【解決手段】実画像生成装置200は、周辺画像を撮影するように配置された撮影部50と、撮影された周辺画像を所定範囲の画像空間にマッピングするマッピング部61と、供給された視線方向情報が示す視線方向に相当する画像空間の一部領域を表示させるための画像データを出力する画像データ出力部63と、出力された画像データを送信する送受信70と、を備え、撮影部50は、鉛直方向を含むように周辺画像を撮影するように配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
〔観覧装置の構成〕
【0020】
まず、
図1から
図3を参照して、本実施形態に係る観覧装置の構成について説明する。
図1は本実施形態に係る観覧装置の全体構成の概略図である。
【0021】
図1に示すように、観覧装置100は、軌道10及び移動ユニット20を主構成要素として備える。本実施形態の軌道10はオーバル形(長円形)に形成されているが、軌道10は無端状であればよく、円形などのようにオーバル形に限定されない。軌道10は、不図示の鉄骨架台に支持されている。軌道10には、適当な間隔で複数の移動ユニット20が備えられている。移動ユニット20は無端状の軌道10に一部(
図1ではA点)固定されており、複数の移動ユニット20が順次周回移動するように構成されている。なお、移動ユニット20の固定部材については
図3で説明する。
【0022】
図2は本実施形態の移動ユニット20の斜視図である。
図2において、移動ユニット20の左側が前方、右側が後方を表している。
図2に示すように、移動ユニット20は、全体としてドラム形状を呈しており、外殻部21と内殻部22との二重構造となっている。外殻部21は、移動ユニット20の上部に設けられた円板状の固定部材30によって、軌道10に摺動可能に固定されている。外殻部21は、不図示の駆動装置により、軌道10に沿って移動するようになっている。
【0023】
図3は本実施形態の移動ユニット20の内部構造の透視概略図である。なお、
図3では、外殻部21を破線で示し、内殻部22を実践で示してある。また
図3において、移動ユニット20の左側が前方、右側が後方を表している。
図3に示すように、内殻部22は、外殻部21の内側に回動可能に保持されている。具体的には、内殻部22は、外殻部21の内側に回動可能とする支持構造により保持され、外殻部21内で回動可能に設けられている。外殻部21の内側において、内殻部22の鉛直方向を維持するため、例えば、内殻部22の下部に重量部25が配置されている。外殻部21は軌道10に固定されているので、
図1のように移動と共に向きが変化する。これに対し、内殻部22は搭乗者1を収容しているので、水平姿勢を維持するために外殻部21内で回動し、鉛直方向を保ったまま軌道10に沿って移動する。
【0024】
内殻部22の内部には、搭乗者(ユーザ)1を収容するためのキャビン23が区画形成されている。キャビン23には、例えば、4人掛けの椅子(図示せず)が設けられており、最大4人の搭乗者1が収容可能となっている。椅子及び搭乗者1の数は、例示のものに限定されない。搭乗者1は、椅子に座った後、携帯情報端末であるスマートフォン80(
図8で説明)が前面に装着されたHMD(
Head
Mount
Display:ヘッドマウントディスプレイ)90を装着する。内殻部22の前面開口部は、ガラスや透明プラスチック等の透明部材からなる前面カバー24で覆われるようになっている。キャビン23に搭乗者1が乗り込んだ後、移動ユニット20の移動前に、搭乗者1の前方に安全装置としての保護バー40が降りて、搭乗者1の落下を防止するようになっている。安全を確保するための措置である。搭乗者1は保護バー40により椅子に固定されるため、移動ユニット20の移動中は姿勢が固定されており、移動ユニット20の鉛直方向を覗き込むことはできないようになっている。このため、HMD90を装着しない肉眼で搭乗者1に提供される現実の風景は、足下が覗き込めないようになっている。
【0025】
〔実画像生成装置の構成〕
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る実画像生成装置200の構成について説明する。実画像生成装置200は、観覧装置100の軌道10を周回する複数の移動ユニット20の各々の外殻部21に配置される。
【0026】
図8は本実施形態に係る実画像生成装置のシステム構成図である。
図8に示すように、実画像生成装置200は、撮影部50及びコンピュータ60を主構成要素として備える。
【0027】
撮影部50は、移動ユニット20の外部の周辺画像を撮影するための装置である。本実施形態の撮影部50は、外殻部21の内側に設けられている。撮影部50は、移動ユニット20の前方を向いており、互いに異なる方向の画像を撮影するように配置された複数の撮影ユニットC1,C2,C3を備える。撮影ユニットC1,C2,C3は、例えば、移動ユニット20が軌道10の最下部の搭乗位置(
図1参照)において搭乗者1の搭乗動作を妨げないような位置、具体的には真上(A点の位置)に配置されている。撮影部50は、移動ユニット20が軌道10のどの位置に移動しようとも、常に鉛直方向を含むような画角で周辺画像を撮影するように配置されている。搭乗者1は保護バー40に固定された状態で椅子に座るため、搭乗者1の視野は前方の所定角度に限定される。これに対し、撮影部50は、外殻部21に設けられており、搭乗者1の固定された位置よりも前方に突き出した位置に配置されるため、鉛直方向を含む周辺画像を画角に収めることが可能になっている。キャビン23は高低温多湿の劣悪な環境となるため、撮影ユニットC1,C2,C3として、耐久性に優れた撮像装置、例えば、防犯カメラを採用することが好ましい。
【0028】
次に、撮影部50における各撮影ユニットの配置及び各撮影ユニットによって得られる画像について説明する。
図4は撮影部50における各撮影ユニットの配置図である。
図5は各撮影ユニットC1,C2,C3によって得られる画像の重なりを説明する概念図である。
【0029】
図4に示すように、撮影部50は、3台の撮影ユニットC1,C2,C3によって構成されている。撮影ユニットの台数は限定されないが、後述するように画像データをステッチング処理する関係上、
図5に示すように、互いに異なる方向の画像を撮影するように、かつ、隣接する撮影ユニット間では画像の一部が重なりあうように配置されることが好ましい。撮影ユニットC1,C2,C3には、例えば、180度の画角で撮影可能な広角カメラを採用する。このような広角カメラを前方に向けて外殻部21に取り付ければ、移動ユニット20が軌道10のどの位置に移動していても、常時ほぼ鉛直方向を画角に収めることが可能となる。
【0030】
再び
図8を参照して、コンピュータ60は、マッピング部61、画像メモリ62及び画像データ出力部63を備える。マッピング部61及び画像データ出力部63は、本実施形態に係る実画像生成方法に係るソフトウェアプログラムをコンピュータ60が実行することにより機能的に実現される機能ブロックである。撮影部50は、コンピュータ60の画像入力部(図示せず)に接続されている。このため、撮影ユニットC1,C2,C3で撮影した画像は、マッピング部61へと入力される。
【0031】
マッピング部61は、撮影部50で撮影された画像を所定範囲の画像空間にマッピングする機能を有する。マッピング部61は、複数の撮影ユニットC1,C2,C3の各々が撮影した複数の画像に対しステッチング処理して、画像を繋ぎ合わせた一つの周辺画像を仮想的な画像空間にマッピングする。ここで、ステッチング処理とは、複数の画像のつなぎ目が目立たなくなるように合成するための画像処理技術である。
図5において、所定の画角(例えば、180度)を有する画像G1,G2,G3の互いに重なる部分がステッチング処理の施されるステッチング部Sである。マッピング部61は、ステッチング処理により合成した周辺画像を
図6に示すような画像空間R1にマッピングする。なお、マッピング部61は、撮影部50の傾きを補正してからマッピングする。詳しくは後述する。
【0032】
画像メモリ62は、マッピング部61でステッチング処理され、画像空間にマッピングした周辺画像(データ)を一時保存する。画像メモリ62としては、コンピュータ60に搭載されたメモリを使用する。
【0033】
画像データ出力部63は、後述する方角センサ83から供給された視線方向情報が示す視線方向に相当する画像空間の一部領域を表示させるための画像データを出力する機能を有する。撮影部50による周辺画像の撮影から画像データ出力部63による画像データの送信までに実質的な遅延がないように画像処理される。搭乗者1にリアルタイムで画像を提供しなければ、臨場感がそがれてしまうからである。
【0034】
送受信部70は、画像データ出力部63から出力された画像データを送信する。送受信部70は、所定の無線通信規格に則った無線通信装置、例えば、WiFi方式の無線ルータによって構成される。無線ルータを採用するのは、配線の取り回しの煩雑性を解消するためである。具体的には、本実施形態では、スマートフォン80付きのHMD90を装着した搭乗者1は内殻部22のキャビン23内に搭乗している。一方、実画像生成装置200は外殻部21に配置されている。そして、内殻部22は外殻部21に対して回動するようになっているため、外殻部21に配置される実画像生成装置200と内殻部22に搭乗する搭乗者1が装着するHMD90との通信を有線配線で行うものとすると、配線の捻じれを生じさせないような複雑な接続構造が必要となる。この点、無線通信で実画像生成装置200とHMD90に取り付けられるスマートフォン80とを通信可能に構成すれば、特殊な配線構造が不要となるからである。
【0035】
スマートフォン80は、表示装置81、送受信部82、及び方角センサ83を備える。HMD90には、表示装置81の表示面が搭乗者1に認識が可能なように向きでスマートフォン80が取り付けられる。スマートフォン80は、コンピュータ装置としての機能を有しており、本実施形態の実画像生成方法に関連して動作する所定のアプリケーションソフトウェアがダウンロードされ実行されている。これにより、送受信部70から送信された画像データが、スマートフォン80の送受信部82に受信され、表示装置81に周辺画像として表示される。
【0036】
方角センサ83としては、スマートフォン80の方位コンパス機能を採用する。方位コンパス機能は、スマートフォン80に標準のアプリケーションとしてインストールされている。スマートフォン80をHMD90に装着した場合に、方位コンパス機能は搭乗者1の視線方向の情報を供給するための方角センサ83として機能する。上記アプリケーションソフトウェアが実行されることにより、方角センサ83からの視線方向情報は、送受信部82を介して送受信部70に送信される。この視線方向情報はさらに画像データ出力部63へと入力される。
【0037】
実画像生成装置200は、さらに角度センサ(ジャイロセンサ)95を備える。角度センサ95は外殻部21に設けられており、撮影部50の鉛直方向からの傾きを検出する。本実施形態において、外殻部21は軌道10上を移動するに連れて傾きが変化していくため(
図1参照)、角度センサ95がこの傾きを検出する。マッピング部61は、角度センサ95によって検出された傾きに基づいて、ステッチング処理により合成された周辺画像の傾きを補正した上で、画像空間にマッピングする。なお、
図2及び
図3では、角度センサの図示を省略している。
【0038】
〔観覧装置及び実画像生成装置の動作〕
次に、本実施形態に係る観覧装置100の動作について説明する。
図1から
図3に示すように、本実施形態に係る観覧装置100は、オーバル形の軌道10と、この軌道10に沿って等間隔を隔てて設けられた複数の移動ユニット20とを備える。移動ユニット20は、外殻部21と内殻部22との二重構造に構成され、外殻部21は固定部材30によって軌道10に固定されている。外殻部21が軌道10に固定されているので、複数の移動ユニット20は軌道10に沿って順次周回移動する。
【0039】
外殻部21の固定部は
図1のA点の位置であり、外殻部21は軌道10に沿って進行方向Fへ移動するにつれて向きが変化する。最下部の搭乗位置ではA点が移動ユニット20の上部に位置するが、最頂部ではA点が移動ユニット20の下部に位置することになる。即ち、外殻部21の固定部としてのA点は、常に軌道10に接している。
【0040】
具体的には、
図1において、移動ユニット20はA点で固定されているので、搭乗者は軌道10の最下部P1(軌道10の短径方向最下部)においてC点を鉛直方向とした向きで移動ユニット20に搭乗する。移動ユニット20がM方向に移動するにつれ、移動ユニット20の鉛直方向が回転していき、図面左側の真横の位置P2(軌道10の長径方向)にまで移動すると、B点が鉛直方向となる。さらに移動ユニット20がM方向に移動していき、最上部P3(軌道10の短径方向上部)に達すると、A点が鉛直方向となる。さらに移動ユニット20がM方向に移動して、図面右側の真横の位置P4(軌道10の長径方向)にまで移動すると、D点が鉛直方向となる。そして再び移動ユニット20がM方向に移動して軌道10の最下部P1に戻ると、C点が鉛直方向となる。
【0041】
内殻部22は外殻部21内に回動可能に保持されおり、内殻部22の内部には搭乗者1を収容するためのキャビン23が区画されている。内殻部22は搭乗者1を収容するので、水平姿勢を維持するために外殻部21内で回動し、鉛直方向を保ったまま軌道10に沿って移動する。
図1において、進行方向Mは時計回りであるので、内殻部22は移動につれて反時計回りに回動して水平姿勢を保持する。進行方向Mは時計回りに限定されず、進行方向Mが反時計回りである場合には、内殻部22は移動につれて時計回りに回動することになる。
【0042】
キャビン23に搭乗者1が搭乗し、搭乗者1が椅子に座ると、搭乗者1はスマートフォン80付きのHMD90を装着する。搭乗者全員の搭乗が完了すると、搭乗者1の前方に保護バー40が降りて、搭乗者1の落下を防止する。
【0043】
〔実画像生成装置の動作〕
次に、本実施形態に係る実画像生成装置200の動作と共に、本実施形態に係る実画像生成方法について説明する。
図9は、本実施形態に係る実画像生成方法を示すフローチャートである。
図10は本実施形態に係る実画像生成方法の工程図である。
【0044】
本実施形態に係る実画像生成方法は、鉛直方向を含むように周辺画像を撮影するステップと、撮影された周辺画像を所定範囲の画像空間にマッピングするステップと、供給された視線方向情報が示す視線方向に相当する画像空間の一部領域を表示させるための画像データを出力するステップと、出力された画像データを表示するするステップと、を有する。以下、本実施形態に係る実画像生成方法を具体的に説明する。
【0045】
図9及び
図10に示すように、キャビン23に搭乗者1の搭乗が完了すると、撮影部50が撮影を開始する(S210)。
【0046】
撮影部50の複数の撮影ユニットC1,C2,C3は、鉛直方向を含む周辺画像を撮影可能に配置されているので、鉛直方向を含むように180度の広角で周辺画像が撮影される(S220)。なお、周辺画像は、厳密な意味での鉛直方向を含まなくてもよく、鉛直方向、すなわち撮影部50から見て真下に近い領域までの画像を含めていればよい。人間は高いところから下を見下ろすときに恐怖を感じる。人間に高度に対する恐怖感を喚起する程度の画像が提供されるのであれば、搭乗者1に臨場感のあるスリリングが体験をさせることができるからである。
【0047】
次いで傾き情報が入力される(S230)。撮影部50は外殻部21に設けられているので、移動ユニット20の移動と共に撮影部50が傾くことになる。したがって、外殻部21の向きに応じてステッチング処理後の画像の向きを補正する必要がある。そのため角度センサ95の出力を利用する。角度センサ95は、常に撮影部50の傾きを監視している。角度センサ95によって検出された撮影部50の傾きはマッピング部61に入力される。
【0048】
撮影部50で撮影した画像は、マッピング部61によって画像空間にマッピングされる(S240)。マッピング部61は、マッピングに際して、複数の撮影ユニットC1,C2,C3が撮影した画像G1からG3をステッチング処理して繋ぎ合わせる。
図5において、撮影ユニットC1,C2,C3の画像G1,G2,G3が重なるステッチング部Sに公知のステッチング処理を施し、画像同士のつなぎ目が目立たなくなるように合成する。
【0049】
また、マッピング部61は、撮影部50で撮影され、ステッチング処理により合成された周辺画像を画像空間にマッピングする際に傾きを補正する。すなわち、検出された撮影部50の傾きに基づいて、合成された周辺画像の傾きを補正してから画像空間にマッピングする。
【0050】
図6を参照して、周辺画像の画像空間へのマッピングについて説明する。
図6は撮影部50により撮影されステッチング処理された周辺画像をマッピングする仮想的な画像空間の説明図である。
【0051】
図6において、球体Rは仮想的な画像空間であり、地平線H及び鉛直線Vが設定される。
図6において、球体Rの上部が前方側Fに相当し、右側が天頂側Tに相当する。搭乗者1は、キャビン23内の椅子に座って前方を観察することになるので、真っ直ぐ正面を見た場合には天球Rの前方側Fを向いていることになる。撮影ユニットC1,C2,C3から得られた画像G1〜G3は、各々180度の画角で撮影されているので、常に鉛直方向を含んだ周辺画像が撮影されている。マッピング部61は、撮影ユニットC1,C2,C3から得られた画像G1〜G3に対してステッチング処理を施した一つの広角な周辺画像を球体Rの内部にマッピングする。これにより、球体Rの実線部分で表した範囲の半球よりも広い視野角R1を得ることができる。例えば、前方側Fが真北Nである場合には、東西方向E−Wよりも広い視野角R1を得ることができる。この視野角R1の範囲であれば搭乗者1が視線方向を動かしても常に実画像が提供される。
【0052】
なお、搭乗者1が後面方向に視線を動かして画像空間の範囲外に表示装置81の画角が入った場合には、代替画像が提供されるようにすることができる。具体的には、
図6に示す天球Rの画像空間において、周辺画像がマッピングされていない破線の領域が表示範囲となるように視線を動かした場合である。このように周辺画像が存在しない領域が表示範囲に入った場合に代替画像をその領域に表示させるのである。代替画像としては、単色の背景色、所定のテクスチャ、または当該方向には画像が無い旨の文字表示等が適用可能である。
【0053】
図7を参照して、搭乗者1に対する実際の風景の見え方について説明する。
図7において、画像G1,G2,G3は、撮影ユニットC1,C2,C3のそれぞれで撮影された画像であり、ステッチング処理を施すことにより全体として一つの周辺画像が形成されている。
図7において、上下方向は鉛直方向Vであり、上部は天頂側Tである。左右方向には地平線Hが表示される。マッピング部61は、撮影ユニットC1,C2,C3から得られた画像G1,G2,G3をステッチング処理する。
【0054】
上述したように、外殻部21は軌道10に固定されているため、移動ユニット20の移動と共に外殻部21の向きが次第に変化する。撮影部50は外殻部21に固定されているため、撮影部50の向きも次第に変化する。外殻部21には角度センサ95が設けられており、撮影部50の傾きを検出する。マッピング部61は、角度センサ95によって検出された撮影部50の傾きに基づいて、ステッチング処理された周辺画像の傾きを補正してから画像空間にマッピングする。本実施形態において、撮影部50の撮影ユニットC1,C2,C3は、
図1における軌道10の最下部P1及び最上部P3において縦方向に並び、軌道10の真横の位置P2及びP4において横方向に並ぶように配置される。よって、マッピング部61は、角度センサ95によって検出された撮影部50の傾きに応じて周辺画像の傾きを補正して、鉛直方向Vが縦方向、地平線Hが横方向となるように、球体R内部の画像空間に周辺画像をマッピングする。この傾き補正によって、搭乗者1には常に水平方向と鉛直方向とが正しく整合した周辺画像が提供される。
【0055】
なお、
図7は、移動ユニット20が
図1の真横の位置P2又はP4のいずれかの位置している場合に得られる周辺画像を例示している。
図1の最下部P1や最上部P3に位置している場合には画像G1〜G3が縦並びになるような周辺画像が得られる。画像G1〜G3の並び方向がどのような角度であっても、傾き補正によって水平方向と鉛直方向が正しい周辺画像が提供される。
【0056】
マッピング部61で仮想空間にマッピングされた画像データは、画像データメモリ62に一時保存される(S250)。
【0057】
画像データメモリ62に保存された画像データは、搭乗者の視線方向に対応して読み出される。搭乗者1が顔の向きを変えて視線方向を移動すると、HMD90と共にスマートフォン80も移動し、方角センサ83から視線方向の情報が実画像生成装置200に送信される。方角センサ83から搭乗者1の視線方向情報が入力されると(S260)、画像データ出力部63が視線方向情報の示す視線方向に相当する画像空間の一部領域を表示させるための画像データを出力する(S270)。そして、画像データ出力部63から出力された画像データは、送受信部70から無線送信される(S280)。
【0058】
なお、撮影部50による周辺画像の撮影ステップ(S220)から画像データの送信ステップ(S280)までに、実質的な遅延がないように処理される。これにより、搭乗者1にリアルタイムで画像が提供され、臨場感がそがれることがない。
【0059】
キャビン23に搭乗者1が収容されている間(移動ユニット20の一周回移動の間)、実画像生成方法に係るS220からS280のステップが繰り返される。なお、スマートフォン80においては、方角センサ83により視線方向が検出される度に視線方向情報が送受信部82から送信される。また、送受信部70から送信された画像データを送受信部82が受信するたびに、表示装置81へ画像表示される。
【0060】
なお、移動ユニット20に搭乗して軌道10上を一周した搭乗者1がキャビン23から降りると、一連の画像処理を終了する。実画像生成装置200は、次の搭乗者1が搭乗するまで待機することになる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る実画像生成装置200は、撮影部50が鉛直方向を含む周辺画像を撮影し、マッピング部61が撮影された周辺画像を所定範囲の画像空間にマッピングする。次に、画像データ出力部63が方角センサ83から供給された視線方向情報が示す視線方向に相当する画像空間の一部領域を表示させるための画像データを出力し、出力された画像データを送受信部70が送信する。したがって、本実施形態によれば、鉛直方向を含む画像を得ることで、例えば、観覧装置100に実画像生成装置200を適用した場合に、搭乗者1が高いところに居るという臨場感を味わうことができ、実風景よりもスリリングな仮想画像を提供することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る実画像生成装置200は、撮影部50による周辺画像の撮影から画像データ出力部63による画像データの送信まで、実質的な遅延がないように画像処理する。したがって、本実施形態によれば、搭乗者1にリアルタイムで画像が提供されるので、観覧装置100の臨場感を増大させることができる。
【0063】
さらに、本実施形態に係る実画像生成装置200は、撮影部50の鉛直方向からの傾きを検出する角度センサ95を備える。画像データ出力部63は、角度センサ95によって検出された撮影部50の傾きに基づいて、画像空間の傾きを補正する。したがって、軌道10に固定されて移動する外殻部21に撮影部50が設けられていても、画像の傾きを補正することができる。
【0064】
本実施形態に係る観覧装置100では、外殻部21の内側に撮影部50を設けている。キャビン23は高低温多湿の劣悪な環境となるため、撮影部50としては、例えば、防犯カメラを採用することが好ましい。ところが、防犯カメラは画角が狭いものがある。しかし、本実施形態によれば、ステッチング処理により複数の画像を繋ぎ合わせて一つの周辺画像を生成しているので、つなぎ目のない広範な画角の周辺画像を提供することができる。
【0065】
本実施形態に係る観覧装置100は、所定の軌道10を移動するように構成された移動ユニット20を備える。移動ユニット20は、軌道10に固定されて移動する外殻部21と、鉛直方向を維持可能に外殻部に保持された内殻部22と、を備え、実画像生成装置100は外殻部21に設けられている。したがって、本実施形態によれば、観覧装置100が実画像生成装置200を備えているので、仮想空間において空中遊泳感覚の臨場感を味わうことができ、実風景よりもスリリングな仮想画像を提供することができる。
【0066】
本実施形態に係る観覧装置100において、送受信部70は内殻部22に収容される搭乗者1が装着する表示装置81に画像データを無線送信する。本実施形態の移動ユニット20のように外殻部21と内殻部22とが相対的に動く構造では有線接続が困難である。そこで、本実施形態の表示装置81は、HMD90の前面に装着したスマートフォン80のディスプレイを採用している。したがって、本実施形態によれば、画像データを無線送信して画像表示させているので、ケーブルの取り回しの煩雑さを解消することができる。
【0067】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0068】
例えば、本実施形態では、撮影部50で撮影された画像をステッチング処理して一つの周辺画像としてそのまま生成し、現実の風景のように感じさせる周辺画像を搭乗者1に提供していたが、これに限定されない。例えば、周辺画像に追加画像を重畳させた画像データを提供するように構成してもよい。追加画像としては、搭乗者1に役立つ情報や異なる面白みを提供可能な画像、例えば、周辺画像が撮影されている方角、移動ユニット20の高さ、周辺画像に含まれる建造物、自然の地形の名称等を示す文字情報、アイコンが挙げられる。また、搭乗者1にガイダンスその他の情報を与える文字情報や画像情報を周辺画像とは関連させずに重畳表示させてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、観覧装置100として観覧車を例示していたが、これに限定されない。観覧装置としては動的に移動する移動体、例えばジェットコースターその他のライドであってもよい。さらに静的な建造物、例えば展望台などであってもよい。移動体や建造物に実画像生成装置200を設ければ、移動体や建造物の内部に安全上の理由から真下を望めないように収容されるユーザに対して、実風景よりもスリリングな仮想画像を提供することが可能である。