【課題】端子の不用意な変形を防止しつつ端子配列方向でのコネクタの小型化を図ることができる回路基板用電気コネクタ、相手側電気コネクタおよび電気コネクタ組立体を提供する。
【解決手段】ハウジング10は、端子配列範囲にわたって延び複数の端子20,30の上記接触部21,31が配列される板面をもつ端子配列部14を有し、上記接触部21,31は、コネクタ幅方向で対面する一対の接触片21A,31Aを有し、上記端子20,30は、上記一対の接触片21A,31Aの基部を連結する連結部23,33と、該連結部23,33から接続部22,32へ向けて延びる延長部24,34とを有し、上記一対の接触片21A,31Aは、一方の接触片21A,31Aが上記端子配列部14の一方の板面に沿って延び該一方の板面に配置されているとともに、他方の接触片21A,31Aが上記端子配列部14の他方の板面に沿って延び該他方の板面に配置されている。
回路基板の実装面に配置され相手側コネクタと嵌合接続される回路基板用電気コネクタであって、回路基板の実装面に対して平行な一方向を端子配列方向として配列された複数の端子と、上記複数の端子を配列保持するハウジングとを備え、上記端子は、金属板製で屈曲形状をなし、相手側コネクタ側へ延び相手側コネクタと接触可能な接触部を一端側に有しているとともに、回路基板への接続可能な接続部を他端側に有している回路基板用電気コネクタにおいて、
上記ハウジングは、上記端子配列範囲にわたって延び上記複数の端子の上記接触部が配列される板面をもつ端子配列部を有し、
上記接触部は、コネクタ幅方向で対面する一対の接触片を有し、
上記端子は、上記一対の接触片の基部を連結する連結部と、該連結部から上記接続部へ向けて延びる延長部とを有し、
上記一対の接触片は、一方の接触片が上記端子配列部の一方の板面に沿って延び該一方の板面に配置されているとともに、他方の接触片が上記端子配列部の他方の板面に沿って延び該他方の板面に配置されていることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
上記端子は、上記接触部が回路基板の実装面に対して平行に延びており、上記延長部が回路基板の実装面に対して直角な方向で該実装面へ向けて延びる脚部を有していることとする請求項1または請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
上記回路基板用電気コネクタの上記ハウジングは、上記複数の端子の接触部および上記端子配列部を囲み相手側コネクタ側に開口した嵌合周壁を有し、該嵌合周壁は、端子配列方向に延びる一対の側壁と、上記嵌合周壁の端子配列方向での両端位置で端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向に延び上記一対の側壁の端部同士を連結する一対の端壁とを有し、
上記相手側電気コネクタの上記相手側ハウジングは、上記受入空間を形成する相手側嵌合周壁を有し、該相手側嵌合周壁は、端子配列方向に延びる一対の相手側側壁と、相手側嵌合周壁の端子配列方向での両端位置でコネクタ幅方向に延び上記一対の相手側側壁の端部同士を連結する一対の相手側端壁とを有し、
上記一対の端壁のうち一方の端壁が他方の端壁よりも端子配列方向で大きくなっているとともに相手側コネクタ側へ突出している、あるいは、上記一対の相手側端壁のうち一方の相手側端壁が他方の相手側端壁よりも端子配列方向で大きくなっているとともに上記回路基板用電気コネクタ側へ突出していることとする請求項5に記載の電気コネクタ組立体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
<第一実施形態>
図1(A)は、本実施形態に係る回路基板用電気コネクタ1(以下、「コネクタ1」という)を示す斜視図であり、
図1(B)は、
図1(A)のコネクタ1に嵌合される相手側電気コネクタ2(以下、「相手側コネクタ2」という)を示す斜視図である。
図1(A),(B)では、コネクタ1および相手側コネクタ2のそれぞれが嵌合部分側から見た状態で示されている。コネクタ1は、回路基板B1の実装面上に配置される回路基板用電気コネクタであり、相手側コネクタ2は、他の回路基板B2の実装面上に配置される回路基板用電気コネクタである。コネクタ1と相手側コネクタ2とは、回路基板B1および回路基板B2の互いの実装面同士が直角をなした姿勢で嵌合接続される(
図5(A),(B)参照)。
【0023】
コネクタ1は、回路基板B1の実装面に上方から配置されて実装されるようになっているとともに、回路基板B1の実装面に沿う方向(Y軸方向)をコネクタ嵌合方向としてY2側から相手側コネクタ2が嵌合接続されるようになっている。コネクタ1は、回路基板B1に実装される上下方向(Z軸方向)とコネクタ嵌合方向(Y軸方向)とが直角をなす、いわゆるL型電気コネクタ(ライトアングル電気コネクタ)である。以下、コネクタ1については、コネクタ嵌合方向(Y軸方向)において、Y1方向を「前方」とし、Y2方向を「後方」とする。
【0024】
コネクタ1は、電気絶縁材製で略直方体外形に作られたハウジング10と、回路基板B1の実装面に平行な一方向を端子配列方向(X軸方向)としてハウジング10に配列保持される複数の金属製の上側端子20および金属製の下側端子30と、ハウジング10に取り付けられる金属製の上側外シールド板50、上側内シールド板60および下側シールド板70とを有している。以下、上側端子20と下側端子30とを区別する必要がない場合には、これらを「端子20,30」と総称する。
【0025】
ハウジング10は、
図1(A)に見られるように、コネクタ嵌合方向での前部(Y1側の部分)が相手側コネクタ2との嵌合のための嵌合部11として形成され、同方向での後部(Y2側の部分)が端子20,30を保持するための端子保持部12として形成されている。嵌合部11は、端子配列方向(X軸方向)を長手方向とする直方体外形の嵌合周壁13と、嵌合周壁13の内部空間内で端子配列方向に延びる二つの端子配列部14とを有している。
【0026】
嵌合周壁13は、端子配列方向に延び上下方向(コネクタ幅方向)で対向する一対の側壁(後述の上壁13Aおよび下壁13B)と、嵌合周壁の端子配列方向での両端位置で上下方向に延び上記一対の側壁の端部同士を連結する一対の端壁13Cとを有している。また、嵌合周壁13で囲まれた空間は、相手側コネクタ2を受け入れるために前方(Y1方向)に開口された受入凹部15として形成されている。
【0027】
上壁13Aには、
図1(A)および
図2に見られるように、端子配列方向での複数箇所(本実施形態では六箇所)にて、上壁13Aの前端部(受入凹部15の開口縁部を形成する部分)の下面から没した上側取付溝13A−1が形成されている。上側取付溝13A−1は、下方および前方へ開放されており、後述するように前方から圧入された上側内シールド板60の取付片64(
図2参照)を保持するようになっている。
【0028】
また、下壁13Bには、
図1(A)および
図2に見られるように、端子配列方向での複数箇所(本実施形態では六箇所)にて、下壁13Bの前端部(受入凹部15の開口縁部を形成する部分)の上面から没した下側取付溝13B−1が形成されている。下側取付溝13B−1は、上方および前方へ開放されており、後述するように前方から圧入された下側シールド板70の取付片73(
図2参照)を保持するようになっている。
【0029】
端子配列部14は、上下方向(コネクタ幅方向)で間隔をもって二つ設けられており、それぞれ端子保持部12の前面から前方へ突出するとともに、端子配列方向で端子配列範囲にわたって延び、上壁13Aおよび下壁13Bのそれぞれの壁面に対して平行な板面をもつ板状をなしている。端子配列部14の両方の板面、すなわち上面および下面のそれぞれには、前後方向に延びる複数の端子溝14Aが端子配列方向に配列形成されている。それぞれの端子溝14Aには、対応する端子20,30の後述の接触片21A,31Aが配置される。本実施形態では、端子溝14Aの内壁面(上下方向に対して直角な面および端子配列方向に対して直角な面)は、接触片21A,31Aの板面および板厚面を支持している。また、端子配列部14の前端(Y1側に位置する先端)は、接触片21A,31Aの前端(Y1側に位置する先端)よりも前方に位置している。
【0030】
端子保持部12は、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状の端子保持溝16を有している(
図5(A),(B)参照)。
【0031】
端子保持溝16の形状の説明に先立って、まず、端子保持溝16で保持される端子20,30の形状を説明する。端子20,30は、金属板部材を打ち抜くとともに板厚方向に屈曲した屈曲形状をなして作られている。端子20,30は、端子配列方向(X軸方向)に見たときに全体が略L字状をなしている(
図5(A),(B)参照)。端子20,30のうち、上側端子20は、
図3(A),(B)に見られるように、一端側に形成された接触部21と、他端側に形成された接続部22と、接触部21の後述の一対の接触片21Aを連結する連結部23と、連結部23から接続部22へ向けてL字状に延びる延長部24とを有している。
【0032】
接触部21は、相手側コネクタ2の後述の相手側端子90と接触するための一対の接触片21Aを有している。それぞれの接触片21Aは、前後方向(Y軸方向)にて同一の長さをもって有し直状に延びる帯状片をなしている。また、それぞれの接触片21Aは、上下方向(Z軸方向)に対して直角な板面(板厚面に対して直角な面)を有しており、上下方向で板面同士が対面している。一対の接触片21Aのうち、上方に位置する接触片21Aは、ハウジング10の端子配列部14の上面に形成された端子溝14A内に配置され、端子配列部14の上面に沿って前方へ向けて延びており、接触片21Aの上面(板面)で相手側端子90と接触可能となっている(
図5(B)参照)。一方、下方に位置する接触片21Aは、ハウジング10の端子配列部14の下面に形成された端子溝14A内に配置されており、端子配列部14の下面に沿って前方へ向けて延びており、接触片21Aの下面(板面)で相手側端子90と接触可能となっている(
図5(B)参照)。
【0033】
接触片21Aの後端側部分をなす基部21A−1は、
図3(A),(B)に見られるように、一方の側縁(端子配列方向(X軸方向)でX2側に位置し前後方向に延びる側縁)に複数(
図3(A),(B)では二つ)の被保持突起21A−2を有している。
【0034】
連結部23は、端子配列方向(X軸方向)に対して直角な板面を有しており、一対の接触片21Aの基部21A−1の他方の側縁(端子配列方向(X軸方向)でX1側に位置し前後方向に延びる側縁)同士を連結している。つまり、連結部23および一対の接触片21Aの基部21A−1によって、前後方向(Y軸方向)に見たときにX2側へ開口した略横U字状をなす屈曲部分が形成されている。
【0035】
延長部24は、
図3(A),(B)に見られるように、端子配列方向に対して直角な板面をもち、連結部23の後端縁から後方へ直状に延びる横部24Aと、該横部24Aの後端部から下方へ向けて直状に延びる脚部としての縦部24Bとを有している。横部24Aは前端に形成されたくびれ部24A−1で連結部23の後端縁に連結されている。接続部22は、縦部24Bよりも幅寸法(前後方向での寸法)が小さくなっており、縦部24Bの下端から下方へ向けて延びている。接続部22は、ハウジング10の端子保持部12の下面(底面)から突出し、その下端が上下方向で回路基板B1の実装面と同じ高さに位置している(
図5(A)参照)。接続部22は、その下端で回路基板B1の実装面上の対応回路部(図示せず)に半田接続にされて電気的に導通可能となっている。
【0036】
本実施形態では、
図3(A),(B)に見られるように、延長部24の横部24Aは、連結部23の後端縁の上下方向中央域から後方へ延出している。したがって、一つの上側端子20において、上方の接触片21Aから接続部22までを通る信号伝送経路の長さと、下方の接触片21Aから接続部22までを通る信号伝送経路の長さとが、ほぼ等しくなっている。
【0037】
下側端子30は、既述した上側端子20と同様に、接触部31、接続部32、連結部33および延長部34を有しているが、延長部34の横部34Aと縦部34Bがそれぞれ上側端子20の横部24A、縦部24Bよりも短くなっている点で上側端子20と異なっている。また、下側端子30においても、上側端子20と同様に、上方の接触片31Aから接続部32までを通る信号伝送経路の長さと、下方の接触片31Aから接続部32までを通る信号伝送経路の長さとが、ほぼ等しくなっている。
【0038】
ハウジング10の説明に戻る。上述した端子20,30を保持するハウジング10の端子保持溝16は、
図5(A),(B)に見られるように、上側端子20の一対の接触片21Aの基部21A−1、連結部23(
図3(A),(B)参照)および横部24Aを収容する上溝部16Aと、下側端子30の一対の接触片31Aの基部31A−1、連結部33および横部34Aを収容する下溝部16Bと、上溝部16Aおよび下溝部16Bよりも後方の領域で端子保持部12の後端そして下端まで拡がる後溝部16Cとを有している。
【0039】
図5(A)によく見られるように、上溝部16Aは、端子保持部12の上部で前後方向(Y軸方向)に延びており、前端が受入凹部15へ向けて開口して該受入凹部15に連通しているとともに、後端が後溝部16Cに連通している。下溝部16Bは、上溝部16Aより下方に位置して前後方向に延びており、上溝部16Aよりも前後方向で短く形成されている。下溝部16Bは、その前端が上溝部16Aの前端と同位置で受入凹部15へ向けて開口して該受入凹部15に連通しており、後端が上溝部16Aの後端よりも前方に位置し後溝部16Cに連通している。後溝部16Cは、既述したように端子保持部12の後端そして下端まで拡がっており、後方そして下方へ開放されて外部と連通している。
【0040】
端子保持部12の後部には、後述する上側外シールド板50の被保持片52A(
図2参照)と対応する位置に、端子保持部12の後面から没した保持孔(図示せず)が形成されている。該保持孔は、後述するように、上側外シールド板50の被保持片52Aを圧入保持するようになっている。
【0041】
ハウジング10の上部では、
図5(A)に見られるように、端子保持部12の上面が嵌合部11の上面よりも下方に位置しており、嵌合部11と端子保持部12との境界域に段部10Aが形成されている。段部10Aには、嵌合部11の後部を前後方向に貫通する上側貫通孔(図示せず)が形成されている。上側貫通孔は、後述する上側内シールド板60の内接続部63(
図2参照)に対応して端子配列方向での複数箇所(本実施形態では六箇所)に形成されており、内接続部63が前方から挿入されるようになっている。
【0042】
ハウジング10の下部では、
図5(A)に見られるように、端子保持部12の下面が嵌合部11の下面よりも上方に位置しており、嵌合部11と端子保持部12との境界域に段部10Bが形成されている。端子保持部12の下部の前端部から段部10Bにわたる範囲には、受入凹部15から端子保持部12の底面まで延び前方そして下方に開口する下側貫通孔(図示せず)が形成されている。下側貫通孔は、後述する下側シールド板70の脚部72(
図2参照)に対応して端子配列方向での複数箇所(六箇所)に形成されており、脚部72を前方から受け入れるようになっている。
【0043】
上側外シールド板50は、
図2および
図5(A)に見られるように、端子配列方向に見たときの全体形状が略L字状をなすように金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。上側外シールド板50は、端子保持部12の上面に沿って延びる上板部51と、端子保持部12の後面に沿って延びる後板部52と、後板部52の下端から後方へ屈曲されて形成された後方接地部53とを有している。上側外シールド板50は、上板部51で端子保持部12の上面のほぼ全域を覆っているとともに、後板部52で端子保持部12の後面のほぼ全域を覆っている。
【0044】
上板部51は、
図2に見られるように、端子配列方向でハウジング10の上側貫通孔(図示せず)に対応する複数箇所(
図2では六箇所)で、端子配列方向に見たときに上板部51の前端部でクランク状をなすように板厚方向に屈曲された外接続部51Aを有している。外接続部51Aは、上板部51における他部よりも上方に位置しており、端子保持部12の上面との間に、上側内シールド板60の後述する内接続部63を前方から受け入れるための隙間を形成している。外接続部51Aは、その下面で内接続部63の上面と接触するようになっており、それによって、上側外シールド板50と上側内シールド板60との電気的な導通が図られる。
【0045】
後板部52は、
図2に見られるように、端子配列方向でハウジング10の端子保持部12の保持孔(図示せず)に対応する複数箇所(
図2では六箇所)で、後板部52の下部が前方へ向けて切り起こされて被保持片52Aが形成されている。被保持片52Aは、後述するように上側外シールド板50を端子保持部12に対して後方から取り付ける際に上記保持孔に後方から圧入されて保持される。
【0046】
後方接地部53は、端子配列方向で外接続部51Aと対応する位置のそれぞれに設けられており、
図5(A)に見られるように、後板部52の下端で後方へ向けて屈曲されて形成されている。後方接地部53は、
図5(A)に見られるように、端子20,30の接続部22,32と同じ高さに位置しており、回路基板B1の実装面の対応回路部に対して半田接続されて接地可能となっている。
【0047】
上側内シールド板60は、上側外シールド板50とは別体をなし、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。上側内シールド板60は、
図5(A)に見られるように、ハウジング10の受入凹部15内で、該受入凹部15を形成する内壁面のうち上側の内壁面に沿って位置し、該内壁面のほぼ全域を覆っている。
【0048】
上側内シールド板60は、端子配列方向に配列して形成された複数の上側長シールド接触片61および複数の上側短シールド接触片62(以下、必要に応じて「上側シールド接触片61,62」と総称する)と、上側内シールド板60の後端部に形成された複数の内接続部63と、上側内シールド板60の前端部に形成された複数の取付片64および案内部65とを有している。
【0049】
上側長シールド接触片61および上側短シールド接触片62は、
図2に見られるように、端子配列方向で交互に配されて形成されている。上側短シールド接触片62は、上側長シールド接触片61よりも前後方向で短く形成されている。上側長シールド接触片61および上側短シールド接触片62は、上側内シールド板60を切り起こして形成されており、前方(Y1方向)へ向かうにつれて若干下方へ傾斜するように延び、上下方向(板厚方向)に弾性変位可能な片持ち梁状の弾性片として形成されている(
図5(A)参照)。
【0050】
上側長シールド接触片61には、相手側コネクタ2に設けられた後述の上側シールド板100と接触するための上側前方シールド接触部61A(
図5(A)参照)が前端部(自由端部)にて下方へ突出して形成されている。上側短シールド接触片62にも、上側長シールド接触片61と同様に、前端部に上側後方シールド接触部62A(
図5(A)参照)が形成されている。以下、必要に応じて上側前方シールド接触部61Aおよび上側後方シールド接触部62Aを「上側シールド接触部61A,62A」と総称する。
【0051】
内接続部63は、
図2に見られるように、端子配列方向でハウジング10の上側貫通孔(図示せず)に対応する複数箇所(本実施形態では六箇所)で、端子配列方向に見たときに上側内シールド板60の後端部をクランク状に屈曲させることにより形成されている。内接続部63は、上側内シールド板60の他部よりも下方に位置しており、ハウジング10の上側貫通孔を前方から貫通しているとともに、上側外シールド板50の外接続部51Aと端子保持部12の上面との間の隙間へ前方から進入している。上記隙間内に位置する内接続部63は、該内接続部63の上面で外接続部51Aの下面と接触するようになっている。
【0052】
取付片64は、
図2に見られるように、端子配列方向でハウジング10の上側取付溝13A−1に対応する複数箇所(本実施形態では六箇所)にて、隣接し合う案内部65間に設けられており、上側内シールド板60の前端部をクランク状に屈曲させることにより形成されている。取付片64は、上方へ延びてから前方へ屈曲されて延びており、前方へ延びる部分で上側取付溝13A−1に前方から圧入されて保持される。
【0053】
案内部65は、上側内シールド板60の前端部を、前方へ向かうにつれて上方へ傾斜するように屈曲させることにより形成されている。案内部65は、
図5(A)に見られるように、上壁13Aの前端側に位置しており、コネクタ嵌合の際、該案内部65の下面で相手側コネクタ2を受入凹部15内へ案内するようになっている。
【0054】
下側シールド板70は、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。下側シールド板70は、ハウジング10の受入凹部15内で該受入凹部15の下側の内壁面に沿って位置し該内壁面のほぼ全域を覆う下側内シールド部71と、下側内シールド部71の後端縁からクランク状に屈曲して延びる複数の脚部72と、下側内シールド部71の前端縁から屈曲して延びる複数の取付片73および案内部74とを有している。
【0055】
下側シールド板70は、既述した上側内シールド板60を上下反転させたような形状をなしている。つまり、下側内シールド部71には、上下方向に弾性変位可能な弾性片としての下側長シールド接触片75および下側短シールド接触片76(以下、必要に応じて「下側シールド接触片75,76」と総称する)が端子配列方向に交互に位置して配列形成されている。下側シールド接触片75,76自体も上側内シールド板60の上側シールド接触片61,62を上下反転させた形状をなしている。つまり、下側長シールド接触片75には下側前方シールド接触部75A(
図5(A)参照)が形成され、下側短シールド接触片76には下側後方シールド接触部76A(
図5(A)参照)が形成されている。以下、必要に応じて下側前方シールド接触部75Aおよび下側後方シールド接触部76Aを「下側シールド接触部75A,76A」と総称する。下側シールド接触片75,76は、下側シールド接触部75A,76Aで、相手側コネクタ2に設けられた下側シールド板110と弾性接触が可能となっている。
【0056】
脚部72は、
図2に見られるように、端子配列方向でハウジング10の下側貫通孔(図示せず)に対応する複数箇所(本実施形態では六箇所)に設けられている。脚部72は、端子配列方向に見たときに下側シールド板70の後端部をクランク状に屈曲させることにより形成されている。脚部72は、下方へ延びてから後方へ屈曲されて延びており、後方へ延びる部分が端子保持部12の前部位置で回路基板B1の実装面に沿って位置し該実装面に接地される前方接地部72Aとして形成されている(
図5(A)参照)。
【0057】
取付片73は、
図2に見られるように、端子配列方向でハウジング10の下側取付溝13B−1に対応する複数箇所(本実施形態では六箇所)にて、隣接し合う案内部74の間に設けられており、端子配列方向に見たときに下側内シールド部71の前端縁からクランク状をなすように屈曲して形成されている。取付片73は、上側内シールド板60の取付片64を上下反転させたような形状をなしており、下方へ延びてから前方へ屈曲されて延びており、前方へ延びる部分で下側取付溝13B−1に前方から圧入されて保持される。
【0058】
案内部74は、既述した上側内シールド板60の案内部65を上下反転させた形状をなしており、
図5(A)に見られるように、下壁13Bの前端側に位置し、コネクタ嵌合の際、該案内部74の上面で相手側コネクタ2を受入凹部15内へ案内するようになっている。
【0059】
以上の構成のコネクタ1は次の要領で組み立てられる。まず、下側端子30をハウジング10の端子保持溝16へ後方から挿入し、該下側端子30の接触片31Aの基部31A−1を端子保持溝16の下溝部16Bへ圧入して、下側端子30をハウジング10に取り付ける。次に、上側端子20をハウジング10の端子保持溝16へ後方から挿入し、該上側端子20の接触片21Aの基部21A−1を端子保持溝16の上溝部16Aへ圧入して、上側端子20をハウジング10に取り付ける。このようにして端子20,30がハウジング10に取り付けられた状態にて、上側端子20の接触片21Aおよび下側端子30の接触片31Aは、それぞれ対応する端子配列部14の端子溝14A内に配置される。端子20,30の圧入の際、縦部24B,34Bの後端面が押圧される。本実施形態では、縦部24B,34Bの後端面は板厚面であるので、押圧力を受けても端子20,30が変形しにくく、該端子20,30をハウジング10へ容易に取り付けることができる。
【0060】
次に、上側外シールド板50の被保持片52Aをハウジング10の端子保持部12の保持孔(図示せず)へ後方から圧入して、上側外シールド板50を端子保持部12に取り付ける。上側外シールド板50が取り付けられた状態にて、上側外シールド板50の外接続部51Aと端子保持部12の上面との間には隙間が形成される。
【0061】
次に、上側内シールド板60の取付片64をハウジング10の上側取付溝13A−1へ前方から圧入して、上側内シールド板60をハウジング10の嵌合部11に取り付ける。上側内シールド板60が嵌合部11に取り付けられると、上側内シールド板60の内接続部63は、ハウジング10の上側貫通孔(図示せず)を前方から貫通するとともに、外接続部51Aと端子保持部12の上面との間の隙間へ進入し、該外接続部51Aの下面と接触して電気的に導通可能な状態となる。また、上側内シールド板60のうち受入凹部15内に位置する部分は、該受入凹部15の上側の内壁面に沿って位置し該内壁面を覆う。
【0062】
続いて、下側シールド板70を受入凹部15の前方で下側貫通孔(図示せず)と同じ高さに位置させてから、該下側シールド板70を後方へ向けて、脚部72が下側貫通孔内にもたらされるまで移動させる。次に、下側シールド板70を下方へ移動させた後、後方へ向けて移動させ、取付片73を下側取付溝13B−1へ前方から圧入して、下側シールド板70をハウジング10の嵌合部11に取り付ける。下側シールド板70が嵌合部11に取り付けられると、下側シールド板70の下側内シールド部71は、該受入凹部15の下側の内壁面に沿って位置し該内壁面を覆う。
【0063】
このように、上側端子20、下側端子30、上側外シールド板50、上側内シールド板60および下側シールド板70をハウジング10に取り付けることにより、コネクタ1が完成する。本実施形態では、上側外シールド板50、上側内シールド板60、下側シールド板70をこの順でハウジング10に取り付けることとしたが、取付けの順序はこれに限られず、いずれが先に取り付けられてもよく、また、同時に取り付けられてもよい。
【0064】
次に、相手側コネクタ2の構成について説明する。相手側コネクタ2は、Y2方向をコネクタ嵌合方向前方としてコネクタ1に嵌合接続される。以下、相手側コネクタ2については、コネクタ嵌合方向(Y軸方向)において、Y2方向を「前方」とし、Y1方向を「後方」とする。相手側コネクタ2は、
図1(B)に見られるように、電気絶縁材製で略直方体外形に作られた相手側ハウジング80と、相手側ハウジング80に配列保持される複数の金属製の相手側端子90と、相手側ハウジング80に取り付けられる金属製の上側シールド板100および下側シールド板110とを有している(
図4および
図5(A),(B)をも参照)。以下、必要に応じて、上側シールド板100および下側シールド板110を「シールド板100,110」と総称する。
【0065】
相手側ハウジング80は、
図1に見られるように、上下方向で対向して端子配列方向(X軸方向)に延びる一対の相手側側壁としての上壁81および下壁82と、端子配列方向での相手側ハウジング80の両端位置で上下方向に延び上壁81の端部と下壁82の端部とを連結する一対の相手側端壁としての端壁83とを有している。上壁81、下壁82および一対の端壁83によって、コネクタ嵌合状態にてコネクタ1の受入凹部15内に嵌入する相手側嵌合周壁が形成されている。
【0066】
また、相手側ハウジング80は、上下方向での中央位置にて端子配列方向に延び端壁83の内壁面同士を連結する一つの隔壁84を有している。上壁81、下壁82および二つ端壁83で形成される周壁によって囲まれた空間は、上記一つの隔壁84によって上下方向で二つの小空間に仕切られている。それぞれの小空間はコネクタ1の端子配列部14を受け入れるための受入空間85をなしている。
【0067】
受入空間85内には、複数の相手側端子90が端子配列方向に配列された状態で収容されている。受入空間85は、
図5(A)に見られるように、コネクタ嵌合方向で貫通しており、後述するように、後方(Y1方向)から相手側端子90を圧入することが可能となっている。各受入空間85を形成する上側の内壁面および下側の内壁面、すなわち、上側の受入空間85については上壁81の下面および隔壁84の上面、下側の受入空間85については隔壁84の下面および下壁82の上面には、
図5(A)に見られるように、相手側端子90の後述する相手側接触片91Aを収容する端子溝85Aが前後方向(Y軸方向)に延びて形成されている。
【0068】
上壁81には、
図4に見られるように、端子配列方向での複数箇所(本実施形態では五箇所)にて、該上壁81の前端部(Y2側の端部)の上面から没した上側取付溝81Aが形成されている。上側取付溝81Aは、上方(Z1方向)および前方(Y2方向)へ開放されており、後述するように前方から圧入された上側シールド板100の取付片102を保持するようになっている。また、上壁81の前端部の上面には、端子配列方向で隣接し合う上側取付溝81Aの間に、前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する上側傾斜面81Bが形成されている。また、上壁81の後端部(Y1側の端部)には、端子配列方向での複数箇所(本実施形態では五箇所)にて、上側シールド板100を固定するための固定部81Cが上記後端部の上面から突出して形成されている。固定部81Cには、コネクタ嵌合方向に貫通する固定孔81C−1が形成されており、上側シールド板100の後述の被固定部104が前方から挿入されて該被固定部104を保持するようになっている。
【0069】
相手側ハウジング80の下壁82は、既述した上壁81を上下反転させたような形状をなしている。下壁82の形状は、上下反転している点を除いて上壁81と同じであるので、上壁81での符号に「1」を加えた符号を付して(例えば、上壁81の「上側取付溝81A」に対応する下壁82の「下側取付溝」には符号「82A」を付す)、ここでは説明を省略する。
【0070】
相手側ハウジング80で保持される複数の相手側端子90は全て同形状で形成されている。相手側端子90は、金属板部材を板厚方向に屈曲して形成されており、
図4に見られるように、前後方向に延び端子20,30に接触可能な相手側接触部91と、相手側接触部91の後述する一対の相手側接触片91Aを連結する相手側連結部92と、相手側連結部92から後方へ延び回路基板B2(
図1参照)に接続可能な相手側接続部93とを有している。
【0071】
相手側接触部91は、コネクタ1の端子20,30と接触するための一対の相手側接触片91Aを有している。それぞれの相手側接触片91Aは、前後方向にて同一の長さをもって直状に延びる帯状片をなしている。また、それぞれの相手側接触片91Aは、上下方向(Z軸方向)で板面(板厚面に対して直角な面)同士が対面している。それぞれの相手側接触片91Aは、該相手側接触片91Aの後端部をなす基部91Bと、基部91Bから前方へ向けて延びる被保持板部91Cと、被保持板部91Cから前方へ向けて延びる弾性腕部91Dとを有している。
【0072】
被保持板部91Cは、上下方向に対して直角な板面をもち、前後方向に延びる両側の側縁部のそれぞれには圧入突起が形成されており、該圧入突起が端子溝85Aの内壁面に喰い込むことにより、相手側端子90が端子溝85A内で圧入保持されるようになっている。
【0073】
一対の弾性腕部91Dは、前方へ向かうにつれて互いに近づくように傾斜して延びているとともに、その前端部で互いに離れる方向へ傾斜するように屈曲されている。前端部における屈曲部分、すなわち互いに近づくように突出した部分は、端子20,30の接触片21A,31Aと接触可能な接触突部91D−1(
図5(A)参照)をなしている。
【0074】
相手側連結部92は、端子配列方向に対して直角な板面を有し、相手側接触片91Aの基部91Bの一方の側端縁(
図4ではX軸方向でのX2側の側端縁)を連結している。相手側接続部93は、端子配列方向に対して直角な板面を有し、相手側連結部92の後端縁から後方へ向けて延びている。相手側接続部93は、相手側コネクタ2が回路基板B2の実装面に配置された状態において、相手側接続部93の後端面(前後方向に対して直角な板厚面)が上記実装面に接面するように位置しており(
図5(A)参照)、該実装面の対応回路部と半田接続可能となっている。
【0075】
本実施形態では、相手側接続部93は、相手側連結部92の後端縁の上下方向中央域から後方へ延出している。したがって、一つの相手側端子90において、上方の弾性腕部91Dから相手側接続部93までを通る信号伝送経路の長さと、下方の弾性腕部91Dから相手側接続部93までを通る信号伝送経路の長さとが、ほぼ等しくなっている。
【0076】
上側シールド板100および下側シールド板110は、
図4および
図5(A),(B)にみられるように、互いに全く同じ形状をなしている。ここでは、上側シールド板100の構成を中心に説明し、下側シールド板110については、上側シールド板100での符号に「10」を加えた符号を付して(例えば、上側シールド板100の後述の「シールド板本体部101」に対応する下側シールド板110の「シールド板本体部」には符号「111」を付す)、説明を省略する。
【0077】
上側シールド板100は、金属板部材の一部を屈曲して形成されており、相手側ハウジング80の上壁81の上面に取り付けられる。該上側シールド板100は、上壁81の上面に対面するシールド面をもつシールド板本体部101と、シールド板本体部101の前縁部(Y2側の縁部)に設けられた取付片102および被案内部103と、シールド板本体部101の後縁部(Y1側の縁部)に設けられた被固定部104およびシールド板接地部105とを有している。
【0078】
シールド板本体部101は、
図1(B)に見られるように、端子配列方向にて端子配列範囲全域にわたって延びる平板状をなしている。取付片102は、端子配列方向で相手側ハウジング80の上側取付溝81Aに対応する複数箇所(本実施形態では六箇所)に設けられており、端子配列方向に見たときにシールド板本体部101の前端縁からクランク状をなすように屈曲して形成されている。取付片102は、下方へ延びてから前方へ屈曲されて延びており、前方へ延びる部分で上側取付溝81Aに前方から圧入されて保持される。
【0079】
被案内部103は、
図1(B)および
図4に見られるように、端子配列方向での隣接し合う取付片102の間に設けられており、シールド板本体部101の前端縁から、前方(Y2方向)へ向かうにつれて下方へ傾斜するように屈曲させることにより形成されている。被案内部103は、上壁81の上側傾斜面81Bに沿って延びている。被案内部103は、コネクタ嵌合の際、被案内部103の上面でコネクタ1の案内部65によってコネクタ1の受入凹部15内へ案内されるようになっている。
【0080】
被固定部104は、端子配列方向での複数箇所(本実施形態では五箇所)にて相手側ハウジング80の固定部81Cに対応して設けられており、シールド板本体部101の後端縁から後方(Y1方向)へ向けて直状に延びている。上側シールド板100が相手側ハウジング80に取り付けられた状態にて、被固定部104は固定部81Cの固定孔81C−1へ前方から圧入され固定孔81C−1で保持されている。
【0081】
シールド板接地部105は、端子配列方向での複数箇所(本実施形態では六箇所)、具体的には取付片102と同位置に設けられており、シールド板本体部101の後端縁で屈曲されて上方へ向けて延びている。シールド板接地部105は、相手側コネクタ2が回路基板B2の実装面に配置された状態において、該シールド板接地部105の後面(コネクタ嵌合方向に対して直角な板面)が上記実装面に接面するように位置しており(
図5(A)参照)、該実装面の対応回路部と半田接続されることより接地可能となっている。
【0082】
下側シールド板110は、既述したように上側シールド板100と全く同じ形状をなしており、上側シールド板100に対して上下反転させた姿勢で、相手側ハウジング80の下壁82の底面を覆うように取り付けられている。本実施形態では、シールド板100,110は、相手側ハウジング80の上面および底面の両方の面に取り付けられているので、広い範囲でシールドすることが可能となり、より高いシールド効果が得られる。
【0083】
以上の構成の相手側コネクタ2は次の要領で組み立てられる。まず、相手側端子90を相手側ハウジング80の端子溝85Aへ後方から圧入して収容することにより、相手側端子90を相手側ハウジング80に取り付ける。このとき、相手側端子90は被保持板部91Cで端子溝85Aの内壁面によって保持される。相手側端子90の圧入の際、相手側接続部93の後端面が押圧される。本実施形態では、相手側接続部93の後端面が板厚面であるので、押圧力を受けても相手側端子90が変形しにくく、該相手側端子90を相手側ハウジング80へ容易に取り付けることができる。
【0084】
次に、上側シールド板100の取付片102を相手側ハウジング80の上側取付溝81Aに前方(Y2側)からから圧入するとともに、被固定部104を固定部81Cの固定孔81C−1へ前方(Y2側)から圧入する。次に、上側シールド板100について既述したのと同じ要領で、下側シールド板110を相手側ハウジング80の底面側に取り付ける。このようにして、上側シールド板100が相手側ハウジング80の上面側に、また、下側シールド板110が相手側ハウジング80の下面側に、それぞれ取り付けられる。
【0085】
このように、相手側端子90、上側シールド板100、下側シールド板110を相手側ハウジング80に取り付けることにより、相手側コネクタ2が完成する。本実施形態では、相手側端子90、上側シールド板100、下側シールド板110をこの順で相手側ハウジング80に取り付けることとしたが、取付けの順序はこれに限られず、いずれが先に取り付けられてもよく、また、同時に取り付けられてもよい。
【0086】
次に、
図5(A),(B)に基づいてコネクタ同士の嵌合動作を説明する。まず、コネクタ1を回路基板B1の実装面に半田接続して実装するとともに、相手側コネクタ2を回路基板B2の実装面に半田接続して実装する。次に、
図5(A)に見られるように、コネクタ1および相手側コネクタ2を前部同士が対向するように位置させる。そして、相手側コネクタ2をコネクタ1へ向けて、すなわち相手側コネクタ2におけるコネクタ嵌合方向前方(Y2方向)へ向けて相手側コネクタ2を移動させ(
図5(A)の矢印参照)、相手側コネクタ2をコネクタ1の受入凹部15へ嵌入する。このとき、相手側コネクタ2の被案内部103,113がコネクタ1の案内部65,74によって案内されることにより、相手側コネクタ2はコネクタ1の受入凹部15内へ確実にもたらされる。
【0087】
また、相手側コネクタ2がコネクタ1の受入凹部15へ嵌入するのと同時に、コネクタ1の端子配列部14と該端子配列部14に配列された端子20,30の接触片21A,31Aが、相手側コネクタ2の受入空間85内へ挿入される。このとき、端子20,30の接触片21A,31Aが、対応する相手側端子90の一対の弾性腕部91Dを弾性変位させながら押し広げるようにして弾性腕部91D同士間へ進入する。
【0088】
本実施形態では、コネクタ1のハウジング10が端子配列部14を有しており、端子20,30の一対の接触片21A,31Aがそれぞれ端子配列部14の板面に配置されている。したがって、コネクタ嵌合過程にて、接触片21A,31Aが不用意な外力を受けても、接触片21A,31Aは端子配列部14に支持されることで過剰に変形しにくくなっているので、端子20,30の破損が良好に防止される。このように、本実施形態では端子20,30の破損が防止されているので、端子20,30の接触片21A,31Aを端子配列方向で小さくすることにより、端子配列方向でのコネクタ1の小型化を図ることができる。
【0089】
また、コネクタ嵌合過程にて、上側シールド板100のシールド板本体部101の上面によって上側シールド接触部61A,62Aが上方へ押圧され上側シールド接触片61,62が上方へ弾性変位する。また、下側シールド板110のシールド板本体部111の下面によって下側シールド接触部75A,76Aが下方へ押圧され下側シールド接触片75,76が下方へ弾性変位する。この上側シールド接触片61,62および下側シールド接触片75,76の弾性変位により、さらなる相手側コネクタ2の嵌入が許容され、相手側コネクタ2が正規の嵌合位置まで嵌入されることにより、コネクタ嵌合動作が完了する。
【0090】
コネクタ嵌合動作が完了した状態(コネクタ嵌合状態)では、
図5(B)に見られるように、相手側端子90の弾性腕部91Dが弾性変位した状態が維持されており、一対の弾性腕部91Dの接触突部91D−1がそれぞれ対応する端子20,30の接触片21A,31Aの接触面(板面)に接触する。この結果、接触片21A,31Aと弾性腕部91Dとが接圧をもって接触し、電気的に導通可能な状態となる。このとき、端子20,30と相手側端子90とは二点で接触することとなり、接触信頼性の向上が図られる。
【0091】
また、コネクタ嵌合状態においては、上側シールド接触片61,62および下側シールド接触片75,76の弾性変位した状態が維持され、上側シールド接触片61,62が上側シールド板100のシールド板本体部101の上面にそして下側シールド接触部75A,76Aが下側シールド板110のシールド板本体部111の下面に接圧をもって接触し、電気的に導通可能な状態となる。
【0092】
本実施形態では、端子20,30の接触片21A,31Aはハウジング10の端子配列部14の板面に形成された端子溝14A内に配置されていて、
図5(A)に見られるように、接触片21A,31Aの板面が端子溝14Aの内壁面(上下方向に対して直角な面)によって支持されている。したがって、コネクタ嵌合過程にて相手側端子90の接触突部91D−1との接触により、接触片21A,31Aの板面が上下方向(板厚方向)で押圧力を受けても、端子溝14Aの上記内壁面で上記押圧力に対抗できる。この結果、接触片21A,31Aが上下方向(板厚方向)で過剰に変形して破損することが防止される。
【0093】
本実施形態では、コネクタ嵌合前の状態でコネクタ1の端子20,30の接触片21A,31Aがハウジング10の端子配列部14の端子溝14Aの内壁面で支持されていることとしたが、これに替えて、コネクタ嵌合前の状態で接触片21A,31Aが端子溝14Aの内壁面との間に若干の隙間をもった状態で該端子溝14A内に配置されていてもよい。この場合、接触片21A,31Aは、外力を受けたとき、上記隙間の範囲内で弾性変形して、端子溝14Aの内壁面に当接する。この結果、接触片21A,31Aは弾性変形後に端子溝14Aの内壁面に支持されて、それ以上の弾性変形が阻止されるので、過剰な変形による破損が防止される
【0094】
また、本実施形態では、
図5(A),(B)に見られるように、端子配列部14の前端(Y1側に位置する先端)が接触片21A,31Aの前端よりも前方に位置している。したがって、コネクタ嵌合開始直前にて相手側コネクタ2がコネクタ1に対して上下方向で若干ずれていたとしても、相手側端子90の前端(Y2側に位置する先端)は、端子配列部14の前端に当接することとなり、接触片21A,31Aの前端に当接することがない。この結果、接触片21A,31Aの座屈による変形も防止される。
【0095】
本実施形態では、前後方向をコネクタ嵌合方向として、すなわち相手側コネクタ2をY軸方向で直線的に移動させてコネクタ1に嵌合させる動作を説明した。嵌合動作はこれに限られず、例えば、相手側コネクタ2が上下方向に延びる軸線のまわりでの回転を伴うように移動してコネクタ1に嵌合するようになっていてもよい。このとき、相手側コネクタ2の端子配列方向の一端側の位置で上下方向に延びる直線(仮想線)を上記軸線とすることができる。この場合、相手側コネクタ2は、端子配列方向での上記一端側から徐々にコネクタ1に対する嵌合を深めていくことになり、コネクタ嵌合過程にて、コネクタ1の端子20,30の接触片21A,31Aには、前後方向の成分のみならず端子配列方向の成分の成分をも含む外力(例えば、相手側端子90の相手側接触片91Aとの摩擦力)が作用することになる。本実施形態では、端子20,30の接触片21A,31Aはハウジング10の端子配列部14の板面に形成された端子溝14A内に配置されていて、端子配列方向での接触片21A,31Aの移動が端子溝14Aの内壁面(端子配列方向に対して直角な面)によって規制されている。したがって、相手側コネクタ2を上述したような回転を伴う移動のもとでコネクタ1に嵌合する場合に、接触片21A,31Aが端子配列方向の成分の外力を受けても不用意に変形しにくく、端子20,30の破損が良好に防止される。
【0096】
<第二実施形態>
第一実施形態では、相手側コネクタ2の相手側ハウジング80の両方の端壁83は、
図1および
図4に見られるように、端子配列方向での寸法(厚さ寸法)が等しくなっているとともに、前端が同位置に位置している。これに対して本実施形態では、一方の端壁が他方の端壁よりも端子配列方向で大きくなっているとともに前方へ突出しており、この点で、第一実施形態の相手側コネクタと構成が異なっている。また、本実施形態では、コネクタのハウジングの受入凹部は、端子配列方向での一端側で、相手側コネクタの一方の端壁を受け入れるために大きく形成されており、この点で、第一実施形態のコネクタと異なっている。
【0097】
本実施形態では、コネクタのハウジングと相手側コネクタのハウジングの形状が第一実施形態と相違しているので、相違点を中心に説明し、第一実施形態と同じ部分については、第一実施形態での符号に「200」を加えた符号を付けて説明は省略する。
【0098】
図6(A)は第二実施形態に係る相手側コネクタ202を示す斜視図であり、
図6(B)は
図6(A)のコネクタ201に嵌合される相手側コネクタ202を示す斜視図である。本実施形態では、
図6(A)に見られるように、ハウジング210の端子配列方向での一端側(X2側)に位置する端壁213Cが、第一実施形態のハウジング10の一端側(X2側)の端壁13C(
図1参照)と比べて、端子配列方向で端子配列部214から離れて位置している。したがって、本実施形態では、コネクタ201のハウジング210の受入凹部215は、端子配列方向での一端側(X2側)の空間が他端側(X1側)の空間よりも大きくなっている。受入凹部215の一端側の空間は、後述する相手側コネクタ202の一方の端壁283に対応しており、該一方の端壁283を受け入れるようになっている。
【0099】
一方、相手側コネクタ202の相手側ハウジング280は、
図6(B)に見られるように、端子配列方向で一端側(X2側)に位置する一方の端壁283が、他端側(X1側)に位置する他方の端壁283と比べて、端子配列方向で大きくなっているともに、前方(Y2方向)へ向けて突出している。具体的には、一方の端壁283において他方の端壁283よりも突出している前端部は、上下方向で一方の端壁283の全域にわたって延びる突壁部283Aとして形成されている。
【0100】
本実施形態においても、第一実施形態と同様に、コネクタ嵌合過程にて相手側コネクタ202が上下方向に延びる軸線のまわりでの回転を伴って移動するように、相手側コネクタ202をコネクタ1に嵌合させることができる。このとき、本実施形態では、相手側コネクタ202の上記一方の端壁283側で上下方向に延びる軸線(仮想線)を上記軸線として、相手側コネクタ202を回転させるように移動させてコネクタ201に嵌合される。
【0101】
このようにコネクタ同士を嵌合させる場合、まず、コネクタ嵌合開始時において、相手側コネクタ202の一方の端壁283の突壁部283Aをコネクタ201の一方の端壁213Cの前端側(
図6(A)でのY1側)の内壁面に当接させる。そして、この突壁部283Aと一方の端壁213Cの内壁面との当接位置を支点としながら、この当接位置を通る上記軸線まわりに相手側コネクタ202を回転させて、嵌合動作を進行させる。相手側コネクタ202は、嵌合動作の進行とともに、端子配列方向での一端側から徐々にコネクタ201に対する嵌合を深めていく。本実施形態においても、第一実施形態と同様に、上側端子220の接触片221Aおよび下側端子230の接触片231Aはハウジング10の端子配列部214の板面に形成された端子溝214A内に配置されていて、コネクタ嵌合過程にて接触片221A,231Aが変形しにくくなっているので、端子220,230の過剰な変形ひいては破損が良好に防止される。コネクタ嵌合動作が完了した状態において、相手側コネクタ202の一方の端壁283は、コネクタ201の受入凹部215にて大きく形成された一端側の空間へ収容される。
【0102】
本実施形態では、既述したように、相手側コネクタ202の一方の端壁283が他方の端壁283よりも端子配列方向で大きくなっている。したがって、上記一方の端壁283自体の強度が大きくなっているので、コネクタ嵌合過程において、突壁部283Aと一方の端壁213Cの内壁面との間に生じる当接力に十分に対抗できる。また、本実施形態では、相手側コネクタ202における一方の端壁283が他方の端壁283よりも前方(
図6(B)でのY2方向)へ突出している。したがって、コネクタ嵌合過程において、相手側コネクタ202の一方の端壁283とコネクタ1の一方の端壁213Cとの当接可能な部分の面積が大きくなり、当接状態を維持しやすくなるので、コネクタ嵌合動作が容易となる。
【0103】
既述のコネクタ嵌合動作では、コネクタ嵌合過程において、相手側コネクタ202の一方の端壁283の突壁部283Aとコネクタ201の一方の端壁213Cの内壁面との当接位置を支点となることとしたが、この当接位置が支点となることは必須ではなく、例えば、コネクタ201が実装された回路基板B1と相手側コネクタ202が実装された回路基板B2との当接位置を支点としてもよい。
【0104】
具体的には、まず、コネクタ嵌合開始時、回路基板B1の端子配列方向での一端部と回路基板B2の端子配列方向での一端部とを当接させる。次に、この回路基板B1,B2の一端部同士の当接位置を支点として、この当接位置を通る軸線(上下方向に延びる仮想線)のまわりに相手側コネクタ202を回転させて、嵌合動作を進行させる。このとき、コネクタ嵌合過程において、相手側コネクタ202の一方の端壁283の突壁部283Aがコネクタ201の一方の端壁213Cの前端側の内壁面に当接し、突壁部283Aと一方の端壁213Cとの当接状態が維持されたままコネクタ嵌合が進行する。このような動作でコネクタ同士を嵌合する際にも、コネクタの一方の端壁同士の当接力に十分に対抗しつつ、容易にコネクタ嵌合動作が行われる。
【0105】
本実施形態では、既述したように、相手側コネクタ202の一方の端壁283を厚くするとともに前方へ突出させることとしたが、これに替えて、コネクタの一方の端壁を他方の端壁よりも厚くするとともに前方へ突出させることとしてもよい。このような形態としても、コネクタ嵌合過程において、コネクタの一方の端壁同士の当接力に十分に対抗しつつ、容易にコネクタ嵌合動作を行うことができるという効果を得られる。
【0106】
本実施形態では、相手側コネクタ202を回転させながら移動させてコネクタ嵌合を行う嵌合動作を説明したが、嵌合動作はこれに限られず、コネクタ201に対して相手側コネクタ202を、前後方向をコネクタ嵌合方向として、すなわち相手側コネクタ2をY軸方向で直線的に移動させて嵌合させることとしてもよい。
【0107】
第一および第二実施形態では、コネクタが回路基板の実装面に実装される方向(上下方向)と相手側コネクタが嵌合される方向(前後方向)とが直角をなす、いわゆるライトアングル形式のコネクタに本発明が適用される例について説明したが、本発明が適用可能なコネクタの形式はこれに限定されない。例えば、回路基板の実装面に対して直角な方向で相手側コネクタが嵌合接続されるコネクタ、換言すると、回路基板の実装面に実装される方向と相手側コネクタが嵌合される方向が一致する形式のコネクタに、本発明を適用することもできる。この形式においては、実装面に平行、かつ、端子配列方向に直角な方向がコネクタ幅方向となる。