(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-154953(P2021-154953A)
(43)【公開日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】多段ロケット
(51)【国際特許分類】
B64G 1/00 20060101AFI20210910BHJP
B64G 1/40 20060101ALI20210910BHJP
B64G 1/64 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
B64G1/00 H
B64G1/40 Z
B64G1/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-59221(P2020-59221)
(22)【出願日】2020年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】720000937
【氏名又は名称】須田 広志
(72)【発明者】
【氏名】須田 広志
(57)【要約】
【課題】 多段ロケットにおいて、地上から所定の軌道までの飛行中にロケットエンジンを始動させることを不要にする。
【解決手段】 多段ロケットは、最下端に配置される最下段ロケット機体29と、最下段ロケット機体の上端に切り離し可能に取付けられる上段側ロケット機体49と、を備える。ロケットエンジン装置50は、最下段ロケット機体29の下端にのみ配置されている。そして、最下段ロケット機体29が地上から目標軌道まで飛行する一方、上段側ロケット機体49は最下段ロケット機体29が目標軌道まで到達する前に、最下段ロケット機体29から切り離される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最下端に配置される最下段ロケット機体と、
前記最下段ロケット機体の上端に切り離し可能に取付けられる上段側ロケット機体部と、を備える多段ロケットであって、
ロケットエンジン装置が前記最下段ロケット機体の下端にのみ配置されており、
前記最下段ロケット機体が地上から目標軌道まで飛行する一方、前記上段側ロケット機体部は前記最下段ロケット機体が前記目標軌道まで到達する前に前記最下段ロケット機体から切り離される、多段ロケット。
【請求項2】
前記上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有しており、
前記上段側ロケット機体部は、前記上段側燃料タンクの燃料が無くなり、かつ、前記上段側酸化剤タンクの酸化剤が無くなったときに、前記最下段ロケット機体から切り離される、請求項1に記載の多段ロケット。
【請求項3】
前記最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有しており、
前記最下段ロケット機体から前記上段側ロケット機体部が切り離された後は、前記ロケットエンジン装置は、前記最下段燃料タンクの燃料と前記最下段酸化剤タンクの酸化剤を使用する、請求項2に記載の多段ロケット。
【請求項4】
前記上段側ロケット機体部は、互いに分離可能とされた複数のロケット機体を備えており、
前記複数のロケット機体のそれぞれは、燃料タンクと酸化剤タンクを有しており、
前記複数のロケット機体の燃料タンクと酸化剤タンクは、先端側の燃料タンク及び酸化剤タンクから使用され、
前記複数のロケット機体は、先端側から切り離される、請求項2又は3に記載の多段ロケット。
【請求項5】
前記最下段ロケット機体は、衛星を格納する衛星格納部を有しており、
前記衛星格納部に格納された衛星は、前記最下段ロケットが前記目標軌道に到達した後で、前記最下段ロケット機体から分離される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段ロケット。
【請求項6】
前記ロケットエンジン装置は、複数のロケットエンジンを備えており、
前記複数のロケットエンジンの一部は、前記最下段ロケット機体が地上から前記目標軌道に到達する前に前記最下段ロケット機体から切り離される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多段ロケット。
【請求項7】
前記最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有しており、
前記上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有しており、
前記多段ロケットは、
前記上段側燃料タンクと前記最下段燃料タンクとを接続する第1燃料配管と、
前記最下段燃料タンクと前記ロケットエンジン装置とを接続する第2燃料配管と、
前記上段側酸化剤タンクと前記最下段酸化剤タンクとを接続する第1酸化剤配管と、
前記最下段酸化剤タンクと前記ロケットエンジン装置とを接続する第2酸化剤配管と、をさらに備えており、
前記上段側燃料タンクの燃料は、前記第1燃料配管を介して前記最下段燃料タンクに供給され、
前記上段側酸化剤タンクの酸化剤は、前記第1酸化剤配管を介して前記最下段酸化剤タンクに供給され、
前記最下段燃料タンクの燃料は、前記第2燃料配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給され、
前記最下段酸化剤タンクの酸化剤は、前記第2酸化剤配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多段ロケット。
【請求項8】
前記最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有しており、
前記上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有しており、
前記多段ロケットは、
前記上段側燃料タンクと前記ロケットエンジン装置とを接続する第3燃料配管と、
前記最下段燃料タンクと前記第3燃料配管とを接続する第4燃料配管と、
前記上段側酸化剤タンクと前記ロケットエンジン装置とを接続する第3酸化剤配管と、
前記最下段酸化剤タンクと前記第3酸化剤配管とを接続する第4酸化剤配管と、をさらに備えており、
前記上段側燃料タンクの燃料は、前記第3燃料配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給され、
前記上段側酸化剤タンクの酸化剤は、前記第3酸化剤配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給され、
前記最下段燃料タンクの燃料は、前記第4燃料配管及び前記第3燃料配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給され、
前記最下段酸化剤タンクの酸化剤は、前記第4酸化剤配管及び前記第3酸化剤配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多段ロケット。
【請求項9】
前記最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有しており、
前記上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有しており、
前記最下段燃料タンクの上端部と前記上段側燃料タンクの下端部とが直接接続されており、
前記最下段酸化剤タンクの上端部と前記上段側酸化剤タンクの下端部とが直接接続されており、
前記多段ロケットは、
前記最下段燃料タンクと前記ロケットエンジン装置とを接続する第5燃料配管と、
前記最下段酸化剤タンクと前記ロケットエンジン装置とを接続する第5酸化剤配管と、をさらに備えており、
前記上段側燃料タンクの燃料は、前記最下段燃料タンクに直接供給され、
前記上段側酸化剤タンクの酸化剤は、前記最下段酸化剤タンクに直接供給され、
前記最下段燃料タンクの燃料は、前記第5燃料配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給され、
前記最下段酸化剤タンクの酸化剤は、前記第5酸化剤配管を介して前記ロケットエンジン装置に供給される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多段ロケット。
【請求項10】
前記ロケットエンジン装置は、ロケットエンジンで発生する燃焼ガスを排気するロケットエンジンノズルを備えており、
前記ロケットエンジンノズルは、燃焼ガスの膨張比が調整可能となっている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多段ロケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、多段ロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
公知の多段ロケットの一例を
図1に示す。
図1に示す衛星打ち上げロケットでは、第1段ロケット13と、第2段ロケット3と、大気から収容する衛星2を保護するフェアリング1とからなる2段ロケットである。第1段ロケット13は、第1段ロケットエンジン19と、第1段燃料タンク14と、第1段酸化剤タンク15と、第1段燃料タンク14から第1段ロケットエンジン19に燃料を送る第1段燃料配管17と、第1段酸化剤タンク15から第1段ロケットエンジン19に酸化剤を送る第1段酸化剤配管18と、第1段ロケット機体16と、から構成される。第2段ロケット3も第1段ロケット13と同様に構成される。このようなロケットでは、第1段ロケット13に第1段ロケットエンジン19が、第2段ロケット3には第2段ロケットエンジン9が必要となる。
図4に前記ロケットの飛行状況を示す。打ち上げ時101には、第1段ロケットエンジン19により推力を発生させ上昇する。ある高度に達した段階102にて、衛星2を保護していたフェアリング1を分離する。その後、第1段ロケットエンジン19は推力を発生し続けるが、第1段ロケット13内の燃料及び酸化剤がなくなった段階103で、第1段ロケット13を分離する。分離後、真空および無重力環境で、第2段ロケットエンジン9を始動させる。第2段ロケット3は飛行を続け、所定の軌道(位置および速度)に達した時104に、第2段ロケット3の前方に取り付けてある衛星2を分離する。これによって、衛星2は所定の軌道に投入される。上述の説明から明らかなように、第2段ロケット3は、飛行中ほぼ真空中で無重力状態の環境下で、第2段ロケットエンジン9の始動を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2020−20213号
【特許文献2】特開平7−139431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示す従来の多段ロケットでは、地上から所定の軌道まで飛行している途中の第1段ロケット13の切り離し後に、第2段ロケットエンジン9の始動が必要となる。しかしながら、真空中かつ無重力環境での第2段ロケットエンジン9の始動は技術的な難易度が高く、失敗する可能性がある。また、第2段ロケットエンジン9を始動するための制御システムが第2段ロケット3に必要となり、ロケットが複雑な仕組みとなっていた。また、各段毎に異なったロケットエンジンが必要になり、段数を増やすことは容易ではなかった。
【0005】
本明細書は、多段ロケットにおいて、地上から所定の軌道まで飛行しているときにロケットエンジンの始動をすることを不要とする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する多段ロケットは、最下端に配置される最下段ロケット機体と、最下段ロケット機体の上端に切り離し可能に取付けられる上段側ロケット機体部と、を備える。この多段ロケットは、ロケットエンジン装置が最下段ロケット機体の下端にのみ配置されている。そして、最下段ロケット機体が地上から目標軌道まで飛行する一方、上段側ロケット機体部は最下段ロケット機体が目標軌道まで到達する前に、最下段ロケット機体から切り離される。
【0007】
上記の多段ロケットでは、最下段ロケット機体の下端にのみロケットエンジン装置が配置される。そして、最下段ロケット機体が地上から目標軌道まで飛行する間に、最下段ロケット機体から上段側ロケット機体部が切り離される。すなわち、最下段ロケット機体の下端に配置されたロケットエンジン装置は、最下段ロケット機体が地上から目標軌道に到達するまで停止することなく作動し、多段ロケットの推力を発生する。したがって、地上からの打ち上げ時にロケットエンジン装置を始動するだけでよく、飛行中にロケットエンジン装置を始動する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施例1に係る多段ロケットを示した図である。
【
図3】実施例2に係る多段ロケットを示した図である。
【
図4】公知の多段ロケットの飛行状況を示した図である。
【
図5】実施例1に係る多段ロケットの飛行状況を示した図である。
【
図6】実施例3に係る多段ロケットの飛行状況を示した図である。
【
図7】実施例4に係る多段ロケットの配管構成図を示した図である。
【
図8】実施例5に係る多段ロケットを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示する多段ロケットでは、上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有しており、上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクの燃料が無くなり、かつ、上段側酸化剤タンクの酸化剤が無くなったときに、最下段ロケット機体から切り離されてもよい。このような構成を備えることで、最下段ロケットの下端に配置したロケットエンジン装置に燃料及び酸化剤が供給され、多段ロケットを構成することができる。
【0010】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有しており、最下段ロケット機体から上段側ロケット機体部が切り離された後は、ロケットエンジン装置は、最下段燃料タンクの燃料と最下段酸化剤タンクの酸化剤を使用してもよい。このような構成を備えることで、上段側ロケット機体部が切り離された後もロケットエンジン装置に燃料及び酸化剤が供給され、最下段ロケットは目標軌道に到達することができる。
【0011】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、上段側ロケット機体部は、互いに分離可能とされた複数のロケット機体を備えていてもよい。この場合に、複数のロケット機体のそれぞれは、燃料タンクと酸化剤タンクを有しており、複数のロケット機体の燃料タンクと酸化剤タンクは、先端側の燃料タンク及び酸化剤タンクから使用されてもよい。そして、複数のロケット機体は、先端側から切り離されてもよい。このように構成することで、3段以上のロケットを構成することができる。
【0012】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、最下段ロケット機体は、衛星を格納する衛星格納部を有していてもよい。そして、衛星格納部に格納された衛星は、最下段ロケットが目標軌道に到達した後で、最下段ロケット機体から分離されてもよい。このような構成によると、最下段ロケット機体に格納した衛星を目標軌道に投入することができる。
【0013】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、ロケットエンジン装置は、複数のロケットエンジンを備えており、複数のロケットエンジンの一部は、最下段ロケット機体が地上から目標軌道に到達する前に最下段ロケット機体から切り離されてもよい。このような構成によると、ロケットエンジン装置を構成する複数のロケットエンジンの一部を切り離すことで、ロケットエンジン装置で発生する推力を適切な大きさに調整することができる。
【0014】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有していてもよい。上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有していてもよい。多段ロケットは、上段側燃料タンクと最下段燃料タンクとを接続する第1燃料配管と、最下段燃料タンクとロケットエンジン装置とを接続する第2燃料配管と、上段側酸化剤タンクと最下段酸化剤タンクとを接続する第1酸化剤配管と、最下段酸化剤タンクとロケットエンジン装置とを接続する第2酸化剤配管と、をさらに備えていてもよい。そして、上段側燃料タンクの燃料は、第1燃料配管を介して最下段燃料タンクに供給され、上段側酸化剤タンクの酸化剤は、第1酸化剤配管を介して最下段酸化剤タンクに供給され、最下段燃料タンクの燃料は、第2燃料配管を介してロケットエンジン装置に供給され、最下段酸化剤タンクの酸化剤は、第2酸化剤配管を介してロケットエンジン装置に供給されてもよい。このような構成によると、各燃料タンクからロケットエンジン装置に燃料を供給することができ、また、各酸化剤タンクからロケットエンジン装置に酸化剤を供給することができる。
【0015】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有していてもよい。上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有していてもよい。多段ロケットは、上段側燃料タンクとロケットエンジン装置とを接続する第3燃料配管と、最下段燃料タンクと第3燃料配管とを接続する第4燃料配管と、上段側酸化剤タンクとロケットエンジン装置とを接続する第3酸化剤配管と、最下段酸化剤タンクと第3酸化剤配管とを接続する第4酸化剤配管と、をさらに備えていてもよい。そして、上段側燃料タンクの燃料は、第3燃料配管を介してロケットエンジン装置に供給され、上段側酸化剤タンクの酸化剤は、第3酸化剤配管を介してロケットエンジン装置に供給され、最下段燃料タンクの燃料は、第4燃料配管及び第3燃料配管を介してロケットエンジン装置に供給され、最下段酸化剤タンクの酸化剤は、第4酸化剤配管及び第3酸化剤配管を介してロケットエンジン装置に供給されてもよい。このような構成によっても、各燃料タンク及び各酸化剤タンクからロケットエンジン装置に燃料及び酸化剤を供給することができる。
【0016】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、最下段ロケット機体は、最下段燃料タンクと最下段酸化剤タンクを有しており、上段側ロケット機体部は、上段側燃料タンクと上段側酸化剤タンクを有していてもよい。最下段燃料タンクの上端部と上段側燃料タンクの下端部とが直接接続されており、最下段酸化剤タンクの上端部と上段側酸化剤タンクの下端部とが直接接続されていてもよい。多段ロケットは、最下段燃料タンクとロケットエンジン装置とを接続する第5燃料配管と、最下段酸化剤タンクとロケットエンジン装置とを接続する第5酸化剤配管と、をさらに備えていてもよい。そして、上段側燃料タンクの燃料は、最下段燃料タンクに直接供給され、上段側酸化剤タンクの酸化剤は、最下段酸化剤タンクに直接供給され、最下段燃料タンクの燃料は、第5燃料配管を介してロケットエンジン装置に供給され、最下段酸化剤タンクの酸化剤は、第5酸化剤配管を介してロケットエンジン装置に供給されてもよい。このような構成によっても、各燃料タンク及び各酸化剤タンクからロケットエンジン装置に燃料及び酸化剤を供給することができる。
【0017】
また、本明細書に開示する多段ロケットでは、ロケットエンジン装置は、ロケットエンジンで発生する燃焼ガスを排気するロケットエンジンノズルを備えており、ロケットエンジンノズルは、燃焼ガスの膨張比が調整可能となっていてもよい。このような構成によると、ロケットエンジン装置を最下段ロケット機体の下端にのみ配置しても、多段ロケットの高度に応じてロケットエンジン装置の膨張比を適切な膨張比に調整することができる。
【実施例1】
【0018】
以下、実施例1に係る多段ロケットについて説明する。
図2に示すロケットは、2段ロケットであり、ロケットの先端に取り付けられるノーズコーン32と、ロケットの下端に配置される最下段ロケット機体29と、上段側ロケット機体49と、ロケットエンジン装置50とを有する。最下段ロケット機体29は、衛星2を格納する衛星格納部31を有している。上段側ロケット機体49は、最下段ロケット機体29の上部に設置される。ノーズコーン32は、上段側ロケット機体49の上部に設置される。ロケットエンジン装置50は、最下段ロケット機体29の下端に配置されており、大気圧の高い、地上打ち上げ時から衛星分離する真空中まで所定の推力を発生できるロケットエンジン装置である。ロケットエンジン装置50としては、例えば、ロケットエンジンで発生する燃焼ガスを排気するロケットエンジンノズルを備えており、ロケットエンジンノズルは、燃焼ガスの膨張比が調整可能となっていてもよい。燃焼ガスの膨張比を調整することで、地上打ち上げ時から衛星分離する真空中まで適切な推力を発生することができる。具体的には、大気圧が高い地上打ち上げ時には膨張比を小さくし、大気圧が低い真空中では膨張比を大きくする。このように構成することで、ロケットエンジンノズルの壁面からの排気ガスの剥離が防止され、打ち上げから衛星分離まで適切な推力を発生することができる。なお、このようなロケットエンジン装置としては、例えば、特許文献1もしくは2に示されるようなロケットエンジンでもよいし、膨張比が調整可能な公知の他のロケットエンジンでも構わない。
【0019】
最下段ロケット機体29は、最下段燃料タンク21と最下段酸化剤タンク22とを有する。なお、
図2に示す実施例では、最下段燃料タンク21が最下段酸化剤タンク22の上部に位置しているが、最下段酸化剤タンク22が最下段燃料タンク21の上部に位置しても構わない。
【0020】
上段側ロケット機体49は、上段側燃料タンク41と上段側酸化剤タンク42とを有する。なお、
図2に示す実施例では、上段側燃料タンク41が上段側酸化剤タンク42の上部に位置しているが、上段側酸化剤タンク42が上段側燃料タンク41の上部に位置しても構わない。
【0021】
本実施例の多段ロケットは、上段側燃料タンク41と最下段側燃料タンク21とを接続する第1燃料配管24と、最下段燃料タンク21とロケットエンジン装置50とを接続する第2燃料配管26と、上段側酸化剤タンク42と最下段酸化剤タンク22とを接続する第1酸化剤配管25と、最下段酸化剤タンク22とロケットエンジン装置50とを接続する第2酸化剤配管27とを有する。
第1燃料配管24は、第1燃料配管分離部61において流路を閉鎖および分離する機構を備える。第1酸化剤配管25は、第1酸化剤配管分離部62において流路を閉鎖および分離できる機構を備える。
【0022】
ロケットエンジン装置50が始動すると、最下段燃料タンク21内の燃料が第2燃料配管26を通してロケットエンジン装置50に供給される。一方、上段側燃料タンク41内の燃料は、第1燃料配管24を通して最下段燃料タンク21に供給される。また、最下段酸化剤タンク22内の酸化剤が第2酸化剤配管27を通してロケットエンジン装置50に供給される。一方、上段側酸化剤タンク42内の酸化剤は、第1酸化剤配管25を通して最下段酸化剤タンク22に供給される。よって、ロケットエンジン装置50にて燃料及び酸化剤が消費されると、上段側燃料タンク41内の燃料及び上段側酸化剤タンク42内の酸化剤の量が減少していく。
【0023】
実施例1に示す多段ロケットの飛行状況を説明する。
図5に示す打ち上げ時状況101では、まずロケットエンジン装置50が始動し推力を発生しロケットが上昇する。飛行中に上段側ロケット機体49の燃料及び酸化剤が減少していく。上段側ロケット機体49の燃料及び酸化剤がなくなった段階103で、上段側ロケット機体49を最下段ロケット機体29から分離する。分離する際には、第1燃料配管24は、第1燃料配管分離部61において分離され、最下段燃料タンク21内の燃料が外部に漏れないように燃料配管流路が閉鎖される。第1酸化剤配管25も同様に、第1酸化剤配管分離部62において分離され、最下段酸化剤タンク22内の酸化剤が外部へ漏れないように酸化剤配管流路が閉鎖される。切り離し後のロケット全体は軽くなるため、ロケットの加速度が過大とならないように、ロケットエンジン装置50の推力を低下させ所定の推力を維持する。最下段ロケット機体29はさらに上昇を続け、所定の軌道に達した時104に衛星2を分離する。このようにすることで、フェアリング及び上段側ロケットエンジンを不用としており、フェアリング分離失敗もしくは空中でのロケットエンジン始動失敗による打ち上げ失敗を防止することができる。
【実施例2】
【0024】
実施例2に係る多段ロケットを説明する。
図3に示すロケットは3段ロケットの例である。段数を増やすためには、最下段ロケット機体の上部に複数のロケット機体で構成される上段側ロケット機体部を接続するだけで、きわめて簡単に段数を増加することができる。図中では、最下段ロケット機体29の上方に、2つのロケット機体49で構成される上段側ロケット機体部48を接続し、打ち上げ後上昇するにつれ、ロケット先端のロケット機体49から順次分離していく。さらに4段以上に多段化する場合でも同様である。このようにすることで、段毎に別々のロケットエンジンを設置する必要がなく、多段化することが容易にできる。
【実施例3】
【0025】
実施例3に係る多段ロケットを説明する。
図6に示すロケットは、実施例1の多段ロケットに複数のロケットエンジンからなるロケットエンジン装置50を設置した場合である。ロケットエンジンの数は問わない。このロケットが上空で上段側ロケット機体49を切り離すと、ロケットは軽くなるため、ロケットの推力を低下させる必要がある。そのため、ロケットエンジン装置50の中で一部のロケットエンジン51を停止し、切り離す。なお、残ったロケットエンジンは、停止することなく推力を発生し続ける。このようにすることで簡易な構成でロケットの推力を低下させることができる。その他は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0026】
実施例4に係る多段ロケットを説明する。実施例1とは、ロケット燃料及び酸化剤の配管の構成が異なる。
図7に示すように、実施例4の多段ロケットでは、上段側燃料タンク41と最下段のロケットエンジン装置50とを接続する第3燃料配管71と、最下段燃料タンク21と第3燃料配管71とを燃料切換え弁63を介して接続する第4燃料配管72が設けられ、また、上段側酸化剤タンク42と最下段のロケットエンジン装置50とを接続する第3酸化剤配管73と、最下段酸化剤タンク22と第3酸化剤配管73とを酸化剤切換え弁64を介して接続する第4酸化剤配管74が設けられる。実施例1と異なり、打ち上げ時には、上段側燃料タンク41内の燃料が第3燃料配管71を通して直接ロケットエンジン装置50に供給され、また、上段側酸化剤タンク42内の酸化剤が第3酸化剤配管73を通して直接ロケットエンジン装置50に供給される。飛行中に上段側燃料タンク41内の燃料及び上段側酸化剤タンク42内の酸化剤がなくなった時点で、燃料切換え弁63及び酸化剤切換え弁64が作動し、最下段燃料タンク21から燃料が第4燃料配管72を通してロケットエンジン装置50に供給される。同時に最下段酸化剤タンク22から酸化剤が第4酸化剤配管74を通して、ロケットエンジン装置50に供給される。その後、上段側ロケット機体49を分離させる。このようにすることで、上段側燃料タンク41内の燃料が最下段燃料タンク21を経由せずにロケットエンジン装置50に供給することができる。酸化剤も同様に、上段側酸化剤タンク42内の酸化剤は、最下段酸化剤タンク22を経由することなしに、ロケットエンジン装置50に供給することができる。
【実施例5】
【0027】
実施例5に係る多段ロケットを説明する。実施例1もしくは実施例2と燃料タンク及び酸化剤タンクの構成が異なる。
図8に示すように、実施例5に係る多段ロケットでは、最下段燃料タンク21の上端部と上段側燃料タンク41の下端部が直接接続されており、最下段酸化剤タンク22の上端部が上段側酸化剤タンク42の下端部と直接接続されている。上段側燃料タンク41内の燃料は、最下段燃料タンク21に直接供給される。上段側酸化剤タンク42内の酸化剤は、最下段酸化剤タンク22に直接供給される。最下段燃料タンク21内の燃料は、第5燃料配管75を通してロケットエンジン装置50に供給され、最下段酸化剤タンク22内の酸化剤は、第5酸化剤配管76を通してロケットエンジン装置50に供給される。このように構成することで、タンク間の配管を簡素化できる。またこの実施例では、衛星格納部31がロケットエンジン装置50と最下段燃料タンク21及び最下段酸化剤タンク22の間に設けられている。衛星格納部31は、実施例1〜実施例4についても同様に最下段のタンクとロケットエンジン装置50の間に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 フェアリング
2 衛星
3 第2段ロケット
4 第2段燃料タンク
5 第2段酸化剤タンク
6 第2段ロケット機体
7 第2段燃料配管
8 第2段酸化剤配管
9 第2段ロケットエンジン
13 第1段ロケット
14 第1段燃料タンク
15 第1段酸化剤タンク
16 第1段ロケット機体
17 第1段燃料配管
18 第1段酸化剤配管
19 第1段ロケットエンジン
21 最下段燃料タンク
22 最下段酸化剤タンク
24 第1燃料配管
25 第1酸化剤配管
26 第2燃料配管
27 第2酸化剤配管
29 最下段ロケット機体
31 衛星格納部
32 ノーズコーン
41 上段側燃料タンク
42 上段側酸化剤タンク
48 上段側ロケット機体部
49 上段側ロケット機体
50 ロケットエンジン装置
51 ロケットエンジン
61 第1燃料配管分離部
62 第1酸化剤配管分離部
63 燃料切換え弁
64 酸化剤切換え弁
71 第3燃料配管
72 第4燃料配管
73 第3酸化剤配管
74 第4酸化剤配管
75 第5燃料配管
76 第5酸化剤配管
101 ロケット打ち上げ時状態
102 ロケットフェアリング分離時状態
103 ロケット切り離し時状態
104 衛星分離時状態