【解決手段】発電プラント100は、ボイラ110と、蒸気タービン120と、内部を通過する余剰エネルギを回収して蓄熱する蓄熱装置200と、起動時および停止時を含む運転中に発生した余剰エネルギが蓄熱装置200に蓄熱されるよう制御する制御装置150と、を備える。余剰エネルギは、ボイラ110で生成した過熱蒸気のうち、余剰分の熱エネルギである余剰熱エネルギおよび余剰の電力エネルギである余剰電力エネルギの少なくとも一方である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0013】
各実施形態の詳細な説明に先立ち、本発明の第一〜第三実施形態の概要を説明する。これらの実施形態では、発電プラントにおける余剰熱エネルギを有効に活用するため、余剰熱エネルギの温度帯に応じた蓄熱層に蓄熱する。そして、蓄熱した熱を、発電プラント運用時の適切なタイミングで最適な温度域から回収し、利用する。なお、以下、本明細書に記載の具体的な温度等は、説明のための一例である。
【0014】
一般に、発電プラントは、燃料を燃焼させて得られる熱によって蒸気を発生させるボイラと、ボイラが発生させた蒸気を用いてタービンを回転させることにより発電をする蒸気タービンとを備える。実施形態の余剰熱エネルギは、ボイラが発生させた蒸気による熱量(ボイラ出熱またはボイラ負荷と呼ぶ。)と、蒸気タービンが必要とする熱量(タービン発電機負荷と呼ぶ。)との差により発生する。
【0015】
例えば、発電プラント起動時は、
図1(a)に示すように、ボイラの点火後、ボイラが貫流運転を開始する前は、ボイラ出熱は、蒸気タービンに全量使用されない。これは、蒸気サイクルを構成する機器の暖気や、各機器の始動から巡行運転までの安定化を図るためである。この間、余剰熱エネルギが発生する。
【0016】
また、発電プラント停止時も、
図1(b)に示すように、同様に、ボイラ出熱と蒸気タービン発電機負荷とに差が発生し、余剰熱エネルギが発生する。これは、発電プラント停止時であっても、ボイラ負荷は、所定期間20%程度を維持しなければならない一方、タービン発電機負荷は単調に低減する。従って、この間に余剰熱エネルギが発生する。
【0017】
また、
図2に示すように、発電プラントは、タービン発電機負荷をボイラの最低負荷より所定量αだけ小さい状態で運転することがある。このような運転状態は、例えば、系統側で自然エネルギによる発電量の変動を吸収する際等に発生する。以下、本明細書では、発電プラントのこのような運転状態を揚水的運転と呼ぶ。この揚水的運転時も、本図に示すように、ボイラ出熱と蒸気タービン発電機負荷との差による余剰熱エネルギが発生する。
【0018】
以下に説明する本発明の第一〜第三実施形態では、ボイラから蒸気の状態で出力され、蒸気タービンで未使用の余剰熱エネルギを、発生時の蒸気温度に応じた蓄熱層に蓄熱する。また、使用時は、最適な温度域から回収し、利用する。これにより、効率よく余剰熱エネルギを蓄熱、利用する。
【0019】
<<第一実施形態>>
本発明の第一実施形態を説明する。まず、本実施形態の蓄熱装置が適用される発電プラントの一例を説明する。本実施形態の蓄熱装置200は、例えば、
図3(a)に示す発電プラント100で用いられる。
図3(a)は、本実施形態の発電プラント100の流体系統図である。
【0020】
本実施形態の発電プラント100は、燃料を燃焼させ、該燃焼の熱によって蒸気(過熱蒸気)を発生させるボイラ110と、ボイラ110が発生した蒸気を用いてタービンを回転させることにより発電機109を駆動させて発電する蒸気タービン120と、蒸気タービン120からの排気蒸気を水に戻してボイラ110に供給する給水ライン130と、ボイラ110で過熱された蒸気の熱エネルギのうち、余剰な熱エネルギを蓄熱する蓄熱装置200と、制御装置150(
図3(b)参照)と、を備える。
【0021】
ボイラ110は、節炭器(ECO)111と、火炉水冷壁112と、汽水分離器113と、過熱器114と、再熱器115と、を備える。本実施形態では、過熱器114および再熱器115は、下流から上流に複数段備える。なお、過熱器114および再熱器115は、1つであってもよい。
【0022】
蒸気タービン120は、それぞれ、発電機109を回転駆動させるための所定の仕事を行う、高圧蒸気タービン(HPT)121と、中圧蒸気タービン(IPT)122と、低圧蒸気タービン(LPT)123と、を備える。なお、中圧蒸気タービン122および低圧蒸気タービン123は、両者を合わせて中低圧蒸気タービンとも呼ぶ。
【0023】
給水ライン130上には、復水器131と、復水ポンプ132と、低圧給水加熱器(低圧ヒーター)133と、脱気器134と、給水ポンプ135と、高圧給水加熱器(高圧ヒーター)136とが設けられる。
【0024】
上記構成を有する発電プラント100では、節炭器111で、供給された水を燃焼ガスとの熱交換により予熱する。節炭器111で予熱された水は、火炉水冷壁112において、壁に形成された不図示の炉壁管を通すことにより水−蒸気2相流体を生成する。火炉水冷壁112において生成された水−蒸気2相流体は、汽水分離器113に送られて、飽和蒸気と飽和水とに分離される。ここで、飽和蒸気は過熱器114へ、飽和水は飽和水管161を通り復水器131へ、それぞれ、導かれる。
【0025】
汽水分離器113で分離された飽和蒸気は、燃焼ガスとの熱交換により過熱器114で過熱され、生成された過熱蒸気は、主蒸気管162を経由して高圧蒸気タービン121に導入される。なお、過熱器114は、上述のように、複数段設けられる。最終段の過熱器114の手前から、一部の蒸気は、ボイラ抽気管165を通り復水器131へ導かれる。なお、ボイラ抽気管165には、ボイラ起動抽気調整弁(加熱器バイパス弁;EC)175が設けられる。
【0026】
高圧蒸気タービン121で所定の仕事を行った蒸気は、低温再熱蒸気管163を経由して再熱器115に導かれる。再熱器115では、高圧蒸気タービン121で所定の仕事を行った蒸気を再過熱する。再熱器115で過熱された蒸気は、高温再熱蒸気管164を経由して中圧蒸気タービン122および低圧蒸気タービン123に供給され、そこで、それぞれ仕事を行い、発電機109を駆動する。主蒸気管162には、主蒸気開閉弁172が設けられる。また、高温再熱蒸気管164には、再熱蒸気開閉弁174が設けられる。
【0027】
低圧蒸気タービン123で仕事を終えた蒸気は、タービン排気管166によって復水器131に導入される。復水器131で凝縮した復水は、汽水分離器113から送られた飽和水とともに復水ポンプ132によって低圧ヒーター133を通過した後、脱気器134に送られ、復水中のガス成分が除去される。脱気器134を経た復水は、さらに給水ポンプ135によって昇圧された後、高圧ヒーター136に送給されて加熱され、最終的には、ボイラ110へ還流される。
【0028】
さらに、発電プラント100は、主蒸気管162から分岐し、当該蒸気を、高圧蒸気タービン121をバイパスして復水器131に導く主蒸気バイパス管167を備える。主蒸気バイパス管167には、主蒸気バイパス開閉弁177が設けられる。
【0029】
本実施形態の蓄熱装置200は、飽和水管161、ボイラ抽気管165および主蒸気バイパス管167上に配置される。蓄熱装置200は、飽和水管161、ボイラ抽気管165および主蒸気バイパス管167内を流れる蒸気または飽和水の熱エネルギを熱交換により蓄熱する。蓄熱装置200で熱交換後の蒸気または飽和水は、それぞれの配管を経て復水器131に導入される。
【0030】
また、飽和水管161、ボイラ抽気管165および主蒸気バイパス管167の内部を通過する蒸気の温度を検出する温度センサ181、185、および187(
図3(b)参照)がそれぞれ適正に設けられる。
【0031】
制御装置150は、
図3(b)に示すように、外部(発電所に置かれる制御卓151等)からの指示、あるいは、発電プラント100内に設置される、上記温度センサ181、185、および187を含む各種のセンサからの信号に従って、発電プラント100内の各開閉弁の開閉を制御する。例えば、本実施形態の主蒸気開閉弁172、再熱蒸気開閉弁174、ボイラ起動抽気調整弁175、および主蒸気バイパス開閉弁177は、運転モードに応じて開閉される。各開閉弁の開閉のタイミングの詳細は、後述する。なお、制御装置150が開閉を制御する開閉弁には、後述する蓄熱装置200が備える開閉弁も含む。
【0032】
制御装置150は、例えば、CPUとメモリと記憶装置とを備え、予め記憶装置に格納したプログラムを、CPUがメモリにロードして実行することにより、上記制御を実現する。
【0033】
[蓄熱装置]
次に、本実施形態の蓄熱装置200を、
図4を用いて説明する。以下、本明細書では、発電プラント100内を還流する蒸気、水等に関し、区別する必要がない場合は、流体と称する。
【0034】
本実施形態の蓄熱装置200は、制御装置150からの指示に従って、発電プラント100内の流体の余剰熱エネルギを蓄熱する。本実施形態の蓄熱装置200は、それぞれ異なる温度域に温度特性(融点)を持つ蓄熱材で構成される複数の蓄熱層と、各蓄熱層内に設けられた熱交換部と、蓄熱装置200に接続し、配管内の流体を熱交換部に導いたり、蓄熱装置200をバイパスして配管内の流体を復水器131に導いたりする流路と、各流路への流体の流入を規制する開閉弁(バルブ)と、を備える。
【0035】
本実施形態では、蓄熱装置200に蓄熱する場合、蓄熱装置200に流入する流体の温度に応じて、流体が通過する経路を変更する。これにより、効率的に蓄熱する。経路変更は、後述する各流路に設けられた開閉弁(バルブ)に対する制御装置150からの指令により実現する。
【0036】
以下、本実施形態では、蓄熱装置200が、蓄熱層として、高温蓄熱層210(以下、単に高温層210とも呼ぶ。)と、中温蓄熱層220(中温層220)と、低温蓄熱層230(低温層230)と、の3つの蓄熱層を備える場合を例にあげて説明する。
【0037】
なお、高温層210は、500℃を中心とする温度域(第一温度域)に温度特性(融点)を有する蓄熱材で構成される蓄熱層である。中温層220は、400℃を中心とする温度域(第二温度域)に温度特性を有する蓄熱材で構成される蓄熱層である。また、低温層230は、300℃を中心とする温度域(第三温度域)に温度特性を有する蓄熱材で構成される蓄熱層である。
【0038】
また、本実施形態の蓄熱装置200は、熱交換部として、
図4に示すように、高温層210内に配置される高温熱交換部211と、中温層220内に配置される第一中温熱交換部221および第二中温熱交換部222と、低温層230内に配置される第一低温熱交換部231、第二低温熱交換部232および第三低温熱交換部233と、を備える。
【0039】
各熱交換部(高温熱交換部211と、第一中温熱交換部221と、第二中温熱交換部222と、第一低温熱交換部231と、第二低温熱交換部232と、第三低温熱交換部233)は、流入した流体と熱交換を行う。それぞれ、配置された蓄熱層の融点以上の温度の流体が流入した場合、当該蓄熱層に熱エネルギを蓄熱する蓄熱部として機能する。一方、配置された蓄熱層の融点未満の温度の流体が流入した場合、当該蓄熱層に蓄えられている熱エネルギを放熱する。
【0040】
蓄熱装置200は、熱貯蔵時に用いられる流路として、主蒸気第一流路371と、主蒸気バイパス流路372と、主蒸気第三流路373と、ボイラ排気流路351と、ボイラ排気バイパス流路352と、飽和水流路311と、飽和水バイパス流路312と、を備える。
【0041】
主蒸気第一流路371は、主蒸気バイパス管167に接続される。本実施形態では、主蒸気バイパス管167から分岐点301で分岐し、高温熱交換部211、第一中温熱交換部221および第一低温熱交換部231を、この順に接続し、合流点302で主蒸気バイパス管167に接続する。これにより、主蒸気第一流路371は、主蒸気バイパス管167から蓄熱装置200に流入する流体を、高温熱交換部211、第一中温熱交換部221および第一低温熱交換部231の順に通過させ、蓄熱装置200から排出する。この間、主蒸気第一流路371を通過する流体は、各蓄熱層で熱交換を行い、各蓄熱層に蓄熱する。供給される流体の温度が高温層210の融点より高い場合、当該流体が有する熱エネルギは、高温層210、中温層220、低温層230の順に蓄熱される。なお、蓄熱装置200から排出された流体は、主蒸気バイパス管167を経て、復水器131に戻る。
【0042】
主蒸気バイパス流路372は、主蒸気バイパス管167内の流体を、蓄熱装置200をバイパスさせる。なお、蓄熱装置200をバイパスした流体は、主蒸気バイパス管167を経て復水器131に戻る。主蒸気バイパス流路372は、分岐点301で分岐し、高温熱交換部211、第一中温熱交換部221および第一低温熱交換部231をバイパスし、合流点302で主蒸気バイパス管167に合流する。
【0043】
主蒸気第三流路373は、主蒸気バイパス流路372から分岐し、高温熱交換部211をバイパスし、主蒸気第一流路371に合流する。これにより、主蒸気第三流路373は、主蒸気バイパス管167から蓄熱装置200に流入する流体を、第一中温熱交換部221および第一低温熱交換部231の順に通過させ、蓄熱装置200から排出する。供給される流体の温度が中温層220の融点より高い場合、当該流体が有する熱エネルギは、中温層220、低温層230の順に蓄熱される。なお、蓄熱装置200から排出された流体は、主蒸気バイパス管167を経て、復水器131に戻る。
【0044】
ボイラ排気流路351は、ボイラ抽気管165に接続される。ボイラ排気流路351は、ボイラ抽気管165から分岐点303で分岐し、第二中温熱交換部222および第二低温熱交換部232をこの順に接続し、合流点304でボイラ抽気管165に接続する。これにより、ボイラ排気流路351は、ボイラ抽気管165から蓄熱装置200に流入する流体を、第二中温熱交換部222および第二低温熱交換部232の順に通過させ、蓄熱装置200から排出する。ボイラ排気流路351を通過する流体は、各蓄熱層で熱交換を行い、各蓄熱層に蓄熱する。なお、蓄熱装置200から排出された流体は、ボイラ抽気管165を経て、復水器131に戻る。
【0045】
ボイラ排気バイパス流路352は、ボイラ抽気管165内の流体を、蓄熱装置200をバイパスさせる。なお、蓄熱装置200をバイパスした流体は、ボイラ抽気管165を経て復水器131に戻る。ボイラ排気バイパス流路352は、分岐点303で分岐し、第二中温熱交換部222および第二低温熱交換部232をバイパスし、合流点304でボイラ排気流路351に合流する。
【0046】
飽和水流路311は、飽和水管161に接続される。飽和水管161から分岐点305で分岐し、第三低温熱交換部233を介して合流点306で飽和水管161に接続する。これにより、飽和水流路311は、飽和水管161から蓄熱装置200に流入する流体を、第三低温熱交換部233を通過させ、蓄熱装置200から排出する。飽和水流路311を通過する流体は、低温層230で熱交換を行い、低温層230に蓄熱する。なお、蓄熱装置200から排出された流体は、飽和水管161を経て、復水器131に戻る。
【0047】
飽和水バイパス流路312は、飽和水管161内の流体を、蓄熱装置200をバイパスして復水器131に戻す。飽和水バイパス流路312は、分岐点305で分岐し、第三低温熱交換部233をバイパスし、合流点306で飽和水流路311に合流する。供給される流体の温度が低温層230の融点より高い場合、当該流体が有する熱エネルギは、低温層230に蓄熱される。
【0048】
また、各流路は、開閉弁(バルブ)を備える。本実施形態では、開閉弁として、主蒸気第一開閉弁376と、主蒸気第二開閉弁377と、主蒸気第三開閉弁378と、排気第一開閉弁356と、排気第二開閉弁357と、飽和水第一開閉弁316と、飽和水第三開閉弁317と、を備える。
【0049】
主蒸気第一開閉弁376は、主蒸気第一流路371の、分岐点301の下流に設けられ、高温熱交換部211への流体の流入を制御する。
【0050】
主蒸気第三開閉弁378は、主蒸気第三流路373の、主蒸気バイパス流路372との分岐点の下流に設けられ、主蒸気第三流路373への流体の流入を制御する。
【0051】
主蒸気第二開閉弁377は、主蒸気バイパス流路372の、主蒸気第三流路373との分岐点の下流に設けられ、主蒸気バイパス流路372への流体の流入を制御する。
【0052】
排気第一開閉弁356は、ボイラ排気流路351の、分岐点303の下流に設けられ、第二中温熱交換部222への流体の流入を制御する。
【0053】
排気第二開閉弁357は、ボイラ排気バイパス流路352に設けられ、ボイラ排気バイパス流路352への流体の流入を制御する。
【0054】
飽和水第一開閉弁316は、飽和水流路311の、分岐点305の下流に設けられ、第三低温熱交換部233への流体の流入を制御する。
【0055】
飽和水第三開閉弁317は、飽和水バイパス流路312に設けられ、飽和水バイパス流路312への流体の流入を制御する。
【0056】
各開閉弁は、それぞれ、制御装置150からの指令に応じて開閉される。制御装置150は、制御卓151を介して入力される指示に従って、または、蓄熱装置200に流入する流体の温度を検出し、その温度に応じて各開閉弁を開閉することにより、流体の流入経路を制御する。例えば、温度に応じて開閉を制御する場合、流入する流体の温度に応じて、当該温度より低く、かつ、最も近い融点を有する蓄熱材の蓄熱層に蓄熱されるよう、開閉弁の開閉を制御する。開閉弁制御の具体例は、後述する。
【0057】
各蓄熱層に用いる蓄熱材としては、例えば、物質の相変態潜熱を利用した潜熱蓄熱材を用いることができる。蓄熱層の温度特性は、この潜熱蓄熱材の融解温度(融点)に基づいて決定される特性である。また、各蓄熱層に用いる蓄熱材は、蓄熱温度(融点)が500℃を超える合金系素材を用いてもよい。さらに、この合金系素材を、セラミクスまたは金属で包含した構造であってもよい。例えば、国際公開第2017/200021号公報に開示の、潜熱蓄熱体マイクロカプセルを用いることができる。
【0058】
各蓄熱層に潜熱蓄熱材をセラミクス等で包含した構造の蓄熱材を用いることにより、潜熱蓄熱材の相変態を利用した、熱の入出力のみで作動する蓄熱部を得ることができる。融解温度は潜熱蓄熱材の製造時の組成によりコントロール可能なため、より流体の温度域を細かく設定可能となる。
【0059】
各蓄熱層に用いる蓄熱材は、蓄熱装置200に蓄熱する熱エネルギの温度範囲に応じて、当該温度範囲に融点を持つものが選択される。また、各蓄熱層の蓄熱容量は、想定される余剰熱エネルギ量に基づいて決定される。これにより、発生する余剰熱エネルギを無駄にすることなく、効率よく蓄熱することができる。これは、設備投資の最適化にもつながる。
【0060】
なお、蓄熱装置200内には、後述する熱回収時に用いる流路として、さらに、同じ蓄熱層内の熱交換部を接続する流路が設けられる。熱回収用の流路として、蓄熱装置200は、高温層210の高温熱交換部211を通過する第一熱回収管410と、中温層220の第一中温熱交換部221および第二中温熱交換部222を通過する第二熱回収管420と、低温層230の第一低温熱交換部231、第二低温熱交換部232および第三低温熱交換部233を通過する第三熱回収管430とを備える。
【0061】
第一熱回収管410は、熱回収時に流体を高温層210のみを通過させることにより、高温層210のみから熱を回収する。第二熱回収管420は、流体を中温層220のみを通過させることにより、中温層220のみから熱を回収する。第三熱回収管430は、流体を低温層230のみを通過させることにより、低温層230のみから熱を回収する。
【0062】
第一熱回収管410、第二熱回収管420および第三熱回収管430には、それぞれ、各蓄熱層の入口側に、第一熱回収開閉弁411と、第二熱回収開閉弁421と、第三熱回収開閉弁431とが、設けられる。これらの熱回収開閉弁411、421、431の開閉は、制御装置150により制御される。制御装置150は、熱回収時、最適な温度域の蓄熱層から熱を回収できるよう、これらの熱回収開閉弁411、421、431の開閉を制御する。
【0063】
[制御装置による開閉弁の制御]
以下、本実施形態の蓄熱装置200を備える発電プラント100における制御装置150による開閉弁の制御を説明する。
【0064】
本実施形態の制御装置150は、発電プラント100の起動時、停止時、または、揚水的運転時等に発生する蒸気の状態の余剰熱エネルギを、温度域毎に蓄熱装置200に蓄熱するよう、各開閉弁の開閉を制御する。
【0065】
例えば、本実施形態の発電プラント100は、起動時の運転モードである起動運転モードと、通常時の運転モードである通常運転モードと、揚水的運転時の運転モードである揚水運転モードと、停止時の運転モードである停止運転モードと、システム故障時等の運転モードである非常時運転モードとを備える。このうち、蒸気の状態の余剰熱エネルギが発生するのは、起動運転モード、揚水運転モード、停止運転モードおよび非常時運転モードでの運転時である。
【0066】
以下、これらの起動運転モード、揚水運転モード、停止運転モードおよび非常時運転モード時の、制御装置150による、本実施形態の蓄熱装置200への蓄熱のための発電プラント100内の各開閉弁の開閉制御について説明する。
【0067】
上述のように、本実施形態では、制御装置150は、余剰熱エネルギの温度により、異なる蓄熱層に蓄熱するよう開閉弁を制御する。ここで、起動運転モード時には、
図1(a)に示すように、ボイラ110の点火、蒸気タービン120への通気開始、発電機109の系統への併入、均衡といったイベントがあり、ボイラ110から出力される蒸気の温度は、時間の経過とともに単調に上昇する。また、停止運転モード時は、
図1(b)に示すように、均衡終了、停止といったイベントがあり、ボイラ110から出力される蒸気の温度は、単調に減少する。一方、揚水運転モード時は、
図2に示すように、均衡終了、均衡というイベントがあり、その間、ボイラ110から出力される蒸気温度は、略一定である。
【0068】
なお、本明細書において、均衡は、単位時間当たりのボイラ出熱量と、タービン発電機負荷とが均衡した状態をいう。また、均衡終了は、停止の指示を受けてから、均衡していたボイラ出熱量とタービン発電機負荷とにおいて、ボイラ出熱量が優勢になり、差が発生した時点をいう。
【0069】
本実施形態では、制御装置150は、温度域に応じた蓄熱を実現するため、起動運転モードおよび停止運転モードを、蒸気温度に応じて複数の運転モードに区分けし、運転モード毎に異なる開閉制御を行う。なお、揚水運転モードは、蒸気温度が略一定であるため、1つの運転モードとして開閉制御を行う。
【0070】
例えば、本実施形態では、起動運転モードでは、
図1(a)に示すように、ボイラ110の点火から蒸気タービン120への通気開始までを第一起動運転モード、通気開始から均衡までを第二起動運転モード、均衡から通常運転までを第三起動運転モードとする。また、停止時運転モードでは、
図1(b)に示すように、均衡終了から停止までを、第一停止運転モードとする。
【0071】
なお、各運転モードには、制御卓151を介して、操作者からの指示を受け付けることにより、移行する。なお、制御装置150が、各配管に配置された温度センサが検出した温度に基づいて、判断してもよい。例えば、起動運転モードにおいて、第一起動運転モードから第二起動運転モードへは、主蒸気バイパス管167等に配置された温度センサ187で検出された温度が、予め定めた閾値(例えば、500℃)以上となった時点で移行するよう構成してもよい。
【0072】
本実施形態では、発電プラント100の各配管に設けられた開閉弁の開閉は、運転モードに応じて制御される。また、蓄熱装置200の各流路に設けられた開閉弁の開閉は、温度センサ181、185、187で検出された各流路の入口側の流体の温度に応じて制御される。
【0073】
運転モード毎の、各開閉弁の開閉状態は、予め、制御装置150の記憶装置に、開閉状態テーブルとして記憶しておく。
【0074】
なお、以下の説明では、各開閉弁は、初期状態では、特に断らない限り閉状態であるものとする。
【0075】
運転モード、イベント毎の、制御装置150による各開閉弁の開閉のタイムチャートを、
図5および
図6に示す。また、
図7(a)〜
図9は、運転モード毎の発電プラント100内の開閉弁の開閉状態を説明する図である。
【0076】
制御卓151等から起動の指令、すなわち、第一起動運転モードでの運転の指令を受け取ると、制御装置150は、
図5および
図7(a)に示すように、ボイラ起動抽気調整弁175と、主蒸気バイパス開閉弁177とに開指令を出力し、これらの開閉弁を開状態とする。これにより、ボイラ110で生成された蒸気は、ボイラ抽気管165および主蒸気バイパス管167を介して蓄熱装置200に導かれる。
【0077】
次に、第二起動運転モードでの運転の指令を受け取ると、制御装置150は、
図5および
図7(b)に示すように、ボイラ起動抽気調整弁175に閉指令を出し、一方、主蒸気開閉弁172および再熱蒸気開閉弁174には開指令を出す。これにより、ボイラ110で生成された蒸気は、蒸気タービン120に供給される。このとき、一部の余剰分の蒸気が、主蒸気バイパス管167を介して蓄熱装置200に導かれる。
【0078】
その後、第三起動運転モードでの運転の指令を受け取ると、制御装置150は、
図5および
図8(a)に示すように、主蒸気バイパス開閉弁177に閉指令を出力し、閉状態とする。これにより、ボイラ110で生成された蒸気は、蒸気タービン120に供給される。その後、通常運転モードに移行すると、蒸気、水は、ボイラ110、蒸気タービン120、給水ライン130間で循環し、発電機109が駆動される。
【0079】
また、第一停止運転モードでの運転の指令を受け取ると、制御装置150は、
図5および
図8(b)に示すように、主蒸気バイパス開閉弁177に開指令を出力し、開状態とする。これにより、第二起動運転モード時と同様に、ボイラ110で生成された蒸気は、蒸気タービン120に供給される。このとき、一部の余剰分の蒸気が、主蒸気バイパス管167を介して蓄熱装置200に導かれる。
【0080】
また、通常運転を行っている時に、揚水運転モードでの運転の指令を受け取ると、制御装置150は、
図6および
図9に示すように、主蒸気開閉弁172、再熱蒸気開閉弁174はそのまま開状態とする。また、主蒸気バイパス開閉弁177に開指令を出力し、開状態とする。そして、ボイラ起動抽気調整弁175は、そのまま閉状態とする。これにより、ボイラ110で生成された蒸気は、蒸気タービン120に供給される。また、余剰分の蒸気は、主蒸気バイパス管167を介して蓄熱装置200に導かれる。
【0081】
次に、蓄熱装置200に流体が導かれる、第一起動運転モード、第二起動運転モード、第一停止運転モードおよび揚水運転モードにおける、制御装置150による蓄熱装置200の開閉弁の制御を説明する。上述のように、制御装置150は、各運転モードにおいて、発生する余剰熱エネルギの温度に応じて各開閉弁の開閉を制御する。各開閉弁の開閉は、発生する余剰熱エネルギが、流体の態様で、その温度が属する温度域に温度特性を有する蓄熱部を最初に通過する流路に流入するよう制御される。
【0082】
ここでは、併せて、非常時運転モードにおける蓄熱装置200の開閉弁の制御も説明する。なお、非常時運転モードは、システム故障等の非常時の運転モードである。
【0083】
なお、ここでは、蓄熱時の蓄熱装置200の開閉弁の制御を説明するものであるため、熱回収開閉弁411、421、431は省略する。蓄熱時は、これらの熱回収開閉弁411、421、431は、基本的に閉状態に保たれる。
【0084】
第一起動運転モード時、
図1(a)に示すように、蒸気温度は、400℃以上かつ500℃未満である。従って、制御装置150は、この温度域に温度特性を有する蓄熱部を最初に通過する流路に流入するよう開閉弁の開閉を制御する。
【0085】
すなわち、制御装置150は、
図5および
図10(a)に示すように、主蒸気第三開閉弁378、排気第一開閉弁356および飽和水第一開閉弁316を開とし、他の主蒸気第一開閉弁376、主蒸気第二開閉弁377、排気第二開閉弁357および、飽和水第三開閉弁317を閉とする。これにより、本図に太線で示すように、蓄熱装置200に流入する500℃未満の流体は、中温層220および低温層230内の熱交換部に導かれる。
【0086】
主蒸気バイパス管167から流入した流体は、主蒸気バイパス流路372および主蒸気第三流路373を経て第一中温熱交換部221に入る。第一中温熱交換部221で熱交換後、温度の下がった流体は、第一低温熱交換部231に流入する。第一低温熱交換部231で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置200から主蒸気バイパス管167を経て、復水器131へ排出される。
【0087】
ボイラ抽気管165からボイラ排気流路351に流入した流体は、第二中温熱交換部222に入る。第二中温熱交換部222で熱交換後、温度の下がった流体は、第二低温熱交換部232に流入する。第二低温熱交換部232で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置200からボイラ抽気管165を経て、復水器131へ排出される。
【0088】
なお、汽水分離器113から復水器131に水を導く飽和水管161には、常に、水が流れる。すなわち、100℃以下の流体が流れる。従って、飽和水管161に接続される飽和水流路311に流入した流体は、第三低温熱交換部233に入る。第三低温熱交換部233で熱交換後、温度の下がった流体は、蓄熱装置200から飽和水管161を経て、復水器131へ排出される。
【0089】
第二起動運転モード時、
図1(a)に示すように、蒸気温度は、500℃以上である。また、ボイラ起動抽気調整弁175が閉じられる。従って、制御装置150は、
図5および
図10(b)に示すように、主蒸気第一開閉弁376および飽和水第一開閉弁316を開とし、主蒸気第二開閉弁377、主蒸気第三開閉弁378、排気第一開閉弁356、排気第二開閉弁357、および飽和水第三開閉弁317を閉とする。これにより、本図に太線で示すように、蓄熱装置200に流入する500℃以上の流体は、高温層210、中温層220および低温層230内の熱交換部に導かれる。また、汽水分離器から流入する100℃未満の水は、第一起動運転モード時同様、低温層230に導かれる。
【0090】
主蒸気バイパス管167から主蒸気第一流路371に流入した流体は、高温熱交換部211に入る。高温熱交換部211にて熱交換後、温度の下がった流体は、第一中温熱交換部221に入る。第一中温熱交換部221で熱交換後、温度の下がった流体は、第一低温熱交換部231に流入する。第一低温熱交換部231で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置200から主蒸気バイパス管167を経て、復水器131へ排出される。
【0091】
なお、汽水分離器113から復水器131に水を導く飽和水管161から飽和水流路311に流入した流体は、第一起動運転モードと同様に、第三低温熱交換部233に入り、第三低温熱交換部233で熱交換後、飽和水管161を経て、復水器131へ排出される。
【0092】
第一停止運転モード時の開閉弁の様子を
図11(a)に示す。
図1(b)に示すように、第一停止運転モード時、蒸気温度は、500℃以上である。従って、制御装置150は、
図5および
図11(a)に示すように、第二起動運転モード時と同様に、各開閉弁の開閉を制御する。
【0093】
揚水運転モード時の開閉弁の様子を、
図11(b)に示す。
図2に示すように、揚水運転モード時は、蒸気温度は、500℃以上である。従って、制御装置150は、
図6および
図11(b)に示すように、基本的に第二起動運転モード時と同様に、各開閉弁の開閉を制御する。ただし、飽和水第一開閉弁316は閉状態にする。
【0094】
非常時運転モード時の開閉弁の様子を
図12に示す。非常時運転モードでは、蒸気温度に関わらず、できる限り速やかに復水器131に流体を流し、発電プラント100内全体の温度を低下させる必要がある。従って、この場合、制御装置150は、蓄熱装置200に流体を導くことなく、蓄熱装置200をバイパスさせて復水器131に導くよう制御する。
【0095】
すなわち、
図12に示すように、主蒸気第二開閉弁377、排気第二開閉弁357および飽和水第三開閉弁317を開とし、他の開閉弁である主蒸気第一開閉弁376、主蒸気第三開閉弁378、排気第一開閉弁356および飽和水第一開閉弁316を閉とする。これにより、本図に太線で示すように、流体は、蓄熱装置200内の熱交換部に流入せず、復水器131に排出される。
【0096】
なお、各蓄熱層の温度域は、それぞれ、各運転モード時の、点火、通気開始、併入、均衡、均衡終了、停止等のイベント時の蒸気温度に従って決定する。また、各蓄熱層の蓄熱容量は、それぞれの蓄熱期間に発生する余剰熱エネルギ量を蓄熱可能な容量とする。
【0097】
以上説明したように、本実施形態の発電プラント100は、熱エネルギを有する流体を蓄熱装置200に導く配管と、余剰熱エネルギが発生する場合のみ流体を蓄熱装置200に導くよう配管に設けられた開閉弁を制御する制御装置150とを備える。また、蓄熱装置200は、複数の異なる温度域にそれぞれ温度特性を有する複数の蓄熱層と、各蓄熱層へ流体を通過させる流路と、流路に設けられた開閉弁とを備える。制御装置150は、蓄熱装置200に流体を導くよう制御する際、蓄熱装置200に流入する流体の熱エネルギを当該流体の温度域に応じた蓄熱層に蓄熱するよう制御する。
【0098】
従って、本実施形態によれば、発電プラント100で発生する余剰熱エネルギを、効率よく使用可能な態様で蓄熱できる。
【0099】
特に、本実施形態によれば、発電プラント100の起動時、停止時のボイラ出熱がタービン発電機負荷を上回る期間に発生する余剰熱エネルギを、蒸気温度および飽和水の温度に応じて適切な温度域の蓄熱層に蓄熱できる。
【0100】
起動時の併入までの期間は、余剰蒸気の温度は低いものの、全体の熱量が大きい。従来の発電プラント100では、発生する余剰蒸気を全て復水器131に戻すことになる。このため、無駄が多いだけでなく、復水器131側にも大きな受け入れ容量が必要となる。しかしながら、本実施形態によれば、復水器131へ戻す流体の熱量の大部分が蓄熱装置200に蓄熱されるため、復水器131の容量を抑えることが可能である。このため、設備費用を抑えることができる。
【0101】
また、蒸気タービン120の発電機負荷を、ボイラ110の出熱量以下に抑える揚水的運転時であっても、その間のボイラ110による余剰熱エネルギを、効率よく蓄熱できる。
【0102】
また、本実施形態の蓄熱装置200では、各蓄熱層の蓄熱材として、物質の相変態潜熱を利用した潜熱蓄熱材であって、異なる融点を持つ潜熱蓄熱材を用いる。これにより、発生した余剰熱エネルギを、各蓄熱層に、当該蓄熱層を形成する潜熱蓄熱材の融点に応じて蓄えることができる。また、このような潜熱蓄熱材を利用するため、熱の入出力のみで作動する、高密度の蓄熱が可能な蓄熱部を実現できる。また、潜熱蓄熱材として、融点の高い合金系素材を用いることにより、高い蓄熱温度を実現できる。これにより、例えば、主蒸気等の高温の流体をそのままの高い温度で蓄熱することができる。また、熱回収時に最も高い温度域の蒸気を作ることが可能となる。
【0103】
さらに、本実施形態の蓄熱装置200では、蓄熱装置200に流入する流体の温度に応じて、当該温度より低く、かつ、最も近い融点を有する蓄熱材の蓄熱層に流入するよう流路を設け、開閉弁の開閉を制御する。従って、簡易な構成で、複数の温度域毎の蓄熱を実現できる。
【0104】
さらに、蓄熱装置200内の各流路は、蓄熱層を通過した流体を、当該蓄熱材の次に融点の高い蓄熱材で構成される蓄熱層が有る場合は、当該蓄熱層も通過させるよう設けられる。すなわち、1つの流路において、高温、中温、低温という順で蓄熱層を配設することで、流体の熱を余すことなく回収することができる。余すことなく回収した熱エネルギを起動等に利用することも含め、本実施形態の蓄熱装置200を有する発電プラント100によれば、発電プラント100の効率的な運転を実現できる。
【0105】
さらに、本実施形態の蓄熱装置200によれば、流体の温度域ごとにその温度域に対し過不足ない性能を持つ蓄熱層を配設する。例えば、起動時の余剰熱エネルギの蓄熱に用いる場合、各蓄熱層の温度域は、それぞれ、ボイラ110点火後の所定の時間経過後の蒸気温度に従って決定する。さらに、各蓄熱層の蓄熱容量は、それぞれの時間経過後の余剰熱エネルギ量に応じて決定する。
【0106】
これにより、効率的な熱回収が可能となる。例えば、蓄熱装置200に流入する流体の、想定される最も高い温度に合わせて蓄熱部を用意すると、中温または低温の流体の熱回収においてオーバースペックとなり無駄が多い。しかし、本実施形態によれば、温度域ごとに適切な蓄熱層に蓄熱するため、このような無駄を回避できる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の蓄熱装置200を備える発電プラント100では、蓄熱装置200で、流体の熱を余すことなく回収するため、蓄熱装置200から復水器131に排出される流体の温度は低くなる。従って、復水器131に戻される熱量を抑えることができる。
【0108】
<<第二実施形態>>
次に、本実発明の第二実施形態を説明する。第一実施形態では、主蒸気管162から分岐する主蒸気バイパス管167を備え、蓄熱装置200は、その主蒸気バイパス管167を通過する流体の熱を蓄熱する。しかしながら、本実施形態では、さらに、高温再熱蒸気管164から分岐する再熱蒸気バイパス管を備える。そして、蓄熱装置200は、この再熱蒸気バイパス管を通過する流体の熱も蓄熱する。
【0109】
以下、本実施形態について、第一実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0110】
図13(a)は、本実施形態の発電プラント101の流体系統図である。本実施形態の発電プラント101は、第一実施形態の発電プラント100の構成に、さらに、高温再熱蒸気管164から分岐する再熱蒸気バイパス管168と、主蒸気管162から分岐し、高圧蒸気タービン121をバイパスして低温再熱蒸気管163に接続する高圧蒸気タービンバイパス管169と、を備える。すなわち、本実施形態では、主蒸気管162と、低温再熱蒸気管163とは、高圧蒸気タービンバイパス管169を介して互いに連接される。
【0111】
再熱蒸気バイパス管168には、再熱蒸気バイパス開閉弁178が設けられる。高圧蒸気タービンバイパス管169には、高圧蒸気タービンバイパス開閉弁179が設けられる。また、再熱蒸気バイパス管168には、内部を通過する蒸気の温度を検出する温度センサ188が設けられる。
【0112】
また、本実施形態の蓄熱装置201は、飽和水管161、ボイラ抽気管165、主蒸気バイパス管167および再熱蒸気バイパス管168上に配置される。蓄熱装置201で熱交換後の蒸気は、復水器131に導入される。
【0113】
本実施形態に置いても、第一実施形態と同様に、制御装置150は、外部(発電所に置かれる制御卓151等)からの指示、あるいは、発電プラント101内に設置される、上記温度センサ181、185、187、および188を含む各種のセンサからの信号に従って、各開閉弁の開閉を制御する。
【0114】
その他の構成は、第一実施形態の同名の構成と同じであるため、ここでは、説明を省略する。以下、本実施形態において、同様とする。
【0115】
[蓄熱装置]
次に、本実施形態の蓄熱装置201を、
図13(b)を用いて説明する。
【0116】
本実施形態の蓄熱装置201も、第一実施形態の蓄熱装置200同様、それぞれ異なる温度域に温度特性(融点)を持つ蓄熱材で構成される複数の蓄熱層と、各蓄熱層内に設けられた熱交換部と、蓄熱装置201に接続し、配管内の流体を熱交換部に導いたり、蓄熱装置200をバイパスして配管内の流体を復水器131に導いたりする流路と、各流路への流体の流入を規制する開閉弁(バルブ)と、を備える。
【0117】
そして、第一実施形態と同様に、蓄熱装置201では、蓄熱装置201に流入する流体の温度に応じて、流体が通過する経路を、制御装置150からの指令により開閉弁を開閉することにより変更し、適切な温度域に蓄熱する。
【0118】
本実施形態においても、第一実施形態と同様に、蓄熱層として、高温層210と、中温層220と、低温層230と、を備える場合を例にあげて説明する。
【0119】
また、熱交換部として、第一実施形態と同様に、高温層210内に配置される高温熱交換部211と、中温層220内に配置される第一中温熱交換部221および第二中温熱交換部222と、低温層230内に配置される第一低温熱交換部231、第二低温熱交換部232および第三低温熱交換部233と、を備える。さらに、本実施形態では、高温層210に再熱高温熱交換部214と、中温層220に再熱中温熱交換部224と、低温層230に、再熱低温熱交換部234と、を備える。
【0120】
また、熱貯蔵時に用いられる流路として、第一実施形態と同様に、主蒸気第一流路371と、主蒸気バイパス流路372と、主蒸気第三流路373と、ボイラ排気流路351と、ボイラ排気バイパス流路352と、飽和水流路311と、飽和水バイパス流路312と、を備える。本実施形態の蓄熱装置201は、さらに、再熱蒸気第一流路381と、再熱蒸気バイパス流路382と、再熱蒸気第三流路383と、を備える。
【0121】
再熱蒸気第一流路381は、再熱蒸気バイパス管168に接続される。本実施形態では、再熱蒸気バイパス管168から分岐点307で分岐し、再熱高温熱交換部214、再熱中温熱交換部224および再熱低温熱交換部234を、この順に接続し、合流点308で再熱蒸気バイパス管168に接続する。これにより、再熱蒸気第一流路381は、再熱蒸気バイパス管168から蓄熱装置201に流入する流体を、再熱高温熱交換部214、再熱中温熱交換部224および再熱低温熱交換部234の順に通過させ、蓄熱装置201から排出し、再熱蒸気バイパス管168を経て、復水器131に戻す。この間、再熱蒸気第一流路381を通過する流体は、各蓄熱層で熱交換を行い、各蓄熱層に蓄熱する。供給される流体の温度が高温層210の融点より高い場合、当該流体が有する熱エネルギは、高温層210、中温層220、低温層230の順に蓄熱される。
【0122】
再熱蒸気バイパス流路382は、再熱蒸気バイパス管168を流れてきた流体を、蓄熱装置201をバイパスして復水器131に戻す。再熱蒸気バイパス流路382は、分岐点307で分岐し、再熱高温熱交換部214、再熱中温熱交換部224および再熱低温熱交換部234をバイパスし、合流点308で再熱蒸気バイパス管168に合流する。
【0123】
再熱蒸気第三流路383は、再熱蒸気バイパス流路382から分岐し、再熱高温熱交換部214をバイパスし、再熱蒸気第一流路381に合流する。これにより、再熱蒸気第三流路383は、再熱蒸気バイパス管168から蓄熱装置201に流入する流体を、再熱中温熱交換部224および再熱低温熱交換部234の順に通過させ、蓄熱装置201から排出し、再熱蒸気バイパス管168を経て、復水器131に戻す。供給される流体の温度が中温層220の融点より高い場合、当該流体が有する熱エネルギは、中温層220、低温層230の順に蓄熱される。
【0124】
また、蓄熱装置201は、開閉弁として、第一実施形態同様、主蒸気第一開閉弁376と、主蒸気第二開閉弁377と、主蒸気第三開閉弁378と、排気第一開閉弁356と、排気第二開閉弁357と、飽和水第一開閉弁316と、飽和水第三開閉弁317と、を備える。さらに、再熱蒸気第一開閉弁386と、再熱蒸気第二開閉弁387と、再熱蒸気第三開閉弁388と、第一熱回収開閉弁411と、第二熱回収開閉弁421と、第三熱回収開閉弁431と、を備える。
【0125】
再熱蒸気第一開閉弁386は、再熱蒸気第一流路381の、分岐点307の下流に設けられ、再熱高温熱交換部214への流体の流入を制御する。
【0126】
再熱蒸気第三開閉弁388は、再熱蒸気第三流路383の、再熱蒸気バイパス流路382との分岐点の下流に設けられ、再熱蒸気第三流路383への流体の流入を制御する。
【0127】
再熱蒸気第二開閉弁387は、再熱蒸気バイパス流路382の、再熱蒸気第三流路383との分岐点の下流に設けられ、再熱蒸気バイパス流路382への流体の流入を制御する。
【0128】
本実施形態においても、各開閉弁は、それぞれ、第一実施形態同様、設置された流路を流れる流体の温度に応じて出される制御装置150からの指令に応じて開閉される。なお、各蓄熱層に用いる蓄熱材等は、第一実施形態と同様であるため、ここでは、説明を省略する。
【0129】
また、熱回収時に用いられる各流路、第一熱回収管410、第二熱回収管420および第三熱回収管430は、それぞれ、さらに、再熱高温熱交換部214、再熱中温熱交換部224、および、再熱低温熱交換部234も通過する。
【0130】
[制御装置による開閉弁の制御]
以下、本実施形態の蓄熱装置201を備える発電プラント101における制御装置150による開閉弁の制御を説明する。各運転モードは、第一実施形態と同様である。
【0131】
本実施形態においても、発電プラント101の各配管に設けられた開閉弁の開閉は、運転モードに応じて制御される。また、蓄熱装置201の各流路に設けられた開閉弁の開閉は、各流路の入口側の流体の温度に応じて制御される。また、運転モード毎の、各開閉弁の開閉状態は、予め、制御装置150の記憶装置に、開閉状態テーブルとして記憶しておく。各開閉弁は、初期状態において、特に断らない限り閉状態である。
【0132】
各開閉弁の、運転モード、イベント毎の開閉のタイムチャートを、
図14および
図15に示す。
【0133】
第一実施形態の発電プラント100が備える開閉弁の開閉タイミングは、第一実施形態と同じである。本実施形態の再熱蒸気バイパス開閉弁178と、再熱蒸気第一開閉弁386と、再熱蒸気第二開閉弁387と、再熱蒸気第三開閉弁388と、は、第一実施形態の177、376、377、378と同じである。また、高圧蒸気タービンバイパス開閉弁179は、蓄熱装置201に蓄熱する際、開状態とされる。すなわち、再熱蒸気バイパス開閉弁178と同様のタイミングで開閉される。
【0134】
本実施形態においても、制御卓151等からの指示に従って、制御装置150は、各開閉弁の開閉を制御する。本実施形態においても、第一実施形態同様、制御装置150は、各温度センサの検出結果に応じて開閉を制御してもよい。運転モード毎の、各開閉弁の開閉状態は、予め、制御装置150の記憶装置に、開閉状態テーブルとして記憶しておく。
【0135】
次に、蓄熱装置201に流体が導かれる、第一起動運転モード、第二起動運転モード、第一停止運転モードおよび揚水運転モードにおける蓄熱装置201の開閉弁の制御を説明する。ここでは、併せて、非常時運転モードにおける蓄熱装置201の開閉弁の制御も説明する。
【0136】
なお、本実施形態においても、蓄熱時の蓄熱装置201の開閉弁の制御を説明するものであるため、熱回収開閉弁411、421、431は省略する。蓄熱時は、これらの熱回収開閉弁411、421、431は、基本的に閉状態に保たれる。
【0137】
第一起動運転モード時、制御装置150は、
図14および
図16(a)に示すように、主蒸気第三開閉弁378、再熱蒸気第三開閉弁388、排気第一開閉弁356および飽和水第一開閉弁316を開とし、他の主蒸気第一開閉弁376、主蒸気第二開閉弁377、再熱蒸気第一開閉弁386、再熱蒸気第二開閉弁387、排気第二開閉弁357および、飽和水第三開閉弁317を閉とする。これにより、本図に太線で示すように、蓄熱装置200に流入する500℃未満の流体は、中温層220および低温層230内の熱交換部に導かれる。
【0138】
再熱蒸気バイパス管168から流入した流体は、再熱蒸気バイパス流路382および再熱蒸気第三流路383を経て再熱中温熱交換部224に入る。再熱中温熱交換部224で熱交換後、温度の下がった流体は、再熱低温熱交換部234に流入する。再熱低温熱交換部234で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置201から再熱蒸気バイパス管168を経て、復水器131へ排出される。
【0139】
第二起動運転モード時、制御装置150は、
図14および
図16(b)に示すように、主蒸気第一開閉弁376、再熱蒸気第一開閉弁386および飽和水第一開閉弁316を開とし、主蒸気第二開閉弁377、主蒸気第三開閉弁378、再熱蒸気第二開閉弁387、再熱蒸気第三開閉弁388、排気第一開閉弁356、排気第二開閉弁357、および飽和水第三開閉弁317を閉とする。これにより、本図に太線で示すように、蓄熱装置201に流入する500℃以上の流体は、高温層210、中温層220および低温層230内の熱交換部に導かれる。また、汽水分離器から流入する100℃未満の水は、第一起動運転モード時同様、低温層230に導かれる。
【0140】
再熱蒸気バイパス管168から再熱蒸気第一流路381に流入した流体は、再熱高温熱交換部214に入る。再熱高温熱交換部214にて熱交換後、温度の下がった流体は、再熱中温熱交換部224に入る。再熱中温熱交換部224で熱交換後、温度の下がった流体は、再熱低温熱交換部234に流入する。再熱低温熱交換部234で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置201から再熱蒸気バイパス管168を経て、復水器131へ排出される。
【0141】
第一停止運転モード時の開閉弁の様子を
図17(a)に示す。制御装置150は、
図14および
図17(a)に示すように、第二起動運転モード時と同様に、各開閉弁の開閉を制御する。
【0142】
揚水運転モード時の開閉弁の様子を、
図17(b)に示す。制御装置150は、
図15および
図17(b)に示すように、基本的に第二起動運転モード時と同様に、各開閉弁の開閉を制御する。ただし、飽和水第一開閉弁316は閉状態にする。
【0143】
非常時運転モードの開閉弁の様子を
図18に示す。非常時運転モードでは、制御装置150は、蒸気温度に関わらず、蓄熱装置201に流体を導くことなく、蓄熱装置201をバイパスさせて復水器131に導くよう制御する。
【0144】
すなわち、
図18に示すように、主蒸気第二開閉弁377、再熱蒸気第二開閉弁387、排気第二開閉弁357および飽和水第三開閉弁317を開とし、他の開閉弁である主蒸気第一開閉弁376、主蒸気第三開閉弁378、再熱蒸気第一開閉弁386、再熱蒸気第三開閉弁388、排気第一開閉弁356および飽和水第一開閉弁316を閉とする。これにより、本図に太線で示すように、流体は、蓄熱装置201内の熱交換部に流入せず、復水器131に排出される。
【0145】
各運転モードにおいて、主蒸気バイパス管167、ボイラ抽気管165、飽和水管161から蓄熱装置201へ流入した流体の流れは、第一実施形態と同様である。
【0146】
以上説明したように、本実施形態の発電プラント101は、第一実施形態の発電プラント100に加え、高温再熱蒸気管164からも余剰熱エネルギを取得し、蓄熱装置201に蓄熱する。
【0147】
従って、第一実施形態による効果に加え、本実施形態によれば、例えば、FCB(Fast Cut Back)運転時も効率よく余剰蒸気を蓄熱できる。
【0148】
一般に、FCB運転時は、通常の停止時よりも速い負荷変化が必要とされ、余剰蒸気の熱量が大きい。従来の発電プラント100では、FCB機能を備えると、発生する余剰蒸気を全て復水器131に戻すことになる。このため、無駄が多いだけでなく、復水器131側にも大きな受け入れ容量が必要となる。復水器131の大きな受け入れ容量を実現するためには、大掛かりな工事が必要である。しかしながら、本実施形態によれば、復水器131へ戻す流体の熱量の大部分が蓄熱装置201に蓄熱されるため、復水器131の性能は、FCB機能なしの場合に用いる復水器131と略同等でよい。このため、本実施形態によれば、さらに設備費用を抑えることができる。
【0149】
<変形例1>
[蓄熱装置の変形例]
上記各実施形態では、蓄熱装置200、201は、予め定めたイベントに応じて開閉弁の開閉を制御している。しかしながら、これに限定されない。例えば、逆に、蓄熱層の温度域に応じて温度閾値を設定し、制御装置150は、その温度閾値に従って開閉弁の開閉を制御してもよい。
【0150】
第一実施形態の発電プラント100および蓄熱装置200を例に、本変形例を説明する。
【0151】
本変形例の蓄熱装置202は、
図19(a)に示すように、第一実施形態の蓄熱装置200の構成に、さらに、主蒸気第四流路374と、主蒸気第四開閉弁379と、ボイラ排気第四流路354と、排気第四開閉弁359と、を備える。なお、ここでは、熱回収開閉弁411、421、431は省略する。以下、蓄熱装置200の各変形例において、同様とする。
【0152】
主蒸気第四流路374は、主蒸気バイパス流路372から分岐し、高温熱交換部211および第一中温熱交換部221をバイパスし、主蒸気第一流路371に合流する。これにより、主蒸気第四流路374は、主蒸気バイパス管167から蓄熱装置202に流入する流体を、第一低温熱交換部231を通過させ、蓄熱装置202から排出し、主蒸気バイパス管167を経て、復水器131に戻す。
【0153】
主蒸気第四開閉弁379は、主蒸気第四流路374の、主蒸気バイパス流路372との分岐点の下流に設けられ、主蒸気第四流路374への流体の流入を制御する。
【0154】
ボイラ排気第四流路354は、ボイラ排気バイパス流路352から分岐し、第二中温熱交換部222をバイパスし、ボイラ排気流路351に合流する。これにより、ボイラ排気第四流路354は、ボイラ抽気管165から蓄熱装置202に流入する流体を、第二低温熱交換部232を通過させ、蓄熱装置202から排出し、ボイラ抽気管165を経て、復水器131に戻す。
【0155】
排気第四開閉弁359は、ボイラ排気第四流路354の、ボイラ排気バイパス流路352との分岐点の下流に設けられ、ボイラ排気第四流路354への流体の流入を制御する。
【0156】
制御装置150は、主蒸気バイパス管167に備えられた温度センサ187およびボイラ抽気管165に備えられた温度センサ185の検出結果に応じて、各開閉弁の開閉を制御する。例えば、蒸気温度が単調増加時の開閉制御のタイミングを、
図19(b)および
図19(c)に示す。なお、蓄熱時の説明であるため、これらの図では、主蒸気第二開閉弁377および排気第二開閉弁357は省略する。
【0157】
図19(b)に示すように、温度センサ187で検出された温度が400℃未満の場合、主蒸気バイパス管167に接続された各流路において、主蒸気第四開閉弁379を開とし、他の開閉弁である主蒸気第一開閉弁376と、主蒸気第二開閉弁377と、主蒸気第三開閉弁378を閉とする。これにより、蒸気温度が400℃未満の場合、当該流体は、第一低温熱交換部231に導かれ、第一低温熱交換部231で熱交換を行い、主蒸気第一流路371から主蒸気バイパス管167を経て復水器131に排出される。
【0158】
温度センサ187で検出された温度が400℃以上かつ500℃未満の場合、主蒸気バイパス管167に接続された各流路において、主蒸気第三開閉弁378を開とし、他の開閉弁である主蒸気第一開閉弁376と、主蒸気第二開閉弁377と、主蒸気第四開閉弁379を閉とする。これにより、蒸気温度が400℃以上かつ500℃未満の場合、当該流体は、第一中温熱交換部221に導かれ、第一中温熱交換部221で熱交換後、温度の下がった流体は、第一低温熱交換部231に流入する。第一低温熱交換部231で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置200から主蒸気バイパス管167を経て、復水器131へ排出される。
【0159】
温度センサ187で検出された温度が500℃以上の場合、主蒸気バイパス管167に接続された各流路において、主蒸気第一開閉弁376を開とし、他の開閉弁である主蒸気第二開閉弁377と、主蒸気第三開閉弁378と、主蒸気第四開閉弁379と、を閉とする。これにより、蒸気温度が500℃以上の場合、当該流体は、高温熱交換部211に導かれ、高温熱交換部211で熱交換後、温度の下がった流体は、第一中温熱交換部221に導かれ、第一中温熱交換部221で熱交換後、温度の下がった流体は、第一低温熱交換部231に流入する。第一低温熱交換部231で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置200から主蒸気バイパス管167を経て、復水器131へ排出される。
【0160】
また、
図19(c)に示すように、温度センサ185で検出された温度が400℃未満の場合、ボイラ抽気管165に接続された各流路において、排気第四開閉弁359を開とし、他の開閉弁である排気第一開閉弁356と、排気第二開閉弁357と、を閉とする。これにより、蒸気温度が400℃未満の場合、当該流体は、第二低温熱交換部232に導かれ、第二低温熱交換部232で熱交換を行い、ボイラ排気流路351からボイラ抽気管165を経て復水器131に排出される。
【0161】
温度センサ185で検出された温度が400℃以上かつ500℃未満の場合、ボイラ抽気管165に接続された各流路において、排気第一開閉弁356を開とし、他の開閉弁である排気第二開閉弁357および排気第四開閉弁359を閉とする。これにより、蒸気温度が400℃以上かつ500℃未満の場合、当該流体は、第二中温熱交換部222に導かれ、第二中温熱交換部222で熱交換後、温度の下がった流体は、第二低温熱交換部232に流入する。第二低温熱交換部232で熱交換後、さらに温度の下がった流体は、蓄熱装置200からボイラ抽気管165を経て、復水器131へ排出される。
【0162】
例えば、発電プラント100の停止から、起動までの期間が空くと、
図20に示すように、ボイラ110から出力される初期の蒸気温度は、500℃から大幅に低下する。本変形例の蓄熱装置202は、このような場合にも効率よく最適な温度域の蓄熱層に蓄熱できる。
【0163】
なお、ここでは、第一実施形態の発電プラント100および蓄熱装置200を例に説明したが、第二実施形態の発電プラント101および蓄熱装置201でも同様である。再熱蒸気バイパス管168に設置された温度センサ188の検出結果に応じて、各開閉弁の開閉を制御し、検出結果に対応する温度帯の蓄熱層の熱交換部に、流体を最初に導く。
【0164】
<変形例2>
[蓄熱装置の変形例]
なお、
図21(a)に示すように、各蓄熱層内の熱交換部は、直列かつ並列に接続されるよう流路が設けられていてもよい。なお、
図21(a)では、主蒸気バイパス流路372、ボイラ排気バイパス流路352および飽和水バイパス流路312の各バイパス流路は省略する。
【0165】
本変形例では、主蒸気第三流路373は、蓄熱装置203に流入する流体を、第一並列中温熱交換部221bおよび第一並列低温熱交換部231bにこの順に通過させ、蓄熱装置203から排出する。
【0166】
また、主蒸気第四流路374は、蓄熱装置203に流入する流体を、第二並列低温熱交換部231cを通過させ、蓄熱装置203から排出する。
【0167】
また、ボイラ排気第三流路353は、蓄熱装置203に流入する流体を、第三並列低温熱交換部232bを通過させ、蓄熱装置203から排出する。
【0168】
制御装置150による、温度センサ187、185の検出値に応じた各開閉弁の開閉制御は、変形例1と同じである。
【0169】
<変形例3>
[蓄熱装置の変形例]
また、
図21(b)に示すように、各蓄熱層内の熱交換部は、並列に接続されるよう流路が設けられていてもよい。なお、
図21(b)では、主蒸気バイパス流路372、ボイラ排気バイパス流路352および飽和水バイパス流路312の各バイパス流路は省略する。
【0170】
本変形例では、主蒸気第三流路373は、蓄熱装置204に流入する流体を、第一並列中温熱交換部221bを通過させ、蓄熱装置203から排出する。
【0171】
また、主蒸気第四流路374は、蓄熱装置203に流入する流体を、第二並列低温熱交換部231cを通過させ、蓄熱装置203から排出する。
【0172】
また、ボイラ排気第三流路353は、蓄熱装置203に流入する流体を、第三並列低温熱交換部232bを通過させ、蓄熱装置203から排出する。
【0173】
制御装置150による、温度センサ187、185の検出値に応じた各開閉弁の開閉制御は、変形例1と同じである。
【0174】
<変形例4>
[蓄熱装置の変形例]
また、蓄熱装置205の各熱交換部は、各流入経路につき、各蓄熱層に1つ設けられていてもよい。この場合の蓄熱装置205の例を、
図22(a)に示す。
【0175】
本図に示すように、主蒸気バイパス管167、ボイラ抽気管165および飽和水管161毎に、各蓄熱層に熱交換部が1つ設けられ、直列かつ並列に接続される。
【0176】
制御装置150による、温度センサ187、185の検出値に応じた各開閉弁の開閉制御は、変形例1と同じである。
【0177】
<変形例5>
[蓄熱装置の変形例]
さらに、蓄熱装置205の各熱交換部は、
図22(b)に示すように、各蓄熱層に1つ設けられていてもよい。この場合の温度センサ187、185の検出値に応じた各開閉弁の開閉制御は、変形例1と同じである。ただし、この場合は、蓄熱装置205から排出される流体は、流入経路によらず、主蒸気バイパス管167、ボイラ抽気管165および飽和水管161のいずれかを経由して復水器131にもどされる。
【0178】
変形例4および変形例5に示すように、蓄熱部を共有化することにより、より簡易な構成で、他の蓄熱装置200と同様の効果を得ることができる。
【0179】
なお、上述の各実施形態および各変形例では、蓄熱装置200として、高温蓄熱層210と、中温蓄熱層220と、低温蓄熱層230の3つの蓄熱層を備える場合を例にあげて説明しているが、蓄熱層の数はこれに限定されない。2層以上であれば、その数は問わない。また、各流路に関し、必ずしも、各蓄熱層に熱交換部(蓄熱部)を備えなくてもよい。
【0180】
例えば、蓄熱装置200が、高温層210と中温層220との2層構成の場合、高温層210内に設けられる熱交換部が第一蓄熱部に、中温層220内に設けられる熱交換部が第二蓄熱部に、それぞれ対応する。また、蓄熱装置200がさらに低温層230を有する3層構成の場合、低温層230内に設けられる熱交換部が第三蓄熱部に対応する。また、蓄熱装置200が中温層220と低温層230との2層構成の場合、中温層220内に設けられる熱交換部が第一蓄熱部に、低温層230内に設けられる熱交換部が第二蓄熱部に対応する。
【0181】
<変形例6>
また、上記各実施形態では、プラント停止時は、
図1(b)に示すように、蒸気タービン120の発電機負荷を、ボイラ110の出力の低下に合わせて減少させている。そして、ボイラ110が最低負荷に到達した時点を均衡終了時とし、以降に発生する余剰熱エネルギを蓄熱している。しかしながら、プラント停止時の各構成の運転態様および蓄熱はこれに限定されない。
【0182】
例えば、蒸気タービン120の発電機負荷の減少率をボイラ110の出力低下以上に高めてもよい。この場合、
図23に示すように、ボイラ110が最低負荷に到達する前に均衡状態が終了する。そして、この均衡終了時以降に発生する余剰熱エネルギを蓄熱してもよい。
【0183】
これにより、ボイラ110の出力低下率とは独立して、蒸気タービン120の発電機負荷の減少率を制御できる。すなわち、ボイラ110の出力低下に合わせて蒸気タービン120の発電機負荷を減少させる場合に比べ、その発電機負荷の減少率を高めることができる。従って、発電プラント100の停止までの期間を短縮でき、効率よく運用できる。また、均衡終了以降に発生する余剰熱エネルギは、効率よく利用可能な態様で、上記各実施形態および各変形例のいずれかの蓄熱装置に蓄熱できる。
【0184】
<<第三実施形態>>
次に、本発明の第三実施形態を説明する。本実施形態は、複数の異なる温度域の蓄熱層を有する蓄熱装置からの熱エネルギの回収の実施形態である。なお、蓄熱装置としては、上記各実施形態および各変形例いずれかの蓄熱装置(以下、蓄熱装置200で代表する。)を用いることができる。しかしながら、用いる蓄熱装置は、これに限定されない。以下、蓄熱装置200を用いる場合を例にあげて本実施形態を説明する。
【0185】
上述のように、蓄熱装置200では、熱エネルギを、複数の温度域で蓄熱する。従って、蓄熱装置200からの熱回収時も、温度域毎に回収でき、利用先に提供できる。ここでは、一例として、ボイラ110内の各熱交換器(ボイラ熱交換部)およびボイラ110の前段の高圧ヒーター136に、その設計温度に応じて各蓄熱層から回収した熱エネルギを供給する場合の例を示す。
【0186】
ボイラ110の各熱交換器の設計温度の一例を
図24(a)に示す。ここでは、ボイラ110は、1次過熱器114aおよび2次過熱器114bを備えるものとする。
【0187】
本図に示すように高圧ヒーター136および節炭器111それぞれの、出口側の設計温度は、290℃、340℃である。また、1次過熱器114aの入口側および出口側の設計温度を、それぞれ、430℃および470℃である。
【0188】
本実施形態では、高圧ヒーター136に供給される流体の一部を、低温層230を通すことにより加温し、高圧ヒーター136の出口側もしくは節炭器111の出口側に供給する。また、節炭器111に供給される流体の一部を、中温層220を通すことにより加温し、節炭器111の出口側もしくは火炉水冷壁112の出口側に供給する。さらに、1次過熱器114aに供給される流体の一部を、高温層210を通すことにより加温し、1次過熱器114aの出口側もしくは2次過熱器114bの出口側に供給する。
【0189】
この場合、
図24(b)に示すように、蓄熱装置200の低温層230から熱エネルギを回収する第三熱回収管430の入口側は、高圧ヒーター136の入口側の配管に接続される。また、第三熱回収管430の出口側は、2つに分岐し、高圧ヒーター136の出口側の配管および節炭器111の出口側にそれぞれ接続される。分岐後の第三熱回収管430には、それぞれ、熱回収開閉弁433、434が設けられる。これらの熱回収開閉弁433、434は、低温層230から熱回収後、運転状態(流体温度等)に応じて、制御装置150により開閉制御される。具体的には、第三熱回収管430には、その出口側の流体の温度を検出する温度センサが設けられる。制御装置150は、その温度センサの検出値により、低温層230から熱回収後の流体温度を得る。そして、得られた流体温度よりも高い設計温度を有するボイラ熱交換部に戻すよう、開閉を制御する。
【0190】
蓄熱装置200の中温層220から熱エネルギを回収する第二熱回収管420の入口側は、節炭器111の入口側の配管に接続される。また、第二熱回収管420の出口側は、2つに分岐し、節炭器111の出口側の配管および火炉水冷壁112の出口側配管にそれぞれ接続される。分岐後の第二熱回収管420には、それぞれ、熱回収開閉弁423、424が設けられる。これらの熱回収開閉弁423、424は、中温層220から熱回収後、運転状態(流体温度等)に応じて、制御装置150により開閉制御される。具体的には、第二熱回収管420には、その出口側の流体の温度を検出する温度センサが設けられる。制御装置150は、その温度センサの検出値により、中温層220から熱回収後の流体温度を得る。そして、得られた制御装置150は、その流体温度よりも高い設計温度を有するボイラ熱交換部に戻すよう、開閉を制御する。
【0191】
蓄熱装置200の高温層210から熱エネルギを回収する第一熱回収管410の入口側は、1次過熱器114aの入口側の配管に接続される。第一熱回収管410の出口側は、2つに分岐し、1次過熱器114aの出口側の配管および2次過熱器114bの出口側配管にそれぞれ接続される。分岐後の第一熱回収管410には、それぞれ、熱回収開閉弁413、414が設けられる。これらの熱回収開閉弁413、414は、高温層210から熱回収後、運転状態(流体温度等)に応じて、制御装置150により開閉制御される。具体的には、第一熱回収管410には、その出口側の流体の温度を検出する温度センサが設けられる。制御装置150は、その温度センサの検出値により、高温層210から熱回収後の流体温度を得る。そして、得られた制御装置150は、その流体温度よりも高い設計温度を有するボイラ熱交換部に戻すよう、開閉を制御する。
【0192】
第三熱回収管430を通過する流体は、低温層230の第一低温熱交換部231、第二低温熱交換部232および第三低温熱交換部233を通過し、これらの熱交換部で熱を回収する。これにより、低温層230の温度域の温度を有する流体が生成される。また、第二熱回収管420を通過する流体は、中温層220の第一中温熱交換部221および第二中温熱交換部222を通過し、これらの熱交換部で熱を回収する。これにより、中温層220の温度域の温度を有する流体が生成される。第一熱回収管410を通過する流体は、高温熱交換部211を通過し、熱を回収する。これにより、高温層210の温度域の温度を有する流体が生成される。
【0193】
なお、前述したように、熱回収時、制御装置150は、第一熱回収開閉弁411と、第二熱回収開閉弁421と、第三熱回収開閉弁431とを開状態に制御する。発電プラント100、101は、各蓄熱層の温度を検出する温度センサを備える。制御装置150は、これらの温度センサが検出する各蓄熱層の温度を監視し、それらが、予め定めた各蓄熱層の設定温度未満となった時点で熱回収完了と判別する。そして、熱回収完了と判別した際、制御装置150は、これらの熱回収開閉弁411、421、431を、それぞれ閉じるよう制御する。
【0194】
また、熱回収時、制御装置150は、第一実施形態の発電プラント100においては、主蒸気開閉弁172と、再熱蒸気開閉弁174とを、開状態とする。また、ボイラ起動抽気調整弁175および主蒸気バイパス開閉弁177を、閉状態とする。また、第二実施形態の発電プラント101においては、さらに、再熱蒸気バイパス開閉弁178と高圧蒸気タービンバイパス開閉弁179とを閉状態とする。
【0195】
以上説明したように、本実施形態の蓄熱装置200によれば、熱回収時に各蓄熱層に融点に応じた複数の異なる温度の熱エネルギをそれぞれ別個独立して回収することができる。そして、回収した異なる温度の熱エネルギを、それぞれ、要求される温度に応じた利用先に提供できる。すなわち、本実施形態の蓄熱装置200によれば、用途に応じた熱の使い分けを実現できる。
【0196】
また、本実施形態の蓄熱装置200を備える発電プラント100では、余剰熱エネルギが温度帯毎に独立して蓄熱装置200に蓄熱される。従って、蓄熱装置200から熱回収する場合、利用先のボイラ熱交換部が要求する温度に応じた熱エネルギが蓄熱される蓄熱層から熱を回収することにより、効率よく余剰熱エネルギを利用できる。
【0197】
例えば、
図25(a)に、「蓄熱エネルギの放出」として示すように、起動時にこの余剰熱エネルギを利用することにより、ボイラ110の各熱交換器に最適な熱エネルギを提供することができ、素早く立ち上げることができる。
【0198】
また、起動時だけでなく、例えば、通常稼働時に蓄熱装置200に蓄熱した余剰熱エネルギを回収しつつ発電プラント100を稼働させてもよい。
【0199】
例えば、
図25(b)に示すように、蒸気タービン120の出力を一定に保ちつつボイラ110の負荷を低下させる(ボイラ出熱抑制)。また、同図に示すように、ボイラ110の負荷を一定に保ちつつ蒸気タービン120の負荷を上昇させる(蒸気タービン駆動促進)。蓄熱装置200に蓄熱した余剰熱エネルギをこのように利用することにより、ボイラ110の燃焼に用いる燃料を節約することができる。
【0200】
また、
図26に示すように、揚水運転モードにおいて、発電プラント100の停止時に、上述のように、蒸気タービン120の発電機負荷の減少率を、ボイラ110の出力低下率以上とし、その間に発生する余剰熱エネルギを蓄熱装置200に蓄熱する。また、蒸気タービン120停止期間中、ボイラ110による余剰熱エネルギを蓄熱装置200に蓄熱する。そして、起動時に、蓄熱装置200に蓄熱したこれらの余剰熱エネルギを回収してもよい。これにより、起動効率が高まる。
【0201】
揚水運転モードにおいて、このように蓄熱装置200を活用することにより、熱エネルギを効率よく利用できるだけでなく、停止に要する期間、起動に要する期間を、それぞれ短縮することができる。これにより、通常運転モードから揚水運転モードへのスムーズな移行および揚水運転モードから通常運転モードへのスムーズな復帰を実現できる。
【0202】
例えば、本実施形態の蓄熱装置200を、DSS(Daily Start & Stop)での汽力発電プラントの起動停止に利用することにより、起動停止時間の短縮が可能となる。また、本実施形態の蓄熱装置200を用いることにより、当該汽力発電プラントと再生エネルギ発電プラントの併用時においても、再生エネルギに由来する電力供給量の変動をトータルで平準化できる。これにより、全体的な電力供給量が系統の要求を超える状態の発生回数が低減する。
【0203】
さらに、本実施形態によれば、通常の起動時のみならず、FCB後の系統復帰時や急速な発電プラント100の負荷上昇時に蓄熱装置200に蓄えられた蓄熱エネルギを活用することができる。これにより、系統復帰時間や負荷上昇時間を短縮することができる。
【0204】
なお、急速な負荷上昇時とは、例えば、通常運転時の起動/負荷変化/停止時よりも速い負荷変化が必要とされる場合である。例えば、系統が不安定になった後の復帰時等、通常起動よりも高い負荷上昇を系統側が要求する場合などである。例えば、ボイラ110であれば、5%/分以上、ガスタービンであれば、10〜20%/分以上の上昇率である。
【0205】
また、発電プラント100を構成する機器であって、蒸気タービン120以外の機器の熱量変化に対応する限界によって規定される負荷変化率を超える場合や、ボイラ110が系統の要求に対応できない負荷変化が要求される場合等も含まれる。
【0206】
なお、各蓄熱層の温度域によっては、各熱回収管(第一熱回収管410、第二熱回収管420および第三熱回収管430)の接続は、上述の配管に限定されない。例えば、給水ライン130およびボイラ110が備える各ボイラ熱交換部に関し、当該ボイラ熱交換部の入口側温度より高くかつ最も近い温度域の蓄熱層を通る熱回収管が入口側配管から分岐し、出口側温度より低くかつ最も近い温度域の蓄熱層を通過した熱回収管が出口側配管に接続されればよい。
【0207】
例えば、ボイラ110が、熱交換により第一温度域の温度を有する流体を生成する第一ボイラ熱交換部と、熱交換により第一温度域より低い温度域である第二温度域の温度を有する流体を生成する第二ボイラ熱交換部(または、給水ライン130の高圧ヒーター136)と、を備え、また、蓄熱装置200が、第一温度域の熱エネルギを蓄熱する第一蓄熱部(高温層210内の熱交換部)と、第二温度域の熱エネルギを蓄熱する第二蓄熱部(中温層220内の熱交換部)と、を備える場合、第二熱回収管420は、第二ボイラ熱交換部で生成された流体の一部を第二蓄熱部へ導き、第二蓄熱部で熱エネルギを回収後、第一ボイラ熱交換部または、ボイラ110内の第一ボイラ熱交換部以上の設計温度を有するボイラ熱交換部へ導く。また、第一熱回収管410は、第二熱回収管420が導いた流体が流入するボイラ熱交換部(例えば、第一ボイラ熱交換部または第一ボイラ熱交換部以上の設計温度を有するボイラ熱交換部)で生成された流体の一部を第一蓄熱部へ導き、第一蓄熱部で熱エネルギを回収後、そのボイラ熱交換部の出口側へ導く。
【0208】
<変形例7>
[熱回収時の変形例]
上記実施形態の発電プラント100、101(以下、発電プラント100で代表する。)では、蓄熱装置200〜206(以下、蓄熱装置200で代表する。)に蓄熱された熱エネルギを、蓄熱層ごとに、当該蓄熱層の温度域に対応するボイラ110の熱交換器に供給することで、ボイラ110の負荷上昇時のエネルギ供給を効率的に支援している。
【0209】
しかしながら、蓄熱装置200からの熱回収手法は、これに限定されない。例えば、
図27に示すように、低温層230より順に流体を層毎に通過させ、蓄熱装置200に蓄熱された熱エネルギ全体を回収後、発電プラント100の系統に戻すよう構成してもよい。
【0210】
熱エネルギ回収後の流体の戻し先は、例えば、主蒸気管162とする。また、蓄熱装置200への流体は、例えば、給水ライン130から供給する。この場合、例えば、給水ライン130と主蒸気管162とを接続する第四熱回収管440を設け、蓄熱装置200を、第四熱回収管440上に配置する。
【0211】
このように配管することにより、蓄熱装置200に投入された水は、低温層230、中温層220、高温層210の順に加温される。これにより、蓄熱装置200内のみで高温、高圧の蒸気が生成され、それを、高圧蒸気タービン121に直接投入できる。
【0212】
なお、本変形例では、高負荷運転時は、蓄熱装置200での熱エネルギ回収後の流体の戻し先は、低温再熱蒸気管163であってもよい。
【0213】
<<第四実施形態>>
次に、本発明の第四実施形態を説明する。本実施形態では、上記第一〜第三実施形態とは異なり、余剰電力を蓄熱装置に蓄熱する。余剰電力は、風力や太陽光など再生可能エネルギ(以下、再生エネルギと呼ぶ。)による発電装置が電力網に組み込まれることにより発生する。
【0214】
これらの再生エネルギ発電は、天候等の自然現象に依存し、その発電量が急激に変動する。火力発電の電力網に再生エネルギ発電を組み入れる場合、電力系統の安定維持のため、火力発電プラントの発電量を調整することにより、再生エネルギ発電による発電量の変動を吸収する。このため、再生エネルギ発電による給電量が増加すると、火力発電プラントへ発電量を抑制する給電指令が出される。しかしながら、火力発電プラントには、運用上の最低負荷(例えば、30%等)が定められている。火力発電プラントでは、この、最低負荷を下回る発電量を指示されても火力発電プラント側では、応じられず、発電量に余剰が生じる場合がある。本実施形態では、この余剰電力を蓄熱する。
【0215】
電気エネルギを熱エネルギとして蓄積し、必要に応じて放出するシステムがある。例えば、特開2016−142272号公報(引用文献2)には、「電気エネルギを熱エネルギとして蓄積するための電気エネルギ蓄積および放出システムは、第1作動流体を含むヒートポンプサイクルと、第2作動流体を含む水蒸気サイクルと、第1熱流体を含む第1蓄熱システムと、第2熱流体を含む第2蓄熱システムと、電気ヒーターと、電力調整装置とを含み、これらは互いに流体的に接続されている。第1蓄熱システムは、流体的に接続された第1の低温蓄熱タンクと高温蓄熱タンクとを含み、第2蓄熱システムは、流体的に接続された第2の低温蓄熱タンクと高温蓄熱タンクとを含む。電気ヒーターは、蓄熱タンク間で作動的に接続されている。電力調整装置は、電源の過剰電気エネルギの一部を、電気ヒーターおよびヒートポンプサイクルへ供給するように調整する(要約抜粋)」技術が開示されている。
【0216】
しかしながら、引用文献2に開示の技術は、電力網に組み込まれた再生エネルギ発電を想定していないため、電力網内での余剰電力の蓄熱や、蓄熱した熱エネルギを発電プラントの起動時等のボイラ110の負荷上昇時に利用することについては言及がない。
【0217】
本発明の第四実施形態では、給電指令による発電量が、発電プラント100の最低負荷を下回った際に発生する余剰電力を、蓄熱装置に蓄熱する。そして、上記の他の実施形態同様、蓄熱した熱を、発電プラント運用時の適切なタイミングで最適な温度域から回収し、利用する。
【0218】
本実施形態の発電プラント100の流体系統は、基本的に第一実施形態と同様の構成を有する。ただし、本実施形態の蓄熱装置207は、
図28に示すように、再生エネルギ発電装置600または発電機109による電力の、余剰電力を蓄熱する。したがって、発電機109または再生エネルギ発電装置600による発電で発生する余剰電力を蓄熱装置207に給電する給電線が設けられる。なお、本実施形態では、飽和水管161、ボイラ抽気管165、主蒸気バイパス管167、ボイラ起動抽気調整弁175、主蒸気バイパス開閉弁177を備えなくてもよい。
【0219】
[蓄熱装置]
図29(a)に、本実施形態の蓄熱装置207の一例を示す。本実施形態の蓄熱装置207は、制御装置150からの指示に従って、発電プラント100および再生エネルギ発電装置600による余剰電力を余剰熱エネルギとして蓄熱する。
【0220】
蓄熱装置207は、それぞれ異なる温度域に温度特性(融点)を持つ蓄熱材で構成される複数の蓄熱層と、各蓄熱層内に設けられた熱交換部と、を備える。
【0221】
以下、本実施形態では、第一実施形態と同様に、蓄熱装置207が、蓄熱層として、高温蓄熱層210(高温層210)と、中温蓄熱層220(中温層220)と、低温蓄熱層230(低温層230)と、の3つの蓄熱層を備える場合を例にあげて説明する。
【0222】
なお、第一実施形態と同様に、高温層210は、500℃を中心とする温度域(第一温度域)に温度特性(融点)を有する蓄熱材で構成される蓄熱層である。中温層220は、400℃を中心とする温度域(第二温度域)に温度特性を有する蓄熱材で構成される蓄熱層である。また、低温層230は、300℃を中心とする温度域(第三温度域)に温度特性を有する蓄熱材で構成される蓄熱層である。
【0223】
また、本実施形態の蓄熱装置207は、熱交換部として、
図29(a)に示すように、抵抗に電流を流して発熱させて、対象物を加熱する電気ヒーター510を用いる。電気ヒーター510は、高温層210内に配置される高温層用電気ヒーター511と、中温層220内に配置される中温層用電気ヒーター521と、低温層230内に配置される低温層用電気ヒーター531と、を備える。なお、コイルに電流を流して誘導加熱により対象物を加熱する機器であってもよい。電気ヒーター510は、電力を用いて対象物を加熱することができれば、どのような機器であってもよい。
【0224】
高温層用電気ヒーター511と、中温層用電気ヒーター521と、低温層用電気ヒーター531は、それぞれ、給電線512、522、532により供給される余剰電力を用いて各蓄熱層(高温層210、中温層220、低温層230)を加熱する。
【0225】
各蓄熱層に用いる蓄熱材は、基本的に第一実施形態と同様である。例えば、物質の相変態潜熱を利用した潜熱蓄熱材を用いることができる。蓄熱層の温度特性は、この潜熱蓄熱材の融解温度(融点)に基づいて決定される特性である。また、各蓄熱層に用いる蓄熱材は、蓄熱温度(融点)が500℃を超える合金系素材を用いてもよい。さらに、この合金系素材を、セラミクスまたは金属で包含した構造であってもよい。例えば、国際公開第2017/200021号公報に開示の、潜熱蓄熱体マイクロカプセルを用いることができる。
【0226】
また、蓄熱材は、塩(固体)が溶融状態(液体)になった、溶融塩であってもよい。溶融塩は、高温に加熱することで、非常に大きな容量の熱を蓄熱することができる。溶融塩としては、例えば、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混合物を用いることができる。ただし、これに限定されない。必要な蓄熱容量、温度等に応じて適宜選択できる。
【0227】
なお、蓄熱装置207内は、第一実施形態同様、熱回収時に用いる流路として、さらに、同じ蓄熱層内の熱交換部を接続する流路(第一熱回収管410と、第二熱回収管420と、第三熱回収管430)をその内部に備える。
【0228】
第一熱回収管410、第二熱回収管420および第三熱回収管430には、それぞれ、各蓄熱層の入口側に、第一熱回収開閉弁411と、第二熱回収開閉弁421と、第三熱回収開閉弁431とが、設けられる。これらの熱回収開閉弁411、421、431の開閉は、制御装置150により制御される。制御装置150は、熱回収時、最適な温度域の蓄熱層から熱を回収できるよう、これらの熱回収開閉弁411、421、431の開閉を制御する。
【0229】
[制御装置による電気ヒーターのON/OFF制御]
一般に発電プラントは、管轄の電力系統を監視する給電指令所などから受け取る給電指令に応じて発電を行う。なお、給電指令所は、管轄の全発電所の総発電量と電気の使用量(需要量)とが等しくなるよう各発電プラントに給電指令を送信し、コントロールする。
【0230】
以下、再生エネルギ発電として太陽光発電が用いられ、電気の需要量を一定と仮定し、電気ヒーター510のON/OFF制御を、
図30(a)〜
図30(c)を用いて説明する。
【0231】
太陽光発電では、日の出、日没等のイベントにより、
図30(b)に示すように、給電量が大きく変化する。ここでは、時刻TAが日の出、時刻TDが日没である。太陽光発電による給電量は、当初0であったものが、時刻TAから増加に転じ、最大値に至る。そして、所定期間、最大値を維持した後、減少に転じ、時刻TDにおいて、最小(0)となる。
【0232】
このような太陽光発電による給電量の変化に応じて、電力網からの供給電力量が需要量に一致するよう、火力発電プラントに対し給電指令が出される。給電指令による発電量の時間的変化を
図30(a)に点線で示す。発電プラント100には、太陽光発電による給電量が最大になるまで、発電量を低下させるよう給電指令が出される。その後、太陽光発電による発電量が減少に転じるとともに、発電量を増加させるよう給電指令がだされる。
【0233】
この給電指令に応じて変化する発電プラント100のタービン発電機負荷を
図30(a)に示す。発電プラント100では、給電指令による発電量に応じたボイラの負荷が、最低負荷に到達すると、それ以上は、タービン発電機の負荷を低下させることができない。よって、このタイミングで、余剰電力が発生する。
【0234】
制御装置150は、
図30(c)に示すように、給電指令とそれに応じたボイラ発電機の負荷とをモニタし、給電指令がボイラ発電機の最低負荷を下回った時点で、電気ヒーター510にON指令を出力する。また、給電指令がボイラ発電機の最低負荷以上となった時点で、電気ヒーター510にOFF指令を出力する。
【0235】
すなわち、時刻TA(例えば、日の出)において、再生エネルギ発電からの給電量の増加とともに、再生エネルギ受入のため火力の給電指令の抑制がはじまる。そして、時刻TBにおいて、給電指令が、最低負荷を下回る。ところが、火力の発電プラント100は、プラント毎に最低負荷が予め定められる。このため、この最低負荷を下回る給電指令を受けても、それ以上、負荷を下げることはできない。すなわち、発電プラント100は、最低負荷で稼働を続けるため、電力網内で、最低負荷での稼働による給電量が給電指令による給電量を上回り、余剰電力が生じる。
【0236】
この時点(時刻TB)で、余剰電力を蓄熱装置207に蓄熱するため、電気ヒーター510は、ONされる。その後、再生エネルギの給電量が減少に転じ、余剰電力が生じなくなる時点、言い換えると、火力の発電プラント100への給電指令が最低負荷に達した時点(時刻TC)で、電気ヒーター510は、OFFされる。
【0237】
なお、制御装置150は、給電指令を受信するごとに、受信した給電指令と発電プラント100の最低負荷とを比較し、給電指令による給電量が、最低負荷を下回った場合、電気ヒーター510にON指令を出力する。一方、給電指令による給電量が、最低負荷以上となった場合、電気ヒーター510にOFF指令を出力する。
【0238】
ON指令を受け取ると、電気ヒーター510による蓄熱が開始され、OFF指令を受け取ると、電気ヒーター510による蓄熱が停止する。
【0239】
なお、本実施形態では、高温層用電気ヒーター511と、中温層用電気ヒーター521と、低温層用電気ヒーター531は、それぞれ、高温層210、中温層220、低温層230を加熱する。このため、制御装置150は、各蓄熱層の温度もモニタし、当該蓄熱層の融点に達した時点で、当該ヒーター510をOFFするよう制御してもよい。例えば、低温層230が、300℃に達した場合、低温層用電気ヒーター531をOFFし、中温層220が、400℃に達した場合、中温層用電気ヒーター521をOFFするよう制御を行う。
【0240】
[熱回収]
熱回収時の接続を、
図31(a)に示す。各熱回収菅の接続は、第一実施形態と同じであるため、ここでは、説明を省略する。また、熱回収開閉弁の開閉制御も同様である。
【0241】
以上説明したように、本実施形態の発電プラント100は、供給された水を加熱して過熱蒸気を生成するボイラ110と、ボイラ110で過熱した過熱蒸気により回転駆動され、発電機109を駆動する蒸気タービン120と、内部を通過する余剰エネルギを回収して蓄熱する蓄熱装置207と、起動時および停止時を含む運転中に発生した余剰エネルギが蓄熱装置207に蓄熱されるよう制御する制御装置150と、を備える。
【0242】
そして、余剰エネルギは、余剰の電力エネルギである余剰電力エネルギを含み、蓄熱装置207は、内部に設けられた、それぞれ、異なる温度域に温度特性を持つ複数の蓄熱部(高温層210、中温層220、低温層230)に、余剰電力エネルギにより加熱される電気ヒーター510を備え、制御装置150は、発電プラント100の予め定めた負荷(例えば、最低負荷)を下回る給電指令を受信した場合、電気ヒーター510を作動させる。
【0243】
このように、本実施形態では、余剰電力エネルギを蓄熱する。余剰熱(蒸気)を余剰エネルギとして蓄熱する場合は、蒸気以上の温度を蓄熱材へ蓄熱できないため、余剰熱を供給する蓄熱層が限定される場合がある。しかしながら、余剰電力を余剰エネルギとして蓄熱する場合は、電気ヒーター510にその電力を供給することにより蓄熱するため、余剰電力エネルギがある限り制限なく温度上昇が可能なため、設置する/蓄熱する蓄熱層を任意に選択できる。したがって、本実施形態によれば、発電プラント100で発生する余剰電力エネルギを、効率よく使用可能な態様で蓄熱できる。
【0244】
また、本実施形態の蓄熱装置207によれば、熱回収時に各蓄熱層に融点に応じた複数の異なる温度の熱エネルギをそれぞれ別個独立して回収することができる。そして、回収した異なる温度の熱エネルギを、それぞれ、要求される温度に応じた利用先に提供できる。すなわち、本実施形態の蓄熱装置207によれば、用途に応じた熱の使い分けを実現できる。
【0245】
また、本実施形態の蓄熱装置207を備える発電プラント100では、余剰熱エネルギが温度帯毎に独立して蓄熱装置207に蓄熱される。従って、蓄熱装置200から熱回収する場合、利用先のボイラ熱交換部が要求する温度に応じた熱エネルギが蓄熱される蓄熱層から熱を回収することにより、効率よく余剰熱エネルギを利用できる。
【0246】
<変形例8>
なお、上記実施形態では、蓄熱装置207は、それぞれ異なる温度域に温度特性を有する蓄熱材で構成される複数の蓄熱層を備え、当該温度域までしか蓄熱しない。しかしながら、蓄熱装置207への蓄熱はこれに限定されない。
【0247】
例えば、
図29(b)に示す蓄熱装置207aように、全て同じ温度まで蓄熱可能に構成し、当該温度まで蓄熱するよう構成してもよい。ここでは、一例として、全ての蓄熱層に、上記実施形態の高温層210に相当する温度まで蓄熱する場合を例示する。
【0248】
蓄熱装置207aを用いる場合の、熱回収時の接続を、
図31(b)に示す。本変形例では、各熱回収菅(第一熱回収管410、第二熱回収管420および第三熱回収管430)の入り口側は、1次過熱器114aの入口側の配管に接続される。1次過熱器114aと各熱回収管との間には、熱回収開閉弁411が設けられる。また、出口側は、2つに分岐し、1次過熱器114aの出口側の配管および2次過熱器114bの出口側配管にそれぞれ接続される。分岐後の第一熱回収管410には、それぞれ、熱回収開閉弁413、414が設けられる。各熱回収開閉弁の制御は、第三実施形態と同様である。
【0249】
本変形例の場合、全ての蓄熱層に高温層210に相当する温度まで蓄熱するため、上記実施形態のように、各蓄熱層の温度をモニタし、各蓄熱層の電気ヒーターのOFF制御を行う必要はない。
【0250】
本変形例によれば、簡易な構成で、効率よく余剰電力エネルギを、熱エネルギとして蓄熱できる。
【0251】
なお、本変形例では、蓄熱装置207の蓄熱層の数は問わない。例えば、
図32に示す蓄熱装置207bのように、単層であってもよい。
【0252】
<<第五実施形態>>
次に、本発明の第五実施形態を説明する。本実施形態では、余剰電力エネルギと余剰熱エネルギとを余剰エネルギとして蓄熱装置に蓄熱する。
【0253】
余剰熱エネルギは、第一実施形態同様、発電プラント100の起動時や停止時に発生する、ボイラ110が発生した蒸気であって、蒸気タービン120で使用されない熱エネルギである。また、余剰電力エネルギは、第四実施形態同様、給電指令値が、発電プラント100の最低負荷を下回った際に発生する電力である。
【0254】
本実施形態の発電プラント100の流体系統図を、
図33に示す。本実施形態の流体系統は、基本的に第一実施形態と同様の構成を有する。そして、本実施形態では、余剰電力エネルギも蓄熱装置208に蓄熱するため、さらに、発電機109または再生エネルギ発電装置600による発電で発生する余剰電力エネルギを蓄熱装置208に給電する給電線が設けられる。
【0255】
[蓄熱装置]
図34に、本実施形態の蓄熱装置208の一例を示す。本実施形態の蓄熱装置208の一例を示す。本実施形態の蓄熱装置208は、第一実施形態同様、制御装置150からの指示に従って、発電プラント100および再生エネルギ発電装置600による余剰電力エネルギを余剰熱エネルギとして蓄熱する。
【0256】
本実施形態の蓄熱装置208は、
図4に示す、第一実施形態の蓄熱装置200と同じ構成を有する。さらに、本実施形態の蓄熱装置208は、熱交換部として第四実施形態で説明した電気ヒーター510を備える。電気ヒーター510は、第四実施形態同様、高温層210内に配置される高温層用電気ヒーター511と、中温層220内に配置される中温層用電気ヒーター521と、低温層230内に配置される低温層用電気ヒーター531と、を有する。また、高温層用電気ヒーター511と、中温層用電気ヒーター521と、低温層用電気ヒーター531にそれぞれ余剰電力を供給する給電線512、522、532を備える。
【0257】
各蓄熱層に用いる蓄熱材は、第四実施形態と同じである。
【0258】
また、本実施形態の制御装置150による開閉弁の制御および電気ヒーター510のON/OFF制御は、それぞれ、独立して行われ、第一実施形態および第四実施形態と同じである。本実施形態においても、制御装置150は、各蓄熱層の温度もモニタし、当該蓄熱層の融点に達した時点で、当該ヒーター510をOFFするよう制御してもよい。
【0259】
[熱回収]
本実施形態の熱回収時の接続を、
図35に示す。熱回収は、蓄熱層の温度特性に依存する。よって、各熱回収菅の接続は、第一実施形態と同じであるため、ここでは、説明を省略する。また、熱回収開閉弁の開閉制御も同様である。
【0260】
以上説明したように、本実施形態の発電プラント100は、供給された水を加熱して過熱蒸気を生成するボイラ110と、ボイラ110で過熱した過熱蒸気により回転駆動され、発電機109を駆動する蒸気タービン120と、内部を通過する余剰エネルギを回収して蓄熱する蓄熱装置208と、起動時および停止時を含む運転中に発生した余剰エネルギが蓄熱装置208に蓄熱されるよう制御する制御装置150と、を備える。
【0261】
そして、余剰エネルギは、ボイラ110で生成した過熱蒸気のうち、余剰分の熱エネルギである余剰熱エネルギを含み、蓄熱装置208は、内部に設けられた流路を通過する流体から熱を回収して蓄熱する、それぞれ、異なる温度域に温度特性を持つ複数の蓄熱部(高温層210、中温層220、低温層230)と、制御装置150からの指示に従って動作し、流路への流体の流入を制御する開閉弁と、を備え、制御装置150は、起動時および停止時の少なくとも一方において発生する余剰熱エネルギが、流体の態様で、余剰熱エネルギの温度が属する温度域に温度特性を有する蓄熱部を最初に通過する流路に流入するよう、開閉弁の開閉を制御する。また、余剰エネルギは、余剰の電力エネルギである余剰電力エネルギをさらに含み、各蓄熱部は、それぞれ、余剰電力エネルギにより加熱される電気ヒーター510を備え、制御装置150は、発電プラント100の予め定めた負荷(例えば、最低負荷)を下回る給電指令を受信した場合、電気ヒーター510を作動させる。
【0262】
したがって、本実施形態によれば、発電プラント100で発生する余剰熱エネルギおよび余剰電力エネルギを、効率よく使用可能な態様で蓄熱できる。すなわち、第一実施形態と第四実施形態と同様の効果が得られる。
【0263】
なお、ここでは、余剰熱エネルギを蓄熱する構成として、第一実施形態の蓄熱装置200を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第二実施形態の蓄熱装置201や、他の変形例の蓄熱装置200、201、202、203、204、205であってもよい。
【0264】
<変形例9>
また、第四実施形態同様、
図36に示す蓄熱装置208aのように、全て同じ温度まで蓄熱可能に構成し、当該温度まで蓄熱するよう構成してもよい。ここでは、一例として、全ての蓄熱層に、上記実施形態の高温層210に相当する温度まで蓄熱する場合を例示する。
【0265】
一方、全ての蓄熱層に高温層210に相当する温度まで蓄熱するため、本変形例においては、制御装置150は、各蓄熱層の温度をモニタし、電気ヒーター510のOFF制御を行う必要はない。
【0266】
[熱回収]
蓄熱装置208aを用いる場合の、熱回収時の接続を、
図37(a)に示す。上述のように、熱回収時の配管、熱回収開閉弁の制御は、蓄熱層の温度特性に依存する。よって、この場合は、第四実施形態の
図31(b)と同様である。
【0267】
本変形例によれば、簡易な構成で、効率よく余剰電力エネルギおよび余剰熱エネルギを、熱エネルギとして蓄熱できる。
【0268】
なお、余剰熱エネルギを蓄熱する場合は、その蒸気の温度にあった蓄熱材を各層に配置し、相変化域(潜熱領域、一定温度)で蓄熱/放熱する。余剰電力エネルギを電気ヒーター510で蓄熱する場合は、電気ヒーター510の上限温度まで蓄熱材を加熱可能であるため、相変化域より高い温度まで蓄熱可能である。この場合は、顕熱領域での蓄熱が行われる。
【0269】
<変形例10>
なお、上記変形例では、全ての蓄熱層に高温層210に相当する温度まで蓄熱する場合を例示したが、各蓄熱層への蓄熱温度は、これに限定されない。蓄熱温度の組み合わせは任意である。さらに、蓄熱層の数も問わない。
【0270】
例えば、上2層に高温層210に相当する温度まで蓄熱し、最下層に中温層220に相当する温度まで蓄熱してもよい。また、最上層に高温層に相当する温度まで蓄熱し、下2層に中温層220に相当する温度まで蓄熱してもよい。この場合、放熱(熱回収)においては、第一熱回収管410を中温層220および低温層230にも接続し、また、第二熱回収管420を低温層230にも接続し、それぞれのラインにバルブを設けておく。これらのバルブを開閉することにより、蓄熱時の状況に応じた放熱が可能になる。
【0271】
また、余剰熱エネルギを蓄熱する蓄熱装置200と余剰電力エネルギとを蓄熱する蓄熱装置207とは、
図38に示すように、それぞれ、別個に設けられてもよい。この場合、余剰電力エネルギを蓄熱する蓄熱装置207は、配置位置を自由に設定できる。特に、余剰電力エネルギを蓄熱する蓄熱装置207は、蓄熱層毎に、任意の位置に配置してもよい。さらに、余剰電力エネルギと余剰熱エネルギとを蓄熱する蓄熱装置208も、これらの蓄熱装置200、207の少なくとも一方と、適宜、組み合わせて配置可能である。なお、蓄熱装置200には、上記同様、第二実施形態の蓄熱装置201や、他の変形例の蓄熱装置200、201、202、203、204、205であってもよい。また、蓄熱装置207は、蓄熱装置207a、207bであってもよい。さらに、蓄熱装置208は、蓄熱装置208aであってもよい。また、各蓄熱装置の蓄熱層の数も問わない。
【0272】
なお、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されず、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。例えば、蓄熱装置200〜208a内の熱貯蔵時に用いられる流路および給電線、ならびに、熱回収時に用いられる流路は、必ずしも全て備えなくてもよい。