積層体が得られる。
【0019】
一方で、本発明の生分解性積層体は、海や河川等の水中、及び土中等の水分及び微生物との接触が多い自然環境下に放置されると、第2生分解性樹脂の加水分解又は生分解が進行し、バリア層が劣化する。バリア層の劣化によりコア層が露出し、コア層の加水分解及び生分解も進行するため、使用後の生分解性積層体は速やかに分解される。
【0020】
<コア層>
コア層は、生分解性積層体に機械的強度を付与する。このようなコア層を有する生分解性積層体は、コシに優れ、搬送性が良好な印刷用紙、ラベル用紙等として好適に使用することができる。
【0021】
<<第1生分解性樹脂>>
コア層は、第1生分解性樹脂として、下記一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位と、を含む脂肪族ポリエステル樹脂を含有する。
(I) [−CHR
1−CH
2−CO−O−]
(II) [−CHR
2−CH
2−CO−O−]
〔一般式(I)において、R
1はC
mH
2m+1で表されるアルキル基であり、mは1〜10の整数を表す。一般式(II)において、R
2はC
nH
2n+1で表されるアルキル基であり、nは1〜10の整数を表す。なお、m=nであってもよい。〕
【0022】
上記脂肪族ポリエステル樹脂においてm=nでもm≠nでもよいが、生分解性樹脂の特性の調整を容易にする観点から、コア層は、m≠nである脂肪族ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。なかでも、コア層は、m=1の3−ヒドロキシブチレートと、n=3の3−ヒドロキシヘキサノエートとの共重合体である、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)を含有することが特に好ましい。ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)は、海水中を含む様々な条件下で優れた生分解性を示すことから、環境への負荷を減らしやすい。また、生分解性積層体に、機械的強度も付与しやすい。
【0023】
第1生分解性樹脂は、成形性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。上記脂肪族ポリエステル樹脂は、ポリオレフィン樹脂等と同様の物性を有し、熱可塑性樹脂として好ましく使用できる。
【0024】
コア層中の第1生分解性樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。含有量が50質量%以上であれば、コア層の機械的強度が向上しやすい。一方、第1生分解性樹脂の含有量の上限は特になく、100質量%であってもよいし、強度又は成形性に影響を与えない範囲で後述するフィラー及び添加剤等が添加されて100質量%未満となってもよい。
【0025】
<<フィラー>>
コア層は、フィラーを含有することができる。フィラーは、生分解性積層体にパルプ紙のような風合いを付与することができる。また、フィラーによりコア層表面に形成される凹凸に微生物がとどまりやすくなり、生分解性が向上しやすい。フィラーにより空孔も形成されやすく、生分解性積層体中の樹脂密度を小さくして生分解性をより高めることが期待できる。
【0026】
フィラーとしては、例えば無機フィラー及び有機フィラー等が挙げられる。環境対策の観点からは、天然由来の無機フィラーが好ましい。
【0027】
無機フィラーとしては、例えば酸化チタン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、硫酸バリウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、カオリン、ガラスファイバー、これらを脂肪酸、高分子界面活性剤、帯電防止剤等で表面処理した無機粒子等が挙げられる。これらのうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、パルプ紙のような白色度を付与する観点からは、酸化チタンが好ましい。
【0028】
有機フィラーとしては、生分解性樹脂であって、コア層の主成分である第1生分解性樹脂とは非相溶であり、融点又はガラス転移温度が第1生分解性樹脂よりも高く、溶融混錬条件下で微分散する有機粒子が好ましい。有機フィラーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記無機フィラーと有機フィラーはいずれか一方を単独で使用してもよいし、1種以上の無機フィラーと1種以上の有機フィラーとを併用してもよい。
【0029】
フィラーの平均粒子径は、空孔の形成の容易性の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.3μmがより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。一方、同平均粒子径は、コア層の耐久性向上の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。上記平均粒子径が、 0.1μm以上であれば、凝集不良を抑えやすく、10μm以下であれば、過度な凹凸による印刷適性の低下又は耐久性の低下を抑えやすい。
【0030】
上記平均粒子径は、レーザー回折による粒度分布計で測定したメディアン径D50として求めることができる。
【0031】
<<添加剤>>
コア層は、必要に応じて酸化防止剤、加水分解抑制剤、及び分散剤等の添加剤を含有することができる。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の酸化防止剤等が挙げられる。加水分解抑制剤としては、例えばカルボジイミド化合物等が挙げられる。コア層中の酸化防止剤及び加水分解抑制剤の含有量は、それぞれ独立して通常0.001〜1質量%である。分散剤は、例えばフィラーの分散目的で使用することができる。コア層中の分散剤の含有量は、通常0.01〜4質量%の範囲内である。分散剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸又はステアリン酸等の高級脂肪酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、それらの塩等が挙げられる。
【0033】
コア層は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造の場合、各層の成分の種類及び配合量が同じでも異なっていてもよい。
【0034】
<バリア層>
バリア層は、第1生分解性樹脂よりも加水分解性が小さい第2生分解性樹脂を含有する。バリア層は、コア層の水分との接触を防いでコア層の加水分解による劣化を抑えるバリア機能を有する。
【0035】
<<第2生分解性樹脂>>
バリア層の第2生分解性樹脂は、その加水分解性が第1生分解性樹脂よりも小さいものであれば、特に限定されない。第2生分解性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の化学合成系、セルロース誘導体、でんぷん等の天然系、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)等の微生物系等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
なかでも、第2生分解性樹脂は、水溶性であることが好ましい。水溶性の第2生分解性樹脂は、水との接触が多い自然環境下に置かれたときに溶解してコア層を速やかに露出させ、コア層の生分解の開始タイミングが早まるため、使用後の生分解性積層体の分解に要する時間が短くなる。
【0037】
水溶性であり、かつ加水分解性が第1生分解性樹脂よりも小さい第2生分解性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂により、バリア層の印刷適性も高めやすく、生分解性積層体を印刷用紙、ラベル用紙等として好適に使用できる。
【0038】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル重合体のケン化物である。ビニルエステル重合体は、少なくともビニルエステルを重合成分(単量体)とする重合体である。ビニルエステル重合体の重合成分として、少なくともビニルエステルが含まれていればよく、必要に応じて、ビニルエステルと共重合可能な他の重合成分が含まれていてもよいし、ビニルエステルが他の重合成分により変性されていてもよい。
【0039】
ビニルエステルとしては特に限定されないが、例えば脂肪酸ビニルエステル及び芳香族カルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。
脂肪酸ビニルエステルとしては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、炭素数が1〜16のアルカン酸ビニルエステル等の炭素数が1〜20の脂肪酸ビニルエステル等が挙げられる。芳香族カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば安息香酸ビニル、炭素数が7〜12のアレーンカルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。これらビニルエステルは、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
なかでも、ビニルエステルとして、少なくとも脂肪酸ビニルエステル、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び酪酸ビニル等の炭素数1〜10のアルカン酸ビニルエステル等を含むことが好ましく、工業的観点等から、酢酸ビニルを含むことがより好ましい。
【0041】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、90モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましい。90モル%以上であれば、水溶性が適度に低いので触った際に手への付着が起きることもなく、また高い被膜強度を得ることもできる。同ケン化度の上限は特に限定されず、100モル%であってもよいが、通常は98モル%以上100モル%未満程度である。
【0042】
<<架橋剤>>
バリア層は、さらに架橋剤を含有することができる。バリア層中の第2生分解性樹脂は、架橋剤によって架橋される。架橋により、バリア層の加水分解性が小さくなり、バリア機能が向上する。
【0043】
架橋剤としては、例えばアジピン酸ヒドラジド等のヒドラジン誘導体等が挙げられる。なかでも、水溶性のヒドラジン誘導体は、上記水溶性の生分解性樹脂を含むバリア層形成用の塗工液が調製しやすく、好ましい。
バリア層中の架橋剤の含有量は、通常0.1〜5質量%であることができる。
【0044】
<<フィラー>>
バリア層は、コア層と同様のフィラーを含有することができる。フィラーにより生分解性樹脂の分子間の隙間を埋めてよりバリア性を高めることができる。第2生分解性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂が用いられる場合のフィラーとしては、バリア性の観点から、カオリンが好ましい。
【0045】
<<添加剤>>
バリア層は、必要に応じてコア層と同様の添加剤を含有することができる。
【0046】
(生分解性積層体の特性)
<厚み>
コア層の厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、50μm以上が特に好ましい。また、同厚みは、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましく、300μm以下が特に好ましい。厚みが10μm以上であれば十分な強度やコシが得られやすく、印刷及び加工時の搬送性が向上しやすい。厚みが1000μm以下であれば、水又は微生物が多く存在する自然環境下に放置されたときに完全に生分解するまでの時間が短くなりやすい。
【0047】
バリア層の厚みは、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。また、同厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。厚みが0.1μm以上であれば十分なバリア機能が得られやすく、100μm以下であれば水又は微生物が多く存在する自然環境下に放置されたときにコア層の生分解の開始を早めやすい。
【0048】
コア層の厚み(D1)に対するバリア層の厚み(D2)の比率(D2/D1)は、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましい。また、同比率は、1未満が好ましく、0.9以下がより好ましい。比率が0.001以上であれば十分なバリア性が得られやすく、1未満であれば生分解性が向上しやすく、また、コシも得られやすい。
【0049】
<空孔率>
コア層が空孔を有する場合、コア層中の空孔率は、樹脂成分を減らして生分解性を高める観点から、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。機械的強度を維持する観点からは、同空孔率は、50%以下が好ましく、44%以下がより好ましく、42%以下がさらに好ましく、40%以下が特に好ましい。
【0050】
上記空孔率は、走査型又は透過型の電子顕微鏡で生分解性積層体の断面を観察し、観察した一定領域において空孔が占める面積の比率より求めることができる。
【0051】
(生分解性積層体の製造方法)
本発明の生分解性積層体の製造方法は特に限定されず、例えばコア層の両面にバリア層を積層することにより製造することができる。シート状のコア層は、第1生分解性樹脂と他の成分を混合した樹脂組成物をフィルム成形することにより形成することができる。バリア層は、第2生分解性樹脂をフィルム成形するか、当該第2生分解性樹脂を含む塗工液をコア層の表面に塗工することにより、形成することができる。
【0052】
フィルム成形方法は特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独で又は組み合わせて使用することができる。公知の成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等が挙げられる。樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物をキャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去する方法も挙げられる。
【0053】
多層構造のフィルム成形の方法としては、例えばフィードブロック又はマルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
【0054】
コア層及びバリア層は、それぞれ無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0055】
(表面処理)
コア層は、バリア層との密着性を高める観点から、表面処理が施されて表面処理層を有することが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0056】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m
2(10W・分/m
2)以上であり、より好ましくは1,200J/m
2(20W・分/m
2)以上である一方、好ましくは12, 000J/m
2(200W・分/m
2)以下であり、より好ましくは10,800J/m
2(180W・分/m
2)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m
2以上であり、より好ましくは20,000J/m
2以上である一方、好ましくは200,000J/m
2以下であり、より好ましくは100,000J/m
2以下である。
【0057】
バリア層を塗工により形成する場合、バリア層の生分解性樹脂等の材料を媒体中に溶解又は分散させて塗工液を調製し、当該塗工液をコア層上に塗工して乾燥する。塗工液の塗工装置としては公知の装置を用いることができ、例えばエアーナイフコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、及びビルブレードコーター等が挙げられる。
【0058】
(他の形状の生分解性積層体)
本発明の生分解性積層体の形状は、上述したシート状に限られず、粒子状、又は中空状等の他の形状であることができる。いずれの形状の生分解性積層体であっても、上述したシート状と同様に、コア層とバリア層とを有し、当該バリア層が生分解性積層体の外表面に配置される。そのため、生分解性積層体は、使用中の劣化が遅く、使用後には自然環境下で速やかに分解される。
【0059】
<粒子状の生分解性積層体>
粒子状の生分解性積層体は、粒子状のコア層と、当該コア層の外表面を被覆するバリア層と、を有する。すなわち、粒子状の生分解性積層体は、コア層をコア、バリア層をシェルとするコア・シェル構造を有する。シート状の生分解性積層体と同様に粒子状の生分解性積層体においても、コア層は上述した第1生分解性樹脂を含有し、バリア層は上述した第2生分解性樹脂を含有する。バリア層中の第2生分解性樹脂の加水分解性はコア層の第1生分解性樹脂よりも小さい。
【0060】
粒子状の生分解性積層体は、例えば懸濁重合法、及び乳化重合凝集法等により形成することができる。
粒子状の生分解性積層体は、例えば充填剤等として使用することができる。また、バリア層による生分解性の開始タイミングの遅延を利用して、時間差で効能を発揮する農薬等としても粒子状の生分解性積層体を利用することができる。
【0061】
<中空状の生分解性積層体>
中空状の積層体は、中空体のコア層と、当該コア層の外表面上に第1バリア層と、当該コア層の内表面上に第2バリア層と、を有する。シート状の積層体と同様に、中空状の積層体においても、コア層は上述した第1生分解性樹脂を含有し、バリア層は上述した第2生分解性樹脂を含有し、コア層の外表面がバリア層により覆われる。バリア層中の第2生分解性樹脂の加水分解性はコア層の第1生分解性樹脂よりも小さい。
【0062】
中空状の生分解性積層体の製造方法は特に限定されず、例えば射出成形、モールド成形等によってコア層を形成した後、コア層の内表面及び外表面にバリア層形成用の塗工液を塗工することにより形成できる。また、シート状の生分解性積層体を中空状に組み立てることによっても製造できる。
【0063】
中空状の生分解性積層体の断面形状は特に限定されず、円形、方形、三角形等であってもよい。中空状の生分解性積層体は、例えば容器等として使用することができる。
【0064】
<非中空状の生分解性積層体>
生分解性積層体は、非中空体状であってもよい。例えば、生分解性積層体は、柱体のコア層の外表面がバリア層で覆われた柱体状であってもよい。柱体の断面形状は円形、方形等であってもよく、特に限定されない。また、生分解性積層体は、コア層とバリア層が巻き回されたロール状であってもよい。ロール状の生分解性積層体では、ロールの中心から外周側に向かってコア層とバリア層が交互に配置され、バリア層が最外表面に配置される。
【0065】
非中空状の生分解性積層体においても、シート状の生分解性積層体と同様に、コア層は上述した第1生分解性樹脂を含有し、バリア層は上述した第2生分解性樹脂を含有する。バリア層中の第2生分解性樹脂の加水分解性はコア層の第1生分解性樹脂よりも小さい。
【0066】
柱体状の生分解性積層体は、例えば射出成形、モールド成形等によってコア層を形成した後、コア層の外表面にバリア層形成用の塗工液を塗工することにより形成できる。ロール状の生分解性積層体は、例えばシート状のコア層上にシート状のバリア層を重ね、コア層を内側に位置させてコア層とバリア層を巻き回すことによって製造できる。
非中空状の生分解性積層体は、例えば上述した充填剤、農薬等として使用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0068】
(バリア層形成用の塗工液の調製)
<塗工液(A1)>
熱水中に、固形分量が100質量%となるようにPVA(カルボニル変性ポリビニルアルコール、商品名:D−ポリマーDF−17、日本酢ビ・ポバール社製、ケン化度:98〜99)を融解させて、バリア層形成用の塗工液(A1)として用いた。
【0069】
<塗工液(A2)>
水中に、分散剤としてポイズ520(花王社製)を0.1質量%添加した。さらに、フィラー(カオリン、商品名:カオファイン90、THIELE KAOLIN COMPANY社製)を固形分量が40質量%となるように添加し、混合して分散させ、フィラー分散液を調製した。
【0070】
また、熱水中に、PVA(カルボニル変性ポリビニルアルコール、商品名:D−ポリマーDF−17、日本酢ビ・ポバール社製、ケン化度:98〜99)を融解させて、固形分が10%となるように調整し、生分解性樹脂溶液を得た。得られた生分解性樹脂溶液とフィラー分散液を混合し、固形分総量に対して30質量%のPVAと、70質量%のフィラーとを含む塗工液(A2)を調製した。
【0071】
表1は、バリア層の原料の一覧を示す。
【表1】
【0072】
(生分解性積層体の製造)
<実施例1>
ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)のペレットを、シリンダー温度を150℃に設定した押出機(FS30−25、(株)池貝社製)によって溶融した。これを押出機の先端に装着したTダイからフィルム状に押し出し、冷却ロールにより冷却して、厚みが100μmのコア層(B1)を形成した。
【0073】
形成したコア層(B1)の両面にそれぞれバリア層形成用の塗工液(A1)を塗工した。これを乾燥することにより、厚みが5μmのバリア層(A1)を形成し、実施例1の生分解性積層体(層構造:A1/B1/A1、各層の厚み:5μm/100μm/5μm、全層の厚み:110μm)を得た。
【0074】
<実施例2>
実施例1において、バリア層形成用の塗工液(A1)を塗工液(A2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の生分解性積層体(層構造:A2/B1/A2、各層の厚み:5μm/100μm/5μm、全層の厚み:110μm)を得た。
【0075】
<比較例1>
実施例1において、バリア層は形成せずにコア層(B1)のみを形成し、比較例1の生分解性積層体とした。
【0076】
(評価)
各実施例及び比較例の生分解性積層体について、下記評価を行った。
【0077】
<破断強度持続性>
高温高湿機を用いて、各実施例及び比較例の生分解性積層体に加湿促進処理を施した。加湿促進処理は、温度85℃、相対湿度85%RHの環境下に12時間置く処理である。JIS7161に準拠し、加湿促進処理の前後の生分解性積層体からそれぞれダンベル形試験片を作製して200mm/minで引っ張り、破断したときの破断応力を測定した。なお、引っ張り方向はコア層の流れ方向(MD)とした。
【0078】
加湿促進処理前の測定値に対して加湿促進処理後の測定値が低下していなければ、破断強度持続性があり、生分解性積層体の加水分解性が低いと評価できる。よって、加湿促進処理前後の破断応力から、次のように破断強度持続性を評価した。
A:加湿促進処理によって破断応力が低下しなかった(加水分解性が低い)
B:加湿促進処理によって破断応力が低下した(加水分解性が高い)
【0079】
<生分解性>
各実施例及び比較例の生分解性積層体の経過時間に対する生分解度を、JIS K6953−2に準拠して求めた。求めた生分解度から生分解性積層体の生分解性を下記基準により評価した。
A:20日後の生分解度が50%以上(生分解性が高い)
B:生分解性を示さないか、又は20日後の生分解度が50%未満(生分解性が低い)
【0080】
表2は、評価結果を示す。コア層の両面のバリア層の成分は同じであるので、表2においては一方のバリア層の成分のみ示している。
【表2】
【0081】
実施例1及び2の生分解性積層体によれば、高い破断強度持続性が得られており、バリア層の加水分解性が低いことが分かる。また、実施例1及び2の生分解性積層体の生分解性は高く、いずれも速やかに分解されている。
これに対し、バリア層がない比較例1の生分解性積層体は、生分解はされるものの、破断強度持続性が低く、加水分解性が高いため、初期段階から生分解が進み、使用中に劣化しやすいと予想される。