特開2021-155415(P2021-155415A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-1554152−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を用いた2型糖尿病、または肥満、または過体重の治療
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  • 特開2021155415-2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を用いた2型糖尿病、または肥満、または過体重の治療 図000020
  • 特開2021155415-2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を用いた2型糖尿病、または肥満、または過体重の治療 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-155415(P2021-155415A)
(43)【公開日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を用いた2型糖尿病、または肥満、または過体重の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20210910BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20210910BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20210910BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20210910BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210910BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210910BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20210910BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20210910BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20210910BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
   A61K31/4545
   A61K9/20
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61K47/38
   A61K47/26
   A61K47/36
   A61K47/12
   A61K47/14
   A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2021-49350(P2021-49350)
(22)【出願日】2021年3月24日
(31)【優先権主張番号】63/000787
(32)【優先日】2020年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】63/126113
(32)【優先日】2020年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】63/135870
(32)【優先日】2021年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】カイ テック リー
(72)【発明者】
【氏名】スウェタ マンセナ
(72)【発明者】
【氏名】アディティ ラオ サクセナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD41C
4C076DD47C
4C076DD67
4C076DD67A
4C076EE16B
4C076EE31
4C076EE31A
4C076EE38B
4C076FF06
4C076FF33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA70
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】T2DM、肥満、過体重などの、心血管代謝および関連疾患のための安全かつ有効な治療が依然として求められている。
【解決手段】本発明は、それを必要とする哺乳動物(たとえばヒト)に、医薬組成物を経口剤形として1日2回投与することによってT2DM、肥満、もしくは過体重を治療する、または体重管理をコントロールする方法であって、医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩[たとえば、そのトリス塩]を含有する、方法を提供する。さらに、本発明は、本明細書に記載する治療方法のための経口組成物/製剤も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T2DMを治療する方法であって、それを必要とするヒトに医薬組成物を投与することを含み、
医薬組成物が、経口剤形であり、
医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を含む、
方法。
【請求項2】
医薬組成物が即時放出固体剤形である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物が即時放出錠剤剤形である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を、約10mg〜約140mgの2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸と同等の量で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
医薬組成物中の2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸のトリス塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物が1日2回投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1日2回の投与が少なくとも約8時間隔てられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
D2TMを治療することが、血糖コントロールを改善することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
体重管理をコントロールする、または肥満もしくは過体重を治療する方法であって、それを必要とするヒトに医薬組成物を投与することを含み、
医薬組成物が、固体経口剤形であり、
医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を含む、
方法。
【請求項10】
医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を、約10mg〜約140mgの2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸と同等の量で含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
医薬組成物が1日2回投与される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
1日2回の投与が少なくとも約8時間隔てられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を含む即時放出経口医薬組成物。
【請求項14】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸または薬学的に許容できるその塩、
充填剤、
崩壊剤、および
滑沢剤
を含む即時放出経口医薬組成物。
【請求項15】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸または薬学的に許容できるその塩が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸のトリス塩であり、
充填剤が、微結晶性セルロース、ラクトース、またはこれらの組合せを含み、
崩壊剤が、デンプングリコール酸ナトリウムであり、
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムである、
請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸または薬学的に許容できるその塩が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸のトリス塩であり、
充填剤が、微結晶性セルロース、ラクトース、またはこれらの組合せを含み、
崩壊剤が、クロスポビドンであり、
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムである、
請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸または薬学的に許容できるその塩が、約1.0重量%〜約35.0重量%を占め、
充填剤が、約60重量%〜約95重量%を占め、
崩壊剤が、約1.0重量%〜約5.0重量%を占め、
滑沢剤が、約0.2重量%〜約2.5重量%を占める、
請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸のトリス塩を、約10mg〜約120mgの2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸と同等の量で含む、請求項13から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
T2DMの治療または体重管理のコントロールにおいて使用するための、請求項13から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
1日2回の投与によって使用される、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それを必要とする哺乳動物(たとえばヒト)に、医薬組成物を経口剤形として1日2回投与することによって2型真性糖尿病、肥満、もしくは過体重を治療する、または体重管理をコントロールする方法であって、医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩[たとえば、そのトリス塩としても知られるその2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール塩]を含有する、方法を提供する。さらに、本発明は、本明細書に記載する治療方法のための経口組成物/製剤も提供する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病は、その罹患率および関連する健康リスクが高まっているため、重大な公衆衛生上の懸念である。この疾患は、インスリン産生、インスリン作用、または両方に欠陥があるために生じる、高い血中グルコースレベルを特徴とする。真性糖尿病の二大形態である1型と2型が識別される。1型真性糖尿病(T1DM)は、血中グルコースを調節するインスリンホルモンを作る身体で唯一の細胞である膵ベータ細胞が身体の免疫系によって破壊されると発症する。1型糖尿病の患者は、生存するために、注射またはポンプによるインスリン投与を受けなければならない。2型真性糖尿病(一般にT2DMと呼ばれる)は、インスリン抵抗性、および許容されるグルコースレベルを維持するのに不十分なインスリン産生の結果として起こるのが普通である。
【0003】
現在、T2DMにおける高血糖を治療するのに、種々の薬理学的手法が利用可能である(Hampp,C.ら、Use of Antidiabetic Drugs in the U.S.、2003〜2012、Diabetes Care 2014、37、1367〜1374)。そうした手法は、それぞれ異なる主機序によって作用する6つの主要なクラス、インスリン分泌促進物質、ビグアナイド、アルファグルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジンジオン(TZD)、インスリン、およびナトリウムグルコース共輸送体2(sodium−glucose linked transporter cotransporter2)(SGLT2)阻害薬にグループ分けすることができる。(A)インスリン分泌促進物質には、スルホニル尿素(たとえば、グリピジド、グリメピリド、グリブリド)、メグリチニド(たとえば、ナテグリジン(nateglidine)、レパグリニド)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害薬(たとえば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、デュトグリプチン(dutogliptin)、リナグリプチン、サキソグリプチン(saxogliptin))、およびグルカゴン様ペプチド1受容体(GLP−1R)アゴニスト(たとえば、リラグルチド、アルビグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド、セマグルチド)が含まれ、これらは、膵ベータ細胞に作用して、インスリンの分泌を増強する。スルホニル尿素およびメグリチニドは、有効性および忍容性が限定的であり、体重増加を引き起こし、しばしば低血糖を誘発する。DPP−IV阻害薬は、有効性が限定的である。市販されているGLP−1Rアゴニストは、主として皮下注射によって投与されるペプチドである。リラグルチドは、肥満の治療についても付加的に承認されている。(B)ビグアナイド(たとえば、メトホルミン)は、主として肝臓のグルコース産生を減少させることにより作用すると考えられている。ビグアナイドは、しばしば、胃腸障害および乳酸アシドーシスを引き起こすため、その使用はさらに限定的になる。(C)アルファ−グルコシダーゼの阻害薬(たとえば、アカルボース)は、腸のグルコース吸収を低下させる。こうした薬剤は、しばしば、胃腸障害を引き起こし、かつ/または効果が限定的である。(D)チアゾリジンジオン(たとえば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)は、肝臓、筋肉、および脂肪組織において特定の受容体(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ)に作用する。これらは、脂質代謝を調節し、続いて、インスリンの作用に対するこうした組織の反応を増強する。こうした薬物の頻繁な使用は、体重増加につながる場合もあり、浮腫および貧血を誘発する場合もある。(E)インスリンは、より重篤な症例において、単独で、または上記薬剤と組み合わせて使用され、頻繁な使用は、体重増加につながる場合もあり、低血糖のリスクを伴う。(F)ナトリウムグルコース共輸送体2(sodium−glucose linked transporter cotransporter2)(SGLT2)阻害薬(たとえば、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、エルツグリフロジン)は、腎臓におけるグルコースの再吸収を阻害し、それによって、血中のグルコースレベルを低下させる。この台頭しつつあるクラスの薬物は、ケトアシドーシスおよび尿路感染症と関連付けられる場合がある。
【0004】
しかし、薬物は、GLP−1RアゴニストおよびSGLT2阻害薬を除けば、有効性が限定的であり、最も重要な問題である、衰えゆくβ細胞機能および関連する肥満には対処していない。
【0005】
過度の貯蔵脂肪の蓄積は、運動、柔軟性に障害を生じさせ、身体の外見を変えることがある。過体重も肥満も、健康上の問題に関連し、または健康上の問題を引き起こす場合がある。
【0006】
肥満は、現代社会において高度に蔓延し、高血圧、高コレステロール血症、および冠動脈心疾患を含む数多くの医学的問題と関連付けられている慢性疾患である。肥満はさらに、T2DMおよびインスリン抵抗性と強く相関し、インスリン抵抗性には、一般に、高インスリン血症もしくは高血糖または両方が伴う。加えて、T2DMは、冠動脈疾患の2〜4倍のリスク増と関連付けられている。現在、肥満を高い有効性で治療する唯一の治療法は、肥満外科手術であるが、この治療は、観血的であり、費用がかかる。薬理学的介入は、一般に、それほど有効でなく、副作用を伴う。したがって、副作用がより少なく、投与が簡便である、より有効な薬理学的介入が求められていることは明らかである。
【0007】
T2DMは、高血糖およびインスリン抵抗性と最も一般的に関連付けられているとはいえ、T2DMと関連付けられる他の疾患、状態、症状、および合併症として、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、肥満、異脂肪血症、高血圧、高インスリン血症、および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、心血管疾患、およびがんリスクの増大が挙げられる。
【0008】
NAFLDは、メタボリック症候群の肝性症状発現であり、脂肪変性、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維化、硬変、および最終的には肝細胞癌を含む範囲の肝臓状態である。NAFLDおよびNASHは、肝臓脂質の上昇を示す個体の最も高い割合を占めるので、主要な脂肪性肝疾患であると考えられる。NAFLD/NASHの重症度は、脂質、炎症性細胞浸潤巣、肝細胞風船化の存在、および線維化の度合いに基づく。脂肪変性を有する個体がすべてNASHに進行するとは限らないものの、かなりの割合がNASHに進行する。
【0009】
GLP−1は、食物の摂取に応じて腸内でL細胞によって分泌される、30アミノ酸長のインクレチンホルモンである。GLP−1は、生理的かつグルコース依存的にインスリン分泌を刺激し、グルカゴン分泌を減少させ、胃内容排出を阻害し、食欲を低下させ、ベータ細胞の増殖を刺激することが示されている。非臨床実験において、GLP−1は、グルコース依存的なインスリン分泌に重要な遺伝子の転写を刺激し、ベータ細胞新生を促進することにより、ベータ細胞反応能の継続を促進している(Meierら、Biodrugs.2003;17(2):93〜102)。
【0010】
健康な個体において、GLP−1は、膵臓によるグルコース依存的なインスリン分泌を刺激し、結果として末梢におけるグルコース吸収を増加させることにより、食後血中グルコースレベルを調節する重要な役割を果たす。GLP−1はまた、グルカゴン分泌を抑制し、肝臓グルコース産出を減少させる。加えて、GLP−1は、胃内容排出を遅らせ、小腸運動性を緩慢にして食物吸収を遅らせる。T2DMの患者では、GLP−1の正常な食後上昇が存在しない、または弱まっている(Vilsboll Tら、Diabetes.2001.50;609〜613)。
【0011】
Holst(Physiol.Rev.2007、87、1409)およびMeier(Nat.Rev.Endocrinol.2012、8、728)は、GLP−1、リラグルチド、エキセンディン4などのGLP−1受容体アゴニストが、T2DM患者において、空腹時および食後グルコース(FPGおよびPPG)を下げることにより血糖コントロールを改善する3大薬理活性、すなわち、(i)グルコース依存的なインスリン分泌の増加(第1および第2相の改善)、(ii)高血糖条件下でのグルカゴン抑制活性、(iii)食事由来グルコースの吸収の減速につながる胃内容排出速度の遅延を示すことを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第10,208,019号
【特許文献2】国際出願第PCT/IB2011/054119号
【特許文献3】米国特許第8,859,577号
【特許文献4】国際PCT出願第PCT/IB2018/058966号
【特許文献5】米国特許第10,071,992号
【特許文献6】米国特許第9,809,579号
【特許文献7】米国特許第9,150,568号
【特許文献8】米国特許第4,485,045号
【特許文献9】米国特許第5,013,556号
【特許文献10】米国特許第3,773,919号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Hampp,C.ら、Use of Antidiabetic Drugs in the U.S.、2003〜2012、Diabetes Care 2014、37、1367〜1374
【非特許文献2】Meierら、Biodrugs.2003;17(2):93〜102
【非特許文献3】Vilsboll Tら、Diabetes.2001.50;609〜613
【非特許文献4】Holst(Physiol.Rev.2007、87、1409)
【非特許文献5】Meier(Nat.Rev.Endocrinol.2012、8、728)
【非特許文献6】European Pharmacopeia 6.0、第01部/2008:1502
【非特許文献7】StahlおよびWermuthによるHandbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Wiley−VCH、2002)
【非特許文献8】K.R.MorrisによるPolymorphism in Pharmaceutical Solids(H.G.Brittain編、Marcel Dekker、1995)
【非特許文献9】O.AlmarssonおよびM.J.ZaworotkoによるChem Commun、17、1889〜1896(2004)
【非特許文献10】HaleblianによるJ Pharm Sci、64(8)、1269〜1288(1975年8月)
【非特許文献11】N.H.HartshorneおよびA.StuartによるCrystals and the Polarizing Microscope、第4版(Edward Arnold、1970)
【非特許文献12】A.C.L.M.CarvahoらによるInt J Mol Sci 29682〜29716(2015)
【非特許文献13】Smith,Roger M.、Loughborough University、英国ラフバラ、Chromatographic Science Series(1998)、75(SFC with Packed Columns)、223〜249頁
【非特許文献14】E.L.ElielおよびS.H.WilenによるStereochemistry of Organic Compounds(Wiley、1994)
【非特許文献15】Hoover,John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、ペンシルヴェニア州イーストン、1975
【非特許文献16】Libermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、ニューヨーク州ニューヨーク、1980
【非特許文献17】Kibbeら編、Handbook of Pharmaceutical Excipients(第3版)、American Pharmaceutical Association、ワシントン、1999
【非特許文献18】Remington,The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
T2DM、肥満、過体重などの、心血管代謝および関連疾患のための安全かつ有効な治療が依然として求められている。
【0015】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩[たとえば、そのトリス塩またはそのトリス(ヒドロキシエチル)メチルアミン塩としても知られるその2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール塩]は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に援用される米国特許第10,208,019号(この特許の実施例4A−01を参照されたい)に記載されているGLP−1Rアゴニストである。
【0016】
【化1】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸(「化合物1」)
【0017】
2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸のトリス塩とは、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミンを使用して生成される化合物1の塩を意味する。トリスは、化合物1のカルボン酸部分と会合する。別段明記しない限り、化合物1のトリス塩に言及するとき、対イオンと化合物1は、約1:1(すなわち、0.9:1.0〜1.0:0.9、たとえば、0.95:1.00〜1.00:0.95、または0.99:1.00〜1.00:1.01)の化学量論比にある。化合物1のトリス塩の別の化学名は、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボキシレートであり、たとえば、次の構造の一方によって表すこともできる。
【0018】
【化2】
【0019】
本明細書に記載する新規の治療方法および組成物/製剤は、これおよび他の重要な目的を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、一部において、T2DMを治療する方法であって、それを必要とするヒトに医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、経口剤形であり、医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を含む、方法を提供する。
【0021】
本発明は、体重管理をコントロールする方法であって、それを必要とするヒトに医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、経口剤形であり、医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を含む、方法をさらに提供する。
【0022】
本発明は、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を含有する即時放出経口医薬組成物をさらに提供する。本発明の即時放出経口医薬組成物は、本明細書で提供する本発明の治療方法において使用することができる。
【0023】
本発明は、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸または薬学的に許容できるその塩、充填剤、崩壊剤、および滑沢剤を含む即時放出経口医薬組成物をさらに提供する。本発明のこの即時放出経口医薬組成物も、本明細書で提供する本発明の治療方法において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】化合物1のトリス塩即時放出錠剤の調製工程を示す流れ図である。
図2】(50mgの化合物1と同等の)化合物1のトリス塩制御放出錠剤の調製工程を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の態様において、本発明は、T2DMを治療する方法であって、それを必要とするヒトに医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、経口剤形であり、医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸(「化合物1」)またはその薬学的な塩を含む、方法を提供する。
【0026】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口溶液形態または固体経口剤形で存在する。
【0027】
一部の実施形態では、医薬組成物は、たとえば、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、サシェ剤、粉末、顆粒、または経口分散性フィルムを含む、固体経口剤形で存在する。
【0028】
一部の実施形態では、医薬組成物は、即時放出固体剤形である。
【0029】
本明細書で使用するとき、[たとえば、「即時放出錠剤」における]用語「即時放出」またはその略語「IR」は、European Pharmacopeia 6.0、第01部/2008:1502において、特別な製剤設計および/または製造方法によって故意に変更されていない活性物質の放出を示し、そのために、European Pharmacopeia 6.0、第01部/2008:1502において定義されるところの「変更放出(modify−release)」、「延長放出(prolong−release)」、「遅延放出(delayed−release)」、および「パルス放出(pulsatile−release)」剤形とは異なっている錠剤の形態である「通常放出剤形(conventional−release dosage form)」または「即時放出剤形(immediate−release dosage form)」について示される定義に対応する。たとえば、より詳細には、「即時放出」または「IR」は、たとえば、Q値(30分)が少なくとも75%とされる、装置2(パドル)を使用するUSP放出方法に従って求められるとき、60分、45分、または30分などの所定の時間内での少なくとも70%、75%、または80%の活性薬理成分の放出量を意味する。
【0030】
一部の実施形態では、医薬組成物は、即時放出錠剤剤形になっている。
【0031】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の錠剤を含む。
【0032】
一部の実施形態では、医薬組成物は、化合物1またはその薬学的な塩を、約10mg〜約140mgの化合物1と同等の量で、たとえば、約10mg〜約120mgの化合物1、約10mg〜約50mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約10mg〜約20mgの化合物1、約15mg〜約25mgの化合物1、約15mg〜約40mgの化合物1、約15mg〜約50mgの化合物1、約20mg〜約30mgの化合物1、約30mg〜約100mgの化合物1、約40mg〜約70mgの化合物1、約40mg〜約50mgの化合物1、約70mg〜約130mgの化合物1、約70mg〜約120mgの化合物1、約100mg〜約140mgの化合物1、約110mg〜約130mgの化合物1、約115mg〜約125mgの化合物1、または約120mgの化合物1と同等の量で含有する。
【0033】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、化合物1の薬学的な塩、たとえば、化合物1のトリス塩である。
【0034】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。一部の実施形態では、1日2回の投与は、少なくとも4、5、または6時間隔てられる。一部の実施形態では、1日2回の投与は、少なくとも6、7、または8時間隔てられる。一部の実施形態では、1日2回の投与は、少なくとも8、9、または10時間隔てられる。
【0035】
一部の実施形態では、1日2回の投与は、4〜16時間、8〜16時間、または10〜14時間隔てられる。一部のさらなる実施形態では、1日2回の投与は、11〜13時間、または約12時間隔てられる。
【0036】
本明細書で使用する用語「治療する」とは、別段指摘しない限り、このような用語が適用される障害もしくは状態またはそのような障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状を、後退させ、軽減し、進行を阻害し、または予防することを意味する。本明細書で使用する用語「治療」とは、別段指摘しない限り、治療する行為を指し、「治療する」は、本明細書において定義している。用語「治療する」は、対象(たとえば、ヒト)のアジュバントおよびネオアジュバント治療も含む。
【0037】
一部の実施形態では、T2DMを治療する方法は、血糖コントロールを改善することを含む。
【0038】
一部の実施形態では、T2DMを治療する方法は、ヒトの空腹時血漿グルコースレベルを、たとえば、約126mg/dL以下に低下させることを含む。一部の実施形態では、T2DMを治療する方法は、糖化ヘモグロビン(HbA1c)を、たとえば、約7.0%以下、約6.5%以下、または約5.7%以下に減少させることを含む。一部の実施形態では、T2DMを治療する方法は、平均1日グルコースレベルを約157mg/dL以下に低下させることを含む。一部の実施形態では、T2DMを治療する方法は、血糖のリスクが低いまたはゼロである。
【0039】
一部の実施形態では、方法は、追加の治療薬をヒトに投与することをさらに含む。
【0040】
一部の実施形態では、方法は、減カロリー食および/または身体活動の増進に付加されるものである。
【0041】
第2の態様において、本発明は、体重管理をコントロールする、または肥満もしくは過体重を治療する方法であって、それを必要とするヒトに医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、経口剤形であり、医薬組成物が、2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボン酸またはその薬学的な塩を含む、方法を提供する。
【0042】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口溶液形態または固体経口剤形で存在する。
【0043】
一部の実施形態では、医薬組成物は、たとえば、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、サシェ剤、粉末、顆粒、または経口分散性フィルムを含む、固体経口剤形で存在する。
【0044】
一部の実施形態では、医薬組成物は、即時放出固体剤形である。
【0045】
一部の実施形態では、医薬組成物は、即時放出錠剤剤形である。
【0046】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の錠剤を含む。
【0047】
一部の実施形態では、医薬組成物は、化合物1またはその薬学的な塩を、約10mg〜約140mgの化合物1と同等の量で、たとえば、約10mg〜約120mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約10mg〜約20mgの化合物1、約15mg〜約25mgの化合物1、約15mg〜約40mgの化合物1、約15mg〜約50mgの化合物1、約40mg〜約70mgの化合物1、約40mg〜約50mgの化合物1、約70mg〜約130mgの化合物1、約70mg〜約120mgの化合物1、約100mg〜約140mgの化合物1、約110mg〜約130mgの化合物1、約115mg〜約125mgの化合物1、または約120mgの化合物1と同等の量で含有する。
【0048】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、約10mg〜約120mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約40mg〜約70mgの化合物1、約70mg〜約120mgの化合物1、または約120mgの化合物1と同等の量である。
【0049】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、約10mg〜約100mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約20mg〜約100mgの化合物1、約20mg〜約80mgの化合物1、または約40mg〜約80mgの化合物1と同等の量である。
【0050】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、化合物1の薬学的な塩、たとえば、化合物1のトリス塩である。
【0051】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。一部の実施形態では、1日2回の投与は、少なくとも4、5、または6時間隔てられる。一部の実施形態では、1日2回の投与は、少なくとも6、7、または8時間隔てられる。一部の実施形態では、1日2回の投与は、少なくとも8、9、または10時間隔てられる。
【0052】
一部の実施形態では、1日2回の投与は、4〜16時間、8〜16時間、または10〜14時間隔てられる。一部のさらなる実施形態では、1日2回の投与は、11〜13時間、または約12時間隔てられる。
【0053】
一部の実施形態では、体重管理のコントロールは、長期にわたる体重管理のコントロールを含む。
【0054】
一部の実施形態では、ヒトの初期体型指数(BMI)は、24kg/m以上である(初期BMIとは、体重管理のコントロールを開始する時のBMIである)。一部の実施形態では、ヒトの初期BMIは、24kg/m〜30kg/mである。
【0055】
一部の実施形態では、ヒトの初期BMIは、27kg/m以上である。
【0056】
一部の実施形態では、ヒトの初期BMIは、30kg/m以上である。一部の実施形態では、ヒトの初期BMIは、30.0kg/m〜45kg/mである。
【0057】
本明細書で使用するとき、BMIが30kg/m以上であるヒトは、肥満している(すなわち、肥満を有する)。
【0058】
本明細書で使用するとき、BMIが25.0〜29.9kg/mであるヒトは、過体重である(すなわち、過体重を有する)。
【0059】
本明細書で使用する用語「治療する」とは、別段指摘しない限り、このような用語が適用される障害もしくは状態またはそのような障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状を、後退させ、軽減し、進行を阻害し、または予防することを意味する。本明細書で使用する用語「治療」とは、別段指摘しない限り、治療する行為を指し、「治療する」は、本明細書において定義している。用語「治療する」は、対象(たとえば、ヒト)のアジュバントおよびネオアジュバント治療も包含する。
【0060】
一部の実施形態では、肥満または過体重の治療は、体重管理のコントロールを含む。
【0061】
一部の実施形態では、ヒトは、少なくとも1つの体重関連併存疾患(たとえば、高血圧、2型真性糖尿病、または異脂肪血症)を有する。
【0062】
一部の実施形態では、ヒトは、過体重であり、少なくとも1つの体重関連併存疾患(たとえば、高血圧、2型真性糖尿病、または異脂肪血症)を有する。
【0063】
一部の実施形態では、ヒトは、肥満であり、少なくとも1つの体重関連併存疾患(たとえば、高血圧、2型真性糖尿病、または異脂肪血症)を有する。
【0064】
一部の実施形態では、体重管理をコントロールする方法は、ヒトの体重を、たとえば、約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%よりも多く減らすことを含む。
【0065】
一部の実施形態では、体重管理をコントロールする方法は、ヒトの体重を、たとえば、10%、15%、20%、25%、または30%よりも多く減らすことを含む。
【0066】
一部の実施形態では、体重管理をコントロールする方法は、ヒトの体重を、たとえば、約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%よりも多く減らすことを含む。
【0067】
一部の実施形態では、体重管理をコントロールする方法は、ヒトの体型指数(BMI)を、たとえば、約10%、15%、20%、25%、または30%よりも多く下げることを含む。
【0068】
一部の実施形態では、方法は、追加の治療薬をヒトに投与することをさらに含む。
【0069】
一部の実施形態では、方法は、減カロリー食および/または身体活動の増進に付加されるものである。
【0070】
第3の態様において、本発明は、化合物1またはその薬学的な塩を含む即時放出経口医薬組成物を提供する。
【0071】
一部の実施形態では、化合物1またはその薬学的な塩は、化合物1のトリス塩である。
【0072】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、約10mg〜約140mgの化合物1と同等の量で、たとえば、約10mg〜約120mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約10mg〜約20mgの化合物1、約15mg〜約25mgの化合物1、約15mg〜約40mgの化合物1、約15mg〜約50mgの化合物1、約40mg〜約70mgの化合物1、約40mg〜約50mgの化合物1、約70mg〜約130mgの化合物1、約70mg〜約120mgの化合物1、約100mg〜約140mgの化合物1、約110mg〜約130mgの化合物1、約115mg〜約125mgの化合物1、または約120mgの化合物1と同等の量である。
【0073】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、約10mg〜約120mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約40mg〜約70mgの化合物1、約70mg〜約120mgの化合物1、または約120mgの化合物1と同等の量である。
【0074】
一部の実施形態では、即時放出経口剤形は、たとえば、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、サシェ剤、粉末、顆粒、経口分散性フィルムを含む、固体経口剤形である。一部の実施形態では、即時放出経口剤形は、錠剤形態である。
【0075】
一部の実施形態では、第3の態様における即時放出経口医薬組成物を、本発明の第1または第2の態様の方法において使用することができる。
【0076】
第4の態様において、本発明は、
化合物1またはその薬学的な塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
崩壊剤(たとえば、クロスポビドン、デンプン、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、またはデンプングリコール酸ナトリウム)、
および滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]
を含む即時放出経口医薬組成物を提供する。
【0077】
一部の実施形態では、経口医薬組成物は、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0078】
一部の実施形態では、経口医薬組成物は、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびフマル酸ステアリルナトリウムを含む。
【0079】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
1.0重量%〜35.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
60重量%〜95重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
0.2重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤(たとえば、クロスポビドン、デンプン、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウム)
を含む。
【0080】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
1.0重量%〜35.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
60重量%〜95重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
0.2重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウム)
を含む。
【0081】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
10.0重量%〜35.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
60重量%〜90重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
0.2重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤(たとえば、クロスポビドン、デンプン、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウム)
を含む。
【0082】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
1.0重量%〜20.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
70重量%〜95重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
0.2重量%〜2.0重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウム)
を含む。
【0083】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
1.0重量%〜20.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
70重量%〜95重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ]、
0.5重量%〜1.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
2.0重量%〜4.0重量%の崩壊剤(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウム)
を含む。
【0084】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
7.0重量%〜18.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
75重量%〜90重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ]、
0.5重量%〜1.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
2.5重量%〜3.5重量%の崩壊剤(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウム)
を含む。
【0085】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
15.0重量%〜35.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、15.0重量%〜35.0重量%の化合物1のトリス塩)、
60.0重量%〜80.0重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ]、
1.5重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
2.5重量%〜3.5重量%の崩壊剤(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウム)
を含む。
【0086】
一部の実施形態では、経口医薬組成物は、
化合物1またはその薬学的な塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
崩壊剤(たとえば、クロスポビドン、デンプン、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、および
滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]
を含む。
【0087】
一部の実施形態では、経口医薬組成物は、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、クロスポビドン、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0088】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
1.0重量%〜35.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
60重量%〜95重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
0.2重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤(たとえば、クロスポビドン)
を含む。
【0089】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
10.0重量%〜35.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、化合物1のトリス塩)、
60重量%〜70重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
0.2重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤(たとえば、クロスポビドン)
を含む。
【0090】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
23.0重量%〜35.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、29.0重量%〜32.0重量%の化合物1のトリス塩)、
60重量%〜70重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
1.0重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
2.0重量%〜4.0重量%の崩壊剤(たとえば、クロスポビドン)
を含む。
【0091】
一部の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、
24.0重量%〜33.0重量%の化合物1または薬学的に許容できるその塩(たとえば、29.0重量%〜32.0重量%の化合物1のトリス塩)、
62.0重量%〜68.0重量%の充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ、たとえば、微結晶性セルロースとラクトース一水和物の約2:1の重量比での組合せ]、
1.5重量%〜2.5重量%の滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムなど)]、および
2.5重量%〜3.5重量%の崩壊剤(たとえば、クロスポビドン)
を含む。
【0092】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、約10mg〜約140mgの化合物1と同等の量で、たとえば、約10mg〜約120mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約10mg〜約20mgの化合物1、約15mg〜約25mgの化合物1、約15mg〜約40mgの化合物1、約15mg〜約50mgの化合物1、約40mg〜約70mgの化合物1、約40mg〜約50mgの化合物1、約70mg〜約130mgの化合物1、約70mg〜約120mgの化合物1、約100mg〜約140mgの化合物1、約110mg〜約130mgの化合物1、約115mg〜約125mgの化合物1、または約120mgの化合物1と同等の量である。
【0093】
一部の実施形態では、医薬組成物中の化合物1またはその薬学的な塩は、約10mg〜約120mgの化合物1、約10mg〜約40mgの化合物1、約40mg〜約70mgの化合物1、約70mg〜約120mgの化合物1、または約120mgの化合物1と同等の量である。
【0094】
一部の実施形態では、即時放出経口剤形は、たとえば、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、サシェ剤、粉末、顆粒、経口分散性フィルムを含む、固体経口剤形である。一部の実施形態では、即時放出経口剤形は、錠剤形態である。
【0095】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物(または本発明の方法)における化合物1のトリス塩は、結晶性形態、たとえば、米国特許第10,208,019号(この特許の実施例4A−01)において開示されている結晶性形態で存在する。
【0096】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物(または本発明の方法)における化合物1は、化合物1の非晶質形態または化合物1のトリス塩の非晶質形態で存在する。非晶質形態の化合物1または非晶質形態の化合物1のトリス塩は、たとえば、凍結乾燥(フリーズドライ)によって調製することができる。
【0097】
一部の実施形態では、(本発明の方法において使用されるものを含む)本発明の医薬組成物は、非晶質形態の化合物1または非晶質形態の化合物1のトリス塩を使用して調製されている経口溶液である。
【0098】
一部の実施形態では、第4の態様における即時放出経口医薬組成物を、本発明の第1または第2の態様の方法において使用することができる。
【0099】
用語「約」とは、一般に、所与の値または範囲の5%以内、好ましくは3%以内、より好ましくは1%以内を意味する。別法として、用語「約」は、当業者によって検討されるとき、許容される平均値の標準誤差内を意味する。
【0100】
用語「トリス」とは、THAM、トロメタミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとしても知られる、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミンを意味する。
【0101】
化合物1のトリス塩とは、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミンを使用して生成される化合物1の塩を意味する。トリスは、化合物1のカルボン酸部分と会合する。別段明記しない限り、化合物1のトリス塩に言及するとき、対イオンと化合物1は、約1:1(すなわち、0.9:1.0〜1.0:0.9、たとえば、0.95:1.00〜1.00:0.95)の化学量論比にある。化合物1のトリス塩の別の化学名は、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム2−[(4−{6−[(4−シアノ−2−フルオロベンジル)オキシ]ピリジン−2−イル}ピペリジン−1−イル)メチル]−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンゾイミダゾール−6−カルボキシレートであり、たとえば、次の構造の一方によって表すこともできる。
【0102】
【化3】
【0103】
当業者には、(同じ塩を含む)同じ化合物の命名に、複数の命名法が使用される場合があることは容易に理解される。
【0104】
薬学的に許容できる塩には、酸付加塩および塩基塩が含まれる。
【0105】
適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から生成されるものである。例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、1,5−ナフタレンジスルホン酸、およびキシナホ酸塩が挙げられる。
【0106】
適切な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成されるものである。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン(ジオールアミン)、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、2−アミノエタノール(オールアミン)、カリウム、ナトリウム、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール(トリスまたはトロメタミン)、および亜鉛塩が挙げられる。
【0107】
酸および塩基の半塩、たとえば、半硫酸塩および半カルシウム塩を形成してもよい。適切な塩に関する総説については、StahlおよびWermuthによるHandbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Wiley−VCH、2002)を参照されたい。
【0108】
薬学的に許容できる塩は、
(i)化合物を所望の酸または塩基と反応させることによる、
(ii)化合物の適切な前駆体から、酸もしくは塩基に不安定な保護基を除去する、または適切な環状前駆体、たとえば、ラクトンもしくはラクタムを、所望の酸もしくは塩基を使用して開環することによる、または
(iii)化合物のある塩を、適当な酸もしくは塩基との反応によって、または適切なイオン交換カラムによって、別の塩に変換することによる、
3通りの方法の1つまたは複数によって調製することができる。
【0109】
3通りの反応はすべて、通常は溶液中で実施される。得られる塩は、沈殿し、濾過によって収集される場合もあり、または溶媒を蒸発させて回収される場合もある。得られる塩のイオン化の程度は、完全なイオン化からほとんどイオン化していない程度まで様々となりうる。
【0110】
化合物および薬学的に許容できる塩は、溶媒和していない形態および溶媒和した形態で存在する場合がある。用語「溶媒和物」は、本明細書では、化合物またはその塩と、1つまたは複数の薬学的に許容できる溶媒分子、たとえば、エタノールとを含む分子錯体を記載するのに使用される。用語「水和物」は、前記溶媒が水であるときに用いられる。たとえば、本明細書で開示する化合物1のトリス塩の水和物結晶性形態は、結晶性材料/錯体の結晶格子中に化合物1のトリス塩と水(水和水)の両方を含む結晶性材料/錯体を指す。
【0111】
現在受け入れられている有機水和物分類体系は、隔離部位(isolated site)、チャネル、または金属イオン配位水和物を規定するものである。K.R.MorrisによるPolymorphism in Pharmaceutical Solids(H.G.Brittain編、Marcel Dekker、1995)を参照されたい。隔離部位水和物は、水分子が、介在する有機分子によって、互いとの直接の接触から隔離されている水和物である。チャネル水和物では、水分子は、格子チャネル内に存在し、そこで、他の水分子と隣り合っている。金属イオン配位水和物では、水分子は、金属イオンに結合している。
【0112】
溶媒または水がしっかりと結合しているとき、その錯体は、湿度と無関係に明確な化学量論性を備えうる。しかし、チャネル溶媒和物や吸湿性化合物のように、溶媒または水の結合が弱いとき、水/溶媒含有量は、湿度および乾燥条件に左右されることがある。このような場合では、非化学量論性が標準となる。
【0113】
本発明の範囲には、薬物および少なくとも1種の他の成分が化学量論量または非化学量論量で存在する(塩および溶媒和物以外の)多成分錯体も含まれる。この種類の錯体には、クラスレート(薬物−ホスト包接錯体)および共結晶が含まれる。後者は、通常、非共有結合性の相互作用によって結合し合っている中性分子構成要素の結晶性錯体であると定義されるが、中性分子の塩との錯体になることもありうる。共結晶は、溶融結晶化によって、溶媒からの再結晶によって、または構成材料を一緒に物理的に粉砕することにより調製される場合がある。O.AlmarssonおよびM.J.ZaworotkoによるChem Commun、17、1889〜1896(2004)を参照されたい。多成分錯体の総説については、HaleblianによるJ Pharm Sci、64(8)、1269〜1288(1975年8月)を参照されたい。
【0114】
本発明の化合物は、完全な非晶質から完全な結晶質までの範囲の一連の固体状態で存在する場合がある。用語「非晶質」とは、材料が分子レベルで長距離秩序を欠き、温度に応じて、固体または液体の物理的性質を示す場合がある状態を指す。通常、そのような材料は、固体の性質を示しながらも、特有のX線回折パターンを示さず、より正式には液体であると記載される。加熱すると、通常は二次の状態変化(「ガラス転移」)を特徴とする、固体の性質から液体の性質への変化が起こる。用語「結晶質」とは、材料が分子レベルで規則正しい整然とした内部構造を有し、明確なピークを伴う特有のX線回折パターンを示す固相を指す。このような材料も、十分に加熱されると、液体の性質を示すが、固体から液体への変化は、通常は一次の相転移(「融点」)を特徴とする。
【0115】
化合物は、適切な条件下に置かれたとき、中間相状態(中間相または液晶)として存在する場合もある。中間相状態は、真の結晶状態と真の液体状態(融成物または溶液)の中間である。温度変化の結果として生じる中間相性を「サーモトロピック」と記載し、水または別の溶媒などの第2の成分が加えられた結果として生じるものを「リオトロピック」と記載する。リオトロピック中間相を形成する可能性を有する化合物は、「両親媒性」と記載され、イオン性(−COONa、−COO、または−SONaなど)または非イオン性(−N(CHなど)の極性頭部基を有する分子からなる。さらなる情報については、N.H.HartshorneおよびA.StuartによるCrystals and the Polarizing Microscope、第4版(Edward Arnold、1970)を参照されたい。
【0116】
いくつかの化合物は、多形および/または1つもしくは複数の種類の異性(たとえば、光学、幾何、または互変異性)を示す場合がある。本発明者らの結晶性形態は、同位体標識されてもよい。このような変形形態は、その構造上の特色に関してあるがままに規定される化合物1またはその塩に必然的に含まれ、したがって、本発明の範囲内にある。
【0117】
1つまたは複数の不斉炭素原子を含んでいる化合物は、2種以上の立体異性体として存在しうる。化合物がアルケニルまたはアルケニレン基を含んでいる場合では、シス/トランス(またはZ/E)幾何異性体が考えられる。構造異性体が低いエネルギー障壁で相互変換可能である場合では、互変異性体の異性(「互変異性」)が起こりうる。互変異性は、たとえば、イミノ、ケト、もしくはオキシム基を含有する化合物ではプロトン互変異性、または、芳香族部分を含有する化合物ではいわゆる原子価互変異性の形態をとりうる。これは、単一化合物が、1種類を超える異性を示す場合もあるということである。
【0118】
化合物1のある特定の薬学的に許容できる塩は、光学活性である(たとえば、d−乳酸もしくはl−リシン)、またはラセミである(たとえば、dl−酒石酸もしくはdl−アルギニン)対イオンを含有する場合もある。
【0119】
シス/トランス異性体は、当業者によく知られている従来技術、たとえば、クロマトグラフィーおよび分別晶析法によって分離することができる。
【0120】
個々の鏡像異性体を調製/単離するための従来技術には、光学的に純粋な適切な前駆体からのキラル合成、または、たとえばキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割が含まれる。別法として、キラルエステルを含有するラセミ前駆体を酵素的分割によって分離してもよい(たとえば、A.C.L.M.CarvahoらによるInt J Mol Sci 29682〜29716(2015)を参照されたい)。化合物が酸性または塩基性部分を含有する場合では、1−フェニルエチルアミンまたは酒石酸などの光学的に純粋な塩基または酸と塩を形成させることができる。得られるジアステレオマー混合物を、分別晶析法によって分離し、ジアステレオマー塩の一方または両方を、当業者によく知られている手段によって、対応する純粋な鏡像異性体に変換することができる。別法として、ラセミ体(またはラセミ前駆体)を、適切な光学活性化合物、たとえば、アルコール、アミン、または塩化ベンジルと、共有結合性に反応させてもよい。得られるジアステレオマー混合物を、当業者によく知られている手段によるクロマトグラフィーおよび/または分別晶析法によって分離して、ジアステレオマーを、2つ以上のキラル中心を有する単一鏡像異性体として分離することができる。キラル化合物(およびそのキラル前駆体)は、0〜50体積%、通常は2%〜20%のイソプロパノール、および0〜5体積%のアルキルアミン、通常は0.1%のジエチルアミンを含有する炭化水素、通常はヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を用いた、不斉樹脂でのクロマトグラフィー、通常はHPLCを使用して、鏡像異性体富化された形態で得ることができる。溶出液を濃縮すると、富化された混合物が得られる。亜臨界および超臨界流体を使用するキラルクロマトグラフィーを用いてもよい。本発明の一部の実施形態において有用なキラルクロマトグラフィーの方法は、当業界で知られている(たとえば、Smith,Roger M.、Loughborough University、英国ラフバラ、Chromatographic Science Series(1998)、75(SFC with Packed Columns)、223〜249頁、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい)。本明細書における一部の該当実施例では、Daicel(登録商標)化学工業株式会社(日本国東京)の子会社であるChiral Technologies,Inc(米国ペンシルヴェニア州ウェストチェスター)からカラムを入手した。
【0121】
ラセミ体が結晶するとき、異なる2タイプの結晶が考えられる。第1のタイプは、両方の鏡像異性体を等モル量で含有する同質の1つの形態の結晶が生じる、上で言及したラセミ化合物(真のラセミ体)である。第2のタイプは、それぞれが単一の鏡像異性体を含む2つの形態の結晶が等モル量で生じる、ラセミ混合物または集成体である。ラセミ混合物中に存在する結晶形は、両方とも同一の物理的性質を有するが、これらは、真のラセミ体と比べると異なる物理的性質を有する場合がある。ラセミ混合物は、当業者に知られている従来技術によって分離することができる。たとえば、E.L.ElielおよびS.H.WilenによるStereochemistry of Organic Compounds(Wiley、1994)を参照されたい。
【0122】
化合物1およびその塩が、単一の互変異性体型として本明細書に描かれているとしても、考えられるすべての互変異性体型が本発明の範囲内に含まれる。
【0123】
本発明は、1個または複数の原子が、原子番号は同じであるが原子質量または質量数が自然界で優勢である原子質量または質量数とは異なっている原子で置き換えられている、同位体標識された薬学的に許容できるすべての化合物1またはその塩を含む。
【0124】
本発明の化合物に含めるのに適する同位体の例としては、HおよびHなどの水素、11C、13C、および14Cなどの炭素、36Clなどの塩素、13Nおよび15Nなどの窒素、15O、17O、および18Oなどの酸素の同位体が挙げられる。
【0125】
ある特定の同位体標識された化合物1またはその塩、たとえば、放射性同位体が組み込まれている化合物1またはその塩は、薬物および/または基質組織分布調査において有用である。放射性同位体のトリチウム、すなわちH、および炭素14、すなわち14Cは、組み込みやすく、検出手段が手近にあることを考えると、この目的に特に有用である。
【0126】
ジュウテリウム、すなわちHなどのより重い同位体での置換は、代謝安定性がより高いために生じるある特定の治療上の利点、たとえば、in vivo半減期の延長または投与必要量の削減をもたらす場合がある。
【0127】
11C、18F、15O、および13Nなどの陽電子放出同位体での置換は、陽電子放射トポグラフィー(PET)研究において基質受容体占有率を調べるのに有用でありうる。
【0128】
同位体標識された化合物は、一般に、以前から用いられている標識されていない試薬に代えて、適切な同位体標識された試薬を使用して、当業者に知られている従来技術によって、または付属の実施例および調製例に記載する方法と類似した方法によって調製することができる。
【0129】
本発明による薬学的に許容できる溶媒和物には、結晶化の溶媒が同位体置換されている、たとえば、DO、d−アセトン、d−DMSOである場合があるものが含まれる。
【0130】
投与および投薬
本発明の化合物は、通常、本明細書に記載するような状態を治療するのに有効な量で投与される。本発明の化合物は、化合物それ自体として、または別法として、薬学的に許容できる塩として投与することができる。投与および投薬の目的では、化合物それ自体または薬学的に許容できるその塩を、簡便に、本発明の化合物と呼ぶ。
【0131】
本発明の化合物は、適切ないずれかの経路によって、そのような経路に適合した医薬組成物の形態で、目的の治療に有効な用量で投与される。本発明の化合物は、経口、直腸、経膣、非経口、または局所投与される場合がある。
【0132】
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下するものである場合もあり、または化合物が口から直接血流に入る頬側もしくは舌下投与が用いられる場合もある。
【0133】
本発明の化合物および/または前記化合物を含有する組成物の投与量レジメンは、患者のタイプ、年齢、体重、性別、および医学的状態、状態の重症度、投与経路、ならびに用いる特定の化合物の活性を含む、様々な要素に基づく。通常は、必要なら、1日に複数回の用量を使用して、合計日用量を増やしてもよい。
【0134】
経口投与については、組成物を、たとえば、活性成分を含有する錠剤の形態で提供して、患者への投与量を症状に基づいて調整することができる。
【0135】
本発明による適切な対象には、哺乳動物対象が含まれる。一実施形態では、ヒトが適切な対象である。ヒト対象は、いずれの性別でもよく、いずれの発育段階にあってもよい。
【0136】
医薬組成物
別の実施形態では、本発明は、医薬組成物を含む。そのような医薬組成物は、薬学的に許容できる担体が用いられた体裁になった本発明の化合物を含む。薬理活性のある他の物質も存在してよい。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容できる担体」は、生理的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的に許容できる担体の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種または複数、およびこれらの組合せが挙げられ、組成物中の等張剤、たとえば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの多価アルコールが含められる場合もある。抗体または抗体部分の有効期間または有効性を向上させる、湿潤剤またはごく少量の助剤物質、たとえば、湿潤もしくは乳化剤、保存剤、緩衝剤などの薬学的に許容できる物質。
【0137】
一部の実施形態では、薬学的に許容できる担体は、希釈剤/充填剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、および滑沢剤から選択される1種または複数の成分を含む。
【0138】
本明細書で使用するとき、用語「希釈剤または充填剤」とは、薬理活性剤を所望の投与量に希釈する働きをする、かつ/または薬理活性剤の担体として働く物質を指す。希釈剤または充填剤の例としては、マンニトール、(たとえばラクトース一水和物を含む)ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、ソルビトール、キシリトール、粉末状セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプン、リン酸カルシウム、金属炭酸塩、金属酸化物、および/または金属アルミノケイ酸塩が挙げられる。
【0139】
本明細書で使用するとき、用語「崩壊剤」とは、本発明の医薬組成物/製剤の水(またはin vivoでは水を含有する流体)中での崩壊を助長する物質を指す。崩壊剤の例としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、イオン交換樹脂、食用酸およびアルカリ炭酸塩成分を主体とする発泡系、粘土、タルク、デンプン、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロースフロック、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸カルシウム、金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、および/またはリン酸カルシウムが挙げられる。
【0140】
本明細書で使用するとき、用語「結合剤」とは、本発明の医薬組成物/製剤の機械的強度および/または圧縮性を増大させる物質を指す。結合剤の例としては、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、架橋ポリ(アクリル酸)、アラビアゴム、アカシアゴム、トラガカントゴム、レシチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カオリン、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ケイ化微結晶性セルロース、デンプン、マルトデキストリン、デキストリン、微結晶性セルロース、および/またはソルビトールが挙げられる。
【0141】
本明細書で使用するとき、用語「湿潤剤」とは、本発明の医薬組成物/製剤の透水性を増大させる物質を指す。別の態様では、用語「湿潤剤」は、薬理活性剤の水(またはin vivoでは水を含有する流体)への溶解を増進する物質を指す。さらに別の態様では、用語「湿潤剤」は、本発明の医薬組成物/製剤が投与された後の薬理活性剤の生物学的利用能を増大させる物質を指す。湿潤剤の例としては、金属ラウリル硫酸塩、ポリエチレングリコール、脂肪酸グリセリドエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレン−アルキルエーテル、金属アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、脂肪酸の糖エステル、ポリグリコール化グリセリド、第四級アンモニウムアミン化合物、ラウロイルマクロゴールグリセリド、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、ステアロイルマクロゴールグリセリド、リノレオイルマクロゴールグリセリド、オレオイルマクロゴールグリセリド、ポリエトキシ化植物油、ポリエトキシ化ステロール、ポリエトキシ化コレステロール、ポリエトキシ化グリセロール脂肪酸エステル、ポリエトキシ化脂肪酸エステル、スルホスクシネート、タウレート、および/またはドクセートナトリウムが挙げられる。
【0142】
本明細書で使用するとき、用語「滑沢剤」とは、加工処理の際の医薬製剤/組成物の機材へのスティッキングを防ぐ助けとなる、かつ/または加工処理の際の組成物/製剤の粉体流を改善する物質を指す。滑沢剤の例としては、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩(たとえば、ステアリン酸マグネシウム)、フマル酸ステアリルナトリウム、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、ベヘン酸グリセリル、鉱油、植物油、パラフィン、ロイシン、シリカ、ケイ酸、タルク、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、および/または塩化ナトリウムが挙げられる。
【0143】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、充填剤[たとえば、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、またはこれらの組合せ]、崩壊剤(たとえば、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、またはデンプングリコール酸ナトリウム)、および滑沢剤[たとえば、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムなど)]を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物は、微結晶性セルロース、(たとえばラクトース一水和物の形態の)ラクトース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0144】
本発明の組成物は、様々な形態でありうる。それらには、たとえば、液体、半固体、および固体剤形、たとえば、液体の溶液、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム、および坐剤が含まれる。形態は、目的の投与方式および治療用途に応じて決まる。
【0145】
固体服用形態の経口投与は、たとえば、予め決められた量の薬理活性成分(API、たとえば、化合物1または化合物1のトリス塩などの薬学的に許容できるその塩)をそれぞれが含有する、硬もしくは軟カプセル剤、丸剤、カシェ剤、口中錠、または錠剤などの、別個の単位で提示する場合がある。一実施形態では、経口投与は、錠剤形態である場合がある。一実施形態では、経口投与は、カプセル剤形態である場合がある。一実施形態では、経口投与は、粉末または顆粒形態である場合がある。一実施形態では、経口服用形態は、たとえば口中錠などの、舌下である。このような固体剤形では、本発明の化合物は、普通は1種または複数のアジュバントと組み合わせられる。こうしたカプセル剤または錠剤が、即時放出製剤を含有する場合もある。他の実施形態では、こうしたカプセル剤または錠剤が、制御放出製剤を含有する場合もある。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合では、剤形は、緩衝剤を含む場合もあり、または腸溶コーティングを施して調製される場合もある。
【0146】
別の実施形態では、経口投与は、液体服用形態である場合がある。経口投与用の液体剤形としては、たとえば、当業界で一般に使用される不活性希釈剤(たとえば、水)を含有する、薬学的に許容できるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられる。このような組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、風味剤(たとえば、甘味剤)、および/または着香剤などのアジュバントも含む場合がある。
【0147】
医薬品業界で知られている他の担体材料および投与方式が使用される場合もある。本発明の医薬組成物は、有効な製剤化および投与手順などの、よく知られている薬学技術のいずれかによって準備することができる。有効な製剤化および投与手順に関する上記検討事項は、当業界でよく知られており、標準教本に記載されている。薬物の製剤化については、たとえば、Hoover,John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、ペンシルヴェニア州イーストン、1975;Libermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、ニューヨーク州ニューヨーク、1980;およびKibbeら編、Handbook of Pharmaceutical Excipients(第3版)、American Pharmaceutical Association、ワシントン、1999において論じられている。
【0148】
共投与
本発明の組成物は、単独で、または他の治療薬と組み合わせて使用することができる。本発明は、本明細書におけるいずれかの実施形態の化合物もしくは薬学的に許容できるその塩または前記化合物もしくは塩の薬学的に許容できる溶媒和物が、本明細書で論じる他の1種または複数の治療薬と組み合わせて使用される、本明細書で規定するとおりの使用、方法、または組成物のいずれをも提供する。これにより、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて規定するとおりの本発明の組成物と、本明細書で論じる他の1種または複数の治療薬とを含む、GLP−1Rアゴニストの適応症となる疾患または状態の治療のための医薬組成物が含められることになる。
【0149】
2種以上の化合物の「組み合わせて」の投与とは、化合物のすべてが、同じ時間枠においてそれぞれが生物学的効果をもたらしうるだけの時間的近さで投与されることを意味する。1つの薬剤の存在によって、他の化合物の生物学的効果が変化する場合もある。2種以上の化合物は、同時に、並行して、または順次投与される場合がある。加えて、同時投与は、投与の前に化合物を混合することにより行われる場合もあれば、同じまたは異なる投与部位に、同じ時点でも別の剤形として化合物を投与することにより行われる場合もある。
【0150】
語句「並行投与」、「共投与」、「同時投与」、および「同時に投与」とは、化合物が組み合わされて投与されることを意味する。
【0151】
別の実施形態では、本発明は、本発明の化合物を、本明細書で論じる薬剤から選択することのできる1種または複数の他の医薬品と組み合わせて投与することを含む治療方法を提供する。
【0152】
一実施形態では、本発明の化合物は、限定はしないが、ビグアナイド(たとえば、メトホルミン)、スルホニル尿素(たとえば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド、またはグリピジド)、チアゾリジンジオン(たとえば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、またはロベグリタゾン(lobeglitazone))、グリタザル(たとえば、サログリタザル、アレグリタザル、ムラグリタザル、またはテサグリタザル)、メグリチニド(たとえば、ナテグリニド、レパグリニド)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP−4)阻害薬(たとえば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン(gemigliptin)、アナグリプチン、テネリグリプチン、アログリプチン、トレラグリプチン、デュトグリプチン(dutogliptin)、またはオマリグリプチン)、グリタゾン(たとえば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、バラグリタゾン、リボグリタゾン、またはロベグリタゾン(lobeglitazone))、ナトリウムグルコース共輸送体2(sodium−glucose linked transporter2)(SGLT2)阻害薬(たとえば、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、イプラグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジンエタボネート(sergliflozin etabonate)、レモグリフロジンエタボネート(remogliflozin etabonate)、またはエルツグリフロジン)、SGLTL1阻害薬、GPR40アゴニスト(FFAR1/FFA1アゴニスト、たとえば、ファシグリファム)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)およびその類似体、アルファグルコシダーゼ阻害薬(たとえば、ボグリボース、アカルボース、またはミグリトール)、またはインスリンもしくはインスリン類似体を含み、詳細に挙げた薬剤の薬学的に許容できる塩ならびに前記薬剤および塩の薬学的に許容できる溶媒和物も含む、抗糖尿病薬と共に投与される。
【0153】
別の実施形態では、本発明の化合物は、限定はしないが、ペプチドYYもしくはその類似体、2型神経ペプチドY受容体(NPYR2)アゴニスト、NPYR1もしくはNPYR5アンタゴニスト、1型カンナビノイド受容体(CB1R)アンタゴニスト、リパーゼ阻害薬(たとえば、オーリスタット)、ヒトプロ膵島ペプチド(human proislet peptide)(HIP)、メラノコルチン受容体4アゴニスト(たとえば、セトメラノチド(setmelanotide))、メラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニスト、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト(たとえば、オベチコール酸)、ゾニサミド、フェンテルミン(単独またはトピラメートと組み合わされたもの)、ノルエピネフリン/ドーパミン再取込み阻害薬(たとえば、ブプロプリオン)、オピオイド受容体アンタゴニスト(たとえば、ナルトレキソン)、ノルエピネフリン/ドーパミン再取込み阻害薬とオピオイド受容体アンタゴニストの組合せ(たとえば、ブプロプリオンとナルトレキソンの組合せ)、GDF−15類似体、シブトラミン、コレシストキニンアゴニスト、アミリンおよびその類似体(たとえば、プラムリンチド)、レプチンおよびその類似体(たとえば、メトロレプチン)、セロトニン作用薬(たとえば、ロルカセリン)、メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)阻害薬(たとえば、ベロラニブ(beloranib)もしくはZGN−1061)、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、ベンズフェタミン、SGLT2阻害薬(たとえば、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、イプラグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジンエタボネート(sergliflozin etabonate)、レモグリフロジンエタボネート(remogliflozin etabonate)、またはエルツグリフロジン)、SGLTL1阻害薬、SGLT2/SGLT1二重阻害薬、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)モジュレーター、AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)活性化薬、ビオチン、MAS受容体モジュレーター、またはグルカゴン受容体アゴニスト(単独、または別のGLP−1Rアゴニスト、たとえば、リラグルチド、エキセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、リキシセナチド、もしくはセマグルチドと組み合わされたもの)を含み、詳細に挙げた薬剤の薬学的に許容できる塩ならびに前記薬剤および塩の薬学的に許容できる溶媒和物も含む、抗肥満薬と共に投与される。
【0154】
別の実施形態では、本発明の化合物は、限定はしないが、PF−05221304、FXRアゴニスト(たとえば、オベチコール酸)、PPARα/δアゴニスト(たとえば、エラフィブラノル(elafibranor))、合成脂肪酸−胆汁酸コンジュゲート(たとえば、aramchol)、カスパーゼ阻害薬(たとえば、エムリカサン(emricasan))、抗リシルオキシダーゼ相同体2(LOXL2)モノクローナル抗体(たとえば、シムツズマブ(simtuzumab))、ガレクチン3阻害薬(たとえば、GR−MD−02)、MAPK5阻害薬(たとえば、GS−4997)、ケモカイン受容体2(CCR2)とCCR5の二重アンタゴニスト(たとえば、セニクリビロク)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)アゴニスト(たとえば、BMS−986036)、ロイコトリエンD4(LTD4)受容体アンタゴニスト(たとえば、チペルカスト(tipelukast))、ナイアシン類似体(たとえば、ARI3037MO)、ASBT阻害薬(たとえば、ボリキシバット(volixibat))、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害薬(たとえば、NDI010976またはPF−05221304)、ケトヘキソキナーゼ(KHK)阻害薬、ジアシルグリセリルアシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)阻害薬、CB1受容体アンタゴニスト、抗CB1R抗体、またはアポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害薬を含み、詳細に挙げた薬剤の薬学的に許容できる塩ならびに前記薬剤および塩の薬学的に許容できる溶媒和物も含み、NASHを治療するための薬剤の1種または複数と組み合わせて投与される。
【0155】
本明細書に記載する疾患または障害を治療するために本発明の化合物と組み合わせて使用することのできるいくつかの詳細な化合物には、以下のものが含まれる。
4−(4−(1−イソプロピル−7−オキソ−1,4,6,7−テトラヒドロスピロ[インダゾール−5,4’−ピペリジン]−1’−カルボニル)−6−メトキシピリジン−2−イル)安息香酸[選択的ACC阻害薬の一例であり、国際出願第PCT/IB2011/054119号の米国国内段階である米国特許第8,859,577号の実施例9において遊離酸として調製されており、これらの開示は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に援用される。4−(4−(1−イソプロピル−7−オキソ−1,4,6,7−テトラヒドロスピロ[インダゾール−5,4’−ピペリジン]−1’−カルボニル)−6−メトキシピリジン−2−イル)安息香酸の、無水モノトリス形態(形態1)およびモノトリス塩三水和物(形態2)を含む結晶性形態が、国際PCT出願第PCT/IB2018/058966号に記載されており、この開示は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に援用される]、
(S)−2−(5−((3−エトキシピリジン−2−イル)オキシ)ピリジン−3−イル)−N−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容できるその塩、およびその結晶性固体形態(形態1および形態2)[米国特許第10,071,992号の実施例1に記載されているDGAT2阻害薬の一例であり、この開示は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に援用される]、
[(1R,5S,6R)−3−{2−[(2S)−2−メチルアゼチジン−1−イル]−6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−4−イル}−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−6−イル]酢酸または薬学的に許容できるその塩(その結晶性の遊離酸形態を含む)[ケトヘキソキナーゼ(KHK)阻害薬の一例であり、米国特許第9,809,579号の実施例4に記載されており、この開示は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に援用される]、および
FXRアゴニストトロピフェキソールまたは薬学的に許容できるその塩[米国特許第9,150,568号の実施例1−1Bに記載されており、この開示は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に援用される]。
【0156】
こうした薬剤および本発明の化合物は、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液などの薬学的に許容できる媒体と組み合わせることができる。特定の投与量レジメン、すなわち、用量、時機、および反復は、特定の個人およびその個人の病歴に応じて決まる。
【0157】
許容できる担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量および濃度では受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(たとえば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくはIgなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの、塩を形成する対イオン;金属錯体(たとえば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれうる。
【0158】
こうした薬剤および/または本発明の化合物を含有するリポソームは、米国特許第4,485,045号および第4,544,545号に記載されているものなどの、当業界で知られている方法によって調製される。循環時間を向上させたリポソームが、米国特許第5,013,556号で開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEGで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームを所定の孔径のフィルターから押し出すと、所望の直径を有するリポソームが得られる。
【0159】
こうした薬剤および/または本発明の化合物は、コロイド薬物送達系(たとえば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルションにおいて、たとえば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、たとえば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに閉じ込めることもできる。このような技術は、Remington,The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000)において開示されている。
【0160】
持続放出調製物が使用される場合もある。持続放出調製物の適切な例としては、化合物1または薬学的に許容できるその塩を含有する固体疎水性ポリマーの半透性基材が挙げられ、そうした基材は、造形品、たとえば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出基材の例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(たとえば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸と7エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性のエチレン−酢酸ビニル、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、たとえば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成された注射用マイクロスフェア)において使用されるもの、イソ酪酸酢酸スクロース、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0161】
静脈内投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、たとえば、無菌濾過膜での濾過によって容易に実現される。本発明の化合物は、一般に、無菌アクセスポートを備える容器、たとえば、皮下注射針で突き刺すことのできる栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0162】
適切なエマルションは、市販品として入手可能な脂肪乳剤、たとえば、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)、およびLipiphysan(商標)を使用して調製することができる。活性成分を、予め混合されたエマルション組成物に溶解させてもよいし、または別法として、油(たとえば、大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、または扁桃油)に溶解させ、リン脂質(たとえば、卵リン脂質、大豆リン脂質、または大豆レシチン)および水と混合して、エマルションを形成させてもよい。他の成分、たとえば、グリセロールまたはグルコースを加えてエマルションの張度を調整してもよいことは理解されよう。適切なエマルションは、通常、20%まで、たとえば、5%〜20%の間の油を含有する。脂肪乳剤は、0.1μm〜1.0μm、特に、0.1μm〜0.5μmの間の脂肪小滴を含み、5.5〜8.0の範囲のpHを有するものでよい。
【0163】
エマルション組成物は、本発明の化合物を、Intralipid(商標)またはその構成材料(大豆油、卵リン脂質、グリセロール、および水)と混合することにより調製されたものでよい。
【0164】
吸入またはガス注入用の組成物には、薬学的に許容できる水性もしくは有機溶媒またはこれらの混合物中の溶液および懸濁液ならびに粉末がある。液体または固体組成物は、上で明記したとおりの薬学的に許容できる適切な賦形剤を含有する場合がある。一部の実施形態では、組成物は、局所的または全身性効果を得るために、経口または経鼻呼吸経路によって投与される。無菌であることが好ましい薬学的に許容できる溶媒中の組成物を、気体を使用して噴霧することができる。噴霧された溶液が、噴霧装置から直接吸い込まれる場合もあり、または噴霧装置が、フェースマスク、テント、または断続的陽圧呼吸機器に取り付けられる場合もある。溶液、懸濁液、または粉末組成物を、製剤を適切な要領で送達する装置から、好ましくは経口的または経鼻的に投与することができる。
【0165】
キット
本発明の別の態様は、本発明の医薬組成物を含むキットを提供する。キットは、本発明の医薬組成物に加えて、診断または治療薬を含む場合がある。キットは、診断または治療方法における使用説明書を含む場合もある。一部の実施形態では、キットは、本発明の医薬組成物および診断薬を含む。他の実施形態では、キットは、医薬組成物、および治療方法における使用説明書を含む。
【0166】
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の治療方法を行う際の使用に適するキットを含む。一実施形態では、キットは、本発明の固体形態の1種または複数を本発明の方法の実施に十分な量で収容する。別の実施形態では、キットは、本発明の方法の実施に十分な量の本発明の1種または複数の固体形態と、投薬のための容器とを含む。
【実施例】
【0167】
以下の実施例は、本発明の経口組成物/製剤および方法を例証するものである。
【0168】
(実施例1)
即時放出(IR)錠剤の調製
1mg、10mg、50mg、および100mgの投薬強度である、化合物1のトリス塩の、フィルムコーティングされていない即時放出(IR)錠剤を調製した[ミリグラムで表示する投薬強度重量は、化合物1と同等の重量である]。
【0169】
これらの錠剤の組成を、表1−1から1−4に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
IR錠剤を調製する工程
IR錠剤を調製する際は次のステップを実施した。
1.微結晶性セルロースのおよそ半分をブレンドする。
2.微結晶性セルロースに化合物1のトリス塩を加えた後、ラクトース一水和物およびデンプングリコール酸ナトリウムを加え、混合する。
3.ブレンドを粉砕し、残りの量の微結晶性セルロースを粉砕機に通す。粉砕された粉末をブレンドする。
4.粒内(intra−granular)ステアリン酸マグネシウムを加え、ブレンドする。
5.圧密化および粉砕し、次いでブレンドする。
6.粒外(extra−granular)ステアリン酸マグネシウムを加え、ブレンドする。
7.適切な打錠機を使用して圧縮する。
【0175】
(実施例1B)
付加的な即時放出(IR)錠剤の調製
100mgの投薬強度である、化合物1のトリス塩の、フィルムコーティングされていない付加的な即時放出(IR)錠剤を調製した[ミリグラムで表示する投薬強度重量は、化合物1と同等の重量である]。こうした錠剤の組成を、表1−5、1−6、および1−7に示す。これらの錠剤は、実施例1における工程と同様の工程を使用して調製した(使用する崩壊剤をデンプングリコール酸ナトリウムまたはクロスポビドンとした)。
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
【表7】
【0179】
(実施例2)
制御放出(CR)錠剤の調製
50mgの投薬強度である、化合物1のトリス塩の、フィルムコーティングされた制御放出(CR)錠剤を調製した[ミリグラムで表示する重量は、化合物1と同等の重量である]。
【0180】
このCR錠剤の組成を、表2−1に示す。
【0181】
【表8】
【0182】
CR錠剤を調製する工程
CR錠剤を調製する際は次のステップを実施した(図2を参照されたい)。
【0183】
活性層
1. 055Rスクリーンを使用して、化合物1のトリス塩、ポリエチレンオキシド、およびステアリン酸マグネシウムの一部分の、ブレンド−粉砕−ブレンド工程を実施する。
2.ステップ1からの混合物を、ローラー圧密化によって乾式造粒にかける。
3.粒外ステアリン酸マグネシウムを加え、混合物をブレンドして、活性層造粒を実現する。
【0184】
膨潤剤層
4. 055Rスクリーンを使用して、ポリエチレンオキシド、微結晶性セルロース、塩化ナトリウム、およびFD&C青色アルミニウムレーキ#2の、ブレンド−粉砕−ブレンド工程を実施する。
5.ステアリン酸マグネシウムを加え、混合物をブレンドして、膨潤剤ブレンドを得る。
【0185】
二層錠剤
6.活性層と膨潤剤層を圧縮して、二層コアとする。
7.適切なパンコーターを使用して二層コアをフィルムコーティングして、浸透膜を生成する。
8.錠剤を棚型乾燥機で乾燥させて、残りの量の加工溶媒を除去する。
9.適切なレーザーを使用して、二層錠剤の活性層面への送達ポートを設ける。
【0186】
(実施例3)
化合物1(そのトリス塩の形態)の臨床研究(用量規準化研究)
この研究は、メトホルミン単剤療法をバックグラウンド治療とした、2型真性糖尿病(T2DM)を有する参加者における、化合物1(そのトリス塩の形態)の、無作為化二重盲検(スポンサー非盲検)並行プラセボ対照多重経口用量漸増研究であった。
【0187】
この研究では、合計98人の参加者に、化合物1(そのトリス塩の形態)または対応するプラセボの経口用量が28日間与えられた。合計でおよそ12人の参加者が、3:1の無作為化比で各コホートに登録され(活性9人およびプラセボ3人)、8つのコホートが研究に登録された。参加者は、主任研究者の裁量で、−2日目またはそれ以前に臨床調査ユニット(CRU)に入ることが許され、30日目に、すべての評価を完遂した後、解放された。個々の参加者について、スクリーニング来訪から現地でのフォローアップ来訪までの合計参加期間は、およそ15週間であった。1日目に調査製品が最初に投薬された後、フォローアップ来訪およびフォローアップ連絡(電話によって行われた)が、それぞれ、35〜42日および56〜63日行われた。研究の完遂前に中止となった参加者がいれば、主任研究者およびスポンサーの裁量で、入れ替えることができた。92人の参加者が、入院患者研究を完遂した。
【0188】
すべてのコホートについての計画された用量設定スキームおよび投薬範例を、表2−1に示す。
QD:1日1回
BID:1日2回
【0189】
【表9】
【0190】
参加のための診断および主要判定基準:この研究の集団は、HbA1cが7.0%以上かつ10.5%以下であり、唯一の抗高血糖治療としてメトホルミンを服用しており、同意およびスクリーニング時にT2DMのある18歳〜70歳の間であり、体型指数(BMI)が24.5〜45.4kg/mであり、総体重が50kg(110lb)を超えている、T2DMに罹患している妊娠の可能性のない女性参加者および/または男性参加者とした。メトホルミン用量は、1日500mg以上であることが必要であり、スクリーニング来訪の前に少なくとも2か月間安定していることが必要であり、CRUにおいて、患者のベースライン投薬レジメンに従って投与された。
【0191】
研究治療:化合物1(そのトリス塩の形態)を、経口投与用の1mg、10mg、50mg、および100mg即時放出(IR)錠剤または50mg制御放出(CR)錠剤(実施例1および2を参照されたい)として供給した。対応するプラセボ錠剤(2:1、微結晶性セルロース:ラクトース)も提供した。
【0192】
結果
対象の素質および人口統計:合計98人の参加者が無作為化され、研究治療を受けるように割り当てられ、92人の参加者が研究を完遂した。研究が中止になった6人の参加者のうち、2人の参加者が、治療に関連した治療下発現AE(TEAE)のために中止になった。化合物1(そのトリス塩の形態)15mg 1日2回(BID)群における1人の参加者が、頭痛の中程度TEAEのために研究中止となり、化合物1(そのトリス塩の形態)50mg BID群における1の参加者が、食欲減退、悪心、嘔吐の中程度TEAE、および疲労の軽度TEAEのために研究中止となった。加えて、化合物1(そのトリス塩の形態)50mgBID群における1人の参加者が、参加者による辞退のために中止となり、化合物1(そのトリス塩の形態)200mg 1日1回(QD)CR群からは3人の参加者が、その他の理由により中止となった。研究中止はすべて、治療段階で発生した。
【0193】
人口統計学的特徴および身体測定値は、すべての投薬群にわたって、全般に互角であった。無作為化された98人の参加者は、51人の男性(52%)と47人の女性(48%)からなっていた。参加者の大半は、白人であった(70人、71.4%)。61人(62.2%)の参加者は、ヒスパニックまたはラテン系アメリカ人であった。すべての参加者の平均年齢は、57.4歳であった(範囲:37〜70歳)。平均体重は、92.4kgであった(範囲:50.2〜138.9kg)。平均BMIは、32.9kg/mであった(範囲:25.0〜43.0kg/m)。すべての参加者についての平均T2DM期間は、9.5年であり(範囲:0.3〜29.1年)、研究集団についてのベースライン平均HbA1cは、8.3%であった(範囲:8.01〜8.61%)。
【0194】
安全性の結果:
(A)有害事象
研究では、83人の参加者(84.7%)によって、合計319件の全因果関係TEAEが報告され、そのうち262件(262/319:82.1%)のTEAEが、治療に関連したものとみなされた。2人の参加者が、研究中に2件の重度TEAEを経験し、そのうちの1件は、投薬期間に発生し、治療に関連したものとみなされ、他方は、フォローアップ期間中に発生し(同じくSAE)、治療に関連したものとはみなされなかった。死亡はなかった。1件のSAEは、研究報告期間に発生した(治療に関連したものではなく、前述したとおりである)。同じく治療に関連したものでない別のSAEが、同じ参加者において、研究報告期間外に報告され、臨床データベースには記録されなかった。合計2人の参加者が、TEAEのために研究中止となり、2人の参加者は、TEAEのために研究薬物を中断したが、研究を継続した。9人の参加者:プラセボ群における1人、50mgBID群における4人、120mgBID群における1人、120mgBID緩徐用量設定群における2人、および200mgQD CR群における1人が、TEAEのために、用量を減らし、または一時的に中断した。
【0195】
化合物1(そのトリス塩の形態)10mgBIDおよび15mgBID群は、全因果関係TEAEの数が最も低く、それぞれ、8および16事象であった。120mgBID緩徐用量設定群は、全因果関係TEAEが最も多く、50事象であった。化合物1(そのトリス塩の形態)120mgBID緩徐用量設定群では、1件のSAE(治療に関連していない)および2件の重度TEAE(1件は治療に関連し、1件は関連していない)が報告された。プラセボ、50mgBID、70mgBID、120mgBID、120mgQDおよび200mgQD CR群では、それぞれ、44、45、31、43、35、および47件のTEAEが報告された。
【0196】
器官別大分類(system organ class)(SOC)による、最も頻繁に報告された全因果関係TEAEは、胃腸障害(全参加者の73.5%において報告された)および神経系障害(33.7%)であった。基本語(preferred term)(PT)による、最も一般的に報告された全因果関係TEAEは、悪心(49.0%)、消化不良(32.7%)、嘔吐(26.5%)、下痢(24.5%)、頭痛(23.5%)、および便秘(20.4%)であった。各用量群における胃腸障害部門の全因果関係TEAEの発生率は、10mgBID群(33.3%)を除いて、プラセボ群(52.0%)における発生率より高かった。
【0197】
全因果関係TEAEの大半(319件のうち294件)は、重症度が軽かった。23件のTEAEが中程度であり、このうち18件のTEAEが、治療に関連したものとみなされた。120mgBID緩徐用量設定群において2件の重度TEAEが報告され、このうち1件が、治療に関連したものとみなされた。
【0198】
120mgBID群における1人の参加者が、食事または軽食を取り損ねた後に軽度の低血糖を経験しており、この低血糖は、自己限定性であり、治療に関連したものとみなされた。
【0199】
(B)臨床検査評価
ベースライン異常を問わずに、最も一般的な検査値異常は、正常上限(ULN)の1.3を超えるヘモグロビンA1C(%)(45件、48.9%)であり、これは、本研究の適格性判定基準のためであると見込まれた。他の一般的な検査値異常として、ULNの1.1倍を超える活性化部分トロンボプラスチン時間(40件、40.8%)、および1mg/dL以上の尿中グルコース(36件、36.7%)が挙げられるが、これらは、プラセボに比べても不均衡ではないように思われた。
【0200】
(C)バイタルサイン
部門別分析について予め指定された判定基準を満たした、最も頻繁に報告されたベースライン後バイタルサインは、すべての治療群にわたって、39人の参加者における仰臥位収縮期血圧(BP)の30mmHg以上の低下、および24人の参加者における仰臥位拡張期BPの20mmHg以上の低下であった。40bpm超120bpm未満の値である脈拍数について、予め指定された判定基準を満たした参加者はいなかった。部門別分析によって、バイタルサイン異常の頻度に、用量に関連した明らかな増加は認められなかった。
【0201】
化合物1(そのトリス塩の形態)治療では、1、14、21、および28日目に、脈拍数がプラセボに比べて増加し、一般に、28日目には1日目と比較して大幅な増加が認められた。1日目から28日目までのすべての投薬間隔において、脈拍数の平均時間一致二重差は、プラセボにおける−6.4〜−0.8bpmの範囲に比べて、すべての用量の化合物1(そのトリス塩の形態)において、−6.4〜11.8bpmの範囲となった。脈拍数のこうした増加が認められたものの、脈拍数に関連したAEは報告されず、120bpmを超える脈拍数の出現はなかった。
【0202】
(D)ECG
合計5人の参加者で、450超480以下の総計QTcF(QT間隔をFridericia補正式に基づいて心拍数について補正したもの)間隔またはベースラインからの30超60以下の変化という予め指定された判定基準を満たすベースライン後ECG(心電図)データが報告され、このうち2件は、プラセボ群において発生し、このうち3件は、化合物1(そのトリス塩の形態)が計画された治療群において発生した。これらの出現は、自己限定性であり、介入が必要にはならなかった。300msec以上のPR間隔または140msec以上のQRS期間という判定基準を満たしたデータはなく、部門別分析によって、ECG異常の頻度に、用量に関連した明らかな増加は認められなかった。オプションの化合物1(そのトリス塩の形態)群(化合物1(そのトリス塩の形態)120mgBID緩徐用量設定、120mgQD、および200mgQD CR群)において、ECG異常は認められなかった。AEとして報告されたECG異常はなく、調査者によって臨床的に重大であると報告されたECG所見は何もなかった。
【0203】
化合物1(そのトリス塩の形態)の上昇的な複数回の経口用量は、T2DMを有する成人参加者において、一般に安全であり、十分に忍容された。最も一般的に報告された全因果関係TEAEは、悪心、消化不良、嘔吐、下痢、頭痛、および便秘であった。
【0204】
化合物1(そのトリス塩の形態)用量を増加させても、安全性臨床検査、バイタルサイン、またはECGパラメーターに、臨床的に重大な有害傾向は認められなかった。
【0205】
薬物動態評価
化合物1(そのトリス塩の形態)血漿薬物動態パラメーターである、0時間目〜24時間の血漿濃度時間プロファイル下面積(AUC24)、24時間の間隔にかけての最大観察濃度(Cmax)、およびCmaxになる時間(Tmax)を、1日目の後に算出し、濃度−時間データの非コンパートメント解析を使用して、各参加者および治療について、複数回用量投与を算出した。
【0206】
【表10】
【0207】
1日目における化合物1(そのトリス塩の形態)の1回の経口投薬後、QDおよびBIDレジメン用IR製剤についての吸収は、投薬後2.0〜4.0時間という中央TmaxおよびTmax1において起こった。
【0208】
用量正規化平均AUC24値に基づく1日目曝露量は、IR製剤についてのすべてのBIDおよびQD治療において、概ね用量に比例するようであった。BID IR製剤治療が施されたコホートについては、28日目に、AUC24およびCmaxが、概ね用量に比例した形で増大した。
【0209】
BIDおよびQD IR治療については、28日目における平均CmaxおよびCmax1値に、投薬後3〜10時間という中央TmaxおよびTmax1で到達した一方、CR製剤治療(コホート7)については、中央Tmaxが投薬後14時間となり、吸収がより緩やかであった。すべての治療における平均t1/2値が、4.7時間〜8.1時間の間の範囲となり、施された種々の治療、レジメン、または用量のすべてにおいて、明らかな傾向は観察されなかった。CR製剤は、14日目に、IR製剤について観察された曝露量に比べて、およそ50%少ない曝露量(AUC24およびCmax)を示したが、しかし、28日目には、曝露量が、IR製剤治療について観察されたものと同様になった。化合物1の尿中回収率は低く、28日目における尿中でも、変わらず用量の0.1%未満しか回収されなかった。
【0210】
FPG、MDG、HbA1C、および体重測定
ベースライン(−1日目)および28日目における空腹時血糖値(FPG)、24時間平均日内血糖値(MDG)、HbA1C、および体重の(ベースラインからの変化として示した)測定値を、表2−2から2−5に示す。
【0211】
ベースラインは、−1日目における測定値(MDG、FPG、HbA1c、または体重)であると定めた。
無作為化された治療は、28日目における目標用量を表すものとした。
ベースラインは、ベースラインから目的の時点までの変化についての値が欠けていない対象に限定した。
【0212】
【表11】
観察されたデータを示した。平均日内血糖値(MDG)は、AUC24/24と定めた。
【0213】
【表12】
【0214】
【表13】
【0215】
【表14】
【0216】
表2−2から2−4において示されるとおり、化合物1(そのトリス塩の形態)は、28日目におけるFPG、MDG、HbA1c、および体重の堅調な低減を示し、70mg〜120mgを1日2回というより高い用量において有効性が増していた。
【0217】
本明細書で言及するすべての特許、特許出願、および参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
図1
図2
【外国語明細書】
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