【解決手段】芯材2と、芯材を覆う繊維強化樹脂層3とを備えた樹脂複合体1であって、芯材が、第1樹脂発泡体21と第2樹脂発泡体22とを含む複数の樹脂発泡体で構成され、第1樹脂発泡体と第2樹脂発泡体とのそれぞれが複数の樹脂発泡粒子で構成されたビーズ発泡成形体で、第1樹脂発泡体と前記第2樹脂発泡体とが樹脂接着剤によって接着され、接着がされている接着面2aから樹脂接着剤が浸透している浸透領域が備えられており、接着面に直交する平面による断面において接着面から500μm離れた位置で第1樹脂発泡体と第2樹脂発泡体とのそれぞれに接着面と平行する平行線を引いた際に平行線の少なくとも一部が浸透領域を通り、且つ、浸透領域を通る部分の長さが平行線の4%以上である樹脂複合体。
前記接着面を貫通して前記第1樹脂発泡体と前記第2樹脂発泡体とのそれぞれに延び、且つ、少なくとも一端が前記繊維強化樹脂層を貫通して表面に開口した1又は複数の貫通孔を有している請求項1記載の樹脂複合体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の樹脂複合体を示したもので、図にも示されているように本実施形態での樹脂複合体1は、丸みを帯びた長板状である。
即ち、本実施形態の樹脂複合体1は、長さ方向Xにおける寸法に対して幅方向Yにおける寸法が小さく、厚さ方向Zにおける寸法がさらに小さい。
本実施形態の樹脂複合体1は、前記長さ方向Xに沿って延びる仮想中心線CXから当該樹脂複合体1の両側縁の内の一方の側縁1aへと向かうに従って厚さが減少するように構成されている。
また、本実施形態の樹脂複合体1の厚さは、一方の側縁1aとは逆側となる他方の側縁1bに向けても減少している。
【0012】
図2、
図3に示すように本実施形態の前記樹脂複合体1は、コアとなる芯材2と、該芯材2を覆う外殻となる繊維強化樹脂層3とを備えている。
本実施形態における前記樹脂複合体1は、前記芯材2が複数の樹脂発泡体で構成されている。
前記芯材2を構成する複数の前記樹脂発泡体として、本実施形態では、第1樹脂発泡体21と、第2樹脂発泡体22とが備えられている。
即ち、本実施形態における前記芯材2は、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とを含む複数の樹脂発泡体で構成されている。
【0013】
本実施形態の前記芯材2では、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22とが樹脂複合体1の厚さ方向Zに積層されている。
本実施形態における前記樹脂複合体1は、内側に前記第1樹脂発泡体21が配されている第1表面1fと、第1表面1fとは反対面となり、且つ、内側に前記第2樹脂発泡体22が配されている第2表面1hとを備えている。
【0014】
本実施形態の前記芯材2は、厚さ方向Zにおける中央部に前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22との接着面2aを有している。
即ち、本実施形態の前記芯材2は、第1樹脂発泡体21と第2樹脂発泡体22とが接着剤によって接合されている樹脂接合体である。
より詳しくは、本実施における前記第1樹脂発泡体21は前記第2樹脂発泡体22に接着されている接着面21aを有しているとともに前記第2樹脂発泡体22は前記第1樹脂発泡体21に接着されている接着面22aを有しているおり、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、接着面を一致させて前記芯材2を構成している。
【0015】
本実施形態の樹脂複合体1は、幅方向中央部における2箇所において貫通孔1xを有している。
それぞれの前記貫通孔1xは、樹脂複合体1を厚さ方向Zに貫通するように形成されており、前記第1表面1fから前記接着面2aを通って前記第2表面1hに至る長さとなって厚さ方向Zに延在している。
前記貫通孔1xは、一端が繊維強化樹脂層3を貫通して前記第1表面1fにおいて開口しているとともに前記貫通孔1xが延在する方向において前記一端とは逆側となる他端が前記第2表面1hにおいて開口している。
【0016】
前記貫通孔1xは、本実施形態における前記樹脂複合体1を他の部材などへ固定する際にボルトなどを挿通させるべく利用される。
本実施形態の前記樹脂複合体1を雨水に接してしまう屋外で利用することを勘案すると、前記貫通孔1xを通じて水分が接着面2aに到達し易く、接着面での剥離強度が低下するおそれがある。
しかしながら、本実施形態の前記樹脂複合体1は、後段において詳述するように前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着に用いられている樹脂接着剤が前記接着面2aから前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とのそれぞれに浸透していることで剥離強度の低下が抑制されている。
即ち、本実施形態の前記樹脂複合体1は、前記接着面2aを貫通して前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とのそれぞれに延び、且つ、少なくとも一端が前記繊維強化樹脂層3を貫通して表面に開口した1又は複数の貫通孔1xを有していることで剥離強度の低下に対する改善効果がより顕著なものとなっている。
【0017】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着に樹脂接着剤が用いられており、前記芯材2は、厳密に言えば、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22と、これらの間に設けられた接着剤層23とで構成されている。
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、外周縁部に至るまで十分接着されており、前記接着面21a,22aの外周縁がこれらの樹脂発泡体が隣り合う境界線2xとなっている。
即ち、本実施形態では前記樹脂複合体1の一方の側縁1aと他方の側縁1bとに該当する位置において長さ方向にX延びるように前記境界線2xが形成されている。
【0018】
本実施形態において前記芯材2を構成する前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、複数の樹脂発泡粒子20aが熱融着によって一体化されてなるビーズ発泡成形体である。
【0019】
本実施形態においては、前記接着面2aから前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とのそれぞれに前記樹脂接着剤が浸透している浸透領域2yが備えられており、前記接着面2aに直交する平面XPによる断面において前記接着面2aから500μm離れた位置で前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とのそれぞれに前記接着面2aと平行する平行線を引いた際に該平行線の少なくとも一部が前記浸透領域2yを通り、且つ、該浸透領域2yを通る部分の長さが前記平行線の4%以上である。
即ち、本実施形態においては、第1樹脂発泡体21の側に接着面2aから500μm離れた位置に引いた平行線(以下、「第1平行線2p1」ともいう)と、第2樹脂発泡体22の側に接着面2aから500μm離れた位置に引いた平行線(以下、「第2平行線2p2」ともいう)との合計長さに占めるそれぞれの平行線が前記浸透領域2yを通る部分の合計長さの割合が4%以上となっている。
【0020】
言い換えると、本実施形態の樹脂複合体1は、第1平行線2p1の長さを[L10(mm)]とし、該第1平行線2p1が浸透領域2yを通る部分の合計長さを[L11(mm)]とし、第2平行線2p2の長さを[L20(mm)]とし、該第2平行線2p2が浸透領域2yを通る部分の合計長さを[L21(mm)]とした場合、下記式(1)を満たしている。
4 ≦ [(L11+L21)÷(L10+L20)×100] ・・・(1)
【0021】
前記第1平行線2p1が連続して前記浸透領域2yを通る長さと前記第2平行線2p2が連続して前記浸透領域2yを通る長さとは、それぞれ数mm程度である。
したがって、前記割合を求める際には、第1平行線2p1と第2平行線2pとの長さ(L10,L20)をそれぞれ十数mm程度に設定し、その間において連続して前記浸透領域2yを通る区間がそれぞれ複数含まれるようにすることが望ましい。
例えば、一本の第1平行線2p1の中で浸透領域2yを通る箇所が3箇所存在する場合、1箇所目での長さ(L111)、2箇所目での長さ(L112)、及び、3箇所目での長さ(L113)をそれぞれ求め、第1樹脂発泡体21側での前記合計長さ(L11)は、これらを合計(L11=L111+L112+L113)することで求められる。
この点に関しては第2平行線2p2についても同様である。
さらに、前記割合を求める際には、十数mm程度の区間での測定を無作為に選択した複数箇所(例えば、10箇所)において実施し、結果を算術平均することが望ましい。
このことにより前記割合を精度良く求めることができる。
即ち、樹脂発泡体における第1平行線2p1や第2平行線2p2の全長に対して浸透領域2yを通る部分の長さがどのような割合になっているかを上記のような方法で確認することができる。
【0022】
各測定箇所での測定については、例えば、測長機能などの画像解析機能を有するマイクロスコープなどで断面の拡大写真を撮影するとともに該撮影にて得られた画像を解析して求めることができる。
【0023】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21で第1平行線2p1が浸透領域2yを通る割合と、前記第2樹脂発泡体22で第2平行線2p2が浸透領域2yを通る割合との両方が4%以上でなくてもよい。
即ち、前記第1樹脂発泡体21で第1平行線2p1が浸透領域2yを通る部分の合計長さを[L11(mm)]、第1平行線2p1の長さを[L10(mm)]とし、これらの割合(L11÷L10×100(%))を[R1(%)]とした場合、該割合(R1、以下「第1の長さ割合」ともいう)は、必ずしも4%以上でなくてもよい。
また、前記第2樹脂発泡体22で第2平行線2p2が浸透領域2yを通る部分の合計長さを[L21(mm)]、第2平行線2p2の長さを[L20(mm)]とし、これらの割合(L21÷L20×100(%))を[R2(%)]とした場合、該割合(R2、以下「第2の長さ割合」ともいう)も必ずしも4%以上でなくてもよい。
但し、前記割合((L11+L21)÷(L10+L20)×100、以下「総合割合」ともいう)については、前記のように4%以上となっていることが重要である。
【0024】
前記総合割合は、4.5%以上であることがより好ましい。
前記第1の長さ割合(R1)と前記第2の長さ割合(R2)とは、それぞれ2.5%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましい。
本実施形態においては、前記第1の長さ割合(R1)と前記第2の長さ割合(R2)とが両方とも4%以上であることが特に好ましい。
【0025】
本実施形態においては、第1樹脂発泡体21の側に接着面2aから1000μm離れた位置に引いた平行線と、第2樹脂発泡体22の側に接着面2aから1000μm離れた位置に引いた平行線との合計長さに占めるそれぞれの平行線が前記浸透領域2yを通る部分の合計長さの割合が2%以上であることが好ましい。
該割合は、2.5%以上であることがより好ましい。
尚、当該割合は、接着面2aから500μm離れた位置に引かれる前記第1平行線2p1や前記第2平行線2p2の場合と同様にして求めることができる。
【0026】
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着に用いられる樹脂接着剤は、反応硬化型接着剤であることが好ましい。
前記反応硬化型接着剤としては、熱硬化型であっても常温硬化型であってもよい。
但し、芯材2の中心部には、外部より効率良く熱を加えることが難しいため、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着は、常温硬化型接着剤によって実施することが好ましい。
該常温硬化型接着剤としては、例えば、シリコン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
前記常温硬化型接着剤としては、エポキシ系接着剤が好適である。
前記エポキシ系接着剤としては、主剤と硬化剤とを使用直前に混合する2液混合タイプであることが好ましい。
【0027】
前記2液混合タイプのエポキシ系接着剤としては、主剤にビスフェノールA型エポキシ樹脂を含み、硬化剤にポリアミドアミンなどのアミン系硬化剤を含有するものが好ましい。
【0028】
前記2液混合タイプのエポキシ系接着剤は、接着面における単位面積当たりの塗布量が、硬化物の質量基準で100g/m
2以上となるように塗布することが好ましい。
硬化物の質量基準での前記塗布量は、200g/m
2以上であることがより好ましく、300g/m
2以上であることがさらに好ましい。
硬化物の質量基準での前記塗布量は、800g/m
2以下であることが好ましく、600g/m
2以下であることがより好ましく、500g/m
2以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂複合体1は、このようにして接着面2aにおいて第1樹脂発泡体21と第2樹脂発泡体22とのそれぞれに樹脂接着剤が浸透していることで、前記接着面2aにおける優れた剥離強度が長期にわたって発揮され、仮に前記貫通孔1xを通じて水などが内部に進入しても剥離強度が低下し難い。
【0029】
前記第1樹脂発泡体21は、前記接着面21aを構成している前記樹脂発泡粒子20a1や該樹脂発泡粒子20a1に内側から接する前記樹脂発泡粒子20a2などといった表層部の樹脂発泡粒子20aと中心部に位置する前記樹脂発泡粒子20aとを比べても扁平度合いに大きな違いはない。
一方で、これらの表層部の樹脂発泡粒子20a1,20a2の内部の気泡は中心部に位置する前記樹脂発泡粒子20aの内部の気泡に比べて扁平である。
即ち、前記第1樹脂発泡体21は、前記接着面21aを構成している1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、その次の2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とに比べて当該第1樹脂発泡体21の厚さ方向Z中央部の樹脂発泡粒子20aの方が球に近い形状の気泡を内部に有している。
尚、1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とのそれぞれは、前記接着面21aに沿った方向の寸法が前記接着面21aに直交する方向の寸法よりも僅かに長い。
【0030】
前記第2樹脂発泡体22も前記第1樹脂発泡体21と同様に構成されている。
即ち、前記第2樹脂発泡体22は、前記接着面22aを構成している前記樹脂発泡粒子20a1と、該樹脂発泡粒子20a1に内側から接する前記樹脂発泡粒子20a2とが中心部に位置する前記樹脂発泡粒子20aに比べて扁平な気泡を内部に有している。
そして、前記第2樹脂発泡体22は、前記接着面22aを構成している1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、その次の2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とに比べて当該第2樹脂発泡体22の厚さ方向Z中央部の樹脂発泡粒子20aの方が球に近い形状の気泡を内部に有している。
さらに、前記第2樹脂発泡体22では、1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とのそれぞれの前記接着面22aに沿った方向の寸法は、前記接着面22aに直交する方向での寸法よりも僅かに長い。
【0031】
接着面2aに近い位置の樹脂発泡粒子20aにおける内部の気泡が接着面2aに沿った方向に長くなっていることで樹脂接着剤が接着面2aから第1樹脂発泡体21と第2樹脂発泡体22とのそれぞれに浸透する際に樹脂発泡粒子20aの内部に浸透した樹脂接着剤が接着面2a沿った方向に移動し易くなり、樹脂接着剤が特に浸透し易い箇所だけで奥深くにまで浸透されて、それ以外の部分では殆ど浸透されない状況となってしまうことが抑制される。
【0032】
前記樹脂発泡粒子20aの内部における気泡の形状は、走査型電子顕微鏡にて断面を撮影するなどして観察することができる。
内部における気泡の形状が扁平であるということは、その樹脂発泡粒子20aに外力による歪みが生じ難いことを意味する。
即ち、内部の気泡が扁平な樹脂発泡粒子は、応力を吸収し難く、力を伝播させるのに有効に作用すると考えられる。
【0033】
本実施形態の樹脂複合体1や樹脂複合体1を形成する前の芯材2に外力が加わった際には、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22との接着面2aに対して力が作用し易く、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22との界面において応力集中が生じ易い。
本実施形態の芯材2は、この応力集中がしやすい部分が力の伝搬性に優れた樹脂発泡粒子で構成されている。
すなわち、接着面を構成している1層目の前記樹脂発泡粒子20a1やその次の層の前記樹脂発泡粒子20a2の内部で気泡が扁平になっていると、接着面に加わる応力がこれらの樹脂発泡粒子20a1,20a2を伝って芯材2の内部に拡散され易くなり、応力集中が抑制されることになる。
【0034】
前記樹脂発泡粒子20a1の内部における扁平な気泡の大きさは、長手方向の寸法(FL
L)が50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
該長手方向の寸法は、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。
前記気泡の短手方向での寸法(FL
S)に対する長手方向の寸法(FL
L)の比率(FL
L/FL
S、以下「気泡アスペクト比」ともいう)は、2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがとりわけ好ましい。
【0035】
尚、このような気泡を内包した1層目の前記樹脂発泡粒子20a1や2層目の前記樹脂発泡粒子20a2は、扁平であるよりは球形に近いことが好ましく、長手方向と直交する方向(短手方向)での前記気泡の寸法(BL
S)に対する長手方向の寸法(BL
L)の比率(BL
L/BL
S、以下「ビーズアスペクト比」ともいう)が2以下であることが好ましく1.5以下であることがより好ましい。
【0036】
前記樹脂発泡粒子20aの気泡の形状や樹脂発泡粒子そのものの形状は前記接着面21a,22aに直交する平面で前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22を切断したときの断面での形状を走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察して確認することができる。
【0037】
前記気泡の長手方向の寸法(FL
L)とは、
図4に示すように気泡ABの輪郭線ABxの異なる2点間を結ぶ線分の長さが最も長くなる箇所を求め、この線分の長さを長手方向の寸法(FL
L)を意味し、短手方向での寸法(FL
S)とは、該線分の中間点を通って前記線分に直交する垂直二等分線が前記輪郭線ABxと交差する2点間の距離を意味する。
【0038】
1層目の前記樹脂発泡粒子20a1や2層目の前記樹脂発泡粒子20a2の扁平の程度は(ビーズアスペクト比)、輪郭線上の異なる2点間を結ぶ線分の長さが最も長くなる箇所を求め、この線分を樹脂発泡粒子20aの長径20L(BL
L)とし、該長径20Lの長さ方向での中間点を通って前記長径20Lに直交する線分が前記樹脂発泡粒子20aの輪郭線と交わる2点の間を短径20S(BL
S)とし、この長径20Lと短径20Sとの比率(長径20Lの長さ/短径20Sの長さ)によって確認することができる。
【0039】
前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22の1層目の前記樹脂発泡粒子20a1の扁平の程度(ビーズアスペクト比)と2層目の前記樹脂発泡粒子20a2の扁平の程度(ビーズアスペクト比)との比較は、それぞれ芯材2の断面において無作為に選択した複数(例えば、10個)の樹脂発泡粒子20aの測定結果の平均値どうしを比較して求めることができる。
これらの内部の気泡ABの扁平度合い(気泡アスペクト比)についても同様である。
さらに、第1樹脂発泡体中央部や第2樹脂発泡体22の厚み方向Zにおける中央部の樹脂発泡粒子のビーズアスペクト比と1層目の前記樹脂発泡粒子20a1のビーズアスペクト比との比較や、これらの気泡アスペクト比の比較も同様に平均値での比較とすることができる。
気泡ABの寸法や気泡アスペクト比、ビーズアスペクト比に関する前記の好ましい値は、このような平均値においてもそのような値となっていることが好ましい。
【0040】
前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22を、接着面近傍における樹脂発泡粒子の形状が上記のような状態となるように調製するには、一旦作製したビーズ発泡成形体の前記接着面となる面に対して圧力を加えて表層部を圧縮させる方法を採用することができる。
具体的には、前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22を調製するには、熱プレス機などを使ってビーズ発泡成形体に圧力を加えるなどすればよい。
なお、加圧前、又は、加圧中には、必要に応じて加圧する面を加熱するようにしてもよい。
具体的には、ビーズ発泡成形体の接着面となる面に対して輻射加熱を行うなどして、樹脂発泡粒子を扁平にさせたい部位のみを選択的に加熱してから加圧を実施すればよい。
【0041】
そして、その後に、扁平にさせた表層部の樹脂発泡粒子を発泡剤の発泡力などによって膨らませて元通りの丸みを持たせるようにすれば、樹脂発泡粒子自体の形状は丸みを帯びながらも内部の気泡を扁平にさせることができる。
【0042】
上記のように本実施形態の樹脂複合体1は、前記芯材2が、第1樹脂発泡体21と第2樹脂発泡体22とを含む複数の樹脂発泡体で構成され、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とが接着されている接着面2aを有しており、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とそれぞれは、複数の樹脂発泡粒子20aで構成されたビーズ発泡成形体で、中心部に位置する前記樹脂発泡粒子の内部の気泡に比べて前記接着面を構成している前記樹脂発泡粒子の内部の気泡の方が扁平な形状を有している樹脂複合体となっていることが好ましい。
【0043】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、例えば、ポリエチレン樹脂発泡体、ポリプロピレン樹脂発泡体などのポリオレフィン樹脂発泡体;汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)発泡体、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)発泡体などのポリスチレン樹脂発泡体;ポリアミド12発泡体、ポリアミド6発泡体、ポリアミド66発泡体などのポリアミド樹脂発泡体;ポリ乳酸樹脂発泡体、ポリブチレンサクシネート樹脂発泡体、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、ポリブチレンテレフタレート樹脂発泡体などのポリエステル樹脂発泡体;ポリカーボネート樹脂発泡体;アクリル樹脂発泡体などとすることができる。
【0044】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、高い強度を発揮する上において、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、ポリカーボネート樹脂発泡体、又は、アクリル樹脂発泡体のいずれかであることが好ましい。
樹脂接着剤を適度に浸透させ得る点、及び、樹脂発泡粒子を扁平としつつ内部の気泡を丸い状態に保たせるのに有利である点において、前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体であることが特に好ましい。
【0045】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、例えば、50kg/m
3以上700kg/m
3以下の見掛け密度を有する樹脂発泡体とすることができる。
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは見掛け密度が共通していても異なっていてもよい。
【0046】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方」記載の方法で測定することができる。
即ち、見掛け密度は、原則的には次のようにして求めることができる。
【0047】
(見掛け密度測定方法)
100cm
3以上の試験片を材料の元のセル構造をできるだけ変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出することができる。
見掛け密度(kg/m
3)=試験片質量(kg)/試験片体積(m
3)
尚、測定用試験片は、原則的に成形が施された後、72時間以上経過した試料から切り取り、温度23±2℃、湿度50±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものとする。
【0048】
該芯材2の表面を覆う前記繊維強化樹脂層3は、本実施形態においては、2枚のシート状の繊維強化樹脂材によって形成されている。
前記繊維強化樹脂材の一方は前記第1樹脂発泡体21に積層されており、他方は前記第2樹脂発泡体22に積層されている。
即ち、本実施形態の繊維強化樹脂層3は、前記第1樹脂発泡体21に積層された前記繊維強化樹脂材で構成されている第1の部位(以下「第1繊維強化樹脂層31」ともいう)と、前記第2樹脂発泡体22に積層された前記繊維強化樹脂材で構成されている第2の部位(以下「第2繊維強化樹脂層32」ともいう)とを備えている。
【0049】
図5に示すように前記第1繊維強化樹脂層31は、シート状の繊維基材31aと、該繊維基材31aに含浸されて繊維基材31aに担持されている樹脂31bとで構成されている。
前記第2繊維強化樹脂層32も、繊維材で構成された繊維基材32aと、該繊維基材32aに含浸されて繊維基材32aに担持されている樹脂31bとで構成されている。
即ち、本実施形態における繊維強化樹脂層3は、前記第1樹脂発泡体21に積層された第1の繊維基材31a(以下「第1繊維基材31a」ともいう)と前記第2樹脂発泡体22に積層された第2の繊維基材32a(以下「第2繊維基材32a」ともいう)とを含む複数の繊維基材が繊維強化樹脂層3の形成に用いられている。
【0050】
上記のように本実施形態の繊維強化樹脂層3は、一領域の形成に用いられている第1繊維基材31aと前記一領域とは異なる他領域の形成に用いられている第2繊維基材32aとを含む複数の繊維基材を有する。
【0051】
前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとは、本実施形態においては前記芯材2の前記境界線2xを互いに重なり合って覆っている。
即ち、本実施形態においては、前記繊維強化樹脂層3がシート状の繊維基材31a,32aと該繊維基材31a,32aに含浸された樹脂31b,32bとを含み、前記芯材2の表面では、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aが前記境界線2xを越えて前記第2樹脂発泡体22に及び、前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aが前記境界線2xを越えて前記第1樹脂発泡体21に及んでおり、前記境界線2xでは、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aと前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aとが重なりあって前記芯材2を覆っている。
【0052】
即ち、本実施形態の樹脂複合体1は、前記貫通孔1xが開口している箇所以外の全てが前記繊維強化樹脂層3で隙間なく覆われた状態となっており、貫通孔1x以外からの水分の進入が抑制されるように構成されている。
【0053】
前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとが重なりあって部分の幅WD(外側の繊維基材の表面に沿って測定される幅)は、該重なり合いが形成されている全域での平均値(以下「平均ラップ幅」ともいう)が1mm以上であることが好ましい。
前記平均ラップ幅は、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが特に好ましい。
前記幅WDは、通常、最大でも25mm以下とされ、前記平均ラップ幅も、通常、25mm以下とされる。
【0054】
本実施形態においては、この繊維基材の重なり合いは、前記接着剤層23の外周縁に沿って帯状に延在する。
従って、本実施形態においては、前記接着剤層23と、繊維基材の重なり合いとによって形成される補強構造がH鋼のような状態となっており、樹脂複合体1に対して高い補強効果を発揮する。
【0055】
上記のような効果は、
図6に示すように第1繊維基材31aと第2繊維基材32aとの少なくとも一方が境界線2xを越えて芯材2を覆っていれば発揮され得る。
即ち、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aと前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aとの少なくとも一方が前記境界線2xを越えて他方の繊維基材と重なり合って前記芯材2を覆っており、前記芯材2の前記境界線2xに隣接する領域が重なり合った前記繊維基材(31a,32a)で覆われていると、前記接着剤層23とによって形成される補強構造がL字アングルのような状態となって形成されるため、
図5に示す態様と同様の効果が発揮され得る。
この場合に形成させる重なり合いの幅WD’やその平均値(平均ラップ幅)については、
図5に示す態様と同様とすることができる。
【0056】
尚、本実施形態の樹脂複合体1を作製する際には、加圧方向が当該樹脂複合体1の厚さ方向となるようなプレス方法が採用されることになるが、前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとがこのプレス方向に行き違いになっていることでプレス時には前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとが前記平均ラップ幅を増大させる方向に適宜スライドすることができ、芯材2の表面形状に対する良好な追従性を示してシワなどが生じ難くなる。
即ち、本実施形態の樹脂複合体1は、幅方向Yの端部において繊維基材どうしが重なり合っていることで、高い補強効果が発揮させるばかりでなく、外観美麗ともなり得る。
【0057】
前記繊維強化樹脂層3の形成に用いられる繊維基材(31a,32a)は、例えば、平織物、綾織物、繻子織物など織布であっても、不織布であってもよい。
前記繊維基材(31a,32a)は、編布であってもよい。
【0058】
前記繊維基材(31a,32a)を構成する繊維は、特に限定されず、例えば、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、アセテート繊維などの有機繊維や、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維、などの無機繊維を挙げることができる。
【0059】
繊維基材(31a,32a)に含浸される前記樹脂(31b,32b)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
熱硬化性樹脂の場合には、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0060】
前記繊維強化樹脂層3は、繊維をシート状の状態で含有していなくてもよく、短繊維がマトリックス樹脂に分散した状態のものであってもよい。
【0061】
前記繊維強化樹脂層3は、通常、繊維基材が重なっている部分以外での平均厚さが0.05mm以上20mm以下のとなるように形成させることができ、0.1mm以上10mm以下の平均厚さとなるように形成されることが好ましい。
該平均厚さは、樹脂複合体1において無作為に選択した複数箇所(例えば、10箇所)での測定による算術平均値を計算して求めることができる。
【0062】
尚、前記繊維基材(31a,32a)は、第1繊維基材31aと第2繊維基材32aとで厚さや材質などが共通している必要はなく、これらが異なっていてもよい。
また、前記第1繊維基材31aに担持されて前記第1繊維強化樹脂層31の形成材料となっている前記樹脂31bと、前記第2繊維基材32aに担持されて前記第2繊維強化樹脂層32の形成材料となっている前記樹脂32bとは材質などが共通している必要はなく、異なっていてもよい。
従って、前記第1繊維強化樹脂層31と前記第2繊維強化樹脂層32とは平均厚さが異なっていてもよい。
【0063】
前記第1繊維強化樹脂層31と前記第2繊維強化樹脂層32とは、それぞれ繊維基材(31a,32a)が1枚ずつである必要はなく、何れか一方又は両方に複数の繊維基材が厚さ方向に積層された状態で備えられていてもよい。
その場合、第1繊維強化樹脂層31に備えられた繊維基材31aと第2繊維強化樹脂層32に備えられた繊維基材32aとは、前記境界線2xの形成地点において交互に積層されて前記芯材2を覆うことが好ましい。
また、前記第1繊維強化樹脂層31や前記第2繊維強化樹脂層32に複数枚の繊維基材が備えられる場合、全ての繊維基材が前記境界線2xの形成地点において重なり合うようにしなくてもよい。
さらには、本実施形態においては、優れた補強効果を発揮させる上において繊維基材の重なり合いを形成させているが、要すれば、繊維基材を重ね合わせるようにしなくてもよい。
【0064】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とにそれぞれ繊維基材を積層しているが、要すれば、芯材全体を1枚の繊維基材で覆うようにしてもよい。
また、前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22の一方又は両方を複数の領域に分けて一領域を覆う繊維基材を他領域を覆う繊維基材と別体のものとしてもよい。
【0065】
本実施形態の樹脂複合体は、特にその製造方法が限定されるわけではないが、
第1樹脂発泡体と第2樹脂発泡体とを含む複数の樹脂発泡体と、硬化前の熱硬化性樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材とを用意し、
前記第1樹脂発泡体と前記第2樹脂発泡体とを樹脂接着剤で接着して芯材を形成させる接着工程と、
前記芯材に積層されている繊維強化樹脂材を前記芯材に向けて加圧しつつ加熱して、前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記繊維強化樹脂材で前記繊維強化樹脂層を形成させるプレス工程とを実施し、
前記接着工程では反応硬化型の前記樹脂接着剤を使用し、該樹脂接着剤の硬化反応を前記熱硬化性樹脂の硬化よりも後に完了させて作製されることが好ましい。
【0066】
本実施形態の樹脂複合体は、自動車用ピラー、自動車のドアパネルやバンパー、自動車・バイクのエアロパーツ、航空機や船舶のボディ用パーツ、ロボット用パーツ、風車用ブレード、スポーツ用ヘルメットなどの各種の用途において種々の形状で用いられ得る。
尚、本実施形態においては、前記芯材2を2つの樹脂発泡体で構成させる態様を例示しているが、前記芯材2の構成には3以上の樹脂発泡体を用いてもよい。
本実施形態の樹脂複合体は、その他の事項についても上記例示の通りでなくてもよい。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
(比較例1)
(測定試料の作製)
ポリエチレンテレフタレート樹脂製のビーズ発泡成形体から150mm×170mmの大きさの板状試料を2枚切り出した。
板状試料は、表面にビーズ発泡成形体の表面皮膜が残るように切り出した。
2枚の板状試料(第1樹脂発泡体及び第2樹脂発泡体)を重ね合わせて2液混合タイプのエポキシ系接着剤で接着した。
板状試料の接着は、表面皮膜を有する面を接着面として利用し、13gの前記エポキシ系接着剤を前記接着面全体に行き渡るように塗布して実施した。
また、板状試料の接着は、上下に対になった2枚の熱板を有するホットプレスを用い、加熱、加圧条件下で実施した。
ホットプレスによる板状試料の接着では、まず、板状試料を130℃の温度に加熱された熱板の間に挟んで100秒間予熱(予熱工程)した。
該予熱工程では、板状試料に0.5MPaの圧力が加わるようにした。
該予熱工程後は、熱板間の距離を縮めて板状試料にさらに圧力が加わるようにし、予熱工程と同じ温度(130℃)で前記エポキシ系接着剤を熱硬化させ(硬化工程)、2枚の板状試料がエポキシ系接着剤で接着されている樹脂接合体を形成させた。
即ち、2枚の板状試料とエポキシ系接着剤とで「第1樹脂発泡体/接着剤層/第2樹脂発泡体」となる積層構造を備えた樹脂接合体を形成させた。
尚、該硬化工程では、板状試料2枚分の厚さよりも厚さの薄いスペーサーを板状試料の周囲に配置して、一定以上に板状試料が圧縮されないようにして20分間の加熱を実施した。
該硬化工程後は、60℃の温度まで冷却して樹脂接合体を取り出した。
【0069】
(樹脂接着剤の浸透状況の確認)
作製された樹脂接合体から、長さ150mm×幅25mmの大きさの角棒状の測定試料を切り出し、接着面近傍の状況をデジタルマイクロスコープで観察して画像を撮影した。
写真は、角棒状の測定試料の長手方向の側面において撮影し、一方の側面と他方の側面とで各5箇所ずつ、計10箇所で撮影した。
写真は、接着面が水平となるように撮影し、接着面と平行する平行線を、該接着面で接着しているそれぞれの板状試料に描画した。
該平行線は、接着面から離れる方向(上下方向)に500μm間隔で3000μm深さまで板状試料にそれぞれ6本ずつ描画した。
そして、平行線が樹脂接着剤の浸透している領域(浸透領域)を通る部分の長さが平行線全体の何%になっているかを各深さで計測し、且つ、10点の測定値の平均値を算出した。
計測は、写真のピクセル数(画素数)を対象に実施した。
具体的には、平行線が浸透領域を通過している部分において横方向に並んでいるピクセルの数(浸透領域通過ピクセル数)が一方の板状試料(第1樹脂発泡体)と他方の板状試料(第2樹脂発泡体)とでそれぞれ何個あるのかをカウントし、それぞれのピクセル数を接着面からの深さごとに合計して両板状試料の合計値(両発泡体合計)を求め、該合計値が写真横方向全長でのピクセル数に占める割合(浸透領域透過率)を計算するような形で前記計測を実施した。
結果、この比較例1では、500μm深さに描画された平行線が樹脂接着剤の浸透領域を通過する部分の割合は、平均して1.29%であることがわかった。
【0070】
(剥離強度の評価)
前述の角棒状の測定試料(150mm×25mm)を用い、JIS K7086に規定のDCB(Double Cantilever Beam)法により接着面での剥離強度を測定した。
剥離強度は、初期強度と、測定試料を水に100時間浸漬した後とで実施した。
該比較例1で作製された測定試料の剥離強度は、初期値が157.4Nで、100時間浸水後が64.3Nとなっていた。
【0071】
(実施例1)
用いる2液混合タイプのエポキシ系接着剤を低粘度で浸透性に優れたものに変更した以外は比較例1と同様に測定試料を作製し、樹脂接着剤の浸透状況の確認と剥離強度の評価とを実施した。
その結果、この実施例1では、平行線が浸透領域を通過している部分の割合は、500μm深さで4.83%でとなっていることがわかった。
また、この実施例1で作製された測定試料の剥離強度は、初期値が150.3Nで比較例1と同等であったが、100時間浸水後の値が142.7Nとなっていて比較例1に比べて高い数値であることが確認された。
【0072】
(実施例2)
板状試料の表面を40番手の紙やすりで削って表面被膜を除去し、この表面被膜が除去された面を接着面としたこと以外は比較例1と同様に測定試料を作製し、樹脂接着剤の浸透状況の確認と剥離強度の評価とを実施した(比較例1と同じ2液混合タイプのエポキシ系接着剤を使用)。
その結果、この実施例2では、平行線が浸透領域を通過している部分の割合は、500μm深さで32.8%でとなっていることがわかった。
また、この実施例2で作製された測定試料の剥離強度は、初期値が160.9Nで比較例1や実施例1よりも高く、100時間浸水後の値も152.1Nとなっていて実施例1よりもさらに高い数値であることが確認された。
これらの結果を、下記表に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
上記のことからも、本発明によれば、複数の樹脂発泡体で構成された芯材を備えながらも該芯材が界面剥離することを抑制し得る樹脂複合体が得られることがわかる。