【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、薬50を収納する薬収納装置であって、上部が開放された薬収納区画1’が複数並設された薬収納部1と、この薬収納部1の上方に設けられ薬収納区画1’の並設方向に可動及び停止し、薬50の通過を許容する薬通過孔2aを設けた可動部2と、薬収納区画1’に収納された薬50を押し上げる押上機構3とを有するものである。
【0025】
尚、本書面で言う薬50とは、薬剤50aが包装材50b(透明樹脂製フィルムやPTP包装材など)で包装された状態のものを意味する。
【0026】
具体的には、
図1,2に図示したようにケース状の装置本体20に、前述した薬収納部1,可動部2及び押上機構3が設けられている。
【0027】
薬収納部1は、
図1,2に図示したように適宜な透明樹脂製の部材で形成され上部開口部を有する横長のボックス形状体であり、透明樹脂製故に内部が視認できる。
【0028】
また、薬収納部1を構成する正面板と背面板との間には多数の仕切り板1bが間隔を介した状態で架設されており、該薬収納部1の長さ方向(左右方向)に薬50を収納する程度の大きさを有する薬収納区画1’(収納空間)が複数並設されている。尚、各仕切り板1bには後述する押上機構3の押上部材3aが挿入する一対のスリット1b’が設けられている。この仕切り板1bのスリット1b’は板状の押上部材3aの板面方向と直交する方向いスリット長さを有する。
【0029】
また、本実施例では、薬収納部1に合計29箇所の薬収納区画1’が設けられており、一端の1箇所(
図2中の左端の薬収納区画1’)は予備として設けられ、残りの28箇所(薬収納区画1’)は、1〜28の指標数字が付されて番付けされている。即ち、一般に、薬50は一日最大でも4回服用するものであり、それを一週間続けた場合を想定して、薬収納区画1’を28箇所設けている。尚、薬収納区画1’の数は上記に限られない。
【0030】
また、薬収納部1は、
図4,5に図示したように薬収納区画1’の底部1aにおける前後対向位置に、薬収納部1の左右長さ方向全域に長さを有する一対のスリット1a’が設けられている。
【0031】
このスリット1a’は、後述する押上機構3の押上部材3aが挿入可能に構成され、薬50が脱落しない大きさと形状(スリット方向)に設けられている(
図6,7参照)。
【0032】
尚、薬収納区画1’の底部1aを上昇自在に設けて該薬収納区画1’に収納した薬50を押し上げる押上機構としても良い。
【0033】
また、薬収納部1は、装置本体20の上部に設けられた正面開口部20aを有する薬配設部21に引き出しのように出し入れ自在に設けられている。
【0034】
符号1cは薬収納部1を出し入れする際に握持する握持部、1dは後述する装置本体20に設けられる係止部材22が係止する被係止部である。
【0035】
また、薬配設部21には、挿入配設した薬収納部1の引出しを阻止する引出阻止構造体が設けられている。
【0036】
この引出阻止構造体は、
図8に図示したように薬配設部21の左右部位に、薬収納部1の左右両端部に設けられる被係止部1dに凹凸係止する係止部22が設けて構成されており、この係止部22は、後述する操作部23での操作により突没するよう電気的制御された構造(ソレノイド構造体)であり、薬収納部1は係止部22による係止が解除されたときのみ薬配設部21から引き出し可能となる。
【0037】
可動部2は、
図1〜3に図示したように適宜な可撓性を有する合成樹脂製部材で形成された方形板状体であり、薬収納部1の上方に配された状態において該薬収納部1(全ての薬収納区画1’)の上部開口部を覆うことができる大きさに設定されている。
【0038】
また、可動部2の所定位置には、一つの薬収納区画1’の上部を開放できる大きさで平面視長方形状の薬通過孔2aが設けられており、この薬通過孔2aは、薬収納区画1’の上方に位置して該薬収納区画1’に収納された薬50の通過を許容するように構成されている。
【0039】
また、可動部2は、後述する移動構造体に設けられ装置本体20の上面開口部20bから露出するように構成されており、この移動構造体を介して薬通過孔2aが薬収納部1の長さ方向(薬収納区画1’の並設方向)に移動自在となるように構成されている。
【0040】
この可動部2の可動及び停止は、後述する押上機構3と共に、制御部24に設定された薬収納区画1’の位置まで薬通過孔2aが移動するように制御される。
【0041】
移動構造体は、
図3に図示したように装置本体20内における上下左右の間隔を介した四隅対向位置に設けられる回転軸5と、この各回転軸5に設けられる前後一対の第一歯車5a間に巻架される前後一対の作動ベルト6(歯付きベルト)と、一の回転軸5(下側一方の回転軸5)を正逆回転させる回転駆動部7とを有するものである。
【0042】
この回転駆動部7は、駆動軸7a’に歯車7a”が設けられた駆動源7a(正逆転する電動モーター)と、この駆動源7aの歯車7a”と一の回転軸5に設けられる第二歯車5bとの間に巻架される駆動ベルト7b(歯付きベルト)とで構成されており、この回転駆動部7により回転軸5を正逆回転させることで作動ベルト6は連動して左右方向に往復直線移動することになる。
【0043】
この作動ベルト6同士間に前述した可動部2が架設されており、この作動ベルト6の移動により可動部2(薬通過孔2a)は装置本体20の左右方向に往復直線移動する。
【0044】
また、下側双方の回転軸5には第三歯車5cが設けられており、この第三歯車5cに巻架される作動ベルト8(歯付きベルト)には、押上機構3が連設されている。
【0045】
押上機構3は、
図3,6,7に図示したように上面にガイド支柱3bが立設された基部3’と、この基部3’の上部に設けられガイド支柱3bにガイドされて昇降自在となる可動部3”とで構成され、この可動部3”は図示省略の駆動源の作動により昇降するように構成され、上面には一対の押上部材3aが設けられている。
【0046】
この押上部材3aは、
図3,6に図示したように適宜な金属製の板材をコ字状に折曲形成したものであり、左右の遊離先端部が上方を向くように可動部3”の上部に設けられている。
【0047】
この可動部3”が上昇した際、押上部材3aは薬収納区画1’のスリット1a’及び仕切り板1bのスリット1b’を貫通して薬収納区画1’内に配され、この押上部材3aにより薬収納区画1’内の薬50が押し上げられることになる(
図7参照)。
【0048】
また、この押上機構3は、前述した移動構造体を介して装置本体20内を往復直線移動するように構成されている。
【0049】
具体的には、
図3,6,7に図示したように基部3’が連結部材10を介して移動構造体(作動ベルト8)に連設され、この基部3’は装置本体20に設けられるガイドレール9をスライド移動するように構成されている。
【0050】
従って、押上機構3は、移動構造体(作動ベルト8)の作動により装置本体20内を直線往復移動することになり、しかも、押上機構3は、薬収納区画1’を間に介した薬通過孔2aの下方対向位置に設けられ、薬通過孔2aの移動と同期して薬収納区画1’の並設方向に移動することになる。
【0051】
この押上機構3の可動は、前述した可動部2(薬通過孔2a)と共に、制御部24に設定された薬収納区画1’の位置まで移動するように制御される。
【0052】
また、本実施例は、装置本体20内に各種電子機器(引出阻止構造体及び移動構造体)の制御を行う制御部24が設けられており、この制御部24は装置本体20に設けられた端子に接続されるタッチパネル付き操作部23により操作される。
【0053】
また、制御部24は、所定の期間(例えば1週間)を1クールとし、この1クールの各日(例えば第1日目・第2日目・第3日目・第4日目・第5日目・第6日目・第7日目)夫々における服用する時間帯を設定すると、2クール目以降は同様に自動設定される機能を備えている。
【0054】
また、本実施例は、装置本体20内に音記録再生装置(図示省略)が設けられ、装置本体20の正面に設けたスピーカー25から適宜な音や音声(例えば服用する時間になったことを知らせるチャイムや言葉での音声など)が鳴るように構成されている。
【0055】
符号26はON/OFFするスイッチ、27は電源コード、28Aは内臓マイク、28Bはマイクの端子を挿すジャックである。
【0056】
以上の構成から成る薬収納装置の使用例について説明する。
【0057】
例えば「7日間、1日3回の時間帯(朝・昼・晩)に服用」という服用条件の薬50が出された場合、その服用条件となるよう薬収納部1の薬収納区画1’に薬50を収納する。
【0058】
即ち、第1日目として3つの時間帯(朝・昼・晩)に該当する3つの薬収納区画1’(番号1・2・3の薬収納区画1’)夫々に薬50を収納し、第2日目として3つの時間帯(朝・昼・晩)に該当する3つの薬収納区画1’(番号4・5・6の薬収納区画1’)夫々に薬50に収納し、第3日目として3つの時間帯(朝・昼・晩)に該当する3つの薬収納区画1’(番号7・8・9の薬収納区画1’)夫々に薬50を収納し、第4日目として3つの時間帯(朝・昼・晩)に該当する3つの薬収納区画1’(番号10・11・12の薬収納区画1’)夫々に薬50を収納し、第5日目として3つの時間帯(朝・昼・晩)に該当する3つの薬収納区画1’(番号13・14・15の薬収納区画1’)夫々に薬50を収納し、第6日目として3つの時間帯(朝・昼・晩)に該当する3つの薬収納区画1’(番号16・17・18の薬収納区画1’)夫々に薬50を収納し、第7日目として3つの時間帯(朝・昼・晩)に該当する3つの薬収納区画1’(番号19・20・21の薬収納区画1’)夫々に薬50を収納する。
【0059】
続いて、操作部23を操作して上記服用条件を制御部24に入力して準備は完了する。
【0060】
尚、前述したようにこの1クールの各日(第1日目・第2日目・第3日目・第4日目・第5日目・第6日目・第7日目)夫々における服用する時間帯を設定すると、2クール目以降は同様に自動設定され、また、薬収納部1への薬50の収納と制御部24への入力とはどちらを先に行っても良い。
【0061】
図9〜11は、第3日目の昼頃における薬収納装置の作動状況を説明している。
【0062】
即ち、待機位置(
図9中左端)にある可動部2(薬通過孔2a)及び押上機構3が可動を開始し、8番の薬収納区画1’の位置まで可動して停止すると、8番の薬収納区画1’の上部は薬通過孔2aが位置することで開放され、8番の薬収納区画1’のスリット1a’の下方対向位置に押上機構3の押上部材3aが位置する(
図9及び10参照)。
【0063】
続いて、押上機構3の押上部材3aが上昇して薬収納区画1’のスリット1a’を貫通すると、薬収納区画1’に収納されている薬50が上方に押し上げられることで該薬50が薬通過孔2aから導出する(
図11参照)。この薬通過孔2aから薬50が導出した際、装置本体20の正面に設けたスピーカーから、例えば服用する時間になったことを知らせるチャイムや言葉での音声などが鳴る。
【0064】
患者はこの薬通過孔2aから導出した薬50を取って服用する。
【0065】
本実施例では、薬通過孔2aから薬50が導出した時点から所定時間経過すると押上機構3は降下し、その後、可動部2(薬通過孔2a)及び押上機構3は側方へ戻り移動して元の位置(待機位置)に戻る。これは、患者が服用すべき時間帯にその薬50を取らなかった場合、その薬収納区画1’の上部を開放したままだと、別の時間帯に誤って取ってしまう可能性があり、これを防止すべく常に待機位置まで戻ることで薬50が取れない状態となるように制御されている。
【0066】
本実施例は上述のように構成したから、上記制御により服用すべき薬50しか取り出せないから、例えば患者の管理能力が劣っていても、服用すべきでない薬50を服用することは生じず、薬50の誤飲事故(違う薬の服用やオーバードース(過量服薬))などを可及的に防止することができる。
【0067】
また、本実施例は、押上機構3は、薬収納区画1’を間に介した薬通過孔2aの下方対向位置に設けられ、薬通過孔2aの移動と同期して薬収納区画1’の並設方向に移動するように構成されているから、全ての薬収納区画1’の下方対向位置に押上機構3を設けるのではなく、1つの押上機構3で対応する構造の為、シンプルな構造故にコスト安にして量産性に秀れることになる。
【0068】
また、本実施例は、可動部2は、薬収納区画1’の並設方向に長さを有する板状体であり、この可動部2の所定位置に一つの薬収納区画1’の上部を開放できる大きさの薬通過孔2aが設けられているから、薬収納区画1’に収納された薬50を取れる状態と取れない状態とを確実に切り換えられるなど、簡易構造でありながら前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0069】
また、本実施例は、スリット1a’を貫通する板状の押上部材3aを昇降自在に設けて押上機構3は構成されているから、薬収納区画1’に収納された薬50を確実に押し上げることができるなど、簡易構造でありながら前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0070】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。