(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-159042(P2021-159042A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】サツマイモ加工食品の製造方法並びに該方法により製造されるサツマイモ加工食品
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20210913BHJP
【FI】
A23L19/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-67153(P2020-67153)
(22)【出願日】2020年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】520118603
【氏名又は名称】関 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】関 一成
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG06
4B016LK08
4B016LK11
4B016LP03
4B016LP07
4B016LP11
4B016LP13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サツマイモが本来有する風味と食感を得られると共に、豊富な栄養価をそのまま備えた大学芋風の嗜好性の高いサツマイモ加工食品ならびにその製造方法の提供。
【解決手段】所定形状にカットして浸水を経て冷凍された後に低温油と高温油で二度揚げされたサツマイモ10の表面を、少なくとも飴タレをベースに含む一次タレ50と飴タレ又は香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る二次タレ52とで二重にコーティングする工程を含む、サツマイモ加工食品の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料としてサツマイモを使用した加工食品の製造方法であって、
皮付きの生のサツマイモを洗浄する洗浄工程と、
洗浄された生のサツマイモを所定形状の切片にカットするカット工程と、
所定形状にカットされた生のサツマイモの切片を水槽へ投入して浸水させる浸水工程と、
浸水後の生のサツマイモの切片を所定量ごと小分けに包装する包装工程と、
包装された生のサツマイモの切片を冷凍する冷凍工程と、
冷凍後のサツマイモの切片を低温域の食用油で揚げる一次揚げ工程と、
一次揚げされたサツマイモの切片を高温域の食用油で揚げる二次揚げ工程と、
二次揚げされたサツマイモの切片を揚げたての状態で飴タレをベースに含む一次タレに絡めて冷ますと共に表面を固める一次コーティング工程と、
一次タレでコーティングされたサツマイモの切片に飴タレまたは香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る二次タレを振りかける二次コーティング工程と、
により製造されることを特徴とするサツマイモ加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記カット工程において、所定形状にカットされた生のサツマイモの各切片が25〜50gであることを特徴とする請求項1に記載のサツマイモ加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記冷凍工程において、−10℃以下で瞬間冷凍されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサツマイモ加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記一次揚げ工程において、食用油の低温域が140〜160℃の範囲内であり、また、前記二次揚げ工程において、食用油の高温域が170〜200℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサツマイモ加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記一次コーティング工程において、一次タレが、飴タレをベースに果汁、果肉、粒状食品並びに食品粒化物のうち少なくとも一つが添加されて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサツマイモ加工食品の製造方法。
【請求項6】
上記請求項1乃至5に記載の方法により製造されるサツマイモ加工食品であって、
皮付きのまま所定形状にカットして浸水を経て冷凍された後に低温油と高温油で二度揚げされたサツマイモの表面を、少なくとも飴タレをベースに含む一次タレと飴タレまたは香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る二次タレとで二重にコーティングして成ることを特徴とするサツマイモ加工食品。
【請求項7】
前記一次タレが、飴タレをベースに、果汁、果肉、粒状食品並びに食品粒化物のうち少なくとも一つが添加されて成ることを特徴とする請求項6に記載のサツマイモ加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主原料としてサツマイモを使用した加工食品に関するもので、詳しくは、新規な製法と味付けを施して今までにない食感と風味を醸し出す大学芋風のサツマイモ加工食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サツマイモは、栄養価が高く、そのまま焼き芋として食されたり、食卓のおかずとして調理されたりしており、また、ほどよい甘味を有することから、菓子類の原料としても広く使用されている。特に菓子として使用される場合は、蒸した後に皮を剥いでペースト状に加工したものが使用される例が多く、和菓子・洋菓子の区別無く盛んに使用されている。
【0003】
上記のような具体例として、従来、栗様食品を人工的に製造し得る「栗様食品の製造方法」(特許文献1参照)が提案され、公知技術となっている。具体的には、皮を剥いだサツマイモを賽の目状に裁断した後に加熱蒸煮し、そこへカラギーナンや金属塩類などの添加物を適宜添加して混練してペーストを成形し、該ペーストを連続的に押し出し排出して栗形をした金型に充填する方法から成る技術提案である。
【0004】
また、従来における他の具体例として、サツマイモを使用した風味豊かな焼き菓子を製造し得る「サツマイモ菓子の製造方法」(特許文献2参照)が提案され、公知技術となっている。具体的には、サツマイモを焼いて形成した焼きペーストをさらに加工して原料ペーストを形成し、パイ生地により一定形状の扁平なパイシートを作成し、当該扁平なパイシートの上面に、上記原料ペーストを盛り上げて一定の形状に形成し、当該一定の形状に形成した原料ペーストの上面に卵黄を塗り、その上にゴマ又はケシの実を付けてオーブンで焼く方法から成る技術提案である。
【0005】
しかしながら、上記例示した従来における技術提案によれば、サツマイモの栄養価や風味を生かした食品を提供することはできるものの、原料となるサツマイモをペースト状にしてから更に加工するものであるため、製造手間が煩雑であると共に、サイツマイモが本来有する食感を得ることはできず、しかも本来的に栄養分を豊富に備える皮部分を剥いだサツマイモを使用するものであった。
【0006】
一方、原料となるサツマイモをペースト状とはせずに、そのまま使用して食する食べ物として、いわゆる大学芋と称される食品が古来より存在する。かかる大学芋は、皮付きのまま所定形状にカットされたサツマイモを油で揚げた後に糖蜜を絡め、必要に応じてゴマを振ることで完成する食品であり、大正から昭和の時代にかけて大学生に好んで食されたことが名前の由来となっている。この大学芋は、家庭でも簡単に作ることができ、栄養価も高く、甘さと芋独自の食感・食べ応えがあることから、おやつとしての人気も高いもので、主に関東地方など東日本でよく食されている。
【0007】
しかしながら、上記した大学芋は、調理者によって多少の甘さの強弱は存するものの、古来からほとんど味も形も変えずに現在に至っており、需要が低下しつつあるのが現状である。そこで、サツマイモをペースト状とはせずにそのまま使用しつつ、今までにない風味や味付けなど、現代風なアレンジ・工夫が施された新規な加工食品が強く望まれるところであった。
【0008】
上記のような新規加工食品の具体例として、従来、蒸煮さつま芋千切干を加工して現代感覚に即した外観・味覚を合わせ持たせた「蒸煮さつま芋千切干に副素材である別途調整の糊料・粘状溶液を添加してなる加工食品」(特許文献3参照)が提案され、公知技術となっている。具体的には、蒸煮さつま芋切干を角柱状になるように裁断したさつま芋千切干に、果実・種子・動植物の乾燥品からなる粒状・粉末、又はこれらの抽出エキスの配合調整品を添加する技術提案である。
【0009】
しかしながら、上記技術提案は、大学芋と同様に古来から作られている乾燥芋について、その風味や味付けをアレンジして新規の加工食品としたものであり、乾燥芋独特のねっとりした食感がそのまま残存するものであって、サツマイモ本来の食感が消されてしまう食品であった。
【0010】
また、サツマイモを使用した新規加工食品の具体例として、従来、いもの加工品に柑橘類のピール菓子の粒を付着させた「いも菓子」(特許文献4参照)が提案され、公知技術となっている。具体的には、いもケンピ、さつまいもフライ、さつまいもチップ、ポテトフライ、ポテトチップ等のいもの加工品及びかりんと類にゆず、レモン、伊予柑、ニューサマ− 、河内晩柑、甘夏、ブラッドオレンジ等の柑橘類のピール菓子の粒を付着させる技術提案である。
【0011】
しかしながら、上記技術提案は、柑橘の果皮をシロップなどで煮詰めて乾燥させたピール菓子を用意する手間がかかるもので、且つ、該ピール菓子を粒状にしたりする手間が煩雑であり、また、かかる粒状のピール菓子をいもの加工品に付着させるための手法について明確にされておらず、困難な作業を強いることが容易に想定し得る非現実的な食品であった。
【0012】
本出願人は、以上のような従来から提案されているサツマイモを主原料とする加工食品に着目し、製造・作業工程が容易で、且つ、サツマイモが本来有する風味はもちろんのこと、適度な食感を得られると共に、豊富な栄養価をそのまま備えた嗜好性の高い大学芋風の食品を提供できないものかという着想の下、これらを全て兼ね備えたサツマイモ加工食品ならびにその製法を開発し、本発明の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平1−108951号公報
【特許文献2】特開2006−20520号公報
【特許文献3】登録実用新案第3071525号公報
【特許文献4】登録実用新案第3178654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、サツマイモが本来有する風味と食感を得られると共に、豊富な栄養価をそのまま備えた大学芋風の嗜好性の高いサツマイモ加工食品ならびにその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、 原料としてサツマイモを使用した加工食品の製造方法であって、皮付きの生のサツマイモを洗浄する洗浄工程と、洗浄された生のサツマイモを所定形状の切片にカットするカット工程と、所定形状にカットされた生のサツマイモの切片を水槽へ投入して浸水させる浸水工程と、浸水後の生のサツマイモの切片を所定量ごと小分けに包装する包装工程と、包装された生のサツマイモの切片を冷凍する冷凍工程と、冷凍後のサツマイモの切片を低温域の食用油で揚げる一次揚げ工程と、一次揚げされたサツマイモの切片を高温域の食用油で揚げる二次揚げ工程と、二次揚げされたサツマイモの切片を揚げたての状態で飴タレをベースに含む一次タレに絡めて冷ますと共に表面を固める一次コーティング工程と、一次タレでコーティングされたサツマイモの切片に飴タレまたは香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る二次タレを振りかける二次コーティング工程と、により製造される手段を採る。
【0016】
また、本発明は、前記カット工程において、所定形状にカットされた生のサツマイモの各切片が25〜50gである手段を採る。
【0017】
さらに、本発明は、前記冷凍工程において、−10℃以下で瞬間冷凍される手段を採る。
【0018】
またさらに、本発明は、前記一次揚げ工程において、食用油の低温域が140〜160℃の範囲内であり、また、前記二次揚げ工程において、食用油の高温域が170〜200℃の範囲内である手段を採る。
【0019】
さらにまた、本発明は、前記一次コーティング工程において、一次タレが、飴タレをベースに果汁、果肉、粒状食品並びに食品粒化物のうち少なくとも一つが添加されて成る手段を採る。
【0020】
そしてまた、本発明は、上記の方法により製造されるサツマイモ加工食品であって、皮付きのまま所定形状にカットして浸水を経て冷凍された後に低温油と高温油で二度揚げされたサツマイモの表面を、少なくとも飴タレをベースに含む一次タレと飴タレまたは香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る二次タレとで二重にコーティングして成る手段を採る。
【0021】
そしてさらに、本発明は、前記一次タレが、飴タレをベースに、果汁、果肉、粒状食品並びに食品粒化物のうち少なくとも一つが添加されて成る手段を採る。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるサツマイモ加工食品とその製造方法によれば、原料となるサツマイモをカットするだけでペースト状としないため、サツマイモが本来有する風味と食感を残しつつ、元々有している栄養素をそのまま備えた栄養価の高いサツマイモ加工食品を提供することができる、といった優れた効果を奏するものである。
【0023】
また、本発明にかかるサツマイモ加工食品とその製造方法によれば、サツマイモ本来の甘味に一次タレに含まれる飴タレによる甘味が付加されて、適度の甘味を創出すると共に、該一次タレに果汁や果肉、粒状食品や食品粒化物が添加されることで、単に甘いだけでなく、今までにない変わった風味を創出することが可能であって、小児をはじめ若年層から高齢者まで幅広い世代に好まれ得る嗜好性の高いサツマイモ加工食品を提供することが可能である、といった優れた効果を奏する。
【0024】
さらに、本発明にかかるサツマイモ加工食品とその製造方法によれば、食用油で揚げる際に、低温域と高温域による二度揚げを採用することで、外側はカリッとした食感を有しながら、中はしっとり滑らかな食感に仕上がり、食感豊なサツマイモ加工食品を提供することが可能となる。
【0025】
またさらに、本発明にかかるサツマイモ加工食品によれば、各切片が25〜50gの範囲内で成形されることで、食用油で揚げた際に芯(生の部分)が残ることなく、且つ、サイツマイモが本来有する食感を有しつつ食し易い大学芋風のサツマイモ加工食品を提供することが可能となる。
【0026】
さらにまた、本発明にかかるサツマイモ加工食品とその製造方法によれば、原料のサツマイモを皮付きのまま使用することにより、皮部分に元来豊富に含まれている栄養素をも摂取することが可能であって、より栄養価の高いサツマイモ加工食品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明にかかるサツマイモ加工食品の製造工程を示すフロー図である。
【
図2】本発明にかかるサツマイモ加工食品の製造工程を図式化した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明にかかるサツマイモ加工食品の製造方法並びに該方法により製造されるサツマイモ加工食品は、所定形状にカットして浸水を経て冷凍された後に低温域と高温域の食用油40で二度揚げされたサツマイモ10の表面を、少なくとも飴タレをベースに含む一次タレ50と飴タレまたは香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る二次タレ51とで二重にコーティングして成る手段を採ったことを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかるサツマイモ加工食品の製造方法並びに該方法により製造されるサツマイモ加工食品1の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0029】
尚、本発明は、以下に述べる実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や材料、分量等の範囲内で、適宜変更することができる。
【0030】
図1は、本発明にかかるサツマイモ加工食品の製造工程を示すフロー図である。また、
図2は、本発明にかかるサツマイモ加工食品の製造工程を図式化した説明図である。
本発明にかかるサツマイモ加工食品の製造方法は、原料としてサツマイモ10を使用し、該サツマイモ10を洗浄工程S1、カット工程S2、浸水工程S3、包装工程S4、冷凍工程S5、一次揚げ工程S6、二次揚げ工程S7、一次コーティング工程S8、二次コーティング工程S9の各工程により適宜加工されて成るもので、その結果として本発明にかかるサツマイモ加工食品が完成されるものである。
【0031】
原料となるサツマイモ10は、その品種を問うものではなく、紅あづまや紅はるか、紅まさり、シルクスイート、ひめあやか、鳴門金時、紅さつま、安納芋など、あらゆる品種のサツマイモ10が使用可能であるが、品種によって糖度や含有水分量、加熱後の食感が異なることから、使用品種によって加工時における手法を適宜変更することを要する。
【0032】
はじめに、洗浄工程S1は、原料となる生のサツマイモ10を、皮付きの状態で水洗いにより洗浄する工程である。サツマイモ10の表皮に付着した泥等の汚れを落とすことで、そのまま食材として使用しても害のない状態に洗浄する。
【0033】
カット工程S2は、洗浄工程S1により綺麗に洗浄された生のサツマイモ10を、所定形状にカットして切片11を成形する工程である。このとき、生のサツマイモ10は、皮付きのままカットされてもよいし、皮を剥いでからカットされてもよい。尚、皮付きのままカットすることで、皮部分に元来豊富に含まれている栄養素をも摂取することが可能であって、より栄養価の高いサツマイモ加工食品1を提供することが可能となる。
【0034】
該カット工程S2において、成形される切片11の形状については、特に限定するものではなく、例えば図示の様に、サツマイモ10を縦半分にカットした後に所定厚幅を有しつつ横方向へカットすることで、各切片11を切面視略半月形状に成形することが考え得る。また、図示されていないが、例えばサツマイモ10の両端を切り落とした後に所定厚幅を有して輪切りにし、更に切面を1/4に十字カットすることで、切面視略扇形状に成形することも考え得る。それ以外にも、輪切りしたサツマイモ10の中央部分を円形や多角形など所定形状にくり抜き、厚めに面取りすることで、亀の甲形状乃至宝石カット形状とすることも可能である。各切片11の重量については、特に限定するものではないが、加熱調理の際に芯(生の部分)が残存せず、また、食べ易い大きさ等を考慮して、概ね25〜50gの範囲内とすることが好適である。かかる各切片11の重量は、カットする際の形状・厚幅により決定し得る。
【0035】
浸水工程S3は、カット工程S2により所定形状にカットされた生のサツマイモ10の切片11について、水20の張った水槽21へ投入することで、所定時間浸水させる工程である。使用される水20については、水道水その他一般に存するものを使用すれば足り、天然水であるか否か、また、硬度等について特に限定するものではない。かかる浸水工程S3を行う理由は大きく二つ存する。一つは、灰汁抜きである。カットされた生のサツマイモ10の切片11を浸水させることにより、灰汁抜きがなされ、後段の調理における変色防止に資することとなる。二つ目の理由は、不良品の選別である。浸水した際に水に浮いてきたり、黒く変色した切片11は、不良品として排除される。尚、浸水時間については、サツマイモ10の品種によっても異なるもので、特に限定するものではないが、灰汁抜きのために最低限必要な時間を考慮し、概ね1〜24時間程度浸水される。
【0036】
包装工程S4は、浸水工程S3にて水で浸水した後の生のサツマイモ10の切片11について、水切りした後、所定量ごと小分けに包装する工程である。包装に使用する容器30については、特に限定するものではないが、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂製の包装用袋が用いられる。尚、後段の冷凍工程S5において、サツマイモ10の含有水分が過剰に蒸発(昇華)して酸化してしまうことのないよう、容器30については密封し得るものが好適である。一の包装に小分けされるサツマイモ10の切片11の分量については、後段における冷凍工程S5での熱伝導効率や一回の揚げ調理における使用分量、最終完成品の包装単位などを考慮して適宜決定されるもので、特に限定するものではないが、例えば約1kg単位で小分けされる。
【0037】
冷凍工程S5は、包装工程S4によって包装された生のサツマイモ10の切片11を、包装された状態のまま冷凍する工程である。このとき、サツマイモ10の切片11を包装するための容器30は、既述のとおり密封し得る容器30が好適である。かかる冷凍工程S5を行う理由は大きく二つ存する。一つは、サツマイモ10の性質として低温化されると糖度を増すことによる。かかる性質は、冷凍されることでより効果を発揮するもので、冷凍によるサツマイモ10内の水分の適度な蒸発(昇華)に由来するものと思料される。二つ目の理由は、流通の都合によるものである。すなわち、サツマイモ10の収穫時期と本発明にかかる加工食品の製造時期との相違に関連し、年中の流通を可能にするためである。冷凍により、サツマイモ10は概ね1年間の賞味期限を有して保存が可能である。尚、密封された容器30により包装されたまま冷凍するのは、冷凍によるサツマイモ10内の水分の過度な蒸発(昇華)を防止するためである。本冷凍工程S5における冷凍温度については、特に限定するものではないが、サツマイモ10内の水分の適度な蒸発(昇華)を防止すると共に、長期の鮮度を保持するために瞬間冷凍されることが好ましく、−10℃以下で瞬間冷凍されることが望ましい。
【0038】
一次揚げ工程S6は、冷凍後のサツマイモ10の切片11を容器30から取り出し、低温域の食用油40で揚げる工程である。このとき、サツマイモ10は、冷凍状態のまま、低温域の食用油40に投入され、揚げられる。使用される食用油40については、特に限定するものではなく、植物性と動物性とを問うものではない。低温域の食用油40の温度は、概ね140〜160℃の範囲内である。かかる温度域にて揚げることで、長時間揚げてもサツマイモ10の表面を焦がすことなく、内部まで充分に加熱することが可能となる。尚、揚げる時間については、サツマイモ10の各切片11が冷凍状態から内部まで充分に加熱され、全体が加熱殺菌されると共に、芯(生の部分)が残存しない状態にまで加熱調理されることに鑑みると、概ね9〜13分程度となる。
【0039】
二次揚げ工程S7は、一次揚げ工程S6にて低温域の食用油40で一次揚げされたサツマイモ10の切片11を、再度、高温域の食用油40で揚げる工程である。このとき、サツマイモ10の切片11は、一次揚げ工程S6にて揚げられた後の加熱状態のまま、高温域の食用油40に投入され、揚げられる。使用される食用油40については、一次揚げ工程S6と同様、特に限定するものではなく、植物性と動物性とを問うものではない。高温域の食用油40の温度は、概ね170〜200℃の範囲内である。かかる温度域にて揚げることで、サツマイモ10の切片11の表面をカリッと仕上げることが可能となる。尚、揚げる時間については、焦げることなく表面をカリッと仕上げることに鑑みると、概ね1〜3分程度となる。
【0040】
一次コーティング工程S8は、二次揚げ工程S7にて高温域の食用油40で二次揚げされたサツマイモ10の切片11を、一次タレ50に絡める工程である。このとき、サツマイモ10の切片11は、二次揚げ工程S8にて揚げられた後の加熱状態(揚げたて)のまま、一次タレ50と絡められる。一次タレ50は、少なくとも飴タレをベースに含むもので、該飴タレのみから成るもののほか、該飴タレをベースにレモンなど柑橘系果物その他の果物の果汁や果肉、ゴマ等の粒状食品、粗砕したピーナッツやチョコレート菓子の粉砕物等の食品粒化物などが選択的に一乃至複数添加されて成るものが考え得る。かかる一次タレ50を絡めることで、飴タレによりサツマイモ10の切片11の表面が固められると同時に、加熱状態の切片11を冷ますことができる。また、一次タレ50として飴タレに種々果汁や果肉、粒状食品、食品粒化物が添加されることで、甘味に加えて添加された食品の味や香りを付加することが可能であって、新たな風味を創出し得ることとなる。尚、飴タレとそれ以外との配合比率については任意であり、最終的な完成品の風味・味付等を考慮して、適宜決定される。
【0041】
二次コーティング工程S9は、一次コーティング工程S8により一次タレ50で一次的にコーティングされたサツマイモ10の切片11に、二次タレ52を振りかける工程である。このとき、サツマイモ10の切片11は、一次コーティング工程S8にて一次タレ50と絡められることで冷めた状態となっており、この状態にて二次タレ52が振りかけられることとなる。二次タレ52は、飴タレあるいは香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る。香味タレとは、香りや風味を添加するもので、レモン果汁などの果物抽出液や食品香料、コーヒーや紅茶などの飲料等が挙げられる。かかる二次タレ52を振りかけることで、甘味を増加させたり、振りかけられた食品の味や香りが添加されて、今までにない新たな風味を創出し得ることとなる。尚、飴タレと香味タレとを混合する際の配合比率については任意であり、最終的な完成品の風味・味付等を考慮して、適宜決定される。
【0042】
以上の各工程を経て製造される本発明にかかるサツマイモ加工食品は、所定形状にカットして浸水を経て冷凍された後に低温域と高温域の食用油40で二度揚げされたサツマイモ10の表面に、少なくとも飴タレをベースに含む一次タレ50と飴タレまたは香味タレのいずれか若しくはそれらの混合から成る二次タレ52とで二重にコーティングされて成る、今までにない新規なサツマイモ加工食品を提供するものである。
【0043】
このように、本発明によれば、カット・浸水・冷凍・揚げ・味付けという過程で調理されるものであって、特別に煩雑な工程を経ることなく製造が容易で、サツマイモ10が本来有する風味と食感を得られると共に、元々有している豊富な栄養素をそのまま備えた栄養価の高い食品を提供し得るものであり、また、低温域と高温域の食用油40による二度揚げを採用することで、外側はカリッとした食感を有しながら、中はしっとり滑らかな食感に仕上がり、食感豊なサツマイモ加工食品を提供することが可能となり、さらには、一次タレ50に果汁や果肉、粒状食品や食品粒化物が添加されたり、二次タレ52に香味タレが使用されることで、単に甘いだけの従来の大学芋とは異なり、今までにない変わった風味を創出することが可能であって、小児をはじめ若年層から高齢者まで幅広い世代に好まれ得る嗜好性の高い大学芋風のサツマイモ加工食品を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、伝統的な大学芋を現代風にアレンジした新規な加工食品であって、栄養価が高いだけでなく、小児をはじめ若年層から高齢者まで幅広い世代に好まれ得る嗜好性の高い食品であることから、本発明にかかる「サツマイモ加工食品」の産業上の利用可能性は極めて大であるものと思料する。
【符号の説明】
【0045】
10 サツマイモ
11 切片
20 水
21 水槽
30 容器
40 食用油
50 一次タレ
52 二次タレ
S1 洗浄工程
S2 カット工程
S3 浸水工程
S4 包装工程
S5 冷凍工程
S6 一次揚げ工程
S7 二次揚げ工程
S8 一次コーティング工程
S9 二次コーティング工程