【課題】被験者の身体に容易に装着し、内蔵された3つのセンサが検出した睡眠検出情報を処理して、睡眠時に生じる様々な現象に対して正確な睡眠解析を行い、子供等に対しても苦痛なく解析可能な睡眠解析方法及び装置を提供する。
【解決手段】温度センサ、加速度センサ及び心電計を備えた睡眠情報検出装置を被験者の身体に装着し、睡眠情報検出装置から発信された温度データ、加速度データ及び心電データに基づいて、被験者の入眠、脱眠等の睡眠状態を正確に解析する。
温度センサ、加速度センサ及び心電計を備えた睡眠情報検出装置を被験者の身体に装着し、前記睡眠情報検出装置で得られる温度データ、加速度データ及び心電データに基づいて前記被験者の睡眠状態を解析する睡眠解析方法。
前記温度データの上昇、前記交換神経指標の上昇及び前記副交感神経指標の低下の交叉変化、前記心拍数の低下、前記呼吸数の低下、前記消費エネルギーの低下に基づいて前記入眠(潜時)を判定する請求項3に記載の睡眠解析方法。
前記睡眠情報検出装置からの前記温度データ、前記加速度データ及び前記心電データを、メモリを介する端子接続で、若しくは無線で、若しくは有線で、若しくは光通信で前記睡眠解析部に送信するようになっている請求項5に記載の睡眠解析装置。
前記温度データの上昇、前記副交換神経指標の上昇及び前記交感神経指標の低下の交叉変化、前記心拍数の低下、前記呼吸数の低下、前記消費エネルギーの低下に基づいて前記入眠(潜時)を判定する請求項7に記載の睡眠解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
睡眠解析のベストな方法の1つは、脳波計を用いることである。脳波には様々な種類があり、α波は目を閉じて安静状態になると現れる波で、周波数は8〜13Hz、振幅30〜60μV程度の不規則な波形であり、β波は集中している時によく現れる波で、周波数14〜30Hz、振幅30μV以下の不規則な波形であることが知られている。また、θ波は、うとうとしている状態、浅い睡眠状態のときに現れる波で、周波数は4〜7Hz、振幅は10〜50μV程度の波形を示し、δ波は深い睡眠や、麻酔に打たれている状況のときに現れる波で、周波数は0.5〜4Hz、振幅は20〜200μV程度の波形を示すことが知られている。そして、睡眠中の脳波から見ると、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、人は寝つき始めるとノンレム睡眠に入り、徐々に深い睡眠に入っていき、徐々に心拍数や血圧、体温(体内)などが低下するが、この状況をノンレム睡眠と呼び、脳は休息している状態になり、脳波はδ波が多くなる。次いで脳波は急速に眠り始めと同じ状況になり、浅い睡眠時に見られるθ波が多くなり、この状態をレム睡眠と呼ぶ。
【0012】
なお、ノンレム睡眠は睡眠の深さ(睡眠度)によって浅い方から第1類〜第4類に分類されており、第1類及び第2類が浅睡眠とされ、第3類及び第4類が深睡眠と定義されている。
【0013】
本発明では、大掛かりになる脳波計を用いたポリグラフ装置ではなく、できるだけ少ないセンサ(温度センサ、加速度センサ、心電計)による睡眠検出情報に基づき、脳が睡眠に入った入眠(潜時)、睡眠から覚めた脱眠やノンレム睡眠の状態を確実且つ正確に検出することができると共に、睡眠中に生じる無呼吸症候群や寝返りの回数、或いは睡眠の良し悪しなども検出する。被験者に装着する睡眠情報検出装置と、睡眠情報検出装置からの睡眠検出情報に基づいて睡眠解析を行う睡眠解析部とで構成されている。
【0014】
図1は、本発明に用いる睡眠情報検出装置100の外観構成の一例を示しており、睡眠情報検出装置100本体は平板状の矩形体であり、両側には、合成樹脂等で成る可撓性で長形状の電極片101A及び101Bが装着されており、前面部には、内蔵のバッテリ130を充電するためのUSB(Universal Serial Bus)端子102が設けられている。本例では、心電データ取得の電極が2個の場合であり、電極が3個の場合には3枚の電極片が装着される。また、USB端子102は前面に突出しているが、埋没させて、使用時に突出する可動構造であっても良く、設置場所は適宜変更可能である。
【0015】
図2は睡眠情報検出装置100本体の底面を示しており、2つの円形の導電材103A及び103Bが本体底面の両側に埋設されており、導電材103A及び103Bの中央部には、電極片101A及び101Bを着脱するための、窪みである凹部104A及び104Bが設けられている。
【0016】
また、電極片101A及び101Bは同一構成であり、電極片101Aの構成例を
図3に示す。
図3(A)は側面図であり、
図3(B)は平面図である。電極片101Aは可撓性ある長形状の合成樹脂等で成っており、一表面の一端部には、導電材103Aと接触して係合する円盤状で導電性の係合部材105Aが設けられており、係合部材105Aの上面には導電材103Aの凹部104Aに嵌合する円柱状の凸部106Aが設けられている。凹部104Aと凸部106Aとは、容易に着脱可能である。電極片101Aの他の表面の他端部には、被験者の皮膚に接触ないしは皮膚を押圧する円盤状の電極材107Aが設けられており、係合部材105Aと電極材107Aとが導電性のリード線108Aで電気的に接続されており、電極材107Aで測定された電位は、リード線108A、係合部材105A(凸部106A)、導電材103A(凹部104A)を経て睡眠情報検出装置100内の制御部140に入力され、その後、後述する睡眠解析部300に入力される。電極材107Aの周辺は公知の吸盤構造であり、被験者の皮膚(胸部)に容易に装着可能となっている。
【0017】
このような構成の2つの電極片101A及び101Bを、導電材103A及び103Bの各凹部104A及び104Bと、係合部材105A及び105Bの各凸部106A及び106Bとを嵌合することにより、睡眠情報検出装置100に装着することができ、電極片101A及び101Bの装着状態では
図1の斜視図及び
図4の底面図のような構造になる。この状態で、電極片101A及び101Bの両端部の吸盤部を被験者の胸部に当て、睡眠情報検出装置100を
図5に示すように被験者に装着する。吸盤部を被験者の胸部に当てるだけ、若しくは軽く押す(押圧)だけで装着できるので、子供や乳幼児等に対しても容易である。
【0018】
なお、電極材107A及び107Bは心電計の電極であり、本例では被験者の2か所の電位を測定するようになっているので、その間隔dは80[mm]以上となっていることが望ましい。また、装着部材も吸盤構造に限られるものではなく、公知の他の手段を用いることができる。
【0019】
図6は、被験者に装着した睡眠情報検出装置100とPC(パソコン)等で成る睡眠解析部300の各種利用形態を示しており、
図6(A)のシステムは、睡眠情報検出装置100で検出された睡眠検出情報が無線送信され、睡眠解析部300が直接睡眠検出情報を受信して、睡眠解析部300がデータ処理して解析した睡眠解析結果が、印字、表示、情報等で出力されるようになっている。また、
図6(B)のシステムでは、睡眠情報検出装置100で検出された睡眠検出情報が、ネットワーク1を経て睡眠解析部300に入力されている。ネットワーク1は、移動通信網、インターネット等の公衆網、或いは固定電話網等を含むことができ、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)などにより実現することができ、有線・無線を問わない。また、
図6(C)のシステムは、端末装置2を経てネットワーク1に接続され、ネットワーク1に睡眠解析部300が接続された例を示している。
【0020】
なお、
図6では、睡眠情報検出装置100から睡眠検出情報が無線で出力される例を示しているが、有線や光通信でも良く、また、USB端子102を直接睡眠解析部300の所定端子部に接続して、睡眠解析部300内のメモリに格納されている睡眠検出情報を読み取って処理するようにしても良い(直接送受方式)。
【0021】
図7は睡眠情報検出装置100の内部構成の一例を示しており、睡眠情報検出装置100は睡眠情報検出のためのセンサ部120を有しており、センサ部120は被験者の皮膚(表皮)温度を検出して温度データThを出力する温度センサ121と、被験者の動き(運動)の加速度を測定して加速度データαを出力する加速度センサ122と、被験者と接触する2個の電極107A及び107Bに基づいて心電データECを出力する心電計123とで構成されている。温度センサ121は被検者の皮膚温度を測定し、測定された温度データThは制御部140に入力される。加速度センサ122は被験者の動き(運動)に応じた加速度を各直交する3軸(x軸、y軸、z軸)について測定し、測定されたxyz軸の加速度データαは制御部140に入力される。心電計122は2個の電極107A及び107Bにより電位を測定し、電位差から演算された被験者の心電データECを制御部140に入力する。測定される電位は微弱であり、心電計123内部の増幅器等で増幅されるので、ノイズの影響を受け易い。よって、ノイズの影響を低減しS/N比を向上させるために、電極107A,107Bや増幅器等は近接して配置される。
【0022】
上述のように、センサ部120から出力される温度データTh、加速度データα及び心電データECは制御部140に入力され、制御部140は、入力された温度データTh、加速度データα及び心電データECを、データ毎に予め設定されたメモリ141内の領域にそれぞれ格納すると共に、送信部142を経て、睡眠検出情報RSとして外部の睡眠解析部300に送信する。また、睡眠情報検出装置100には、各素子に電力を供給する充電可能なバッテリ130が内臓されており、バッテリ130はUSB端子102をPC等のUSB端子に挿入することで充電される。また、上述した直接送受方式の形態では、USB端子102を睡眠解析部300の所定端子部に差し込むことで、メモリ141に格納されたデータを取り込むことができる。
【0023】
モード切換スイッチ(図示せず)により同時送信モードが設定されている場合には、制御部140は検出された睡眠検出情報をメモリ141に記憶することなく送信部142に送信し、送信部142は睡眠検出情報RSを外部に送信する。モード切換スイッチにより記憶送信モードが設定されている場合には、睡眠検出情報を一旦メモリ141に記憶し、その後随時情報を読み出して送信部142に送信し、送信部142は睡眠検出情報RSを外部に送信する。この場合、検出された睡眠検出情報をメモリ141に記憶すると同時に外部に無線送信することも、メモリ141に記憶するだけということもできる。メモリ141に記憶するだけの場合には、上述した直接送受方式によって睡眠解析部300に取り込む。送信部142は、入力された睡眠検出情報RSAを外部の睡眠解析部300が受信可能な形式に変換し、睡眠検出情報RSとして無線送信する。無線送信の方式として、ワイファイ(Wi−Fi)方式やブルートゥース(Blue tooth(登録商標)方式等を使用する。睡眠解析部300はパソコン等のソフトウェアで構築され、受信した睡眠検出情報RSを基に被検者の睡眠状態を科学的に解析する。
【0024】
本発明の睡眠解析に用いる睡眠情報検出装置100は、
図5及び
図8に示すように被験者の胸部に装着され、
図8(A)の立位状態において上下方向がy軸(加速度α
y)、左右方向がx軸(加速度α
x)、前後方向がz軸(加速度α
z)となっており、
図8(B)の仰臥位状態において左右方向がx軸(加速度α
x)、上下方向がy軸(加速度α
y)、紙面垂直方向がz軸(加速度α
z)となっているが、軸関係は適宜変更可能である。加速度センサ122は、被験者の胸部全体の運動(動き)、心臓、気道、横隔膜、肋骨などの動きに関連した加速度を測定し、測定された全ての加速度データαは制御部140に入力される。また、心電計123は、
図9に示すように電極107Aの電位e1及び電極107Bの電位e2の差を数1により求めて、心電データECを出力する電位差算出部123Aで成っており、心電データECも制御部140に入力入される。
(数1)
EC=e1−e2
なお、電極数が3個の場合(3個目の電極電位をe3とする)には、下記数2又は数3に従って電位差を算出し、電位差に基づいて演算された心電データECを出力する。
(数2)
EC={(e1−e2)+(e1−e3)}/2
(数3)
EC=e1−(e2+e3)/2
図10は睡眠解析部300の構成例を示しており、睡眠情報検出装置100から送信された温度データTh、加速度データα及び心電データECの睡眠検出情報RSは、フォーマット変換等を行うインタフェース(I/F)の入力部301に入力され、心電データECは入力部301を経てピーク検出部302に入力される。温度データThはそのまま解析処理部320に入力され、加速度データαは呼吸検出部310、姿勢検出部360及び運動検出部370に入力される。姿勢検出部360で検出された、立位、仰臥位などを示す姿勢データSTは解析処理部320に入力され、運動加速度α
mから求められ、運動検出部370で検出された消費エネルギーENは解析処理部320に入力される。
【0025】
ピーク検出部302において心電データECのピークRが検出され、検出されたピークRを示すピーク信号PSはピーク間隔検出部303に入力される。ピーク間隔検出部303はピーク信号PSに基づいて各データのピーク間隔RRIを検出し、ピーク間隔RRIを示すピーク間隔信号IPSは、時間/周波数解析部350、心拍数検出部340及びCVRR(Coefficient of Variation of RR Interval)検出部341に入力される。時間/周波数解析部350はピーク間隔RRIの時間に対する周波数を解析し、解析された周波数信号を入力する波長解析部351で、周波数が0.15Hz以上を高波長HFとして解析し、周波数が0.15Hzより小さく、0.04Hz以上の周波数を低波長LFとして解析する。解析された高波長HF及び低波長LFは自律神経計算部352に入力され、自律神経の活動度を示す交感神経(Sympathetic Nervous System)指標SNS及び副交感神経(Parasympathetic Nervous System)指標PSNSが、下記数4に従って計算される。
(数4)
HF=副交感神経指標PSNS
LF/HF=交感神経指標SNS
即ち、副交感神経の活動指標となる副交感神経指標PSNSは高波長HFであり、交感神経の活動指標となる交感神経指標SNSはLF/HFであり、これら副交感神経指標PSNS及び交感神経指標SNSは解析処理部320に入力されると共に、副交感神経指標PSNSは呼吸検出部310及び無呼吸症候群検出部342に入力されてフーリエ解析に供される。また、ピーク間隔信号IPSは心拍数検出部340及びCVRR検出部341に入力され、検出された心拍数HNは解析処理部320に入力される。ピーク間隔信号IPSは心電データECに基づいており、心臓の脈動が心拍数と関連しているので、容易に心拍数HNを検出することができる。
【0026】
更に、入力部301からの加速度データαは、呼吸検出部310、姿勢検出部360及び運動検出部370に入力され、呼吸検出部310で検出された呼吸数BRは無呼吸症候群検出部342に入力されると共に、解析処理部320に入力される。姿勢検出部360からの、立位、仰臥位などの姿勢データST及び運動検出部370からの、運動加速度(α
xm、α
ym、α
zm)に基づいて計算される消費エネルギーENは解析処理部320に入力される。解析処理部320で解析された睡眠解析情報SYAは、フォーマットを合わせるためのインタフェース(I/F)の出力部304を経て睡眠解析情報SYとして出力される。
【0027】
本発明に係る睡眠情報検出装置100は加速度センサ122を内蔵しており、
図8(A)及び(B)で説明したように、x軸の加速度α
x、y軸の加速度α
y、z軸の加速度α
zを検出して出力する。そして、各軸の加速度α
x、α
y、α
zの中には、それぞれ重力加速度α
g、運動加速度α
m、微小体動加速度α
sが存在し、例えばx軸の加速度α
xは下記数5で表わされ、運動中は一般的に下記数6の関係がある。y軸の加速度α
y及びz軸の加速度α
zについても同様である。
(数5)
α
x=α
xg+α
xm+α
xs
(数6)
α
m>α
g>α
s
微小体動加速度α
sの出力は非常に小さく、0.01[G]以下である。また、運動加速度α
mは軽い運動位までなら数[G]である。呼吸の検出には、xyz各軸について微小体動加速度α
sを用いるが、約0.01[G]以下の小さな範囲の体動加速度α
sを検出しなければならない。そのため、本発明の加速度データαの処理にはサンプリング周期を高くすると共に、小さな出力を上げるために出力ゲインを上昇させるように、2種類のバンドパスフィルタ(BPS)を用いる。即ち、呼吸数は1分間に約10〜40回、周波数にして約0.17[Hz]〜0.67[Hz]であるので、この周波数を通過させるBPFを用いる。また、重力の大きさは0.01[G]以下のローパスフィルタ(LPF)を用いる。それでもノイズが大きい場合には、高速フーリエ変換(FFT)を用いて呼吸数(呼吸周波数)BRを算出する。
【0028】
更に検討する必要があることは、睡眠情報検出装置100を被験者の胸部に装着した時の加速度センサ122の出力の検討である。人によって,気道の動き(z軸方向)が大きい人と、横隔膜の動き(y軸方向)が大きい人と、肋骨の動き(X軸方向及びz軸方向)大きい人とに分類できるので、睡眠情報の検出に際しての最初の所定時間(例えば5秒)、z軸方向の加速度データα
zsと、y軸方向の加速度データα
ysと、x軸方向の加速度データα
xsとを自動的に比較し、大きい方の2つの加速度データを採用する。これは呼吸数検出に大きな影響を与える。実験によれば、一般的に横隔膜の動き(y軸方向)の方が大きい人が多いが、個々のケースで異なるので、気道の動き(z軸方向)、横隔膜の動き(y軸方向)及び肋骨の動き(X軸方向及びz軸方向)を比較して、大きい値を自動的に選択する構成とする。
【0029】
このような前提の基に構成された呼吸検出部310の構成例を
図11に示して説明する。睡眠情報検出装置100の加速度センサ122から加速度α(α
x、α
y、α
z)が選択部311に入力され、大きい方の2つの加速度α
y、α
z、α
xが選択されて高速サンプリング部312に入力される。高速サンプリング部312では、0.01[G]以下の微小体動加速度α
sを取得するために、一般的な呼吸周波数よりも高い高速サンプリングを行い、高速サンプリングされた加速度α
y1、α
z1、α
x1をBPF313に入力する。BPF313は、通常人の1分間の呼吸数10〜40回に対応する周波数0.17〜0.67[Hz]の周波数バンド幅を通過させ、BPF313でバンドパス濾過処理された加速度α
y2、α
z2、α
x2をLPF314に入力する。LPF314は重力の大きさが0.01[G]以下を通過させ、ローパス濾過処理された加速度α
y3、α
z3、α
x3を高速フーリエ変換部(FTT)315に入力する。FTT315はノイズ成分を除去して周波数信号α
ys、α
zs、α
xsを出力し、周波数信号α
ys、α
zs、α
zsは比較部316に入力される。比較部316で大きい方の周波数信号が自動選択され、呼吸演算部317に入力される。呼吸演算部317で周波数信号から演算された呼吸数BRは解析処理部320に入力されると共に、無呼吸症候群検出部342に入力される。
【0030】
無呼吸症候群検出部342は呼吸数BR及び副交感神経指標PSNSを入力しており、所定時間(例えば10秒)の間に呼吸が無く、呼吸数BRが“0”となった場合に無呼吸信号NBを出力する。また、副交感神経指標PSNSが所定時間(例えば10秒)の間、何の出力も無い場合にも無呼吸症候群の判定を行うことができるので、両方の判定を並行して行っても良く、いずれか一方の実施でも良い。無呼吸信号NBは解析処理部320に入力される。
【0031】
図12は心電データECの波形例を示しており、ピーク検出部302は心電データECのピークR1,R2,・・・Rnを検出し、ピークR1,R2,・・・Rnを示すピーク信号PSはピーク間隔検出部303に入力される。ピーク間隔検出部303はピークRの間隔、つまりピークR1とピークR2のピーク間隔RRI1、ピークR2とピークR3のピーク間隔RRI2、ピークR3とピークR4のピーク間隔RRI3、・・・が順次検出され、これらピーク間隔RRIを示すピーク間隔信号IPSが時間/周波数解析部350、心拍数検出部340及びCVRR検出部341に入力される。心電データECのピーク信号PS及びピーク間隔信号IPSに基づいてピーク間隔の変化率RRIVを求め、変化率RRIVからCVRR(Coefficient of Variation of RR Interval)と称される自律神経の活動を正規化した係数CVRRを演算する。係数CVRRの演算方法は公知であるが、ピーク間隔の分散値をσとし、ピーク間隔の平均値をMとすると、下記数7で表わされる。係数CVRRは解析処理部320に入力され、自律神経の活動の判定に利用される。
【0032】
【数7】
図13の波形図において、正常な被験者は、
図13(A)に示すようにピーク間隔RRI1〜RRI3に多少のバラツキがあり、異常な被験者は、
図13(B)に示すようにピーク間隔RRI1〜RRI3がほぼ均一でバラツキがない。
【0033】
交換神経の活動指標となる交換神経指標SNSと睡眠(ノンレム睡眠の浅睡眠と深睡眠)との関係は
図14であることが知られており、この関係から交換神経指標SNSの分布に基づいて深睡眠と浅睡眠を識別することができる。また、
図15は、呼吸周波数変動幅VRFRE(Variation of Respiratory Frequency)に対する深睡眠と浅睡眠との関係を示しており、この関係から呼吸周波数変動幅VRFREに基づいて深睡眠と浅睡眠を識別することができる。
【0034】
また、交感神経指標SNSと副交感神経指標PSNSとが睡眠に及ぼす影響は、
図16に示すような特性となっている。即ち、交感神経指標SNSと副交感神経指標PSNSとが拮抗している
図16(B)は、普通の睡眠状態の特性を示しており、副交感神経指標PSNSが広範囲に亘っている
図16(A)は良い睡眠状態を示している。逆に、交感神経指標SNSが広範囲に亘っていて、副交感神経指標PSNSが狭い
図16(C)は悪い睡眠を示している。
【0035】
次に、運動検出部370が、加速度データαに基づいて消費エネルギーENを検出する動作を説明する。
【0036】
運動強度(運動の強さ)は、体重1kg当たりに身体に取り込まれる酸素の量が指標とされるが、酸素の量は分かり難いため、単位METs(Metabolic Equivalent)が使用される。単位METsは、安静時の酸素摂取量3.5ml/kg/分を“1”としたときに、その運動で何倍のエネルギーを消費できるかで運動強度を示す単位である。そして、運動加速度α
mと単位METsとの関係は、
図17に示すような特性になっている。従って、運動加速度α
mを検出することによって、相当するMETsを求めることができる。
図17の例では、運動加速度α
maのときに9.8METs(161m/分のランニング)であり、運動加速度α
mcのときに3.0METs(普通歩行)となっている。このように、検出された運動加速度α
mから単位METsの値を求め、下記数8に従って消費エネルギーENを算出する。算出された消費エネルギーENは、解析処理部320に入力される。
(数8)
EN=METs×時間×体重×1.05
図18は解析処理部320の構成例を示しており、温度データThの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT1を出力する温度変化検出部321と、心拍数HNの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT2を出力する心拍数変化検出部322と、呼吸数BRの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT3を出力する呼吸数変化検出部323と、交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSを入力し、両者の相関関係に基づいて睡眠度を判定して判定結果DT4を出力する睡眠度判定部324と、交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSの交叉の変化(上昇、低下)を判定して判定結果DT5を出力する交叉判定部325と、姿勢信号STに基づいて被験者の姿勢(立位、仰臥位、側臥位など)を判定して判定結果DT6を出力する姿勢判定部326と、消費エネルギーENの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT7を出力する消費エネルギー変化検出部327と、検出結果DT1〜DT3及びDT7、判定結果DT4〜DT6並びに無呼吸信号NBを入力して睡眠解析情報SYAを出力する睡眠判定部328とで構成されている。
【0037】
なお、上記各変化の検出においては、それぞれ上昇判定のための閾値、低下判定のための閾値が定められており、同一の値でも、異なる値であっても良い。
【0038】
このような構成において、その動作例を
図19のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
先ず睡眠情報検出装置100で温度データTh、加速度データα及び心電データECの睡眠情報が検出され(ステップS1)、睡眠情報検出装置100から睡眠検出情報がそのまま送信されるか若しくは一旦メモリ141に記憶される(ステップS2)。その後、睡眠検出情報(温度データTh、加速度データα及び心電データEC)RSが入力部301を経て睡眠解析部300に入力され(ステップS10)、ピーク検出部302は心電データECのピークを検出し(ステップS11)、ピーク間隔検出部303はピーク検出部302からのピーク信号PSに基づいてピーク間隔RRIを検出する(ステップS12)。ピーク間隔検出部303からのピーク間隔信号IPSは心拍数検出部340及びCVRR検出部341に入力され、心拍数検出部340で心拍数HNが検出されると共に(ステップS13)、CVRR検出部341で係数CVRRが検出される(ステップS14)。
【0040】
また、ピーク間隔信号IPSは時間/周波数解析部350に入力されて時間/周波数解析が行われ(ステップS20)、周波数解析に基づいた波長解析が波長解析部351で行われる(ステップS21)。解析された高波長HF及び低波長LFは自律神経計算部352に入力され、自律神経に関連する副交感神経指標PSNS及び交感神経指標SNSが計算される(ステップS22)。副交感神経指標PSNS及び交感神経指標SNSは解析処理部320に入力され、副交感神経指標PSNSは、呼吸検出部310及び無呼吸症候群検出部342に入力される。
【0041】
呼吸検出部310は加速度データα及び副交感神経指標PSNSに基づいて呼吸数BRを検出し(ステップS23)、呼吸数BRは解析処理部320に入力されると共に、無呼吸症候群検出部342に入力される。姿勢検出部360は加速度データαに基づいて被験者の姿勢を検出し(ステップS24)、姿勢データSTは解析処理部320に入力される。また、運動検出部370は加速度データαに基づいて消費エネルギーENを検出し(ステップS25)、無呼吸症候群検出部342は呼吸数BR及び副交感神経指標PSNSに基づいて無呼吸症候群を検出し(ステップS26)、無呼吸症候群を示す無呼吸信号NBは解析処理部320に入力される。解析処理部320は入力された各データに基づいて睡眠状態を検出し(ステップS100)、解析された結果である睡眠解析情報SYAは出力部304を経て出力される(ステップS200)。
【0042】
なお、上述の各データの入力や各処理の順番等は適宜変更可能である。
【0043】
次に、解析処理部320の動作例(
図19のステップS100)を
図20のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
解析処理部320は、先ず温度データThに変化(閾値Th1より上昇、閾値Th2より低下)が有るか否かを判定し(ステップS101)、変化が有る場合には心拍数HNに変化(閾値HN1より低下、閾値HN2より上昇)が有るか否かを判定し(ステップS102)、変化が有る場合には更に呼吸数BRに変化(閾値BR1より低下、閾値BR2より上昇)が有るか否かを判定する(ステップS103)。呼吸数BRに変化が有る場合には副交感神経指標PSNS及び交感神経指標SNSに基づいて睡眠度(浅睡眠、深睡眠)を判定し(ステップS104)、副交感神経指標PSNS及び交感神経指標SNSの交叉に変化(閾値EC1より低下、閾値EC2より上昇)が有るか否かを判定し(ステップS105)、変化が有る場合には姿勢検出部360は被験者の姿勢を判定する(ステップS106)。次いで、運動検出部370からの消費エネルギーENに変化(閾値EN1より低下、閾値EN2より上昇)が有るか否かを判定し(ステップS107)、変化が有る場合には睡眠の判定を行い(ステップS110)、出力部304から判定結果SYを出力する(ステップS120)。
【0045】
上記ステップS101、ステップS102、ステップS103、ステップS105及びステップS107において、変化が無い場合にはいずれも上記ステップS110の判定処理となる。
【0046】
図21は、本発明が解析する睡眠情報の変化と動作例を示すタイミングチャートであり、
図21を参照して本発明の動作を説明する。
【0047】
被験者は睡眠解析のため、
図5に示すように睡眠情報検出装置100を胸部に装着する。本発明によれば、睡眠情報検出装置100の胸部への装着も容易である。また、環境的には、
図6に示されるような形態で睡眠解析部300に接続されているか、若しくは睡眠情報検出装置100のメモリ141に検出したデータを格納し、USB端子102を経てデータ取り込みを行っても良い。
【0048】
図21(A)は被験者が睡眠のために入床した時点t1、睡眠に入った入眠の時点t2、睡眠から覚めた脱眠の時点t3、起床の時点t4を時間軸で示しており、時間Tに、無呼吸症候群検出部342で無呼吸症候群が検出されたことを示している。
【0049】
時点t1以前の入床する前は、被験者は通常
図21(B)に示すように立位の状態であり、xyz軸は
図8(A)で説明した通りである。そして、立位状態から入床する場合は、垂直のy軸に対して角度π/2だけ体を回転して、仰臥位になって寝床(ベッド)に入ることになる(時点t1(Bed-in))。入床した状態では、一般的に縦方向(z軸)の動きはなく、横方向(x軸及びy軸)の運動に限定されると考えられる。ただし、被験者の心臓、気道、横隔膜、肋骨などは自律神経(交感神経、副交感神経)によって、運動している。また、仰臥位の睡眠状態から脱眠し(時点t3(Bed-out))、起床する場合は逆に角度π/2だけ体を回転して立位状態になる(時点t4(Bed-out))。このような被験者の様子は、姿勢データSTに基づいて姿勢検出部360で検出され、姿勢判定部326で判定された判定結果DT6が睡眠判定部328に入力される。
【0050】
被験者の皮膚温度である温度データThは温度センサ121によって検出され、制御部140及び送信部142を経て解析処理部320内の温度変化検出部321に入力され、温度データThの上昇や低下が閾値に基づいて検出される。温度データThは、入床する前(時点t1以前)と入眠する前(時点t2以前)は、
図21(D)に示されるように一定の温度(平熱)を維持している。そして、入眠状態(時点t2以降)になると温度データThは徐々に上昇し、睡眠から覚めると(時点t3以降)徐々に低下して一定の温度(平熱)に戻る。従って、温度変化検出部321が温度データThの変化を監視し、検出結果DT1を睡眠判定部328に入力することによって、入眠と脱眠を1つ目の要因として検出することができる。
【0051】
また、心電データECは、ピーク検出部302及びピーク間隔検出部303を経てピーク間隔信号IPSとして心拍数検出部340に入力され、心拍数検出部340で検出された心拍数HNが解析処理部320内の心拍数変化検出部322に入力され、心拍数HNの変化(上昇、低下)が閾値に基づいて検出される。心拍数HNは、入床する前(時点t1以前)と入眠する前(時点t2以前)は、
図21(C)に示されるように一定の心拍数を維持しているが、入眠状態(時点t2以降)になると徐々に低下し、睡眠から覚めると(時点t3以降)徐々に上昇して一定の心拍数HNに戻る。従って、心拍数変化検出部322が心拍数HNの変化を監視し、検出結果DT2を睡眠判定部328に入力することによって、入眠と脱眠を2つ目の要因として検出することができる。
【0052】
呼吸数BRは解析処理部320内の呼吸数数変化検出部323に入力され、呼吸数BRの変化(上昇、低下)が閾値に基づいて検出される。呼吸数BRは、入床する前(時点t1以前)と入眠する前(時点t2以前)は、
図21(E)に示されるように一定の呼吸数を維持しているが、入眠状態(時点t2以降)になると徐々に低下し、睡眠から覚めると(時点t3以降)徐々に上昇して一定の呼吸数に戻る。従って、呼吸数変化検出部323が呼吸数BRの変化を監視し、検出結果DT3を睡眠判定部328に入力することによって、入眠と脱眠を3つ目の要因として検出することができる。
【0053】
交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSは睡眠度判定部324及び交叉判定部325に入力されており、睡眠度判定部324は交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSの相関関係に基づいて深睡眠であるか若しくは浅睡眠であるかを判定し、判定結果DT4を睡眠判定部328に入力する。また、
図21(G)に示すように、入眠前は交感神経指標SNSが高く、副交感神経指標PSNSが低くなっているが、入眠に入ると逆に交感神経指標PSNSが徐々に低くなり、副交感神経指標PSNSが徐々に高くなって交叉するので、この交叉を検出することにより入眠を検出することができる。同様に、脱眠すると交感神経指標SNSは徐々に高くなり、副交感神経指標PSNSは徐々に低くなって交叉するので、この交叉若しくは変化を検出することにより脱眠を検出することができる。従って、交叉判定部325が交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSの交叉若しくは変化を監視し、判定結果DT5を睡眠判定部328に入力することによって、入眠と脱眠を4つ目の要因として検出することができる。
【0054】
図21(B)に示すように入床する前(時点t1以前)は立位状態であり、
図21(F)に示すように加速度データαは、重力に対しての加速度α
yが1[G]となっているが、入床すると姿勢が仰臥位になるので(時点t1以降)加速度α
yは“0”となる。そして、起床すると(時点t4以降)再び重力に対しての加速度α
yが1[G]となる。入床前(時点t1以前)は立位であるので重力に平行な加速度α
zは“0”となっているが、入床して仰臥位状態になると(時点t2以降)加速度α
zが重力方向に作用するので加速度α
zは1[G]となり、起床すると(時点t4以降)再び重力に対しての加速度α
zは“0”となる。このような被験者の姿勢は、姿勢検出部360及び姿勢判定部326によって判定され、睡眠解析の重要な要素となる。xyz軸の加速度α
x、α
y、α
zから被験者の姿勢を判定でき、側臥位も判定できるので、睡眠中の寝返り回数も検出可能である。
【0055】
運動検出部370で検出された消費エネルギーENは、消費エネルギー変化検出部327に入力され、消費エネルギーENの変化が閾値に基づいて検出される。消費エネルギーENは、入床する前(時点t1以前)と入眠する前(時点t2以前)は、
図21(F)に示されるように一定の大きさを維持しているが、入眠状態(時点t2以降)になると低下し、睡眠から覚めると(時点t3以降)上昇して一定の大きさに戻る。従って、消費エネルギー変化検出部327が消費エネルギーENの変化を監視し、検出結果DT7を睡眠判定部328に入力することによって、入眠と脱眠を5つ目の要因として検出することができる。睡眠判定部328は上記検出結果や判定結果に基づく睡眠解析情報SYAを出力する。無呼吸信号NBが睡眠判定部328に入力された場合には、無呼吸症候群を示す睡眠解析情報SYAを出力する。
【0056】
このように本発明の睡眠解析によれば、心拍数HN、皮膚の温度データTh、呼吸数BR、消費エネルギーEN、交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSの5つの要因が全て成立したときに、入眠と脱眠を判定しているので、解析結果が正確であるという特徴を有する。また、無呼吸症候群や寝返り回数などについても判定することができる。
【0057】
図22は実際の検出データの一例を示しており、睡眠中に生じる無呼吸発作やシャワーを浴びた状態が示されている。