被塗物上に、少なくともエポキシ樹脂(a1)および顔料(a2)の反応物を含有するプライマー塗膜(A)を有し、該塗膜(A)の上方に、少なくともアクリル樹脂(b1)、ブロックポリイソシアネート化合物(b2)および顔料(b3)の反応物を含有する上塗塗膜(B)を有する積層塗装物であって、該プライマー塗膜(A)中の顔料(a2)の含有率(X)と該上塗塗膜(B)中の顔料(b3)の含有率(Y)の差|X−Y|が30以下であり、該顔料(a2)が体質顔料を含み、かつ塗膜形成成分に占める体質顔料の含有量が25質量%以下である積層塗装物、によって達成された。
被塗物上に、少なくともエポキシ樹脂(a1)および顔料(a2)の反応物を含有するプライマー塗膜(A)を有し、該塗膜(A)の上方に、少なくともアクリル樹脂(b1)、ブロックポリイソシアネート化合物(b2)および顔料(b3)の反応物を含有する上塗塗膜(B)を有する積層塗装物であって、該プライマー塗膜(A)中の顔料(a2)の含有率(X)と該上塗塗膜(B)中の顔料(b3)の含有率(Y)の差|X−Y|が30以下であり、該顔料(a2)が体質顔料を含み、かつ塗膜形成成分に占める体質顔料の含有量が25質量%以下である積層塗装物。
被塗物上に、少なくともエポキシ樹脂(a1)および顔料(a2)の反応物を含有するプライマー塗膜(A)を有し、該塗膜(A)の上方に、少なくともアクリル樹脂(b1)、ブロックポリイソシアネート化合物(b2)および顔料(b3)の反応物を含有する上塗塗膜(B)を有する積層塗装物の製造方法であって、該プライマー塗膜(A)中の顔料(a2)の含有率(X)と該上塗塗膜(B)中の顔料(b3)の含有率(Y)の差|X−Y|が30以下であり、該顔料(a2)が体質顔料を含み、かつ塗膜形成成分に占める体質顔料の含有量が25質量%以下であり、該積層塗装物がウエットオンウエット塗装方法で形成される積層塗装物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、この記載に限定されるものではない。
【0014】
<塗装物>
本発明の積層塗装物は、被塗物上に、少なくともエポキシ樹脂(a1)および顔料(a2)の反応物を含有するプライマー塗膜(A)を有し、該塗膜(A)の上方に、少なくともアクリル樹脂(b1)、ブロックポリイソシアネート化合物(b2)および顔料(b3)の反応物を含有する上塗塗膜(B)を有する積層塗装物であって、該プライマー塗膜(A)中の顔料(a2)の含有率(X)と該上塗塗膜(B)中の顔料(b3)の含有率(Y)の差|X−Y|が30以下であり、該顔料(a2)が体質顔料を含み、かつ塗膜形成成分に占める体質顔料の含有量が25質量%以下であることを特徴とする。
【0015】
<プライマー塗膜(A)>
本発明のプライマー塗膜(A)は、少なくともエポキシ樹脂(a1)と顔料(a2)の反応物を含有することを特徴とする。プライマー塗膜(A)(以下塗膜(A)ということもある)は、少なくともエポキシ樹脂(a1)と顔料(a2)を含有するプライマー塗料組成物を塗装、硬化反応(以下反応ということもある)させることによって形成することができる。
【0016】
プライマー塗膜(A)の膜厚は、適宜定めることができるが、好ましくは5〜150μmであり、さらに好ましくは10〜70μmである。
【0017】
≪エポキシ樹脂(a1)≫
本発明に使用されるエポキシ樹脂(a1)(以下単にエポキシ樹脂ともいう)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型樹脂、複素環式エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂などがあげられる。これらは単独でまたは併用して使用することができる。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂は、変性エポキシ樹脂(a1−1)(以下単に変性エポキシ樹脂ともいう)であることが好ましい。変性したエポキシ樹脂としては、ウレタン変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂などが挙げられるが、中でもアミン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂およびアクリル変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の変性エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0019】
本発明の変性エポキシ樹脂は、市販品として入手することが可能である。例えばEPICLONシリーズ(H−304−40、H−403−45,H−408−40、H−601−55、9052-40MT、H−360、EXA−192、EXA−123、H−353、7070−40K、7070−50M、P−439、H−301−35PX、H−303−45M、H−304−40、EXA−8403、EXA−8415、EXA−8528、EXA−8486)(以上、DIC(株)製変性エポキシ樹脂)、アラキードシリーズ(9201N、9203N、9205、9208、9212)、モデピクス408、KA−1492、KA−1494D、KA−1439A、KA−1435R、KA−1474B、KA−1433J(以上、荒川化学工業(株)製変性エポキシ樹脂)、エポキーシリーズ(810ST、811、813、814、818、861、863、864、871T、872、877、891、878、879)(以上、三井化学(株)製変性エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0020】
本発明の変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は10000〜100000であることが好ましく、20000〜50000であることが好ましい。また、ガラス転移温度は、耐湿性向上の観点から20〜120℃であり、50〜120℃であることが好ましく、60〜120℃であることがさらに好ましい。
なお、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とし、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。
【0021】
また、本発明の変性エポキシ樹脂は水酸基を有していることが好ましく、水酸基価は、50〜300であり、好ましくは150〜260である。変性エポキシ樹脂は、一種類以上を混合して使用することができる。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂(a1)は、プライマー塗膜(A)の10〜60質量%含有され、好ましくは20〜50質量%である。
【0023】
≪顔料(a2)≫
本発明の顔料(a2)としては、体質顔料(a2−1)、防錆顔料、着色顔料等が挙げられる。顔料としては、公知の市販品を一種類以上併用して使用することができる。
【0024】
体質顔料(a2−1)としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ等が挙げられる。体質顔料の吸油量は10〜40ml/gであり、15〜30ml/gが好ましい。
【0025】
防錆顔料としては、例えば、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/リン酸混合顔料等が挙げられる。
【0026】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、キナクリドンレッド、ナフトールレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、ハンザイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ及びジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0027】
本発明の顔料(a2)の含有率(X)は、プライマー塗膜(A)の40〜85質量%であり、50〜80質量%であることが好ましい。また顔料の各成分として体質顔料(a2−1)は顔料(a2)の0〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、防錆顔料は1〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、着色顔料は30〜80質量%、好ましくは35〜75質量%含有させることができる。
【0028】
ここで、プライマー塗膜(A)に占める顔料(a2)の体質顔料は、25質量%以下であり、好ましくは20質量%以下である。この量とすることで層間剥離改善の効果を大きくすることができる。
【0029】
≪硬化剤≫
本発明では、プライマー塗膜(A)を形成する際に硬化剤を使用してもよい。硬化剤としては、エポキシ樹脂(a1)と反応しうる硬化剤であれば特に限定されるものではない
【0030】
<上塗塗膜(B)>
本発明の上塗塗膜(B)(以下塗膜(B)ということもある)は、少なくともアクリル樹脂(b1)、ブロックポリイソシアネート化合物(b2)および顔料(b3)の反応物を含有することを特徴とする。
【0031】
上塗塗膜(B)は、少なくともアクリル樹脂(b1)、ブロックポリイソシアネート化合物(b2)および顔料(b3)を含有する上塗塗料組成物を塗装、硬化反応(以下反応ということもある)させることによって形成することができる。
【0032】
上塗り塗膜(B)の膜厚は適宜定めることができるが、好ましくは5〜150μmであり、さらに好ましくは10〜60μmである。
【0033】
≪アクリル樹脂(b1)≫
本発明のアクリル樹脂(b1)(以下単にアクリル樹脂ともいう)としては、水酸基含有(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーまたはメタクリル系ポリマー)であり、例えば、水酸基を含有する(メタ)アクリレートモノマー1種以上と、水酸基を含有しない(メタ)アクリレートモノマー1種以上との共重合体が挙げられる。必要に応じて、他の重合性不飽和モノマーを共重合させたものであってもよい。
【0034】
なお、ここで、(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0035】
水酸基を含有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と2価アルコールとのモノエステル化物や、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
水酸基を含有しない(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキルまたはシクロアルキル(メタ)アクリレートや、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
共重合させてもよい他の重合性不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル基含有芳香族化合物や、酢酸ビニル等のビニル基含有化合物、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0038】
アクリル樹脂としては、市販のものを用いてもよい。市販品としては、例えば、DIC株式会社のアクリディック(登録商標)シリーズ、株式会社日本触媒のアクリセット(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
アクリル樹脂は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
≪ブロックポリイソシアネート(b2)≫
本発明で使用するブロックポリイソシアネートとしては、通常のブロック基でブロックしたイソシアネート化合物を使用することができるが、特に活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0040】
本発明の活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)は、ブロックポリイソシアネート化合物のなかでは比較的低温での反応性に優れたブロックポリイソシアネート化合物であり、例えば、80℃以上、好ましくは90℃以上の温度に加熱することにより、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物とアクリル樹脂等ポリオールが反応することで塗膜の架橋が進行する。
【0041】
ポリイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0042】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0043】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0044】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0045】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0046】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0047】
防食性、耐候性の観点から、上記のポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物及びこれらの誘導体であることが好ましい。
【0048】
ブロック剤である活性メチレン化合物は、分子中に活性メチレン基を含有する化合物であり、具体的には例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の化合物を挙げることができる。
【0049】
これらのブロック剤である活性メチレン化合物のうち、低温硬化性と貯蔵安定性等の観点から、マロン酸ジプロピル等が好ましい。
【0050】
活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の数平均分子量は、3,000以下、特に100〜1,500の範囲内であることが好ましい。なお、数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
【0051】
必要に応じて硬化性向上の目的で有機錫化合物等を、硬化触媒として使用することができる。
【0052】
≪顔料(b3)≫
上塗塗膜(B)で使用する顔料(b3)は、プライマー塗膜(A)で使用することができる顔料(a2)と同じ材料を同じ範囲から選択して使用することができる。
本発明の顔料(b3)の含有率(Y)は、上塗塗膜(B)の2〜85質量%であり、5〜70質量%であることが好ましい。また顔料の各成分として着色顔料は顔料(b3)の70〜100質量%、好ましくは85〜100質量%含有させることができる。
【0053】
そしてプライマー塗膜(A)中の顔料(a2)の含有率(X)と該上塗塗膜(B)中の顔料(b3)の含有率(Y)の差|X−Y|が30以下であることが好ましく、さらには20以下であることが好ましい。この範囲とすることで、プライマー塗膜(A)と上塗塗膜(B)の層間剥離を有効に防ぐことが可能となる。
【0054】
<溶剤(D)>
本発明では、プライマー塗料組成物および上塗塗料組成物に溶剤(D)を含有させてもよい。
【0055】
本発明の溶剤(D)としては、例えば、キシレン、エチレングリコールモノ−ノルマルプロピルエーテル、トルエン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。これらの溶剤としては、公知の市販品を使用できる。
【0056】
本発明のプライマー塗膜(A)および上塗塗膜(B)を形成するにおいて、溶剤(D)は塗料組成物全体の70質量%以下であり、好ましくは60質量%以下である。
【0057】
<その他の添加剤>
本発明のプライマー塗料組成物および上塗塗料組成物には、塗料組成物として必要な添加剤を適宜使用することができる。例えば、顔料分散剤、消泡剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤等のような、通常、当業界において、公知慣用のものとなっているような、種々の塗料用添加剤類を、慣用量使用することができる。
【0058】
さらに、プライマー塗料組成物および上塗塗料組成物には、本発明の効果に影響のない範囲で性能を改良するという目的で、その他の樹脂類、たとえば、アクリル系共重合体類、繊維素系化合物類、アクリル化アルキド樹脂類、アルキド樹脂類、シリコーン樹脂類、フッ素樹脂類またはエポキシ樹脂類などを、適宜、併用することもできる。
【0059】
<積層塗装物の製造方法>
本発明の積層塗装物の製造方法は、被塗物上に、少なくともエポキシ樹脂(a1)および顔料(a2)の反応物を含有するプライマー塗膜(A)を有し、該塗膜(A)の上方に、少なくともアクリル樹脂(b1)、ブロックポリイソシアネート化合物(b2)および顔料(b3)の反応物を含有する上塗塗膜(B)を有する積層塗装物の製造方法であって、該プライマー塗膜(A)中の顔料(a2)の含有率(X)と該上塗塗膜(B)中の顔料(b3)の含有率(Y)の差|X−Y|が30以下であり、該顔料(a2)が体質顔料を含み、かつ塗膜形成成分に占める体質顔料の含有量が25質量%以下であり、該積層塗装物がウエットオンウエット塗装方法で形成されることを特徴とする。
【0060】
つまり本発明においては、プライマー塗料組成物を被塗布物に塗装して、その塗装物が未乾燥または未硬化の状態で上塗塗料組成物を塗装し、積層塗膜を形成する。そして積層塗膜とした後、乾燥および硬化反応を完結させ、最終目的物である積層塗装物を形成するという工程を有している。
【0061】
本発明のプライマー塗料組成物および上塗塗料組成物を塗装してプライマー塗膜(A)および上塗塗膜(B)を製造するにあたっては、通常の塗装方法を適用することができる。
【0062】
例えば、例えば、ディッピング法、静電塗装法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等が挙げられる。これらの中でも、膜厚の制御が容易であるとの観点から、スプレーコート法及びロールコート法が好ましい。
【0063】
以上のようにして形成された積層塗膜(プライマー塗膜(A)および上塗塗膜(B))は、積層塗膜形成時にはいまだ反応は完全には終了しておらず、積層塗膜を形成したのち、塗膜(A)と塗膜(B)とを積層塗膜として同時に最終的に硬化反応させる焼付け(加熱乾燥)を行うことによって乾燥、硬化反応を終結させる。焼付条件については、80〜180℃で5〜90分加熱乾燥することが好ましい。
【0064】
<用途>
本発明の積層塗装物は、一般の金属基材に防食性(防錆性)を付与するために用いることもできる。金属基材としては、特に限定されるものではないが、その形状は、例えば板状、シート状、箔状等である。また、該基材を構成する金属としては、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられ、中でも、鉄鋼が好ましい。
【0065】
更に、上記金属基材としては、各種表面処理、例えば酸化処理が施されてもよい。一例として、アルマイト処理、リン酸塩処理、クロメート処理、ノンクロメート処理等の方法でアルミニウムに酸化処理を施した基材を用いることができる。
【0066】
なお、金属基材には、金属薄膜を表面に備える各種プラスチック基材(その形状は、例えば3次元の構造を持つ筐体及びフィルム等がある)も含まれる。金属の成膜には、蒸着、スパッタ、メッキ法等が利用できる。金属薄膜としては、アルミニウム、錫、亜鉛、金、銀、白金、ニッケル等の金属の薄膜が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下に示す実施例により、本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の記載について「部」及び「%」は質量基準に基づくものである。
【0068】
<1.プライマー塗料組成物1の調製>
容器に、変性エポキシ樹脂溶液1を50質量部、酸化チタンを20質量部、トリポリリン酸二水素アルミニウム5質量部、硫酸バリウム1を2質量部、炭酸カルシウム1を3質量部、沈降防止剤2質量部、消泡剤0.5質量部、表面調整剤0.5質量部、キシレン8.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMME)8.5質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、プライマー塗料組成物1を調製した。
【0069】
<2.プライマー塗料組成物2〜9の調製>
プライマー塗料組成物1の原料配合を、表1の配合に変更する以外は、実施例1と同様の製造方法により、プライマー塗料組成物2〜9を調製した。
【0070】
表1に記載の原料は次の通りである。
1)変性エポキシ樹脂溶液1(商品名:アラキード9201N、荒川化学工業社製、不揮発分40質量%、Tg94℃、重量平均分子量50000)
2)変性エポキシ樹脂溶液2(商品名:アラキード9203N、荒川化学工業社製、不揮発分40質量%、Tg84℃、重量平均分子量30000)
3)変性エポキシ樹脂溶液3(商品名:EPICLON H−303−45M、DIC社製、不揮発分45質量%、Tg90℃)
4)酸化チタン(商品名:TITONE R−5N、堺化学工業社製)
5)トリポリリン酸二水素アルミニウム(商品名:K−White G105、テイカ社製、表面を亜鉛化合物で処理したトリポリリン酸2水素アルミニウム)
6)硫酸バリウム1(商品名:沈降性硫酸バリウム100、堺化学工業社製、平均粒子径0.5μm)
7)硫酸バリウム2(商品名:LAKABAR SF、LAKAVISUTH(ラカヴィッシュ)社製、平均粒子径10.4μm)
8)硫酸バリウム3(商品名:バリファインBF−20、堺化学工業社製、平均粒子径0.03μm)
9)炭酸カルシウム1(商品名:重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製、平均粒子径3μm)
10)炭酸カルシウム2(商品名:ネオライトSA−200、竹原化学工業社製、平均粒子径0.08μm)
11)沈殿防止剤(商品名:ディスパロン4200−20、楠本化成社製、酸化ポリオレフィン沈殿防止剤、不揮発分20質量%)
12)消泡剤(商品名:フローレンAC300、共栄社化学社製、アクリル系消泡剤、不揮発分77質量%)
13)表面調整剤(商品名:KF−69、信越シリコーン社製、シリコーンオイル系表面調整剤、不揮発分1質量%)
【0071】
【表1】
【0072】
<3.上塗塗料組成物1の調製>
容器に、アクリル樹脂溶液2を50質量部、ブロックイソシアネート溶液1を15質量部、酸化チタン25質量部、無機黄色顔料5質量部、沈降防止剤1質量部、消泡剤0.5質量部、表面調整剤0.5質量部、光安定化剤1質量部、脱水剤1質量部、キシレン1質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、上塗塗料組成物1を調製した。
【0073】
<4.上塗塗料組成物2〜5の調製>
上塗塗料組成物1の原料配合を、表2の配合に変更する以外は、上塗塗料組成物1と同様の製造方法により、上塗塗料組成物2〜5を調製した。
【0074】
表2に記載の原料は次の通りである。
14)アクリル樹脂溶液1(商品名:アクリディック44−127、DIC社製、不揮発分50質量%、Tg35℃、水酸基価(固形分)70)。
15)アクリル樹脂溶液2・・・下記製造例1に記載。
16)ブロックイソシアネート溶液1(商品名:デュラネートMFK−60X、旭化成社ケミカルズ製、不揮発分60質量%、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のブロックポリイソシアネート)
17)ブロックイソシアネート溶液2(商品名:デスモジュールBL3575/1、コベストロ社製、不揮発分75質量%、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のブロックポリイソシアネート)
18)ブロックイソシアネート溶液3(商品名:デスモジュールBL3475、コベストロ社製、不揮発分75質量%、ヘキサメチレンジイソシアネート/イソホロンジイソシアネート由来のブロックポリイソシアネート)
19)無機黄色顔料(商品名:Bayferrox 4905、Lanxess社製、酸化鉄系)
20)光安定化剤(商品名:TINUVIN292、BASF社製)
21)脱水剤(製品名:MOA、日宝化学社製、オルソ酢酸メチル)
【0075】
[製造例1 アクリル樹脂溶液2の調製]
スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)28質量部、トルエン質量85部、スチレン41.6質量部、n−ブチルアクリレート6.9質量部、イソブチルメタクリレート19質量部、プラクセル(FM−3)15質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート17質量部、アクリル酸0.5質量部、ジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイド8質量部を窒素ガス下で110℃において反応させて、固形分45質量45%のアクリル樹脂溶液を得た。
【0076】
得られたアクリル樹脂は、酸価3.9mgKOH/g、水酸基価94.9mgKOH/g、重量平均分子量11,000であった。なお、プラクセル(FM−3)は、ダイセル化学工業社製の製品であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン変性ビニルモノマーである。
【0077】
【表2】
【0078】
<5.複層塗膜形成塗板の作成>
(実施例1)
下記の工程1〜工程3によって、実施例1の複層塗膜形成塗板(本発明の積層塗装物に該当する)を作製した。
工程1:冷間圧延鋼板(大きさ0.8×70×150mm、パルボンド#3020)にプライマー塗料組成物3を用い、乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装にて垂直塗装、25℃で3分間セッティングしプライマー塗膜を形成した。
工程2:次いでプライマー塗膜上に、上塗塗料組成物1を用い、乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装にてウエットオンウエットで垂直塗装をして、上塗塗膜を形成した。
工程3:工程1〜工程2によって得られた積層塗膜を、25℃で10分間セッティングした後、130℃で25分間加熱乾燥(焼き付け)させて実施例1の複層塗膜形成塗板(積層塗装物)を得た。
(実施例1〜8、比較例1〜7)
工程1のプライマー塗料組成物と工程2の上塗塗料組成物を表3に示す組み合わせとする以外は、実施例1と同様にして、複層塗膜形成塗板を作製した。
【0079】
<6.性能評価>
実施例1〜8及び比較例1〜7の複層塗膜形成塗板について、外観(仕上がり性)、鉛筆硬度、層間付着性、耐湿性、および耐候性を次の方法で評価した。
【0080】
結果を表3、表4に示す。なお評価は、特に断りの無い限り23℃50%RHの雰囲気下で行った。
【0081】
≪外観(仕上がり性)の評価≫
目視により下記の基準で評価した。
○:上塗塗膜の外観が良好である。
×:プライマー塗膜の影響を受け、上塗の外観が低い。
【0082】
≪鉛筆硬度の評価≫
実施例1〜8及び比較例1〜7の複層塗膜形成塗板を、JIS K 5600−5−4:1999に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜が破れなかったもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。F以上であれば、実用上問題ないレベルである。
【0083】
≪層間付着性の評価≫
JIS K 5600−5−6:1999に準じて各複層塗膜に1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥した後に、残ったゴバン目塗膜の数を評価した。剥離個所が被塗物とベース塗膜の層間であるものは、基材付着性において残存しなかったとして評価した。剥離個所が複層塗膜の層間であるものは、基材付着性において残存したが層間付着性において残存しなかったとして評価した。
○:残存個数/全体個数=100個/100個。
△:残存個数/全体個数=90個〜99個/100個。
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個。
【0084】
≪耐湿性の評価≫
JIS K 5600−7−2:1999に準じて試験板の長辺を水平にし、塗面を回転方向に向けて、湿潤箱の中の回転環の内側と外側の2か所からつり具を用いて試験板をつるし、480時間試験した後、外観の状態を評価した。
○:外観に異常なく、付着性が分類1以下
△:一部外観にフクレあり。
×:外観にフクレまたは分類2以上の剥離がある。
【0085】
≪耐候性の評価≫
実施例1〜8及び比較例1〜7の複層塗膜形成塗板を、JIS B 7753:2007に規定されたサンシャインカーボンアーク灯式耐光性及び耐候性試験において、照射時間が最大1,200時間となるまで試験を行った。試験板の塗膜において、試験前の光沢に対する光沢保持率が80%となる照射時間を測定した。
○:光沢保持率が80%となる照射時間は1000時間以上であった。
×:光沢保持率が80%となる照射時間は1000時間未満であった。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
以上の通り、本発明の範囲では、工程が短縮可能で、外観、積層塗膜の耐湿性に優れた積層塗装物が得られていることが分かる。