特開2021-159904(P2021-159904A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-159904有機性廃棄物処理から、効率的に液肥を生産する方法と、地域に合った微生物機能強化堆肥の生産を短期間で生産する装置と堆肥生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-159904(P2021-159904A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】有機性廃棄物処理から、効率的に液肥を生産する方法と、地域に合った微生物機能強化堆肥の生産を短期間で生産する装置と堆肥生産方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20210913BHJP
   C05F 17/60 20200101ALI20210913BHJP
   C05F 17/921 20200101ALI20210913BHJP
【FI】
   B09B3/00 D
   B09B3/00 303M
   C05F17/60
   C05F17/921
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-73118(P2020-73118)
(22)【出願日】2020年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】520135448
【氏名又は名称】白石 明仁
(72)【発明者】
【氏名】白石 明仁
【テーマコード(参考)】
4D004
4H061
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AC04
4D004CA12
4D004CA19
4D004CA32
4D004CA39
4D004CA42
4D004CB06
4D004CB28
4D004CC03
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
4D004DA09
4H061AA02
4H061AA03
4H061CC47
4H061FF01
4H061GG16
4H061GG18
4H061GG20
4H061GG28
4H061GG43
4H061GG49
4H061LL02
4H061LL30
(57)【要約】
【課題】 有機性廃棄物(ビニールハウス栽培後の土・農園残債・家畜糞尿・動物遺体・生ゴミ・汚泥・等)を堆肥化するには縦型密閉堆肥化装置で7日以上、攪拌式堆肥化装置では2ヶ月程度必要で熟成堆肥にするにはさらに数ヶ月必要である。この堆肥化の時間が大きな課題を持っている。
【解決手段】 亜臨界水処理と減圧乾燥機の両方の機構を持つ装置で、独特な攪拌羽根を装着し、攪拌羽根を毎回逆転させることなく攪拌し、1工程で有機性廃棄物から液肥、もしくは地域に合った微生物機能強化堆肥を長期の熟成期間をしなくて短期間で製造する装置と堆肥と液肥を短時間で製造する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を原料として、効率的に液肥を生産する方法と、地域に合った微生物機能強化堆肥の生産を短期間で生産する処理方法と処理システムであって、圧力容器と圧力容器ジャケットに高温高圧と低温低圧の水蒸気を供給できるボイラーと、エジェクターと循環槽・クーリングタワーを有した、亜臨界水処理と減圧乾燥機処理の両方の機能を持った装置で、
(ア)有機性廃棄物を圧力容器に投入し亜臨界水処理を行う工程と
(イ)亜臨界水処理後に圧力容器側面の高低差のある複数個の排出バルブを選択して固形物と分離した液肥を排出する工程と
(ハ)圧力容器に残った無菌状態の固形分を減圧乾燥機能で有機性廃棄物の品温を60〜70℃に下げる工程と
(ニ)有機性廃棄物の品温を60〜70℃に下がったら、堆肥として使用する選択した地域の土着微生物(土着菌)を缶体に残った固形分重量の5〜10%前後を投入し、減圧乾燥機能で含水率を50〜70%にする工程と
(ホ)圧力容器内部では投入した土着菌が圧力容器内部の60〜70℃の温度により好気性高温菌に淘汰され、亜臨界水処理で低分子化された有機性廃棄物と50〜70%の含水率により好気性高温菌の増殖が始まる工程と
(ヘ)圧力容器から排出された堆肥は好気性高温菌の増殖条件が整った堆肥になり堆肥熟成層で発熱により水分率が下がって熟成が止まる前に、亜臨界水処理後に排出した液肥を水分調整として全体に散布し発酵を促進させる事により、地域に合った微生物機能強化堆肥が短期間で生産する方法。
【請求項2】
請求項1の装置において、缶体への高圧蒸気投入バルブを閉鎖し、ジャケット投入バルブから、0.47/MPaの蒸気を投入した後、圧力容器内部をエジェクターで減圧し、処理機能を変えて減圧乾燥処理の工程に移り、処理物の品温が60〜70℃に冷却し、その後缶体を開放し大気圧にし、投入口から、堆肥を使用する地域から採取した土着菌を固形分重量の5〜10%を投入して得られる熟成堆肥の製造方法。
【請求項3】
請求項1の装置に装着される攪拌羽根は2等変三角形の一方の内側を湾曲した羽根と菱形の一方の内側を湾曲した羽根を交互に並べ、正回転で処理物を混合し、逆回転で処理物を排出する構造を具備してなる装置。
【請求項4】
請求項1の装置において、圧力容器の排出口に最も近い箇所にひし形の一方の羽根を有し、反対側の排出口に最も遠い箇所に2等辺三角形の一方の内側を湾曲した攪拌羽根を装着した構造を有する装置。
【請求項5】
請求項1の装置において、排出口に近い箇所の攪拌羽根は少なくとも2個以上のひし形の攪拌羽根を有し、ひし形攪拌羽根の1辺が湾曲しており、排出口に最も遠い攪拌羽根は少なくとも2個以上の2等辺三角形の一辺が湾曲した攪拌羽根を装着した構造を有する装置。
【請求項6】
請求項1の装置において、攪拌羽根の底辺が圧力容器の半径に限りなく近い曲面構造を有する装置。
【請求項7】
請求項1の装置において、圧力容器の側面に高さの異なる複数個の排出バルブを設けた構造を有する装置。
請求項1の装置で缶の下部に沈殿した固形物の上に生じた液肥を圧力容器の側面から適正位置にあるバルブを開放し効率よく液肥を得る製造方法。
【請求項8】
請求項1の装置で固形物の上に生じた液肥を高圧容器の側面から液肥を排出させ、個液分離を行い、残った固形物の乾燥をより早く行う製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物を原料として、効率的に液肥を生産する方法と、地域に合った微生物機能強化堆肥の生産を短期間で生産する処理方法と処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物(ビニールハウス栽培後の土・農園残債・家畜糞尿・動物遺体・生ゴミ・汚泥・等)を堆肥化するには縦型密閉堆肥化装置で7日以上、攪拌式堆肥化装置では2ヶ月程度必要で、熟成堆肥にするにはさらに数ヶ月を要し、処理施設が広大になり臭気対策も必要である。
【0003】
資源再生処理法の一方法として、臨界点以下の亜臨界水領域のもとで、加水分解反応により有機性廃棄物は短時間で低分子化する技術を用いる方法として知られている。
【0004】
亜臨界水処理装置での有機性残渣の処理も応用されているが、圧力容器に投入される高温高圧水蒸気と有機性廃棄物の保有する水分と有機性廃棄物の液化分が加わりかなりの水分になり、亜臨界処理後に自然乾燥する処理の為の面積と時間が必要になる。有機性廃棄物は亜臨界処理後に無菌状態になり、排出後に自然乾燥する場所での土着菌で発酵が進行する事になり、堆肥使用場所に適した微生物機能強化堆肥にはならない。
【0005】
亜臨界水処理後の圧力容器内は固形物が下部に、その上に液状の液肥ができる。しかし1か所の排出バルブから固形物と液肥を排出する機構では、効率的な固形物と液肥分離はできない。
【0006】
圧力容器内の攪拌構造は攪拌羽根を正回転で処理物を混合し、逆回転で排出する機構を持つ装置が一般的である。正転、逆転を繰り返して攪拌混合しているため逆転時に一度停止する無駄な時間が必要となり、攪拌モータの起動電流が大きくこれまた無駄となる。二等辺三角形と菱形の攪拌羽根の機構を有し正回転で混合できるものは存在するが、攪拌効率が問題になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3099269
【0008】
上記特許文献1は攪拌効率に課題があり、コストにかかる費用は無視できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は亜臨界水装置と減圧乾燥装置を組み合わせた装置に、独自の攪拌羽根を具備してなる装置と堆肥、液肥の製造方法に関するものである。
【0010】
有機性廃棄物の処理は、特に農村地域の近辺で行わないとそのコストや地域独自の土着菌を用いることでより有効な堆肥や液肥を短時間で処理を行い提供が可能となる。その反面他の農村地域に提供できない、提供しても有効性が得られないなどの欠点をもつ。
【0011】
本発明の方式では短時間に堆肥や液肥を得る上に設備を備えた地域以外に向けて、所要の土地に在る固有の土着菌を含む資材を混入させることで他の地域に供給することが可能になる。
【0012】
通常亜臨界水処理装置は攪拌を行うのに攪拌羽根を一定時間ごとに反転を行っているが反転するたびに一旦停止する。一時回転が停止した後反転させるため大きな起動電流を必要とする。この起動電流は内容物の重量が重ければ重いほど大きくなる。回転が一時止まることは処理時間が長くなるとともに、起動電流が大きいので処理コストが大きくなることを意味している。
【0013】
本発明の装置では同一回転で攪拌が可能な攪拌羽根を有しており、攪拌羽根は常に同一方向に回転しているため無駄な起動電流を必要としない。
【0014】
また亜臨界水処理装置は液肥ができるがその取り出し口は通常1か所から取り出している。本発明の装置は圧力容器の側部に高さが異なる液肥排出のためのバルブを複数個設けバルブの高さに応じて下部に沈殿している固形物を避けて液肥を効率よく取り出す事が出来るだけでなく固形物の乾燥時間の短縮になる。
【0015】
亜臨界水処理工程で処理されたものは減圧乾燥処理が同一圧力容器で処理される。必要に応じて土着微生物を混合させる事が出来る。
【0016】
減圧乾燥では沸点を制御して70℃まで下げ、ここに地域で培養された土着微生物を含む資材を、圧力容器内に処理された固形物の約5%程度を目安に混入する。含水率50〜60%程度に乾燥した後熟成槽に移動させる。熟成槽に移動した堆肥に必要に応じて液肥を水分調整として散布することで任意の水分率を有する堆肥が得られる。
【0017】
本発明の装置を用いることで、地域独自の土着菌を混入することで地域農業に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態を示す処理システムをブロック視した説明図である。
図2】本発明の主たる圧力容器と、その内部に関わるもので、圧力容器容の中心に設けられた回転軸と、その回転軸に取り付けられた棒と、その棒の先端に取り付けられた攪拌羽根についた構造を示した図である。
図3】本発明の攪拌羽根の回転と処理物の移動方向について示した図である。
図4】本発明の二等辺三角形の1辺を湾曲の形状にした三角形攪拌羽根の構造図である。
図5】本発明のひし形の1辺を湾曲の形状にしたひし形攪拌羽根の構造図である。
【発明を実施させるための形態】
【0019】
具体的な方法を述べる。
圧力容器1の内部3に高温高圧の水蒸気を供給する高圧ボイラー15と、間接加熱可能な圧力容器ジャケット2を有し、圧力容器内をエジェクター16で減圧を可能にし、亜臨界水処理と減圧乾燥機処理の両方の機能を持った装置に有機性廃棄物を投入する。
【0020】
圧力容器内部3に高圧ボイラーで高温高圧蒸気を投入し、圧力1.5MPa〜2MPa(200〜212℃)に達したら15分〜30分間この温度を維持しながら攪拌羽根202,203を1分間で10回程度の回転速度で回転させ攪拌する。
【0021】
高温高圧の亜臨界水により、有機性廃棄物の各種病原菌・雑草の種・残留農薬が完全になくなり、亜臨界水の加水分解により、蛋白質等の天然高分子の結合が破壊されて、小分子化され生物に消化、吸収の良い物質(アミノ酸・ブドウ糖・脂肪酸)に変わる。又空気を入れないので、ミネラル・ビタミンは残る。
【0022】
この亜臨界水処理の加水分解反応で有機物の52%前後が液化する為に、圧力容器内部の液体部分は、(有機物の液化部分+有機物が持つ水分+投入高圧蒸気)となる。亜臨界水処理終了後、液肥が必要な場合に、圧力容器側面に備え付けた高さの異なる複数個の排出バルブ7を、高いバルブから順番に開放し、圧力容器に残す液体部分の容量を任意に決めることが可能となる。
【0023】
固形分以外の液体部分のみを効率的に排出が可能になる。排出された液肥はそのまま液肥として使用する場合と、液肥を除いて減圧乾燥で水分調整を行い、土着菌を混合し排出された堆肥の熟成槽での水分調整材として使用することができるため無駄がない。
【0024】
その時の有機性廃棄物組成の一例は次のようになる。
【0025】
この液体は低分子化されている為に即効性のある液肥である。亜臨界水処理反応の液肥は有機酸(酸性を示す有機化合物)を多く含むので、100倍〜500倍に薄めて使用する。
【0026】
液肥の使用方法として次のような方法がある。
葉面散布の場合、300〜500倍希釈で1週間〜10日毎に散布。
種苗用管理上での灌水、300〜500倍希釈
園地に灌水、10アール辺り原液を3〜5リットル(希釈は適当)
播種する前に300〜500倍に希釈した液を浸ける
種・苗・挿木に浸ける。例(種・豆類 約10秒・葉菜類 3時間・花・果菜類 12時間・苗・挿木 1分〜12時間・球根類・種芋 1分〜30分・トマト・きゅうり・ナス・いちご 5秒)
等が好ましい。
【0027】
液肥を利用しない場合には、通常亜臨界水処理の後に、処理物を排出し、広い場所に処理物を広げ自然乾燥して水分調整をする方法があるが、処理時間が長くなり乾燥場所面積が広大になる欠点がある。
【0028】
そこで装置の圧力容器1への高圧蒸気投入バルブを閉鎖し、圧力容器ジャケット2の投入バルブ10を開き、0.47MPaの蒸気を圧力容器と圧力容器ジャケット2に挟まれた空間4に投入し、圧力容器1の内部3をエジェクター20で減圧し、処理機能を変えて減圧乾燥処理の工程に移る。圧力容器内部3を0.02MPa〜0.03MPaに減圧することで処理物の品温が60〜70℃に冷却される。
【0029】
品温が60〜70℃に安定したら、圧力容器内部3を開放し大気圧にする。投入口5から、堆肥を使用する地域から採取した土着菌(その地域に元々棲みついている様々な菌のことを指す)の資材を圧力容器に残った固形物重量の5〜10%を投入する。
【0030】
地域と場所により生育している土着菌の性質は異なる。その地域と場所で昔から生育している菌はその地域と場所に一番適している菌で、その土着菌を拡大培養すると、市販の微生物資材には無いその地域と場所に適した微生物機能強化堆肥となる。
【0031】
減圧乾燥機能で投入された土着菌を含む資材を攪拌し、圧力容器内部を60〜70℃の状態で、減圧乾燥を進める。減圧乾燥で含水率60%前後になると、菌が培養しやすくなり攪拌物は好気性高温菌に淘汰され、拡大培養が進む。
【0032】
この処理で得られた固形物を圧力容器から、含水率50〜60%で排出した後、熟成槽に5日前後置くことで含水30〜35%になり地域に適した土着菌拡大培養した熟成堆肥ができる。
【0033】
この方式を行うことにより、自然の状態では1次発酵から4次発酵まで数ヶ月〜数年かかる発酵化を大幅に短縮することができる。
【0034】
通常の堆肥化の過程は
1次発酵 糖類、タンパク質の分解 細菌・糸状菌など各種微生物
2次発酵 ヘミセルローズの分解 放線菌など
3次発酵 セルローズの分解 好気性の細菌、放線菌、糸状菌
4次発酵 リグニンの分解 リグニン分解菌・キノコ菌類など
であるが本方式では10〜15分程度で発酵化を行う事が出来る。
【0035】
従来の生こみ堆肥と亜臨界水処理によるアミノ酸成分濃度の比較と生体機能性成分を示した。
【0036】
【0037】
【0038】
土着菌を含む資材を混合し、減圧乾燥60〜70℃の水分を50〜60℃にすると、好気性高温菌は乾物換算で(2×10の8乗個/g)に増殖していた。
【0039】
これらの処理でいかに早くコストを低く抑えることが重要である。
【0040】
図2について説明する。圧力容器1の内部に設けられた攪拌構造を示したものである。圧力容器の中心には回転軸201が取り付けられており、駆動用モーター25とプーリー26及び32とベルト205でよって回転する構造を具備している。
【0041】
プーリー26と32の直径比によって回転軸の回転比率が決まるが、最終的には処理物投入時の攪拌羽根が十分に攪拌回転する必要がある。回転軸201の回転速度は1分間で約10回程度が良い。
【0042】
回転軸201には攪拌羽根202、203が取り付けられた攪拌棒204がある。攪拌棒は90度間隔でかつ攪拌羽が回転した軌跡がお互いの攪拌羽根の軌跡と一部重なるようにしてある。
【0043】
攪拌棒が回転軸の反対側に飛び出しているのは攪拌羽根にかかる負荷トルクのバランスを取るために設けているものである。
【0044】
処理物の排出口6に最も遠い位置と隣り合わせた位置には同じ形状の三角形拌羽根202が取り付けられている。排出口6に最も近い攪拌棒にはひし形攪拌羽根203が隣り合わせで取り付けられている。
【0045】
それらの同じ形状の攪拌羽根に隣接する攪拌棒には異なる攪拌羽根が取り付けられている。つまり排出口に最も遠い位置から三角形攪拌羽根202、同じ202、ひし形攪拌羽根203、三角形攪拌羽根202,ひし形攪拌羽根203となる。
【0046】
排出口に最も近い攪拌棒にはひし形攪拌羽根203、ひし形攪拌羽根203、三角形攪拌羽根202、ひし形攪拌羽根203と中央部に続く。
【0047】
排出口に最も遠い攪拌棒に三角形攪拌羽根202と最も近い攪拌棒にはひし形攪拌羽根203が付き、中央部はそれぞれ三角形攪拌羽根202とひし形攪拌羽根203、が隣り合わせで設けられている。
【0048】
図3に各攪拌羽根の回転による処理物の移動方向を示した。分かりやすくするため実際は90度異なる位置に取り付けられた攪拌羽根を同一軸に並べ替えたものである。
【0049】
各攪拌羽根は互いに重なり合って表示されているが、これは攪拌時に攪拌漏れが生じないように意識的に重複させている。
【0050】
301及び302は高圧容器1の側面である。6は排出口を示す。回転軸を排出口6側に向かって時計周りをA回転、反時計回りをB回転とする。
【0051】
高圧容器1の側面301および302は高圧と減圧に耐えられるように平面でなく曲面を持った構造になっている。そのため膨らみをもった側面301と302の近辺は攪拌されにくい構造となる。
【0052】
回転軸をB回転させると排出口6に最も遠い(左端)の三角形攪拌羽根202が回転することで処理物は303に示した方向に移動する。その結果301周辺に滞留している処理物は中央部側に移動することになる。
【0053】
同様に302に最も近いひし形攪拌羽根203がB回転によって処理物は306に示した方向に移動する。その結果302周辺に滞留している処理物は中央部に移動することになる。
【0054】
その結果、従来の攪拌羽根構造で圧力容器側面付近に滞留していた廃棄処理物が無くなり攪拌効率が良くなった。
【0055】
中央部に設けられた三角形攪拌羽根202とひし形攪拌羽根203は互いに相手方向に処理物を移動させ同一回転で攪拌が実現できる。その方向は303と304、306と307に示した。
【0056】
処理物の排出にはA回転を行うと三角形攪拌羽根202とひし形攪拌羽根203の曲面を持たない面はすべて同じ角度になり、処理物は同一方向に移動するので排出口から取り出すことができる。その方向は309、310に示した。
【0057】
このように三角形攪拌羽根とひし形攪拌羽根の一面を曲面にすることで回転軸を毎回反転させることなく処理物を効率よく攪拌処理することができる特徴を有する。
【0058】
図4は三角形攪拌羽根、図5はひし形攪拌羽根の構造である。410,510はそれぞれの正面図、420、520はそれぞれの側面図、400、500はそれぞれの上面図である。
【0059】
202は三角形攪拌羽根を上面から見たものであるが2等辺三角形の1辺を湾曲させたもので攪拌棒204より左部分401は曲率半径r1とし右部分402の曲率半径をr2とするとr2>r1になるように湾曲させる必要がある。
【0060】
その比率が大きくなればなるほど回転によって処理物は304の方向に移動しやすくなるがr2の曲率半径が大きくなるに従って三角形の先端が鋭くなり処理物の攪拌時に破損する恐れがある。
【0061】
そのため三角型攪拌羽根202の回転時における負荷トルクに耐えるように先端部を意図的に丸く加工することがある。また攪拌棒204との間に補強部材を取り付け破損しないような構造とする。
【0062】
これらの加工は本発明の主旨から外れるもので発明そのものに影響しない。
【0063】
便宜上曲率半径r1、r2の組み合わせで説明したが実際の湾曲はB−スプライン曲線を用いて先端から後端にかけて滑らかな湾曲にすることで処理物の流れが滑らかになる。
【0064】
また420において底面421は回転時、圧力容器の内周422をなぞるように移動する。従来の底辺は直線のためその中央部は圧力容器の内周から遠くなり、羽根の中央部と圧力容器内周とに隙間が出てしまう。
【0065】
隙間が出ることで隙間に入り込んだ処理物は攪拌されず攪拌効率が落ちるなどの欠点が出る。
【0066】
本発明の形状を有する攪拌羽根の底辺は421のr3,521のr6に示した。このrは圧力容器半径にわずかに小さいことが理想だが圧力容器の製造精度に依存する。許容範囲より10mm程度小さいrが実用的である。
【0067】
420、520に図示したように高圧容器の内面に合わせたrは複雑な曲線を描いているが近年3D−CAD図面を作成することで容易に指定の曲線の攪拌羽根を製作する事が出来る。
【0068】
図5のひし形攪拌羽根203も同様に曲率半径が異なるが左部分501の曲率r3と右部分502の曲率r4の関係がr4<r5となる。これも同様にB−スプライン曲線を用いてなだらかな湾曲に加工する。
【0069】
この2個の攪拌羽根を組み合わせることで反時計方向に回転させると処理物がより良く攪拌され処理時間短縮に寄与する。
【符号の説明】
【0070】
1 圧力容器
2 圧力容器ジャケット
3 圧力容器内部
4 圧力容器ジャケット内部
5 有機性廃棄物投入口
6 排出口
7 液肥取り出し口
8 真空塔
9 高圧蒸気投入口
10 減圧蒸気投入口
11 圧力容器蒸気排気口
12 真空排出口
13 蒸気ヘッダー
14 減圧弁
15 高圧ボイラー
16 サイクロン装置
17 真空接続口
18 冷却水排出口
19 クーリングタワー
20 エジェクター
21 真空吸い込み口
22 循環水槽
23 循環ポンプ
24 循環ポンプ
25 攪拌用モーター
26 減速機
27 プーリー
28 ベルト
201 回転軸
202 三角形攪拌羽根
203 ひし形攪拌羽根
204 攪拌棒
300 攪拌羽根の回転と移動
301 圧力容器の左側面
302 圧力容器の右側面
303 〜 310 移動方向
400 三角形攪拌羽根の上面図
401 三角形攪拌羽根の左側曲面
402 三角形攪拌羽根の右側曲面
410 三角形攪拌羽根の正面図
411 三角形攪拌羽根の底辺
420 三角形攪拌羽根の側面図
500 ひし形攪拌羽根の上面図
501 ひし形攪拌羽根の左側曲面
502 ひし形攪拌羽根の右側曲面
510 ひし形攪拌羽根の正面図
511 ひし形攪拌羽根の底辺
520 ひし形攪拌羽根の側面図
r1 三角形攪拌羽根の左側曲面半径
r2 三角形攪拌羽根の右側曲面半径
r3 三角形攪拌羽根の底辺半径
r4 ひし形攪拌羽根の左側曲面半径
r5 ひし形攪拌羽根の右側曲面半径
r6 ひし形攪拌羽根の底辺半径
図1
図2
図3
図4
図5