(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-160108(P2021-160108A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】バイオマス由来の樹脂層を有する積層体、およびそれを用いた液体用紙容器および包装製品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20210913BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20210913BHJP
B32B 9/06 20060101ALI20210913BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20210913BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20210913BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B9/02
B32B9/06
B32B27/00 B
B65D65/40 DBRH
C08L23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-61667(P2020-61667)
(22)【出願日】2020年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 絵里
(72)【発明者】
【氏名】浜村 政博
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AB01
3E086AD02
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA08
4F100AB10
4F100AB10C
4F100AB33
4F100AB33C
4F100AH02
4F100AH02B
4F100AK04
4F100AK04B
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4F100AR00
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4F100DG10
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4F100JD02C
4J002BB03W
4J002BB03X
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】 バイオマス由来の樹脂層を有する積層体の裏面側からのバイオマス原料の臭気の発散を阻止できるようにしたバイオマス由来の樹脂層を有する積層体、およびそれを備える液体用紙容器および包装製品を得る。
【解決手段】 紙基材層2の裏面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層3と、臭気バリア層4と、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5とを、この順で積層し、バイオマスポリエチレン樹脂層3から出る臭気を臭気バリア層4で遮断し、積層体1の裏面から発散されるのを防止することができるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材層の裏面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層と、臭気バリア層と、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層とが、この順で積層されていることを特徴とするバイオマス由来の樹脂層を有する積層体。
【請求項2】
前記紙基材層の表面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層が積層されていることを特徴とするバイオマス由来の樹脂層を有する積層体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層体を用いてなることを特徴とする液体用紙容器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の積層体を用いてなることを特徴とする包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来の樹脂層を有する積層体、およびそれを用いた液体用紙容器および包装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策や循環型社会の構築といった観点から、材料分野において化石燃料の代替品としてバイオマスが広く利用されている。
その利用の1つとして、バイオマス由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂が、例えば、紙を基材とする液体用紙容器や包装製品などに用いる積層体に、化石燃料由来のポリエチレンに代わるものとして利用されている。
【0003】
従来、バイオマスポリエチレン樹脂が利用された積層体として、少なくとも、第1のポリオレフィン樹脂層と、紙基材層と、第2のポリオレフィン樹脂層とを備える積層体であって、前記の第1および第2のポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンとを含むものとした積層体が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−1609号公報
【特許文献2】特開2018−1610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、バイオマス由来のポリエチレンは、その原料に独特の臭気があり、しかも低分子量成分が多く、その低分子量成分は表面にブリードアウトし易い。そのため、バイオマス由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンとを含む第1および第2のポリオレフィン樹脂層から、バイオマス原料の臭気が発散されることになる。このような第1および第2のポリオレフィン樹脂層を備えた積層体で、液体用紙容器や包装製品を成形した場合、その臭気が内容物に移り、例えば内容物が飲料水や食品である場合、その風味や味を損ねてしまうおそれがあるといった問題がある。
【0006】
本発明の目的は、少なくとも、バイオマス由来の樹脂層を有する積層体の裏面側からのバイオマス原料の臭気の発散を阻止できるようにしたバイオマス由来の樹脂層を有する積層体、およびそれを備える液体用紙容器および包装製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、紙基材層の裏面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層と、臭気バリア層と、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層とが、この順で積層されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、紙基材層の裏面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層と、臭気バリア層と、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層とが、この順で積層されているので、バイオマスポリエチレン樹脂層から出る臭気を臭気バリア層で遮断し、積層体の裏面から発散されるのを防止することができ、この積層体で裏面側を内面とする液体用紙容器や包装製品を成形した場合、バイオマスポリエチレン樹脂層から出る臭気が内容物に移ることを防止できるので、例えば内容物が飲料水や食品である場合、その風味や味を損ねてしまうおそれがない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記紙基材層の表面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層が積層されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の、前記紙基材層の表面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層が積層されているので、化石燃料由来のポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層が積層されている場合に比べ、化石燃料由来のポリエチレンの使用量の低減が図れ、地球温暖化対策や循環型社会の構築に一層寄与するものとなる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、液体用紙容器であって、請求項1または2に記載の積層体を用いてなることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、液体用紙容器が請求項1または2に記載の積層体を用いて成形されるので、バイオマスポリエチレン樹脂層から出る臭気が内容物に移ることを防止できる液体用紙容器を得ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、包装製品であって、請求項1または2に記載の積層体を用いてなることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、包装製品が請求項1または2に記載の積層体を用いて成形されるので、バイオマスポリエチレン樹脂層から出る臭気が内容物に移ることを防止できる包装製品を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るバイオマス由来の樹脂層を有する積層体によれば、バイオマスポリエチレン樹脂層から出る臭気を臭気バリア層で積層体の裏面へ発散されるのを遮断することができ、この積層体を用いて、裏面側を内面とする液体用紙容器や包装製品を成形することにより、バイオマスポリエチレン樹脂層から出る臭気が内容物に移ることを防止できる液体用紙容器や包装製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るバイオマス由来の樹脂層を有する積層体の積層構造の第1例を示す説明図である。
【
図2】本発明に係るバイオマス由来の樹脂層を有する積層体の積層構造の第2例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る積層体およびこの積層体を用いた液体用紙容器および包装製品の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明に係るバイオマス由来の樹脂層を有する積層体の実施の形態の一例を説明する。
図1は本発明に係るバイオマス由来の樹脂層を有する積層体の積層構造の第1例を示す説明図である。
【0019】
本例のバイオマス由来の樹脂層を有する積層体1(以下、単に積層体という。)は、紙基材層2の裏面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層3と、臭気バリア層4と、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5とが、この順で積層されている。
【0020】
紙基材層2にあって、紙基材は特に限定されるものではなく、液体用紙容器や包装製品に使用される公知の紙基材が用いられる。
また、本例では、紙基材層2の裏面側が液体用紙容器や包装製品の内面側となっている。
【0021】
紙基材層2の裏面に積層されているバイオマスポリエチレン樹脂層3は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んでいる。
【0022】
バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体からなる。
バイオマス由来のエチレンの製造にあっては、特に限定されるものではなく、公知の方法で製造される。バイオマス由来のエチレンの製造では、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを原料として用い製造することが好ましい。植物原料としては、例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビートなどが挙げられるが、これらに限られない。また、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で行うことができる。
【0023】
また、化石燃料由来のポリエチレンは、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンを含むモノマーの重合体からなる。
化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンの製造にあっては、特に限定されるものではなく、公知の方法で製造され、また、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンを含むモノマーを重合する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法で行うことができる。
【0024】
また、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層3の製造方法にあっても、特に限定されるものではなく、公知の方法で行うことができる。
【0025】
臭気バリア層4は、アルミ箔、金属蒸着フィルム、金属以外のセラミック蒸着フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン樹脂などが素材として使用される。
【0026】
ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5は、本例では、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を主成分としている。
【0027】
このような積層構造を有する積層体1の製造の一例を説明する。
先ず、紙基材層2の裏面にバイオマスポリエチレン樹脂層3をラミネートして積層させる。
【0028】
次に、バイオマスポリエチレン樹脂層3の上に、臭気バリア層4をラミネートして積層させる。次に、臭気バリア層4の上に、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5をラミネートして積層させる。
【0029】
臭気バリア層4の上へのポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5の積層にあって、臭気バリア層4がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン樹脂などの樹脂で形成される場合は、臭気バリア層4とポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5の素材同士を共押出しによりバイオマスポリエチレン樹脂層3の上にラミネートして積層してもよい。
【0030】
また、臭気バリア層4の素材がアルミ箔や、金属蒸着フィルム、金属以外のセラミック蒸着フィルムの場合は、図示しないが、臭気バリア層4とポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5との間に接着樹脂層を積層する。接着樹脂層を形成する素材としてエチレン・メタクリル酸共重合樹脂(EMAA)が好適である。
【0031】
以上のように構成された本例の積層体1によれば、紙基材層2の裏面に、バイオマスポリエチレン樹脂層3と、臭気バリア層4と、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5とが、この順で積層されているので、バイオマスポリエチレン樹脂層3から出る臭気を臭気バリア層4で遮断し、積層体1の裏面から発散されるのを防止することができ、この積層体1で裏面側を内面とする液体用紙容器や包装製品を成形した場合、バイオマスポリエチレン樹脂層3から出る臭気が内容物に移ることを防止できる。
【0032】
図2は本発明に係るバイオマス由来の樹脂層を有する積層体の積層構造の第2例を示す説明図である。
本例の積層体1は、紙基材層2の表面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層6が積層されている。それ以外の構成は第1例と同様であり、第1例の説明を援用する。
【0033】
本例の積層体1によれば、紙基材層2の表面に、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとを含んだバイオマスポリエチレン樹脂層6が積層されているので、化石燃料由来のポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層が積層されている場合に比べ、化石燃料由来のポリエチレンの使用量の低減が図れ、地球温暖化対策や循環型社会の構築に一層寄与するものとなる。
その他の効果は第1例と同様であり、第1例の説明を援用する。
【0034】
なお、本発明に係る積層体1は、上記した第1例、第2例の積層構造に限られるものではなく、紙基材層2の裏面に、バイオマスポリエチレン樹脂層3と、臭気バリア層4と、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層5とが、この順を変えないで積層されている限り、これらの層の前後や間に他の層が積層されていてもよい。
【0035】
次に、前記の積層体1を用いた液体用紙容器および包装製品の実施の形態の一例を詳細に説明する。
本発明に係る液体用紙容器および包装製品は、前記の積層体1を用いて成形されるものであって、公知の成形工程に従って成形される。成形される液体用紙容器および包装製品の形状にあっては特に限定されるものではない。
【0036】
液体用紙容器および包装製品は、前記の積層体1を用いて成形されるので、バイオマスポリエチレン樹脂層3から出る臭気が内容物に移ることを防止できる液体用紙容器および包装製品を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 積層体
2 紙基材層
3 バイオマスポリエチレン樹脂層
4 臭気バリア層
5 ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂層
6 バイオマスポリエチレン樹脂層