(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-159581(P2021-159581A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】スリーブ用アダプタ及び外科用ケーブルスリーブユニット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20210913BHJP
A61B 17/86 20060101ALI20210913BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/86
A61B17/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-66830(P2020-66830)
(22)【出願日】2020年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】520117628
【氏名又は名称】クリスメディカルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 正典
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL07
4C160LL37
4C160LL42
(57)【要約】
【課題】スリーブ用アダプタを外科用ケーブルスリーブから取り外す際に外科用ケーブルスリーブに外力が加わる危険性を抑えること。
【解決手段】スリーブ用アダプタ10は外科用ケーブルスリーブ100を電動ドライバ200に接続する。アダプタ本体20は電動ドライバに取り付けられる軸部21と、軸部の先端から延出する、ヘッド部を挟持する挟持部26とを有する。筒状の締付部30はアダプタ本体に挿入され、挟持部に挟持されたヘッド部を固定する。挟持部は円錐台形状を有し、複数の分割爪体27に分割され、先端にはヘッド部が嵌め込まれる窪み27aが形成される。アダプタ本体の軸部には雄ネジ23が形成され、締付部の内面には雄ネジに螺合する雌ネジ35が形成される。雄ネジに対する雌ネジの螺入又は螺出によるアダプタ本体に対する締付部の先後移動に伴って挟持部に対してヘッド部は固定又は固定解除される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ケーブルを挿通するケーブル挿通孔が開けられたヘッド部から、先端に刃部を有するドリルロッドが延出する外科用ケーブルスリーブを、回転駆動工具に接続するためのスリーブ用アダプタにおいて、
前記回転駆動工具に後端部において取り付けられる軸部と、前記軸部の先端から延出する、前記ヘッド部を挟持するための挟持部とを有するアダプタ本体と、
前記アダプタ本体に挿入され、前記挟持部に挟持された前記ヘッド部を固定する筒状の締付部を具備し、
前記挟持部は、先端に向かって径が拡がる円錐台形状を有し、複数の分割爪体に分割され、先端には前記ヘッド部が嵌め込まれる窪みが形成され、
前記アダプタ本体の前記軸部には雄ネジが形成され、
前記締付部の内面には前記雄ネジに螺合する雌ネジが形成され、
前記アダプタ本体の前記雄ネジに対する前記締付部の前記雌ネジの螺入又は螺出による前記アダプタ本体に対する前記締付部の先後移動に伴って前記挟持部に対して前記ヘッド部は固定又は固定解除される、スリーブ用アダプタ。
【請求項2】
前記アダプタ本体及び前記締付部は、樹脂材で形成されている、請求項1に記載のスリーブ用アダプタ。
【請求項3】
前記樹脂材は、可視光線に対する透明性を有する、請求項2に記載のスリーブ用アダプタ。
【請求項4】
前記樹脂材は、X線に対する透明性を有する、請求項2に記載のスリーブ用アダプタ。
【請求項5】
前記樹脂材は、ポリカーボネイト材である、請求項2に記載のスリーブ用アダプタ。
【請求項6】
前記窪みの深さは、前記ヘッド部の厚さと同じ又は若干短い、請求項1に記載のスリーブ用アダプタ。
【請求項7】
外科用ケーブルを挿通するケーブル挿通孔が開けられたヘッド部から、先端に刃部を有するドリルロッドが延出する外科用ケーブルスリーブと、前記外科用ケーブルスリーブを回転駆動工具に接続するためのスリーブ用アダプタとからなる外科用ケーブルスリーブユニットにおいて、
前記スリーブ用アダプタは、
前記回転駆動工具に後端部において取り付けられる軸部と、前記軸部の先端から延出する、前記ヘッド部を挟持するための挟持部とを有するアダプタ本体と、
前記アダプタ本体に挿入され、前記挟持部に挟持された前記ヘッド部を固定する筒状の締付部を具備し、
前記挟持部は、先端に向かって径が拡がる円錐台形状を有し、複数の分割爪体に分割され、先端には前記ヘッド部が嵌め込まれる窪みが形成され、
前記アダプタ本体の前記軸部には雄ネジが形成され、
前記締付部の内面には前記雄ネジに螺合する雌ネジが形成され、
前記アダプタ本体の前記雄ネジに対する前記締付部の前記雌ネジの螺入又は螺出による前記アダプタ本体に対する前記締付部の先後移動に伴って前記挟持部に対して前記ヘッド部は固定又は固定解除される、外科用ケーブルスリーブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブ用アダプタ及び外科用ケーブルスリーブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、亀裂やひびが入った骨部Hを外科用ケーブルKで緊縛し、亀裂やひびが塞がるまで固定する術式が知られている。回転駆動工具を用いて外科用ケーブルスリーブ100のドリルロッド120を骨折部を跨いで骨部Hに挿通させ、外科用ケーブルスリーブ100のヘッド部110に通した外科用ケーブルKをドリルロッド120の先端に掛け渡し、そして適切な張力を付与した上で外科用ケーブルスリーブ100のヘッド部110を工具でカシメ固定することによって外科用ケーブルKを固定する手術である。これによって、骨部Hが固定される。
【0003】
図12に示すように、外科用ケーブルスリーブ100は、略直方体状の高さ2〜4mm程度のヘッド部110と、このヘッド部110の底面から突出する外径2〜3mm、長さ30〜80mmの丸棒状のドリルロッド120とを備えている。ドリルロッド120の先端は刃部121に構成されている。外科用ケーブルスリーブ100は、チタン材やステンレス材等の金属材で形成されている。ヘッド部110には、外科用ケーブルKが挿通可能な一対のケーブル挿通孔111が設けられている。ケーブル挿通孔111の内径は、例えば1mm程度である。ヘッド部110はケーブル挿通孔111に外科用ケーブルKが挿通された後に、ペンチ等の工具でヘッド部110をカシメ加工して、外科用ケーブルKを固定する。
【0004】
外科用ケーブルスリーブ100は非常に細いため、電動ドライバのチャック部に直接取り付けることができない。このため、外科用ケーブルスリーブ100はスリーブ用アダプタを介して電動ドライバのチャック部に取り付けられる(特許文献1参照。)。内側軸体に外側筒部を押し込むと、先端の保持爪がヘッド部を抱え込み、固定される。
【0005】
上述したスリーブ用アダプタにあっては次のような問題があった。すなわち、回転工具を用いて外科用ケーブルスリーブ100を骨部Hに導入した後、外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタを外す際、外側筒部を軸体から軸方向に沿って引き抜く必要がある。この時、外科用ケーブルスリーブ100を骨部H側に僅かに移動したり、逆に抜ける方向に移動したりすることになり、骨部Hに無用な負担が加わる。さらに、スリーブ用アダプタを軸方向に対して直交する向きにスライドさせて、保持爪をヘッド部から抜き取る必要がある。この際、外科用ケーブルスリーブ100にその軸方向に対して直交する横向きの向きの力が加わることになる。この場合も人体に無用な負担が加わる。このような人体への負担は外科出術を行う上で適切ではないことから、可能な限り排除することが望ましい。
【0006】
また、スリーブ用アダプタは金属材製であるため、手術中における外科用ケーブルスリーブ100の視認性が悪く、適切な向きに設定することが難しい。さらに、保持爪がヘッド部110の底面と骨部Hとの間に介在するため、その分だけ長いドリルロッド120を有する外科用ケーブルスリーブ100を必要としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6367594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、スリーブ用アダプタを外科用ケーブルスリーブから取り外す際に外科用ケーブルスリーブに外力が加わる危険性を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、外科用ケーブルを挿通するケーブル挿通孔が開けられたヘッド部から、先端に刃部を有するドリルロッドが延出する外科用ケーブルスリーブを、回転駆動工具に接続するためのスリーブ用アダプタである。アダプタ本体は、回転駆動工具に後端部において取り付けられる軸部と、軸部の先端から延出する、ヘッド部を挟持するための挟持部とを有する。筒状の締付部はアダプタ本体に挿入され、挟持部に挟持されたヘッド部を固定する。挟持部は、先端に向かって径が拡がる円錐台形状を有し、複数の分割爪体に分割され、先端にはヘッド部が嵌め込まれる窪みが形成される。アダプタ本体の軸部には雄ネジが形成され、締付部の内面には雄ネジに螺合する雌ネジが形成される。アダプタ本体の雄ネジに対する締付部の雌ネジの螺入又は螺出によるアダプタ本体に対する締付部の先後移動に伴って挟持部に対してヘッド部は固定又は固定解除される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本実施形態に係るスリーブ用アダプタの使用状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は
図1のスリーブ用アダプタに外科用ケーブルスリーブを保持させた状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は
図1のスリーブ用アダプタ及び外科用ケーブルスリーブの分解斜視図である。
【
図4】
図4は
図1のスリーブ用アダプタのアダプタ本体を示す側面図である。
【
図8】
図8は
図1のスリーブ用アダプタの締付部の側面図である。
【
図11】
図11は外科用ケーブルスリーブの使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るスリーブ用アダプタ10は、外科用ケーブルスリーブ100を、回転駆動工具としての電動ドライバ200に連結するための治具である。外科用ケーブルスリーブ100に対してスリーブ用アダプタ10は着脱自在である。スリーブ用アダプタ10は外科用ケーブルスリーブ100とともに外科用ケーブルスリーブユニットを構成する。外科用ケーブルスリーブ100は、
図12で説明したものと同じ構造のものであるため、詳細な説明は省略する。なお、以下の説明において
図1の上方を基端側、下方を先端側として説明する。また、図中Cはスリーブ用アダプタ10の軸心線を示している。
【0012】
図2、
図3に示すように、スリーブ用アダプタ10は、アダプタ本体20と、アダプタ本体20に同軸で挿入される締付部30とからなる。アダプタ本体20と締付部30は、好ましくは樹脂材で形成される。樹脂材として典型的にはポリカーボネイト材である。ポリカーボネイト材は透明性を有する。具体的にはポリカーボネイト材は、可視光線透過率が80〜90%を示し、可視光線に対する透明性を有している。またポリカーボネイト材は、X線透過率が90%以上を示し、X線に対する透明性を有している。さらにポリカーボネイト材は、軽量であり、耐衝撃性に優れている材料である。発明者はこれら特性からポリカーボネイト材をアダプタ本体20と締付部30の材料として選定した。
【0013】
アダプタ本体20は、軸部21と、軸部21の先端から延出される挟持部26とから構成される。軸部21の基端側外周面には、軸心線Cと平行に複数の線条突起22が周方向に沿って分散配置される。軸部21の基端部分は電動ドライバ200のチャック部に嵌め込まれ、締め込み固定される。電動ドライバ200のチャック部に対する軸部21の滑りずれが線条突起22により抑止される。
【0014】
アダプタ本体20の軸部21であって、締付部30の後方部分には、雄ネジ23が形成されている。雄ネジ23は後述する雌ネジ35に螺合する。
【0015】
図4乃至
図7に示すように、アダプタ本体20の軸部21には、ヘッド部110を挟持するための挟持部26が延出されている。挟持部26は、先端に向かって径が拡大する円錐台概形を有する。挟持部26は、軸心線Cに平行に十字状に切削され、軸心線Cの周方向に沿って4つの部分(分割爪体)27に分割されている。4つの分割爪体27はそれらの付け根25において一体化されている。4つの分割爪体27の先端には、ヘッド部110が嵌め込まれる直方体形の窪み(凹部)27aが形成される。窪み27aの深さDは、ヘッド部110の厚さT(
図12参照)と同じ、又は僅かに短い。それによりヘッド部110の下面が露出するので、ヘッド部110の下面が骨部表面に接するまで外科用ケーブルスリーブ100を骨部Hに差し入れることができる。
【0016】
図8乃至
図10に示すように、締付部30は、円筒体31からなり、アダプタ本体20に軸部21に挿入され、挟持部26に挟持されたヘッド部110を締め付け固定する。円筒体31の外周には、滑り止め用の線条突起32が軸心線Cと平行に、周方向に沿って分散配置されている。円筒体31の基端側の内周面33には雌ネジ35が形成される。円筒体31の先端側は内径が先端に向かって拡がるテーパ状に形成される。当該テーパ面34は挟持部26の外形に整合する。円筒体31のテーパ面34は分割爪体27の外周面に接する。円筒体31を順方向に軸回転させると雄ネジ23に対する雌ネジ35の螺合により円筒体31は軸部21に対して先端に向かって移動する。その移動により4つの分割爪体27はともに軸心線Cに向かって傾動し、分割爪体27の外周面が円筒体31のテーパ面34を強く押圧する。それによりヘッド部110が固定される。
【0017】
次に外科用ケーブルスリーブ100に対するスリーブ用アダプタ10の着脱について説明する。締付部30をアダプタ本体20の軸部21に挿入し、締付部30の雌ネジ35を軸部21の雄ネジ23に緩く螺着する。分割爪体27の窪み27aに、外科用ケーブルスリーブ100のヘッド部110を嵌め込む。分割爪体27の窪み27aにヘッド部110が緩く嵌め合わされた状態であり、ヘッド部110からスリーブ用アダプタ10を容易に引き抜くことができる。
【0018】
締付部30を軸心線Cの周りに順方向に回転させると、雄ネジ23に対する雌ネジ35の螺合作用により、締付部30はアダプタ本体20の挟持部26に覆いかぶさるように前方に向かって移動する。この移動に伴って、締付部30のテーパ面34が、アダプタ本体20の分割爪体27の外周面に当接し、さらに締付部30を軸回転させて強く締めていくと、締付部30のテーパ面34がアダプタ本体20の分割爪体27の外周面を中心に向かって強く押圧する。これによりヘッド部110は分割爪体27に締結され、外科用ケーブルスリーブ100にスリーブ用アダプタ10が固定される。
【0019】
次に、スリーブ用アダプタ10の軸部21を電動ドライバ200のチャック部に取り付け、固定する。この状態で、電動ドライバ200を駆動し、外科用ケーブルスリーブ100のヘッド部110の下面が骨部Hの表面に当接するまで、外科用ケーブルスリーブ100のドリルロッド120を骨部Hに差し入れていく(
図1参照)。
【0020】
差し入れ完了後、外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタ10を取り外す。スリーブ用アダプタ10の軸部21を電動ドライバ200のチャック部から取り外してから、外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタ10を取り外してもよいし、スリーブ用アダプタ10の軸部21を電動ドライバ200のチャック部に取り付けたままで、外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタ10を取り外してもよい。外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタ10を取り外すには、締付部30を逆向きに軸回転させ、締付部30を軸部21に対して後端に向かって移動させる。それにより締付部30のテーパ面34がアダプタ本体20の分割爪体27の外周面から離れ、分割爪体27によるヘッド部110の固定状態が解除される。スリーブ用アダプタ10を外科用ケーブルスリーブ100から取り外すことができる。つまり雄ネジ23に対して雌ネジ35を螺入し又は螺出することに伴って、アダプタ本体20に対して締付部30を先方又は後方に移動させることができ、それにより挟持部26に対してヘッド部110を固定し、又は固定解除することができる。
【0021】
外科用ケーブルKをヘッド部110のケーブル挿通孔111に挿通し、骨部Hから突き出したドリルロッド120の先端部にかけ、外科用ケーブルKに適宜張力を加えた後、ヘッド部110をカシメ固定して、骨部Hを外科用ケーブルKで固定する(
図11参照)。
【0022】
このように構成されたスリーブ用アダプタ10によれば、締付部30をアダプタ本体20の軸部21の周りで軸回転させるだけの操作で、外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタ10を取り外すことができ、外科用ケーブルスリーブ100、特にドリルロッド120に無用な外力を加えることが抑えられる。すなわち、外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタ10を取り外すために施術者が締付部30に加える力は締付部30を軸回転させる方向、換言すると軸心線Cにほぼ垂直な方向であり、軸心線Cに平行な方向にはほぼ力がかからないので、締付部30を軸回転させる作業中にドリルロッド120を先後に移動させてしまう事態が生じにくい。そのため外科用ケーブルスリーブ100のドリルロッド120が骨部Hから少し抜けてしまい、差し入れ作業を再度行う事態やドリルロッド120が骨部Hを誤って破損させてしまう事態等の発生リスクを抑えることができる。
【0023】
また分割爪体27は、ヘッド部110の外周面を側方から押圧しているだけなので、ヘッド部110の下面が骨部Hの表面に当接するまで外科用ケーブルスリーブ100のドリルロッド120を十分に差し入れることができる。また分割爪体27には、ヘッド部110に食い込むように、内側に向いた爪部分が設けられていないので、ヘッド部110に対してスリーブ用アダプタ10を軸心線Cに対して直交する向きにスライドさせて、爪部分をヘッド部110から抜き取る必要がなく、スリーブ用アダプタ10 を軸心線Cに沿って後方に移動させ、分割爪体27の窪み27aからヘッド部110を引き抜くだけで外科用ケーブルスリーブ100からスリーブ用アダプタ10を取り外すことができる。作業が容易であるばかりか、外科用ケーブルスリーブ100にその軸心線Cに対して直交する横向きの向きの力が加わる危険性が軽減されるので、ドリルロッド120が傾斜して骨部Hを誤って破損させてしまう事態の発生リスクも低減できる。
【0024】
また、当該術式では骨部Hの亀裂に対して外科用ケーブルKを垂直又はそれに近い角度でかけわたすことが要求されており、骨部Hに外科用ケーブルスリーブ100を留置した状態で、外科用ケーブルKを挿入するためのケーブル挿通孔111の向きを確認することは非常に重要である。スリーブ用アダプタ10が可視光線に対する透明性を有するので、施術者は、外科用ケーブルスリーブ100にスリーブ用アダプタ10を取り付けた状態のままで、外科用ケーブルスリーブ100のヘッド部110を、スリーブ用アダプタ10の分割爪体27や締付部30を透かして視認しながら、作業を進めることができる。
【0025】
またスリーブ用アダプタ10はX線に対する透明性も有するので、X線透視下で外科用ケーブルスリーブ100の特にヘッド部110及びケーブル挿通孔111を高コントラストで視認しながら、作業を進めることができる。
【0026】
また、スリーブ用アダプタ10が樹脂製であり軽量であることから、スリーブ用アダプタ10の荷重による骨部Hへの負荷を過度に注意することなく、スリーブ用アダプタ10を装着した状態のままで外科用ケーブルスリーブ100の骨部Hに対する向きや位置を確認することができる。
【0027】
さらに、何らかの不具合で電動ドライバ200が誤動作を起こした場合であっても、金属製の外科用ケーブルスリーブ100に先んじて、それよりも剛性の低い樹脂製のスリーブ用アダプタ10が破損するため、外科用ケーブルスリーブ100に過剰な負荷がかかる事態を抑えることができる。
【0028】
このように本実施形態に係るスリーブ用アダプタ10及び外科用ケーブルスリーブユニットによれば、人体へ外力を与えることなく、簡単な操作で外科用ケーブルスリーブを着脱することが可能となると共に、視認性が向上し、手術を円滑に行うことができる。
【0029】
上述した実施形態では、スリーブ用アダプタは樹脂材であるとしたが、金属その他の材料を否定するものではない。また、分割爪体は4つに限られるものではなく、複数であれば良い。さらに、外科用ケーブルスリーブ及びヘッド部の形状も他のものでもよく、ヘッド部に適合した挟持部を用いることができる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0031】
10…スリーブ用アダプタ、20…アダプタ本体、21…軸部、21a…基端部21b…先端、22…線条突起、23…雄ネジ、26…挟持部、27…分割爪体、27a…窪み、30…締付部、31…円筒体、34…テーパ面、35…雌ネジ、100…外科用ケーブルスリーブ、110…ヘッド部、111…ケーブル挿通孔、120…ドリルロッド、200…電動ドライバ、H…骨部、K…外科用ケーブル、C…軸心線。