(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-156089(P2021-156089A)
(43)【公開日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリートのかぶり測定方法及び、鉄筋コンクリートのかぶり測定システム
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20210910BHJP
G01B 7/06 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
E01D22/00 A
G01B7/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-59385(P2020-59385)
(22)【出願日】2020年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】511204267
【氏名又は名称】株式会社計測技術サービス
(71)【出願人】
【識別番号】598067256
【氏名又は名称】北武コンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】土橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】金島 篤希
(72)【発明者】
【氏名】小林 史
(72)【発明者】
【氏名】堂内 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】仁平 達也
(72)【発明者】
【氏名】清 良平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 志朗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 忠朋
(72)【発明者】
【氏名】大滝 航
(72)【発明者】
【氏名】坂口 淳一
【テーマコード(参考)】
2D059
2F063
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059BB37
2D059BB39
2D059GG39
2F063AA16
2F063BA14
2F063BB10
2F063GA03
(57)【要約】
【課題】効率的な鉄筋コンクリート構造物の維持管理計画を策定するための情報を提供することができる鉄筋コンクリートのかぶり測定方法及び測定システムを提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造物にICタグを設置する設置工程と、前記ICタグを検知する検知手段及びかぶり測定を行うプローブを有する鉄筋探査機を前記鉄筋コンクリート構造物の表面に沿って直線状に一定間隔ごとに複数回走査する探査機走査工程と、前記探査機走査工程で得られた計測結果を面情報として測定箇所の構造物表面における表面情報を算出する表面情報算出工程と、前記表面情報算出工程で算出された表面情報と前記鉄筋コンクリート構造物の配筋図情報と連携する配筋図情報連携工程と、前記配筋図情報連携工程で得られた情報からかぶり不足の位置を定量的に把握するかぶり不足特定工程とを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物にICタグを設置する設置工程と、
前記ICタグを検知する検知手段及びかぶり測定を行うプローブを有する鉄筋探査機を前記鉄筋コンクリート構造物の表面に沿って直線状に一定間隔ごとに複数回走査する探査機走査工程と、
前記探査機走査工程で得られた計測結果を面情報として測定箇所の構造物表面における表面情報を算出する表面情報算出工程と、
前記表面情報算出工程で算出された表面情報と前記鉄筋コンクリート構造物の配筋図情報と連携する配筋図情報連携工程と、
前記配筋図情報連携工程で得られた情報からかぶり不足の位置を定量的に把握するかぶり不足特定工程とを有することを特徴とする鉄筋コンクリートのかぶり測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、
前記鉄筋探査機は、画像撮影手段を備え、
前記探査機走査工程は、該画像撮影手段によって、前記鉄筋コンクリート構造物の表面状態を把握する画像撮影工程を備えることを特徴とする鉄筋コンクリートのかぶり測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、
前記画像撮影工程で得られた前記鉄筋コンクリート構造物の表面情報と、前記配筋図情報連携工程で得られた情報を連携して、異物による測定誤差及び、ひび割れなどの変状発生状況を把握する状況把握工程を有することを特徴とする鉄筋コンクリートのかぶり測定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、
前記設置工程は、前記鉄筋コンクリート構造物の表面に前記ICタグを貼り付けることを特徴とする鉄筋コンクリートのかぶり測定方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、
前記設置工程は、前記鉄筋コンクリート構造物の内部に前記ICタグを埋め込むことを特徴とする鉄筋コンクリートのかぶり測定方法。
【請求項6】
鉄筋コンクリート構造物に設置されたICタグと、
前記ICタグを検知する検知手段、かぶり測定を行うプローブ及び画像撮影手段を有する鉄筋探査機と、
前記鉄筋探査機によって得られた計測結果を面情報として測定箇所の構造物表面における表面情報を算出すると共に、前記鉄筋コンクリート構造物の配筋図情報と連携してかぶり不足の位置を定量的に把握するかぶり不足特定手段を有することを特徴とする鉄筋コンクリートのかぶり測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道構造物、道路構造物などを含む構造物のうち、鉄道橋梁などの大型の鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋のかぶり厚を測定するかぶり測定方法及びかぶり測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートのかぶりは、鉄筋コンクリートにおける鉄筋からコンクリート表面までの最短距離を示す指標であり、鉄筋を腐食などから守る役割を有している。すなわち、鉄筋コンクリートにおいて、かぶりが不足すると鉄筋の腐食が促進され、その結果、鉄筋コンクリート構造物の耐荷性能が著しく低下する可能性がある。
【0003】
したがって、鉄筋コンクリート構造物では、予め設計基準に定められたかぶりが適切に確保されている必要がある。しかしながら、施工不良などの要因によって設計時に設定したかぶりが確保されていない場合があるため、鉄筋コンクリートのかぶりを測定して適切に検査する必要がある。また、かぶりを目視で把握することは非常に難しく、非破壊検査機器などを用いて有効かつ効率的な方法でかぶりを把握する必要がある。このような鉄筋コンクリートのかぶりの測定方法はやかぶりの測定システムは種々の方法及びシステムが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されている鉄筋のかぶり厚測定装置は、鉄筋と型枠の間に形成されるコンクリートの厚さに相当する鉄筋のかぶり厚を計測する鉄筋のかぶり厚計測装置であって、伸縮可能な棒状部材と、前記棒状部材の基端部側に取り付けられたレーザー距離計と、前記棒状部材の先端部に取り付けられ、前記棒状部材に対し垂直な基準板と、前記基準板に対し垂直に設けられた当接板とを有し、前記鉄筋と前記型枠の間に挿し入れられる計測点当接部材と、前記当接板に対し45°の角度を成すとともに、前記基準板に対し45°の角度を成して前記基準板に並ぶ位置であって、前記基準板と前記当接板とが交差する線と鏡面とが同一面上にある配置で、前記鏡面を前記レーザー距離計側に向けて前記計測点当接部材に固定された鏡と、を備え、前記レーザー距離計は、前記基準板に向けてレーザー光を照射する位置と、前記鏡面に向けてレーザー光を照射する位置とに切り替え可能に取り付けられている。
【0005】
このようなかぶり厚測定装置によれば、任意の鉄筋のかぶり厚を容易に測定することが可能となる。
【0006】
また、特許文献2に記載されているかぶり厚検査装置は、小型無人航空機と、前記小型無人航空機の前記鉄筋コンクリート構造物の表面に対向する側に設けられた移動機構と、前記小型無人航空機の前記移動機構側に設けられたかぶり厚測定センサと、前記かぶり厚測定センサの測定結果を周波数解析するスペクトル解析部とを備えている。
【0007】
このようなかぶり厚検査装置によれば、測定が行われた測線が適切な位置であったか否かを迅速に判断することができるようになる。また、測線の状況を評価する測線評価部を備えていれば、経験の浅い作業員でも正確な検査を行うことができる。さらに、測線評価部の評価結果に基づいて次の移動軌跡に小型無人航空機を移動させる軌跡制御部を備えていれば、自動的に最適な測線の位置を探し出すことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017−206902号公報
【特許文献2】特開2019−174398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、鉄筋のかぶりは、コンクリート構造物の耐久性に関する重要な指標であるが、実構造物においては、かぶりは位置ごとに異なる可能性があるため、コンクリートの剥離や剥落は鋼材腐食に起因して発生するものの、必ずしも構造物や部材全体に均一に発生していない。
【0010】
また、コンクリートの剥離や剥落は、かぶり不足に起因して小さい範囲で発生していることが多いことが知られており、局所的に発生したかぶり不足を把握することがコンクリート構造物の維持管理上有効であるため、このような局所的なかぶりの発生を予め把握しておく必要がある。
【0011】
しかしながら、従来のかぶり測定方法や装置によると、コンクリート構造物の表面を点又は線で測定しており、表面全体を面として捉えておらず、局所的に発生するかぶりについては確実に測定することができないという問題があった。
【0012】
また、コンクリート構造物の施工には、3D−CADなどを用いて設計を行い、当該3D−CADは、配筋図情報として有効に用いることができるものの、これを有効に活用しておらず、効率的な維持管理計画を策定するための情報がないという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物の局所的なかぶり不足を面的な情報として得ることで、配筋状況と変状情報を組み合わせて、効率的な鉄筋コンクリート構造物の維持管理計画を策定するための情報を提供することができる鉄筋コンクリートのかぶり測定方法及び鉄筋コンクリートのかぶり測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法は、鉄筋コンクリート構造物にICタグを設置する設置工程と、前記ICタグを検知する検知手段及びかぶり測定を行うプローブを有する鉄筋探査機を前記鉄筋コンクリート構造物の表面に沿って直線状に一定間隔ごとに複数回走査する探査機走査工程と、前記探査機走査工程で得られた計測結果を面情報として測定箇所の構造物表面における表面情報を算出する表面情報算出工程と、前記表面情報算出工程で算出された表面情報と前記鉄筋コンクリート構造物の配筋図情報と連携する配筋図情報連携工程と、前記配筋図情報連携工程で得られた情報からかぶり不足の位置を定量的に把握するかぶり不足特定工程とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、前記鉄筋探査機は、画像撮影手段を備え、前記探査機走査工程は、該画像撮影手段によって、前記鉄筋コンクリート構造物の表面状態を把握する画像撮影工程を備えると好適である。
【0016】
また、本発明に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、前記画像撮影工程で得られた前記鉄筋コンクリート構造物の表面情報と、前記配筋図情報連携工程で得られた情報を連携して、異物による測定誤差及び、ひび割れなどの変状発生状況を把握する状況把握工程を有すると好適である。
【0017】
また、本発明に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、前記設置工程は、前記鉄筋コンクリート構造物の表面に前記ICタグを貼り付けると好適である。
【0018】
また、本発明に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法において、前記設置工程は、前記鉄筋コンクリート構造物の内部に前記ICタグを埋め込むと好適である。
【0019】
また、本発明に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定システムは、鉄筋コンクリート構造物に設置されたICタグと、前記ICタグを検知する検知手段、かぶり測定を行うプローブ及び画像撮影手段を有する鉄筋探査機と、前記鉄筋探査機によって得られた計測結果を面情報として測定箇所の構造物表面における表面情報を算出すると共に、前記鉄筋コンクリート構造物の配筋図情報と連携してかぶり不足の位置を定量的に把握するかぶり不足特定手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法及び鉄筋コンクリートのかぶり測定システムは、鉄筋コンクリート構造物に設置されたICタグを検知するICタグ検知手段を有する鉄筋探査機を用いてICタグの通過時を起点とした鉄筋探査機の距離計測を用いることで、鉄筋からの相対的な位置情報を把握しながら鉄筋かぶりの情報を計測することができ、当該計測結果と3D−CADなどの配筋図情報とを連携させることで、かぶり不足の位置を定量的に把握すると共に、配筋図情報とひび割れなどの変状発生位置を連携させることができるので、効率的な鉄筋コンクリート構造物の維持管理計画を策定するための情報として利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法のフロー図。
【
図2】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法におけるICタグの設置状況を示す図。
【
図3】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法に用いる鉄筋探査機の構造を説明するための図。
【
図4】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法における探査機走査工程の測定状況を説明するための図。
【
図5】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法によって算出された表面情報の一例を示す図。
【
図6】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法に用いる配筋図情報の一例を示す図。
【
図7】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法によって得られた表面情報の一例を示す図。
【
図8】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法における配筋図情報連携工程によって得られた情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法のフロー図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法におけるICタグの設置状況を示す図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法に用いる鉄筋探査機の構造を説明するための図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法における探査機走査工程の測定状況を説明するための図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法によって算出された表面情報の一例を示す図であり、
図6は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法に用いる配筋図情報の一例を示す図であり、
図7は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法によって得られた表面情報の一例を示す図であり、
図8は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法における配筋図情報連携工程によって得られた情報の一例を示す図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法は、鉄筋コンクリート構造物にICタグを設置する設置工程(S101)と、ICタグを検知する検知手段及びかぶり測定を行うプローブを有する鉄筋探査機を鉄筋コンクリート表面に沿って直線状に一定間隔ごとに複数回走査する探査機走査工程(S102)と、探査機走査工程(S102)で得られた計測結果を面情報として測定箇所の構造物表面における表面情報を算出する表面情報算出工程(S103)と、表面情報算出工程(S103)で算出された表面情報と鉄筋コンクリート構造物の配筋図情報と連携する配筋図情報連携工程(S104)と、配筋図情報連携工程(S104)で得られた情報からかぶり不足の位置を定量的に把握するかぶり不足特定工程(S105)とを有している。
【0025】
鉄筋コンクリート構造物は、例えば、RCラーメン高架橋などの鉄道構造物や道路構造物などを含み、以下の説明においては、鉄道橋梁を測定対象として鉄筋コンクリートのかぶりを測定した場合について説明を行うが、本実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法は、測定の対象がこれらの鉄道構造物や道路構造物に限らず、鉄筋コンクリートを用いた構造物であれば、如何なる構造物も測定の対象となりうる。
【0026】
設置工程(S101)は、
図2に示すように、鉄筋コンクリート構造物である鉄道橋梁1にICタグ10を所定の間隔で表面に貼り付ける。また、ICタグ10の設置は、鉄道橋梁1の表面への貼り付けに限定されず、例えば、鉄道橋梁1の建設時にコンクリート内部に埋め込んで設置しても構わない。
【0027】
ICタグ10は、後述する鉄筋探査機20から発射される電波により微量な電力を得ることで電波を送信することで、鉄筋探査機20がICタグ10を検知した場合にICタグ10の位置を測定の基準点とすることができる。
【0028】
また、ICタグ10の設置位置や設置間隔は、鉄道橋梁1内の鉄筋やスペーサの位置によって適宜変更することが可能であり、例えば、5cm〜20cm間隔で直線状に配置したICタグ10の列を1m〜4m間隔で平行に配置することができる。なお、ICタグ10の設置位置は、後述する配筋図情報と連携可能なように基準点として設置される。その際、スペーサの位置も配筋図情報上に反映し、ICタグ10と位置情報を共有しても構わない。このように、かぶりを決定するスペーサの位置を把握しておくことにより、施工誤差の要因把握することができ、測定精度を向上させることができる。
【0029】
探査機走査工程(S102)は、
図3に示すような鉄筋探査機20を用いて鉄道橋梁1の表面に設置されたICタグ10の列に沿って直線状に一定間隔ごとに走査する。鉄筋探査機20は、フレーム26に回転自在に取り付けられた車輪25を例えば2組有しており、該フレーム26には、ICタグ10の検知を行うICタグ検知手段21、かぶり測定を行うプローブ22、鉄道橋梁1のコンクリート表面の状態を撮影する画像撮影手段23及び車輪25の走行距離を計測する距離計測手段24を備えている。
【0030】
ICタグ検知手段21は、ICタグ10から発信される信号を受信することで、ICタグ10の位置を検知する。ICタグ検知手段21の具体的な構成は、従来周知の種々のICタグリーダを用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0031】
プローブ22は、電磁誘導法によるかぶり測定を行うことができるセンサであり、励磁コイル及び検出コイルなどを備えている。プローブ22は、距離計測手段24と接続されており、車輪25の回転量を計測することで鉄筋探査機20の移動距離を計測する回転センサを有している。
【0032】
画像撮影手段23は、鉄筋探査機20の走査時に同時にコンクリート表面の状態を静止画または動画で撮影を行うことができるカメラなどを適宜用いることができる。この画像撮影手段23により、探査機走査工程(S102)は画像撮影工程を備えている。
【0033】
探査機走査工程(S102)は、
図4に示すように、作業員による手動による走査を行っても構わないし、鉄筋探査機20に自走機構を設けて自動で走査を行うように構成しても構わない。
【0034】
表面情報算出工程(S103)は、探査機走査工程(S103)で得られた計測結果から鉄道橋梁1のかぶりの情報をICタグ10の列に沿って線状に抑える。また、探査機走査工程(S103)では、略平行に配置されたICタグ10の列に沿って一定間隔ごとに測定を行うため、各ICタグ10の列の線状測定結果から
図5に示すような平面情報としての測定箇所の構造物表面における水平方向及び鉛直方向を把握する。
【0035】
配筋図情報連携工程(S104)は、表面情報算出工程(S103)で得られた平面状法を
図6に示すような鉄道橋梁1の3D−CADの配筋図情報30と連携する。このとき、配筋図情報30に探査機走査工程(S102)の走査中に得られたICタグ10の位置データと、表面情報算出工程(S103)で得られた平面情報を連携させることで、
図8に示すような3D
図50によって鉄道橋梁1のかぶりの状況を可視化することができる。なお、電磁誘導法を用いる場合、従来は予め鉄筋径を入力したうえで測定を行う必要があり、使用している鉄筋は部材や位置によって異なるため、入力と確認が作業上の手間であったが、本実施形態に係る鉄筋コンクリートの評価方法によれば、3D−CADの配筋図情報30と連携することで、これらを事前に入力することが不要となり、機器の計測に反映することが可能となる。
【0036】
かぶり不足特定工程(S105)は、配筋図情報連携工程(S104)で得られた3D
図50から、鉄道橋梁1の局所的なかぶり不足51の位置や範囲を定量的に確認する。なお、配筋図情報連携工程(S104)で得られた3D
図50に、画像撮影工程で得られた表面情報を基に作成した
図7に示すような表面情報40と連携することで、異物による測定誤差やひび割れなどの変状発生状況を把握する状況把握工程を有する好適である。
【0037】
このように、本実施形態に係る鉄筋コンクリートのかぶり測定方法は、鉄筋コンクリート構造物に設置したICタグ10による位置データと配筋図情報30を連携させ、さらに、画像撮影手段23によって撮影した画像と連携させることで、配筋図情報30の想定される配筋状態とひび割れなどの変状発生位置をリンクさせることで、構造物の局所的なかぶり不足を面的な情報として得ることで、鉄筋コンクリート構造物の効率的な維持管理計画を策定するための情報を得ることができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のかぶり測定方法は、鉄筋探査機20と、表目情報算出工程(S103)及び配筋図情報連携工程(S104)を実行可能なコンピュータなどの計算機からなる鉄筋コンクリート構造物のかぶり測定システムを用いて行われると好適である。
【0039】
また、上述した本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のかぶり測定方法は、鉄道橋梁1を測定対象とした場合について説明を行ったが、測定対象は鉄道橋梁に限らず、種々の鉄筋コンクリート構造物としても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 鉄道橋梁(鉄筋コンクリート構造物), 10 ICタグ, 20 鉄筋探査機, 21 ICタグ検知手段, 22 プローブ, 23 画像撮影手段, 24 距離計測手段, 25 車輪, 26 フレーム, 30 配筋図情報, 40 ひび割れ状況図, 50 3D図。