【解決手段】有害電磁波抑制装置10は、カーボンマイクロコイルがコーティングされた無誘導型のコイル部40と、制御回路30とを備えている。制御回路30は、内蔵のEPROMに格納された信号を再生して出力する信号再生チップ33と、信号再生チップ33からの信号を増幅して、コイル部40に出力する増幅器34とを備えている。信号再生チップ33には、3種類の混合されたシューマン波の信号データが格納されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る有害電磁波抑制装置を図面に基づいて説明する。
図1に示す有害電磁波抑制装置10は、周囲の有害電磁波を抑制するものである。
有害電磁波抑制装置10は、制御回路30(
図2参照)が収納される装置本体20と、装置本体20に設置されたコイル部40とを備えている。
装置本体20は、箱状のケース21の前面21aに電源スイッチ22と、電源が投入状態か否かを示すパイロットランプ23と、出力を調整するためのノブ24とが配置されている。
パイロットランプ23は、LEDにより形成されている。ノブ24は、後述する可変抵抗の抵抗値を変更するためのつまみである。
【0016】
図2に示すように制御回路30は、ACアダプタ(図示せず)からの直流電源、またはUSBケーブルからの直流電源が接続される電源コネクタ31と、電源コネクタ31に接続された前述した電源スイッチ22と備えている。
電源コネクタ31は、
図1に示すケース21の背面に配置されている。
電源スイッチ22からヒューズ32を介在させた電源線V1には、パイロットランプ23が抵抗R1を介して並列に接続されている。また、電源線V1には、信号再生チップ33が接続されている。
【0017】
信号再生チップ33は、記憶手段であるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)を内蔵しており、6KHzサンプリング、4−bitADPCM(adaptive differential pulse code modulation)圧縮された、682秒の音声長の信号データを格納することができる。信号再生チップ33には、信号データとして、7.2Hz、32Hz、64Hzの3種類のシューマン波が混合した信号(混合信号)が格納されている。信号再生チップ33は、混合信号を出力する信号再生手段として機能する。
【0018】
信号再生チップ33の出力端子とアースとの間には、
図1に示すノブ24と連動する可変抵抗R2が接続されている。可変抵抗R2には、増幅器34が接続されている。
増幅器34は、例えば、オーディオパワーアンプ素子が使用できる。
増幅器34の出力には、直列に保護抵抗R3,R4が接続され、並列に保護抵抗R5とコンデンサC1が接続されている。
この保護抵抗R3,R4には、コネクタ35によりコイル部40が接続される。
【0019】
ここで、コイル部40について図面に基づいて詳細に説明する。
図1および
図3(A)に示すコイル部40は、
図3(B)に示す正巻部41nおよび逆巻部41rが同心に重ねられた無誘導型の巻線部41および巻線部41を環状に接続する導通部42を備えた星型コイルCと、巻線部41が巻かれる巻心部43とを備えている。
【0020】
巻線部41と導通部42とは、絶縁性皮膜を有する1本の導体線の一例である銅線が巻かれることにより形成されている
【0021】
巻線部を環状に配置するためには3以上あればよい。また、巻線部は、仮想平面上の仮想的な正多角形の頂点位置にそれぞれ配置されていることが望ましい。本実施の形態では、
図4に示すように、仮想平面上の仮想的な正五角形Pの頂点位置P1〜P5に巻線部41の軸心Oの位置を合わせて、それぞれの巻線部41を配置することで、巻線部41の数を5つとしている。
【0022】
図3(B)に示す巻線部41は、正巻部41nと逆巻部41rとが交互に階層を成して重ねられている。そして、巻線部41は、隣接した巻線部41と巻心部43への並び順が反対の順番に重ねられている。本実施の形態では、正巻部41nと逆巻部41rとの巻数は1ターンである。
導通部42は、同階層の正巻部41nと隣接した巻線部41の逆巻部41rとを、階層ごとに接続している。
本実施の形態では、正巻部41nと逆巻部41rとが4階層(第1階層L1〜第4階層L4)に重ねられたことにより巻線部41が形成されている。
図4に示すように、導通部42は、交互に並ぶ正巻部41nと逆巻部41rとを環状に接続している。
【0023】
このコイル部40の星型コイルCは、
図5に示すように、巻心部43a〜43eが平板状の台部51上に五角形の各頂点に配置されたコイル製作用治具50により作製することができる。
星型コイルCを作製するときには、まず、第4階層L4から巻き始める。
図6(A)に示すように、導体線Lを巻心部43aに仮想的な正五角形Pの外側から内側へ回し、時計回り(正巻)に巻き正巻部41nを作り、隣接する巻心部43bの外側へ回して反時計回り(逆巻)に巻いて逆巻部41rを作る。
次に、
図6(B)に示すように、巻心部43bの外側から巻心部43cの内側へ導体線Lを回し、時計回り(正巻)に巻く正巻部41nを作る。
次に、
図6(C)に示すように、巻心部43cの内側から巻心部43dの外側へ導体線Lを回し、反時計回り(逆巻)に巻いて逆巻部41rを作る。
そして、
図6(D)に示すように、巻心部43dの外側から巻心部43eの内側へ導体線Lを回し、反時計回り(逆巻)に巻く正巻部41nを作る。
これで、
図6(D)に示す第4階層L4が巻き終わる。
【0024】
続けて、
図6(E)に示すように、導体線Lを巻心部43aの外側から反時計回り(逆巻)に巻き、巻心部43bの内側へ回して時計回り(正巻)に巻き、更に、巻心部43cの外側へ回して反計回り(逆巻)に巻くことで、巻心部43a〜43cでは、
図6(A)および同図(B)に示す巻き方向と逆となる。
【0025】
このようにして、順次、巻心部43aから巻心部43eに巻いていき、第3階層L3を巻く。更に、続けて、第2階層L2、第1階層L1と、全体で巻心部43aから巻心部43eの周囲を4周する(
図6(A)から同図(D)参照)。
このようにして作製された
図2に示すコイル部40の始端T1と終端T2とに、制御回路30と接続するためのコネクタ35の片方を接続する。
【0026】
ここで、コイル部40は、コイル状粉末体の電磁波吸収材の一例である、カーボンマイクロコイルによりコーティングされている。
カーボンマイクロコイルによるコーティングは、粉末状のカーボンマイクロコイルを熱硬化性樹脂材に混ぜ、加熱して樹脂材を硬化させることで形成される。カーボンマイクロコイルは、例えば、株式会社CMC総合研究所社製のものが採用できる。
【0027】
カーボンマイクロコイルは、ニッケル(Ni)触媒を用いて、微量のイオウ不純物を含むアセチレンを700〜800℃高温熱分解することにより、約60回転/分の速度で、2本が互いに絡み合い回転しながら成長することで合成されるものである。
カーボンマイクロコイルは、コイル径が1〜10μm、コイル長さは反応時間に依存して0.1〜10mmとすることができる。
【0028】
このカーボンマイクロコイルについては、非特許文献1に、電磁波吸収についての記載がある。
電磁波吸収率について、まず、プローブ法により透過損失を測定した例では、
図7(A)に、400MHzから900MHz領域で90%以上の電磁波を吸収することが示されている。
また、反射損失を測定した例を、
図7(B)に示す。反射損失は、種々のコイル長さのカーボンマイクロコイルを種々の温度で熱処理したカーボンマイクロコイルをシリコーン樹脂中に分散させ、導波管法で14GHzまでの電磁波吸収率を測定したものである。参考試料としてグラファイト粉末及び直線状炭素繊維に対する値も求めている。
図7(B)に示すように、グラファイト粉末及び直線状の市販炭素繊維はほとんど電磁波を吸収しないが、カーボンマイクロコイルは約2.8GHzおよび13GHz付近で−20dB以上の強い吸収を示す。
従って、この周波数帯域では、WiFiやLTEを含む4G、5Gなどの2.1GHz帯、2.4GHz帯、3.5GHz、3.7GHz、4.5GHz帯等に対して有効に作用する。
【0029】
このようにコイル部40がカーボンマイクロコイルによりコーティングされていることで、巻線部41と導通部42と巻心部43との全部が一様に被覆される。
【0030】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る有害電磁波抑制装置10の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
使用者は、有害電磁波抑制装置10を傍に設置する。次に、
図2に示すように使用者が電源スイッチ22を投入すると、電源コネクタ31からの電流がパイロットランプ23に流れることで、パイロットランプ23が点灯し、信号再生チップ33に電源が供給される。
信号再生チップ33では、内蔵のEPROMから信号データが読み出され再生され、信号再生チップ33の出力端子から出力される。
【0031】
信号再生チップ33からの信号は、増幅器34にて増幅され、コイル部40へ出力される。コイル部40に信号が流れることで磁界が発生する。しかし、
図3(A)に示すように、コイル部40の星型コイルCは、正巻部41nと逆巻部41rとが交互に階層を成して重ねられている。そのため、星型コイルCから直接的に放射されることになる、3種類のシューマン波が混合した信号による磁界がそれぞれ相殺される。
【0032】
コイル部40には、カーボンマイクロコイルによりコーティングされている。カーボンマイクロコイルは電磁波吸収材として使用されるものである。従って、有害電磁波をカーボンマイクロコイルにより吸収することができる。
また、原理的には不明な点があるが、星型コイルCにシューマン波の信号が流れることで、星型コイルCにより発生する磁界の影響をカーボンマイクロコイルが受ける。これにより、コイル部40からは、カーボンマイクロコイルから身体的に好影響を与える、例えば、使用者の経絡の気の流れを正常化させる信号が、星型コイルCからの磁界を受け、カーボンマイクロコイルから間接的に放出されているものと推定される。
【0033】
従って、有害電磁波抑制装置10は、カーボンマイクロコイルにより有害電磁波を吸収しつつ、星型コイルCによりカーボンマイクロコイルから身体的に好影響を与える信号を放出させることができる。
【0034】
また、有害電磁波抑制装置10は、導体線Lによる正巻部41nおよび逆巻部41rを同心に重ねた巻線部41が、導通部42により環状に接続されている。そのため、3以上の無誘導型の巻線部41が環状に接続された状態で有害な電磁波を受けることができる。従って、巻線部41を1つとした場合と比較して、点ではなく面で有害電磁波を受けられるので、幅広い面積で有害電磁波を除去することができる。よって、コイル部40は、有害電磁波を効果的に除去できる。
【0035】
また巻線部41が、正巻部41nと逆巻部41rとが交互に階層を成して重ねられていると共に、隣接した巻線部41と並び順が反対の順番に重ねられ、導通部42が、第1階層L1から第4階層L4ごとに正巻部41nと隣接した巻線部41の逆巻部41rとを環状に接続している。従って、第1階層L1から第4階層L4ごとに導通部42が巻線部41を接続しているため、多数の巻線部41を環状に位置させた状態で巻線部41同士を、巻線部41の軸線方向に重ねることができるので、より効果的に有害電磁波を抑制することができる。
【0036】
巻線部41が、
図4に示すように、仮想的な正五角形Pの頂点位置にそれぞれ配置されているため、偏り無く有害電磁波を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、正巻部41nと逆巻部41rとを1ターンとしているが、重ねられた正巻部41nと逆巻部41rとの巻数を合わせれば複数ターンとしてもよい。
【0037】
(実施例1)
図1に示す有害電磁波抑制装置10を用いて様々な環境において使用者にアンケート調査により感想を聞いた。
使用者は、全体で64人である。年代構成を
図8(A)に、性別比を
図8(B)に示す。また、パーソナルコンピュータ(パソコン)を使用する時間について
図8(C)に、スマートフォンを使用する時間について
図8(D)に示す。
【0038】
このような年齢や性別の構成、電子機器の使用状態の使用者にアンケートを取った。
まず、有害電磁波抑制装置10を使用した結果、何らかの効果を自覚するまでの期間を尋ねた質問に対して、
図9(A)に示すように、2週間以内に効果を感じたと回答した人は90%であった。
【0039】
また、有害電磁波抑制装置10をパソコンの使用時にパソコンの傍においてどれくらいストレス(目の疲れや後頭部痛)が減ったか、との質問に対しては、
図9(B)に示すように、減った(とても減った、少し減った)と回答した人は70%であった。
次に、有害電磁波抑制装置10を就寝時に枕元に置くとよく眠れるようになったか、との質問に対しては、
図9(C)に示すように、よく眠れた、少し寝やすくなったと回答した人は83%であった。
【0040】
次に、飛行機、新幹線、長距離バス、ハイブリッドカーに乗るとき、有害電磁波抑制装置10を身体の近くに置いて、ストレスが減ったか、との質問に対しては、
図9(D)に示すように、減った(かなり減った、少し減った)と回答した人は58%であった。
更に、Wi−Fi環境で食事するとき、有害電磁波抑制装置10をテーブルの上においてスイッチをオン‐オフすると雰囲気がリラックスモードになったか、との質問に対しては、
図9(E)に示すように、とてもなった(リラックスできた)、少しなった(少しリラックスできた)と回答した人は76%であった。
【0041】
(実施例2)
次に、有害電磁波抑制装置10による脳波に及ぼす効果について説明する。
脳波に及ぼす効果は、次のような内容にて測定した。
まず、被験者は、4名の健常な医療関係者(男性2名60代、女性2名40代)に対し、約10分の脳波計測を実施した。脳波計測は、米国EEGer社製のニューロフィードバック機器を測定装置として用いた。
この測定装置からの各電極について、被験者の頭頂部(Cz)に皿電極のアクティブ電極、右耳朶にクリップ型のリファレンス電極、左耳朶にクリップ型のアンカー電極をペーストで貼り付けた。
測定方法は、被験者を椅子に座らせ、机上のパーソナルコンピュータのモニタに向かい、開眼状態で「モニタをぼおっと見てください。」というような教示を与え、被験者が落ち着いてから、脳波測定を開始した。
結果を
図10に示す。
【0042】
第1の被験者は、40代の女性であり、有害電磁波抑制装置10を一日6時間以上、3ヵ月間使用した。
3つの周波数帯域が臨床場面でのニューロフィードバックでは、2μVから20μV以内に収まることが望ましいとされるが、すべてその範囲に入っていた。
脳波を
図10(A)に示し、数値を下記表に示す。
【0043】
第2の被験者は、40代の女性であり、有害電磁波抑制装置10を全く使用していない。結果、脳波は、θ波とβ波が正常範囲の20μボルトを大きく逸脱していた。
脳波を
図10(B)に示し、数値を下記表に示す。
【0044】
第3の被験者は、60代の男性であり、有害電磁波抑制装置10を一日6時間以上、3ヵ月間使用した。
3つの周波数帯域が、2μVから20μVの振幅であった。
脳波を
図10(C)に示し、数値を下記表に示す。
【0045】
第4の被験者は、60代の男性であり、有害電磁波抑制装置10を全く使用していない。3つの周波数帯域は正常範囲であるが、50Hz周辺にスペクトラム画像に非常に強い振幅がみられる。これは一般的にみられない脳波のパターンである。
脳波を
図10(D)に示し、数値を下記表に示す。
【0046】
これらから、有害電磁波抑制装置10を使用したことのない 第2の被験者(40代女性)と第4の被験者(60代男性)の脳波は正常の脳波パターンから逸脱していたことがわかった。一方、有害電磁波抑制装置10を3カ月以上使用している第1の被験者(40代女性)と第3の被験者(60代男性)の3つの周波数帯域の振幅はすべて望ましいものであった。
この脳波状態は、俯瞰しつつ集中している状態を示すものである。従って、これらの測定結果から、有害電磁波抑制装置10を長期間使用することにより、脳波を活性化しつつ、脳機能を良い状態に維持する効果があると示唆された。
【0047】
このように
図1に示す有害電磁波抑制装置10を使用することで、有害な電磁波を抑制することができるので、有害電磁波の影響を抑制することができる。従って、有害電磁波抑制装置10は快眠が得られ、体調が整えられるので、使用者は快適な生活を得ることができる。
【0048】
よって、本実施の形態では、有害電磁波抑制装置10を有害電磁波の抑制効果が高い新規の装置として、使用者に提供することができる。