特開2021-156061(P2021-156061A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-156061(P2021-156061A)
(43)【公開日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】スペーサー部材及び複層ガラス
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/663 20060101AFI20210910BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
   E06B3/663 F
   C03C27/06 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-58665(P2020-58665)
(22)【出願日】2020年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池内 拓人
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA04
2E016AA05
2E016BA01
2E016BA09
2E016CB01
2E016CC02
4G061AA28
4G061BA01
4G061CB02
4G061CD02
4G061CD22
4G061CD24
4G061DA26
(57)【要約】
【課題】 本発明は、火災時に発生する熱にもかかわらず、複層ガラスを構成している2枚のガラス板の配設状態を維持し、火災時の延焼を概ね防止することができるスペーサー部材及びこれを用いた複層ガラスを提供する。
【解決手段】 本発明のスペーサー部材は、 複層ガラスを構成している2枚のガラス板間に配設されて用いられるスペーサー部材であって、燃焼前の常態における最大強度が20N/mm2以上であり且つ600℃で30分燃焼後の最大強度が5N/mm2以上であり、イソブチレン系重合体とガラスフリットとを含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層ガラスを構成している2枚のガラス板間に配設されて用いられるスペーサー部材であって、燃焼前の常態における最大強度が20N/mm2以上であり且つ600℃で30分燃焼後の最大強度が5N/mm2以上であり、イソブチレン系重合体とガラスフリットとを含有することを特徴とするスペーサー部材。
【請求項2】
イソブチレン系重合体は、加水分解性シリル基を含有していることを特徴とする請求項1に記載のスペーサー部材。
【請求項3】
スペーサー部材は、モース硬度が5以上である鉱物を含有することを特徴とする請求項2に記載のスペーサー部材。
【請求項4】
モース硬度が5以上である鉱物は、長石類を含むことを特徴とする請求項3に記載のスペーサー部材。
【請求項5】
2枚の対向するガラス板と、
上記ガラス板の対向面間に配設されているスペーサー部材とを含み、
上記スペーサー部材は、燃焼前の常態における最大強度が20N/mm2以上であり且つ600℃で30分燃焼後の最大強度が5N/mm2以上であり、イソブチレン系重合体とガラスフリットとを含有することを特徴とする複層ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサー部材及び複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
複層ガラスは、2枚のガラス板の対向面間における外周縁部にスペーサー部材を配設し、このスペーサー部材の外周部をシール材で封止することによって構成されている。従来から、スペーサー部材は、成形が容易で且つ安価であるという理由でアルミニウム製のスペーサー部材が汎用されている。
【0003】
一方、近年、様々な形状及び大きさを有する複層ガラスが所望されている。そのため、様々な形状及び大きさに容易に対応可能なことから、樹脂製のスペーサー部材の使用が増加している。
【0004】
通常、複層ガラスは、その上下部を建物に設けられた取付用凹部内に嵌め込むことによって固定されている。樹脂製のスペーサー部材は、火災時の熱に弱く、火災時に2枚のガラス板の対向面間から脱落し、取付用凹部内における2枚のガラス板の配設状態が崩壊する。その結果、複層ガラスを構成している2枚のガラス板と建物の取付用凹部との対向面間に隙間が生じ、この隙間を通じて炎が廻り込み、延焼を生じ、耐火性能が低いという問題を有している。
【0005】
そこで、特許文献1には、複数枚のガラス板が、ガラス板の周縁部に載置されたスペーサーを介して所定の間隔で対向配置されてなる複層ガラスにおいて、前記スペーサーが芳香族ビニル系化合物を構成単量体とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンを構成単量体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)を含有するゴム質スペーサーであって、前記スペーサーとガラス板とは接着材層を介して接着されており、接着材層が末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(B)及び分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物(C)を含有する粘着材組成物からなる複層ガラスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−308350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ゴム質スペーサーの耐火性能が不十分であり、優れた耐火性能を有するスペーサー部材が所望されている。
【0008】
本発明は、火災時に発生する熱にもかかわらず、複層ガラスを構成している2枚のガラス板の配設状態を維持し、火災時の延焼を概ね防止することができるスペーサー部材及びこれを用いた複層ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスペーサー部材は、複層ガラスを構成している2枚のガラス板間に配設されて用いられるスペーサー部材であって、燃焼前の常態における最大強度が20N/mm2以上であり且つ600℃で30分燃焼後の最大強度が5N/mm2以上であることを特徴とする。
【0010】
2枚のガラス板同士がスペーサー部材を介して所定の間隔を存して対向した状態に固定されて複層ガラスが構成される。具体的には、2枚のガラス板が対向した状態に配設され、この2枚のガラス板の対向面における外周縁部の全周に亘ってスペーサー部材が介在した状態となっており、2枚のガラス板はスペーサー部材によって所定間隔を保持した状態に維持されて複層ガラスが構成されている。
【0011】
スペーサー部材は、燃焼前の常態における最大強度が20N/mm2以上であるので、複層ガラスを構成している2枚のガラス板をスペーサー部材を介して強固に接着一体化していると共に、2枚のガラス板を所定間隔を存した状態に安定的に保持することができる。従って、建物に形成された、複層ガラスの取付用凹部内に、所定の厚みを有する複層ガラスを隙間なく配設させた状態に固定させることができる。スペーサー部材について、燃焼前の常態における最大強度は、150N/mm2以下が好ましい。
【0012】
スペーサー部材における燃焼前の常態の最大強度は下記の要領で測定された値をいう。先ず、縦50mm×横10mm×高さ10mmの直方体形状のスペーサー部材を23℃にて作製し、スペーサー部材を試験片とする。
【0013】
次に、一辺が10mmの平面正方形状で且つ厚みが10mmのガラス板を2枚用意する。2枚のガラス板を厚み方向から見て完全に一致するように重ね合わせ、2枚のガラス板の対向面間の中央部に上記試験片を介在させて積層体を作製する。なお、試験片の高さ方向と、ガラス板の厚み方向とが合致するように調整する。
【0014】
積層体を雰囲気温度が200℃となるように加熱した後に23℃にて3時間放置して、試験片とガラス板とを接着一体化させてH型試験片を作製する。
【0015】
NPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S−0001に準拠して23℃及びスピード50mm/minの条件下にてガラス板を把持して引張試験を行ってH型試験片の最大強度を測定し、この最大強度をスペーサー部材における燃焼前の常態の最大強度とする。
【0016】
スペーサー部材は、600℃で30分燃焼後の最大強度が5N/mm2以上である。スペーサー部材は火災時に発生する熱によって燃焼残渣を生成するが、この燃焼残渣の最大強度が5N/mm2以上である。スペーサー部材について、600℃で30分燃焼後の最大強度は、70N/mm2以下が好ましい。
【0017】
複層ガラスは、その端部を建物の取付用凹部に嵌め込んだ状態にして固定させて用いられる。スペーサー部材は、600℃で30分燃焼後の最大強度が5N/mm2以上であるので、火災時において、建物の取付用凹部内に嵌め込んでいる、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持される。従って、火災時において、建物に形成された、複層ガラスの取付用凹部と、この取付用凹部に対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。
【0018】
スペーサー部材について、600℃で30分燃焼後の最大強度は下記の要領で測定された値をいう。先ず、上述したスペーサー部材の最大強度の測定時と同様の要領でH型試験片を作製する。
【0019】
しかる後、H型試験片を600℃の恒温槽に30分間放置して燃焼させた後に恒温槽から取り出し、23℃及び相対湿度50%の雰囲気下にて3時間放置して燃焼後のH型試験片(燃焼残渣)を作製する。
【0020】
NPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S−0001に準拠して23℃及びスピード50mm/minの条件下にてガラス板を把持して引張試験を行って、燃焼後のH型試験片(燃焼残渣)の最大強度を測定する。
【0021】
以下において、イソブチレン系重合体とガラスフリットとを含有するスペーサー部材について説明する。
【0022】
[イソブチレン系重合体]
イソブチレン系重合体は、モノマー単位としてイソブチレンを含有しておればよいが、スペーサー部材の透湿度を抑制することができるので、イソブチレン単位を50質量%以上含有していることが好ましく、イソブチレン単位を70質量%以上含有していることがより好ましく、90質量%以上含有していることがより好ましく、100質量%含有していることがより好ましい。
【0023】
イソブチレン系重合体としては、特に限定されず、例えば、ポリイソブチレン、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。なお、イソブチレン系重合体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
イソブチレン系重合体としては、スペーサー部材の透湿度を抑制することができるので、ポリイソブチレン、ブチルゴム、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、イソブチレン系ブロック共重合体が好ましく、ポリイソブチレンがより好ましい。
【0025】
イソブチレン系重合体が常温(23℃)において固体である場合、イソブチレン系重合体の150℃における粘度は、15万〜100万mPa・sが好ましく、25万〜100万mPa・sがより好ましく、45万〜80万mPa・sがより好ましい。イソブチレン系重合体の150℃における粘度が15万mPa・s以上であると、スペーサー部材とガラス板との接着強度が向上すると共に、スペーサー部材の常態及び燃焼残渣の最大強度が向上する。イソブチレン系重合体の150℃における粘度が100万mPa・s以下であると、施工時のたれを防止することができ好ましい。なお、イソブチレン系重合体の150℃における粘度は、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて回転速度10rpmの条件下にて測定された値をいう。
【0026】
イソブチレン系重合体が常温(23℃)において液体である場合、イソブチレン系重合体の23℃における粘度は、1万〜80万mPa・sが好ましく、3万〜60万mPa・sがより好ましく、5万〜40万mPa・sがより好ましい。イソブチレン系重合体の23℃における粘度が1万mPa・s以上であると、スペーサー部材とガラス板との接着強度が向上する。イソブチレン系重合体の23℃における粘度が80万mPa・s以下であると、施工時のたれを防止することができ好ましい。なお、イソブチレン系重合体の23℃における粘度は、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて回転速度10rpmの条件下にて測定された値をいう。
【0027】
イソブチレン系重合体の重量平均分子量は、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。イソブチレン系重合体の重量平均分子量は、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。イソブチレン系重合体の重量平均分子量が上記範囲内であると、スペーサー部材とガラス板との接着性が向上し、更に、スペーサー部材の燃焼前の常態における最大強度及び燃焼残渣の最大強度が向上する。
【0028】
なお、イソブチレン系重合体の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、ポリスチレンにより換算された値である。例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
【0029】
<測定装置>
Waters社製 製品名「Waters 2690」
<測定条件>
カラム :Shodex GPC KF800D
(4.6mm ID250mm)×2本
カラム温度 :40℃
移動相 :テトラヒドロフラン(0.3mL/分)
サンプル濃度:0.2質量%
検出器 :RI WATERS社製 製品名「2414」
【0030】
イソブチレン系重合体は、市販されているものを用いることができる。例えば、イソブチレン系重合体は、EXXON社から商品名「ビスタネックスLM−MS」、「ビスタネックスLM−MH」、「ビスタネックスLM−H」、「ビスタネックスMML−80」、「ビスタネックスMML−100」、「ビスタネックスMML−120」及び「ビスタネックスMML−140」、新日本石油社から商品名「テトラックス3T」、「テトラックス4T」、「テトラックス5T」及び「テトラックス6T」、「ポリブテン(HV)ハイモール4H」、「ポリブテン(HV)ハイモール5H」及び「ポリブテン(HV)ハイモール6H」、並びに、BASF社から商品名「OPPANOL B10」、「OPPANOL B12」、「OPPANOL B15」、「OPPANOL B50」、「OPPANOL B80」、「OPPANOL B100」、「OPPANOL B120」、「OPPANOL B150」及び「OPPANOL B220」にて市販されている。
【0031】
イソブチレン系重合体は、加水分解性シリル基を含有していてもよい。イソブチレン系重合体が加水分解性シリル基を含有していると、スペーサー部材の硬化物の弾性復元性が向上し、ガラス板間の寸法変化に対する追従性が向上する。
【0032】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合してなる基である。
【0033】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0034】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0035】
イソブチレン系重合体は、1分子中に平均して、1個以上の加水分解性シリル基を有していることが好ましく、1.5個以上の加水分解性シリル基を有していることがより好ましく、1.8個以上の加水分解性シリル基を有していることがより好ましい。1個以上の加水分解性シリル基を有していると、スペーサー部材の硬化物の弾性復元性が向上し、ガラス板間の寸法変化に対する追従性が向上する。
【0036】
イソブチレン系重合体は、1分子中に平均して、3個以下の加水分解性シリル基を有していることが好ましく、2.8個以下の加水分解性シリル基を有していることがより好ましく、2.5個以下の加水分解性シリル基を有していることがより好ましい。3個以下の加水分解性シリル基を有していると、スペーサー部材の硬化物の復元性を向上することができて好ましい。
【0037】
ゴム弾性に優れている硬化物を形成することが可能なスペーサー部材を提供することができるので、イソブチレン系重合体は、その分子鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0038】
なお、イソブチレン系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H−NMRにより求められるイソブチレン系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるイソブチレン系重合体の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0039】
分子中に加水分解性シリル基を含有するイソブチレン系重合体は、市販されているものを用いることができる。分子中に加水分解性シリル基を含有するイソブチレン系重合体は、カネカ社から商品名「エピオンEP103S」、「エピオンEP303S」及び「エピオンEP505S」にて市販されている。
【0040】
[ガラスフリット]
スペーサー部材は、ガラスフリットを含有している。ガラスフリットを構成しているガラスとしては、たとえば、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラス、酸化ビスマス系ガラス、珪酸系ガラス、酸化ナトリウム系ガラスなどが挙げられ、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラスが好ましく、リン酸系ガラスがより好ましい。これらのガラスフリットは、B23、P25、ZnO、SiO2、Bi23、Al23、BaO、CaO、MgO、MnO2、ZrO2、TiO2、CeO2、SrO、V25、SnO2、Li2O、Na2O、K2O、CuO、Fe23などを所定の成分割合で調整して得ることができる。なお、ガラスフリットは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は350〜650℃が好ましく、360〜560℃がより好ましく、370〜540℃が特に好ましく、380〜520℃が最も好ましい。ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点が上記範囲内であると、スペーサー部材は優れた最大強度を有する。従って、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持され、火災時において、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。なお、ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は、ガラスの粘度が107.6dPa・s(logη=7.6)となる温度である。
【0042】
スペーサー部材中におけるガラスフリットの含有量は、イソブチレン系重合体100質量部に対して2〜300質量部が好ましく、5〜200質量部がより好ましく、20〜150質量部がより好ましく、50〜110質量部がより好ましい。ガラスフリットの含有量が上記範囲内にあると、スペーサー部材及びその燃焼残渣は優れた最大強度を有する。従って、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持され、火災時において、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。
【0043】
スペーサー部材中にガラスフリットが含有されているので、スペーサー部材は、透湿性が低く、2枚のガラス板とスペーサー部材とで囲まれた空間部への水分の進入を概ね抑制し、複層ガラスに結露が生じるのを略防止することができる。
【0044】
[鉱物]
スペーサー部材は、モース硬度が5以上である鉱物を含有していることが好ましい。スペーサー部材にモース硬度が5以上の鉱物を含有していると、スペーサー部材の燃焼残渣は、更に優れた最大強度を有する。従って、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持され、火災時において、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。
【0045】
モース硬度が5以上である鉱物としては、例えば、長石類、酸化鉄、酸化チタン、シリカ(SiO2)、石英、α−アルミナ、炭化珪素、炭化ホウ素などが挙げられ、長石類、酸化チタン、α−アルミナが好ましく、長石類、α−アルミナがより好ましく、長石類が特に好ましい。
【0046】
鉱物のモース硬度は下記の要領で測定される。硬さの異なる10種類の標準鉱物[モース硬度が1〜10(整数)の標準鉱物]を用意する。測定対象となる鉱物の表面にモース硬度の低い標準鉱物を順にこすりつける。測定対象となる鉱物の表面に傷が付かなかった標準鉱物のうち、モース硬度が最も大きい標準鉱物のモース硬度を鉱物のモース硬度とする。
【0047】
長石類は、長石及び準長石を含有しており、準長石が好ましい。なお、長石類は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
長石としては、例えば、正長石、サニディン、微斜長石、アノーソクレースなどのアルカリ長石;曹長石、灰曹長石、中性長石、曹灰長石、亜灰長石、灰長石などの斜長石などが挙げられる。
【0049】
準長石としては、例えば、カリ霞石(カルシライト)、灰霞石(カンクリナイト)などの霞石(ネフェリン)、霞石閃長石(ネフェリンサイアナイト)、白榴石(リューサイト)、方ソーダ石(ソーダライト)、藍方石(アウイン)、青金石(ラズライト)、黝方石(ノゼアン)、黄長石(メリライト)などが挙げられ、霞石閃長石(ネフェリンサイアナイト)が好ましい。なお、霞石閃長石は、閃長石と記載されることもある。
【0050】
鉱物の平均粒子径は、0.01〜100μmであり、0.1〜50μmが好ましく、1〜25μmがより好ましく、2〜15μmが特に好ましく、3〜10μmが特に好ましい。鉱物の平均粒子径が0.01μm以上であると、スペーサー部材の燃焼残渣は、更に優れた最大強度を有する。従って、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持され、火災時において、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。鉱物の平均粒子径が100μm以下であると、スペーサー部材中に均一に分散させることができ、スペーサー部材の燃焼残渣は、更に優れた最大強度を有する。従って、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持され、火災時において、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。
【0051】
なお、鉱物の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による画像解析によって測定された値をいう。具体的には、鉱物を透過型電子顕微鏡を用いて倍率100倍の拡大写真を撮影し、任意の50個の鉱物を抽出し、各鉱物の直径を測定し、各鉱物の直径の相加平均値を鉱物の平均粒子径とする。なお、鉱物の直径は、鉱物を包囲し得る最小径の真円の直径をいう。
【0052】
スペーサー部材中における鉱物の含有量は、イソブチレン系重合体100質量部に対して1〜800質量部が好ましく、30〜600質量部が好ましく、35〜450質量部がより好ましく、40〜300質量部がより好ましく、45〜200質量部がより好ましく、46〜150質量部が特に好ましい。鉱物の含有量が上記範囲内であると、スペーサー部材の燃焼残渣は、更に優れた最大強度を有する。従って、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持され、火災時において、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。
【0053】
スペーサー部材中において、鉱物の含有量とガラスフリットの含有量との比(鉱物の含有量/ガラスフリットの含有量)は、1〜20が好ましく、2〜15がより好ましく、2.5〜12がより好ましく、3〜10が特に好ましく、3.5〜7が最も好ましい。鉱物の含有量とガラスフリットの含有量との比(鉱物の含有量/ガラスフリットの含有量)が上記範囲内であると、スペーサー部材の燃焼残渣は、更に優れた最大強度を有する。従って、複層ガラスの端部において、ガラス板同士の間隔が安定的に維持され、火災時において、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスの端部との間に隙間が生じることが防止され、この隙間に起因した延焼を効果的に防止することができる。
【0054】
[添加剤]
スペーサー部材は、その物性を損なわない範囲で、無機充填剤、吸湿剤(例えば、ゼオライトなど)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、界面活性剤、難燃剤、シランカップリング剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤、滑剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0055】
無機充填材としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム(例えば、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどが挙げられ、炭酸カルシウムが好ましく、重質炭酸カルシウムがより好ましい。なお、無機充填材は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜7μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシウムによれば、スペーサー部材は、スペーサー部材とガラス板との接着性が向上し、更に、スペーサー部材の燃焼前の常態における最大強度及び燃焼残渣の最大強度が向上する。なお、炭酸カルシウムの平均粒子径は、SEMによる観察でスケール測定し10個の平均によって測定された値をいう。
【0057】
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、スペーサー部材に均一に分散させることができ、スペーサー部材はより優れた最大強度を有する。
【0058】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。スペーサー部材中における紫外線吸収剤の含有量は、イソブチレン系重合体100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0059】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。スペーサー部材中における酸化防止剤の含有量は、イソブチレン系重合体100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0060】
[光安定剤]
スペーサー部材は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、優れた最大強度をより長期間に亘って維持することができるスペーサー部材を提供することができる。
【0061】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0062】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、経時的な最大強度の低下が抑制されているスペーサー部材を提供することができる。
【0063】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0064】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0065】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0066】
【化1】
【0067】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、経時的な最大強度の低下がより高く抑制されているスペーサー部材を提供することができる。
【0068】
スペーサー部材中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、イソブチレン系重合体100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0069】
スペーサー部材は、イソブチレン系重合体と、ガラスフリットと、必要に応じて含有される鉱物及び添加剤とをイソブチレン系重合体が溶融した状態にて汎用の方法で混合することによって製造することができる。
【0070】
スペーサー部材を用いて複層ガラスを製造することができる。スペーサー部材は、常態において固体である場合、加熱することによって変形可能なペースト状とする。スペーサー部材が、常態において液体状である場合、粘度調整のために必要に応じて加熱してもよい。しかる後、スペーサー部材を2枚のガラス板のうちの一方のガラス板の外周縁部にホットメルト塗工機などの公知の手段を用いてスペーサー部材を塗工又は配設する。なお、ガラス板上にスペーサー部材をビード状に塗工することが好ましい。
【0071】
しかる後、一方のガラス板におけるスペーサー部材の塗工面上に他方のガラス板を重ね合わせて積層体を製造する。
【0072】
スペーサー部材を加熱することによってペースト状とした場合は、積層体を必要に応じて加熱しながらガラス板の重ね合わせ方向に必要に応じて押圧した後、積層体を冷却することによってスペーサー部材を固化させて、スペーサー部材とガラス板とを接着一体化することによって複層ガラスを製造することができる。なお、スペーサー部材が硬化性である場合、積層体の冷却時又は冷却前後において、スペーサー部材を硬化させてもよい。
【0073】
スペーサー部材が常態において液体状である場合、スペーサー部材を硬化させることによって固化させて、スペーサー部材とガラス板とを接着一体化することによって複層ガラスを製造することができる。
【0074】
スペーサー部材は、イソブチレン系重合体を含有していることから、凹凸が極めて少ない平滑面を有するガラス板に対しても優れた接着性を発現し、2枚のガラス板は、スペーサー部材を介して強固に一体化されている。更に、スペーサー部材は、常温において優れた最大強度を有していることから、2枚のガラス板を所定の間隔を存した状態に安定的に保持することができ、複層ガラスを建物の取付用凹部にこの取付用凹部との間に隙間を生じさせることなく長期間に亘って安定的に配設、固定することができる。
【0075】
しかも、スペーサー部材は、透湿性が低いため、2枚のガラス板とスペーサー部材とで囲まれた空間部への水分の進入を効果的に抑制することができ、複層ガラスに結露などの不測の事態が発生することを防止することができる。
【0076】
そして、スペーサー部材は、燃焼後においても燃焼残渣が優れた最大強度を維持していることから、スペーサー部材が介在している部分において、2枚のガラス板は、火災の燃焼中及び燃焼後においても、所定の間隔を存して安定的に配設されており、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスとの間に隙間が生じることはなく、複層ガラスの取付用凹部に起因した延焼を概ね防止することができる。
【0077】
しかも、スペーサー部材は、ガラスフリットを含有していることから、火災時に発生する熱によってガラスフリットが溶融し、スペーサー部材とガラス板との接着を更に強固なものとする。従って、2枚のガラス板は、火災後においても、所定の間隔を存して安定的に配設されており、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスとの間に隙間が生じることはなく、複層ガラスの取付用凹部に起因した延焼を概ね防止することができる。
【発明の効果】
【0078】
本発明のスペーサー部材は、燃焼前後の何れにおいてもガラス板に対する接着性に優れていると共に、優れた最大強度を有していることから、2枚のガラス板を所定の間隔を存した状態に安定的に固定することができる。従って、スペーサー部材を用いて構成された複層ガラスは、火災時の熱にもかかわらず、2枚のガラス板が所定の間隔を存した状態を確実に維持している。そのため、火災があった場合にあっても、建物における複層ガラスの取付用凹部とこれに対向する複層ガラスとの間に隙間が生じることはなく、複層ガラスの取付用凹部に起因した延焼を概ね防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0080】
実施例及び比較例のスペーサー部材の製造において下記の原料を使用した。
【0081】
[イソブチレン系重合体]
・ポリイソブチレンA(150℃における粘度:700000mPa・s、BASF社製 商品名「OPPANOL B15N」、重量平均分子量:85000、加水分解性シリル基を有しない、23℃で固体)
・ポリイソブチレンB(150℃における粘度:250000mPa・s、BASF社製 商品名「OPPANOL B13N」、重量平均分子量:65000、加水分解性シリル基を有しない、23℃で固体)
・ポリイソブチレンC(23℃における粘度:160000mPa・s、カネカ社製 商品名「エピオンEP303S」、重量平均分子量:10000、加水分解性シリル基としてトリメトキシシリル基を有する、加水分解性シリル基の1分子中における平均個数: 個、23℃で液体)
【0082】
[ガラスフリット]
・ガラスフリットA(リン酸系ガラス、日本フリット社製 「VY0144」、主成分:P25、Al23及びR2O、Rはアルカリ金属原子、軟化点:404℃)
・ガラスフリットB(ホウ酸系ガラス、日本フリット社製 「CY0086」、主成分:B23、ZnO及びRO、Rはアルカリ土類金属原子、軟化点:569℃)
【0083】
[鉱物]
・長石(ネフェリンサイアナイト、平均粒子径:5μm、白石カルシウム社製 商品名「ネスパー」、モース硬度:6)
【0084】
[充填材]
・重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製 商品名「P−30」、平均粒子径:5μm)
【0085】
[吸湿剤]
・ゼオライト(東ソー社製 商品名「ゼオラムA−3」)
【0086】
[酸化防止剤]
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 製品名「イルガノックス1010」)
【0087】
(実施例1〜6及び比較例1〜5)
ポリイソブチレン、ガラスフリット、長石、重質炭酸カルシウム、ゼオライト及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を表1に示した配合量となるようにニーダーを用いて150℃で60分間に亘って均一になるまで混合することによってスペーサー部材を製造した。
【0088】
(実施例7)
ポリイソブチレン、ガラスフリット、長石、重質炭酸カルシウム、ゼオライト及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を表1に示した配合量となるようにニーダーを用いて23℃で60分間に亘って均一になるまで混合することによってスペーサー部材を製造した。
【0089】
実施例1〜6及び比較例1〜5のスペーサー部材について、スペーサー部材を150℃に加熱して液体状とした上で、ポリエチレン製の型枠内に気泡が入らないように充填した。しかる後、スペーサー部材を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下に7日間養生して、厚みが3mmの平面矩形状の試験片を作製した。
【0090】
実施例7のスペーサー部材について、スペーサー部材を23℃に保持した上で型枠内に充填した。しかる後、スペーサー部材を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下に7日間養生して、スペーサー部材を硬化させて、厚みが3mmの平面矩形状の試験片を作製した。
【0091】
JIS K6251に準拠して得られた試験片から3号ダンベルを打ち抜いた。3号ダンベルの表面に互いに平行な一対の直線状の標線を描いた。一対の標線間の距離L0を mmであった。次に、標線間の距離L0が2倍となるように、3号ダンベルを伸長した。この伸長状態を維持した状態で3号ダンベルを23℃で24時間保持した。しかる後、3号ダンベルから伸長力を除去し、3号ダンベルを23℃で1時間放置した。3号ダンベルの表面に描いた一対の標線間の距離L1を測定した。下記式に基づいて復元性(%)を算出した。
復元性(%)=100−100×(L1−L0)/L0
【0092】
得られたスペーサー部材について、燃焼前の常態の最大強度及び600℃で30分燃焼後の最大強度(燃焼残渣の最大強度)を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0093】
得られたスペーサー部材の透湿度をJIS Z 0208 防湿材料の透湿度試験(カップ法)に準拠して測定し、その結果を表1に示した。
【0094】
【表1】