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特開2021-155573少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-155573(P2021-155573A)
(43)【公開日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/32 20060101AFI20210910BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
   C08F220/32
   C08F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-57796(P2020-57796)
(22)【出願日】2020年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼垣 香織
(72)【発明者】
【氏名】日下 明芳
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AJ03P
4J100AL08Q
4J100AL10Q
4J100BA02H
4J100BA03H
4J100BA10H
4J100BC43H
4J100BC54Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100HC10
4J100HC27
4J100HE14
4J100HE32
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】本発明は、操作が簡便で、反応中に反応系のゲル化が生じない、カテコール基、ガロール基等の少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の第一の態様は、環状エーテル基を側鎖に有するポリマーと、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環、及び、エステル化カルボキシル基を有する化合物とを反応させることを含む、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテル基を側鎖に有するポリマーと、
少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環、及び、エステル化カルボキシル基を有する化合物と
を反応させることを含む、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法。
【請求項2】
環状エーテル基を側鎖に有するポリマーが、
【化1】
で表されるモノマーユニットを含むポリマーであり、
式(1)において、
は水素又はメチルであり、
ZはO又はNHであり、
は、
【化2】
で表される基であり、
式(2)において、
*は式(1)に示すZへの結合を示し、
nは0又は1であり、
21は、単結合又は炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、且つ、R22は、水素又は炭素数1〜3の一価の炭化水素基である、或いは、
21とR22とは、一体となって、炭素数4〜10の三価の飽和炭化水素基を形成しており、
23は、水素又は炭素数1〜3の一価の炭化水素基である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環、及び、エステル化カルボキシル基を有する化合物が、
【化3】
(式中、
は炭素数1〜10の一価の炭化水素基であり、
は単結合又は炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、
mは2又は3であり、
OHのうち少なくとも一組はベンゼン環上の隣接した炭素原子と結合している)
で表される化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテコール基、ガロール基等の、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
側鎖にカテコール基又はガロール基(ガロイル基)を有するポリマーは、接着剤、吸着剤、表面処理剤、防錆剤、還元剤等に用いられる機能性ポリマーである。
側鎖にカテコール基又はガロール基を有するポリマーを合成する方法として以下に挙げる方法が知られている。
【0003】
特許文献1では、3つの水酸基により置換されたベンゼン環を含む側鎖(ガロール基様側鎖)を有する共重合体の製造方法として、水酸基を保護基により保護したガロール基様側鎖を含むモノマー(a)と、疎水性基又はエーテル鎖を有するモノマー(b)とを共重合させ、共重合体形成後に保護基を脱保護する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2では、金属粒子用高分子分散剤として、新規なカテコール基含有重合体が開示されており、その製造方法として、カテコール基の2つの水酸基をケタール又はアセタールにより保護した環状カテコール含有モノマーと、アクリレート系モノマーとを共重合させ、その後に環状カテコールを脱保護する方法が記載されている。
【0005】
特許文献3では、金属または合金からなる基材の表面に結合するナノコーティング材料として、少なくとも一組の隣接水酸基を持つベンゼン環を含む接合基を有する第1の側鎖又は末端を含む高分子主鎖を有する化合物が記載されている。前記接合基としてドーパミンの骨格を有する接合基が記載されている。ドーパミンはカテコール基を有する。特許文献3では、前記高分子主鎖を有する化合物の製造方法の例として、ドーパミンメタクリルアミドと、アクリレート系モノマー又はスチレンとを共重合させる方法が記載されている。
【0006】
特許文献4では、水中接着剤として利用できる機能性ポリマーとして、ポリアクリレートから成る主鎖に少なくとも3種類の側鎖が結合されているポリマーが記載されており、前記側鎖のうち第2の側鎖が、その末端に修飾されていてもよいカテコール性水酸基を有するものであることが記載されている。特許文献4ではこのポリマーの製造方法として、カテコール基を含むアクリレートモノマー中の水酸基をトリエチルシリル基により保護した後、保護されたカテコール基を含むアクリレートモノマーと、他の2種類のアクリレートモノマーとを共重合し、その後に前記水酸基を脱保護する方法が記載されている。
【0007】
特許文献5では、オーバーコートされたフォトレジストと共に用いるためのコーティング組成物の成分の1つとして、新規なカテコール含有ポリマーが記載されている。特許文献5では、この新規なカテコール含有ポリマーの好ましい態様として、下記のスキーム1において例示されるように、グリシジル部分(エポキシ基を含む)を有するアクリレート樹脂等の反応基を有するポリマーを、該ポリマーと反応する1つ以上の部分を含むカテコール試薬とを反応させて得られる、ペンダントカテコール基を有するポリマー反応生成物が記載されている。
【0008】
【化1】
【0009】
特許文献5の実施例4では、上記スキーム1による合成の具体例として、ポリ(グリシジルメタクリレート)と、3,4−ジヒドロキシ安息香酸とを、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)の存在下で反応させて、カテコール官能性ポリマーP9(ペンダントカテコール基を有するポリマー反応生成物)を合成したこと、その収率が40%であったことが記載されている。
【0010】
特許文献5では上記スキーム1で得られるポリマー反応生成物の側鎖中のエポキシ基に由来する水酸基が、コーディング組成物の架橋に用いられることが記載されている。
【0011】
一方、非特許文献1では、側鎖にエポキシ基を有する反応性高分子と、機能性分子団を有するカルボン酸とを反応させて、機能性高分子の合成を行う場合、可溶性のポリマーを得ることは極めて困難であることが記載されている。その理由として、高分子の側鎖のエポキシ基とカルボン酸との結合により生成する水酸基と、エポキシ基との分子間での付加反応が副反応として生じ、ゲル化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019−147857号公報
【特許文献2】特開2014−65857号公報
【特許文献3】WO2015/152176
【特許文献4】特開2012−233059号公報
【特許文献5】特開2017−107185号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】有機合成化学,第49巻,第3号,第219頁(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1〜4に記載の方法は、いすれも、カテコール基又はガロール基を有するモノマーを、他のモノマーと重合させることにより、側鎖にカテコール基又はガロール基を有するポリマーを製造する方法である。カテコール基又はガロール基を有するモノマーは、製造が容易でなく、高コストであるため、特許文献1〜4に記載の方法は実施が容易ではない。
【0015】
また、特許文献1、2及び4に記載の方法は、カテコール基又はガロール基に含まれる水酸基を保護基により保護した状態で重合を行い、重合後に脱保護することを含む方法であるため、工程が多く操作が複雑であるという問題がある。
【0016】
一方、特許文献5に記載のペンダントカテコール基を有するポリマー反応生成物の製造方法は、側鎖にエポキシ基を含むポリマーと、該ポリマーのエポキシ基と反応する1つ以上の部分を含むカテコール試薬とを反応させるため、比較的安価な原料を用いて実施可能であるとともに、保護基による保護と脱保護の操作を必要としない。
【0017】
しかしながら本発明者らは、特許文献5の上記のスキーム1に従い、特許文献5の実施例4と同様に、ポリ(グリシジルメタクリレート)と、3,4−ジヒドロキシ安息香酸とを、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)の存在下で反応させたとき、反応中に反応系全体がゲル化してしまい、可溶性の生成物を得ることができないことを見出した。このゲル化は、非特許文献1に示唆されているように、ポリ(グリシジルメタクリレート)のエポキシ基と3,4−ジヒドロキシ安息香酸のカルボキシル基とが反応して生じるポリマーの、前記エポキシ基に由来する側鎖上の遊離の水酸基と、未反応のポリ(グリシジルメタクリレート)のエポキシ基とが反応して、ポリマー間が架橋することが原因であると推定される。
【0018】
このように従来の、カテコール基、ガロール基等の少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法は、操作が複雑である、或いは、反応中にゲル化してしまい反応が進まないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題に鑑みて、本出願人は鋭意検討し、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの新たな製造方法を完成した。
本発明の第一の態様は、
環状エーテル基を側鎖に有するポリマーと、
少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環、及び、エステル化カルボキシル基を有する化合物と
を反応させることを含む、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法に関する。
【0020】
本発明のこの態様に係る方法では、ベンゼン環上の水酸基を保護基により保護する必要がない。本発明のこの態様に係る方法ではまた、反応生成物であるポリマーが、側鎖上に環状エーテル基に由来する水酸基を含まないため、反応の途中で反応系のゲル化が生じない。
【0021】
出発物質として用いる前記ポリマーは、好ましくは、
【化2】
で表されるモノマーユニットを含むポリマーである。
ここで式(1)において、
は水素又はメチルであり、
ZはO又はNHであり、
は、
【化3】
で表される基であり、
式(2)において、
*は式(1)に示すZへの結合を示し、
nは0又は1であり、
21は、単結合又は炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、且つ、R22は、水素又は炭素数1〜3の一価の炭化水素基である、或いは、
21とR22とは、一体となって、炭素数4〜10の三価の飽和炭化水素基を形成しており、
23は、水素又は炭素数1〜3の一価の炭化水素基である。
【0022】
出発物質として用いる前記化合物は、好ましくは、
【化3】
(式中、
は炭素数1〜10の一価の炭化水素基であり、
は単結合又は炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、
mは2又は3であり、
OHのうち少なくとも一組はベンゼン環上の隣接した炭素原子と結合している)
で表される化合物である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一以上の実施形態に係る方法によれば、カテコール基、ガロール基等を含む特殊なモノマーを用いる必要が無く、保護基による保護と脱保護の工程を必要とせずに、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーを製造することができる。
【0024】
また、本発明の一以上の実施形態に係る方法によれば、反応生成物であるポリマーが、側鎖上に環状エーテル基に由来する水酸基を含まないため、反応の途中で反応系のゲル化が生じない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明を実施するための形態について具体的に説明する。
【0026】
<出発物質>
本発明の一以上の実施形態では、出発物質として、環状エーテル基を側鎖に有するポリマー(以下「原料ポリマー」と称する場合がある)と、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環、及び、エステル化カルボキシル基を有する化合物(以下「原料化合物」と称する場合がある)とを用いる。
【0027】
原料ポリマーは、環状エーテル基を側鎖に有するポリマーであり、より好ましくは、前記式(1)で表されるモノマーユニットを含むポリマーである。
前記式(1)において、Rは好ましくはメチル又は水素である。
前記式(1)において、Zは好ましくはOである。
【0028】
前記式(1)において、Rは好ましくは前記式(2)で表される基である。
以下、前記式(2)で表される基の好ましい実施形態について説明する。
前記式(2)において、R21は、単結合又は炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、且つ、R22は、水素又は炭素数1〜3の一価の炭化水素基である(この態様に係るR21とR22との組み合わせを「R21及びR22の第1の構造」と称する)、或いは、
21とR22とは、一体となって、炭素数4〜10の三価の飽和炭化水素基を形成している(この態様に係るR21とR22との組み合わせを「R21及びR22の第2の構造」と称する)。
21及びR22の第1の構造において、R21は、より好ましくは炭素数1〜7の二価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜5の二価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜3の二価の炭化水素基である。ここで二価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせであってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は好ましくは直鎖である。R21は特に好ましくはメチレン又はエチレンであり、最も好ましくはメチレンである。
21及びR22の第1の構造において、R22が炭素数1〜3の一価の炭化水素基である場合、好ましくは炭素数1〜3の一価の飽和脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル又はエチルである。
21及びR22の第1の構造において、R22は水素であることが特に好ましい。
21及びR22の第2の構造において、前記炭素数4〜10の三価の飽和炭化水素基は、より好ましくは炭素数4〜6の三価の飽和炭化水素基であり、最も好ましくは式(3):
【化4】
で表される構造を有する三価基である。
前記式(3)において、
*1は式(1)に示すZへの結合を示し、
*2は式(2)に示すR21が結合する炭素への結合を示し、
*3は式(2)に示すR22が結合する炭素への結合を示す。
前記式(2)において、R23が炭素数1〜3の一価の炭化水素基である場合、好ましくは炭素数1〜3の一価の飽和脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル又はエチルである。
前記式(2)において、R23は好ましくは水素、メチル又はエチルである。
前記式(2)において、nが0である場合、環状エーテル基はエポキシ基であり、nが1である場合、環状エーテルはオキセタン基である。
前記式(2)において、R21及びR22が前記第1の構造である場合、nは好ましくは0又は1であり、R21及びR22が前記第2の構造である場合、nは好ましくは0である。
前記式(2)の特に好ましい例としては、
nが0であり、R21がメチレン又はエチレンであり、R22が水素であり、R23が水素である組み合わせ;
nが0であり、R21とR22とが一体となって炭素数4〜6の三価の飽和炭化水素基(特に好ましくは前記式(3)で表される三価基)を形成しており、R23が水素である組み合わせ;又は
nが1であり、R21がメチレン又はエチレンであり、R22が水素であり、R23が水素、メチル又はエチルである組み合わせ
が挙げられる。
【0029】
原料ポリマーは、全てのモノマーユニットが側鎖に環状エーテル基を含んでいる必要はない。原料ポリマーが、前記式(1)で表されるモノマーユニットを含む場合、1種以上の他のモノマーユニットを更に含んでいてよい。他のモノマーユニットとしては、環状エーテル基を有さず重合性ビニル基を有するモノマー化合物(ビニル重合性モノマー)に由来するモノマーユニットが挙げられる。このようなビニル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、及び、スチレン、並びに、これらの誘導体が例示できる。
【0030】
原料ポリマーが、前記式(1)で表されるモノマーユニットと、1種以上の他のモノマーユニットとを含むコポリマーである場合、ブロックコポリマーであってもよいし、ランダムコポリマーであってもよいし、両者の組み合わせであってもよい。
【0031】
原料ポリマー中の環状エーテル基の含有率は、1モル当量の環状エーテル基を含む原料ポリマーの重量を表す価数(g/eq)で表すことができる。原料ポリマーの価数は特に限定されないが、好ましくは130g/eq以上、より好ましくは140g/eq以上、好ましくは4000g/eq以下、より好ましくは3500g/eq以下であることができる。環状エーテル基がエポキシ基である場合、前記価数はエポキシ価と呼ばれる。
原料ポリマーの分子量は特に限定されないが、通常は質量平均分子量で5,000g/mol以上、500,000g/mol以下のものが利用できる。
【0032】
原料ポリマーは架橋されていない溶媒可溶性のポリマーであることが好ましい。
【0033】
原料ポリマーは、商業的に入手できる製品を購入して用いてもよいし、独自に調製してもよい。
原料ポリマーの商業的に入手できる製品としては、例えば、日油株式会社製の製品名マープルーフG−015SA、マープルーフG−0130SP、マープルーフG−0150M、マープルーフG−0250SP、マープルーフG−1005S、マープルーフG−1005SA、マープルーフG−1010S、マープルーフG−2050M、マープルーフG−01100、マープルーフG−017581、マープルーフGP−012024、東亜合成株式会社製の製品名ARUFON UG−4035、ARUFON UG−4040、ARUFON UG−4070等がある。
また、前記式(1)で表されるモノマーユニットを含む原料ポリマーを製造する場合、下記の式(1’)
【化5】
(式中、R、R及びZは式(1)について説明した通りである)
で表されるモノマーを、単独で、或いは、必要に応じて1種以上の他のビニル重合性モノマーとともに、適当な重合開始剤及び溶媒の存在下で重合して製造することが可能である。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の公知のラジカル重合開始剤が例示できる。
【0034】
前記式(1’)で表されるモノマーの具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(下記式(1’−1))、(3-エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート(下記式(1’−2))、(3-エチルオキセタン−3−イル)メチルメタクリレート(下記式(1’−3))、グリシジルメタクリレート(下記式(1’−4))が挙げられる。
【化6】
【0035】
前記式(1’)で表されるモノマーの商業的に利用できる製品としては、株式会社ダイセル社製の製品名サイクロマーM100(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)、大阪有機化学工業株式会社製の製品名OXE−10((3-エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート)、OXE−30((3-エチルオキセタン−3−イル)メチルメタクリレート)、三菱ケミカル株式会社製の製品名アクリエステルG(グリシジルメタクリレート)等がある。
【0036】
原料化合物は、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環、及び、エステル化カルボキシル基を有する化合物であればよい。
【0037】
原料化合物中の「少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環」は、好ましくは、2個の隣接する水酸基により置換されたフェニル基、或いは、3個の隣接する水酸基により置換されたフェニル基として原料化合物中に存在する。ここで、2個の隣接する水酸基により置換されたフェニル基は、3,4−ジヒドロキシフェニル又は2,3−ジヒドロキシフェニルであり、特に好ましくは3,4−ジヒドロキシフェニル(カテコール基)である。3個の隣接する水酸基により置換されたフェニル基は、3,4,5−トリヒドロキシフェニル又は2,3,4−トリヒドロキシフェニルであり、好ましくは3,4,5−トリヒドロキシフェニル(ガロール基)である。原料化合物は1分子中に前記ベンゼン環を1個又は複数個含み、好ましくは1個含む。
【0038】
原料化合物中の水酸基は、保護基で保護されていても良いが、本発明の一以上の実施形態に係る方法によれば、保護基で保護する必要がない。
【0039】
原料化合物中のエステル化カルボキシル基は、好ましくは、カルボキシル基の水素が炭素数1〜10の一価の炭化水素基により置換された基である。ここで、炭素数1〜10の一価の炭化水素基は、後述するRと同様に定義される。原料化合物は1分子中にエステル化カルボキシル基を1個含む。
【0040】
原料化合物は前記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0041】
前記式(4)においてRは好ましくは炭素数1〜7の一価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜5の一価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜3の一価の炭化水素基である。ここで一価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせであってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は好ましくは直鎖である。Rは特に好ましくはメチル、エチル又はn−プロピルであり、最も好ましくはメチル又はエチルである。
【0042】
前記式(4)において、Rは単結合又は炭素数1〜10の二価の炭化水素基であり、特に好ましくは単結合である。
【0043】
前記式(4)において、Rが炭素数1〜10の二価の炭化水素基である場合、好ましくは炭素数1〜7の二価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜5の二価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜3の二価の炭化水素基である。ここで二価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせであってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は好ましくは直鎖である。Rが炭素数1〜10の二価の炭化水素基である場合、メチレン又はエチレンが好ましい。
【0044】
前記式(4)においてmが2である場合、前記式(4)中のフェニル基は、3,4−ジヒドロキシフェニル又は2,3−ジヒドロキシフェニルであり、特に好ましくは3,4−ジヒドロキシフェニル(カテコール基)である。
【0045】
前記式(4)においてmが3である場合、好ましくは、3つの水酸基が全てベンゼン環上の隣接した炭素原子と結合しており、より好ましくは、前記式(4)中のフェニル基は、3,4,5−トリヒドロキシフェニル又は2,3,4−トリヒドロキシフェニルであり、好ましくは3,4,5−トリヒドロキシフェニル(ガロール基)である。
【0046】
<製造方法>
本発明の一以上の実施形態に係る、少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環を側鎖に有するポリマーの製造方法は、
環状エーテル基を側鎖に有するポリマー(原料ポリマー)と、
少なくとも一組の隣接水酸基により置換されたベンゼン環、及び、エステル化カルボキシル基を有する化合物(原料化合物)と
を反応させることを含むことを特徴とする。
【0047】
この方法によれば、原料ポリマーの側鎖上の環状エーテル基と、原料化合物のエステル化カルボキシル基が結合を形成する。原料ポリマーとして前記式(1)で表されるモノマーユニットを含むポリマーを用い、原料化合物として前記式(4)で表される化合物を用いた場合の反応スキームを以下に示す。
【0048】
【化7】
【0049】
生成されるポリマー(「生成ポリマー」と称する場合がある)の側鎖では、環状エーテル基に由来する水酸基が遊離の形態では存在せず、水酸基の水素が、原料化合物のエステル化カルボキシル基を構成するアルコール側の基により置換されている。このため、本発明の前記一以上の実施形態によれば、生成されるポリマー中に環状エーテル基に由来する遊離の水酸基が含まれる背景技術欄で説明した特許文献5のスキーム1と異なり、生成ポリマーと、未反応の原料ポリマーの環状エーテル基との意図しない架橋形成が抑制される。その結果、本発明の前記一以上の実施形態では、反応中に反応系がゲル化することがなく溶液の状態を維持できるため、反応が進行し易いと推定される。
【0050】
また、本発明の前記一以上の実施形態では、原料化合物に由来するベンゼン環上の隣接水酸基を保護基により保護する必要はないため、工程が簡略化できる。
【0051】
また、本発明の前記一以上の実施形態に用いる原料ポリマー及び原料化合物は、比較的安価に入手又は調製することができるため好ましい。
【0052】
本発明の前記一以上の実施形態に係る方法において、原料ポリマーと原料化合物の量比は特に限定されないが、好ましくは、原料ポリマー中の環状エーテル基と、原料化合物中のエステル化カルボキシル基とのモル比が、環状エーテル基1モルあたり、エステル化カルボキシル基が例えば0.3〜4モル、好ましくは0.5〜3モルとすることができる。
【0053】
本発明の前記一以上の実施形態に係る方法は、塩基触媒、酸触媒等の適当な触媒の存在下で実施することができる。塩基触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン及びN−メチルイミダゾール等の第三アミン系触媒;テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリメチルエチルアンモニウムブロミド、トリエチルメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド及びベンジルトリプロピルアンモニウムブロミド並びにそれらのハロゲン原子が塩素に置き換わった化合物等の第四級アンモニウム塩触媒が挙げられる。より好ましくは、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)である。
これら触媒の使用量は、環状エーテル基に対して、0.1〜5モル%、好ましくは0,5〜3モル%とすることができる。
【0054】
反応溶媒としては非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましく、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、4−メチルテトラヒドロピラン等の溶媒を用いることができる。
【0055】
本発明の前記一以上の実施形態に係る方法において反応時間、反応温度は特に限定されず、反応スケール等を考慮して適宜設定することができる。反応温度は好ましくは80℃以上、好ましくは150℃以下であることができる。
【実施例】
【0056】
<FT−IR測定方法>
下記の測定装置および測定条件により、試料をそのまま一回反射型ATR法にて測定し、赤外吸収スペクトルを得た。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10(Thermo SCIENTIFIC社製)および一回反射型水平状ATR Smart−iTR(Thermo SCIENTIFIC社製)
ATRクリスタル:ダイヤモンド貼付KRS−5(角度=42°)
測定法:一回ATR法
測定波数領域:4000cm−1〜650cm−1
測定深度の波数依存性:補正せず
検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター
分解能:4cm−1
積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)
【0057】
<質量平均分子量測定方法(GPC)>
質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した、ポリスチレン(PS)換算質量平均分子量を意味する。
具体的には、試料6mgをTHF(テトラヒドロフラン)6mLに溶解させ(浸漬時間:6±1hr(完全溶解))、(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過した上で次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の質量平均分子量を求めた。
使用装置:東ソー(株)製「HLC−8320GPC EcoSEC」ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)
[GPC測定条件]
カラム:
サンプル側カラム:
ガードカラム:東ソー(株)製 TSK guardcolumn SuperMP(HZ)−H(4.6mmI.D.×2cm)×1本
測定カラム:東ソー(株)製 TSKgel SuperMultiporeHZ−H(4.6mmI.D.×15cm)×2本直列
リファレンス側カラム:
東ソー(株)製 TSKgel Super HZ1000(6.0mmI.D.×15cm)×1本
カラム温度:40℃
移動相:THF
移動相流量
サンプル側ポンプ:0.2mL/min
リファレンス側ポンプ:0.2mL/min
検出器:UV検出器
試料濃度:0.1wt%
注入量:20μL
測定時間:21min
サンプリングピッチ:200msec
【0058】
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM−105」および「STANDARD SH−75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)秤量後THF30mLに溶解し、Bも(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)秤量後THF30mLに溶解した。標準ポリスチレン検量線は、作成したAおよびB溶解液を20μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(一次式)を作成することにより得られ、その検量線を用いて質量平均分子量を算出した。
【0059】
<NMR測定>
ポリマーの合成確認として下記の測定装置および測定条件によりH−NMR測定を行った。
具体的には5mm径のNMR管に試料を13mg入れ、重クロロホルム(クロロホルム−d8)を加えて溶解させた。調整した溶液を以下条件にて測定した。
測定装置:JEOL RESONANCE製 JNM−ECA600
SCAN数:16
測定温度:21℃
【0060】
実施例1(側鎖にエポキシ基を有するポリマーとカテコール基含有カルボン酸エステル化合物との反応)
100mlサンプル瓶に、エポキシ基含有ポリマーとしてマープルーフG−0150M(日油株式会社製、エポキシ価:310g/eq)3.1g、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル1.82g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.032g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル20gを混合した。その後、120℃で10時間反応させた(エポキシ基/安息香酸エチル=1/1(モル比))。
反応終了後、ポリマー溶液を水中で再沈殿させ、ろ過後に風乾させて、ポリマーを得た。
【0061】
得られたポリマーのIR測定より、911cm−1のエポキシ基由来ピークの減少及び1605cm−1と3100〜3600cm−1の3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル由来のピークが確認できたことより、側鎖にカテコール基を有する目的のポリマーの合成を確認した。
【0062】
実施例2(側鎖にエポキシ基を有するポリマーとガロール基含有カルボン酸エステル化合物との反応)
100mlサンプル瓶に、エポキシ基含有ポリマーとしてとしてマープルーフG−0150M(日油株式会社製、エポキシ価:310g/eq)3.1g、没食子酸エチル1.98g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.032g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル20gを混合した。その後、120℃で10時間反応させた(エポキシ基/没食子酸エチル=1/1(モル比))。
反応終了後、ポリマー溶液を水中で再沈殿させ、ろ過後に風乾させて、ポリマーを得た。
【0063】
得られたポリマーのH−NMR測定により、3.4ppmに反応によりエポキシ基が開環して生成したOH基由来のピークが確認でき、8.0ppmに没食子酸エチルが有するOH基由来のピークが確認できたことより、側鎖にガロール基を有する目的のポリマーの合成を確認した。
【0064】
実施例3(側鎖にエポキシ基を有するポリマーとカテコール基含有カルボン酸エステル化合物との反応)
100mlサンプル瓶に、エポキシ基含有ポリマーとして、マープルーフG−0130SP(日油社製 エポキシ価530g/eq)5.3g、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル1.82g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.032g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル20gを混合した。その後、120℃で10時間反応させた(エポキシ基/安息香酸エチル=1/1(モル比))。
反応終了後、ポリマー溶液を水中で再沈殿させ、ろ過後に風乾させて、ポリマーを得た。
【0065】
得られたポリマーのIR測定より、907cm−1のエポキシ基由来ピークの減少及び1609cm−1と3100〜3700cm−1の3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル由来のピークが確認できたことより、側鎖にカテコール基を有する目的のポリマーの合成を確認した。
【0066】
実施例4(側鎖にエポキシ基を有するポリマーとカテコール基含有カルボン酸エステル化合物との反応)
100mlサンプル瓶に、エポキシ基含有ポリマーとして、マープルーフG−0250SP(日油社製 エポキシ価310g/eq)3.1g、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル1.82g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.032g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル20gを混合した。その後、120℃で10時間反応させた(エポキシ基/安息香酸エチル=1/1(モル比))。
反応終了後、ポリマー溶液を水中で再沈殿させ、ろ過後に風乾させて、ポリマーを得た。
【0067】
得られたポリマーのIR測定より、907cm−1のエポキシ基由来ピークの減少及び1609cm−1と3100〜3700cm−1の3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル由来のピークが確認できたことより、側鎖にカテコール基を有する目的のポリマーの合成を確認した。
【0068】
実施例5(側鎖にエポキシ基を有するポリマーとカテコール基含有カルボン酸エステル化合物との反応)
100mlサンプル瓶に、エポキシ基含有ポリマーとして、マープルーフG−2050M(日油社製 エポキシ価340g/eq)1.13g、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル0.61g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.011g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル20gを混合した。その後、120℃で10時間反応させた(エポキシ基/安息香酸エチル=1/1(モル比))。
反応終了後、ポリマー溶液を水中で再沈殿させ、ろ過後に風乾させて、ポリマーを得た。
【0069】
得られたポリマーのIR測定より、907cm−1のエポキシ基由来ピークの減少及び1609cm−1と3100〜3700cm−1の3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル由来のピークが確認できたことより、側鎖にカテコール基を有する目的のポリマーの合成を確認した。
【0070】
調製例1(側鎖にエポキシ基を有するポリマーの合成1)
100mlサンプル瓶に、アクリル酸ブチル9.9g、グリシジルメタクリレート2.74g、2,2’−アゾビスブチロニトリル0.08g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル50gを混合した。その後、70℃で10時間反応させた。
【0071】
調製例2(側鎖にエポキシ基を有するポリマーの合成2)
100mlサンプル瓶に、アクリル酸ブチル9.9g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(サイクロマーM100(株式会社ダイセル製))3.78g、2,2’−アゾビスブチロニトリル0.08g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル50gを混合した。その後、70℃で10時間反応させた。
【0072】
実施例6
調製例1で合成したポリマー溶液に、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル4.24g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.062gを加え、120℃で10時間反応させた(エポキシ基/安息香酸エチル=1/1.2(モル比))。
反応後のポリマーを、ヘプタンで再沈殿させて抽出することで得た。
【0073】
得られたポリマーのIR測定より、900cm−1のエポキシ基由来ピークの減少及び1600cm−1と3100〜3600cm−1の3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル由来のピークが確認できたことより、側鎖にカテコール基を有する目的のポリマーの合成を確認した。
得られたポリマーの質量平均分子量は114,000であった。
【0074】
実施例7
調製例2で合成したポリマー溶液に、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル4.24g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.062gを加え、さらに120℃で10時間反応させた(エポキシ基/安息香酸エチル=1/1.2(モル比))。
反応後のポリマーを、ヘプタンで再沈殿させて抽出することで得た。
【0075】
得られたポリマーのIR測定より、900cm−1のエポキシ基由来ピークの減少及び1600cm−1と3100〜3600cm−1の3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル由来のピークが確認できたことより、側鎖にカテコール基を有する目的のポリマーの合成を確認した。
得られたポリマーの質量平均分子量は128,000であった。
【0076】
比較例1(側鎖にエポキシ基を有する反応性ポリマーとカテコール基含有カルボン酸化合物との反応)
100mlサンプル瓶に、側鎖にエポキシ基を有するポリマーとして、マープルーフG−0150M(日油株式会社製、エポキシ価:310g/eq)3.1g、3,4−ジヒドロキシ安息香酸1.54g、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)0.032g、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル20gを混合した。その後、所定温度で10時間反応させた(エポキシ基/3,4−ジヒドロキシ安息香酸=1/1(モル比))。
反応終了後には、系全体が架橋によると思われるゲル化しており、目的の可溶性ポリマーを得ることはできなかった。