【解決手段】 すべり軸受ユニットは、ラジアル軸受面S11aを含む固定シャフト10と、回転体20と、液体金属LMと、を備える。回転体20は、第1円筒21と、第2円筒22と、を有する。第2円筒22は、ラジアル軸受面S22を含み、第1円筒21に対して相対的に回転しないように回転動作が制限されている。液体金属LMは、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S22とともに動圧形のラジアルすべり軸受Baを形成している。
前記第2円筒は、前記固定シャフトと前記第2円筒との間の隙間と、前記第1円筒と前記第2円筒との間の隙間と、につなげられ、前記潤滑剤の循環路を構成している循環孔を含み、
前記循環孔は、前記第2円筒の外周面から前記内周面まで貫通している、
請求項1に記載のすべり軸受ユニット。
回転軸線に沿って延在し外周面に第1ラジアル軸受面を含む固定シャフトと、前記固定シャフトを中心に回転自在な回転体と、潤滑剤と、を具備したすべり軸受ユニットと、
陽極ターゲットと、
前記陽極ターゲットに対向配置された陰極と、
前記すべり軸受ユニット、前記陽極ターゲット及び前記陰極を収容し、前記固定シャフトを固定する外囲器と、を備え、
前記回転体は、
前記回転軸線に沿って延出して筒状に形成され、前記固定シャフトを囲んで位置した第1円筒と、
前記回転軸線に沿って延出して筒状に形成され、前記固定シャフトと前記第1円筒との間に位置し、内周面に第2ラジアル軸受面を含み、前記第1円筒に対して相対的に回転しないように回転動作が制限された第2円筒と、を有し、
前記潤滑剤は、前記固定シャフトと前記第1円筒と前記第2円筒との間の複数の隙間に充填され、前記第1ラジアル軸受面及び前記第2ラジアル軸受面とともに動圧形のラジアルすべり軸受を形成し、
前記陽極ターゲットは、前記第1円筒の外周面を囲み、前記第1円筒に固定されている、
回転陽極型X線管。
前記第2円筒は、前記固定シャフトと前記第2円筒との間の隙間と、前記第1円筒と前記第2円筒との間の隙間と、につなげられ、前記潤滑剤の循環路を構成している循環孔を含み、
前記循環孔は、前記第2円筒の外周面から前記内周面まで貫通している、
請求項9に記載の回転陽極型X線管。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施形態及び各比較例について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
以下の各実施形態及び各比較例において、すべり軸受ユニット及びこのすべり軸受ユニットを備えた回転陽極型X線管装置について説明する。回転陽極型X線管装置は、回転陽極型X線管等を備えている。以下、回転陽極型X線管装置を単にX線管装置と称し、回転陽極型X線管を単にX線管と称する。X線管は、すべり軸受ユニットと、陽極ターゲットと、陰極と、外囲器と、を備えている。すべり軸受ユニットは、固定シャフトと、回転体と、潤滑剤としての液体金属(金属潤滑剤)と、を備え、すべり軸受を使っている。
【0011】
(比較例1)
まず、比較例1に係るX線管装置について説明する。
図1は、本比較例1のX線管1の一部を示す拡大断面図であり、陽極ターゲット50に熱が入力される前の状態を示す図である。
図2は、本比較例1のX線管1の一部を示す拡大断面図であり、陽極ターゲット50に熱が入力され、陽極ターゲット50が冷却されるまでの状態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、比較例1に係るX線管装置は、X線管1を備えている。X線管1は、すべり軸受ユニットU、陽極ターゲット50等を備えている。すべり軸受ユニットUは、固定シャフト10、回転体20、液体金属LM、等を備えている。
【0013】
固定シャフト10は、筒状に形成され、回転軸線aに沿って延在している。固定シャフト10の外周面には、ラジアル軸受面S11aが形成されている。回転体20は、筒状に形成され、回転軸線aに沿って延在し、固定シャフト10を囲んでいる。回転体20の内周面には、ラジアル軸受面S21aが形成されている。液体金属LMは、固定シャフト10と回転体20との間の隙間に充填されている。液体金属LMは、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S21aとともに動圧形のラジアルすべり軸受Baを形成している。
【0014】
陽極ターゲット50は、陽極ターゲット本体51と、陽極ターゲット本体51の外面の一部に設けられたターゲット層52と、を有している。陽極ターゲット本体51は、円環の形状を有し、回転体20の外周面に接続され、回転体20に固定され、回転体20と一体となっている。ターゲット層52は、陰極から放出される電子が衝突するターゲット面(電子衝突面)S52を有している。
回転体20及び固定シャフト10の電位は、陽極ターゲット50の電位と同一となる。陽極接地型のX線管の場合、陽極ターゲット50、回転体20、固定シャフト10、及び図示しない外囲器の金属部分は、接地電位となる。
【0015】
X線管1の動作状態において、回転体20及び陽極ターゲット50は一体となって回転する。また、陰極は陽極ターゲット50に対して電子ビームを照射する。これにより、陽極ターゲット50は、電子と衝突するときにX線を放出する。
【0016】
ターゲット面S52に電子ビームの照射が一定時間連続して行われると、陽極ターゲット50に熱が蓄積され、ターゲット面S52の温度が上昇する。電子ビームによる熱量が陽極ターゲット50の熱容量を超え、陽極ターゲット50の許容温度を超えると、ターゲット面S52が損傷し始めるという問題がある。この問題は、陽極ターゲット50を大型化して陽極ターゲット50の熱容量を増やすことにより解決される。陽極ターゲット50の大型化は、輻射による陽極ターゲット50の冷却率を高める効果もある。
【0017】
しかし、陽極ターゲット50の大型化に伴ってX線管1の大型化、高重量化、及び高コスト化を招いてしまう。そのため、上記問題を解決するために、陽極ターゲット50の大型化を図ることは、好ましい手段ではない。
【0018】
そこで、動圧形のすべり軸受(ラジアルすべり軸受Ba)の液体金属LMを熱伝達媒体として利用することにより、陽極ターゲット50から固定シャフト10に熱を伝達させ、上記熱を固定シャフト10の内部に形成された熱伝達部10aを流れる冷却液に伝達させることができる。陽極ターゲット50に発生した熱を上記の冷却手段にて取り去ることができる。冷却性能を高めるためには、陽極ターゲット50から固定シャフト10への熱伝達率を高める必要がある。そこで、陽極ターゲット50を、回転体20に強固に結合している。
【0019】
図2に示すように、しかしながら、陽極ターゲット50が高温となった時の熱膨張による応力が回転体20に伝播する。なお、ターゲット面S52に電子が衝突することで発生する熱(熱エネルギ)は、ターゲット面S52から、ターゲット層52の内部、陽極ターゲット本体51のうちターゲット層52に近い部分、及び陽極ターゲット本体51のうち回転体20に近い部分の順に伝わり、陽極ターゲット50の温度は上昇する。そのため、本比較例1のX線管1では、陽極ターゲット本体51が高温となると、ラジアル軸受面S11とラジアル軸受面S21aとの間の隙間(軸受隙間)が変化し(拡大し)、ラジアルすべり軸受Baの性能の低下を招いてしまう。
【0020】
(比較例2)
次に、比較例2に係るX線管装置について説明する。
図3は、本比較例2のX線管1の一部を示す拡大断面図であり、陽極ターゲット50に熱が入力され、陽極ターゲット50が冷却されるまでの状態を示す図である。
【0021】
図3に示すように、陽極ターゲット本体51は、円周状の切欠き部51aを有している。切欠き部51aは、陽極ターゲット本体51の付け根に位置し、ターゲット層52より内周側に位置している。陽極ターゲット本体51に切欠き部51aを形成したことで、陽極ターゲット本体51に切欠き部51aが形成されていない場合と比較し、陽極ターゲット50の熱膨張が回転体20に及ぼす悪影響を軽減することができる。
【0022】
しかしながら、陽極ターゲット50は回転体20に強固に結合されているため、陽極ターゲット50の熱膨張が回転体20に及ぼす悪影響は強く残ることとなる。そのため、本比較例2のX線管1でも、上記比較例1のX線管1と同様、ラジアルすべり軸受Baの性能の低下を招いてしまう。
【0023】
(比較例3)
次に、比較例3に係るX線管装置について説明する。
図4は、本比較例3のX線管1の一部を示す拡大断面図であり、陽極ターゲット50に熱が入力され、陽極ターゲット50が冷却されるまでの状態を示す図である。
【0024】
図4に示すように、固定シャフト10は円柱状に形成されている。陽極ターゲット本体51は、回転体20の突出部28に、X線管1のナット31によって押圧された状態に保持されている。上記のことから、陽極ターゲット50は、回転体20に固定されている。陽極ターゲット本体51は、陽極ターゲット50の半径方向にて回転体20に間隔を空けて位置している。回転体20の外周面側に突起29が形成されている。突起29は、陽極ターゲット本体51に向かって延在し、陽極ターゲット本体51に接触していない。X線管1の液体接点材料32は、回転体20、陽極ターゲット50、及びナット31で囲まれた空間に封入されている。陽極ターゲット50に発生する熱を、液体接点材料32を介して回転体20に伝えることができる。
【0025】
上記のように、陽極ターゲット本体51は、陽極ターゲット50の半径方向にて回転体20に間隔を空けて位置している。そのため、陽極ターゲット50に発生する熱を回転体20に伝達しつつ、陽極ターゲット50の熱膨張が回転体20に及ぼす悪影響を軽減させることができる。
【0026】
しかしながら、本比較例3のX線管1の構造は複雑となってしまう。また、陽極ターゲット50は回転体20に強固に結合されているため、陽極ターゲット50の熱膨張が回転体20に及ぼす悪影響は残ることとなる。そのため、本比較例3のX線管1でも、上記比較例1及び2のX線管1と同様、ラジアルすべり軸受Baの性能の低下を招いてしまう。
【0027】
上述した比較例1乃至比較例3から分かるように、陽極ターゲット50の熱膨張が軸受に悪影響を及ぼすことのないX線管1が求められている。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びX線管1が求められている。さらに、小型で熱特性に優れたX線管1が求められている。
【0028】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態に係るX線管装置について説明する。
図5は、本第1の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
図6は、
図5に示したX線管1の一部を示す拡大断面図である。
図7は、
図5に示した固定シャフト10の一部を示す側面図である。
図8は、
図5に示した第2円筒22を示す斜視図である。
図9は、
図5に示した第1制限部材23を示す斜視図である。
【0029】
図5に示すように、X線管装置は、回転陽極型のX線管1、磁界を発生させるコイルとしてのステータコイル2等を備えている。X線管1は、すべり軸受ユニットUと、陽極ターゲット50と、陰極60と、外囲器70と、を備えている。すべり軸受ユニットUは、固定シャフト10と、回転体(回転軸)20と、液体金属LMと、を備え、すべり軸受を使っている。
【0030】
図5乃至
図7に示すように、固定シャフト10は、円柱状に形成され、回転軸線aに沿って延在し、外周面に形成されたラジアル軸受面S11a,S11bと、熱伝達部10aと、を有している。固定シャフト10は、径大部11、第1径小部12、及び第2径小部13を備えている。径大部11、第1径小部12、及び第2径小部13は、同軸的に一体に形成されている。固定シャフト10は、Fe(鉄)合金やMo(モリブデン)合金等の金属で形成されている。
【0031】
固定シャフト10の径大部11は、回転軸線aに沿って並んだ領域A1、領域A2、領域A3、領域A4、及び領域A5に位置している。なお、領域A1は、陽極ターゲット50で囲まれた領域である。領域A2は、領域A1に対し回転軸線aに沿った方向に間隔を置いて位置している。領域A3は、領域A1と領域A2との間に位置し、領域A1及び領域A2のそれぞれと隣り合っている。領域A4は、領域A3から向かって領域A1を越えて位置し、領域A1と隣り合っている。領域A5は、領域A3から向かって領域A2を越えて位置し、領域A2と隣り合っている。
【0032】
径大部11は、円柱状に形成され、それぞれ外周面に位置したラジアル軸受面S11a、ラジアル軸受面S11b、凹面S11c、凹面S11d、及び凹面S11eを有している。また、径大部11は、一端にスラスト軸受面S11iを有し、他端にスラスト軸受面S11jを有している。ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S11bは、それぞれ径大部11の外周面に全周に亘って形成されている。本第1の実施形態において、凹面S11c、凹面S11d、及び凹面S11eは、それぞれ径大部11の外周面に全周に亘って形成されている。但し、凹面S11c、凹面S11d、及び凹面S11eは、周方向にて、それぞれ断続的に形成されてもよい。
【0033】
ラジアル軸受面S11aは、領域A1にて径大部11に形成されている。ラジアル軸受面S11bは、領域A2にて径大部11に形成されている。ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S11bは、回転軸線aに沿った方向に間隔を置いて位置している。
【0034】
ラジアル軸受面S11aは、プレーン面Saと、複数のパターン部Paと、を有している。プレーン面Saは、滑らかな外周面を有している。複数のパターン部Paは、プレーン面Saを窪めて形成され、領域A1にて径大部11の外周面に全周に亘って並べられている。各々のパターン部Paは、周方向に対して斜線状に延出して配列されている。
回転軸線aに沿った方向において、複数のパターン部Paは、間隔を置いて形成されている。但し、複数のパターン部Paは、回転軸線aに沿った方向において、つながっていてもよい。
【0035】
ラジアル軸受面S11bは、プレーン面Sbと、複数のパターン部Pbと、を有している。プレーン面Sbは、滑らかな外周面を有している。複数のパターン部Pbは、プレーン面Sbを窪めて形成され、領域A2にて径大部11の外周面に全周に亘って並べられている。パターン部Pbは、周方向に対して斜線状に延出して配列されている。
回転軸線aに沿った方向において、複数のパターン部Pbは、間隔を置いて形成されている。但し、複数のパターン部Pbは、回転軸線aに沿った方向において、つながっていてもよい。
【0036】
各々のパターン部Pa及び各々のパターン部Pbは、数十μmの深さを有した溝で形成されている。複数のパターン部Pa及び複数のパターン部Pbは、それぞれヘリングボン・パターンを形作っている。このため、ラジアル軸受面S11a,S11bは、それぞれ凹凸面であり、液体金属LMを掻き込むことができ、液体金属LMによる動圧を発生し易くすることができる。
【0037】
凹面S11cは、領域A3にて径大部11に形成されている。凹面S11dは、領域A4にて径大部11に形成されている。凹面S11eは、領域A5にて径大部11に形成されている。凹面S11c、凹面S11d、及び凹面S11eは、回転軸線aに沿った方向に互いに間隔を置いて位置し、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S11bから外れている。
【0038】
凹面S11cは、回転軸線aに沿った方向にて、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S11bのそれぞれと並んでいる。凹面S11dは、回転軸線aに沿った方向にて、ラジアル軸受面S11aと並んでいる。凹面S11eは、回転軸線aに沿った方向にて、ラジアル軸受面S11bと並んでいる。凹面S11c,S11d,S11eは、それぞれ、滑らかな外周面であり、プレーン面である。
【0039】
凹面S11c、凹面S11d、及び凹面S11eは、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S11bに比べて窪んで形成されている。言い換えると、凹面S11c,S11d,S11eは、ラジアル軸受面S11a,S11bの仮想の延長面Seより回転軸線a側に位置している。さらに言い換えると、固定シャフト10において、凹面S11c,S11d,S11eが形成される区間の外径DO2は、ラジアル軸受面S11a,S11bが形成される区間の外径のうちの最小の外径DO1より小さい。
【0040】
回転軸線aに垂直な方向にて、凹面(凹面S11c,S11d,S11e)と第2円筒22との間の隙間は、ラジアル軸受面S11a(プレーン面Sa)と第2円筒22との間の隙間より大きく、ラジアル軸受面S11b(プレーン面Sb)と第2円筒22との間の隙間より大きい。
【0041】
本第1の実施形態において、回転軸線aに垂直な方向にて、ラジアル軸受面S11a(プレーン面Sa)と第2円筒22との間の隙間、及びラジアル軸受面S11b(プレーン面Sb)と第2円筒22との間の隙間は、それぞれ10乃至40μmである。なお、上記隙間は、10μm未満となってもよい。また、回転軸線aに垂直な方向にて、凹面(凹面S11c,S11d,S11e)と第2円筒22との間の隙間は、0.1乃至3mmである。
【0042】
凹面S11cと第2円筒22との間の空間、凹面S11dと第2円筒22との間の空間、及び凹面S11eと第2円筒22との間の空間を、液体金属LMを収容するリザーバとして機能させることができる。各々のラジアル軸受面S11a,S11bに両隣から液体金属LMを供給できるため、軸受隙間における液体金属LMの枯渇を抑制することができる。
【0043】
軸受隙間で液体金属LMが稀薄になり、又は液体金属LMが存在しなくなる場合に生じるラジアル軸受面同士の接触を抑制することができる。さらに、軸受面の少なくとも一方が削られてなる異物の発生自体を抑制することができるため、異物の液体金属LMへの混入を抑制することができる。
【0044】
第1径小部12は、径大部11より外径の小さい円柱状に形成され、径大部11の一端側に位置している。第1径小部12は、スラスト軸受面S11iより回転軸線a側に位置している。
【0045】
第2径小部13は、径大部11より外径の小さい円柱状に形成され、径大部11の他端側に位置している。第2径小部13は、スラスト軸受面S11jより回転軸線a側に位置している。
【0046】
固定シャフト10は、第1底面10b1と、第2底面10b2と、熱伝達部10aと、を含んでいる。第2底面10b2は、回転軸線aに沿った方向において第1底面10b1の反対側に位置している。本第1の実施形態において、第1底面10b1は第1径小部12に位置し、第2底面10b2は第2径小部13に位置している。
【0047】
熱伝達部10aは、回転軸線aに沿って延在し、第1底面10b1及び第2底面10b2の少なくとも一方に開口している。本第1の実施形態において、熱伝達部10aは、熱伝達穴であり、第2底面10b2に開口している。熱伝達部10aは、冷媒の流路を形成している。熱伝達部10aは、強制対流にて内部を流れる冷媒に熱を伝達する。本第1の実施形態において、冷媒は冷却液Lである。水冷又は油冷にてX線管1の陽極ターゲット50の冷却率を向上させることができる。但し、冷媒は空気であってもよく、空冷にて陽極ターゲット50の冷却率を向上させてもよい。
【0048】
熱伝達部10aは、少なくとも領域A1に位置していた方が望ましい。これにより、固定シャフト10のうち、陽極ターゲット50の熱が伝わり易い個所を冷却することができる。
【0049】
図5及び
図6に示すように、回転体20は、固定シャフト10を中心に回転自在に構成されている。回転体20は、第1円筒21と、第2円筒22と、第1制限部材23と、第2制限部材24と、筒部25と、を備えている。第1円筒21、第2円筒22、第1制限部材23、及び第2制限部材24は、それぞれFe合金やMo合金等の金属で形成されている。筒部25は、銅(Cu)又は銅合金等の金属で形成されている。回転体20において、第1円筒21は外側に位置する外円筒であり、第2円筒22は相対的に内側に位置する内円筒である。
【0050】
第1円筒21は、回転軸線aに沿って延出し、筒状に形成され、固定シャフト10(径大部11)を囲んで位置している。本第1の実施形態において、第1円筒21は、全長に亘って均一な内径及び外径を有している。
【0051】
図5、
図6、及び
図8に示すように、第2円筒22は、回転軸線aに沿って延出し、筒状に形成されている。第2円筒22は、固定シャフト10と第1円筒21との間に位置している。本第1の実施形態において、第2円筒22は、全長に亘って均一な内径及び外径を有している。第2円筒22の内径は固定シャフト10(径大部11)より大きく、第2円筒22の外径は第1円筒21の内径より小さい。
【0052】
第2円筒22は、内周面にラジアル軸受面S22を含んでいる。ラジアル軸受面S22は、少なくとも領域A1及び領域A2に位置している。本第1の実施形態において、ラジアル軸受面S22は、滑らかな内周面であり、プレーン面である。第2円筒22と固定シャフト10との間の隙間、及び第2円筒22と第1円筒21との間の隙間の分、第2円筒22は、固定シャフト10及び第1円筒21の各々に対して偏心した位置に移動可能である。第2円筒22は、第1円筒21に対して相対的に回転しないように回転動作が制限されている。そのため、第2円筒22の回転速度は、第1円筒21の回転速度と同一である。
【0053】
回転軸線aに沿った方向において、第2円筒22の長さは、径大部11の長さより短い。第2円筒22の長さは、後述するラジアルすべり軸受及びスラストすべり軸受の機能を損なうことの無いよう、調整されている。
【0054】
第2円筒22は、第1端面22e1と、第2端面22e2と、1以上の凹部22rと、を含んでいる。第1端面22e1は、第2円筒22のうち回転軸線aに沿った方向の端に位置している。第2端面22e2は、第2円筒22のうち回転軸線aに沿った方向の端に位置し、第1端面22e1の反対側にある。本実施形態において、第2円筒22は、3つの凹部22rを有している。これらの凹部22rは、周方向に互いに間隔を置いて位置している。各々の凹部22rは、第1端面22e1に開口し、回転軸線aに沿った方向に凹んでいる。
本第1の実施形態において、回転軸線aに垂直な方向にて、第1円筒21と第2円筒22との間の隙間は、10乃至40μmである。
【0055】
図5、
図6、及び
図9に示すように、第1制限部材23は、第1部材23aと、1以上の第2部材23bと、を有している。本実施形態において、第1制限部材23は、3つの第2部材23bを有している。第1部材23aは、円環状の形状を有し、第1円筒21に固定されている。例えば、本第1の実施形態のように、第1円筒21に対する第1部材23aの相対的な位置を固定するため、第1部材23aの外周側に環状の段差部が形成されてもよい。第1部材23aの段差部を第1円筒21に嵌合させることができる。
【0056】
回転軸線aに沿った方向にて、第1部材23aを第1円筒21に押圧した状態に保持することで、第1部材23aを第1円筒21に固定することができる。又は、溶接やろう接により第1部材23aを第1円筒21に固定したり、ねじを用いて第1部材23aを第1円筒21に取り外し可能に固定したり、してもよい。
【0057】
第1部材23aは、第2円筒22の第1端面22e1と対向している。これにより、第1部材23aは、回転軸線aに沿った方向の第2円筒22の移動を制限することができる。第1部材23aは、回転軸線aに沿った方向に固定シャフト10のスラスト軸受面S11iと対向したスラスト軸受面S23aを含んでいる。スラスト軸受面S23aは、第1部材23aの内周側に位置し、環状の形状を有している。なお、
図9において、スラスト軸受面S23aにはドットパターンを付している。
【0058】
各々の第2部材23bは、第1部材23aから回転軸線aに沿った方向に突出している。第2部材23bは、第2円筒22の凹部22rに一対一で対応して設けられている。各々の第2部材23bは、第2円筒22の凹部22rに嵌合している。本第1の実施形態において、第2部材23bと凹部22rとの間には嵌合のための十分な隙間が確保されている。そのため、締り嵌めを利用すること無しに、第2部材23bを凹部22rに嵌合させることができる。また、第2部材23bと凹部22rとの間の隙間を、液体金属LMの循環路に利用することができる。
【0059】
第2部材23bは、第2円筒22の凹部22rとともに第2円筒22の回転動作を制限するように構成されている。第2円筒22は、第1円筒21に対して回転しないように制限されている。
【0060】
第1制限部材23(第1部材23a)と固定シャフト10(第1径小部12)との間の隙間(クリアランス)は、回転体20の回転を維持するとともに液体金属LMの漏洩を抑制できる値に設定されている。以上のことから、上記隙間は僅かであり、第1部材23aはラビリンスシールリング(labyrinth seal ring)として機能するものである。
【0061】
図5及び
図6に示すように、第2制限部材24は、円環状の形状を有し、第1円筒21に固定されている。本第1の実施形態において、第2制限部材24は、第1円筒21と同一材料で一体成形されている。第2制限部材24は、第2円筒22の第2端面22e2と対向している。これにより、第2制限部材24は、回転軸線aに沿った方向の第2円筒22の移動を制限することができる。
【0062】
第2制限部材24は、回転軸線aに沿った方向に固定シャフト10のスラスト軸受面S11jと対向したスラスト軸受面S24を含んでいる。スラスト軸受面S24は、第2制限部材24の内周側に位置し、環状の形状を有している。
【0063】
また、第2制限部材24と固定シャフト10(第2径小部13)との間の隙間(クリアランス)は、回転体20の回転を維持するとともに液体金属LMの漏洩を抑制できる値に設定されている。以上のことから、上記隙間は僅かであり、第2制限部材24はラビリンスシールリングとして機能するものである。
【0064】
筒部25は、第1円筒21の外周面と接合され、第1円筒21に固着されている。なお、
図6において、筒部25の図示を省略している。
すべり軸受ユニットUに組立てる際、第1円筒21と第2制限部材24との一体物の内部に第2円筒22を挿入し、続いて、第2円筒22に固定シャフト10を嵌合する。その後、第1制限部材23で蓋をするため、第1制限部材23を第1円筒21に固定する。
【0065】
本実施形態において、第2制限部材24は第1円筒21と一体に形成され、第1制限部材23は第1円筒21から物理的に独立した蓋である。
但し、第1制限部材23は第1円筒21と一体に形成され、第2制限部材24は第1円筒21から物理的に独立した蓋であってもよい。
又は、第1制限部材23及び第2制限部材24は、それぞれ第1円筒21から物理的に独立した蓋であってもよい。
【0066】
固定シャフト10及び回転体20は、全対向領域で、互いに隙間を置いて設けられている。径大部11は回転体20で覆われている。第1径小部12及び第2径小部13は回転体20の外側に突出している。固定シャフト10は回転体20を回転可能に支持している。
【0067】
液体金属LMは、固定シャフト10(径大部11)と、第1円筒21と、第2円筒22と、第1制限部材23と、第2制限部材24と、の間の複数の隙間に充填されている。液体金属LMは、GaIn(ガリウム・インジウム)合金又はGaInSn(ガリウム・インジウム・錫)合金等の材料を利用することができる。液体金属LMは、上記複数の隙間に適量充填されている。回転体20の回転動作時、液体金属LMの回転軸線a側の液面は、ラジアル軸受面S11a,S11bより回転軸線a側に位置している。これにより、軸受隙間における液体金属LMの枯渇を抑制することができる。
【0068】
液体金属LMは、固定シャフト10の軸受面及び回転体20の軸受面とともに動圧形のすべり軸受を形成している。
液体金属LMは、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S22とともに動圧形のラジアルすべり軸受Baを形成している。ラジアルすべり軸受Baは、領域A1に位置している。
液体金属LMは、ラジアル軸受面S11b及びラジアル軸受面S22とともに動圧形のラジアルすべり軸受Bbを形成している。ラジアルすべり軸受Bbは、領域A2に位置している。
液体金属LMは、スラスト軸受面S11i及びスラスト軸受面S23aとともに動圧形のスラストすべり軸受Bcを形成している。
液体金属LMは、スラスト軸受面S11j及びスラスト軸受面S24とともに動圧形のスラストすべり軸受Bdを形成している。
【0069】
第2円筒22の第1端面22e1(凹部22r)と第1制限部材23との間の隙間は、固定シャフト10と第2円筒22との間の隙間と、第1円筒21と第2円筒22との間の隙間と、につなげられ、液体金属LMの循環路を構成している。第2円筒22の第2端面22e2と第2制限部材24との間の隙間は、固定シャフト10と第2円筒22との間の隙間と、第1円筒21と第2円筒22との間の隙間と、につなげられ、液体金属LMの循環路を構成している。
【0070】
上記のことから、液体金属LMは、固定シャフト10(径大部11)と、第1円筒21と、第2円筒22と、第1制限部材23と、第2制限部材24と、の間の複数の隙間を移動可能である。
【0071】
陽極ターゲット50は、円環状に形成され、固定シャフト10、第1円筒21、及び第2円筒22と同軸的に設けられている。陽極ターゲット50は、陽極ターゲット本体51と、陽極ターゲット本体51の外面の一部に設けられたターゲット層52と、を有している。陽極ターゲット本体51は、円環状に形成されている。陽極ターゲット本体51は、第1円筒21の外周面を囲み、第1円筒21に固定されている。本実施形態において、陽極ターゲット本体51は、第1円筒21に固着されている。
【0072】
陽極ターゲット本体51は、モリブデン、タングステン、あるいはこれらを用いた合金で形成されている。ターゲット層52を形成する金属の融点は、陽極ターゲット本体51を形成する金属の融点と同一、又は陽極ターゲット本体51を形成する金属の融点より高い。本第1の実施形態において、陽極ターゲット本体51はモリブデン合金で形成され、ターゲット層52はタングステン合金で形成されている。
【0073】
陽極ターゲット50は、回転体20とともに回転可能である。ターゲット層52のターゲット面S52に電子が衝突すると、ターゲット面S52に焦点が形成される。これにより、陽極ターゲット50は、焦点からX線を放出する。
【0074】
ここで、固定シャフト10、第1円筒21、第2円筒22、及び陽極ターゲット本体51の材質について説明する。
第1円筒21及び第2円筒22の材料の選択の自由度は高い。そのため、第2円筒22は、第1円筒21と同一の材料で形成されてもよく、第1円筒21と異なる材料で形成されてもよい。
【0075】
第2円筒22は、固定シャフト10と同一の材料で形成されてもよい。第2円筒22の熱膨張率と、固定シャフト10の熱膨張率とを一致させることができる。例えば、ラジアル軸受隙間の変動を抑制することができる。
第1円筒21は、固定シャフト10と同一の材料で形成されてもよい。第1円筒21の熱膨張率と、固定シャフト10の熱膨張率とを一致させることができる。例えば、スラスト軸受隙間の変動を抑制することができる。
【0076】
なお、固定シャフト10は、第1円筒21と異なる材料で形成されてもよく、第2円筒22と異なる材料で形成されてもよい。例えば、固定シャフト10を第1円筒21より軟らかい金属で形成したり、固定シャフト10を第2円筒22より軟らかい金属で形成したり、することができる。固定シャフト10を加工し易くなるため、固定シャフト10の生産性の向上を図ることができる。
【0077】
陽極ターゲット本体51が第1円筒21の外周面に間隔を置いて位置している場合、第1円筒21は、陽極ターゲット本体51と同一の材料で形成されてもよく、陽極ターゲット本体51と異なる材料で形成されてもよい。
陽極ターゲット本体51が第1円筒21の外周面につなげられ、陽極ターゲット本体51が第1円筒21の外周面に固着されている場合、第1円筒21は、陽極ターゲット本体51と同一の材料で形成されている。陽極ターゲット本体51の熱膨張率と、第1円筒21の熱膨張率とを一致させることができる。例えば、第1円筒21から陽極ターゲット本体51が外れたり、第1円筒21及び陽極ターゲット本体51の少なくとも一方が破損したり、する事態を抑制することができる。
【0078】
図5に示すように、陰極60は、陽極ターゲット50のターゲット層52に間隔を置き、ターゲット層52に対向配置されている。陰極60は、外囲器70の内壁に取付けられている。陰極60は、ターゲット層52に照射する電子を放出する電子放出源としてのフィラメント61を有している。
【0079】
外囲器70は、円筒状に形成されている。外囲器70はガラス、セラミック及び金属で形成されている。外囲器70において、陽極ターゲット50と対向した個所の外径は、筒部25と対向した個所の外径より大きい。外囲器70は開口部71,72を有している。外囲器70は、密閉され、すべり軸受ユニットU、陽極ターゲット50、及び陰極60を収容している。外囲器70の内部は真空状態(減圧状態)に維持されている。
【0080】
外囲器70の気密状態を維持するよう、開口部71は固定シャフト10の一端部(第1径小部12)に気密に接合され、開口部72は固定シャフト10の他端部(第2径小部13)に気密に接合されている。この実施の形態において、X線管1は、両端支持軸受構造を採用している。外囲器70は、固定シャフト10の第1径小部12及び第2径小部13を固定している。すなわち、第1径小部12及び第2径小部13は、軸受の両持ち支持部として機能している。
【0081】
X線管1は、固定シャフト10の内部に設けられた管部40を備えている。円環部16は、固定シャフト10の第2底面10b2に液密に接合されている。管部40は、外周面が円環部16の開口部に液密に接合され、固定シャフト10の外部に延出している。固定シャフト10は、管部40とともに冷却液Lの流路を形成している。
【0082】
管部40は、この内部に冷却液を取り入れる取入口40aと、冷却液Lを固定シャフト10の内部に吐き出す吐出口40bを有している。取入口40aは、固定シャフト10の第2底面10b2から外部に延出した側に位置している。また吐出口40bは、回転軸線aに沿った方向にて、熱伝達部10aの底面に隙間を置いて位置している。
【0083】
外囲器70の外側において、固定シャフト10には開口部が形成され、この開口部には管部45が液密に接合されている。管部45は、冷却液Lを外部に取り出す取出口45aを有している。以上のことから、X線管1の内部を循環する冷却液Lは、取入口40aから取り入れられ、管部40の内部を通り、吐出口40bから固定シャフト10の内部に吐出され、管部40及び固定シャフト10の間を通り、管部45の取出口45aから取り出される。なお、上記冷却液Lは、逆方向に循環してもよい。この場合、管部45が冷却液Lの取入口を形成し、管部40が冷却液Lの取出口を形成する。
【0084】
ステータコイル2は、回転体20の外周面、より詳しくは筒部25の外周面に対向して外囲器70の外側を囲むように設けられている。ステータコイル2の形状は環状である。ステータコイル2は、筒部25(回転体20)に与える磁界を発生して回転体20及び陽極ターゲット50を回転させる。
上記のようにX線管1を備えたX線管装置が形成されている。
【0085】
上記X線管装置の動作状態において、ステータコイル2は回転体20(特に筒部25)に与える磁界を発生するため、第2円筒22は回転する。これにより、第1円筒21及び陽極ターゲット50も一緒に回転する。また、陰極60に電流が与えられ負の電圧が印加され、陽極ターゲット50に相対的に正の電圧が印加される。
【0086】
これにより、陰極60と陽極ターゲット50との間に電位差が生じる。フィラメント61は電子を放出する。この電子は、加速され、ターゲット面S52に衝突する。これにより、ターゲット面S52に焦点が形成され、焦点は電子と衝突するときにX線を放出する。陽極ターゲット50に衝突した電子(熱電子)は、X線に変換され、残りは熱エネルギに変換される。なお、陰極60の電子放出源としては、フィラメントに限定されるものではなく、例えばフラットエミッタであってもよい。また、X線管1は、熱陰極X線管ではなく、冷陰極X線管であってもよい。
【0087】
図10は、本第1の実施形態に係るX線管1の一部を示す拡大断面図であり、陽極ターゲット50に熱が入力され、陽極ターゲット50が冷却されるまでの状態を示す図である。
図10に示すように、陽極ターゲット50に熱が発生すると、陽極ターゲット50は熱膨張する。すると、陽極ターゲット50と一体、又は陽極ターゲット50と強固に結合した部分に熱膨張による応力が伝搬し、熱変形が発生する。本第1の実施形態において、第1円筒21のうち領域A1に位置する部分で熱変形が発生し易い。例えば、第1円筒21のうち領域A1に位置する部分は、半径方向の外側に最大で100μm拡張され得る。
【0088】
しかしながら、本第1の実施形態において、第2円筒22は、第1円筒21に対して物理的に固定されていない。第2円筒22は、第1円筒21との間に隙間を置いている。第2円筒22は、第1円筒21に強固に結合されていないため、第1円筒21の変形による応力は、第2円筒22に伝搬し難い。陽極ターゲット50の熱膨張に起因した第2円筒22の変形を抑制することができ、軸受性能の低下を抑制することができる。
【0089】
また、第1円筒21と第2円筒22との間の体積が増加するため、遠心力により液体金属LMは第1円筒21側に集まり、径大部11側に真空空間が発生する。しかし、凹面S11c,S11d,S11eにより、予め液体金属LMのリザーバ空間を形成しているため、第1円筒21と第2円筒22との間の隙間や、軸受隙間に液体金属LMを供給することができる。上記のことからも、軸受性能の低下を抑制することができる。また、陽極ターゲット50から径大部11側への熱伝達は阻害されない。
【0090】
なお、第2部材23bを凹部22rに嵌合させる場合、本第1の実施形態と異なり、締り嵌めを利用して、第2部材23bを凹部22rに嵌合させてもよい。この場合も、陽極ターゲット50の熱膨張に起因した第2円筒22の変形を抑制することができる。なぜなら、陽極ターゲット50が熱膨張しても第1円筒21の端部は変形し難く、第2円筒22が第1円筒21のうち変形し難い端部に間接に固定されるためである。
【0091】
上記のように、締り嵌めにより、第1円筒21に対する第2円筒22の相対的な位置を固定してもよい。その場合、第2円筒22を、第1円筒21に対して偏心した位置に移動できなくすることができる。なお、第1円筒21に対する第2円筒22の相対的な位置を固定する手法は、締り嵌めに限定されるものではなく、ろう接によって行ったり、溶接によって行ったり、ねじを用いて行ったり、してもよい。
【0092】
本実施形態では、第2円筒22のうち第1端面22e1側の端部を、第1制限部材23を介して第1円筒21に間接に固定している。
但し、第1円筒21に対する第2円筒22の相対的な位置を固定するため、第2円筒22のうち第1端面22e1側の端部を固定しなくともよい。第2円筒22のうち第2端面22e2側の端部を、第2制限部材24を介して第1円筒21に間接に固定してもよい。第1端面22e1より第2端面22e2までの方が陽極ターゲット50からの熱伝達パスの長いため、第2円筒22の変形を、一層、抑制することができる。
【0093】
又は、第2円筒22のうち第1端面22e1側の端部を、第1制限部材23を介して第1円筒21に間接に固定し、かつ、第2円筒22のうち第2端面22e2側の端部を、第2制限部材24を介して第1円筒21に間接に固定してもよい。
【0094】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置は、回転陽極型のX線管1を備えている。X線管1は、すべり軸受ユニットUと、陽極ターゲット50と、陰極60と、外囲器70と、を備えている。すべり軸受ユニットUは、回転軸線aに沿って延在し外周面にラジアル軸受面S11a,S11bを含む固定シャフト10と、固定シャフト10を中心に回転自在な回転体20と、液体金属LMと、を備えている。
【0095】
回転体20は、第1円筒21と、第2円筒22と、を有している。第1円筒21は、回転軸線aに沿って延出して筒状に形成され、固定シャフト10を囲んで位置している。第2円筒22は、回転軸線aに沿って延出して筒状に形成され、固定シャフト10と第1円筒21との間に位置し、内周面にラジアル軸受面S22を含み、第1円筒21に対して相対的に回転しないように回転動作が制限されている。第2円筒22は、固定シャフト10及び第1円筒21の各々に対して偏心した位置に移動可能であってもよい。
【0096】
液体金属LMは、固定シャフト10と第1円筒21と第2円筒22との間の複数の隙間に充填され、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S22とともに動圧形のラジアルすべり軸受Baを形成し、ラジアル軸受面S11b及びラジアル軸受面S22とともに動圧形のラジアルすべり軸受Bbを形成している。陽極ターゲット50は、第1円筒21の外周面を囲み、第1円筒21に固定されている。
【0097】
回転体20は、二重円筒構造を有している。陽極ターゲット50と強固に結合される又は陽極ターゲット50と一体に形成される第1円筒21と、ラジアルすべり軸受Ba,Bbを形成する第2円筒22とは、物理的に独立している。第2円筒22は、陽極ターゲット50の熱膨張による悪影響を受け難い。
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置によれば、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0098】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第2の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図11は、本第2の実施形態に係るX線管装置の一部を示す拡大断面図である。
【0099】
図11に示すように、第2円筒22は、複数の循環孔h22をさらに有している。各々の循環孔h22は、第2円筒22の外周面から内周面まで貫通している。本第2の実施形態において、各々の循環孔h22は、回転軸線aに垂直な方向に直線的に延在している。各々の循環孔h22は、ラジアル軸受面S11a及びラジアル軸受面S22が対向する領域A1と、ラジアル軸受面S11b及びラジアル軸受面S22が対向する領域A2と、から外れて位置している。
【0100】
複数の循環孔h22は、領域A3,A4,A5に位置し、回転軸線aに沿った方向に間隔を置いて設けられている。なお、図示しないが、複数の循環孔h22は、各々の領域A3,A4,A5にて、周方向に間隔を置いて設けられてもよい。
【0101】
複数の循環孔h22は、固定シャフト10と第2円筒22との間の隙間と、第1円筒21と第2円筒22との間の隙間と、につなげられ、液体金属LMの循環路を構成している。そのため、上記両方の隙間の間における液体金属LMの移動を迅速に行うことができる。
【0102】
上記のように構成された第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0103】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第3の実施形態で説明する構成以外、上記第2の実施形態と同様に構成されている。
図12は、本第3の実施形態に係るX線管装置の一部を示す拡大断面図である。
【0104】
図12に示すように、固定シャフト10(径大部11)は、複数の溝部11rをさらに有している。各々の溝部11rは、凹面S11c、凹面S11d、又は凹面S11eに開口し、回転軸線a側に窪んでいる。本第3の実施形態において、各々の溝部11rは、径大部11の全周に亘って形成されていない。複数の溝部11rは、循環孔h22と対向した領域に設けられ、回転軸線aに沿った方向及び周方向に互いに間隔を置いて設けられている。
【0105】
但し、溝部11rは、径大部11の全周に亘って形成されてもよい。また、第2円筒22は、循環孔h22無しに形成されてもよい。
上記のように構成された第3の実施形態によれば、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0106】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第4の実施形態で説明する構成以外、上記第2の実施形態と同様に構成されている。
図13は、本第4の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
図14は、
図13に示した固定シャフト10を示す斜視図である。
【0107】
図13及び
図14に示すように、固定シャフト10は、収容部と、循環孔と、を有している。収容部は、固定シャフト10の内部に設けられ、液体金属LMを収容する。循環孔は、固定シャフト10の収容部から外周面まで貫通し、ラジアル軸受面S11a,S11bから外れて位置している。本第4の実施形態において、固定シャフト10は、収容部10cと、収容部10dと、収容部10eと、複数の循環孔h11と、を有している。
【0108】
収容部10c,10d,10eは、それぞれ、固定シャフト10の内部に設けられ、回転軸線aに沿った方向に直線的に延在した貫通穴で形成されている。本第4の実施形態において、収容部10c,10d,10eは、少なくとも領域A4から領域A5まで延在している。収容部10c,10d,10eは、周方向に間隔を置いて設けられている。第1底面10b1に位置する収容部10c,10d,10eの開口はシール材15で封止され、X線管1の外側に液体金属LMが漏れ出さないようにしている。
【0109】
複数の循環孔h11は、収容部10c、収容部10d、又は収容部10eに連通され、回転軸線aに垂直な方向に直線的に延在している。複数の循環孔h11は、凹面S11c、凹面S11d、及び凹面S11eの何れか1つに開口している。循環孔h11は、収容部10c,10d,10eと、固定シャフト10と第2円筒22との間の隙間と、の間で液体金属LMを循環させることができる。
【0110】
収容部10c,10d,10eを、液体金属LMを収容するリザーバとして機能させることができる。そのため、収容部10c,10d,10eに一時的に収容された液体金属LMを、固定シャフト10と第2円筒22との間の隙間に供給することができ、ひいては第1円筒21と第2円筒22との間の隙間に供給することができる。
【0111】
本第4実施形態において、循環孔h11は、回転軸線aに沿った方向及び周方向に互いに間隔を置いて設けられている。循環孔h11は、対応する循環孔h22と同一直線上に位置している。但し、循環孔h11は、循環孔h22と同一直線上に位置していなくともよい。また、複数の循環孔h11は、領域A3、領域A4、及び領域A5の全ての領域に設けられていなくともよい。例えば、複数の循環孔h11は、領域A3のみに設けられ、凹面S11cのみに開口してもよい。
なお、循環孔h11は、ラジアル軸受面S11a,S11bの少なくとも一方に位置してもよい。
【0112】
上記のように構成された第4の実施形態によれば、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、軸受隙間における液体金属LMの枯渇を、一層、抑制することができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0113】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第5の実施形態で説明する構成以外、上記第3の実施形態と同様に構成されている。
図15は、本第5の実施形態に係るX線管装置の一部を示す拡大断面図である。
【0114】
図15に示すように、第2円筒22は、外径寸法の異なる複数の領域を有してもよい。第1円筒21の内径は、全長に亘って均一である。上記のことから、回転軸線aに沿った方向において、第1円筒21と第2円筒22との間の隙間が異なる複数の領域Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Agが存在する。第2円筒22は、複数の凹面22cを有している。複数の凹面22cは、領域Ab,Ad,Afのそれぞれにて、第2円筒22の外周面に全周に亘って形成されている。凹面22cは、回転軸線a側に窪んで形成されている。
循環孔h22は、凹面22cに開口している。
【0115】
ここで、領域Aa,Agのそれぞれにおける第1円筒21と第2円筒22との間の隙間をg1、領域Ac,Aeのそれぞれにおける第1円筒21と第2円筒22との間の隙間をg2、領域Ab,Ad,Afのそれぞれにおける第1円筒21と第2円筒22との間の隙間をg3、とする。
【0116】
すると、g1≦g2<g3である。本第5の実施形態において、g1=g2であるが、g1<g2としてもよい。これにより、領域Aa,Agにて、第1円筒21と第2円筒22との位置合わせを行うことができる。領域Ac,Aeにて、第1円筒21から第2円筒22へ熱を伝達する経路とすることができる。領域Ab,Ad,Afにて、液体金属LMを収容するリザーバとして機能させることができる。
【0117】
なお、g2<g3=g1であってもよい。言い換えると、領域Aa,Agのそれぞれにおける第2円筒22の外径は、領域Ab,Ad,Afのそれぞれにおける第2円筒22の外径と同一であってもよい。
【0118】
第2円筒22は、領域Acにて外径DO3を有し、領域Adにて外径DO4を有している。外径DO3は、第2円筒22のうち陽極ターゲット50で囲まれた領域の外径でもある。外径DO4は、第2円筒22のうち領域Ac(陽極ターゲット50で囲まれた領域)に隣り合う領域の外径でもある。外径DO3は、外径DO4より大きい。
【0119】
上記のように構成された第5の実施形態によれば、上記第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0120】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第6の実施形態で説明する構成以外、上記第5の実施形態と同様に構成されている。
図16は、本第6の実施形態に係るX線管装置の一部を示す拡大断面図である。
【0121】
図16に示すように、第1円筒21は、内径寸法の異なる複数の部分を有している。第1円筒21は、内径DI1を有する第1部分21Aと、内径DI2を有する第2部分21Bと、を有している。内径DI1は、内径DI2より大きい。第1部分21Aは、領域Aa,Ab,Ac,Adに位置している。第2部分21Bは、領域Ae,Af,Agに位置している。
【0122】
第2円筒22は、外径寸法の異なる複数の部分を有している。第2円筒22は、外径DO5を有する第1部分22Aと、外径DO5より小さい外径DO6を有する第2部分22Bと、を備えている。第1部分22Aは、領域Aa,Ab,Acに位置している。第2部分22Bは、領域Ad,Ae,Af,Agに位置している。
【0123】
ここで、領域Aa,Agのそれぞれにおける第1円筒21と第2円筒22との間の隙間をg1、領域Ac,Aeのそれぞれにおける第1円筒21と第2円筒22との間の隙間をg2、領域Ab,Ad,Afのそれぞれにおける第1円筒21と第2円筒22との間の隙間をg3、とする。
【0124】
すると、g1≦g2<g3である。本第6の実施形態において、g1=g2であるが、g1<g2としてもよい。これにより、領域Aa,Agにて、第1円筒21と第2円筒22との位置合わせを行うことができる。領域Ac,Aeにて、第1円筒21から第2円筒22へ熱を伝達する経路とすることができる。領域Ab,Ad,Afにて、液体金属LMを収容するリザーバとして機能させることができる。
【0125】
上記のように、第1円筒21は相対的に大きい内径DI1を有する第1部分21Aを有し、第2円筒22は相対的に小さい外径DO6を有する第2部分22Bを有している。そのため、すべり軸受ユニットUに組立てる際、第1円筒21と第2制限部材24との一体物の内部に第2円筒22を挿入し易くすることができる。
【0126】
上記のように構成された第6の実施形態によれば、上記第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。第1部分21Aは相対的に大きい内径DI1を有するため、第1部分21Aと第1部分22Aとの間の隙間にて液体金属LMを枯渇し難くすることができる。言い換えると、陽極ターゲット50で囲まれた領域にて、第1円筒21と第2円筒22との間の隙間にて液体金属LMを枯渇し難くすることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0127】
なお、上記第6の実施形態と異なり、第1円筒21は、全長に亘って内径が均一に形成されてもよい。言い換えると、第1円筒21は、全長に亘って内径DI1を有してもよい。その場合も、上記第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0128】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第7の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図17は、本第7の実施形態に係るX線管装置の一部を示す拡大断面図である。なお、
図17において、便宜上、凹部22r及び第2部材23bの図示を省略している。
【0129】
図17に示すように、第2円筒22は、複数の凹面22cを有している。複数の凹面22cは、第2円筒22の外周面に全周に亘って形成されている。凹面22cは、回転軸線a側に窪んで形成されている。
【0130】
X線管1は、円環状のバネ80を有している。本第7の実施形態において、X線管1は、2つのバネ80を有している。バネ80は、第1円筒21と第2円筒22との間に位置し、内側の端部が凹面22cを押圧し、外側の端部が第1円筒21の内周面を押圧している。
【0131】
凹面22cと第1円筒21の内周面との間の隙間を、液体金属LMを収容するリザーバとして機能させたり、バネ80を配置する空間としたり、することができる。これにより、例えば、第1円筒21と第2円筒22との同軸を保つことができる。
【0132】
上記のように構成された第7の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0133】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第8の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図18は、本第8の実施形態に係るX線管装置の一部を示す拡大断面図である。
【0134】
図18に示すように、第2円筒22は、さらに第2制限部材24によって回転動作が制限されてもよい。
第2円筒22は、1以上の凹部22tをさらに含んでいる。本第8の実施形態において、第2円筒22は、3つの凹部22tを有している。これらの凹部22tは、周方向に互いに間隔を置いて位置している。各々の凹部22tは、第2端面22e2に開口し、回転軸線aに沿った方向に凹んでいる。
【0135】
第2制限部材24は、
図9等に示した第1制限部材23と同様に構成されている。第2制限部材24は、第1部材24aと、1以上の第2部材24bと、を有している。本第8の実施形態において、第2制限部材24は、3つの第2部材24bを有している。第1部材24aは、円環状の形状を有し、第1円筒21に固定されている。
【0136】
第1部材24aは、第2円筒22の第2端面22e2と対向している。これにより、第1部材24aは、回転軸線aに沿った方向の第2円筒22の移動を制限することができる。第1部材24aは、スラスト軸受面S24を含んでいる。スラスト軸受面S24は、第1部材24aの内周側に位置し、環状の形状を有している。
【0137】
各々の第2部材24bは、第1部材24aから回転軸線aに沿った方向に突出している。第2部材24bは、第2円筒22の凹部22tに一対一で対応して設けられている。各々の第2部材24bは、第2円筒22の凹部22tに嵌合している。本第8の実施形態において、締り嵌めを利用すること無しに、第2部材24bを凹部22tに嵌合させることができる。但し、締り嵌めを利用し、第2部材24bを凹部22tに嵌合させてもよい。第2部材24bは、第2円筒22の凹部22tとともに第2円筒22の回転動作を制限するように構成されている。
【0138】
上記のように構成された第8の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0139】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第9の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図19は、本第9の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
【0140】
図19に示すように、X線管1は、管部40、円環部16、及び管部45無しに形成されている。熱伝達部10aは、熱伝達孔である。熱伝達部10aは、第1底面10b1及び第2底面10b2の両方に開口し、回転軸線aに沿って延在し、固定シャフト10を貫通している。冷媒(冷却液L)は、第1底面10b1側から固定シャフト10の中に流入し、第2底面10b2側から固定シャフト10の外部に流出する。又は、冷媒(冷却液L)は、第2底面10b2側から固定シャフト10の中に流入し、第1底面10b1側から固定シャフト10の外部に流出する。
【0141】
上記のように構成された第9の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0142】
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第10の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図20は、本第10の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
【0143】
図20に示すように、X線管1は、片端支持軸受構造を採用している。外囲器70は、固定シャフト10の第2径小部13を固定している。すなわち、第2径小部13は、軸受の片持ち支持部として機能している。
【0144】
固定シャフト10は、径大部11及び第2径小部13を備え、第1径小部12無しに構成されている。径大部11に第1底面10b1は位置し、スラスト軸受面S11iは第1底面10b1に位置している。第1制限部材23は、円板状に形成され、第1円筒21の一端側を液密に閉塞している。第1制限部材23は、スラスト軸受面S11iと対向したスラスト軸受面S23aを有している。
【0145】
本第10の実施形態において、第2円筒22は凹部22tを有し、第2制限部材24は第1部材24a及び第2部材24bを有している。第2制限部材24は、例えば、ねじを用いて第1円筒21に取り外し可能に固定されている。第2円筒22は、第1円筒21に対して相対的に回転しないように回転動作が制限されている。
【0146】
上記のように構成された第10の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0147】
(第11の実施形態)
次に、第11の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第11の実施形態で説明する構成以外、上記第10の実施形態と同様に構成されている。
図21は、本第11の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
【0148】
図21に示すように、固定シャフト10は、鍔部17をさらに備えている。鍔部17は、径大部11の外周面側に位置し、径大部11と一体に形成されている。
回転体20は、軸受部材26をさらに備えている。軸受部材26は、鍔部17を囲んだ筒部と、回転軸線aに沿った方向に鍔部17と対向した円環部と、が一体となって形成されている。第2制限部材24は、例えば、軸受部材26とともに、ねじを用いて第1円筒21に取り外し可能に固定されている。なお、回転体20の構成や、すべり軸受ユニットUの組立て方法は、
図21に示す例に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0149】
第2制限部材24及び鍔部17は、液体金属LMとともに動圧形のスラストすべり軸受Bcを形成している。一方、軸受部材26及び鍔部17も、液体金属LMとともに動圧形のスラストすべり軸受Bdを形成している。
【0150】
上記のように構成された第11の実施形態によれば、上記第10の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0151】
(第12の実施形態)
次に、第12の実施形態に係るX線管装置について説明する。X線管1は、本第12の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図22は、本第12の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
【0152】
図22に示すように、固定シャフト10は、円柱状に形成され、中実の部材であってもよい。固定シャフト10のうち、外囲器70の外側に露出した部分において固定シャフト10を冷却することができる。
【0153】
上記のように構成された第12の実施形態によれば、上記第10の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、良好な軸受動作を得ることができるすべり軸受ユニットU及びこのすべり軸受ユニットUを備えたX線管1を得ることができる。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。