【解決手段】異なる温度に温調可能な複数の温調領域を有し、反応液が収容されたディスクと接触状態で、前記反応液を所定温度にする温調部と、前記ディスクが着設可能に構成されたディスクホルダーと、前記ディスクを押圧して前記温調部に接触させるディスク押圧部と、を備え、前記ディスクは、前記ディスクホルダーの回転動作に連動して回転を開始し、該ディスクホルダーの回転動作開始と同時に前記ディスク押圧部を離間させ、該ディスクホルダーの回転動作中は、該ディスク押圧部と該ディスクとの離間状態を維持するように構成されていることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
従来から、核酸(DNA)を増幅する手法として鋳型DNAに必要な試薬を混ぜて、特定のDNAを短時間に大量に増幅するPCR(polymerase chain reaction:DNAポリメラーザ連鎖反応)手法が知られており、この手法を用いたPCR装置も種々開発・製品化されている。近年では、このPCR手法を改良して、増幅したDNAの量を、例えば蛍光分析により、リアルタイムで測定することができるリアルタイムPCR手法及び装置が開発・製品化されている。なお、RNAを鋳型として逆転写によりDNAを合成して増幅する手法として、RT−PCR(reverse transcription PCR:逆転写PCR)もあるが、基本的な原理は上記のPCRと同じであるので、ここでは、PCRを中心に説明する。なお、特に断らない限り、リアルタイムPCR、リアルタイムRT−PCRを含め、リアルタイムPCRと表現することにする。
【0003】
リアルタイムPCR手法については、例えば、特許文献1には、「プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができる核酸増幅装置及びそれを用いた核酸検査装置を提供することを目的」(段落「0007」参照。)として、「検体と試薬を混合した反応液の核酸を増幅させる核酸増幅装置において、反応液を収容した少なくとも1つの反応容器をそれぞれ保持する複数の温調ブロックを設けた保持具と、前記複数の温調ブロックのそれぞれに設けられ、前記反応液の温度を調整する温度調整装置とを備え、前記保持具は、中心軸を上方に向け周方向に回転可能に設けられた円板形状を有し、前記温調ブロックは前記保持具の外側に、その外周に沿って配置されたことを特徴とする核酸増幅装置」(「請求項1」参照。)。が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「遺伝子分析技術は、実用的速度と実用的安定性の面で未だ研究室のレベルにあり、これら実用的速度と実用的安定性を向上させて臨床や生産の現場に適用すること」(段落「0002」参照。)を目的として、「反応液が収容された反応部を有する容器において、この反応液に所定の熱サイクルを与えてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)若しくはLCR(リガーゼ連鎖反応)等の熱サイクル反応を促進するための反応促進装置であって、前記容器の反応部に対向するように配置され、前記容器に収容された反応液を所定熱サイクル時間内に高温側の目標温度、中温の目標温度、及び低温側の目標温度に温調して前記熱サイクルを与える熱サイクルヒータと、前記熱サイクルヒータの温度を、高温側を前記高温側の目標温度より所定の温度差以上に乖離させ、および低温側を前記低温側の目標温度より所定の温度差以下に乖離させるように制御する温度制御部とを有することを特徴とする反応促進装置」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の「核酸増幅装置」は、「保持具3に保持された反応容器105に収容された検体に対応するプロトコルに基づいて、温度調整装置のペルチェ素子114が制御され、周期的に段階的に反応容器105の温度が制御され、核酸増幅処理が施される。このように、核酸増幅方の一種であるPCR方では、検体と試薬を混合した反応液の温度を、各検体に対応するプロトコルに基づいて周期的に段階的に変化させることにより、所望の塩基配列を選択的に増幅させる」(段落「0029」、
図1〜
図4等参照。)と記載されているので、「検体」が収容された「反応容器105」の温度を、「各検体に対応するプロトコルに基づいて周期的に段階的に変化」させなければならないように構成されている。
【0006】
PCR手法は、例えば、特許文献4に記載されているように「PCR法は、鋳型DNA、プライマー、基質、耐熱性ポリメラーゼ酵素等を混合した反応液を温度調節し、所定の3種類の温度に順次変化させ、これを繰り返すことによって目的とするDNAを増幅する方法である。すなわち反応液を、二本鎖DNAを一本鎖DNAに解離させるディナチュレーション反応を行う温度に温調し、続いて一本鎖DNAにプライマーを会合させるアニーリング反応を行う温度に温調し、さらに続いて耐熱性ポリメラーゼ酵素による二本鎖伸長反応を行う温度に温調する。この様に、反応液を三段階の温度に順次温調することにより、DNAの増幅を行うことができる。具体的には、反応液を各設定温度の条件の元に温調する工程を30回程度繰返すことで、多量のDNA複製生産物を得る。なお、ディナチュレーション温度、アニーリング温度、二本鎖伸長の各反応温度はそれぞれ、95℃、50〜55℃、72℃程度である」(段落「0002」〜「0004」参照。)ことは周知であり、リアルタイムのPCR手法でも同様である。「ディナチュレーション」は、「熱変性」、又は、単に「変性」ともいい、「二本鎖伸長」は、単に「伸長」ともいう。
【0007】
上記特許文献1記載の「核酸増幅装置」では、「反応液を収容した反応容器105を保持する複数の温調ブロック10を設けた保持具3を備え、温調ブロック10のそれぞれに設けた温度調整装置によって反応液の温度を調整するよう構成したので、プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができ、処理効率を大きく向上することができる」(段落「0033」参照。)ものの、上記特許文献4に記載のPCR手法に従えば、同一の「反応容器105」の温度を、「95℃、50〜55℃、72℃」のサイクルで周期的に繰り返し昇温・降温(冷却)しなければならないが、同一の「温調ブロック10」により同一の「反応容器105」を異なる複数の温度に連続的に昇温・降温を繰り返すことは、高速性には不向きであるものと推量される。逆に高速に行うと、設定温度に対してのバラツキが大きくなり(つまり、温度の精度が劣化し)、検出の感度が劣化するものと推量される。
【0008】
また、特許文献2に記載の「反応促進装置」は、「市場で求められる5分以下の高速核酸増幅を行うためには、熱源の種類・容器の形状・装置の制御・使用する酵素などPCRに関する要素全てを総合的に改良」(段落「0109」参照。)するために、「a.熱源の温度を上下するのに要する時間を限りなく短縮する…高速化、b.熱源の温度上下と反応液の温度の上下との遅れを限りなく短縮する…高速化」(段落「0110」参照。)したものであり、「反応容器11は、
図6に示すように、上方から見た場合、円盤形状のものであり、図に12で示す部分が反応液が満たされる反応槽となっている。また、前記固体熱源10は
図7に示す様にこの反応容器11の形状に対応するように扇形状に形成された、それぞれ低温、中間温度、および高温に設定される異なる3つのブロック10a〜10cからなり、これに対して前記反応容器11を回転させることで、反応槽12内の反応液に熱サイクルを与えるように構成されている」(段落「0111」、
図4〜
図7、
図12等参照。)としたものである。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の「反応促進装置」は、「
図6に示すように、この反応容器11には、周方向120度に亘る範囲に互いに約25度離間して設けられた4つの反応槽12が設けられている。各反応槽12に対応する反応容器の中心部側には、前記各反応槽12に反応液を送るための送液孔33が設けられている。この反応槽12と送液孔33は、送液通路34と大気解放通路35とで接続されている。」(段落「0119」、
図6参照。)という構成であるため、「各反応槽12に反応液を送る」ために時間を要するので、高速性の点でさらなる改良が必要とされるものと推量される。
【0010】
また、特許文献2には、「この反応容器11の第一の工夫は、上記反応槽12の部分を上下の熱源10'、10"で挟んで伝熱効率を高めた点である。特に、この反応槽12を閉塞する上下面の両方あるいはいずれかが薄肉になっており、その薄肉の部材をそれぞれ伝熱面とするものである」(段落「0127」、
図10等参照。)、「この発明では、反応槽12内部の圧力を高くし、閉塞部材を伸縮性フィルム39とすることによって、このフィルム39を内部圧力によって外側方向に膨張させることで、多数の反応槽のフィルム39を固体熱源10に対して安定的に接触させることが出来るようにした」(段落「0131」、
図10等参照。)と記載されている。
【0011】
しかしながら、上記の「反応槽12内部の圧力を高くし、閉塞部材を伸縮性フィルム39とすることによって、このフィルム39を内部圧力によって外側方向に膨張させる」という手法では、「反応槽12」と「フィルム39」との境界面への液漏れの虞があり、また、「伸縮性フィルム39」が膨張しすぎて破裂する虞もあるし、薄い「フィルム39」を「固定熱源10」に接触させることで、「フィルム39」が損傷して破断する虞もある。
【0012】
また、特許文献2には「低温側固定熱源10a〜高温側固定熱源10cが円周方向に沿って配置されており、上記円形の反応容器11がこれらの固定熱源10a〜10cに接触して回転するようになっている」(段落「0153」、
図40参照。)と記載されており、「反応容器11」を「低温側固定熱源10a〜高温側固定熱源10c」に接触したまま回転させるので、回転中に「反応容器11」、もしくは、「反応容器11」に設けられた「閉塞板38」や「フィルム部材39」が破損してしまう虞がある。特に時間短縮のために高速回転させるときには、破損の可能性が高くなり品質が劣化する恐れがあるので、高品質で高速回転を実現するための改良が求められる。
【0013】
また、特許文献3には、「板状のマイクロチップに設けられた被温度調節部の温度を局所的に制御する温度制御装置を提供すること」(段落「0005」参照。)として、「被温度調節部が設けられている板状のマイクロチップの前記被温度調節部の温度を制御する温度制御装置であって、前記被温度調節部に接触可能な温度調節部が周方向へ複数設けられているステージと、前記マイクロチップとともに軸方向へ往復移動および周方向へ回転可能に設けられる軸部材を有し、当該軸部材を周方向へ回転駆動することにより前記マイクロチップを前記ステージと平行に前記軸部材の周方向へ回転駆動する回転駆動部と、前記軸部材を軸方向へ往復駆動することにより前記マイクロチップを前記軸部材の軸方向へ往復駆動する軸方向駆動部と、を備え、前記回転駆動部が前記マイクロチップを回転駆動するとき、前記軸方向駆動部が前記軸部材を軸方向へ移動するよう駆動することにより前記マイクロチップは前記温度調節部から離れる温度制御装置」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【0014】
そして、特許文献3には、「第1実施形態では、マイクロチップ11はステージ12と平行に周方向へ回転される。これにより、マイクロチップ11の槽領域111に接する温度調節部20は変更される。蓋部材40でマイクロチップ11をステージ12側へ押し込むことにより、マイクロチップ11の槽領域111は温度調節部20の伝熱部22に接する。そのため、マイクロチップ11の槽領域111は、局所的に伝熱部22によって温度が制御される。また、温度調節部20を予め所定の温度に制御することにより、マイクロチップ11が回転しマイクロチップ11と伝熱部22とが接触すると、槽領域111は設定された温度調節部20の温度に迅速に制御される。したがって、槽領域111の温度を迅速、局所的かつ精密に制御することができる。また、第1実施形態では、マイクロチップ11が回転するとき、マイクロチップ11は温度調節部20から離れる。そのため、マイクロチップ11は、温度調節部20によって移動が妨げられない。したがって、マイクロチップ11を速やかに回転させることができる。第1実施形態では、各温度調節部20はあらかじめ所定の温度に設定され、マイクロチップ11が回転することにより槽領域111の温度が制御される。そのため、各温度調節部20の温度変化は小さい。第1実施形態のように各温度調節部20の温度を設定し、マイクロチップ11を回転させる構成とすることにより、マイクロチップ11を固定し温度調節部20の温度を変化させる場合と比較して、マイクロチップ11の槽領域111の温度変化の速度は大きくなる。したがって、マイクロチップ11の槽領域111の温度を迅速に制御することができる。また、各温度調節部20は、一定の温度に維持され、温度変化が低減される。したがって、温度調節部20のペルチェ素子部21の寿命を延長することができる」(段落「0032」〜「0033」、
図1、
図2等参照。)と記載されている。特許文献3に記載のこれらの構成は、前述の特許文献1、2の課題(ステージの高速回転、短時間処理、反応容器の破損防止等。)を解決するものと推量される。
【0015】
また、特許文献3には、「以下、第5実施形態による温度制御装置10を用いたPCRの一例について説明する。PCRに先立って、マイクロチップ11の槽領域111には、増幅の対象となるDNA(テンプレート)、DNAポリメラーゼ、およびプライマーが注入される。プライマーは、オリゴヌクレオチドから構成されている。これらの反応試料が注入されたマイクロチップ11の槽領域111は、伝熱部23、伝熱部24および伝熱部25の順で回転しながら移動する」(段落「0046」、
図8、
図9参照。)、「第6実施形態では、PCRが行われた各槽領域111を光分析部50によって分析することができる。なお、光分析部50は、いずれかの伝熱部23、24、25の間に一箇所配置してもよい。この場合、各槽領域111の分析は、マイクロチップ11を回転させつつ、一箇所の光分析部50によって行われる」(段落「0053」、
図10参照。)と記載されている。つまり、特許文献3には、リアルタイムPCRの一例について記載されているものと認められる。
【0016】
さらに、特許文献3には、「回転駆動部30」のその他の実施形態として、複数の「ローラ36」を「マイクロチップ11の外周縁と接する」ように設け、または、複数の「ローラ38」を「マクロチップ11のステージ12側の端面と接」するように設けて、「マイクロチップ11」を回転駆動することが記載されている(段落「0056」、
図12、
図13参照。)。
【0017】
また、商品化されているPCR装置、リアルタイムPCR装置は、大型で重量が重いものが多く、携行可能な小型・軽量の装置が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のリアルタイムPCR装置の第一実施形態について
図1〜
図10、
図14を参照しながら説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書においては、例えば、「伝熱板18h、伝熱板18l、伝熱板18m」という表現を、「伝熱板18h,18l,18m」と表現する場合がある。
【0031】
(第一実施形態)
[リアルタイムPCR装置の構成]
まず、本発明のリアルタイムPCR装置100の構成について、
図1〜
図8,
図14を参照しながら説明する。
図1は、リアルタイムPCR装置100の開蓋状態の外観図であり、
図2は、リアルタイムPCR装置100の下部本体10の要部分解図であり、
図3は、リアルタイムPCR装置100の蓋体20の要部分解図である。
図4は、リアルタイムPCR装置100の伝熱板18h及びペルチェ部Phを示す図であり、
図4(a)は斜視図、
図4(b)は正面図、
図4(c)は右側面図、
図4(d)は平面図、
図4は、伝熱板18hにペルチェ部Phを取付けた状態を説明する図、
図4(fは、
図4(e)の断面図である。
図5は、リアルタイムPCR装置100の伝熱部カバー盤17を示す図であり、
図5(a)は斜視図、
図5(b)は正面図、
図5(c)は平面図である。
図6は、リアルタイムPCR装置100のディスクホルダー15を示す図であり、
図6(a)は斜視図、
図6(b)は正面図、
図6(c)は平面図である。
図7は、ディスク28を示す図であり、
図7(a)は斜視図、
図7(b)は正面図、
図7(c)は平面図である。
図8は、リアルタイムPCR装置100のディスク押圧板14hを示す図であり、
図8(a)は斜視図、
図8(b)は正面図、
図8(c)は右側面図、
図8(d)は平面図であり、
図14は、ディスク28の応用例であり、
図14(a)は斜視図、
図14(b)は、平面図である。なお、リアルタイムPCR装置100の内部構成については、本願発明に関連する部分を中心に説明する。
【0032】
本発明のリアルタイムPCR装置100は、
図1に示すように、箱形の下部本体10と、下部本体10にヒンジ部(不図示)を介して開閉自在に取付けられ、下部本体10の形状に対応して形成された箱形の蓋体20を備えている。
【0033】
本発明に係る実施形態は、鋳型(テンプレート)DNA、DNAポリメラーゼ、プライマー等の反応液が収容された複数の反応槽28Rを有するディスク28を円周方向に120度ずつ順次回転させ、互いに異なる温度に設定される3つの温調領域(第1の温調領域Th,第2の温調領域Tl,第3の温調領域Tm)を有する温調部30上で反応槽28Rを所定サイクル繰り返し温調することで、DNAを短時間に増幅させ、その後、蛍光分析手段により加温状態の反応槽28Rに励起光を照射して蛍光分析することでDNAの定量分析を行うものである。第1の温調領域Thは高温(設定温度95℃)領域に対応し、第2の温調領域Tlは低温(設定温度60℃)領域に対応し、第3の温調領域Tmは中温(設定温度75℃)に対応している。温調領域は、第1の温調領域Th→第2の温調領域Tl→第3の温調領域Tm→第1の温調領域Th・・・のサイクルで所定回数温調が繰り返される。
【0034】
リアルタイムPCR装置100は、図示しないが閉蓋状態でも箱形をなし、一例として、閉蓋状態でのサイズは、幅300mm、奥行210mm、高さ192mm、重量約8kgで構成することができるので、軽量・小型化されている。この理由は、詳細は後述するが、高速・高精度のリアルタイムPCR装置を実現するために、ディスクの回転・押圧部関連の構成を簡素化したり、熱源のペルチェ素子・伝熱手段等を簡素化し低電力化して電源を小型化することができたことによる。
【0035】
また、蓋体20の上面には、表示部(不図示)が設けられており、分析経過・分析結果等を表示することができる。リアルタイムPCR装置100には、制御手段、記憶手段、通信手段等が設けられており、外部機器との有線又は無線による通信が可能であり、スマートフォン、タブレット等の携帯端末でリアルタイムPCR装置100を操作することもできる。また、前述した表示部に設けられたタッチパネルで操作することもできる。
【0036】
下部本体10には、上述したように互いに異なる温度に温調可能な複数の温調領域の第1の温調領域Th、第2の温調領域Tl、第3の温調領域Tmを有する温調部30が設けられている。本実施形態では、温調領域Th,Tl,Tmは、それぞれ、伝熱部18の伝熱板18h、18l、18m、および、ペルチェ部Ph,Pl,Pmに対応しており、伝熱板18h、18l、18m、および、ペルチェ部Ph,Pl,Pmは、分かりやすく言えば、伝熱部カバー盤17を円周方向に120度ずつ1/3に等間隔に分割して構成された扇形の領域に対応するよう配置されている。温調部30の中央部には、着設されたディスク28を円周方向に回転することができるディスクホルダー15が設けられている。回転の向きは水平方向の左右いずれでも選択できるが、本実施形態では、ディスク28に設けられた一群(8個)の反応槽28Rが、温調領域Th,Tl,Tmの順に対応して移動するように左回りに設定されている。このディスクホルダー15は、ディスクホルダー15中央下方に設けられた回転駆動部7の回転軸7aに係止され、回転軸7aの回転に連動して回転することができる。温調部30には、温調部基板30a、ペルチェ部Ph,Pl,Pm、伝熱板18h,18l,18mを備えた伝熱部18、伝熱部カバー盤17が設けられている。
【0037】
蓋体20の下面側には、閉蓋状態で、ディスク28を上方から下方に押圧するディスク押圧部13が取り付けられている。ディスク押圧部13は、蓋体20の閉蓋状態でも、上下方向の一定距離を移動することができるように構成されており、ディスク28が回転動作を停止している状態では、ディスク28を下方に押圧して伝熱板18h,18l,18mに接触させ、ディスク28が着設されたディスクホルダー15の回転動作開始に応答して、ディスク28の回転と同時に上方向に離間されてディスク28と非接触状態になる。ディスク28は、ディスク押圧部13と離間状態(非接触状態)を維持されたまま回転動作を行うことができる。
【0038】
下部本体10の外周面は、下面にベースプレート1、前面にフロントプレート2、背面にバックプレート3、左側面にレフトカバー4、右側面にライトカバー5、上面にトップカバー6が設けられて構成され、レフトカバー4及びライトカバー5には、それぞれ、取手部33Kが設けられている。フロントプレート2には、排熱用の複数の排熱孔2aが開孔されている。排熱孔2aは、他のプレート、カバーに設けられてもよい。また、各プレート、カバーは、適宜、螺子等の取付け手段で、内部の枠体等の構成部品に取付けられている。図面には、これらの取付け手段の部材が示されているが、説明は省略する。
【0039】
下部本体10のトップカバー6の中央部には、円形のカバー盤開口部6aが形成され、カバー盤開口部6aの下方には、カバー盤開口部6aよりも拡径された矩形の温調部基板16が配設され、この温調部基板16上に、放熱部Pdh,Pdl,Pdmを介してペルチェ部Ph,Pl,Pmが設けられ、ペルチェ部Ph,Pl,Pmには、ぞれぞれ、伝熱部18を構成する伝熱板18h,18l,18mが冠着されている。伝熱板18h,18l,18mの上面部には、複数の伝熱凸部19h,19l,19mが形成されている。本実施形態では、伝熱凸部19h,19l,19mは、それぞれ、8個ずつ形成されている。ペルチェ部Ph,Pl,Pm、および、伝熱板18h,18l,18mは、それぞれ、前述の温調領域Th,Tl,Tmに対応して円周方向に120度ずつ等間隔に配設されている。ペルチェ部Ph,Pl,Pmは、設定される温度がそれぞれ異なる(例えば、高温95度,低温60度,中温75度)だけであり、それぞれの構造は同一である。伝熱板18h,18l,18mについても同様であり、ペルチェ部Ph,Pl,Pmからディスク28に形成された反応槽28Rに伝熱する温度が異なる(例えば、高温95度,低温60度,中温75度)だけであり、それぞれの構造は同一である。
【0040】
図4には、伝熱板18hのみ示しているが、上述したように伝熱板18l,18mも同様の構造である。伝熱板18hは、平面視で、矩形の四隅の角部を面取りされた形状の伝熱板基台18aの長手方向両底辺部に、放熱部18dhに取り付けるための取付け片18bが一体的に延設されている。伝熱板基台18aの裏面側は、ペルチェ部Phに冠着されるように冠着凹部18cが形成されている。
【0041】
伝熱板基台18a上面の長手方向には、複数の伝熱凸部19hが立設して円弧上に配設されている。伝熱凸部19hは、後述する伝熱部カバー盤17に開孔して形成された伝熱凸部嵌挿孔17hに遊貫するように形成されている。つまり、伝熱凸部19hは、伝熱凸部嵌挿孔17hと非接触になるように配設される。伝熱凸部19hは、円筒ペレット形状に形成され、ディスク28に形成されている反応槽28Rと略同一径、好適には、僅かに拡径されている。このような構成にしたことにより、ペルチェ部Phの発熱を、局所的・効率的に反応槽28Rに伝熱することができるので、短時間に精度よく設定温度に温調することが可能である。また、伝熱部19hが反応槽28Rよりも僅かに拡径されているので、ディスク28の押圧時に、反応槽28Rの下面を伝熱部19hの上面で確実に支持することができるので、反応槽28Rの下面と、反応槽28Rの下面に貼着されているフィルムfbとの境界面から、反応槽28Rに注入されている反応液RLが漏洩することを防いでいる。伝熱板18l,18mにも、同様に、複数の伝熱凸部19l,19mが形成されている。
【0042】
伝熱板18h,18l,18mは、回転駆動部7の回転軸7aを軸心とする円の円周方向に120度の等間隔で配置されている。前述したように、伝熱板18h,18l,18mは、それぞれ、温調領域Th,Tl,Tmを構成し、ディスク28を120度間隔で回転させることで、順次、高温、低温、中温に温調される。これにより、PCRの温度サイクルの高速制御を容易に行うことができる。
【0043】
伝熱板18h,18l,18mには、ドーナツ盤形状の伝熱部カバー盤17が着装されている。伝熱部カバー盤17には、円周方向に複数の伝熱凸部嵌挿孔17h,17l,17mが開孔されている。伝熱凸部嵌挿孔17h,17l,17mは、それぞれ、前述した伝熱凸部19h,19l,19mに対応した位置に配設され、伝熱凸部19h,19l,19mが遊貫されるように開孔されている。一群(8個)の伝熱凸部19hは、第1の温調領域Thに対応し、一群(8個)の伝熱凸部19lは、第2の温調領域Tlに対応し、一群(8個)の伝熱凸部19mは、第3の温調領域Tmに対応している。PCR試験においては、例えば、第1の温調領域Thが高温領域、第2の温調領域が低温領域Tl、第3の温調領域Tmが中温領域であってよい。伝熱凸部19h,19l,19mの上面は、伝熱カバー盤17の上面よりも上方向に突出し、かつ、ディスクホルダー15のディスク回転基台15aの上面と同一高さになるように設定されているので、伝熱部カバー盤17は、ディスクホルダー15に着設されたディスク28には接触しない。つまり、ディスク28は、中心部近傍をディスクホルダー15のディスク回転基台15aで支持され、中心部と外周部との間の領域を伝熱凸部19h,19l,19mで支持される構成にされている。このように、伝熱部カバー盤17とディスク28とを非接触状態にすることで、熱干渉を低減することができるようにしている。
【0044】
温調部基板16上には、ペルチェ部Ph,Pl,Pmを介して、伝熱部18が取り付けられている。本実施形態では、伝熱部18は、3つの異なる温調領域として用いるため、伝熱板18h、伝熱板18l、伝熱板18mを備えている。伝熱板18h,18l,18mは、それぞれ、温調部基板16a上に設けられたペルチェ部Ph,Pl,Pmに冠着されるように構成されている。ペルチェ部Ph,Pl,Pmには、それぞれ、同一構造のペルチェ素子Peが設けられているが、ペルチェ素子peは、温調素子として周知であり、不図示の温調制御部で、それぞれ、PCRによる温度サイクルに必要な高温(設定温度95℃)、低温(設定温度60℃)、中温(設定温度75℃)に設定することができる。伝熱板18hは、ペルチェ部Phが発熱されたときに、上面に着設されたディスク28に高効率で伝熱することができる。伝熱板18l,18mについても同様である。
【0045】
ペルチェ部Phについて
図4(e)、
図4(f)を参照しながら説明する。ペルチェ部Pl,Pmも同様の構造である。ペルチェ部Phは、板状のペルチェ素子Peを2枚のセラミック板Cpで上下から挟着されている。上側のセラミック板Cpは、放熱シリコンで、伝熱板基台18aの裏面に貼着されている。ペルチェ素子Pe、セラミック板Cpは、平面視、同一サイズである。上側のセラミック板Cpには、伝熱板基台18aが密嵌されているが、ペルチェ素子Peおよび下側のセラミック板Cpの両側面と、伝熱板基台18aの長手方向側面とには、隙間が設けられている。この隙間は、伝熱板18hがアルミニウムで形成されており、アルミニウムとセラミックの熱膨張率が異なるために設けられたものである。ペルチェ部Phには、電力を供給するための電線(不図示)が接続されている。電線による電力の供給により、ペルチェ素子Peの一方の面は、発熱し、他方の面は放熱(冷却)される。
【0046】
伝熱板18hの取付け片18bの長手方向両端部には、螺子孔が形成されており、伝熱板18hは、シムワッシャを介して放熱部Pdhに螺設されている。ペルチェ部Phの下側のセラミック板Cpは、放熱シリコンで放熱部18dhの上面に貼着されている。
【0047】
伝熱部カバ−盤17はカバー盤開口部6aに遊貫されるように配設されているので、伝熱部カバー盤17の外周縁はカバー盤開口部6aに接触しない。また、伝熱部カバー盤17の中心部には、ディスクホルダー開口部17aが、ディスクホルダー15が遊嵌される大きさに形成されている。つまり、伝熱部カバー盤17は、ディスクホルダー15にも接触しないように設けられている。また、伝熱部カバー盤17には、複数の螺子孔が設けられているが、樹脂製のボルトを使用するなどして、伝熱部カバー盤17とディスク28が接触しないように構成されている。
【0048】
ディスクホルダー15は、回転駆動部7の回転軸7aに係合して取り付けられており、円盤状のディスク回転基台15aと、ディスク回転基台15aよりも縮径され、ディスク回転基台15aと同一軸心を有し、ディスク回転基台15a上にリング状に立設されて形成された溝付きリング15bと、ディスク回転基台15aの下面中央部に垂下して形成された軸筒15eを備えている。溝付きリング15bの所定位置には、溝部としてのV溝15cが形成されている。V溝15cは、側面視V字型の斜面を有する。このV溝15cの配設位置は、後述するディスク押圧部13に設けられた球状の回転体17Kの配設位置と対応している。回転体17Kは、回転体保持盤35に設けられた回転体保持具35a内で回転自在に保持されている。また、このV溝15c、および、回転体17Kの配設位置は、3つの温調領域Th,Tl,Tmの配設位置に対応しており、ディスク28が停止している状態では、3つの回転体17Kは、それぞれ、3つのV溝15cのいずれかに陥落して静止している。なお、回転体17KがV溝15cに陥落して静止した状態で、ディスク押圧板14h,14l,14mが、ディスク28に接触して押圧することができる、回転体17Kの径、V溝15cの深さ、その他関連部材の形状・サイズ・位置関係を最適な構成にされている。3つのV溝15cは、ディスクホルダー15の回転に連動して円周方向に120度毎に間欠して回転するが、回転保持具35aは固定されているので、3つの回転体17Kは、それぞれが保持されている回転体保持具35a内で回転するだけであり、円周方向への転動はしない。軸筒15eには回転駆動部7の回転軸7aが挿通され、回転軸7aは、軸通15eの側面に形成された貫通孔にピンまたは螺子等を介して軸筒15eに係合されて固定され、これにより、回転軸7aの回転に連動して、回転軸7aと同時にディスクホルダー15が回転する。
【0049】
ディスクホルダー15は、伝熱部カバー盤17の中央に開口された円形のカバー盤開口部6aに遊嵌され、カバー盤開口部6aの下方に配設された回転駆動部7の回転軸7aに係合され、回転軸7aの回転によって水平方向に回転することができる。回転駆動部7は、例えば、ステッピングモータで構成され、出力軸として回転軸7aを備えている。ディスクホルダー15には、複数の位置決めピン挿通孔15dが設けられておりこの位置決めピン挿通孔15dと、ディスク28の対応する位置に設けられた位置決めピン挿通孔28aに、位置決めピン(不図示)を挿通して係合させることで、ディスク28をディスクホルダー15に着設した状態で回転軸7aの回転に連動して回転することができる。つまり、ディスク28は、ディスクホルダー15の回転動作開始に応答して、ディスクホルダー15と同時に回転および停止することができる。
【0050】
ディスク28は、円形のディスク開口部28aが開口されたドーナツ盤形状に形成され、円周方向の所定箇所には、PCR試験時に反応液が収容される複数の反応槽28Rが設けられている。反応槽28Rは、平面視円形の凹槽であり、複数個が独立して形成されている。
図7では、8個の反応槽28Rが示されているが、この一群の反応槽28Rは、ディスクホルダー15によってディスク28が回転されることで、順次、第1の温調領域Th、第2の温調領域Tl、第3の温調領域Tmに対応するよう配設されており、つまり、一群(8個)の反応槽28Rは、ディスク28の回転とともに順次、伝熱板18h(ペルチェ部Ph)、伝熱板18l(ペルチェ部18l)、伝熱板18m(ペルチェ部Pm)に対応するよう配設されており、個々の反応槽28Rは、伝熱板凸部19h,19l,19mの配設位置に順次対応するように形成されている。このように反応槽28R毎に局所的に加温するように構成することで、PCR試験時において、高精度で短時間に設定温度に温調することが可能となる。高精度に温調できるので、DNAの量も安定して多く増幅することができ、高感度の検出結果を得ることができる。また、加温面積を少なくすることができるので、電源の出力を低減することができ、したがって、電源を小型化・軽量化することができ、装置全体としても小型化・軽量化することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、ディスク28は、ドーナツ盤形状としたが、ディスク28Rの反応槽28Rが形成されていない領域を削除した非ドーナツ盤形状にしてもよい。
図14は、本実施形態のディスク28の応用例のディスク228を示す。
図14(a)は、斜視図であり、
図14(b)は、平面図である。図示するように、ディスク228は、ディスク28の反応槽28Rが形成されていない領域を削除して略扇形としたものであり、位置決めピン挿通孔28a、開口部28b、反応槽28Rの位置は、ディスク28と同じであってもよい。このように、反応槽28Rの形成されない領域を削除することで、ディスク228の製造コストを低減することができる。
【0052】
ディスク押圧部13は、蓋体20の閉蓋状態において、反応槽28Rに収容された反応液が一つの温調領域で反応している期間中は、ディスク28を上方から下方に押圧して、伝熱板18h,18l,18m(伝熱凸部19h,19l,19m)に接触させ、反応が完了し反応槽28Rを次の温調領域に移動させるためにディスク28が回転動作している期間中は、ディスク28から離間されて非接触状態(離間状態)を維持している。
【0053】
ディスク押圧部13は、円盤形状の押圧部基板13aと、押圧部基板13aを上下移動させるためのコイルスプリング15Kと、該コイルスプリング15Kと連動して押圧部基板13aを上下移動させる回転体17Kを備えている。コイルスプリング15Kは、押圧部基板13aと蓋体20との間に介在するように配設されている。ロッド12は、下方から押圧部基板13a、金属ワッシャ18K、コイルスプリング15Kの順に挿通され、ロッド12の下端部は押圧基板13aに係止され、ロッド12の上端部は蓋体20の裏面に螺子20aで螺設されている。このコイルスプリング15Kの伸縮作用により、押圧部基板13aは、上下移動が可能にされている。なお。コイルスプリング15Kは、同等の作用・機能を奏するものであれば他の弾性体(例えば、板バネ)に代えてもよい。なお、コイルスプリング15Kの付勢力が強すぎると、押圧部基板13aによるディスク28の押圧力は強くなるが、押圧部基板13aをディスク28から離間させるときに押圧力の解放に時間がかかり、押圧部基板13aのディスク28からの離間に時間がかかってしまうので、コイルスプリング15Kの付勢力は、最適な値に設定される。
【0054】
押圧部基板13aの下面(伝熱部カバー盤17に対向する側の面)には、ディスク押圧板14h,14l,14mが取り付けられている。ディスク押圧板14h,14l,14mは、それぞれ、伝熱板18h,18l,18mに対応した位置に配設されている。
図8には、ディスク押圧板14hのみ示しているが、ディスク押圧板14l,14mも同様の構造をなす。ディスク押圧板14hは、角の一部を面取りされた板状の押圧板基台14a上に、円弧状に湾曲した押圧突条14bが立設されて形成されている。押圧突条14bには、所定間隔で平面視円形の反応槽保護凹部14cが複数個設けられている。本実施形態では、8個の反応槽保護凹部14cが形成されている。平面視において、反応槽保護凹部14cは、反応槽28Rと同径、又は、好適には、僅かに縮径されている。また、蓋体20の閉蓋状態において、押圧突条14bの下面の高さは、ロッド12の下面の高さよりも低い位置に設定されている。これは、ディスク押圧板14h,14l,14mが、コイルスプリング15Kの伸縮に応じて上下移動することを可能にするためである。
【0055】
この反応槽保護凹部14cの配設位置は、伝熱凸部19hの配設位置、かつ、ディスク28が着設された状態の、反応槽28Rの配設位置に対応している。つまり、蓋体20が閉蓋されており、ディスク28の回転動作が停止され、ディスク押圧部13がディスク28を押圧している状態では、ディスク28の下面は、伝熱板18h,18l,18mの全ての伝熱凸部19h,19l,19mに押圧されて接触しており、ディスク28の上面は、ディスク押圧板14h、14l、14mの全ての押圧突条14bに押圧されて接触している。一群(8個)の反応槽28Rの下面は、フィルムfbを介して、対応する伝熱板(18h,18l,18mのいずれか一)の伝熱凸部(19h,19l,19mのいずれか一)に押圧されて接触しており、一群の反応槽28Rの上面は、フィルムftを介して、対応するディスク押圧版(14h,14l,14mのいずれか一)の全ての押圧突条14bに押圧されて接触している。
【0056】
ここで、好適には、反応槽保護凹部14cは、反応槽28Rよりも縮径されているので、反応槽28Rに注入されている反応液RLが、押圧によりディスク28の上面とフィルムftとの境界部から漏洩することを防いでいる。
【0057】
また、反応槽保護凹部14cには空隙部が形成されているので、ディスク押圧板14h,14l,14mで、ディスク28を押圧しても、ディスク28Rの上面に貼着されたフィルムftの反応槽28Rの直上部分のフィルムに殆ど接触しないので、ペルチェ部Ph(伝熱凸部19h)からの伝熱の発散も低減され、また、フィルムftを損傷させる虞がないし、反応槽28R内部に加えられた押圧を、空隙部で吸収することができるので、反応槽28R内の反応液がフィルムを押圧により破損して漏出する虞もない。ペルチェ部Ph(伝熱凸部19h)からの伝熱の発散も低減さることから、低電力化することができ、電力を供給する電源を小型化・軽量化することができる。また、応槽28R内部に加えられた押圧を空隙部で吸収して反応槽28R内の圧力が高くなることを防ぐことで、本来の反応速度が遅くなることを防ぐことができ、また、異なる物質が生成されることを防ぐこともできる。
【0058】
押圧部基板13aの下面(伝熱部カバー盤17に対向する側の面)には、ディスク押圧板14h,14l,14mよりも内側に、3つの回転体17Kが設けられている。回転体17Kは、球状の回転体であり、それぞれ、回転体保持具35aで保持されており、回転体保持具35a内で回転自在に保持されている。回転体保持具35aは、回転体保持盤35を介して、螺子35bにより押圧部基板13aに螺設されている。
【0059】
3つの回転体17Kは、それぞれ、円周方向に120度の等間隔で、蓋体20が閉蓋されてディスク28が停止している状態では、ディスクホルダー15のV溝15c内に陥落して静止するように配設されている。回転体17Kは球状であり、V溝15cは、V字状の斜面を有するので、ディスクホルダー15が回転動作を開始すると同時に、回転体17Kが回転しながらV溝15cの斜面に沿って上方向(原理的には垂直上方向)に移動する。そうすると回転体17Kの上方向の移動により、ディスク押圧板14h,14l,14mも連動して上方向に移動し、接触していたディスク28から離間して非接触状態となる。つまり、ディスク押圧部13は、ディスクホルダー15の回転動作開始に応答して、ディスクホルダー15の回転動作開始と同時に、ディスク28から離間して非接触状態になるのである。ディスクホルダー15がさらに回転すると、ディスク押圧板14h,14l,14mがディスク28から離間した状態(換言すれば、「非接触状態」)を維持したまま、回転体17Kは回転しながらV溝15cを離脱して、溝付きリング15bの上面が回転体17Kの表面を滑動して、次の位置のV溝15cが回転体17Kの位置に到着すると、回転体17Kは回転しながら次のV溝15cの斜面に沿ってV溝部15cの最深部に陥落すると同時に、ディスク押圧部13のディスク押圧板14h、14l、14mがコイルスプリング15Kの付勢力により押圧されてディスク28に接触する。
【0060】
ここで、PCR試験においては、異なる温調領域での反応工程を繰り返し行うので、一回の反応工程での時間ロスは、トータルの処理時間の増大につながる虞がある。特許文献3に記載された発明は、「マイクロチップ11」を周方向に回転させる前に、「蓋部材40」を上方へ移動させて、「マイクロチップ11」を「伝熱部22」から離間させる必要があり(特許文献3の「第1実施形態」参照。)、その分、時間のロスが発生する。また、「マイクロチップ11」を周方向に回転させる前に、「回転軸部32」を上方へ駆動させて、「マイクロチップ11」を「伝熱部22」から離間させる必要があり(特許文献3の「第2実施形態」参照。)、その分、時間のロスが発生する。また、逆の動作にも時間ロスが発生することが容易に推量される。
【0061】
これに対し、本願発明では、ディスクホルダー15によるディスク28の回転動作開始に応答して、ディスクホルダー15の回転動作開始と同時にディスク押圧部13をディスク28から離間することができるので、上述の特許文献3のような時間のロスがなく、トータルの処理時間の大幅な短縮を図ることができる。
【0062】
また、本願発明では、ディスク28の回転と、ディスク押圧部13の上下移動を、ディスクホルダー15の回転動作により同時に行う構成にしたので、特許文献3ように「蓋部材40」の上下移動を行う「蓋駆動部41」と、「マイクロチップ11」の上下移動を行う「回転軸部32」のような構成を設ける必要がないので、構成部品数を削減することができ、装置全体を小型化・軽量化することができる。
【0063】
伝熱部カバー盤17の所定位置、本実施例では、第2の温調領域Tl(伝熱板18l)と第3の温調領域Tm(伝熱板18m)との中間位置に、増殖したDNAの量を検出する蛍光分析を行うときに発行される励起光を透過するための透過窓TWが設けられている。蛍光分析には、TaqManプローブ法、または、SYBR Green法を用いることができる。これらの手法は周知であるので、詳細説明は省略する。
【0064】
[リアルタイムPCR装置の動作]
次に、本発明の第一実施形態のリアルタイムPCR装置100の動作について、
図9および
図10を参照しながら説明する。なお、必要に応じて、適宜
図1〜
図8、
図14を参照されたい。
【0065】
本実施形態のPCR試験(検査)では、反応液が反応槽28Rに注入されたディスク28がディスクホルダー15に着設され、蓋体20が閉蓋されて、PCR試験が開始されると、試験完了まで開蓋されることなく試験(DNAの増幅・定量検出)が行われる。閉蓋状態では、
図9に示すように、ディスク28は、ディスク押圧部13に押圧されている。詳細には、コイルスプリング15Kの付勢力によって、押圧部基板13aの下面に設けられたディスク押圧板14h,14l,14mが、ディスク28を伝熱板18h、18l、18mに押圧して、接触状態となっている。
【0066】
この状態では、3つの回転体17Kは、それぞれ、ディスクホルダー15に形成された3つのV溝15cに陥落して静止している。ディスク28に形成された一群の反応槽28Rは、第1の温調領域Thに対応するようにセットされる。第1の温調領域Thでは、ディナチュレーション(熱変性)反応が実行される、反応槽28Rと伝熱凸部19hと位置が対応し、反応槽28R(収容された反応液)は、高温度(例えば、95℃)に温調される。
【0067】
そして、所定時間でディナチュレーションが完了したら、ディスクホルダー15を円周方向に120度回転させる。そうすると、回転体17Kが、V溝15cの斜面に沿って回転しながら、上方向に移動する。回転体17Kは、回転体保持盤35に保持され、回転体保持盤35は、押圧部基板13aに固定されているので、押圧部基板13aは、回転体17Kの上方への移動に連動して、コイルスプリング15Kの下方への付勢力に反発して、上方に移動される。このようにして、ディスク押圧部13は、ディスクホルダー15の回転動作開始に応答して、回転動作開始と同時にディスク28と離間し、非接触状態にすることができる。
【0068】
ディスクホルダー15がさらに回転し、回転体15Kが、元のV溝15cを離脱して溝付きリング15bの上面を滑動し、次のV溝15cに陥落すると、ディスクホルダー15およびディスク28の回転が停止されるとともに、一群の反応槽28Rは、第2の温調領域Tlに対応する位置に配置される。このとき、再び、コイルスプリング15Kの付勢力によって、押圧部基板13aの下面に設けられたディスク押圧板14h,14l,14mが、ディスク28を、伝熱板18h、18l、18mに押圧して、接触状態となる。
【0069】
第2温調領域Tlでは、アニーリング反応が実行される、反応槽28Rと伝熱凸部19lと位置が対応し、反応槽28R(収容された反応液)は、低温度(例えば、60℃)に温調される。そして、所定時間でアニーリング反応が完了したら、ディスクホルダー15を円周方向に120度回転させる。そうすると、回転体17Kが、V溝15cの斜面に沿って回転しながら、上方向に移動する。回転体17Kは、回転体保持盤35に保持され、回転体保持盤35は、押圧部基板13aに固定されているので、押圧部基板13aは、回転体17Kの上方への移動に連動して、コイルスプリング15Kの下方への付勢力に反発して、上方に移動される。このようにして、ディスク押圧部13は、ディスクホルダー15の回転動作開始に応答して、回転動作開始と同時にディスク28と離間し、非接触状態にすることができる。
【0070】
ディスクホルダー15がさらに回転し、回転体15Kが、元のV溝15cを離脱して溝付きリング15bの上面を滑動し、次のV溝15cに陥落すると、ディスク28の回転が停止されるとともに、一群の反応槽28Rは、第3の温調領域Tmに対応する位置に配置される。このとき、再び、コイルスプリング15Kの付勢力によって、押圧部基板13aの下面に設けられたディスク押圧板14h,14l,14mが、ディスク28を、伝熱板18h、18l、18mに押圧して、接触状態となる。
【0071】
第3温調領域Tmでは、伸長反応が実行される、反応槽28Rと伝熱凸部19mと位置が対応し、反応槽28R(収容された反応液)は、中温度(例えば、75℃)に温調される。そして、所定時間で伸長反応が完了したら、ディスクホルダー15を円周方向に120度回転させる。そうすると、回転体17Kが、V溝15cの斜面に沿って回転しながら、上方向に移動する。回転体17Kは、回転体保持盤35に保持され、回転体保持盤35は、押圧部基板13aに固定されているので、押圧部基板13aは、回転体17Kの上方への移動に連動して、コイルスプリング15Kの下方への付勢力に反発して、上方に移動される。このようにして、ディスク押圧部13は、ディスクホルダー15の回転動作開始に応答して、回転動作開始と同時にディスク28と離間し、非接触状態にすることができる。
【0072】
ディスク28が回転し、回転体15Kが、元のV溝15cを離脱して溝付リング15bの上面を滑動し、次のV溝15cに陥落すると、ディスク28の回転が停止されるとともに、一群の反応槽28Rは、再び、第1の温調領域Thに対応する位置に配置される。同様にして、ディスク押圧部13とディスク28の接触・非接触(押圧・解放)を繰り返しながら、一群の反応槽28Rを第1の温調領域Th、第2の温調領域Tl、第3の温調領域Tmの順に繰り返し対応させてディスティネーション、アニーリング、伸長の各反応を繰り返し行うことができる。
【0073】
なお、ディスクホルダー15が、ディスク28を一つの温調領域から次の温調領域まで回転させる時間は、一例として、1秒間であり、ディスク28が一回転に要する時間は3秒である。また、各温調領域での反応時間は、検体のプロトコルにより異なるが、反応液の前処理から蛍光検出完了までの定量分析に要する時間は20分〜30分である。
【0074】
本実施形態においては、前述したように、この一群の反応槽28Rは、同時には、伝熱板18h,18l,18n(ペルチェ部Ph,Pl,Pm)のいずれか一つに対応するように構成されているので、例えば、一群の反応槽28Rがディナチュレーション反応工程にあるとき、つまり、伝熱板18h(ペルチェ部Ph)を用いて温調されている期間中は、ディスク28上の反応槽28Rが形成されていない領域に対応している伝熱板18l(ペルチェ部Pl),伝熱板18m(ペルチェ部Pm)も加温状態を維持しておくことが可能であるので、伝熱板18h,18l,18mを昇温・高温する必要がなく、各設定温度に維持したままでディスク28を回転させるだけで、PCRの温調処理をすることができる。したがって、温調処理サイクルの時間を大幅に短縮することができる。また、前述したように局所加温することで低電力化が図られるので、伝熱板の加温を維持したままでも電力的に問題はない。
【0075】
以上、PCRによるDNAの増幅・定量検出を行うPCRモードについて説明したが、本願発明のリアルタイムPCR装置では、PCRモードの他に、逆転写(RT−PCR)モード、HotStartPCRモード、熱解離測定(DissociationCurve)モードを選択して実行することができる。これらの技術的内容は公知であるので、説明は省略する。
【0077】
次に、本発明に係る第二実施形態について説明する。第二実施形態は、伝熱板、伝熱部カバー盤、ディスク押圧板が、第一実施形態と異なる。第一実施形態では、個々の反応槽28Rを局所的に加熱することで温調に要する時間を短縮して、低消費電力化を目的としたが、第二実施形態では、複数の一群の反応槽28Rを広域的に加熱し、反応槽28R毎の温度バラツキを低減することを目的としたものである。以下、第一実施形態と相違する点を中心に説明する。なお、第二実施形態の伝熱板218h,218l,218m、伝熱部カバー盤217、ディスク押圧板214h,214l,214mは、リアルタイムPCR装置200(不図示)に備えられる。また、第一実施形態と同様の構成部品については、同一符号・同一名称を用いる。
【0078】
図11は、リアルタイムPCR装置200の伝熱板218hを示す図であり、
図11(a)は斜視図、
図11(b)は正面図、
図11(c)は右側面図、
図11(d)は平面図である。
図12は、リアルタイムPCR装置200の伝熱部カバー盤217を示す図であり、
図12(a)は斜視図、
図12(b)は正面図、
図12(c)は平面図である。
図13は、リアルタイムPCR装置200のディスク押圧部214を示す図であり、
図13(a)は斜視図、
図13(b)は正面図、
図13(c)は右側面図、
図13(d)は平面図である。
【0079】
図11には、伝熱板218hのみ示しているが、第一実施形態と同様に、伝熱板218hと同一の構造の伝熱板218l,218mを備えている。伝熱板218hは、平面視で、矩形の四隅の角部を面取りされた形状の伝熱板基台218aの長手方向両底辺部に、ペルチェ部Phに取り付けるための取付け片218bが一体的に延設されている。伝熱板218hは、ペルチェ部Phに冠着されるように裏面が削成されて冠着凹部218cが形成されている。
【0080】
伝熱板基台218aの上面は、第一実施形態と異なり平坦に形成されている。伝熱板218hは、この平坦な伝熱板基台218aの上面によって、ペルチェ部Phの発熱を広域的に一群の反応槽28Rに伝熱するので、反応槽28Rの温度バラツキを低減することができる。また、伝熱板基台218aの上面が広域的に平坦に形成されているので、ディスク28の押圧時に、反応槽28Rとフィルムfbとの境界面から、反応液RLが押圧力によって漏洩する虞もない。
【0081】
伝熱板218h,218l,218mは、回転駆動部7の回転軸7aを中心とする円の円周方向に120度の等間隔で配置されている。前述したように、伝熱板218h,218l,218mは、それぞれ、温調領域Th,Tl,Tmに対応して配設され、ディスク28(又は228)を120度間隔で回転させることで、順次、高温、低温、中温に温調される。これにより、PCRの温度サイクルの高速制御を容易に行うことができる。
【0082】
伝熱板218h,218l,218mには、略ドーナツ盤形状の伝熱部カバー盤217が着装されている。
図12には、伝熱部カバー盤217を示す。伝熱部カバー盤217には、円周方向に複数の伝熱板嵌挿口217h,217l,217mが開口されている。伝熱板嵌挿口217h,217l,217mは、それぞれ、前述した伝熱板218h,218l,218mに対応した位置に配設され、伝熱板218h,218l,218mの上面の高さは、伝熱カバー盤217の上面よりも上方向に突出し、かつ、ディスクホルダー15のディスク回転基台15aの上面と同一高さになるように設定されているので、伝熱部カバー盤217は、ディスクホルダー15に着設されたディスク28には接触しない。つまり、ディスク28は、中心部近傍をディスクホルダー15のディスク回転基台15aで支持され、中心部と外周部との間の領域を伝熱板基台218aで支持される構成にされている。このように、伝熱部カバー盤217とディスク28とを非接触状態にすることで、熱干渉を低減することができるようにしている。伝熱板218hおよび伝熱板嵌挿口217hは、第1の温調領域Thに対応し、伝熱板218lおよび伝熱板嵌挿口217lは、第2の温調領域Tl対応し、伝熱板218mおよび伝熱板嵌挿口217m、第3の温調領域Tm対応している。
【0083】
ディスク押圧部213は、蓋体20の閉蓋状態において、反応槽28Rに収容された反応液が一つの温調領域で反応している期間中は、ディスク28を上方から下方に押圧して、ディスク28を伝熱板218h,218l,218mに接触させ、反応が完了し反応槽28Rを次の温調領域に移動させるためにディスクホルダー15を回転動作させディスク28を回転させている期間中は、ディスク28から離間されて離間状態(非接触状態)となる。
【0084】
押圧部基板13aの下面には、ディスク押圧板214h,214l,214mが取り付けられる。ディスク押圧板214h,214l,214mは、それぞれ、伝熱板218h,218l,218mに対応した位置に配設されている。
図13には、ディスク押圧板214hのみ示しているが、ディスク押圧板214l,214mも同様の構造をなす。ディスク押圧板214hは、角の一部を面取りされた板状の押圧板基台214a上に、円弧状に湾曲した2本の押圧突条14bが並設して立設されている。対向する2本の押圧突条214bによって形成される空隙部は、反応槽保護凹部214cを形成する。反応槽保護凹部214cの幅(対抗する押圧突条214bの間隔)は、反応槽28Rの平面視直径と同一、又は、好適には、拡径されている。蓋体20が閉蓋され、ディスクホルダー15の回転動作停止とともにディスク28の回転動作が停止され、ディスク押圧部213がディスク28を押圧している状態では、ディスク28の下面は、伝熱板218h,218l,218mの上面に押圧されて接触しており、ディスク28の上面は、ディスク押圧板214h、214l、214mに押圧されて接触している。
【0085】
ここで、平面視において、反応槽保護凹部214cの幅が、反応槽28Rの平面視直径より好適には僅かに拡径されているのは、反応槽28Rに注入されている反応液RLの熱の発散を防ぎ、温調処理時間を短縮するためである。第二実施形態では、伝熱板218h,218l,218mの基台上面全体で広域的に反応槽28Rを加温するように構成したので、第一実施形態に比べ、多少電力の消費が多くなる。しかしながら、ディスク押圧板214h,214l,214mを、対向する2本の押圧突条314bにしたことにより、第一実施形態の押圧突条14bに比べ、ディスク28への接触面積を減らすことができるので、ペルチェ部Ph(Pl,Pm)から反応槽28Rへの伝熱の発散を低減させ、結果的に短時間で温調処理することができるので、トータルの消費電力は第一実施形態と有意差がないようにすることができた。
【0086】
また、ディスク押圧板214h,214l,214mの押圧突条214bでディスク28を押圧しても、反応槽28Rの上面に貼着されたフィルムに接触しないので、フィルムを損傷させる虞がないし、反応槽28R内部に加えられた押圧を、反応槽保護凹部214cで形成された空隙部で吸収することができるので、反応槽28R内の反応液がフィルムを破損して漏出する虞もない。その他の効果についても、第一実施形態と同様である。
【0087】
以上、第二実施形態について説明したが、その余の構成については、第一実施形態と同様である。第二実施形態のリアルタイムPCR装置200においても、第一実施形態のリアルタイムPCR装置100と同様に、PCRの温調サイクルを高速に行うことでリアルタイムPCRのトータルの処理時間を短縮することができるという効果を奏することができる。
【0088】
(その他の実施形態)
第一、第二の実施形態では、プロトコルの異なる検体を同時に試験することはできないが、例えば、温調領域をディスクの半径方向に分割して設け、さらに、ペルチェ部、伝熱板、ディスク押圧板等も、対応して半径方向に分割して設け、さらに、ディスク押圧板をそれぞれ独立して上下移動可能に構成すれば、プロトコルの異なる多検体を同時にPCR試験することができる。これらの構成は、上述の第一、第二実施形態の説明から容易に実現可能であるので、詳細な説明、図示は省略する。