【解決手段】シリンダボア壁の保温具11Aは、基部と開口42と、を有する枠部材25と、前記枠部材25の前記シリンダボア壁15Aに対向する面とは反対側に設けられる基体部材23と、前記基体部材23と前記枠部材25との間に挟まれて保持された膨張部材24と、前記開口42の少なくとも1つの辺に隣接した位置で、前記膨張部材24を覆うように連続的に前記枠部材25に設けられたハーフビード43と、前記基体部材23に設けられ、溝状冷却水流路12の対壁17に当接可能な1以上の弾性部材であって、前記枠部材25および前記膨張部材24を前記シリンダボア壁15Aに向けて付勢するとともに、前記ハーフビード43を前記シリンダボア壁15Aに当接させる1以上の弾性部材32A,B,Cと、を備える。
前記ハーフビードは、前記少なくとも1つの辺に対応するハーフビード本体と、前記ハーフビード本体から延びて前記少なくとも1つの辺に隣接する他の辺に隣接した回り込み部と、を有するとともに、前記ハーフビード本体と前記回り込み部とによって前記膨張部材の角部を覆った請求項1又は請求項2に記載のシリンダボア壁の保温具。
前記ハーフビードは、前記溝状冷却水流路を流れる冷却水の流れ方向の上流側に位置する前記少なくとも1つの辺に隣接した位置に設けられる請求項1に記載のシリンダボア壁の保温具。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態のシリンダボア壁の保温具は、溝状冷却水流路のシリンダボア壁に対向する基部と、前記基部の中央部に略方形に設けられた開口と、を有する枠部材と、前記枠部材の前記シリンダボア壁に対向する面とは反対側に設けられる基体部材と、前記基体部材と前記枠部材との間に挟まれて保持されたシート状をなすとともに、膨張することで前記開口から突出して前記シリンダボア壁に当接可能な膨張部材と、前記開口の少なくとも1つの辺に隣接した位置で、前記膨張部材を覆うように連続的に前記枠部材に設けられたハーフビードであって、前記基部から突出して前記シリンダボア壁に当接可能なハーフビードと、前記基体部材に設けられ、前記溝状冷却水流路の対壁に当接可能な1以上の弾性部材であって、前記枠部材および前記膨張部材を前記シリンダボア壁に向けて付勢するとともに、前記ハーフビードを前記シリンダボア壁に当接させる1以上の弾性部材と、を備える。
【0018】
膨張部材は、四角の平板状であってよく、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。膨張部材は、例えば
図9等に示す形状であってよい。膨張部材の形状及び厚みは、特に制限されず、適宜選択される。膨張部材は、膨張材料(弾性体)からなる。膨張材料としては、感熱膨張ゴム、水膨潤性ゴム、セルロース系スポンジ等が挙げられる。
【0019】
感熱膨張ゴムは、溝状冷却水流路内で加熱されることにより膨張するゴムである。感熱膨張ゴムは、ベースフォーム材にベースフォーム材より融点が低い熱可塑性物質を含浸させ圧縮した複合体であり、常温では少なくともその表層部に存在する熱可塑性物質の硬化物により圧縮状態が保持され、且つ、加熱により熱可塑性物質の硬化物が軟化して圧縮状態が開放される材料である。感熱膨張ゴムとしては、例えば、特開2004−143262号公報に記載の感熱膨張ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が感熱膨張ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され、感熱膨張ゴムに熱が加えられることで、感熱膨張ゴムが膨張して、所定の形状に膨張変形する。
【0020】
感熱膨張ゴムに係るベースフォーム材としては、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の各種高分子材料が挙げられ、具体的には、天然ゴム、クロロプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、軟質ウレタン等の各種エラストマー、硬質ウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の各種熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0021】
感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ガラス転移点、融点又は軟化温度のいずれかが120℃未満であるものが好ましい。感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニル共重合体、ナイロン、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、熱可塑性ポリイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、低融点ガラスフリット、でんぷん、はんだ、ワックス等の各種熱可塑性化合物が挙げられる。
【0022】
水膨潤性ゴムとしては、水膨潤性ゴムは、ゴムに吸水性物質が添加された材料であり、水を吸収して膨潤し、膨張した形状を保持する保形性を有するゴム材である。水膨潤性ゴムとしては、例えば、ポリアクリル酸中和物の架橋物、デンプンアクリル酸グラフト共重合体架橋物、架橋カルボキシメチルセルロース塩、ポリビニルアルコール等の吸水性物質がゴムに添加されたゴム材が挙げられる。また、水膨潤性ゴムとしては、例えば、特開平9−208752号公報に記載されているケチミン化ポリアミド樹脂、グリシジルエーテル化物、吸水性樹脂及びゴムを含有する水膨潤性ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が水膨潤性ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され冷却水が流されて、水膨潤性ゴムが水を吸収することで、水膨潤性ゴムが膨張して所定の形状に膨張変形する。
【0023】
セルロース系スポンジは、水を吸収して膨潤し、膨張した形状を保持する保形性を有する。
【0024】
基体部材は、基体部材本体と、基体部材本体と一体的に形成された弾性部材と、基体部材本体と一体的に形成された第2弾性部材と、を有する。基体部材本体は、膨張部材の背面側に設けられる背面板と、背面板よりも背面側に設けられる背面枠体と、を有する。
【0025】
背面板は、四角の平板状であってよく、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。背面板は、金属材料、例えばステンレス鋼板によって形成されてもよい。背面板は、例えば
図9等に示す形状であってよい。背面板は、背面枠体と一体に形成されていてもよい。
【0026】
背面枠体は、四角の平板状をなすとともに、中央部に貫通孔を有する枠状であってよい。背面枠体は、金属材料、例えばステンレス鋼板によって形成されてもよい。背面枠体は、例えば
図9等に示す形状であってよい。背面枠体は、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。
【0027】
背面枠体は、枠形状をなした枠部を有してもよい。背面枠体は、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。背面枠体は、複数の板を連結して円弧状をなすように形成されてもよい。背面枠体は、枠部から下側に突出して設けられる1以上の脚部を有してもよい。背面枠体は、枠部から上側に突出して設けられ浮き上がりを防止する1以上のストッパ部を有してもよい。
【0028】
弾性部材および第2弾性部材は、金属材料、例えばステンレス鋼板によって形成されてもよい。弾性部材および第2弾性部材は、板ばねで構成される。
【0029】
枠部材は、方形枠状の平板であってよく、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。枠部材は、金属材料、例えばステンレス鋼板によって形成されてもよい。枠部材は、例えば
図9等の形状であってよい。枠部材は、基部と、基部の中央部に設けられた開口と、開口に隣接した位置に設けられるハーフビードと、を有している。
【0030】
ハーフビードは、基部から開口に行くにつれてシリンダボア壁に近づく方向に突出している。ハーフビードは、冷却水の流れ方向において、膨張部材よりも上流側に配置されている。このため、ハーフビードは、膨張部材の一部を覆って、冷却水の水流から膨張部材を保護することができる。
以下に図面を参照しつつ、シリンダボア壁の保温具の詳細について説明する。
[第1実施形態]
【0031】
図1〜
図12を参照して、第1実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
図1〜
図3に示すようにシリンダボア壁の保温具11は、例えば自動車の内燃機関のウォータジャケット(溝状冷却水流路12)内に設置される。一般に、内燃機関は、シリンダブロック13と、シリンダブロックの上側を覆う図示しないシリンダヘッドと、を有する。
【0032】
シリンダブロック13は、ピストンが上下するための複数のボア14と、ボア14に隣接して設けられ冷却水が流される溝状冷却水流路12(ウォータジャケット)と、を有する。溝状冷却水流路12は、ボア14と隣接するシリンダボア壁15と、シリンダボア壁15と対向する対壁17と、底面を規定する底部18と、を有する。シリンダボア壁15は、ボア14と、溝状冷却水流路12と、の間を仕切っている。複数のボア14は、一列に並んでボア列を構成している。
【0033】
シリンダブロック13は、溝状冷却水流路12に冷却水を供給するための冷却水供給口21と、溝状冷却水流路12から冷却水を排出するための冷却水排出口22と、を有する。
図2に示すように、冷却水供給口21は、ボア列の一方の端部に位置するボア14に対向する位置に設けられている。冷却水排出口22は、ボア列の一方の端部とは反対側の他方の端部に位置するボア14に設けられる。シリンダブロック13に含まれるボア14の数は任意である。シリンダブロック13は、冷却水供給口21に近い側から、第1ボア14A、第2ボア14B、第3ボア14C、第4ボア14Dを有する。
【0034】
溝状冷却水流路12は、ボア14の吸気流路側に設けられる吸気側流路12Aと、ボア14の排気流路側に設けられる排気側流路12Bと、を有する。溝状冷却水流路12には、冷却水供給口21から冷却水排出口22に向けて冷却水が流される。冷却水は、LLC等、一般的なエンジン用冷却水で構成される。冷却水の流量は、内燃機関の温度に応じて、公知の方法で適宜に増減できる。
【0035】
図2、
図4に示すように、本実施形態では、例えば4個のシリンダボア壁の保温具11が溝状冷却水流路12内の例えば吸気側流路12Aに設置される。第1シリンダボア壁の保温具11Aは、第1ボア14Aのシリンダボア壁(第1シリンダボア壁15A)の深さ方向における中間部および下部に対応する位置に設けられる。第2シリンダボア壁の保温具11Bは、第2ボア14Bのシリンダボア壁(第2シリンダボア壁15B)の深さ方向における中間部および下部に対応する位置に設けられる。第3シリンダボア壁の保温具11Cは、第3ボア14Cのシリンダボア壁(第3シリンダボア壁15C)の深さ方向における中間部および下部に対応する位置に設けられる。第4シリンダボア壁の保温具11Dは、第4ボア14Dのシリンダボア壁(第4シリンダボア壁15D)の深さ方向における中間部および下部に対応する位置に設けられる。
【0036】
第1〜第4シリンダボア壁の保温具11A〜11Dの詳細について説明する。最初に第1シリンダボア壁の保温具11Aについて説明し、その後に順番に第2〜第4シリンダボア壁の保温具11C〜11Dについて説明する。第2〜第4シリンダボア壁の保温具11C〜11Dは、第1シリンダボア壁の保温具11Aとの相違点のみ説明する。
【0037】
図5、
図6に示すように、第1シリンダボア壁の保温具11Aは、基体部材23と、基体部材23よりもシリンダボア壁15に近い位置に設けられる膨張部材24と、膨張部材24よりもシリンダボア壁15に近い位置に設けられる枠部材25と、基体部材23に設けられ基体部材23、膨張部材24、枠部材25を一体に固定する1以上の第1固定部材26および1以上の第2固定部材27と、を備える。基体部材23、膨張部材24、および枠部材25は、順番に重ね合わされることで、全体として平板状に形成される。
【0038】
図4に示すように、基体部材23は、シリンダボア壁15の円弧面に倣うように円弧状に湾曲した平板状に形成されている。基体部材23は、枠部材25のシリンダボア壁15に対向する面とは反対側に設けられる。
図6に示すように、基体部材23は、基体部材本体31と、基体部材本体31と一体的に形成された弾性部材32と、基体部材本体31と一体的に形成された第2弾性部材33と、を有する。
図9に示すように、基体部材本体31は、円弧状に湾曲した平板状をなした背面枠体34と、背面枠体34よりもシリンダボア壁15に近い位置に設けられ円弧状に湾曲した平板状をなした背面板35と、を含んでいる。背面枠体34は、枠状に形成されており、中央部に設けられた貫通孔36と、溝状冷却水流路12の底部18に当接可能な1以上の脚部37(
図5参照)と、を有する。貫通孔36は、背面枠体34をその厚み方向に貫通している。
【0039】
弾性部材32は、板ばねで構成されている。
図6、
図7に示すように、弾性部材32は、背面枠体34と一体的に形成されている。弾性部材32は、対壁17に所定の圧力で当接し、その反力によって膨張部材24をシリンダボア壁15に押し付けることができる。
【0040】
図6、
図7に示すように、弾性部材32は、背面枠体34に接続された接続部32Aと、接続部32Aから対壁17に向けて延び且つ山型に折れ曲がった第1当接部32Bと、第1当接部32Bから背面板35に向けて延びて背面板35に当接した第2当接部32Cと、を有する。第1当接部32Bは、対壁17に対して当接することができる。第2当接部32Cは、背面板35に対してスライド移動することができる。弾性部材32は、接続部32Aによって支持された片持ちの板ばねであるが、第2当接部32Cが背面板35に当接している。このため、弾性部材32は、実質的に接続部32Aと第2当接部32Cによって支持された両持ちの板ばねとして大きな反発力を発揮することができる。弾性部材32は、例えば、プレス機械等を用いた折り曲げ加工によって形成される。
【0041】
第2弾性部材33は、板ばねで構成されている。第2弾性部材33は、背面枠体34に接続された第2接続部33Aと、第2接続部33Aから対壁17に向けて延び且つ山型に折れ曲がった第3当接部33Bと、を有する。第3当接部33Bは、対壁17に対して当接することができる。第2弾性部材33は、第2接続部33Aによって支持された片持ちの板ばねである。このため、第2弾性部材33の反発力は、弾性部材32の反発力よりも小さい。第2弾性部材33は、例えば、プレス機械等を用いた折り曲げ加工によって形成される。弾性部材32および第2弾性部材33によって膨張部材24がシリンダボア壁15に押し付けられる圧力は、膨張部材24の膨張圧力よりも大きい。
【0042】
図5、
図7に示すように、1以上の第1固定部材26および1以上の第2固定部材27は、背面枠体34と一体的に形成されている。1以上の第1固定部材26のそれぞれは、枠部材25の上辺部25A又は下辺部25Dに重なるように配置されている。第1固定部材26は、小片状に形成されており、背面枠体34との間に、背面板35、膨張部材24、および枠部材25を挟むように断面「U」字状に折り曲げられている。第1固定部材26は、例えば、プレス機械等によるカシメ加工(折り曲げ加工)によって形成されている。
【0043】
1以上の第2固定部材27のそれぞれは、枠部材25の右辺部25Bおよび左辺部25Cに重なるように配置されている。第2固定部材27は、途中の位置に切れ込み部27Aを有していてもよい。第2固定部材27は、枠部材25の右辺部25B又は左辺部25Cに沿って延びており、背面枠体34との間に、背面板35、膨張部材24、および枠部材25を挟むように断面「U」字状に折り曲げられている。第2固定部材27は、例えば、プレス機械等によるカシメ加工(折り曲げ加工)によって形成されている。第1固定部材26および第2固定部材27は、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0044】
膨張部材24は、溝状冷却水流路12の冷却水を吸収して膨張性を発揮する材料や熱膨張性を有する材料によって、平板状に形成されている。本実施形態において、膨張部材24は、例えば、感熱膨張ゴムによって平板状に形成されている。膨張部材24は、基体部材23と枠部材25との間に挟まれて保持されたシート状をなしている。膨張部材24は、膨張することで枠部材25の開口42から突出してシリンダボア壁15に当接可能である。
【0045】
図5、
図7、
図8に示すように、枠部材25は、平板状かつ枠状をなしシリンダボア壁15に対向した基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の1つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
図8に示すように、円弧部44は、膨張部材に向けて凸になるようにその断面が円弧状をなしている。
【0046】
図7に示すように、ハーフビード43は、基部41から突出してシリンダボア壁15に当接することができる。ハーフビード43は、例えばプレス機械等を用いた塑性加工によって枠部材25に形成されている。
図5に示すように、第1シリンダボア壁の保温具11Aでは、ハーフビード43は、開口42の1つの辺、すなわち開口42の上辺42Aに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の上辺42Aに対応して直線的に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延びて開口42の上辺42Aに隣接する他の辺である右辺42Cおよび左辺42Dに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bは、ハーフビード本体43Aの両端部から下方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0047】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0048】
続いて、
図10を参照して、第2、第3シリンダボア壁15B、15Cに対応する第2、第3シリンダボア壁の保温具11B、11Cについて説明する。第2、第3シリンダボア壁の保温具11B、11Cは、互いに同形態を有する。このため、以下では、第2シリンダボア壁の保温具11Bについてのみ説明する。
【0049】
図10に示すように、第2シリンダボア壁の保温具11Bは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の2つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0050】
図10に示すように、ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第2シリンダボア壁の保温具11Bでは、ハーフビード43は、開口42の2つの辺、すなわち開口42の下辺42Bおよび右辺42Cに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の下辺42Bおよび右辺42Cに対応して直線的且つL字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の下辺42Bおよび右辺42Cに隣接する他の辺である上辺42Aおよび左辺42Dに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの左側の端部から上方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの上端部から左方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0051】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0052】
続いて、
図11を参照して、第4シリンダボア壁15Dに対応する第4シリンダボア壁の保温具11Dについて説明する。
【0053】
図11に示すように、第4シリンダボア壁の保温具11Dは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の1つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0054】
図11に示すように、ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第4シリンダボア壁の保温具11Dでは、ハーフビード43は、開口42の1つの辺、すなわち開口42の右辺42Cに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の右辺42Cに対応して直線的に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の右辺42Cに隣接する他の辺である上辺42Aおよび下辺42Bに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。一対の回り込み部43Bのそれぞれは、ハーフビード本体43Aの両端部から左方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0055】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0056】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0057】
続いて、
図12を参照して、本実施形態の第1〜第4シリンダボア壁の保温具11A〜11Dの作用について説明する。
【0058】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。冷却水供給口21から供給された冷却水は、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとに供給される。吸気側流路12Aに供給された直後の冷却水は、乱流状態であり、
図12に示すように、溝状冷却水流路12の深さ方向における中間位置付近を流れたり、溝状冷却水流路12の深さ方向における上部(シリンダヘッド側)に向かって流れたり、溝状冷却水流路12の底部18に向かって流れたりする。溝状冷却水流路12の底部18に向かって流れた冷却水の流れの一部は、第3ボア14Cの近傍でシリンダヘッド側の図示しない水孔に向かって上昇する。
【0059】
冷却水供給口21の直下に第1シリンダボア壁の保温具11Aが存在しているため、この第1シリンダボア壁の保温具11Aに対しては、主として上方から冷却水が供給される。第1シリンダボア壁の保温具11Aには、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の上辺に隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)が設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。また、開口42の上辺42Aに隣接した右辺42Cおよび左辺42Dの上部には、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって上辺42Aと右辺42Cとの境界の角部および上辺42Aと左辺42Dとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0060】
本実施形態では、ハーフビード43と基部41との境界に円弧部44が設けられているために、当該境界位置において枠部材25に角部を生じることがない。このため、冷却水の流れによる圧力変動がある一定の周波数で振動的に加えられる場合でも、当該境界位置で膨張部材24に応力集中を生じることない。これによって、ハーフビード43と基部41との境界の位置で、膨張部材24に破断によるちぎれを生じてしまうことがない。
【0061】
第2、第3シリンダボア壁の保温具11B、11Cに対しては、下方および側方から冷却水が供給される。第2、第3シリンダボア壁の保温具11B、11Cは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の下辺42Bおよび右辺42C(
図12の角度から見た場合の左辺)に隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がL字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。また、開口42の右辺42Cに隣接した上辺42Aおよび開口42の下辺42Bに隣接した左辺42Dには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって上辺42Aと右辺42C(
図12の角度から見た場合の左辺)との境界の角部および下辺42Bと左辺42D(
図12の角度から見た場合の右辺)との境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第2、第3シリンダボア壁の保温具11B、11Cにおける円弧部44の作用は、第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。
【0062】
第4シリンダボア壁の保温具11Dに対しては、側方から冷却水が供給される。第4シリンダボア壁の保温具11Dは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の右辺42C(
図12の角度から見た場合の左辺)に隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)が設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。また、開口42の右辺42Cに隣接した上辺42Aおよび下辺42Bには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって上辺42Aと右辺42C(
図12の角度から見た場合の左辺)との境界の角部および下辺42Bと右辺42C(
図12の角度から見た場合の左辺)との境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第4シリンダボア壁の保温具11Dにおける円弧部44の作用は、第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0063】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、冷却水が流される溝状冷却水流路12のシリンダボア壁15に対向する基部41と、基部41の中央部に略方形に設けられた開口42と、を有する枠部材25と、枠部材25のシリンダボア壁15に対向する面とは反対側に設けられる基体部材23と、基体部材23と枠部材25との間に挟まれて保持されたシート状をなすとともに、膨張することで開口42から突出してシリンダボア壁15に当接可能な膨張部材24と、開口42の少なくとも1つの辺に隣接した位置で、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられたハーフビード43であって、基部41から突出してシリンダボア壁15に当接可能なハーフビード43と、基体部材23に設けられ、溝状冷却水流路12の対壁17に当接可能な1以上の弾性部材32であって、枠部材25および膨張部材24をシリンダボア壁15に向けて付勢するとともに、ハーフビード43をシリンダボア壁15に当接させる1以上の弾性部材32と、を備える。
【0064】
この構成によれば、シリンダボア壁の保温具11によってシリンダボア壁15を保温することができるため、冷却水によるシリンダボア壁15の過冷却を防止することができる。これによって、シリンダボア壁15の温度を均一にして、シリンダボア壁の保温具11が設置される内燃機関の燃費を向上できる。また、シリンダボア壁15に当接したハーフビード43によって、冷却水の流れによる圧力変動を受けることができる。このため、溝状冷却水流路12を流れる冷却水による圧力変動によって、膨張部材24に破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0065】
枠部材25は、ハーフビード43と基部41との境界に膨張部材24に向けて凸になる円弧部44を有する。溝状冷却水流路12内では、冷却水の流れによって、振動的な圧力変動を生じて、膨張部材24に破断や破断によるちぎれを生じる場合がある。この構成によれば、円弧部44によって、ハーフビード43と基部41との境界の位置で、角になる部分を生じることを防止できる。これによって、冷却水の水流によって膨張部材24に振動的圧力変動を生じた場合でも、当該境界の位置にエッジを生じることがなく、当該境界において応力集中を生じることを防止できる。これによって、膨張部材24に破断や破断によるちぎれを生じることを防止できる。
【0066】
ハーフビード43は、前記少なくとも1つの辺に対応するハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延びて前記少なくとも1つの辺に隣接する他の辺に隣接した回り込み部43Bと、を有するとともに、ハーフビード本体43Aと回り込み部43Bとによって膨張部材24の角部を覆った。この構成によれば、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって冷却水の流れによる圧力変動から膨張部材24の角部を保護することができる。これによって、膨張部材24のうち、特に破断によるちぎれや脱落を生じやすい角部をハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって保護することができ、角部を起点する膨張部材24の破断や脱落を生じることを防止できる。
【0067】
ハーフビード43は、開口42の隣り合う2つの辺に隣接して略L字状に設けられる。この構成によれば、膨張部材24の隣り合う2辺と、その2辺の間の位置にある角部と、をハーフビード43によって保護することができる。これによって、冷却水の流れ方向が一方向に限られない位置においても、ハーフビード43によって膨張部材24を破断や脱落から保護することができる。
【0068】
ハーフビード43は、溝状冷却水流路12を流れる冷却水の流れ方向の上流側に位置する前記少なくとも1つの辺に隣接した位置に設けられる。この構成によれば、冷却水の圧力変動の影響が大きい流れ方向の上流側にハーフビード43が設けられるため、膨張部材24のうち、流れ方向の上流側に位置する部分で破断や脱落を生じることを効果的に防止することができる。
【0069】
以下の実施形態では、主として上記第1実施形態と異なる部分を説明し、第1実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
[第2実施形態]
【0070】
図13、
図14を参照して、第2実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第1シリンダボア壁15Aに対応するように、第1シリンダボア壁の保温具11Aのみが設置され、第2〜第4シリンダボア壁の保温具11B〜11Dは設置されない。
【0071】
図14に示すように、第1シリンダボア壁の保温具11Aは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、開口42の4つの辺(すなわち、全周)に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0072】
ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第1シリンダボア壁の保温具11Aでは、ハーフビード43は、開口42の4つの辺、すなわち開口42の上辺42A、下辺42B、右辺42C、および左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の4辺に対応して直線的且つ額縁状に延びるハーフビード本体43Aを有する。ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。
【0073】
続いて、
図13、
図14を参照して、本実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの作用について説明する。
【0074】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。冷却水供給口21から供給された冷却水は、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとに供給される。吸気側流路12Aに供給された直後の冷却水は、
図13に示すように乱流状態であり、任意の方向に冷却水が流れる。
【0075】
吸気側流路12Aに供給された直後の冷却水は、乱流状態である。このため、この第1シリンダボア壁の保温具11Aに対しては、任意の方向から冷却水が供給される。第1シリンダボア壁の保温具11Aは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42のすべての辺(4辺)に隣接した位置にハーフビード43が設けられている。このため、このハーフビード43で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0076】
本実施形態では、ハーフビード43と基部41との境界に円弧部44が設けられているために、当該境界位置において枠部材25に角部を生じることがない。このため、冷却水の流れによる圧力変動がある一定の周波数で振動的に加えられる場合でも、当該境界位置で膨張部材24に応力集中を生じることない。これによって、ハーフビード43と基部41との境界の位置で、膨張部材24に破断によるちぎれを生じてしまうことがない。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0077】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。ハーフビード43は、開口42の4つの辺に隣接して額縁状に設けられる。この構成によれば、例えば、冷却水供給口21の近傍にシリンダボア壁の保温具11が設置され、当該位置で冷却水が乱流状態となっている場合でも、あらゆる方向から流れる冷却水による圧力変動をハーフビード43によって受けることができる。これによって、冷却水の水流の解析が困難又は難しい箇所において、この形態のシリンダボア壁の保温具11を用いることで、膨張部材24の破断や脱落を生じることを確実に防止することができる。
[第3実施形態]
【0078】
図15、
図16を参照して、第3実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12の第1シリンダボア壁15Aに対応するように第1シリンダボア壁の保温具11Aが設置され、第4シリンダボア壁15Dに対応するように第4シリンダボア壁の保温具11Dが設置される。本実施形態において、第2シリンダボア壁の保温具11Bおよび第3シリンダボア壁の保温具11Cは設けられない。
【0079】
シリンダブロック13は、溝状冷却水流路12に冷却水を供給するための冷却水供給口21と、溝状冷却水流路12から冷却水を排出するための冷却水排出口22と、を有する。
図15に示すように、冷却水供給口21は、ボア列の一方の端部に位置する第1ボア14Aの第1シリンダボア壁15Aに対向する位置に設けられている。冷却水排出口22は、ボア列の他方の端部に位置する第4ボア14Dの第4シリンダボア壁15Dに対向する位置に設けられている。
【0080】
第1シリンダボア壁の保温具11Aは、第1ボア14Aの近傍で溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとの境界に設置されている。第1シリンダボア壁の保温具11Aは、冷却水供給口21の近傍に設けられる。第4シリンダボア壁の保温具11Dは、第4ボア14Dの近傍で溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとの境界に設置されている。第4シリンダボア壁の保温具11Dは、冷却水排出口22の近傍に設けられる。
【0081】
第1シリンダボア壁の保温具11Aは、
図5に示す第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aと同様の形態を有する。
【0082】
図16に示すように、第4シリンダボア壁の保温具11Dは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の2つの辺に隣接した位置に設けられる一対のハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0083】
一対のハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第4シリンダボア壁の保温具11Dでは、一対のハーフビード43は、開口42の2つの辺、すなわち開口42の右辺42Cおよび左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。一対のハーフビード43のそれぞれは、開口42の右辺42Cおよび左辺42Dに対応して直線的に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の右辺42Cおよび左辺42Dに隣接する他の辺である上辺42Aおよび下辺42Bに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。第4シリンダボア壁の保温具11Dの右部に位置する一対の回り込み部43Bは、ハーフビード本体43Aの両端部から左方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。第4シリンダボア壁の保温具11Dの左部に位置する回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの両端部から右方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0084】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0085】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0086】
続いて、
図15、
図16を参照して、本実施形態の第1、第4シリンダボア壁の保温具11Dの作用について説明する。
【0087】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。冷却水供給口21から供給された冷却水は、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとに供給される。吸気側流路12Aに供給された直後の冷却水は乱流状態である。
【0088】
冷却水供給口21の直下に第1シリンダボア壁の保温具11Aが存在しているため、この第1シリンダボア壁の保温具11Aに対しては、
図15に示すように、主として上方から冷却水が供給される。第1シリンダボア壁の保温具11Aの形態は第1実施形態と同様であるために、第1実施形態と同様の作用を発揮できる。
【0089】
溝状冷却水流路12に供給された冷却水は、吸気側流路12Aと排気側流路12Bとを通って冷却水排出口22にまで送られる。したがって、冷却水排出口22の近傍では、二手に分かれた冷却水が合流することとなる。本実施形態において第4シリンダボア壁の保温具11Dは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の右辺42Cおよび左辺42Dにハーフビード43が設けられている。このため、これら一対のハーフビード43で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0090】
本実施形態では、第4シリンダボア壁の保温具11Dにおいて、ハーフビード43と基部41との境界に円弧部44が設けられているために、当該境界位置において枠部材25に角部を生じることがない。このため、冷却水の流れによる圧力変動がある一定の周波数で振動的に加えられる場合でも、当該境界位置で膨張部材24に応力集中を生じることない。これによって、ハーフビード43と基部41との境界の位置で、膨張部材24に破断によるちぎれを生じてしまうことがない。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0091】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。ハーフビード43は、開口42の対向する2つの辺に隣接して略平行に設けられる。この構成によれば、シリンダボア壁の保温具11を間に挟む両側から冷却水が流れ込むような配置であっても、両方向から流れる冷却水による圧力変動をハーフビード43によって受けることができる。このため、溝状冷却水流路12を流れる冷却水による圧力変動によって、膨張部材24に破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
[第4実施形態]
【0092】
図17を参照して、第4実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第1シリンダボア壁15Aに対応するように第1シリンダボア壁の保温具11Aが設置される。本実施形態において、第2〜第4シリンダボア壁の保温具11Dは設けられない。
【0093】
第1シリンダボア壁の保温具11Aは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の1つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0094】
図17に示すように、ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第1シリンダボア壁の保温具11Aでは、ハーフビード43は、開口42の1つの辺、すなわち開口42の左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の左辺42Dに対応して直線的に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の左辺42Dに隣接する他の辺である上辺42Aおよび下辺42Bに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。一対の回り込み部43Bのそれぞれは、ハーフビード本体43Aの両端部から右方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0095】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0096】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0097】
続いて、
図17を参照して、本実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの作用について説明する。
【0098】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。冷却水供給口21から供給された冷却水は、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとに供給される。
【0099】
第1シリンダボア壁の保温具11Aに対しては、側方から冷却水が供給される。第1シリンダボア壁の保温具11Aは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の左辺42Dに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)が設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0100】
開口42の左辺42Dに隣接した上辺42Aおよび下辺42Bには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって上辺42Aと左辺42Dとの境界の角部および下辺42Bと左辺42Dとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第1シリンダボア壁の保温具11Aにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0101】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第1シリンダボア壁15Aに保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第1シリンダボア壁の保温具11Aを提供できる。
[第5実施形態]
【0102】
図18を参照して、第5実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第3シリンダボア壁15Cに対応するように第3シリンダボア壁の保温具11Cが設置される。本実施形態において、第1、第2、第4シリンダボア壁の保温具11A、11B、11Dは設けられない。
【0103】
第3シリンダボア壁の保温具11Cは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の1つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0104】
図18に示すように、ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第3シリンダボア壁の保温具11Cでは、ハーフビード43は、開口42の1つの辺、すなわち開口42の下辺42Bに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の下辺42Bに対応して直線的に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の下辺42Bに隣接する他の辺である左辺42Dおよび右辺42Cに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。一対の回り込み部43Bのそれぞれは、ハーフビード本体43Aの両端部から上方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0105】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0106】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0107】
続いて、
図18を参照して、本実施形態の第3シリンダボア壁の保温具11Cの作用について説明する。
【0108】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。冷却水供給口21から供給された冷却水は、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとに供給される。
【0109】
第3シリンダボア壁の保温具11Cに対しては、
図12に示すように、下方から冷却水が供給される。第3シリンダボア壁の保温具11Cは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の下辺42Bに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)が設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0110】
開口42の下辺42Bに隣接した右辺42Cおよび左辺42Dには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって下辺42Bと右辺42Cとの境界の角部および下辺42Bと左辺42Dとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第3シリンダボア壁の保温具11Cにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0111】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第3シリンダボア壁15Cに保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第3シリンダボア壁の保温具11Cを提供できる。
[第6実施形態]
【0112】
図19を参照して、第6実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第1シリンダボア壁15Aに対応するように第1シリンダボア壁の保温具11Aが設置される。本実施形態において第2〜第4シリンダボア壁の保温具11B〜11Dは設けられない。
【0113】
図19に示すように、第1シリンダボア壁の保温具11Aは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の2つの辺に隣接した位置に設けられる一対のハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0114】
一対のハーフビード43のそれぞれは、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第1シリンダボア壁の保温具11Aにおいて、一対のハーフビード43は、開口42の2つの辺、すなわち開口42の上辺42Aおよび下辺42Bに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。一対のハーフビード43は、開口42の上辺42Aおよび下辺42Bに対応して直線的に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の上辺42Aおよび下辺42Bに隣接する他の辺である右辺42Cおよび左辺42Dに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。第1シリンダボア壁の保温具11Aの上部に位置する一対の回り込み部43Bは、一対のハーフビード本体43Aのそれぞれの両端部から下方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。第4シリンダボア壁の保温具11Dの下部に位置する回り込み部43Bの他方は、一対のハーフビード本体43Aの両端部から上方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0115】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0116】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0117】
続いて、
図19を参照して、本実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの作用について説明する。
【0118】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。冷却水供給口21から供給された冷却水は、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aと排気側流路12Bとに供給される。吸気側流路12Aに供給された直後の冷却水は乱流状態である。
【0119】
冷却水供給口21の直下に第1シリンダボア壁の保温具11Aが存在しているため、この第1シリンダボア壁の保温具11Aに対しては、
図12に示すように、主として上方から冷却水が供給される。また、吸気側流路12Aに供給された直後の冷却水は乱流状態であるために、第1シリンダボア壁の保温具11Aに対しては、下方からも冷却水が供給される。
【0120】
本実施形態において第1シリンダボア壁の保温具11Aは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の上辺42Aおよび下辺42Bにハーフビード43が設けられている。このため、これら一対のハーフビード43で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0121】
本実施形態では、第1シリンダボア壁の保温具11Aにおいて、ハーフビード43と基部41との境界に円弧部44が設けられているために、当該境界位置において枠部材25に角部を生じることがない。このため、冷却水の流れによる圧力変動がある一定の周波数で振動的に加えられる場合でも、当該境界位置で膨張部材24に応力集中を生じることない。これによって、ハーフビード43と基部41との境界の位置で、膨張部材24に破断によるちぎれを生じてしまうことがない。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0122】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第1シリンダボア壁15Aに保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第1シリンダボア壁の保温具11Aを提供できる。
[第7実施形態]
【0123】
図20を参照して、第7実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第2シリンダボア壁15Bに対応するように第2シリンダボア壁の保温具11Bが設置される。本実施形態において第1、第3、第4シリンダボア壁の保温具11A、11C、11Dは設けられない。
【0124】
図20に示すように、第2シリンダボア壁の保温具11Bは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の2つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0125】
図20に示すように、ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第1シリンダボア壁の保温具11Aでは、ハーフビード43は、開口42の2つの辺、すなわち開口42の下辺42Bおよび左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の下辺42Bおよび左辺42Dに対応して直線的且つL字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の下辺42Bおよび左辺42Dに隣接する他の辺である上辺42Aおよび右辺42Cに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの右側の端部から上方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの上端部から右方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0126】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0127】
続いて、
図20を参照して、本実施形態の第2シリンダボア壁の保温具11Bの作用について説明する。
【0128】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。排気側流路12Bに位置する第2シリンダボア壁の保温具11Bに対しては、下方および側方から冷却水が供給される。第2シリンダボア壁の保温具11Bは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の下辺42Bおよび左辺42Dに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がL字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0129】
開口42の左辺42Dに隣接した上辺42Aおよび開口42の下辺42Bに隣接した右辺42Cには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって上辺42Aと左辺42Dとの境界の角部および下辺42Bと右辺42Cとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第2シリンダボア壁の保温具11Bにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0130】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第2シリンダボア壁15Bの保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第2シリンダボア壁の保温具11Bを提供できる。
[第8実施形態]
【0131】
図21を参照して、第8実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第2シリンダボア壁15Bに対応するように第2シリンダボア壁の保温具11Bが設置される。本実施形態において第1、第3、第4シリンダボア壁の保温具11A、11C、11Dは設けられない。
【0132】
図21に示すように、第2シリンダボア壁の保温具11Bは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の2つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0133】
ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第2シリンダボア壁の保温具11Bでは、ハーフビード43は、開口42の2つの辺、すなわち開口42の上辺42Aおよび右辺42Cに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の上辺42Aおよび右辺42Cに対応して直線的且つL字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の上辺42Aおよび右辺42Cに隣接する他の辺である左辺42Dおよび下辺42Bに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの左端部から下方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの下端部から左方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0134】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0135】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0136】
続いて、
図21を参照して、本実施形態の第2シリンダボア壁の保温具11Bの作用について説明する。
【0137】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。吸気側流路12Aに位置する第2シリンダボア壁の保温具11Bに対しては、冷却水供給口21の配置によっては、主として上方および側方から冷却水が供給される場合がある。第2シリンダボア壁の保温具11Bは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の上辺42Aおよび右辺42Cに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がL字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0138】
開口42の右辺42Cに隣接した下辺42Bおよび開口42の上辺42Aに隣接した左辺42Dには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって上辺42Aと左辺42Dとの境界の角部および右辺42Cと下辺42Bとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第2シリンダボア壁の保温具11Bにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0139】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第2シリンダボア壁15Bの保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第2シリンダボア壁の保温具11Bを提供できる。
[第9実施形態]
【0140】
図22を参照して、第9実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第2シリンダボア壁15Bに対応するように第2シリンダボア壁の保温具11Bが設置される。本実施形態において第1、第3、第4シリンダボア壁の保温具11A、11C、11Dは設けられない。
【0141】
図22に示すように、第2シリンダボア壁の保温具11Bは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の2つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0142】
ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第2シリンダボア壁の保温具11Bでは、ハーフビード43は、開口42の2つの辺、すなわち開口42の上辺42Aおよび左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の上辺42Aおよび左辺42Dに対応して直線的且つL字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の上辺42Aおよび左辺42Dに隣接する他の辺である右辺42Cおよび下辺42Bに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの右端部から下方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの下端部から右方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0143】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0144】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0145】
続いて、
図22を参照して、本実施形態の第2シリンダボア壁の保温具11Bの作用について説明する。
【0146】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。排気側流路12Bに位置する第2シリンダボア壁の保温具11Bに対しては、冷却水供給口21の配置によっては、主として上方および側方から冷却水が供給される場合がある。第2シリンダボア壁の保温具11Bは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の上辺42Aおよび左辺42Dに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がL字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0147】
開口42の左辺42Dに隣接した下辺42Bおよび開口42の上辺42Aに隣接した右辺42Cには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって左辺42Dと下辺42Bとの境界の角部および上辺42Aと右辺42Cとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第2シリンダボア壁の保温具11Bにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0148】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第2シリンダボア壁15Bの保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第2シリンダボア壁の保温具11Bを提供できる。
[第10実施形態]
【0149】
図23を参照して、第10実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第2シリンダボア壁15Bに対応するように第2シリンダボア壁の保温具11Bが設置される。本実施形態において第1、第3、第4シリンダボア壁の保温具11A、11C、11Dは設けられない。
【0150】
図23に示すように、第2シリンダボア壁の保温具11Bは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の3つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0151】
ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第2シリンダボア壁の保温具11Bでは、ハーフビード43は、開口42の3つの辺、すなわち開口42の上辺42A、下辺42Bおよび右辺42Cに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の上辺42A、下辺42Bおよび右辺42Cに対応して直線的且つC字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の上辺42Aおよび下辺42Bに隣接する他の辺である左辺42Dに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの上側の左端部から下方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの下側の左端部から上方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0152】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0153】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0154】
続いて、
図23を参照して、本実施形態の第2シリンダボア壁の保温具11Bの作用について説明する。
【0155】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。吸気側流路12Aに位置する第2シリンダボア壁の保温具11Bに対しては、冷却水供給口21の配置によっては、主として上方、側方、下方から冷却水が供給される場合がある。第2シリンダボア壁の保温具11Bは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の上辺42A、下辺42B、および右辺42Cに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がC字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0156】
開口42の上辺42Aおよび下辺42Bに隣接した左辺42Dには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって左辺42Dと上辺42Aとの境界の角部および左辺42Dと下辺42Bとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第2シリンダボア壁の保温具11Bにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0157】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。ハーフビード43は、開口42の隣り合う3つの辺に隣接して略C字状に設けられる。この構成によれば、シリンダボア壁の保温具11の周囲の三方向から冷却水が流れ込むような配置であっても、三方向から流れる冷却水による圧力変動をハーフビード43によって受けることができる。このため、溝状冷却水流路12を流れる冷却水による圧力変動によって、膨張部材24に破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
[第11実施形態]
【0158】
図24を参照して、第11実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第2シリンダボア壁15Bに対応するように第2シリンダボア壁の保温具11Bが設置される。本実施形態において第1、第3、第4シリンダボア壁の保温具11A、11C、11Dは設けられない。
【0159】
図24に示すように、第2シリンダボア壁の保温具11Bは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の3つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0160】
ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第2シリンダボア壁の保温具11Bでは、ハーフビード43は、開口42の3つの辺、すなわち開口42の上辺42A、下辺42Bおよび左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の上辺42A、下辺42Bおよび左辺42Dに対応して直線的且つC字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の上辺42Aおよび下辺42Bに隣接する他の辺である右辺42Cに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの上側の右端部から下方に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの下側の右端部から上方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0161】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0162】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0163】
続いて、
図24を参照して、本実施形態の第2シリンダボア壁の保温具11Bの作用について説明する。
【0164】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。吸気側流路12Aに位置する第2シリンダボア壁の保温具11Bに対しては、冷却水供給口21の配置によっては、主として上方、側方、下方から冷却水が供給される場合がある。第2シリンダボア壁の保温具11Bは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の上辺42A、下辺42B、および左辺42Dに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がC字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0165】
開口42の上辺42Aおよび下辺42Bに隣接した右辺42Cには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって右辺42Cと上辺42Aとの境界の角部および右辺42Cと下辺42Bとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第2シリンダボア壁の保温具11Bにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0166】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第2シリンダボア壁15Bの保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第2シリンダボア壁の保温具11Bを提供できる。
[第12実施形態]
【0167】
図25を参照して、第12実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第1シリンダボア壁15Aに対応するように第1シリンダボア壁の保温具11Aが設置される。本実施形態において第2〜第4シリンダボア壁の保温具11Dは設けられない。
【0168】
図25に示すように、第1シリンダボア壁の保温具11Aは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の3つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0169】
ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第2シリンダボア壁の保温具11Bでは、ハーフビード43は、開口42の3つの辺、すなわち開口42の上辺42A、右辺42Cおよび左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の上辺42A、右辺42Cおよび左辺42Dに対応して直線的且つC字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の右辺42Cおよび左辺42Dに隣接する他の辺である下辺42Bに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの右側の下端部から左方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの左側の下端部から右方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0170】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0171】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0172】
続いて、
図25を参照して、本実施形態の第2シリンダボア壁の保温具11Bの作用について説明する。
【0173】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。吸気側流路12Aに位置する第1シリンダボア壁の保温具11Aに対しては、冷却水供給口21の配置によっては、主として上方および側方から冷却水が供給される場合がある。第1シリンダボア壁の保温具11Aは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の上辺42A、右辺42C、および左辺42Dに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がC字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0174】
開口42の右辺42Cおよび左辺42Dに隣接した下辺42Bには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって右辺42Cと下辺42Bとの境界の角部および左辺42Dと下辺42Bとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第1シリンダボア壁の保温具11Aにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0175】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aの第1シリンダボア壁15Aの保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第1シリンダボア壁の保温具11Aを提供できる。
[第13実施形態]
【0176】
図26を参照して、第13実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。本実施形態では、溝状冷却水流路12、シリンダブロック13およびシリンダヘッドの形態は、第3実施形態と同様である。本実施形態では、溝状冷却水流路12の排気側流路12Bの第4シリンダボア壁15Dに対応するように第4シリンダボア壁の保温具11Dが設置される。第4シリンダボア壁の保温具11Dの配置は、第3実施形態の第4シリンダボア壁の保温具11Dと同様である。本実施形態において第1〜第3シリンダボア壁の保温具11Cは設けられない。
【0177】
図26に示すように、第4シリンダボア壁の保温具11Dは、枠部材25を有する。枠部材25は、平板状かつ枠状をなした基部41と、基部41の中央部に設けられた略方形の開口42と、主として開口42の3つの辺に隣接した位置に設けられるハーフビード43と、ハーフビード43と基部41との境界に設けられる円弧部44と、を有する。
【0178】
ハーフビード43は、基部41からシリンダボア壁15に向けて突出するように形成されている。第4シリンダボア壁の保温具11Dでは、ハーフビード43は、開口42の3つの辺、すなわち開口42の下辺42B、右辺42Cおよび左辺42Dに隣接した位置に、膨張部材24を覆うように連続的に枠部材25に設けられている。ハーフビード43は、開口42の下辺42B、右辺42Cおよび左辺42Dに対応して直線的且つC字状に延びるハーフビード本体43Aと、ハーフビード本体43Aから延び且つ開口42の右辺42Cおよび左辺42Dに隣接する他の辺である上辺42Aに隣接した一対の回り込み部43Bと、を有する。回り込み部43Bの一方は、ハーフビード本体43Aの右側の上端部から左方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。回り込み部43Bの他方は、ハーフビード本体43Aの左側の上端部から右方向に向けて延び、且つ、ハーフビード本体43Aと連続的に形成される。
【0179】
ハーフビード43のハーフビード本体43Aおよび一対の回り込み部43Bは、溝状冷却水流路12内に設置される際に、弾性部材32および第2弾性部材33の反発力によってシリンダボア壁15に当接される。
【0180】
ハーフビード本体43Aは、その内側に位置する膨張部材24を覆って、溝状冷却水流路12を流れる冷却水から膨張部材24を保護することができる。ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bは、膨張部材24の角部を覆うことができ、その角部の位置で膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を生じることを防止できる。
【0181】
続いて、
図26を参照して、本実施形態の第4シリンダボア壁の保温具11Dの作用について説明する。
【0182】
内燃機関が運転状態になると、冷却水供給口21から溝状冷却水流路12内に冷却水が供給される。吸気側流路12Aおよび排気側流路12Bの境界に位置する第4シリンダボア壁の保温具11Dに対しては、冷却水の流量によっては、主として側方および下方から冷却水が供給される場合がある。第4シリンダボア壁の保温具11Dは、冷却水の流れ方向の上流側の位置、すなわち開口42の下辺42B、右辺42C、および左辺42Dに隣接した位置にハーフビード43(ハーフビード本体43A)がC字状に設けられている。このため、このハーフビード43(ハーフビード本体43A)で冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。
【0183】
開口42の右辺42Cおよび左辺42Dに隣接した上辺42Aには、ハーフビード43の回り込み部43Bが形成されている。このため、ハーフビード本体43Aおよび回り込み部43Bによって右辺42Cと上辺42Aとの境界の角部および左辺42Dと上辺42Aとの境界の角部にかかる冷却水の水流による圧力変動を受けることができる。第4シリンダボア壁の保温具11Dにおける円弧部44の作用は、第1実施形態の第1シリンダボア壁の保温具11Aの円弧部44の作用と同様である。溝状冷却水流路12を通る冷却水は、冷却水排出口22から溝状冷却水流路12の外部に排出される。
【0184】
本実施形態によれば、溝状冷却水流路12の吸気側流路12Aおよび排気側流路12Bの境界に位置する第4シリンダボア壁15Dの保温に好適で、膨張部材24の破断によるちぎれや脱落を防止できる第4シリンダボア壁の保温具11Dを提供できる。
【0185】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。また、上記実施形態同士を適宜に組み合わせて発明を実現することも当然にできる。