【課題】熱線遮蔽性能を有する天井カーテンを使用する場合であっても、天井カーテン自体等が熱の発生源となることに起因する環境の温度上昇を回避又は抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】環境制御システム1は、太陽光線中の赤外領域の光を吸収又は反射する熱線遮蔽性能を有する天井カーテン2と、上部環境に位置する第1ミスト噴霧器を有する第1冷却装置と、下部環境に位置する第2ミスト噴霧器を有する第2冷却装置と、天井カーテン、第1冷却装置、及び第2冷却装置を制御する制御装置4と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
  (本開示の基礎となった知見)
  ビニルハウス等を用いた施設栽培において、植物の栽培環境を最適化するための環境制御システムが研究されている。このような環境制御システムでは、ビニルハウス内の温度、湿度、及び日射量等の測定データに基づいて、空気調和機及び天井カーテン等の環境制御機器が制御されることがある。
 
【0010】
  上記特許文献1には、温室の内部環境を制御するための環境制御システムが開示されている。温室は、内部で植物を栽培するために使用される。当該環境制御システムは、開閉状態によって温室の内部環境への日射を制御する天井カーテンを備えている。天井カーテンには、熱線遮蔽シートが使用されている。熱線遮蔽シートは、太陽光線中の赤外領域の光を吸収又は反射する熱線遮蔽性能を有する、
 
【0011】
  上記特許文献1に開示された環境制御システムにおいて、熱線遮蔽シートを用いた天井カーテンが閉状態で日射に晒され続けると、天井カーテン自体に熱が蓄積され、また、温室の内部環境のうち閉状態の天井カーテンより上方の上部環境に熱が蓄積される。その結果、天井カーテン自体及び上部環境が熱の発生源となることによって、温室の内部環境全体の温度が適正値より上昇するおそれがある。上記特許文献1には、その対策について何ら開示されていない。
 
【0012】
  このような課題を解決するために、本発明者は、温室の内部環境のうち閉状態の天井カーテンより下方の下部環境に加えて、上部環境にも冷却用のミスト噴霧器を配置することにより、上部環境のミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって、天井カーテン自体等が熱の発生源となることに起因する環境の温度上昇を回避又は抑制できるとの知見を得て、本開示を想到するに至った。
 
【0013】
  次に、本開示の各態様について説明する。
 
【0014】
  本開示の一態様に係る環境制御システムは、屋内の環境を制御する環境制御システムであって、太陽光線中の赤外領域の光を吸収又は反射する熱線遮蔽性能を有し、開閉状態によって前記環境への日射を制御する天井カーテンと、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより上方の上部環境に位置する第1ミスト噴霧器を有し、当該第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記上部環境を冷却する第1冷却装置と、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより下方の下部環境に位置する第2ミスト噴霧器を有し、当該第2ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記下部環境を冷却する第2冷却装置と、前記天井カーテン、前記第1冷却装置、及び前記第2冷却装置を制御する制御装置と、を備える。
 
【0015】
  この態様によれば、環境制御システムは第2冷却装置に加えて第1冷却装置を備えている。第1冷却装置は、第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって上部環境を冷却する。従って、制御装置が天井カーテン及び第2冷却装置に加えて第1冷却装置を制御することにより、必要に応じて第1冷却装置によって天井カーテン及び上部環境を冷却することができる。その結果、天井カーテン自体及び上部環境が熱の発生源となることに起因する環境全体の温度上昇を回避又は抑制することが可能となる。
 
【0016】
  上記態様において、前記制御装置は、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを個別に制御可能である。
 
【0017】
  この態様によれば、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち上部環境のみを冷却することができる。また、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち下部環境のみを冷却することができる。
 
【0018】
  上記態様において、前記環境制御システムは、前記上部環境に関する所定の環境状態を検出する上部環境センサと、前記下部環境に関する前記環境状態を検出する下部環境センサと、をさらに備え、前記制御装置は、前記上部環境センサが検出した前記環境状態の値が第1の閾値以上である場合に、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧を実行し、前記下部環境センサが検出した前記環境状態の値が、前記第1の閾値と同一又は異なる第2の閾値以上である場合に、前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧を実行する。
 
【0019】
  この態様によれば、温度センサ又は日射量センサ等の上部環境センサを上部環境に配置し、同様の下部環境センサを下部環境に配置することによって、上部環境及び下部環境の各々の環境状態に応じて、ミスト噴霧の実行を細密に制御することが可能となる。
 
【0020】
  上記態様において、前記環境に関する所定の環境状態を検出する環境センサをさらに備え、前記制御装置は、前記環境センサが検出した前記環境状態の値が所定の閾値以上である場合に、前記第1ミスト噴霧器及び前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧を実行する。
 
【0021】
  この態様によれば、上部環境への上部環境センサの配置を省略できるため、システム構成の簡略化及びシステム導入コストの削減を図ることが可能となる。
 
【0022】
  上記態様において、前記制御装置は、前記天井カーテンが閉状態である場合に、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧を実行する。
 
【0023】
  この態様によれば、天井カーテンが閉状態ということは、環境への日射量を抑制する必要がある状況、つまり適正値よりも気温が高い又は日射量が多い等の状況ということである。かかる状況において天井カーテンが閉状態で日射に晒され続けると、天井カーテン自体及び上部環境に熱が容易に蓄積される。従って、天井カーテンが閉状態であることを第1ミスト噴霧器によるミスト噴霧の実行条件とすることにより、天井カーテン及び上部環境を効果的に冷却することが可能となる。また、上部環境への上部環境センサの配置を省略できるため、システム構成の簡略化及びシステム導入コストの削減を図ることが可能となる。
 
【0024】
  上記態様において、前記制御装置は、前記天井カーテンが開状態である場合に、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧を実行しない。
 
【0025】
  この態様によれば、天井カーテンが開状態ということは、環境への日射量を抑制する必要がない状況、つまり、気温又は日射量等が適正値に近い状況、あるいは適正値よりも気温が低い又は日射量が少ない等の状況ということである。また、天井カーテンが開状態である場合には、天井カーテンへの日射に起因して天井カーテン自体及び上部環境に熱が蓄積される影響はわずかである。従って、天井カーテンが開状態である場合には第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧を実行しないことにより、環境が不要に冷却されるという事態を回避できる。
 
【0026】
  上記態様において、前記第1ミスト噴霧器及び前記第2ミスト噴霧器にミスト生成用の水分を供給するポンプをさらに備え、前記制御装置は、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧及び前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧を双方とも実行する場合には、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを同時に実行する。
 
【0027】
  この態様によれば、第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを同時に実行することにより、制御を単純化できるとともに、上部環境及び下部環境の双方を早期に冷却することが可能となる。ポンプの消費電力量の削減を考慮する必要がない場合に有効である。
 
【0028】
  上記態様において、前記第1ミスト噴霧器及び前記第2ミスト噴霧器にミスト生成用の水分を供給するポンプをさらに備え、前記制御装置は、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧及び前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧を双方とも実行する場合には、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを時分割で交互に実行する。
 
【0029】
  この態様によれば、第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを時分割で交互に実行することにより、両噴霧器からのミスト噴霧は同時には実行されないため、ポンプの消費電力量を削減することが可能となる。
 
【0030】
  上記態様において、前記第1ミスト噴霧器及び前記第2ミスト噴霧器にミスト生成用の水分を供給するポンプをさらに備え、前記制御装置は、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧及び前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧を双方とも実行する場合には、前記第1ミスト噴霧器及び前記第2のミスト噴霧器に優先度を設定し、前記第1ミスト噴霧器及び前記第2のミスト噴霧器のうち前記優先度の高い一方によるミストの噴霧を先に実行し、前記優先度の低い他方によるミストの噴霧を後に実行する。
 
【0031】
  この態様によれば、第1ミスト噴霧器及び第2のミスト噴霧器のうち優先度の高い一方によるミストの噴霧を先に実行し、優先度の低い他方によるミストの噴霧を後に実行することにより、両噴霧器からのミスト噴霧は同時には実行されないため、ポンプの消費電力量を削減することが可能となる。
 
【0032】
  本開示の一態様に係る環境制御装置は、屋内の環境を制御する環境制御システムが備える環境制御装置であって、前記環境制御システムは、太陽光線中の赤外領域の光を吸収又は反射する熱線遮蔽性能を有し、開閉状態によって前記環境への日射を制御する天井カーテンと、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより上方の上部環境に位置する第1ミスト噴霧器を有し、当該第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記上部環境を冷却する第1冷却装置と、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより下方の下部環境に位置する第2ミスト噴霧器を有し、当該第2ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記下部環境を冷却する第2冷却装置と、をさらに備え、前記環境制御装置は、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧の実行条件と、前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧の実行条件とを判定する判定部と、前記判定部による判定の結果に基づいて、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と、前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを個別に制御する制御部と、を備える。
 
【0033】
  この態様によれば、環境制御システムは第2冷却装置に加えて第1冷却装置を備えている。第1冷却装置は、第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって上部環境を冷却する。従って、環境制御装置が天井カーテン及び第2冷却装置に加えて第1冷却装置を制御することにより、必要に応じて第1冷却装置によって天井カーテン及び上部環境を冷却することができる。その結果、天井カーテン自体及び上部環境が熱の発生源となることに起因する環境全体の温度上昇を回避又は抑制することが可能となる。
 
【0034】
  また、制御部は、第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と、第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを個別に制御する。従って、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち上部環境のみを冷却することができる。また、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち下部環境のみを冷却することができる。
 
【0035】
  本開示の一態様に係るプログラムは、屋内の環境を制御する環境制御システムが備える制御装置に搭載されるコンピュータを、所定の手段として機能させるためのプログラムであって、前記環境制御システムは、太陽光線中の赤外領域の光を吸収又は反射する熱線遮蔽性能を有し、開閉状態によって前記環境への日射を制御する天井カーテンと、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより上方の上部環境に位置する第1ミスト噴霧器を有し、当該第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記上部環境を冷却する第1冷却装置と、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより下方の下部環境に位置する第2ミスト噴霧器を有し、当該第2ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記下部環境を冷却する第2冷却装置と、をさらに備え、前記コンピュータを、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧の実行条件と、前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧の実行条件とを判定する判定手段と、前記判定手段による判定の結果に基づいて、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と、前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを個別に制御する制御手段と、として機能させるためのプログラムである。
 
【0036】
  この態様によれば、環境制御システムは第2冷却装置に加えて第1冷却装置を備えている。第1冷却装置は、第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって上部環境を冷却する。従って、制御手段が天井カーテン及び第2冷却装置に加えて第1冷却装置を制御することにより、必要に応じて第1冷却装置によって天井カーテン及び上部環境を冷却することができる。その結果、天井カーテン自体及び上部環境が熱の発生源となることに起因する環境全体の温度上昇を回避又は抑制することが可能となる。
 
【0037】
  また、制御手段は、第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と、第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを個別に制御する。従って、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち上部環境のみを冷却することができる。また、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち下部環境のみを冷却することができる。
 
【0038】
  本開示の一態様に係る環境制御方法は、屋内の環境を制御する環境制御システムが備える制御装置が実行する環境制御方法であって、前記環境制御システムは、太陽光線中の赤外領域の光を吸収又は反射する熱線遮蔽性能を有し、開閉状態によって前記環境への日射を制御する天井カーテンと、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより上方の上部環境に位置する第1ミスト噴霧器を有し、当該第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記上部環境を冷却する第1冷却装置と、前記環境のうち閉状態の前記天井カーテンより下方の下部環境に位置する第2ミスト噴霧器を有し、当該第2ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって前記下部環境を冷却する第2冷却装置と、をさらに備え、前記制御装置が、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧の実行条件と、前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧の実行条件とを判定し、前記判定の結果に基づいて、前記第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と、前記第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを個別に制御する。
 
【0039】
  この態様によれば、環境制御システムは第2冷却装置に加えて第1冷却装置を備えている。第1冷却装置は、第1ミスト噴霧器が噴霧するミストによる気化冷却によって上部環境を冷却する。従って、制御装置が天井カーテン及び第2冷却装置に加えて第1冷却装置を制御することにより、必要に応じて第1冷却装置によって天井カーテン及び上部環境を冷却することができる。その結果、天井カーテン自体及び上部環境が熱の発生源となることに起因する環境全体の温度上昇を回避又は抑制することが可能となる。
 
【0040】
  また、制御装置は、第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧と、第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧とを個別に制御する。従って、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第1ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち上部環境のみを冷却することができる。また、第1ミスト噴霧器及び第2ミスト噴霧器のうち第2ミスト噴霧器によるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境及び下部環境のうち下部環境のみを冷却することができる。
 
【0041】
  本開示は、このような方法に含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現し、あるいは、このコンピュータプログラムに基づいて動作する装置又はシステムとして実現することもできる。また、このようなコンピュータプログラムを、CD−ROM等のコンピュータ読取可能な不揮発性の記録媒体として流通させ、あるいは、インターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは言うまでもない。
 
【0042】
  なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、全ての実施形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
 
【0043】
  (本開示の実施形態)
  以下、本開示の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
 
【0044】
  図1及び
図2は、本開示の実施形態に係る環境制御システム1の適用例を模式的に示す側面図及び上面図である。環境制御システム1は、植物を栽培するための施設栽培設備の一例であるビニルハウス100内に構築されている。ビニルハウス100の屋内が、植物を栽培するための環境3(上部環境3U及び下部環境3L)となる。
 
【0045】
  環境制御システム1は、環境制御装置としての制御装置4を備えている。制御装置4は、CPU12等の情報処理装置と、ROM、RAM、及びハードディスク装置等の記憶部13とを備えている。記憶部13には、CPU12が実行するプログラム14が記憶されている。
 
【0046】
  また、環境制御システム1は、開閉の状態によって環境3への日射を制御する一対の天井カーテン2を備えている。天井カーテン2は、ビニルハウス100内部の天井付近に設けられており、ビニルハウス100の天井から屋内に入射する太陽光を、天井カーテン2の材質に応じた一定の割合(例えば光透過率50%)で遮ることが可能である。環境3のうち閉状態の天井カーテン2より上方の領域が上部環境3Uとなり、環境3のうち閉状態の天井カーテン2より下方の領域が下部環境3Lとなる。また、環境制御システム1は、天井カーテン2の複数の箇所に連結された紐11を巻き取るための直管10と、直管10を回転させるモータ(不図示)とを備えている。モータは、制御装置4から入力される制御信号D4(
図6参照)に基づいて直管10を回転駆動することにより、天井カーテン2の開閉動作を行う。開状態の天井カーテン2はロッド9に巻かれて収納されており、紐11を巻き取る方向にモータが直管10を回転駆動することにより、天井カーテン2はロッド9から繰り出されて閉状態となる。なお、天井カーテン2の開閉方法は、この例に限られず、任意の方法であって良い。例えば、カーテンに取り付けたワイヤーをモータ等の駆動部が引っ張ることでカーテンを折り畳む構造としても良い。
 
【0047】
  また、環境制御システム1は、上部環境3Uに配置された上部温度センサ6Uと、下部環境3Lに配置された下部温度センサ6Lとを備えている。上部温度センサ6Uは、上部環境3Uの温度を検出し、その検出した温度を示す上部温度データD1U(
図6参照)を制御装置4に入力する。下部温度センサ6Lは、下部環境3Lの温度を検出し、その検出した温度を示す下部温度データD1L(
図6参照)を制御装置4に入力する。
 
【0048】
  また、環境制御システム1は、上部環境3Uを冷却するための上部冷却装置71Uと、下部環境3Lを冷却するための下部冷却装置71Lと、ポンプ5とを備えている。上部冷却装置71Uは、上部環境3Uに配置された複数の上部ミスト噴霧器8Uと、各上部ミスト噴霧器8Uにミスト生成用の水分(通常は水)を供給する上部導水管70Uと、ポンプ5から上部導水管70Uへの水分の供給の可否及び供給量を制御するための上部弁7Uとを備えている。上部冷却装置71Uは、上部ミスト噴霧器8Uが噴霧するミストによる気化冷却によって、上部環境3Uを冷却する。同様に、下部冷却装置71Lは、下部環境3Lに配置された複数の下部ミスト噴霧器8Lと、各下部ミスト噴霧器8Lにミスト生成用の水分を供給する下部導水管70Lと、ポンプ5から下部導水管70Lへの水分の供給の可否及び供給量を制御するための下部弁7Lとを備えている。下部冷却装置71Lは、下部ミスト噴霧器8Lが噴霧するミストによる気化冷却によって、下部環境3Lを冷却する。ポンプ5は、制御装置4から入力される制御信号D3(
図6参照)によって、駆動が制御される。上部弁7U及び下部弁7Lは、制御装置4からそれぞれ入力される制御信号D2U,D2L(
図6参照)によって、駆動が制御される。上部弁7U及び下部弁7Lは、例えば電磁弁を用いて構成されている。なお、
図1には、上部冷却装置71U及び下部冷却装置71Lが一つのポンプ5を共用する例を示したが、上部冷却装置71U及び下部冷却装置71Lは個別にポンプ5を備えても良い。
 
【0049】
  図3は、第1の例に係る天井カーテン2の構造の一部分を拡大して示す平面図である。天井カーテン2は、短冊状の複数の熱線遮蔽フィルム20が複数の糸25を用いて織り込まれた構造を備えている。等間隔かつ平行に配列された複数の熱線遮蔽フィルム20に対し、熱線遮蔽フィルム20の幅方向(
図3では横方向)に沿って複数の糸25を等間隔で通すことによって、複数の熱線遮蔽フィルム20は複数の糸25を用いて織り込まれている。
 
【0050】
  図4は、熱線遮蔽フィルム20の一部分を拡大して示す斜視図である。熱線遮蔽フィルム20は、熱線遮蔽層31と透明層32との二層構造を有する。透明シートの一方の表面のみに熱線遮蔽材を塗布し、それを短冊状に切断することによって、熱線遮蔽フィルム20が得られる。透明層32の一方の表面のみに熱線遮蔽層31が形成されることにより、熱線遮蔽フィルム20は、熱線遮蔽層31が露出する第1表面21と、透明層32が露出する第2表面22とを有している。
 
【0051】
  図3に示した平面図では、第1表面21が紙面に表れており、紙面には表れない第1表面21の反対側の面が第2表面22となる。
図3において糸25を表す直線のうち破線で示す部分は、糸25が、紙面には表れない第2表面22側を通っていることを意味する。
 
【0052】
  複数の糸25の各々は、平行に配列された複数の熱線遮蔽フィルム20の第1表面21側と第2表面22側とを交互に通っている。例えば
図3の一番上の糸30は、左側の熱線遮蔽フィルム20から順に、第1表面21側→第2表面22側→第1表面21側→第2表面22側と、第1表面21側と第2表面22側とを交互に通っている。
 
【0053】
  本開示において、「透明」とは、400〜700nmの波長を有する光(即ち可視光)の少なくとも一部が透過することを意味する。400nm未満の波長を有する紫外光が遮蔽される場合であっても、可視光が透過する限り、「透明」という用語が用いられる。同様に、700nm超の波長を有する赤外光が遮蔽される場合であっても、可視光が透過する限り、「透明」という用語が用いられる。
 
【0054】
  透明層32の材料は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、又はポリアクリロニトリルである。
 
【0055】
  熱線遮蔽層31は、太陽光線中の赤外領域の光を吸収又は反射することにより熱線遮蔽性能を有する有機色素が、樹脂に混入されたものである。樹脂は、例えば、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、又はポリアクリロニトリルである。
 
【0056】
  熱線遮蔽性能を有する有機色素は、光合成に有効な光の波長領域、即ち可視光の波長領域よりも長い波長領域に光の最大吸収波長を有することが望ましい。具体的には、光合成に有効な可視光の波長領域は400〜700nmであるので、有機色素は700nm超の波長領域に光の最大吸収波長を有することが望ましい。より望ましくは、有機色素は800nm以上の波長領域に光の最大吸収波長を有する。一方、有機色素は可視光を吸収しにくいことが望ましい。換言すれば、可視光は熱線遮蔽層31を透過することが望ましい。そのため、有機色素の最大吸収波長の下限は、可視光の波長領域を考慮して適切値に設定される。
 
【0057】
  有機色素は、例えば、ニッケルジチオール錯体等の有機金属錯体、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、又はジイモニウム系化合物である。二種類以上の有機色素が混合されて用いられても良い。
 
【0058】
  熱線遮蔽層31は、有機色素の含有量に応じて熱線遮蔽率が増加する。しかし、有機色素の含有量が増加すると、熱線遮蔽層31の可視光の透過率が低下する。そのため、熱線遮蔽層31における有機色素の含有量は、熱線遮蔽層31の主成分である樹脂に対して、0.1〜50重量%の範囲に設定することが望ましい。
 
【0059】
  図5は、第2の例に係る天井カーテン2の構造の一部分を拡大して示す平面図である。天井カーテン2は、短冊状の複数の熱線遮蔽フィルム20が複数の糸41〜43を用いて編み込まれた構造を備えている。等間隔かつ平行に配列された複数の熱線遮蔽フィルム20に対し、第1表面21側の糸41と第2表面22側の糸42とを、熱線遮蔽フィルム20同士の隙間領域で糸43を用いて結合することによって、複数の熱線遮蔽フィルム20は複数の糸41〜43を用いて編み込まれている。糸41は、熱線遮蔽フィルム20の長さ方向に沿って第1表面21上を蛇行することにより、第1表面21側で熱線遮蔽フィルム20の長さ方向の複数の箇所を幅方向に横断している。同様に、糸42は、熱線遮蔽フィルム20の長さ方向に沿って第2表面22上を蛇行することにより、第2表面22側で熱線遮蔽フィルム20の長さ方向の複数の箇所を幅方向に横断している。但し、この例では平面視で糸42は糸41に完全に重なっているため、
図5には糸42は表れていない。熱線遮蔽フィルム20同士の隙間領域において、熱線遮蔽フィルム20からはみ出ている糸41,42のループ部分を縫うように糸43が通されることにより、1本の糸43によって2本の糸41と2本の糸42とが結合されている。
 
【0060】
  図6は、CPU12が備える機能を示すブロック図である。CPU12が記憶部13からプログラム14を読み出して実行することにより、CPU12は、判定部50、上部温度取得部51、下部温度取得部52、上部弁制御部53、下部弁制御部54、ポンプ制御部55、及びモータ制御部56として機能する。CPU12が上部弁制御部53と下部弁制御部54とを別個に備えることにより、上部弁7Uと下部弁7Lとを個別に制御することが可能である。
 
【0061】
  図7は、CPU12が実行する処理の流れを示すフローチャートである。CPU12は、
図7に示す処理を所定のサンプリング間隔(例えば数秒〜数分間隔)で繰り返し実行する。なお、初期状態において、ポンプ5は駆動が停止されており、上部弁7U及び下部弁7Lはいずれも遮断状態に設定されているものとする。
 
【0062】
  まずステップS101において上部温度取得部51は、上部温度センサ6Uから上部温度データD1Uを取得する。判定部50は、上部温度データD1Uで示される上部環境3Uの温度T1と、所定の閾値T0とを比較する。閾値T0は、栽培対象である植物の品種等に応じて温度の適正値が予め設定されている。
 
【0063】
  上部環境3Uの温度T1が閾値T0以上である場合(ステップS101:YES)には、次にステップS102において下部温度取得部52は、下部温度センサ6Lから下部温度データD1Lを取得する。判定部50は、下部温度データD1Lで示される下部環境3Lの温度T2と、閾値T0とを比較する。なお、ステップS102(及び後述のステップS107)で使用される閾値T0は、ステップS101で使用される閾値T0と同一であっても良いし、異なっていても良い。
 
【0064】
  下部環境3Lの温度T2が閾値T0以上である場合(ステップS102:YES)には、次にステップS103においてポンプ制御部55は、制御信号D3によってポンプ5の駆動を開始(ON)する。
 
【0065】
  次にステップS104において上部弁制御部53は、制御信号D2Uによって上部弁7Uを導通状態(ON)に切り替える。また、これと同時に下部弁制御部54は、制御信号D2Lによって下部弁7Lを導通状態に切り替える。これにより、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lからのミストの噴霧が開始される。つまり、上部冷却装置71U及び下部冷却装置71Lによる上部環境3U及び下部環境3Lの冷却が開始される。
 
【0066】
  下部温度データD1Lで示される下部環境3Lの温度T2が閾値T0未満である場合(ステップS102:NO)には、次にステップS105においてポンプ制御部55は、制御信号D3によってポンプ5の駆動を開始する。
 
【0067】
  次にステップS106において上部弁制御部53は、制御信号D2Uによって上部弁7Uを導通状態に切り替える。これにより、上部ミスト噴霧器8Uからのミストの噴霧が開始される。つまり、上部冷却装置71Uによる上部環境3Uの冷却が開始される。
 
【0068】
  上部温度データD1Uで示される上部環境3Uの温度T1が閾値T0未満である場合(ステップS101:NO)には、次にステップS107において下部温度取得部52は、下部温度センサ6Lから下部温度データD1Lを取得する。判定部50は、下部温度データD1Lで示される下部環境3Lの温度T2と、閾値T0とを比較する。
 
【0069】
  下部環境3Lの温度T2が閾値T0以上である場合(ステップS107:YES)には、次にステップS108においてポンプ制御部55は、制御信号D3によってポンプ5の駆動を開始する。
 
【0070】
  次にステップS109において下部弁制御部54は、制御信号D2Lによって下部弁7Lを導通状態に切り替える。これにより、下部ミスト噴霧器8Lからのミストの噴霧が開始される。つまり、下部冷却装置71Lによる下部環境3Lの冷却が開始される。
 
【0071】
  下部環境3Lの温度T2が閾値T0未満である場合(ステップS107:NO)には、ポンプ5、上部弁7U、及び下部弁7LはいずれもONされることなく、処理が終了する。
 
【0072】
  なお、以上の説明では、上部環境3U及び下部環境3Lの温度T1,T2を検出する上部温度センサ6U及び下部温度センサ6Lを用いたが、温度センサに限らず、任意の環境状態を検出する環境センサを用いれば良い。例えば、日射量を検出する日射量センサを用いても良い。
 
【0073】
  本実施形態によれば、環境制御システム1は、下部冷却装置71L(第2冷却装置)に加えて上部冷却装置71U(第1冷却装置)を備えている。上部冷却装置71Uは、上部ミスト噴霧器8U(第1ミスト噴霧器)が噴霧するミストによる気化冷却によって上部環境3Uを冷却する。従って、制御装置4が天井カーテン2及び下部冷却装置71Lに加えて上部冷却装置71Uを制御することにより、必要に応じて上部冷却装置71Uによって天井カーテン2及び上部環境3Uを冷却することができる。その結果、天井カーテン2自体及び上部環境3Uが熱の発生源となることに起因する環境3全体の温度上昇を回避又は抑制することが可能となる。
 
【0074】
  また、本実施形態によれば、制御装置4は、上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧と下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧とを個別に制御可能である。従って、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lのうち上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境3U及び下部環境3Lのうち上部環境3Uのみを冷却することができる。また、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lのうち下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧のみを行うことにより、上部環境3U及び下部環境3Lのうち下部環境3Lのみを冷却することができる。
 
【0075】
  また、本実施形態によれば、上部温度センサ6U等の上部環境センサを上部環境3Uに配置し、下部温度センサ6L等の下部環境センサを下部環境3Lに配置することによって、上部環境3U及び下部環境3Lの各々の環境状態に応じて、ミスト噴霧の実行を細密に制御することが可能となる。
 
【0076】
  また、本実施形態によれば、上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧と下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧とを同時に実行することにより、制御を単純化できるとともに、上部環境3U及び下部環境3Lの双方を早期に冷却することが可能となる。ポンプ5の消費電力量の削減を考慮する必要がない場合に有効である。
 
【0077】
  (第1変形例)
  第1変形例は、上記の実施形態に適用することが可能である。第1変形例では、
図1に示した構成から上部温度センサ6Uが省略され、
図6に示した機能から上部温度取得部51が省略される。
 
【0078】
  図8は、CPU12が実行する処理の流れを示すフローチャートである。まずステップS201において下部温度取得部52は、下部温度センサ6Lから下部温度データD1Lを取得する。判定部50は、下部温度データD1Lで示される下部環境3Lの温度T2と、閾値T0とを比較する。本変形例では上部温度センサ6Uが省略されているため、下部環境3Lの温度T2は環境3全体の温度を代表する。
 
【0079】
  下部環境3Lの温度T2が閾値T0以上である場合(ステップS201:YES)には、次にステップS202においてポンプ制御部55は、制御信号D3によってポンプ5の駆動を開始する。
 
【0080】
  次にステップS203において上部弁制御部53は、制御信号D2Uによって上部弁7Uを導通状態に切り替える。また、これと同時に下部弁制御部54は、制御信号D2Lによって下部弁7Lを導通状態に切り替える。これにより、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lからのミストの噴霧が開始される。つまり、上部冷却装置71U及び下部冷却装置71Lによる上部環境3U及び下部環境3Lの冷却が開始される。
 
【0081】
  下部環境3Lの温度T2が閾値T0未満である場合(ステップS201:NO)には、ポンプ5、上部弁7U、及び下部弁7LはいずれもONされることなく、処理が終了する。
 
【0082】
  本変形例によれば、制御装置4は、下部温度センサ6Lが検出した下部環境3Lの温度T2が閾値T0以上である場合に、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧を実行する。従って、上部環境3Uへの上部温度センサ6Uの配置を省略できるため、システム構成の簡略化及びシステム導入コストの削減を図ることが可能となる。
 
【0083】
  (第2変形例)
  第2変形例は、上記の実施形態に適用することが可能である。第2変形例では、
図1に示した構成から上部温度センサ6Uが省略され、
図6に示した機能から上部温度取得部51が省略される。
 
【0084】
  図9は、CPU12が実行する処理の流れを示すフローチャートである。まずステップS301において判定部50は、モータ制御部56の制御履歴情報を参照することにより、天井カーテン2の現在の開閉状態を確認する。
 
【0085】
  天井カーテン2が閉状態である場合(ステップS301:YES)は、CPU12は、上記実施形態のステップS102〜S106と同様の処理を実行する。この場合、上部ミスト噴霧器8Uはミストの噴霧を実行する。
 
【0086】
  天井カーテン2が開状態である場合(ステップS301:NO)は、CPU12は、上記実施形態のステップS107〜S109と同様の処理を実行する。この場合、上部ミスト噴霧器8Uはミストの噴霧を実行しない。
 
【0087】
  本変形例によれば、天井カーテン2が閉状態ということは、環境3への日射量を抑制する必要がある状況、つまり適正値よりも気温が高い又は日射量が多い等の状況ということである。かかる状況において天井カーテン2が閉状態で日射に晒され続けると、天井カーテン2自体及び上部環境3Uに熱が容易に蓄積される。従って、天井カーテン2が閉状態であることを上部ミスト噴霧器8Uによるミスト噴霧の実行条件とすることにより、天井カーテン2及び上部環境3Uを効果的に冷却することが可能となる。また、上部環境3Uへの上部温度センサ6Uの配置を省略できるため、システム構成の簡略化及びシステム導入コストの削減を図ることが可能となる。
 
【0088】
  また、天井カーテン2が開状態ということは、環境3への日射量を抑制する必要がない状況、つまり、気温又は日射量等が適正値に近い状況、あるいは適正値よりも気温が低い又は日射量が少ない等の状況ということである。また、天井カーテン2が開状態である場合には、天井カーテン2への日射に起因して天井カーテン2自体及び上部環境3Uに熱が蓄積される影響はわずかである。従って、天井カーテン2が開状態である場合には上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧を実行しないことにより、環境3が不要に冷却されるという事態を回避できる。
 
【0089】
  (第3変形例)
  第3変形例は、上記の実施形態、第1変形例、又は第2変形例に適用することが可能である。
 
【0090】
  図10は、CPU12が備える機能を示すブロック図である。本変形例では、CPU12は計時部57をさらに備える。計時部57は、クロック周期が既知であるシステムクロック等のクロック数をカウントすることにより、時間を計測する。
 
【0091】
  図7,9のステップS104又は
図8のステップS203では、制御装置4は、上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧と下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧とを同時に実行した。これに対して本変形例では、制御装置4は、上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧と下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧とを時分割で交互に実行する。CPU12は、計時部57による時間の計測結果に基づき、所定時間(例えば数十秒〜数分)が経過する毎に、上部弁制御部53が制御信号D2Uによって上部弁7Uを導通状態に設定する第1期間と、下部弁制御部54が制御信号D2Lによって下部弁7Lを導通状態に設定する第2期間とを切り替える。上記第1期間において下部弁7Lは遮断状態に設定されており、上記第2期間において上部弁7Uは遮断状態に設定されている。
 
【0092】
  本変形例によれば、上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧と下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧とを時分割で交互に実行することにより、両ミスト噴霧器からのミスト噴霧は同時には実行されないため、ポンプ5の消費電力量を削減することが可能となる。
 
【0093】
  (第4変形例)
  第4変形例は、上記の実施形態、第1変形例、又は第2変形例に適用することが可能である。
 
【0094】
  図11は、CPU12が備える機能を示すブロック図である。本変形例では、CPU12は優先度設定部58をさらに備える。優先度設定部58は、上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧と下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧とを双方とも実行する場合(
図7,9のステップS104又は
図8のステップS203)に、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lに優先度を設定する。優先度設定部58は、例えば、温度T1,T2のうち温度が高い方に対応するミスト噴霧器の優先度を高く設定し、温度が低い方に対応するミスト噴霧器の優先度を低く設定する。
 
【0095】
  図7,9のステップS104又は
図8のステップS203では、制御装置4は、上部ミスト噴霧器8Uによるミストの噴霧と下部ミスト噴霧器8Lによるミストの噴霧とを同時に実行した。これに対して本変形例では、制御装置4は、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lのうち、上記優先度の高い一方のミスト噴霧器によるミストの噴霧を先に実行し、優先度の低い他方のミスト噴霧器によるミストの噴霧を後に実行する。CPU12は、優先度設定部58による優先度の設定情報に基づき、まず、上記優先度の高い一方のミスト噴霧器によるミスト噴霧の実行を開始する。CPU12は、当該一方のミスト噴霧器に対応する温度センサから温度データD1を取得し、当該温度データD1で示される温度が閾値T0未満まで低下すると、上記優先度の低い他方のミスト噴霧器によるミスト噴霧の実行を開始する。
 
【0096】
  本変形例によれば、上部ミスト噴霧器8U及び下部ミスト噴霧器8Lのうち優先度の高い一方のミスト噴霧器によるミスト噴霧を先に実行し、優先度の低い他方のミスト噴霧器によるミスト噴霧を後に実行することにより、両ミスト噴霧器からのミスト噴霧は同時には実行されないため、ポンプ5の消費電力量を削減することが可能となる。