【解決手段】本発明の第一の実施形態は、架橋ポリマーによって構成された非孔質の外殻と、前記外殻に内包された、シリカ粒子が連結された多孔質構造体とを含み、前記外殻の内径に対して、前記多孔質構造体の外径が70%以上であることを特徴とする多孔質構造内包粒子に関する。本発明の第二の実施形態は、シリカ湿潤ゲル内包粒子における湿潤ゲルの媒体を、20℃での表面張力が30mN/m以下の有機溶媒に置換した後に乾燥することにより、前記の粒子を製造する方法に関する。
前記架橋ポリマーが、90〜10重量%の、重合性官能基を1つ有する単官能単量体に由来する非架橋単位と、10〜90重量%の、重合性官能基を2以上有する架橋性単量体に由来する架橋単位を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質構造内包粒子。
前記媒体置換工程の後又は途中であって、前記乾燥工程よりも前に、前記粒子内の前記湿潤ゲル中のシリカ粒子を疎水化処理する疎水化工程を更に含む、請求項5又は6に記載の方法。
前記混合物が、ラジカル重合性官能基を1つ有する単官能単量体100重量部と、ラジカル重合性官能基を2以上有する架橋性単量体20〜80重量部と、シリコンアルコキシド60〜200重量部とを含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1及び特許文献1の記載の方法により、空隙の多いシリカの多孔質構造体を製造することができる。しかし、この多孔質構造体は、表面も多孔質構造であるため、バインダー樹脂等の他の成分と混合して使用する用途に用いる場合、他の成分が多孔質構造体の表面から内部に侵入し、性能が低下するという課題がある。
【0010】
また、特許文献2及び非特許文献2で得られる、シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子では、内包される構造体は空隙が少ないため熱伝導性が高く、断熱性という観点からはなお改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは検討を重ねた結果、架橋された非孔質ポリマーを外殻に持ち、その内部にシリカ粒子が連結した多孔質構造体(シリカエアロゲル)を内包する、多孔質構造内包粒子により上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の第一の実施形態は、
架橋ポリマーによって構成された非孔質の外殻と、
前記外殻に内包された、シリカ粒子が連結された多孔質構造体と
を含み、
前記外殻の内径に対して、前記多孔質構造体の外径が70%以上であることを特徴とする多孔質構造内包粒子に関する。
本実施形態に係る多孔質構造内包粒子は、内包する多孔質構造体の空隙部が多いため熱伝導率が低く、且つ、表面が非孔質の外殻に囲まれているため、バインダー樹脂等の他の成分と混合した場合に、他の成分による多孔質構造体への侵入が外殻により阻止され、多孔質構造体の機能を保持することができる。
本実施形態に係る多孔質構造内包粒子において、好ましくは、前記多孔質構造体の重量が、前記多孔質構造内包粒子の全重量の5〜50重量%の重量を有する。
本実施形態に係る多孔質構造内包粒子において、好ましくは、体積平均粒子径が0.5μm〜50μmである。
本実施形態に係る多孔質構造内包粒子において、好ましくは、前記架橋ポリマーが、90〜10重量%の、重合性官能基を1つ有する単官能単量体に由来する非架橋単位と、10〜90重量%の、重合性官能基を2以上有する架橋性単量体に由来する架橋単位を含む。
【0012】
本発明の第二の実施形態は、
上記の本発明の第一の実施形態に係る多孔質構造内包粒子の製造方法であって、
ラジカル重合性単量体とシリコンアルコキシドとを含む混合物を、油溶性ラジカル重合開始剤の存在下、水系媒体中で懸濁重合させることで、架橋ポリマーから構成される外殻を形成する重合工程と、
前記外殻の形成後又は外殻の形成と同時に前記外殻内で前記シリコンアルコキシドを縮合反応させてシリカの湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、
前記重合工程及び前記ゲル化工程を経て得られたシリカ湿潤ゲル内包粒子を、20℃における表面張力が30mN/m以下の有機溶媒により処理して、前記粒子内の前記湿潤ゲルの媒体を前記有機溶媒に置換する媒体置換工程と、
前記媒体置換工程後の前記粒子を乾燥して、多孔質構造内包粒子を得る乾燥工程と、
を含む方法に関する。
前記重合工程及び前記ゲル化工程を経て得られたシリカ湿潤ゲル内包粒子をそのまま乾燥させた場合にはシリカゲルは収縮して多孔質性が損なわれるのに対して、前記媒体置換工程後に乾燥を行う本実施形態に係る方法によれば、空隙部の多い多孔質構造体を内包する多孔質構造内包粒子を製造することができる。
本実施形態に係る方法において、好ましくは、前記有機溶媒が、アルコール又は炭化水素系溶媒である。
本実施形態に係る方法は、好ましくは、前記媒体置換工程の後又は途中であって、前記乾燥工程よりも前に、前記粒子内の前記湿潤ゲル中のシリカ粒子を疎水化処理する疎水化工程を更に含む。
本実施形態に係る方法において、好ましくは、前記混合物が、ラジカル重合性官能基を1つ有する単官能単量体100重量部と、ラジカル重合性官能基を2以上有する架橋性単量体20〜80重量部と、シリコンアルコキシド60〜200重量部とを含む。
【0013】
本発明の第三の実施形態は、
上記の本発明の第一の実施形態に係る多孔質構造内包粒子を含有する組成物に関する。
本実施形態に係る組成物は、多孔質構造内包による断熱性や、光の散乱性を利用した用途に用いることができる。
本実施形態に係る組成物は、好ましくは、塗料組成物、断熱性樹脂組成物、化粧料組成物、光拡散性樹脂組成物、又は、光拡散フィルムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一の実施形態に係る多孔質構造内包粒子は、非孔質の外殻の内部に多孔質構造のシリカゲルを含むため、熱伝導性が低く、且つ、他の成分と混合する用途に適している。
本発明の第二の実施形態に係る方法によれば、上記の効果を奏する多孔質構造内包粒子を製造することができる。
本発明の第三の実施形態に係る組成物は、断熱性、光の散乱性が求められる用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1.多孔質構造内包粒子>
多孔質構造内包粒子は、架橋ポリマーから構成される外殻と、外殻により区画された空洞とを備えている。また、多孔質構造内包粒子は、空洞の内部にシリカ粒子が互いに連結された多孔質構造体を含む。
【0017】
(1)外殻
架橋ポリマーは、外殻を構成できさえすればその種類は特に限定されない。架橋ポリマーとしては、ラジカル重合性単量体に由来するポリマーが挙げられ、具体的には、重合性官能基を1つ有する単官能単量体と、重合性官能基を2以上有する架橋性単量体との共重合体が挙げられる、重合性官能基は、好ましくはラジカル重合性官能基であり、特に好ましくはビニル基である。
【0018】
ビニル基を1つ有する単官能単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これらの単官能単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0019】
ビニル基を2つ以上有する架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリルエステル、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能アクリルアミド誘導体、ジアリルアミン、テトラアリロキシエタン等の多官能アリル誘導体、ジビニルベンゼン等の芳香族系ジビニル化合物等が挙げられる。これらの架橋性単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0020】
架橋ポリマーは、90〜10重量%の、重合性官能基を1つ有する単官能単量体に由来する非架橋単位と、10〜90重量%の、重合性官能基を2以上有する架橋性単量体に由来する架橋単位を含むことが好ましい。
【0021】
架橋ポリマーにおいて架橋性単量体は全単量体に対して10〜80重量%含まれることが好ましい。架橋性単量体の含有量が10重量部以上の場合、十分な強度を有する外殻が形成され易い。架橋性単量体の含有量が80重量部以下の場合、非孔質の外殻を形成し易く、多孔質構造内包粒子内部へのバインダー樹脂等の浸透を抑制し易い。非孔質の外殻を得るためには、架橋性単量体は全単量体に対して、より好ましくは20〜70重量%、更に好ましくは30〜55重量%である。
【0022】
(2)シリカからなる多孔質構造体
シリカ粒子が連結された多孔質構造体は、ナノサイズのシリカ粒子が互いに連結された構造体である。多孔質構造体は、複数のシリカ粒子の一部が互いに連結し、かつ未連結部において、シリカ粒子間にナノスケールの空隙が形成された構造を有する。
【0023】
更に、個々のシリカ粒子は、主としてSiO
2からなる。シリカ粒子は、例えば、シリカ前駆体をゲル化させることで得ることができる。シリカ前駆体としては、同一分子内に1つ以上のケイ素原子とアルコキシ基(例えば、炭素数1〜4)を有するシリコンアルコキシドが挙げられる。具体的には、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。シリコンアルコキシドはオリゴマーの形態であってもよい。例えば、テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマーであるメチルシリケートオリゴマー(三菱化学社製 商品名;MKCシリケート)、テトラエトキシシランの部分加水分解オリゴマーであるエチルシリケートオリゴマー(多摩化学社製 製品名;シリケート45(5量体)、シリケート48(10量体))、シロキサンオリゴマー等のオリゴマーが挙げられる。これらのシリカ前駆体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。この内、単量体のシリカ前駆体としてはテトラエトキシシランが好ましい。
【0024】
(3)多孔質構造内包粒子構造上の特徴
(a)外殻の内径に対する多孔質構造体の外径の割合
本明細書に開示する多孔質構造内包粒子は、外殻の内径に対して、多孔質構造体の外径が70%以上であることを特徴とする。この特徴を有する多孔質構造内包粒子は、多孔質構造体が多くの空隙を含むため、熱伝導性が低く断熱材として適している。また、光散乱性も高い。外殻の内径に対する多孔質構造体の外径の比率は、より好ましくは80%以上である。
外殻の内径に対する多孔質構造体の外径の比率が上記範囲である場合、1つの外殻に内包される多孔質構造体は、通常は1個である。
多孔質構造内包粒子における外殻の内径に対する多孔質構造体の外径の比率の測定方法は実施例に記載の通りである。
【0025】
(b)多孔質構造体の比率
本明細書に開示する多孔質構造内包粒子において、多孔質構造体は、多孔質構造内包粒子の全重量の5〜50%の重量を有していることが好ましい。多孔質構造体の重量が5重量%以上であることで、シリカ粒子による多孔質の構造が十分である。また、多孔質構造体の重量が50重量%以下であることで、相対的に外殻の割合が高く十分な強度が付与される。多孔質構造体は、多孔質構造内包粒子の全重量の10〜45%の重量を有していることが更に好ましい。
【0026】
(c)体積平均粒子径
本明細書に開示する多孔質構造内包粒子は、体積平均粒子径が好ましくは0.5μm〜100μmであり、より好ましくは0.5〜50μmである。体積平均粒子径がこの範囲である多孔質構造内包粒子は製造が容易である。
多孔質構造内包粒子の体積平均粒子径の測定方法は実施例に記載の通りである。
【0027】
(d)外殻の厚さ
本明細書に開示する多孔質構造内包粒子において、外殻の厚さは、粒子径に対して好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜30%であることができる。この範囲であることで、外殻が十分な強度を有し、且つ、シリカの多孔質構造による特性を発現することができる。
【0028】
<2.多孔質構造内包粒子の製造方法>
上記の特徴を有する多孔質構造内包粒子の製造方法は、好ましくは、
ラジカル重合性単量体とシリコンアルコキシドとを含む混合物を、油溶性ラジカル重合開始剤の存在下、水系媒体中で懸濁重合させることで、架橋ポリマーから構成される外殻を形成する重合工程と、
前記外殻の形成後又は外殻の形成と同時に前記外殻内で前記シリコンアルコキシドを縮合反応させてシリカの湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、
前記重合工程及び前記ゲル化工程を経て得られたシリカ湿潤ゲル内包粒子を、20℃における表面張力が30mN/m以下の有機溶媒により処理して、前記粒子内の前記湿潤ゲルの媒体を前記有機溶媒に置換する媒体置換工程と、
前記媒体置換工程後の前記粒子を乾燥して、多孔質構造内包粒子を得る乾燥工程と、
を含む。
【0029】
(1)重合工程
重合工程では、まず、ラジカル重合性単量体とシリカ前駆体であるシリコンアルコキシドとを含む混合物を水性媒体中に乳化により分散させる。なお、単量体の使用量と、外殻を構成する単量体由来成分の含有量は、実質的に一致する。
【0030】
前記混合物は、好ましくは、ラジカル重合性官能基を1つ有する単官能単量体100重量部と、ラジカル重合性官能基を2以上有する架橋性単量体20〜80重量部と、シリコンアルコキシド60〜200重量部とを含む
乳化分散は、特に限定されず、所望の粒径の多孔質構造内包粒子が得られるように、撹拌速度、撹拌時間等の諸条件を適宜調整しつつ行われる。
【0031】
単量体の重合は、ラジカル重合開始剤の存在下で行われる。ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジメチルビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(tert−ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレラート、2−エチルヘキサンペルオキシ酸tert−ブチル、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルカプロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−エトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−n−ブトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0032】
ラジカル重合開始剤は、前記混合物中に、単量体100重量部に対して、0.05〜5重量部含まれていることが好ましい。
【0033】
水性媒体としては、例えば、水、水と水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合溶媒等が挙げられる。
【0034】
また、重合は、非反応性有機溶剤の存在下で行ってもよい。非反応性有機溶剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,4−ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらの非反応性有機溶剤を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0035】
非反応性溶媒の添加量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して、0〜300重量部である。300重量部を超えると、外殻の形成が不十分となることがある。
【0036】
本発明において、非多孔性の外殻を有する多孔質構造内包粒子を得るには、単量体100重量部に対し、非反応性有機溶媒を10〜50重量部の範囲で用いればよい。用いる溶媒の種類にもよるが50重量部以下であると、非孔質の外殻を有する多孔質構造内包粒子が得られやすくなる。
【0037】
更に、重合は、シランアルコキシド等のシリカ前駆体と比較し、加水分解性の高いチタン、ジルコニウム又はアルミニウムのアルコキシド化合物の存在下で行うこともできる。これらのアルコキシド化合物は、シランアルコキシドのようなシリカ前駆体よりも加水分解性が高いため、外殻内でゲル化し、シリカ前駆体の外殻内での移動を抑制して、多孔質構造体の多孔質化を促進する効果があると考えられる。
【0038】
チタンのアルコキシド化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス−(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエステルチタネート、ジイソプロポキシビス8アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアルミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0039】
ジルコニウムのアルコキシド化合物としては、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ジルコニウムラクテート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート等が挙げられる。
【0040】
アルミニウムのアルコキシド化合物としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(アルキルの炭素数は1〜20)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
これらのアルコキシド化合物を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0041】
アルコキシド化合物の添加量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して、10重量部以下である。10重量部を超えると、単量体混合物を水系媒体中に懸濁・乳化する際に十分な液滴の分散安定性を保持できないため、粒子が得られないことがある。
【0042】
次に、乳化分散させた前記混合物の乳化液を重合に付すことで、架橋性ポリマーから構成される外殻と、外殻に内包されたシリカ前駆体とを含む粒子が分散した乳化液が得られる。重合は、特に限定されず、混合物に含まれる単量体及び重合開始剤の種類に応じて、重合温度、重合時間等の諸条件を適宜調整しつつ行われる。例えば、重合温度を30〜80℃、重合時間を1〜20時間とすることができる。
【0043】
(2)ゲル化工程
ゲル化工程では、乳化液中に存在する粒子の外殻内において、シリカ前駆体であるシリコンアルコキシドが縮合反応によりゲル化してシリカ膨潤ゲルを形成し、シリカ湿潤ゲル内包粒子が得られる。
【0044】
縮合反応は、乳化液を酸性(例えば、pH7以下、具体的にはpH1〜5)又はアルカリ性(例えば、pH7以上、具体的にはpH10〜14)に維持しつつ行うことが好ましく、酸性条件で縮合反応をさせた後、アルカリ性条件化でさらに縮合反応させることがより好ましい。酸性の維持は、塩酸、酢酸等の酸を乳化液に添加することによって行うことができる。酸の添加量は、シリカ前駆体に対して、1〜10等量であることが好ましい。アルカリ性の維持は、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を乳化液に添加することによって行うことができる。塩基の添加量は、シリカ前駆体に対して、1〜10等量であることが好ましい。
【0045】
ゲル化工程は、特に限定されず、シリカ前駆体であるシリコンアルコキシドが縮合反応によりゲル化してシリカ粒子となるために必要な条件(ゲル化のための温度、時間、撹拌速度等)下で行うことができる。例えば、反応温度を5〜80℃、反応時間を1〜24時間とすることができる。
【0046】
(3)媒体置換工程
媒体置換工程では、前記重合工程及び前記ゲル化工程を経て得られたシリカ湿潤ゲル内包粒子を、20℃における表面張力が30mN/m以下の有機溶媒により処理して、前記粒子内の前記湿潤ゲルの媒体を前記有機溶媒に置換する。
【0047】
本発明者らは、シリカ湿潤ゲル内包粒子をそのまま乾燥させた場合にはシリカゲルは収縮して多孔質性が損なわれるのに対して、媒体置換工程を行うことにより、空隙部の多い多孔質構造体を内包する多孔質構造内包粒子を製造することができることを見出した。
【0048】
20℃における表面張力が30mN/m以下の有機溶媒は、20℃での表面張力がこの範囲である有機溶媒であればよく、特に限定されないが、例えばアルコール又は炭化水素系溶媒であることができる。有機溶媒の表面張力は例えば文献「溶剤ハンドブック(講談社)」を参照できる(例えば、エタノールは22.27mN/m、トルエンは28.53mN/m)。
【0049】
媒体置換の方法は特に限定されない。例えば、シリカ湿潤ゲル内包粒子を、前記有機溶媒中に浸漬することにより、粒子内の湿潤ゲルの媒体を前記有機溶媒に置換することができる。
【0050】
(4)乾燥工程
乾燥工程は、媒体置換されたシリカ湿潤ゲルを内包する粒子を乾燥して、シリカ粒子が連結された多孔質構造体を内包する目的とする粒子を得る工程である。
乾燥工程の前に、必要に応じて、乳化液から粒子を分離するための遠心分離、洗浄等の工程を行ってもよい。
【0051】
(5)疎水化工程
本実施形態に係る多孔質構造内包粒子の製造方法は、好ましくは、媒体置換工程の後又は途中であって、乾燥工程よりも前に、粒子内の湿潤ゲル中のシリカ粒子を疎水化処理する、疎水化工程を更に含む。
【0052】
疎水化工程を行うことで、乾燥工程を経て得られる多孔質構造内包粒子中の多孔質構造体の多孔質化を促進することができる。また、疎水化工程を行う場合は、ゲル化工程において酸性条件での縮合反応を行い、アルカリ性条件での縮合反応を行わない場合でも、空隙の多いシリカの多孔質構造体が得られ易い。
【0053】
疎水化処理とは、湿潤ゲル中のシリカ粒子の表面を、有機シラン、シリコーンオイル等の疎水化処理剤により表面処理して疎水化する処理である。
【0054】
疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロロエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、加水分解性基含有シロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の有機シランや、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル(アルキルは、例えば炭素数1〜3)、γ−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル等のシリコーンオイル等が挙げられる。
【0055】
疎水化処理剤での表面処理はどのような方法で行っても良い。例えば、前記媒体置換工程の後又は途中であって、前記乾燥工程よりも前の、シリカ湿潤ゲル内包粒子を、20℃における表面張力が30mN/m以下の有機溶媒中に疎水化処理剤を溶解した溶液中に浸漬することで、湿潤ゲル中のシリカ粒子を疎水化処理することができる。
【0056】
<3.用途>
多孔質構造内包粒子は、化粧料組成物、塗料組成物、断熱性樹脂組成物、光拡散性樹脂組成物、光拡散フィルム等の用途で使用できる。
【0057】
(1)化粧料組成物
化粧料組成物は、多孔質構造内包粒子を1〜40重量%の範囲で含んでいることが好ましい。
化粧料組成物としては、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品、化粧水、クリーム、乳液、パック類、おしろい類、ファンデーション、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品、マニキュア化粧品、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、歯磨き、浴用剤、制汗剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用化粧料、ひげ剃り用クリーム、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、ボディローション等のローション等が挙げられる。
【0058】
(2)塗料組成物、断熱性樹脂組成物、光拡散性樹脂組成物
多孔質構造内包粒子を含む塗料組成物、断熱性樹脂組成物又は光拡散性樹脂組成物は、必要に応じて、バインダー樹脂、UV硬化性樹脂、溶剤等を含み得る。バインダー樹脂としては、有機溶剤又は水に可溶な樹脂もしくは水中に分散できるエマルション型の水性樹脂を使用できる。
【0059】
バインダー樹脂又はUV硬化性樹脂及び多孔質構造内包粒子の添加量は、形成される塗膜の膜厚、多孔質構造内包粒子の平均粒子径及び塗装方法によっても異なる。バインダー樹脂の添加量は、バインダー樹脂(エマルジョン型の水性樹脂を使用する場合は固形分)と多孔質構造内包粒子との合計に対して5〜50重量%が好ましい。より好ましい含有量は10〜50重量%であり、更に好ましい含有量は20〜40重量%である。
【0060】
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられ、UV硬化性樹脂としては多価アルコール多官能(メタ)アクリレート等のような多官能(メタ)アクリレート樹脂;ジイソシアネート、多価アルコール、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等から合成されるような多官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0061】
UV硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
UV硬化性樹脂を用いる場合には、通常光重合開始剤が併用される。光重合開始剤は、特に限定されない。
【0062】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号公報等に記載)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α−アシルオキシムエステル等が挙げられる。
これらバインダー樹脂又はUV硬化性樹脂は、塗装される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0063】
溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂又はUV硬化性樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水系塗料であれば、水、アルコール類等が使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。多孔質構造内包粒子を含む組成物中の溶剤含有量は、組成物全量に対し、通常20〜60重量%程度である。
【0064】
多孔質構造内包粒子を含む組成物には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0065】
多孔質構造内包粒子を含む組成物を使用した塗膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の方法、及び薄層としてフィルム等基材にコーティングするにはコーティングリバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法が挙げられる。多孔質構造内包粒子を含む組成物は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0066】
多孔質構造内包粒子を含む組成物を基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、塗膜を形成できる。なお、塗料組成物を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、PET、PC、アクリル等の透明基材にコーティングして用いることもできる。
【0067】
(3)光拡散フィルム
多孔質構造内包粒子を含む光拡散フィルムは、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に、多孔質構造内包粒子を含む前記光拡散性組成物による光拡散層を形成したものである。用途によって異なるが、前記基材上に前記光拡散性組成物による光拡散層が単独で配置されていてもよいし、前記基材上に他の層、例えば保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて、前記光拡散性組成物による光拡散層が配置されていてもよい。なお、前記光拡散層と他の層とを組み合わせて基材上に配置する場合、光拡散層が必ずしも最外表面に位置している必要はない。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、実施例中の測定方法について説明する。
【0069】
(SEM観察)
(粒子表面観察)
試料台に導電性テープを貼り付け、その上に粒子を搭載した。メイワフォーシス社製「オスミウムコータ Neoc−Pro」コーティング装置を用いて、粒子の表面処理(10Pa,5mA,10秒)を行った。次いで、試料を日立ハイテクノロジーズ社製「SU1510」走査電子顕微鏡の二次電子検出器を用いて、粒子表面外観を撮影した。
(粒子断面観察)
粒子を光硬化性樹脂D−800(日本電子社製)と混合し、紫外光を照射することで硬化物を得た。その後、硬化物をニッパーで裁断し、断面部分をカッターを用いて平滑に加工し、メイワフォーシス社製「オスミウムコータ Neoc−Pro」コーティング装置を用いて、表面処理(10Pa,5mA,10秒)を行った。次いで、試料を日立ハイテクノロジーズ社製「SU1510」走査電子顕微鏡の二次電子検出器を用いて、粒子断面を撮影した。
(FE−SEM観察)
試料を樹脂包埋後、日本電子(株)「IB−19500CP」断面作成装置を用いて試料断面を加工した。メイワフォーシス製「Neoc−Pro ネオオスミウムコーター」を用いて、試料をコーティングした。次いで、試料を(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU8020 Type II」電界放出型走査電子顕微鏡のUPPER二次電子検出器を用いて、撮影した。
【0070】
(外殻の内径に対しての多孔質構造体外径の比率の算出)
前記(粒子断面観察)と同様の方法にて粒子の断面を観察し、体積平均粒子径付近の任意の粒子に対して、外殻内径と、内包される多孔質構造体(シリカ多孔質粒子)の外径(シリカ多孔質粒子の粒子径)を測定し、外殻の内径に対しての多孔質構造体外径の比率を算出した。これを10個の粒子に対して行い、その平均値を算出した。
【0071】
(熱伝導率の測定)
粒子と常温硬化型シリコーンゴムTSE389C(モメンティブジャパン製)を粒子重量分率38.1wt%となるよう配合し、脱泡機AR−100(THINKY製)で混合・脱泡を行った。この混合物をΦ10mm、厚さ2mmの型枠に入れ、50℃5時間の条件で硬化させ測定用試料を得た。得られた測定用試料の直径、厚さ、重量を測定し、密度を算出した。
【0072】
次いでこの測定用試料を熱拡散率測定機TC−7000(アドバンス理工製)を用いて熱拡散率の測定(サンプル間隔60秒、AMP感度50uV、サンプリング回数3回)と比熱の測定(サンプル間隔60秒、Cpサンプリング時間60秒、CpAMP感度50uV、サンプリング回数3回)を行った。得られた密度の算出値、熱拡散率・比熱それぞれの測定値を掛け合わせることで熱伝導率を算出した。
【0073】
(体積平均粒子径の測定)
多孔質構造内包粒子の体積平均粒子径は次の方法で測定することができる。多孔質構造内包粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizer
TM3(ベックマン・コールター社製測定装置)により測定した。測定は、ベックマン・コールター社発行のMultisizer
TM3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択する等、適宜行った。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行った。
また、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μm及び400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−3200、Gain(ゲイン)は1と設定した。
測定用試料としては、多孔質構造内包粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONICCLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均とした。
【0074】
[実施例1]
メタクリル酸メチル2.5g、エチレングリコールジメタクリレート2.5g、オルト珪酸テトラエチル5.0g、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.025gを混合し、油相とした。次に、イオン交換水29.52g、ゴーセノールGH−05 0.48g(株式会社三菱ケミカルホールディングス)を混合し、水相とした。水相に油相を加え、ホモミキサーで撹拌し、懸濁液を得た。この懸濁液を反応容器に移し、容器内の空気を窒素置換した後、50℃、7時間の条件で加熱することで重合を行った。得られたスラリーに20wt%塩酸水溶液4gを加え、常温で16時間撹拌した後、25wt%アンモニア水溶液2.38gを加え、50℃3時間の条件で加熱撹拌を行うことで、シリカの縮合反応を行った。得られたスラリーを高速遠心分離機にかけ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後、沈降粒子をエタノールに再分散し、50℃6時間の条件で加熱撹拌する工程を4回繰り返し、粒子分散媒をエタノールに置換した。このエタノール分散液を70℃、24時間加熱することで乾燥粉体を得た。
【0075】
得られた多孔質構造内包粒子の外観のSEM観察結果を
図1(1)に、断面のSEM観察結果を
図1(2)に、内包されるシリカ多孔質粒子の断面のFE−SEM写真を
図1(3)にそれぞれ示す。得られた粒子の外殻は非孔質であり、体積平均粒子径は11.67μm、外殻の内径に対しての内包シリカ多孔質粒子の外径の比率は91.7%であった。また、熱伝導率は0.216W/m・Kであった。
【0076】
[実施例2]
エタノールへの置換工程よりも前までの操作を実施例1と同様に行い、その後、実施例1のエタノール置換と同様の操作でトルエンへと媒体置換し、媒体置換後に実施例1と同様に加熱乾燥することにより、多孔質構造内包粒子を得た。得られた多孔質構造内包粒子の外観のSEM観察結果を
図2(1)に、断面のSEM観察結果を
図2(2)にそれぞれ示す。得られた粒子の外殻は非孔質であり、体積平均粒子径は11.48μm、外殻の内径に対しての内包シリカ多孔質粒子の外径の比率は85.1%であった。
【0077】
[実施例3]
重合工程までは実施例1と同様の操作を行い、得られたスラリーに20wt%塩酸水溶液4gを加え、常温で16時間撹拌することでシリカの縮合反応を行った。その後、実施例2と同様の手法にてトルエンへの媒体置換を行った。得られたスラリーに、全体の5wt%相当量のヘキサメチルジシロキサンを添加し、50℃、12時間の条件で撹拌した後、媒体をトルエン置換して未反応のヘキサメチルジシロキサンを除去した後に、実施例1と同様に加熱乾燥することで多孔質構造内包粒子を得た。得られた多孔質構造内包粒子の外観のSEM観察結果を
図3(1)に、断面のSEM観察結果を
図3(2)にそれぞれ示す。得られた粒子の外殻は非孔質であり、体積平均粒子径は11.53μm、外殻の内径に対しての内包シリカ多孔質粒子の外径の比率は86.1%であった。
【0078】
[実施例4]
メタクリル酸メチル4.5g、エチレングリコールジメタクリレート0.5g、オルト珪酸テトラエチル3.0g、ヘプタン2.0g、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.025gを混合し、油相とし、その他は実施例1と同様の手法で多孔質構造内包粒子を得た。得られた粒子の外観および断面のSEM観察結果を
図4に示す。得られた粒子の外殻は非孔質であった。得られた多孔質構造内包粒子の外観のSEM観察結果を
図4(1)に、断面のSEM観察結果を
図4(2)にそれぞれ示す。得られた粒子の外殻は非孔質であり、体積平均粒子径は12.9μm、外殻の内径に対しての内包シリカ多孔質粒子の外径の比率は83.1%であった。
【0079】
[比較例1]
シリカの縮合反応工程までは実施例1と同様の操作を行い、その後媒体置換を行うことなく乾燥させることで多孔質構造内包粒子を得た。得られた多孔質構造内包粒子の外観のSEM観察結果を
図5(1)に、断面のSEM観察結果を
図5(2)にそれぞれ示す。得られた粒子の外殻は非孔質であり、体積平均粒子径は11.51μm、外殻の内径に対しての内包シリカ多孔質粒子の外径の比率は61.5%であった。また、熱伝導率は0.221W/m・Kであった。
【0080】
[比較例2]
非特許文献1(名古屋工業大学先進セラミックス研究センター年報 Vol.5 ページ12−20 2017年)を参考にシリカエアロゲルを作製した。得られたシリカエアロゲルのFE−SEM観察結果を
図6に示す。表面は多孔質構造であった。