【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を含む層を複数有する複層フィルムであって、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、シリコーン−オレフィン共重合体0.20質量部以上を含有する樹脂組成物からなる層を、表裏の少なくとも一方の面側に有し、該複層フィルムの引張弾性率が400MPa以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂複層フィルム。
ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーの一種もしくは二種以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層フィルム。
前記複層フィルムの各層において、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してオレフィン系エラストマーを50質量部以上含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層フィルム。
少なくとも表層、中間層及び裏層を備え、表層及び裏層は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、オレフィン系エラストマーを1質量部以上、80質量部以下含有し、中間層は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、オレフィン系エラストマーを50質量部以上、100質量部以下含有し、表層及び裏層の少なくとも1層は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、シリコーン−オレフィン共重合体0.20質量部以上を含有する樹脂組成物からなる層である、請求項6に記載の複層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0011】
本発明の1つの実施態様は、ポリオレフィン系樹脂を含む層を複数有する複層フィルムであって、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、シリコーン−オレフィン共重合体0.20質量部以上を含有する樹脂組成物からなる層を、表裏の少なくとも一方の面側に有し、該複層フィルムの引張弾性率が400MPa以下であることを特徴とする、複層フィルム(以下「本発明の複層フィルム」ともいう)である。
【0012】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明に用いられる樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂およびシリコーン−オレフィン共重合体が必須成分として含まれる(以下、この樹脂組成物を「樹脂組成物A」という)。
【0013】
樹脂の入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーが入手のし易さや得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から好ましい。
【0015】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレンー(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
【0017】
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0018】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−1−ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー、エチレン−スチレン共重合体エラストマー、エチレン−ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
オレフィン系エラストマーの製造方法により、リアクター型、単純ブレンド型、動的架橋型等に分類されるが、分散しているゴム成分のドメイン径が小さく透明性が高いという点でリアクター型を用いることが好ましい。
リアクター型オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、「ウェルネクス(日本ポリプロ社製)」、「ゼラス(三菱ケミカル社製)」、「キャタロイ(サンアロマー社製)」等を例示することができる。
【0019】
前述したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーはそれらを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。得られるフィルムの柔軟性やフィルムに加工する際の製膜性の観点から、2種以上を併用することが好ましい。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1〜50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5〜40g/10分、さらに好ましくは1.0〜30g/10分である。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂の強度については、ポリオレフィン系樹脂単独で作成したフィルムの引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であれば、本発明の樹脂組成物から得られるフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは150〜1900MPaの範囲内、さらに好ましくは200〜1800MPaの範囲内である。また、得られる複層フィルムの柔軟性や加工性の観点から、ポリオレフィン系樹脂の弾性率を400MPa以下とすることが好ましい。
【0022】
本発明の複層フィルムの樹脂組成物Aからなる層以外の各層は、ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物(以下「ポリオレフィン系樹脂組成物B」ともいう)からなる。これら各層に含まれるポリオレフィン系樹脂の種類は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、これら各層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物Bの配合は同じであっても、異なっていてもよい。
【0023】
また、本発明の複層フィルムに柔軟性を付与する観点から、複層フィルムの各層に用いられる樹脂組成物(即ち、樹脂組成物A、及び上記ポリオレフィン系樹脂組成物B)にはオレフィン系エラストマーを添加することが好ましい。さらに、複層フィルムに十分な柔軟性を付与するために、複層フィルムの各層に用いられるポリオレフィン系樹脂中のオレフィン系エラストマーの占める割合が50質量部以上であることがより好ましく、60質量部以上とすることがさらに好ましい。
【0024】
また、柔軟性を付与するもう一つの方法としては、複層フィルムの少なくとも1つの層において、ポリオレフィン系樹脂組成物Bに添加するオレフィン系エラストマーの占める割合を50質量部以上、100質量部以下とし、かつ、樹脂組成物Aに添加するオレフィン系エラストマーの占める割合が1質量部以上、80質量部以下とすることで、全層として柔軟性を付与することもできる。
本発明の複層フィルムの1つの態様においては、複層フィルムの少なくとも1つの層が、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してオレフィン系エラストマーを50質量部以上含有し、樹脂組成物Aからなる層が、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、オレフィン系エラストマーを5〜50質量部含有する。好ましくは5〜40質量部含有する。より好ましくは5〜30質量部含有する。
【0025】
また、柔軟性を付与するもう一つの方法としては、少なくとも表層、中間層及び裏層を備える複層フィルムにおいて、複層フィルムの表層及び裏層に用いる組成物(樹脂組成物A、及び任意にポリオレフィン系樹脂組成物B)に添加するオレフィン系エラストマーの占める割合が1質量部以上、80質量部以下とし、かつ、複層フィルムの中間層に用いる組成物(上記ポリオレフィン系樹脂組成物B)に添加するオレフィン系エラストマーの占める割合が50質量部以上、100質量部以下とすることで、全層として柔軟性を付与することもできる。ここで、表層及び裏層の少なくとも1層は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、シリコーン−オレフィン共重合体0.20質量部以上を含有する樹脂組成物Aからなる層である。
表裏層のオレフィン系エラストマーの占める割合が、5質量部以上、70質量部以下とし、かつ、中間層のオレフィン系エラストマーの占める割合が、60質量部以上、100質量部以下とすることが更に好ましい。
表裏層のポリオレフィン系エラストマーの占める割合が80質量部以下であるため、生産中のロールへの貼りつきを抑制することができる。中間層のポリオレフィン系エラストマーの占める割合が、50質量部以上であるため、複層フィルムの十分な柔軟性を付与することができる。
【0026】
上記、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー以外の樹脂として、必要に応じて、スチレン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂等を添加することもできる。
【0027】
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X−(Y−X)n …(I)
(X−Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックで、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0028】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0029】
<シリコーン−オレフィン共重合体>
本発明の複層フィルムを製造するために用いられる樹脂組成物Aには、ポリオレフィン系樹脂およびシリコーン−オレフィン共重合体が必須成分として含まれる。
得られる複層フィルムに優れた耐傷付き性や滑り性を付与しつつ、複層フィルムを製膜する際の加工性を良好に保つために、シリコーン−オレフィン共重合体が用いられる。
シリコーン−オレフィン共重合体は、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れることから、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にする。
【0030】
本発明で用いるシリコーン−オレフィン共重合体は、シリコーン(シロキサン結合を含む高分子化合物)とオレフィン(またはポリオレフィン)とを含む共重合体である。本発明で用いられるシリコーン−オレフィン共重合体は、シリコーンにポリオレフィンがグラフトした、もしくはポリオレフィンにシリコーンがグラフトしたグラフト共重合体を用いてもよく、ポリオレフィンのブロックとシリコーンのブロックとが共有結合で結ばれているブロック共重合体を用いてもよい。入手のしやすさやポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点からブロック共重合体を用いるのが好ましい。
【0031】
樹脂組成物Aにおけるシリコーン−オレフィン共重合体の添加量としては、前述したポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.20質量部以上とすることが好ましい。0.20質量部以上とすることで、得られる複層フィルムに優れた耐傷つき性と滑り性を付与することが可能となる。より好ましくは0.25質量部以上、さらに好ましくは0.30質量部以上である。
【0032】
また、ポリオレフィン系樹脂との相溶性や分散性をより向上させる方法として、前述したシリコーン−オレフィン共重合体を事前にポリオレフィン系樹脂中に高濃度に分散させたマスターバッチを用いることが好ましい。
マスターバッチに用いられるポリオレフィン系樹脂は前述したものと同様のものを用いることができる。
【0033】
マスターバッチ中のシリコーン−オレフィン共重合体の含有量としては、5質量部以上80質量部以下であることが好ましい。5質量部以上とすることで耐傷つき性を発現するための十分なシリコーン−オレフィン共重合体の量を提供することが可能となり、80質量部以下とすることで、マスターバッチをペレット化する際の加工性を損なうことが少なくなるため好ましい。より好ましくは10質量部以上70質量部以下、さらに好ましくは20質量部以上60質量部以下である。
【0034】
シリコーン−オレフィン共重合体を含有するマスターバッチの具体例としては、例えば、「イクスフォーラ(三井化学ファイン社製)」、「X−22−2101」、「X−22−2125H」、「X−22−2138B」(いずれも信越化学工業社製)、「BY27−001」、「BY27−201」(いずれもデュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製)」が挙げられる。
【0035】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(分子量388)、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(分子量448),2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)(分子量659)等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシロシキ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((メチル)オキシ)フェノールが挙げられる。
中でも、エネルギーの高い低波長の紫外線吸収能に優れたトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。
【0036】
紫外線吸収剤は、複層フィルムの全ての層に添加してもよく、一部の層(例えば、表裏層)のみに添加することもできる。
紫外線吸収剤の配合量は、特に制限されるものではなくフィルムから吹き出さない範囲であればよく、複層フィルムの各層におけるポリオレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.01〜10質量部含有し、0.05〜9質量部含有することが好ましく、0.1〜0.5質量部含有することが特に好ましい。紫外線吸収剤を0.01質量部以上含有することにより、本発明の複層フィルムの紫外線による劣化を防止することができるため、優れた耐傷付き性や滑り性を長期にわたって維持することができる。また上限値を10質量部以下とすることにより、複層フィルムから紫外線吸収剤がブリードアウトすることなく、十分な紫外線による劣化を防止することができるため、フィルム外観を維持しながら優れた耐傷付き性や滑り性を長期にわたって維持することができる。
【0037】
紫外線吸収剤としては、BASF製の「Tinuvin326」、「Tinuvin234」、「Tinuvin1600」、ADEKA製の「LA31RG」等を上げることができ、低波長の紫外線吸収能の観点から、BASF製の「Tinuvin1600」が好ましい。
紫外線吸収剤を添加したマスターバッチも市販されており、日本ポリプロ製の「TX1897D」、大日精化製の「MKV7722」等を挙げることができ、低波長の紫外線吸収能の観点から、大日精化製の「MKV7722」が好ましい。
【0038】
<光安定剤>
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−4−ベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ホスファイト(BASF(株)製「キマソープ944」)、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−3−n−オクチルピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン(BASF(株) 製「チヌビン144」)、1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)−ブタン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン、トリ(4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6, 6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン、4−p−トルエンスルホニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)テレフタレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合させて用いても良い。
【0039】
ヒンダードアミン系光安定剤は、複層フィルムの全ての層に添加してもよく、一部の層(例えば、表裏層)のみに添加することもできる。
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、それぞれの層における樹脂100質量部あたり0.01〜10質量部であるのが好ましい。配合量が0.01質量部以上であれば、安定化効果が得られやすく、10質量部以下であれば、配合量に見合った効果が得られ、またブルームを起こす恐れもない。
【0040】
光安定剤を添加したマスターバッチも市販されており、日本ポリプロ製の「MBU10A」、日本ポリエチレン製の「LX1004」、日本ポリエチレン製「XJ100H」等を挙げることができ、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーとの分散性の観点から、日本ポリプロ製の「MBU10A」が好ましい。
光安定剤は、紫外線吸収剤と併用して使用することができる。併用して使用することが好ましく、併用することによる相乗効果により、光安定剤、紫外線吸収剤を単独に添加した時よりも耐候性付与の効果が期待できる。
【0041】
<その他成分>
本発明の複層フィルムに用いられる樹脂組成物には、前述したポリオレフィン系樹脂やシリコーン−オレフィン共重合体以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、染顔料、結晶核剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0042】
帯電防止剤としては、公知のものを使用可能であるが、フィルムへの長期的な帯電防止性の付与と表面へのブリードアウトにより起こる不具合の抑制のため高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。高分子型帯電防止剤の具体例としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができ、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成しているもの等を挙げることができる。
【0043】
<複層フィルム>
本発明の複層フィルムは、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、シリコーン−オレフィン共重合体0.20質量部以上含有する樹脂組成物Aからなる層を、表裏の少なくとも一方の面側に有する複層フィルムである。また、得られるフィルムの取り扱い性の観点から、該複層フィルムの引張弾性率が400MPa以下であることが必要となる。
単層ではなく複層フィルムとすることで、表裏層のいずれかまたは両方にシリコーン−オレフィン共重合体を添加することが可能となり、シリコーン−オレフィン共重合体の過剰な添加を抑制しつつ表裏層のいずれかまたは両方に耐傷つき性と滑り性を付与でき、経済性の観点からも有効である。
【0044】
また、本発明の複層フィルムは、表裏層と中間層とからなる少なくとも3層からなるフィルムであることが好ましい。表裏層の一方の層にシリコーン−オレフィン共重合体を添加することで、片方の面のみに耐傷つき性と滑り性を付与することが可能となる。また、表裏層にシリコーン−オレフィン共重合体を添加することで複層フィルムの両面に耐傷つき性と滑り性を付与することが可能となる。表裏層の一方の層にのみシリコーン−オレフィン共重合体を添加するか、表裏層に添加するかは、用いられる複層フィルムの用途や加工性を考慮し、適宜選択することが可能である。得られる複層フィルムの一方の面に粘着層や印刷層等を設ける場合は、それらの層と複層フィルムとの密着性の観点から、複層フィルムの粘着層や印刷層を設ける側の表層または裏層にはシリコーン−オレフィン共重合体を添加しないことが好ましい。
【0045】
本発明の複層フィルムは、JIS K 7161に従い、フィルムから採取した試験片(JIS K 6732)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:50mm/分で測定した際の引張弾性率が400MPa以下であることが必要とされる。400MPa以下とすることで、該複層フィルムに粘着層や印刷層を積層する際の加工性や、粘着層を有する複層フィルムを自動車外装等の3次元形状を有する物品に貼り合わせる際の取り扱い性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは380MPa以下、さらに好ましくは360MPa以下である。得られる複層フィルムの引張弾性率の調整は、前述したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂等を調整することで可能となる。
【0046】
本発明の複層フィルムは、耐傷つき性や滑り性の観点から、学振摩耗試験後の60°光沢値が60以上であることが好ましい。60°光沢値が60以上であれば試験後も十分な光沢を保っていることから良好な耐傷つき性と滑り性を有していると判断することができる。より好ましくは65以上、さらに好ましくは70以上である。また、以下の式で示される学振摩耗試験前後の60°光沢値の維持率が60%以上であることが好ましい。60°光沢値の維持率が60%以上であれば、前述の通り良好な耐傷つき性と滑り性を有していると判断することができる。より好ましくは60°光沢値の維持率が65%以上、さらに好ましくは70%以上である。
【0047】
本発明の学振摩耗試験の条件は、JISK5701−1を参考にし、20mm角の摩擦子に綿布を取り付け、500gの荷重をかけた後、複層フィルム表面を10往復させるものである。
【0048】
フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
複層フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させて密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0049】
複層フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
【0050】
複層フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、30〜400μmであることが好ましい。上記範囲内とすることで、フィルムの取扱い性およびその後の加工性を良好に維持することができる。より好ましくは50〜350μm、さらに好ましくは70〜300μmである。
また、複層フィルムの表層または裏層の厚みを複層フィルム全体の厚みに対して5〜40%の範囲内とすることが好ましい。5%以上とすることで、前述したシリコーン−オレフィン共重合体の耐傷つき性や滑り性を表層または裏層に十分に付与することが可能となる。40%以下とすることで、複層フィルムを得る際の製膜性や経済性の観点から好ましい。より好ましくは5〜35%、さらに好ましくは5〜30%の範囲内である。
【0051】
フィルムの伸度としては、JIS K 7161に従い、フィルムから採取した試験片(JIS K 6732)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:300mm/分で測定した際の引張破断伸度が、100%以上であることが好ましい。
引張破断伸度が100%以上であれば、溶融押出成形時のフィルムを引き取る際のフィルムの破断による不具合を抑制することができ、また、これに続く印刷層や粘着層を積層する工程においても同様の不具合を抑制することができるため好ましい。より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上である。
【0052】
本発明の複層フィルムは、日本電色工業株式会社製のHaze Meter NDH2000を用いて、フィルムの凹凸を無くすため流動パラフィンを塗布してJIS K7136に準拠した方法で測定した際の、ヘイズ値が8%以下とすることで透明性が高く、自動車外層等の物品に貼り合わせた際の外観が良好である。より好ましくは6%以下、さらに好ましくは4%以下である。
【0053】
本発明の複層フィルムは、自動車外層等の物品が貼り合わせて使用するため耐候性が必要であり、スガ試験機株式会社メタリングバーチカルウェザーメーターMV3000で放射照度0.53W/m
2、照射(63℃、50%)で102分、照射+降雨(40℃、95%)で18分の繰り返し処理を行い、脆化する時間が200時間以上であることが好ましい。より好ましくは250時間以上、更に好ましくは300時間以上である。
また複層フィルムの脆化は、180°に曲げた際に割れるかどうかで評価を行い、脆化する処理時間が300時間以上の場合を〇、200時間以上、300時間未満の場合を△、200時間未満の場合を×と判定した。
【0054】
<粘着フィルム>
本発明の複層フィルムには、少なくとも片方の面に粘着層を積層することで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
【0055】
粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムとなる本発明の複層フィルムと粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0056】
<化粧フィルム>
本発明の複層フィルムには、少なくとも片方の面に印刷層を積層し、化粧フィルムとすることができる(以下「本発明の化粧フィルム」ともいう)。
化粧フィルムを構成する、印刷層は、公知の方法で形成できる。例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。また、蒸着法を用いることもできる。
印刷の柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
本発明の化粧フィルムにおいて、印刷層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムとなる本発明の複層フィルムと印刷層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
印刷層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0057】
<化粧用粘着フィルム>
本発明の化粧フィルムには、必要に応じて、該印刷層にさらに粘着層を積層して化粧用粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の化粧用粘着フィルム」ともいう)。
該化粧用粘着フィルムを被着体に貼着させることで、被着体の美麗な外観を付与することが可能となり、自動車内外装の化粧用途、その他の成形体や積層体、建築内外装用途等に用いることが可能となる。
即ち、本発明の1つの側面は、本発明の粘着フィルム、本発明の化粧フィルム又は本発明の化粧用粘着フィルムを用いた自動車用保護フィルムである。
【0058】
本発明の複層フィルムは、優れた耐傷付き性、柔軟性および3次元形状を有する成形体への追従性を有するものである。さらに、該フィルムに粘着層や印刷層を積層することで粘着フィルムや化粧フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを自動車化粧用途にも好適に用いることができる
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0060】
[使用材料]
<ポリオレフィン系樹脂(PO系樹脂)>
ランダムポリプロピレン(A):
日本ポリプロ社製、「FW4B」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト=8.0g/10分、融点=136℃、単独フィルムの引張弾性率=600MPa)
ランダムポリプロピレン(B):
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト=7.5g/10分、融点=142℃、単独フィルムの引張弾性率=600MPa)
直鎖状低密度ポリエチレン:
宇部丸善ポリエチレン社製、「0540F」(メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト=4g/10分、融点=87℃および111℃、単独フィルムの引張弾性率=100MPa)
オレフィン系エラストマー:
日本ポリプロ社製、「ウェルネクスRFX4V」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト=6.0g/10分、融点=127℃、単独フィルムの引張弾性率=230MPa)
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド社製 DSC823e)を用い、各ポリオレ
フィン系樹脂の約5mgを、昇温速度10℃/分で25℃から230℃まで昇温した後、
冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で230℃まで昇温
した際に測定されたチャートの融解ピーク温度を融点とした。
【0061】
<シリコーン−オレフィン共重合体マスターバッチ>
三井化学ファイン社製、「イクスフォーラPP2000」(シリコーン−オレフィン共重合体(シリコーン成分とポリオレフィン成分とのブロック共重合体)を30質量部、ホモポリプロピレンを70質量部で構成されるマスターバッチ、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト=20.0g/10分)
【0062】
<スリップ剤マスターバッチ>
日本ポリプロ社製、「MBS05A」(脂肪酸アマイドを5質量部含有するポリプロピレン系スリップ剤マスターバッチ)
【0063】
<エチレン−HALS共重合体高分子量光安定剤>
日本ポリエチレン社製、「XJ100H」(ヒンダードアミン系光安定剤を5質量部含有するポリエチレン系光安定剤)
【0064】
<光安定剤マスターバッチ>
日本ポリプロ社製、「MBU10A」(ヒンダードアミン系光安定剤を10質量部有するポリプロピレン系光安定剤マスターバッチ)
【0065】
<紫外線吸収剤マスターバッチA>
日本ポリプロ社製、「TX1897D」(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を5質量部含有するポリプロピレン系紫外線吸収剤マスターバッチ)
<紫外線吸収剤マスターバッチB>
大日精化社製、「MKV7722」(トリアジン系紫外線吸収剤を5質量部含有するポリプロピレン系紫外線吸収剤マスターバッチ)
【0066】
<樹脂組成物の調製>
上記のポリオレフィン系樹脂を合計で100質量部、それ以外のものは表1に記載の原料および添加量とし、それらをドライブレンドし混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、フィルム成形用樹脂組成物を得た。
【0067】
<複層フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表裏層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、表裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、外層用、中間層用それぞれの押出機温度を200〜230℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定230℃ リップ開度0.5mm)から押出した。厚み構成は、9μm/157μm/9μmになるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、シリコーン−オレフィン共重合体を含有していない面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約175μmの3種3層からなる複層のフィルムを得た。
【0068】
[フィルムの外観]
得られた複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面を目視にて観察し、以下の基準により評価した。
◎:フィルムに汚れや凹凸の転写がなく、外観良好
○:フィルムに僅かに汚れや凹凸は見られるものの、使用可能
×:フィルムに汚れや噴出し物の付着が見られるため、使用不可
【0069】
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS−X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0070】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ−L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0071】
[60°光沢値]
得られた複層フィルムを使用し、JISK7105に準拠し、携帯用光沢計(村上色彩技術研究所社製光沢計GMX−203)を用いてシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の60°光沢値を測定した。
後述する学振摩耗試験を実施する前、実施した後のそれぞれの状態で測定した値を表1に示す。
また、以下の数式により算出した値を学振摩耗試験前後の60°光沢値の維持率として用いた。
【0072】
[学振摩耗試験]
得られた複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面を試験できるようテスター産業社製「学振型摩擦堅牢度試験機」に設置した。次いで、JISK5701−1を参考にし、フィルムと接する20mm角の摩擦子に、かなきん3号の綿布を取り付け、500gの荷重をかけた後、複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する側の面を10往復(往復速度:3.6m/min、往復距離:120mm)させ試験を行った。
学振摩耗試験は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0073】
[粘着フィルムの加工性]
得られた複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有していない側の面に粘着層を設けた粘着フィルムを、自動車の外装に貼り付ける際の作業性を以下の基準により評価した。
◎:フィルムが柔軟性に優れ、作業性良好
○:フィルムに十分な柔軟性があり、作業可能
×:フィルムの柔軟性が乏しく、作業性に劣る
【0074】
[耐候性]
得られた複層フィルムを、スガ試験機株式会社メタリングバーチカルウェザーメーターMV3000で放射照度0.53W/m
2、照射(63℃、50%)で102分、照射+降雨(40℃、95%)で18分の繰り返し処理を行い、脆化するまでの時間で評価した。
○:脆化する処理時間が300時間以上
△:脆化する処理時間が200時間以上、300時間未満
×:脆化する処理時間が200時間未満
【0075】
[実施例1]
表裏層、中間層に用いるPO系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンおよびオレフィン系エラストマーを用い、表裏層の片方の側に滑剤としてシリコーン−オレフィン共重合体マスターバッチを含有することで、表裏層の片方にシリコーン−オレフィン共重合体を含有する3種3層からなる複層フィルムを得た。また、PO系樹脂、滑剤はそれぞれ表1に記載の通りの配合量とした。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等による外観の悪化は無く、フィルムの引張弾性率は200MPaであり、優れた外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は74、試験前後の光沢値の維持率も80%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
さらに、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成し、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有しない面に粘着剤層を貼り合わせることで粘着フィルムを得た。
この粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが優れた柔軟性を有していることから容易に貼り付けることが可能であり作業性、加工性に優れることを確認した。
【0076】
[実施例2]
シリコーン−オレフィン共重合体の含有量を表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等による外観の悪化は無く、フィルムの引張弾性率は200MPaであり、優れた外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は88、試験前後の光沢値の維持率も95%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが優れた柔軟性を有していることから容易に貼り付けることが可能であり作業性、加工性に優れることを確認した。
【0077】
[実施例3]
PO系樹脂をオレフィン系エラストマーのみとした以外は、実施例2と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等による外観の悪化は無く、フィルムの引張弾性率は230MPaであり、優れた外観および良好な柔軟性を有するフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は88、試験前後の光沢値の維持率も95%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが良好な柔軟性を有していることから問題なく貼り付けは可能であり、十分な作業性、加工性を有することを確認した。
【0078】
[実施例4]
PO系樹脂を表1に記載の配合量とした以外は、実施例2と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等による外観の悪化は無く、フィルムの引張弾性率は200MPaであり、優れた外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は88、試験前後の光沢値の維持率も95%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが優れた柔軟性を有していることから容易に貼り付けることが可能であり作業性、加工性に優れることを確認した。
【0079】
[実施例5]
シリコーン−オレフィン共重合体を表1に記載の配合量とした以外は、実施例4と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等による外観の悪化は無く、フィルムの引張弾性率は200MPaであり、優れた外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は90、試験前後の光沢値の維持率も97%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが優れた柔軟性を有していることから容易に貼り付けることが可能であり作業性、加工性に優れることを確認した。
【0080】
[実施例6]
シリコーン−オレフィン共重合体を表1に記載の配合量とした以外は、実施例4と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等に汚れおよび凹凸の転写が僅かに見られるものの外観は良好であった。また、フィルムの引張弾性率は200MPaであり、良好な外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は89、試験前後の光沢値の維持率も96%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが優れた柔軟性を有していることから容易に貼り付けることが可能であり作業性、加工性に優れることを確認した。
【0081】
[実施例7]
シリコーン−オレフィン共重合体、オレフィン系エラストマーを表1に記載の配合量とした以外は、実施例4と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等に汚れおよび凹凸の転写が僅かに見られるものの外観は良好であった。また、フィルムの引張弾性率は230MPaであり、良好な外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は90、試験前後の光沢値の維持率も97%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが良好な柔軟性を有していることから問題なく貼り付けは可能であり、十分な作業性、加工性を有することを確認した。
【0082】
[実施例8]
ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、シリコーン−オレフィン共重合体、光安定剤、紫外線吸収剤を表1に記載の配合量とし、実施例7と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等に汚れおよび凹凸の転写が僅かに見られるものの外観は良好であった。また、フィルムの引張弾性率は270MPaであり、良好な外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は89、試験後は85、試験前後の光沢値の維持率も、96%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムは、光安定剤のマスターバッチ及び紫外線吸収剤のマスターバッチに用いるポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂であるため、ヘイズが2%であり、透明性が良いフィルムであった。
紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるため、耐候性の脆化時間が250時間程度であり、実用上は問題ないと判断した。
また、表裏層のランダムポリプロピレン(B)の添加量を80質量部とし、オレフィン系エラストマーを20質量部としたので、フィルムの製膜性が向上した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが良好な柔軟性を有していることから問題なく貼り付けは可能であり、十分な作業性、加工性を有することを確認した。
【0083】
[実施例9]
ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、シリコーン−オレフィン共重合体、光安定剤、紫外線吸収剤を表1に記載の配合量とし、実施例7と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等に汚れおよび凹凸の転写が僅かに見られるものの外観は良好であった。また、フィルムの引張弾性率は270MPaであり、良好な外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は88、試験後は85、試験前後の光沢値の維持率も、97%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムは、光安定剤のマスターバッチ及び紫外線吸収剤のマスターバッチに用いるポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂であるため、ヘイズが2%であり、透明性が良いフィルムであった。
紫外線吸収剤がトリアジン系紫外線吸収剤であるため、耐候性の脆化時間が300時間以上であり、すぐれた耐候性を確認した。
また、表裏層のランダムポリプロピレン(B)の添加量を80質量部とし、オレフィン系エラストマーを20質量部としたので、フィルムの製膜性が向上した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが良好な柔軟性を有していることから問題なく貼り付けは可能であり、十分な作業性、加工性を有することを確認した。
【0084】
[比較例1]
シリコーン−オレフィン共重合体の含有量を表1に記載の配合量とした以外は、実施例3と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等による外観の悪化は無く、フィルムの引張弾性率は230MPaであり、良好な外観および柔軟性にも優れるフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は55、試験前後の光沢値の維持率も59%であった。
本複層フィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の含有量が少ないことから耐傷つき性と滑り性が劣ることを確認した。
【0085】
[比較例2]
PO系樹脂をランダムポリプロピレンのみとした以外は、実施例3と同様に行った。
このフィルムはシリコーン−オレフィン共重合体の表面への噴出し等に汚れおよび凹凸の転写が僅かに見られるものの外観は良好であった。また、フィルムの引張弾性率は600MPaであり、良好な外観を示すものの柔軟性には劣るフィルムであった。
また、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有する層の側の面の学振摩耗前の60°光沢値は93、試験後は88、試験前後の光沢値の維持率も95%であり、優れた耐傷つき性と滑り性を有することを確認した。
この複層フィルムを用いた粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが柔軟性の劣るものであったため、フィルムの自動車外装の形状への追従性にも劣り、作業性、加工性にも劣ることを確認した。
【0086】
[比較例3]
滑剤としてスリップ剤マスターバッチを表1に記載の配合量とした以外は、実施例4と同様に行った。
このフィルムはスリップ剤マスターバッチに含まれる脂肪酸アマイドの表面への噴出しが確認され、それによるフィルムの白化が発生したころから外観に劣るフィルムであることを確認した。
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例10]
実施例1で得られた複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有していない側の面に、以下に記載のDICグラフィックス(株)製のインキを、倉敷紡績(株)製のグラビア印刷試験機「GP−2」、及び印刷プレート「54L6階調」を用い、複層フィルムに塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
【0089】
<DICグラフィックス(株)製インキ>
「VTP−NT40黄(A)」を95質量部、及び「AT−NT溶剤」を5質量部混合・撹拌しインキを調製した。
「VTP−NT40黄(A)」:塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体およびアクリル系樹脂の混合物と溶剤としてメチルイソブチルケトンからなる塗料「AT−NT溶剤」:酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合物
【0090】
さらに得られた化粧フィルムの印刷層の上に、実施例1に記載の方法で粘着層を積層することで、化粧用粘着フィルムを得た。該化粧用粘着フィルムからセパレータを剥離し、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが優れた柔軟性を有していることから容易に自動車外装に貼り付けることが可能であった。よって、該化粧用粘着フィルムは作業性および加工性に優れるものであることを確認した。