【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のように、印刷法により段差吸収層を形成した場合、スクリーン(マスク)の位置ずれによって、段差吸収層が内部電極パターン上にも形成され得る。段差吸収層の印刷パターンがずれたグリーンシートを積層した場合、内部電極が積層方向に起伏し、ショート等の不具合を生じることがある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、内部電極の積層方向の起伏を抑制することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、セラミックシート上に、誘電体膜と上記誘電体膜上に配置された基材膜とを有するマスクを配置するステップを含む。
上記マスクが配置された上記セラミックシート上に上記内部電極が成膜される。
上記内部電極の成膜後に、上記マスクの上記基材膜が除去される。
上記基材膜の除去後に、上記誘電体膜と上記内部電極とが形成された上記セラミックシートが積層される。
【0008】
この構成では、誘電体膜と基材膜とを有するマスクをセラミックシート上に配置した状態で、内部電極を成膜する。マスクに誘電体膜が形成されているので、セラミックシート上に、誘電体膜のパターンがずれることなく配置される。さらに、基材膜上に内部電極と同一の組成の金属膜が成膜されても、基材膜が除去されることで、内部電極のパターンのずれも生じない。したがって、内部電極又は誘電体膜の位置ずれに起因した内部電極の起伏が発生せず、当該起伏に起因するショートの発生も抑制される。
【0009】
上記内部電極は、スパッタリング法により成膜されてもよい。
これにより、薄くて密着性の高い内部電極を形成することができる。
【0010】
上記積層セラミック電子部品の製造方法は、さらに、
上記セラミックシートが積層された積層シートを切断してセラミック素体を作製するステップと、
上記セラミック素体を焼成するステップと、を含んでもよい。
【0011】
上記基材膜は、ポリエチレンテレフタレートを主成分として含んでいてもよい。
これにより、基材膜を誘電体膜から剥離することによって、基材膜を容易に除去することができる。
【0012】
本発明の他の形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、複数の外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層と交互に積層された複数の内部電極と、を有する。
上記複数の外部電極は、上記セラミック素体の表面に配置され、上記複数の内部電極と接続される。
上記複数の内部電極は、スパッタ膜で構成され、誘電体材料を含まない。
これにより、膜厚の精度が高く、密着性の高い複数の内部電極を備えた積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0013】
例えば、上記複数の内部電極各々は、0.05μm以上5μm以下の厚みを有していてもよい。
これにより、小型で、かつ内部電極の積層数の多い高機能の積層セラミック電子部品を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、内部電極の積層方向の起伏を抑制することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
[積層セラミックコンデンサ10の基本構成]
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA−A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB−B'線に沿った断面図である。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15とを具備する。
【0019】
セラミック素体11は、略直方体形状を有する。つまり、セラミック素体11は、X軸方向を向いた第1端面11a及び第2端面11bと、Y軸方向を向いた第1側面11c及び第2側面11dと、Z軸方向を向いた第1主面11e及び第2主面11fと、を含む。端面11a,11bは、Y軸方向及びZ軸方向に沿って延びる。側面11c,11dは、Z軸方向及びX軸方向に沿って延びる。主面11e,11fは、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる。
【0020】
セラミック素体11の端面11a,11b、側面11c,11d、及び主面11e,11fはいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。例えば、セラミック素体11の各面を接続する稜部は、面取りされていてもよい。
【0021】
外部電極14,15は、X軸方向に相互に対向し、セラミック素体11の両端面11a,11bを覆うように構成される。外部電極14,15は、例えば、両端面11a,11bに接続する4つの面(2つの主面11e,11f及び2つの側面11c,11d)に延出している。
【0022】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0023】
セラミック素体11は、容量形成部16と、サイドマージン部17と、第1エンドマージン部18aと、第2エンドマージン部18bと、カバー部19と、を有する。
【0024】
容量形成部16は、複数のセラミック層20を挟んでZ軸方向に交互に積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケルが挙げられ、この他にも銅、パラジウム、白金、銀、金などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0025】
内部電極12,13は、それぞれ、X−Y平面に沿って延びるシート状に構成される。第1内部電極12は、第1端面11aに引き出された引出部12aを含み、引出部12aによって第1外部電極14に接続される。第2内部電極13は、第2端面11bに引き出された引出部13aを含み、引出部13aによって第2外部電極15に接続される。これにより、第1外部電極14及び第2外部電極15の間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間のセラミック層20に電圧が加わり、容量形成部16に当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0026】
内部電極12,13は、後述するように、スパッタ膜で構成される。この場合、内部電極12,13は、誘電体材料(セラミック材料)を含まない。例えば、内部電極12,13各々の厚みは、0.5μm以上5μm以下となり得る。なお、内部電極12,13各々の厚みは、異なる6層の内部電極12,13において5箇所ずつ測定された合計30箇所の厚みの平均値とすることができる。
【0027】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層20の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0028】
なお、セラミック層20は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO
3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O
3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO
3)系、酸化チタン(TiO
2)系などで構成してもよい。
【0029】
エンドマージン部18a,18bは、容量形成部16と外部電極14,15の間にそれぞれ設けられる。具体的に、第1エンドマージン部18aは、第1端面11aと第2内部電極13との間に設けられる。第2エンドマージン部18bは、第2端面11bと第1内部電極12との間に設けられる。エンドマージン部18a,18bは、絶縁性セラミックスで形成され、第1内部電極12と第2外部電極15との絶縁性を確保し、かつ、第2内部電極13と第1外部電極14との絶縁性を確保する。
【0030】
第1エンドマージン部18aは、第1内部電極12の引出部12aとZ軸方向に交互に積層される。第2エンドマージン部18bは、第2内部電極13の引出部13aとZ軸方向に交互に積層される。
【0031】
カバー部19は、容量形成部16のZ軸方向両側にそれぞれ設けられる。カバー部19は、絶縁性セラミックスで形成され、容量形成部16のZ軸方向における絶縁性を確保するとともに、容量形成部16を保護する。
【0032】
サイドマージン部17は、容量形成部16をY軸方向から覆う。サイドマージン部17は、絶縁性セラミックスで形成され、容量形成部16のY軸方向における絶縁性を確保するとともに、容量形成部16を保護する。
【0033】
エンドマージン部18a,18b、カバー部19及びサイドマージン部17に用いられる絶縁性セラミックスは、セラミック層20で用いられた誘電体セラミックスを含んでいてもよい。これにより、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0034】
なお、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の基本構成は、
図1〜3に示す構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0035】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図5〜13は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図4に沿って、
図5〜13を適宜参照しながら説明する。
【0036】
(ステップS01:マスクの準備)
ステップS01では、誘電体膜M1と、誘電体膜M1上に配置された基材膜M2とを有するマスクMを準備する。
【0037】
図5に示すように、誘電体膜M1と基材膜M2とが積層された積層膜Mfを作製する。例えばまず、基材膜M2を準備する。基材膜M2は、樹脂を主成分として含んでいてもよく、一例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分として含んでいてもよい。主成分とは、組成比で50%以上を占める成分のことを言うものとする。以下、PETを主成分として含む膜を、PET膜と称する。基材膜M2は、シート状に加工されたPET膜として構成されてもよい。あるいは、基材膜M2は、粘着性の制御が可能な材料で構成されてもよく、一例として、温度によって粘着性の変化する感温性粘着シート、金属箔膜等で形成されてもよい。
【0038】
続いて、基材膜M2上に誘電体膜M1を形成する。誘電体膜M1は、基材膜M2上に、例えば誘電体セラミックスを主成分とするセラミックペーストを塗布することにより形成される。当該セラミックペーストは、例えば、セラミック粉末と、有機バインダと、溶剤と、を含む。誘電体膜M1のZ軸方向における厚みは、後述する焼成工程(ステップS07)後に内部電極12,13の厚みと略同一になるように設定される。焼成工程(ステップS07)では、誘電体膜M1に相当する部分及び内部電極112,113に相当する部分が、焼結によってそれぞれ異なる割合で収縮する。このため、誘電体膜M1の厚みは、これらの収縮率を確認しフィードバックすることで調整されれば良い。なお、
図5では、誘電体膜M1をZ軸方向下側に配置しているが、実際には、基材膜M2がZ軸方向下側に配置され、基材膜M2の上面に誘電体膜M1が塗布される。
【0039】
続いて、
図6に示すように、積層膜Mfを所定のパターンに加工して、マスクMを形成する。積層膜Mfの加工方法としては、例えば、レーザ加工や、金型による打ち抜き加工等が挙げられる。マスクMは、後述するセラミックシート101,102の電極非形成領域Nの全体を覆うパターンに加工される。なお、基材膜M2として金属箔膜が用いられる場合等では、予め所定のパターンに形成された基材膜M2上に誘電体膜M1が形成されてもよい。
【0040】
(ステップS02:マスクの配置)
ステップS02では、セラミックシート101,102上に、マスクMを配置する。
【0041】
図7は、セラミックシート101,102の断面図である。セラミックシート101,102は、支持体としてのキャリアシートC(例えばPET膜)上に、ドクターブレード、ロールコータ等を用いてセラミックペーストを塗布することにより形成される。当該セラミックペーストは、誘電体膜M1と同様に、誘電体セラミックスを主成分とし、例えば、セラミック粉末と、有機バインダと、溶剤と、を含む。
【0042】
図8は、セラミックシート101,102の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102が、個片化されていない大判のシートとして構成される。
図8には、積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Ly1,Ly2が示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線Ly1,Ly2はY軸に平行である。
【0043】
図8及び
図7に示すように、セラミックシート101,102には、それぞれ、内部電極112,113が形成される電極形成領域Rと、内部電極112,113が形成されない電極非形成領域Nと、が規定されている。電極形成領域Rは、1本の切断線Ly1又は切断線Ly2を跨いでX軸方向に延びる略矩形に構成される。
【0044】
図8に示すように、第1セラミックシート101では、切断線Ly1を跨いで延びる電極形成領域RがX軸方向に沿って配置された第1列と、切断線Ly2を跨いで延びる電極形成領域RがX軸方向に沿って配置された第2列とが、Y軸方向に交互に並んでいる。第1列では、X軸方向に隣接する電極形成領域R同士が切断線Ly2を挟んで相互に対向する。第2列では、X軸方向に隣接する電極形成領域R同士が切断線Ly1を挟んで相互に対向する。つまり、Y軸方向に隣接する第1列と第2列では、電極形成領域Rが、1チップ分ずつX軸方向にずれて配置されている。
【0045】
第2セラミックシート102の電極形成領域Rも、第1セラミックシート101の電極形成領域Rと同様に構成される。但し、第2セラミックシート102では、第1セラミックシート101の第1列に対応する列の電極形成領域Rが、切断線Ly2を跨いで延び、第1セラミックシート101の第2列に対応する列の電極形成領域Rが、切断線Ly1を跨いで延びる。つまり、第2セラミックシート102の電極形成領域Rは、第1セラミックシート101の電極形成領域RとはX軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて形成されている。
【0046】
電極非形成領域Nは、セラミックシート101,102における電極形成領域Rの周囲に配置された領域であり、電極形成領域R以外の全ての領域を占める。第1セラミックシート101において、電極非形成領域Nは、X軸方向に隣り合う電極形成領域Rの間の切断線Ly1、Ly2に沿って延びる複数の帯領域と、Y軸方向に隣り合う電極形成領域Rの間の切断線Lxに沿って延びる複数の帯領域とで構成される。電極非形成領域Nは、全体として、これらの帯領域が相互に接続された形状を有する。電極非形成領域Nは、積層セラミックコンデンサ10におけるサイドマージン部17とエンドマージン部18a,18bとに対応する。第2セラミックシート102における電極非形成領域Nも、同様に構成される。
【0047】
本ステップでは、
図9に示すように、セラミックシート101,102の電極非形成領域N上に、マスクMを配置する。マスクMは、セラミックシート101,102の電極形成領域Rを露出させる開口部M3を有し、電極非形成領域N全体を覆う。これにより、後述する成膜工程において、マスクMを介して内部電極112,113が成膜される。
【0048】
マスクMは、誘電体膜M1がセラミックシート101,102と接するように配置される。これにより、セラミックペーストによって形成された誘電体膜M1が、セラミックシート101,102と良好に接着する。したがって、後述する成膜工程において、マスクMがセラミックシート101,102に対してずれること、及びマスクMとセラミックシート101,102の間に隙間が形成されることが抑制される。
【0049】
(ステップS03:内部電極の成膜)
ステップS03では、
図10に示すように、マスクMを配置したセラミックシート101,102上に内部電極112,113を成膜する。なお、第1セラミックシート101には第1内部電極112が成膜され、第2セラミックシート102には第2内部電極113が成膜される。
【0050】
内部電極112,113は、例えば、スパッタリング法又は蒸着法により成膜される。特に、内部電極112,113がスパッタリング法によって成膜されることで、薄く密着性の高い内部電極112,113を得ることができる。蒸着法としては、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)等が挙げられる。内部電極112,113のZ軸方向における厚みは、焼成後の内部電極12,13の厚みに鑑みて適宜設定され、例えばマスクMの誘電体膜M1と所定の厚みに設定される。
【0051】
また、内部電極112,113がスパッタリング法によって成膜されることで、誘電体材料(セラミック材料)を含まない内部電極112,113を形成できるとともに、膜厚を精度よくコントロールすることができる。
【0052】
第1内部電極112は、未焼成の内部電極であって、マスクMの開口部M3から露出された第1セラミックシート101の電極形成領域R上に形成される。第1内部電極112は、焼成後の第1内部電極12に対応する。第2内部電極113は、未焼成の内部電極であって、マスクMの開口部M3から露出された第2セラミックシート102の電極形成領域R上に形成される。第2内部電極113は、焼成後の第2内部電極13に対応する。
【0053】
図10に示すように、本ステップでは、マスクMの基材膜M2上にも、内部電極112,113と同様の組成の金属膜M4が形成される。
【0054】
(ステップS04:基材膜の除去)
ステップS04では、
図11に示すように、マスクMの基材膜M2を除去する。これにより、電極形成領域R上に内部電極112,113が形成され、電極非形成領域N上に誘電体膜M1が形成された、セラミックシート101,102が作製される。
【0055】
基材膜M2の除去方法は、特に限定されない。例えば、基材膜M2がPET膜により構成される場合は、基材膜M2を誘電体膜M1から剥離することができる。あるいは、基材膜M2が粘着性の制御が可能な材料で構成される場合は、基材膜M2の粘着性を低下させてから、基材膜M2を誘電体膜M1から剥離することができる。一例として基材膜M2が感温性粘着シートによって形成される場合には、加熱又は冷却することによって基材膜M2の粘着性を低下させ、基材膜M2を誘電体膜M1から剥離する。本ステップでは、基材膜M2上に形成された金属膜M4も、基材膜M2とともに除去される。
【0056】
本ステップにより、セラミックシート101,102の電極非形成領域N上には、誘電体膜M1のみが配置される。
【0057】
(ステップS05:積層)
ステップS05では、ステップS04により作製されたセラミックシート101,102と、第3セラミックシート103とを、
図12に示すように積層することにより、積層シート104を作製する。第1セラミックシート101には、第1内部電極112及び誘電体膜M1が形成されている。第2セラミックシート102には、第2内部電極113及び誘電体膜M1が形成されている。第3セラミックシート103には、内部電極112,113及び誘電体膜M1のいずれもが形成されていない。
【0058】
積層シート104では、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層された積層体のZ軸方向上下面に、第3セラミックシート103が積層される。セラミックシート101,102の積層体は、例えば、焼成後の容量形成部16、サイドマージン部17及びエンドマージン部18a,18bに対応する。第3セラミックシート103の積層体は、焼成後のカバー部19に対応する。
【0059】
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0060】
セラミックシート101,102の積層数は、焼成後に所望の容量及び高さ寸法が得られるように調整される。第3セラミックシート103の積層数も図示の例に限定されず、適宜調整される。
【0061】
図13は、積層シート104の一部を示す模式的な断面図であり、セラミックシート101,102の積層体の一例を示す。例えば切断線Ly2を横切るように配置された第1セラミックシート101上の誘電体膜M1は、第1エンドマージン部18aに対応する。第1エンドマージン部18aに対応する誘電体膜M1上には、第2内部電極113の引出部13aに対応する領域が配置される。
【0062】
同様に、例えば切断線Ly1を横切るように配置された第2セラミックシート102上の誘電体膜M1は、第2エンドマージン部18bに対応する。第2エンドマージン部18bに対応する誘電体膜M1上には、第1内部電極112の引出部12aに対応する領域が配置される。
【0063】
(ステップS06:切断)
ステップS06では、ステップS05で得られた積層シート104を切断線Lx,Ly1,Ly2に沿って切断することにより、未焼成のセラミック素体11を作製する。切断線Lxによる切断面は、側面11c,11dに対応する。切断線Ly1,Ly2による切断面は、端面11a,11bに対応する。
【0064】
(ステップS07:焼成)
ステップS07では、ステップS06で得られた未焼成のセラミック素体11を焼結させることにより、
図1〜3に示すセラミック素体11を作製する。焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において1000℃〜1200℃の温度で15〜120分間処理することで行うことができる。焼成後、誘電体膜M1と、内部電極12,13とは略同一の厚みになる。
【0065】
(ステップS08:外部電極形成)
ステップS08では、ステップS07で得られたセラミック素体11に外部電極14,15を形成することにより、
図1〜3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。
【0066】
ステップS08では、まず、セラミック素体11の第1端面11aを覆うように未焼成の電極材料を塗布し、セラミック素体11の第2端面11bを覆うように未焼成の電極材料を塗布する。セラミック素体11に塗布された未焼成の電極材料に、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において焼き付け処理を行って、セラミック素体11に下地膜を形成する。そして、セラミック素体11に焼き付けられた下地膜の上に、中間膜及び表面膜を電解メッキなどのメッキ処理で形成して、外部電極14,15が完成する。
【0067】
なお、上記のステップS08における処理の一部を、ステップS07の前に行ってもよい。例えば、ステップS07の前に未焼成のセラミック素体11の端面11a,11bに未焼成の電極材料を塗布し、ステップS07において、未焼成のセラミック素体11を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地膜を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体11に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0068】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、電極非形成領域N上に誘電体膜M1を配置する。仮に誘電体膜M1を配置しない場合、内部電極112,113の厚みに起因して、電極形成領域Rが積層された容量形成部16に対応する部分と、電極非形成領域Nが積層されたサイドマージン部17及びエンドマージン部18a,18bに対応する部分との間に、Z軸方向の寸法の差異が生じる。これにより、セラミック素体11におけるZ軸方向の高さが不均一となる。
【0069】
電極非形成領域N上に誘電体膜M1を配置することで、セラミック素体11におけるZ軸方向の高さを、X−Y平面内において均一化することができ、主面11e,11fを平坦面とすることができる。これにより、流通時及び実装時における積層セラミックコンデンサ10の姿勢を安定化させることができ、取り扱い性を高めることができる。
【0070】
一般には、電極非形成領域N上に誘電体膜を形成する方法として、以下の比較例のような印刷法が挙げられる。
【0071】
図14〜16は、本実施形態の比較例に係る第1セラミックシート301の作製方法を示す模式的な断面図である。第1セラミックシート301は、第1内部電極312が形成されるセラミックシートである。なお、本比較例の第2セラミックシートは、第1内部電極312とX軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて形成された第2内部電極を有し、第1セラミックシート301と同様に作製されるため、説明を省略する。
【0072】
本比較例では、まず
図14Aに示すように、セラミックシート101,102と同様の第1セラミックシート301を準備する。第1セラミックシート301は、例えば、キャリアシートC上に形成されている。第1セラミックシート301には、第1セラミックシート101と同様に、電極形成領域Rと電極非形成領域Nとが規定されている。
【0073】
続いて、
図14Bに示すように、第1セラミックシート301の電極形成領域Rに第1内部電極312を形成する。第1内部電極312は、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法により形成される。
【0074】
続いて、
図15Aに示すように、第1セラミックシート301の電極非形成領域Nに誘電体膜Pが形成される。誘電体膜Pも、例えば、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法により形成される。
【0075】
ここで、
図15Bに示すように、誘電体膜Pが、第1内部電極312に対してずれて印刷されることがある。これにより、誘電体膜Pの一部が第1内部電極312上に重なるように形成され、第1内部電極312の周縁部に、誘電体膜Pからなる凸部P1が形成される。
【0076】
第1セラミックシート301の切断線Ly2を横切る誘電体膜P上には、第2セラミックシートに形成された第2内部電極の引出部に対応する領域が積層される。
図15Bの場合、凸部P1により第2内部電極の引出部に対応する領域が湾曲し、Z軸方向における起伏が形成される。このような印刷ずれが生じたセラミックシートを積層し、圧着することにより、
図16に示す積層セラミックコンデンサ30が作製される。
【0077】
図16に示す積層セラミックコンデンサ30では、第2端面31bに引き出される第2内部電極33の引出部33aが、誘電体膜Pの印刷ずれに起因して、Z軸方向に起伏を有する。積層セラミックコンデンサ30の積層工程では、Z軸方向から積層シートが圧着されるため、起伏を有する領域上に積層されるセラミックシートが、Z軸方向に圧縮され得る。これにより、引出部33aと第1内部電極32のX軸方向端部とが接近し、ショートが発生する可能性もある。なお、図示はしないが、第1端面側でも同様の現象が生じ得る。
【0078】
そこで、本実施形態では、セラミックシート101,102上に、誘電体膜M1と基材膜M2とが積層されたマスクMを配置した状態で、内部電極112,113を成膜する。誘電体膜M1は予めマスクMの一部としてセラミックシート101,102上に配置されているため、誘電体膜M1を印刷法等によって成膜する必要がなく、内部電極112,113に対する誘電体膜M1の位置ずれは生じない。さらに、マスクMの基材膜M2上に成膜された金属膜M4は、基材膜M2とともに除去されるため、成膜工程において内部電極112,113の誘電体膜M1に対する位置ずれも生じない。
【0079】
したがって、本実施形態では、誘電体膜M1又は内部電極112,113の位置ずれに起因した内部電極112,113の起伏が発生せず、当該起伏に起因するショートの発生も抑制される。
【0080】
また、誘電体膜M1がセラミックシート101,102と良好に接着するため、マスクMとセラミックシート101,102との間に隙間が生じない。これにより、内部電極112,113の成膜時に、金属膜が当該隙間に入り込み、電極非形成領域N上に金属膜が形成されることが防止される。さらに、成膜時におけるマスクMとセラミックシート101,102との位置ずれも生じにくく、高い位置精度で内部電極112,113を成膜することができる。
【0081】
さらに、基材膜M2がPET膜等の樹脂膜で構成されることで、剥離することによって基材膜M2及び基材膜M2上に形成された金属膜M4を容易に除去できる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0083】
基材膜M2は、単層ではなく、複数の層を含んでいてもよい。例えば、基材膜M2は、本体と、本体上に配置された剥離層と、を含んでいてもよい。これにより、基材膜M2の誘電体膜M1に対する剥離を円滑に行うことができる。
【0084】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は一対の外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。