【解決手段】熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成されている複数の樹脂発泡粒子10’を成形空間Mvを備えた成形型M内で熱融着させてビーズ発泡成形体100を製造する方法において、樹脂発泡粒子の嵩倍数を「X:倍」とした際に、発泡倍率「Y:倍」が0.25・X(倍)以上0.99・X(倍)以下であり、且つ、前記成形型の開閉方向D1での厚み中心部100mにおける発泡倍率「Ym:倍」と、表層部100sにおける発泡倍率「Ys:倍」との差「Ym−Ys:倍」を前記発泡倍率「Y:倍」で割った値「(Ym−Ys)/Y」が0以上0.16以下として、厚み中心部における発泡倍率と表層部における発泡倍率との差を小さくする。
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成されている複数の樹脂発泡粒子が互いに熱融着されているビーズ発泡成形体を、該ビーズ発泡成形体を成形するための成形空間を備えた成形型を使って製造するビーズ発泡成形体の製造方法であって、
前記成形型は、互いに対向するように配された一対の型材を備え、該一対の型材が接近離間されることで前記成形空間が開閉されるとともに該成形空間の容積を変更できるように構成されており、
該成形型の前記成形空間に前記樹脂組成物で構成されている複数の樹脂発泡粒子を収容する第1工程と、
該第1工程の後に前記成形空間に収容されている前記複数の樹脂発泡粒子を加熱して該樹脂発泡粒子どうしを熱融着させる第2工程と、を実施して前記ビーズ発泡成形体を製造し、
製造する前記ビーズ発泡成形体は、前記第1工程で前記成形空間に収容する前記複数の樹脂発泡粒子の嵩倍数を「X:倍」とした際に、発泡倍率「Y:倍」が0.25・X(倍)以上0.99・X(倍)以下であり、且つ、前記成形型の開閉方向での厚み中心部における発泡倍率「Ym:倍」と、表層部における発泡倍率「Ys:倍」との差「Ym−Ys:倍」を前記発泡倍率「Y:倍」で割った値「(Ym−Ys)/Y」が0以上0.16以下であるビーズ発泡成形体の製造方法。
前記第2工程では、加熱された前記成形型で前記成形空間に収容されている前記複数の樹脂発泡粒子を加熱することにより、該成形空間での外周部に位置する前記樹脂発泡粒子を中心部に位置する前記樹脂発泡粒子よりも高温に加熱する請求項1又は2記載のビーズ発泡成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
以下においては、
図1に示すような板状のビーズ発泡成形体100を製造する場合を主たる例にして本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のビーズ発泡成形体100は、
図1に示すように複数の樹脂発泡粒子10で構成されており、互いに熱融着している樹脂発泡粒子10で構成されている。
本実施形態の樹脂発泡粒子10は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成されている。
【0012】
本実施形態のビーズ発泡成形体100は、
図1に示すように扁平な矩形板状であり、以下において
図1における上下方向を厚み方向D1とも称する。
また、以下においては、
図1における左右方向を幅方向D2などとも称し、
図1における奥行方向を長さ方向D3などとも称する。
本実施形態のビーズ発泡成形体100は、成形型を用いて作製された型成形品で、前記厚み方向D1が成形型の開閉方向に一致している。
本実施形態において用いられる前記成形型は、互いに対向するように配された一対の型材を備え、該一対の型材が接近離間されることで前記成形空間が開閉されるとともに型の開閉動作において成形空間の容積が変化するように構成されている。
【0013】
まず、
図2を参照しつつビーズ発泡成形体100の製造方法について説明する。
本実施形態のビーズ発泡成形体100の製造方法では、
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成されている樹脂粒子であってビーズ発泡成形体100の出発材料となる非発泡な状態の樹脂粒子(以下「原粒1’」ともいう)を用意するステップSTP1と、
該原粒1’を圧力容器PVに収容させるステップSTP2と、
前記圧力容器PVに物理発泡剤FAを導入して該圧力容器PVの内部を物理発泡剤FAの気体で充満させるとともに圧力容器PVの内部を加圧状態にして前記原粒1’に物理発泡剤FAを含浸させ、該原粒1’を加熱することにより発泡させることが可能な発泡性樹脂粒子1とするステップSTP3と、
前記発泡性樹脂粒子1を圧力容器PVから取り出すステップSTP4と、
該発泡性樹脂粒子1を加熱して発泡させるステップSTP5と、
前記発泡性樹脂粒子1を概ね球状となるように発泡させた樹脂発泡粒子(以下「予備発泡粒子10’」)を得るステップSTP6と、
加圧環境下で該予備発泡粒子10’に無機ガスを含浸させて予備発泡粒子10’に良好な二次発泡性を発揮させるための内圧付与を行うステップSTP7と、
製造するビーズ発泡成形体100の形状(本実施形態においては“板状”)に対応した成形空間Mvを有する成形型Mを用意し、内圧付与した複数の予備発泡粒子10’を該成形型Mの前記成形空間Mvに収容させるステップSTP8と、
前記成形型Mを閉型状態にさせることによって成形空間Mvに収容された複数の予備発泡粒子10’を型材で加圧し、該予備発泡粒子10’が圧縮された状態にするステップSTP9と、
前記成形空間Mvに加圧状態で収容された複数の予備発泡粒子10’を予備発泡粒子10’どうしが十分に熱融着するまで加熱するステップSTP10と、
互いに熱融着した樹脂発泡粒子10を前記成形空間Mvに充満させることによって該成形空間Mvに対応した形状を有するビーズ発泡成形体100を成形型Mの内部に形成させるステップSTP11と、
前記成形型Mを冷却して内部のビーズ発泡成形体100を冷却するステップSTP12と、が実施される。
【0014】
上記の通り、本実施形態のビーズ発泡成形体の製造方法では、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成されている複数の樹脂発泡粒子10が互いに熱融着されているビーズ発泡成形体100を、該ビーズ発泡成形体100を成形するための成形空間Mvを備えた成形型Mを使って製造する。
【0015】
本実施形態において用いられる前記成形型Mは、互いに対向するように配された一対の型材を備え、該一対の型材が接近離間されることで前記成形空間が開閉されるとともに該成形空間の容積を変更できるように構成されている。
より詳しくは、本実施形態において用いられる前記成形型Mは、型合せ面MPが水平面となるように上下方向に対向して配された雌型Maと雄型Mbとを備えている。
即ち、本実施形態の成形型Mは、上下方向が開閉方向となるように構成されている。
【0016】
前記雌型Maは、型合せ面MPよりも下側に配され、前記型合せ面MPの中央部に相当する位置において該型合せ面MPよりも下向きに凹入するとともに上方に向けて(雄型Mbに向けて)開口した収容凹部Ma1を有し、該収容凹部Ma1に内圧が付与された熱融着前の樹脂発泡粒子(予備発泡粒子10’)を収容し得るように構成されている。
【0017】
前記雄型Mbは、型合せ面MPよりも上側に配され、前記型合せ面MPの中央部に相当する位置において該型合せ面MPよりも下向きに(雌型Maに向けて)突出した突出部Mb1を有している。
【0018】
前記雄型Mbの突出部Mb1の水平面での断面形状は、突出方向基端部(上端側)から先端部(下端側)にかけて共通しており、本実施形態では四角柱状となっている。
前記雌型Maの収容凹部Ma1に形成される空間の形状は、水平面での断面形状が下端側から上端側にかけて共通しており、雄型Mbの突出部Mb1よりも前記厚み方向D1における寸法が長い四角柱状となっている。
即ち、前記収容凹部Ma1は、凹入深さが突出部Mb1の突出寸法よりも深くなるように形成されている。
【0019】
本実施形態の前記成形型Mは、前記雄型Mbの突出部Mb1の突出高さよりも前記雌型Maの前記収容凹部Ma1の凹入深さが深いことで該収容凹部Ma1に前記突出部Mb1を進入させて前記型合せ面MPにおいて雌型Maと雄型Mbとを当接させるようにした場合でも、前記突出部Mb1の先端が前記収容凹部Ma1の底に到達しないように形成されており、内部に直方体形状(本実施形態においては“扁平四角板状”)の成形空間Mvが形成されるようになっている。
即ち、本実施形態の成形型Mでは、前記収容凹部Ma1の底部における雌型Maの壁面と前記突出部Mb1の先端面(下端面)とが成形空間Mvを画定する成形面となっている。
【0020】
そして、本実施形態の前記成形型Mは、前記の通り、一対の型材(雌型Maと雄型Mb)が接近離間されることで前記成形空間Mvの容積を変更できるようになっており、該成形空間Mvの形状である板状形状の厚みを変更できるよう構成されている。
尚、以下において雌型Maと雄型Mbとが型合せ面MPにおいて密着してそれ以上は成形空間Mvの容積を減少させることができない状態における成形空間Mvの容積を「最小成形空間容積(Vmin)」などとも称する。
本実施形態のビーズ発泡成形体100は、成形空間Mvが該最小成形空間容積(Vmin)となる状態で作製される。
【0021】
また、以下においては、それ以上雌型Maと雄型Mbとを離間させると前記突出部Mb1の先端面が収容凹部Ma1の外に出てしまって収容凹部Ma1が開口した状態における成形空間Mvの容積を「最大成形空間容積(Vmax)」などとも称する。
そして、本実施形態のビーズ発泡成形体100は、前記最小成形空間容積よりも嵩高く且つ該最大成形空間容積よりも嵩の低い量の予備発泡粒子10’を使って作製される。
即ち、成形空間Mvに収容された複数の予備発泡粒子10’を圧縮した状態にさせるステップSTP9では、成形空間Mvに収容させる予備発泡粒子10’の量によって圧縮の程度が調整される。
【0022】
本実施形態の前記成形型Mでは、前記最大成形空間容積(Vmax)が特に限定されるものではないが、当該最大成形空間容積(Vmax)の時点での前記成形空間Mvの厚みが50mm以上200mm以下の範囲内となることが好ましい。
本実施形態の前記成形型Mでは、前記最小成形空間容積(Vmin)が特に限定されるものではないが、当該最小成形空間容積(Vmin)の時点での前記成形空間Mvの厚みが2mm以上30mm以下の範囲内となることが好ましい。
【0023】
本実施形態の成形型Mは、前記突出部Mb1の幅方向D2における寸法と、前記収容凹部Ma1の幅方向D2における寸法とが共通し、前記突出部Mb1の長さ方向D3における寸法と、前記収容凹部Ma1の長さ方向D3における寸法とが共通している。
厳密には前記突出部Mb1の寸法の方が前記収容凹部Ma1の寸法に比べて僅かに小さい。
そのため本実施形態の成形型Mは、前記突出部Mb1を前記収容凹部Ma1に突中させた際に該突出部Mb1の側周面と収容凹部Ma1の内周面とが摺接されるように構成されており、前記成形空間Mvとして前記板状形状の閉空間を形成し得るように構成されている。
【0024】
本実施形態のビーズ発泡成形体の製造方法では、このような成形型Mを用い、該成形型Mの前記成形空間Mvに前記樹脂組成物で構成されている複数の樹脂発泡粒子(予備発泡粒子10’)を収容する第1工程(STP8)と、該第1工程の後に前記成形空間Mvに収容されている前記複数の樹脂発泡粒子(予備発泡粒子10’)を融着可能な状態にまで加熱して該樹脂発泡粒子(予備発泡粒子10’)どうしを熱融着させる第2工程(STP9−STP11)と、を実施して前記ビーズ発泡成形体100を製造する。
前記成形型Mは、前記第1工程又は前記第1工程よりも前の段階で加熱状態にしていてもよく、前記第1工程が完了してから加熱してもよい。
前記予備発泡粒子をより早く融着可能な状態とする上で前記第1工程は、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に成形面が加熱された状態の成形型を用いて実施することが好ましい。
【0025】
本実施形態のビーズ発泡成形体の製造方法では、前記第1工程で前記成形空間Mvに収容する前記複数の樹脂発泡粒子(予備発泡粒子10’)の嵩倍数をX(倍)とした際に、発泡倍率が0.25・X(倍)以上0.99・X(倍)以下となる前記ビーズ発泡成形体100を製造し、且つ、前記成形型Mの開閉方向を前記ビーズ発泡成形体100における第1の方向(厚み方向D1)とした際に、該第1の方向(厚み方向D1)での厚み中心部100mにおける発泡倍率(Ym:倍)と、表層部100sにおける発泡倍率(Ys:倍)との差(ΔY=Ym−Ys:倍)をビーズ発泡成形体全体での発泡倍率(Y:倍)で割った値(ΔY/Y)が0以上0.16以下であるビーズ発泡成形体100を製造する。
尚、中心部100mと表層部100sとでの発泡倍率の差(ΔY)をビーズ発泡成形体100の発泡倍率(Y:倍)で割った値(ΔY/Y)は、ビーズ発泡成形体100での発泡状態の偏りを表し、以下においては、この値(ΔY/Y)のことを“倍率偏り度”などとも称する。
【0026】
予備発泡粒子10’の嵩倍数(X倍)に比べて前記ビーズ発泡成形体100の発泡倍率の方が低いということは、該予備発泡粒子10’で充満された状態よりも成形空間Mvが狭められてビーズ発泡成形体100が作製されることを意味し、予備発泡粒子10’が成形型Mの成形面によって加圧された状態でビーズ発泡成形体100が作製されることを意味する。
即ち、本実施形態のビーズ発泡成形体100は、成形型Mの開閉方向に向けて予備発泡粒子10’が加圧されるとともに該加圧状態で予備発泡粒子10’どうしが熱融着されることによって作製される。
【0027】
一般的な、製造方法で得られるビーズ発泡成形体は、厚み中心部での発泡倍率が表層部に比べて高くなっているため、応力集中が生じ易く、十分な強度が発揮され難い。
本実施形態では、成形空間Mvでの外周部に位置する予備発泡粒子10’が熱容量の大きな成形型の成形面に圧接された状態で成形が行われ得ることから外周部に位置する予備発泡粒子10’の発泡性を高めることができ、厚み中心部での発泡倍率と表層部での発泡倍率との差異を減少させることができる。
【0028】
このことにより本実施形態においては、強度に優れたビーズ発泡成形体100を製造容易となる。
上記のような効果をより顕著に発揮させる上において、前記倍率偏り度(ΔY/Y)は、0.15以下であることが好ましく、0.14以下であることがより好ましい。
前記倍率偏り度(ΔY/Y)は、通常、0.01以上である。
前記倍率偏り度(ΔY/Y)は、通常、0.02以上であってもよく、0.03以上であってもよい。
【0029】
ビーズ発泡成形体100を上記のような状態にする上において、予備発泡粒子10’の嵩倍数を「X:倍」とした際に、ビーズ発泡成形体100の発泡倍率(全体での発泡倍率)は、0.9・X倍以下であることがこのましく、0.85・X倍以下であることがより好ましく、0.8・X倍以下であることがさらに好ましく、0.75・X倍以下であることが特に好ましい。
ビーズ発泡成形体100の発泡倍率は、0.30・X倍以上であることが好ましく、0.35・X倍以上であることがより好ましく、0.40・X倍以上であることがさらに好ましい。
ビーズ発泡成形体100の発泡倍率は、0.45・X倍以上であってもよく、0.50・X倍以上であってもよく、0.55・X倍以上であってもよい。
【0030】
樹脂発泡粒子の嵩倍数は当該樹脂発泡粒子の嵩密度より求めることができ、該嵩密度は、例えば、次のようにして求めることができる。
(嵩密度の求め方)
約1000cm
3の樹脂発泡粒子を用意し、該樹脂発泡粒子をメスシリンダー内に1000cm
3の目盛りまで充填する。
なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、樹脂発泡粒子が1つでも1000cm
3の目盛りに達していれば、その時点で樹脂発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了する。
次に、メスシリンダー内に充填した樹脂発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。
そして、下記式により樹脂発泡粒子の嵩密度が求められる。
嵩密度(kg/m
3)=W
嵩倍数は、樹脂発泡粒子を構成する樹脂組成物の密度をρ(kg/m
3)としたときに下記式により求められる。
嵩倍数=ρ/W
【0031】
前記樹脂発泡粒子は、特にその大きさが限定されるわけではなく、通常、平均粒子径が0.5mm以上10mm以下となるように形成され、更に好ましくは1.0mm以上5mm以下である。
前記樹脂発泡粒子の平均粒子径とは、樹脂発泡粒子の1個当たりの平均体積と同じ体積を有する球の直径を意味する。樹脂発泡粒子の1個当たりの平均体積は、例えば、次のようにして求めることができる。
【0032】
(平均体積の求め方)
空気比較式比重計の試料カップを準備し、この試料カップに50個〜100個程度の任意の個数N(個)の樹脂発泡粒子を収容する。
尚、樹脂発泡粒子は、概ね、23℃、65%RHに調整された空間で12時間以上状態調整を行ったものを使用する。
次に樹脂発泡粒子全体の体積V(mm
3)を、空気比較式比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。
空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc、小8.5cc)にて補正を行う。
なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「空気比較式比重計1000型」にて市販されているものを用いることができる。
そして、下記式により樹脂発泡粒子の平均体積が算出される。
樹脂発泡粒子の平均体積(mm
3)=V/N
【0033】
前記樹脂発泡粒子によって構成されるビーズ発泡成形体100は、発泡倍率が2倍以上であることが好ましい。
該発泡倍率は、2.5倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることが特に好ましい。
発泡倍率は、樹脂発泡成形体に優れた強度を発揮させる上において50倍以下であることが好ましい。
該発泡倍率は、40倍以下であってもよく、30倍以下であってもよく、20倍以下であってもよい。
【0034】
ビーズ発泡成形体の発泡倍率は、樹脂組成物の密度(ρ
resin)とビーズ発泡成形体の見掛け密度(ρ
foam)とを測定してこれらの比率(ρ
resin/ρ
foam)を計算して求めることができる。
【0035】
樹脂組成物の密度(ρ
resin)は、上記の通りJIS K7112:1999「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」での「A法(水中置換法)」などによって求めることができる。
【0036】
ビーズ発泡成形体の見掛け密度は、例えば、次のようにして求めることができる。
(見掛け密度の求め方)
ビーズ発泡成形体を、できるだけ元のセル構造を変えないように切断し、且つ、厚みが元の厚みを維持するように切り出し、切り出す範囲の面積を調整して100cm
3以上の試料を切り出す。
この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出する。
見掛け密度(kg/m
3)=試料の質量(kg)/試料の体積(m
3)
なお、試料の寸法測定には、例えば、(株)ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD−15タイプを用いることができる。
【0037】
厚み中心部100mにおける発泡倍率(Ym:倍)と、表層部100sにおける発泡倍率(Ys:倍)とは、ビーズ発泡成形体100を厚み方向に3分割するようにスライスして測定することができる。
より詳しくは、
図1に示すように前記成形型Mの開閉方向(雌型Ma、雄型Mbが接近離間する方向)となるビーズ発泡成形体100の厚み方向D1におけるビーズ発泡成形体100の全厚みを「t:mm」とした際に、上面から「t/4:mm」の位置を通る第1のスライス面CL1と、下面から「t/4:mm」の位置を通る第2のスライス面CL2とによってビーズ発泡成形体100をスライスしてビーズ発泡成形体100を3分割し、上下のスライス片についての発泡倍率(Ys:倍)と中心部のスライス片についての発泡倍率(Ym:倍)とを求めれば、これらの差異を確認できる。
【0038】
本実施形態では、前記のように強度に優れたビーズ発泡成形体100を製造するために厚み中心部100mにおける発泡倍率(Ym:倍)と、表層部100sにおける発泡倍率(Ys:倍)との差(Ys−Ym:倍)が小さいビーズ発泡成形体100を製造する。
【0039】
本実施形態のビーズ発泡成形体100の製造方法では、前記成形型Mが、前記成形空間Mvを閉空間とし得るように構成されていることが好ましく、前記第1工程(STP8)では、前記複数の予備発泡粒子10’を収容した後の前記成形空間Mvを閉空間とし、且つ、前記複数の予備発泡粒子10’が加圧される状態となるように前記成形空間Mvに収容し、前記第2工程(STP9−STP11)では該加圧された状態の前記予備発泡粒子10’どうしを熱融着させることが好ましい。
【0040】
前記成形空間Mvに予備発泡粒子10’を加圧状態で収容させるには、作製するビーズ発泡成形体100の体積よりも成形空間Mvの容積が広くなるように雌型Maと雄型Mbとを当該成形型Mの開閉方向において離間させた状態で当該成形空間Mvが予備発泡粒子10’で満たされた状態となるようにし、その後、雌型Maと雄型Mbとを接近させて予備発泡粒子を圧縮するステップSTP9を設けるようにすればよい。
【0041】
このとき作製するビーズ発泡成形体100の体積を「Vx:cm
3」とし、雌型Maと雄型Mbとを離間させた状態から接近させて予備発泡粒子10’に圧力が加わり始める状態(第1の状態)での成形空間Mvの容積を「Vy:cm
3」とし、所定の圧力が予備発泡粒子10’に加わった状態(第2の状態)での成形空間Mvの容積を「Vz:cm
3」とした場合、該第2の状態での成形空間Mvの容積(Vz)を前記ビーズ発泡成形体100の体積(Vx)(=最小成形空間容積(Vmin))とし、前記第1の状態での成形空間Mvの容積(Vy)は、前記ビーズ発泡成形体100の体積(Vx)の1.01倍以上4倍以下とすることが好ましい。
【0042】
本実施形態の前記第2工程は、所定の圧力が予備発泡粒子10’に加わった前記第2の状態において行われる。
即ち、本実施形態の前記第2工程では、前記予備発泡粒子10’に圧力を加えながら成形空間Mvの容積を減少させる操作がはじめに行われることが好ましい。
第1の状態での成形空間Mvの容積(Vy)とビーズ発泡成形体100の体積(Vx)との差(ΔV=Vy−Vx)がビーズ発泡成形体100の体積(Vx)に占める割合(ΔV/Vx×100(%)、以下「圧縮率」ともいう)は、1%以上300%以下であることが好ましい。
【0043】
前記圧縮率は、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。
即ち、予備発泡粒子10’の嵩倍数をX(倍)とした際、本実施形態では発泡倍率が0.95・X(100/105・X)(倍)以下のビーズ発泡成形体が形成されることが好ましく、0.91・X(100/110・X)(倍)以下のビーズ発泡成形体が形成されることがより好ましく、0.83・X(100/120・X)(倍)以下のビーズ発泡成形体が形成されることがさらに好ましい。
前記圧縮率は、250%以下であることがより好ましく、200%以下であることがさらに好ましく、150%以下であることが特に好ましい。
前記圧縮率は、100%以下であることがとりわけ好ましい。
前記圧縮率は、80%以下であってもよく、70%以下であってもよく、60%以下であってもよい。
即ち、予備発泡粒子10’の嵩倍数をX(倍)とした際、本実施形態では発泡倍率が0.29・X(100/350・X)(倍)以上のビーズ発泡成形体が形成されることがより好ましく、0.33・X(100/300・X)(倍)以上のビーズ発泡成形体が形成されることがさらに好ましく、0.4・X(100/250・X)(倍)以上のビーズ発泡成形体が形成されることが特に好ましい。
本実施形態では発泡倍率が、0.5・X(100/200・X)(倍)以上のビーズ発泡成形体が形成されることがとりわけ好ましい。
本実施形態では発泡倍率が0.56・X(100/180・X)(倍)以上のビーズ発泡成形体が形成されても、0.59・X(100/170・X)(倍)以上のビーズ発泡成形体が形成されても、0.63・X(100/160・X)(倍)以上のビーズ発泡成形体が形成されてもよい。
【0044】
前記第2工程では、加熱された前記成形型Mで前記成形空間Mvに収容されている前記複数の予備発泡粒子10’を加熱することにより、該成形空間Mvでの外周部に位置する前記予備発泡粒子10’を中心部に位置する前記予備発泡粒子10’よりも高温に加熱することが好ましい。
【0045】
一般的なビーズ発泡成形法においては、予備発泡粒子どうしを熱融着させるために成形空間に過圧水蒸気などが導入されるが、本実施形態では、過圧水蒸気などの熱媒を成形空間に導入せず、成形型Mの壁面(成形面)からの伝熱によって予備発泡粒子10’を加熱することが好ましい。
【0046】
過圧水蒸気などの熱媒を成形空間に導入すると、ビーズ発泡成形体の中心部までが加熱されることになり、全体が比較的均一に加熱されて良好なビーズ発泡成形体が得られるように思われるが、ビーズ発泡成形体は、成形型から取り出す際に冷却する必要がある。
成形後の成形型の冷却は、ビーズ発泡成形体の生産性を考慮して自然放冷のような時間を掛けた方法では行われず、冷却水を成形型に吹き付けるような方法が一般的である。
冷却水で成形型を冷却すると内部のビーズ発泡成形体は、表層部がいち早く冷却される。
熱媒の導入によって均熱化されているビーズ発泡成形体の表層部をいち早く冷却すると、表層部での発泡倍率(Ys)が厚み中心部の発泡倍率(Ym)に比べて大きく低下してしまってこれらの差(ΔY=Ym−Ys)を小さくすることが難しくなる。
【0047】
本実施形態のビーズ発泡成形体の製造方法では、このようなことを防止すべく、第2工程後に長時間かけてビーズ発泡成形体100を冷却する工程を実施してもよいが、そうするとビーズ発泡成形体の生産効率を低下させることにもなりかねない。
そのようなことから、本実施形態においては、熱媒を成形空間に導入せずに、加熱された前記成形型Mで予備発泡粒子10’を加熱する。
このことにより、成形空間Mvでの外周部に位置する予備発泡粒子10’の発泡を中心部に位置する予備発泡粒子10’よりも早期に開始させることができ、中心部から表層部に向けて発泡倍率を上昇させる形でビーズ発泡成形体100に密度勾配を形成させることができる。
【0048】
本実施形態においては、このような密度勾配を形成させることで成形型を水冷した際に表層部での発泡倍率(Ys)と厚み中心部での発泡倍率(Ym)との間に発生する差異を減少させることができる。
したがって、本実施形態においては、上記のようにして第2工程を実施することで表層部と厚み中心部との間で発泡倍率の際が少ないビーズ発泡成形体100を効率良く製造することができる。
【0049】
ビーズ発泡成形体100を効率良く製造する上において、前記成形型Mを冷却して内部のビーズ発泡成形体100を冷却するステップ(STP11)では、50℃以下の冷却水で成形型Mの冷却を実施することが好ましい。
該冷却水の温度は、45℃以下であってもよい。
該冷却水の温度は、25℃以上であることが好ましい。
冷却水は、成形型Mの壁内を流通させてもよく、成形型の外表面に吹き付けるなどしてもよい。
また、熱プレス機の熱板などで成形型を挟み込んで該熱板内に冷却水を流通させるようにしてもよい。
【0050】
本実施形態においては、製造するビーズ発泡成形体100の厚みが過度に厚いと発泡倍率の差異を減少させることが難しくなるため、製造するビーズ発泡成形体100の厚みが50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることがさらに好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
ビーズ発泡成形体100の厚みは、通常、3mm以上とされる。
【0051】
本実施形態においては、平面視矩形の直板状のビーズ発泡成形体100を製造する場合を例示しているが、上記のような好ましい厚みについては、ビーズ発泡成形体100が曲板状や波板状などの直板状以外の板状であっても同じである。
尚、板状のビーズ発泡成形体100が場所によって厚みが異なる場合、平均化した厚み(体積/平面視における面積)を上記のような値とすることが好ましい。
【0052】
本実施形態におけるその他のステップは、従来のビーズ発泡成形体の製造方法と同様に実施することができる。
尚、本実施形態のビーズ発泡成形体100の製造方法では、前記原粒1’を用意するステップSTP1において、ある程度耐熱性に優れた原粒1’を用意することが好ましい。
即ち、原粒1’を構成する樹脂組成物に含まれる前記熱可塑性樹脂は、一定以上のガラス転移温度を有することが好ましい。
該熱可塑性樹脂のガラス転移温度としては、80℃以上であることが好ましい。
該ガラス転移温度は、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。
前記ガラス転移温度は、120℃以上であっても、130℃以上であってもよく、140℃以上であってもよい。
前記ガラス転移温度は、150℃以上であってもよく、160℃以上であってもよい。
但し、前記ガラス転移温度が、過度に高温であると一般的な設備での成形が困難になる場合がある。
したがって、ビーズ発泡成形体100を製造容易とする上において、前記ガラス転移温度は、220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましい。
前記ガラス転移温度は、200℃以下であってもよく、190℃以下であってもよい。
【0053】
前記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、ABS等のスチレン系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;アクリル樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルスルホン(PESU)樹脂、ポリフェニルスルホン(PPSU)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂などであってもよい。
【0054】
原粒1’を構成する樹脂組成物は、上記のような樹脂を2種以上含んでもよく、樹脂以外に各種添加剤を含んでもよい。
前記原粒1’が2以上の熱可塑性樹脂を含む場合、上記のようなガラス転移温度を有する樹脂が熱可塑性樹脂全体の50質量%以上を占めることが好ましい。
上記のようなガラス転移温度を有する樹脂の割合は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0055】
本実施形態の原粒1’を構成する樹脂組成物は、自明のことではあるが、予備発泡粒子10’やビーズ発泡成形体100を構成する樹脂組成物と同一のものとなる。
そのため、個々の樹脂だけでなく、前記原粒1’を構成する樹脂組成物のガラス転移温度としても上記のような値を示すことが好ましい。
そのことによって、ビーズ発泡成形体100が強度に優れるばかりでなく耐熱性にも優れた状態となり得る。
【0056】
熱可塑性樹脂や樹脂組成物のガラス転移温度は、以下のようにして求めることができる。
尚、本実施形態において用いる「ガラス転移温度」との用語は、JIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている中間点ガラス転移温度(Tmg)を意味する。
【0057】
(ガラス転移温度の求め方)
熱可塑性樹脂や樹脂組成物の各ガラス転移温度(Tmg)は、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定することができる。
但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう5.5±0.5mg充てん後、アルミニウム製の蓋をする。
次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS−3」示差走査熱量計を用い、窒素ガス流量20mL/minのもと20℃/minの速度で30℃から220℃まで昇温し、10分間保持後速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より、装置付属の解析ソフトを用いて、中間点ガラス転移温度(Tmg)を算出する。
この時に基準物質としてアルミナを用いる。
中間点ガラス転移温度(Tmg)は、該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。
【0058】
前記樹脂組成物に熱可塑性樹脂以外に含まれ得る前記添加剤としては、例えば、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、抗菌剤、防鼠剤、防虫剤等が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、発泡させる際の気泡調整剤として機能するタルクなどの無機フィラーやポリテトラフロロエチレンパウダーなどの有機フィラーが挙げられる。
【0059】
前記原粒1’に物理発泡剤FAを含浸させるステップSTP3において用いられる前記物理発泡剤FAとしては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素や、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族アルコール、炭酸ガス等が挙げられる。
本実施形態においては発泡性樹脂粒子1を調整する際に物理発泡剤FAを用いているが、該物理発泡剤FAに代えて化学発泡剤を用いてもよい。
【0060】
発泡性樹脂粒子1を加熱して発泡させるステップSTP5では、前記発泡性樹脂粒子1を過圧水蒸気などによって加熱する方法を採用することができる。
【0061】
前記発泡性樹脂粒子1を概ね球状となるように発泡させて前記予備発泡粒子10’を得るステップSTP6では、前記のような嵩倍数と平均体積を有する予備発泡粒子10’を作製することが好ましい。
【0062】
該予備発泡粒子10’に内圧付与を行うステップSTP7で用いる前記無機ガスとしては、炭酸ガス、窒素ガス、エアー(空気)、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン等)等が挙げられる。
【0063】
上記のような製造方法で製造される本実施形態のビーズ発泡成形体は、倍率偏り度が0.16以下であるため、優れた強度を発揮する。
尚、上記以外においてビーズ発泡成形体の製造方法やビーズ発泡成形体に関して従来公知の技術事項については本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて特に制限なく本発明において採用可能である。
【実施例】
【0064】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
[原粒の調製]
ガラス転移温度(Tmg)151.6℃、質量平均分子量5.1万、メルトマスフローレート9g/10分、密度1200kg/m
3のポリカーボネート樹脂を用意した。
ポリカーボネート樹脂を、シリンダー口径が40mmの単軸押出機に10kg/hの割合で供給し、該単軸押出機で約300℃の温度で溶融混練し、該単軸押出機の先端に装着したダイスのダイス孔(直径1.5mm)から溶融混練物を押出ながら切断し、切断した粒状物を10℃の冷却水で冷却して平均粒子径が約1.4mmの樹脂粒子(原粒)を作製した。
【0066】
[発泡性樹脂粒子の調製]
作製した樹脂粒子を密閉可能な圧力容器に入れて該圧力容器内を炭酸ガスで置換するとともにさらに炭酸ガスを圧力容器に圧入することによって圧力容器の内圧(ゲージ圧)を2MPaまで昇圧させた。
この圧力容器を室温(約20℃)で24時間保持し、発泡性樹脂粒子を作製した。
24時間経過した圧力容器から約5分間かけて炭酸ガスを放出して圧力容器内の除圧を行った後、容器内の発泡性樹脂粒子を取り出した。
【0067】
[樹脂発泡粒子(予備発泡粒子)の調製]
作製した発泡性樹脂粒子は、圧力容器から取り出した後、攪拌機付きの高圧発泡機に入れて発泡させて樹脂発泡粒子とした。
樹脂発泡粒子の作製に際しては、高圧発泡機内で発泡性樹脂粒子を攪拌しながら0.3MPaの過圧水蒸気を導入して発泡性樹脂粒子を発泡させるようにした。
得られた樹脂発泡粒子の発泡状況を確認したところ嵩倍数10倍であった。
【0068】
[ビーズ発泡成形体の作製]
樹脂発泡粒子を容量10リットルの圧力容器に入れて該圧力容器内を窒素ガスで満たすとともにさらに窒素ガスを圧力容器に圧入することによって圧力容器の内圧(ゲージ圧)を1MPaまで昇圧させた。
この圧力容器を24時間保持し、樹脂発泡粒子の内圧を上昇させた(内圧付与)。
24時間経過した圧力容器からゆっくりと窒素ガスを放出して圧力容器内の除圧を行った後、容器内の樹脂発泡粒子を取り出した。
取り出した樹脂発泡粒子は、直ちに縦150mm×横80mm×深さ10mmの直板状の成形空間(内容量Vmin:120cm
3)を備えた成形型を有する加熱圧縮機にて成形を行った。
成形型を170℃の設定温度で加熱し、表面温度が145℃から165℃程度になるまで加熱し、該成形型内に樹脂発泡粒子を20g充填した。
油圧圧縮機構により成形型を閉じて、7分間加熱を行った。
加熱後、すぐに冷却を行い、型温度を100℃以下とした。
冷却後成形型よりビーズ発泡成形体を取り出した。
尚、20gの樹脂発泡粒子の見掛け上の体積(粒子間の空間込みの体積)は、約167cm
3であり、ここでは圧縮率約39%で型の開閉方向に圧力を加えた成形が実施されている。
【0069】
得られたビーズ発泡成形体は、樹脂発泡粒子どうしの接着も良好であり、全体の発泡倍率が7.1倍であった。
また、得られたビーズ発泡成形体の厚み中心部の発泡倍率を測定したところ7.7倍であることがわかった。
また、表層部の発泡倍率を測定したところ6.7倍であることがわかり、発泡倍率の差が1倍と非常に小さく、倍率偏り度も0.14と小さいことがわかった。
そして、この板状のビーズ発泡成形体の曲げ弾性率を測定したところ、95MPaであることがわかった。
尚、曲げ弾性率は下記のようにして求めた。
【0070】
[曲げ試験:弾性率]
曲げ弾性率はJIS K7221−1:2006「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:たわみ特性の求め方」に準拠した方法により測定した。
ビーズ発泡成形体から、厚さ10mm×幅25mm×長さ110mm(両面スキン層あり)の直方体形状の試験片を切り出した。
測定には、(株)島津製作所製「オートグラフAG−X plus 100kN」万能試験機、(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理を用いて、試験速度10mm/min、加圧くさび5R、支持台5R、支点間距離100mmにて測定した。
試験片の数は5個以上とし、試験片をJIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定した。
変位の原点を回帰点とし、見かけ弾性率を求めた。
見掛け曲げ弾性率E(MPa)は次式により算出した。
E=L
3/(4bd
3)×Ft/xt×10
3
L:支点間距離(mm)、b:試験片の幅(mm)、d:試験片の厚さ(mm)、
Ft:たわみxtに対応する荷重(kN)、xt:対応するたわみ(mm)
【0071】
(実施例2)
成形型内に充填する樹脂発泡粒子の量を20gに代えて24gとした他は実施例1と同様にしてビーズ発泡成形体を得た。
尚、24gの樹脂発泡粒子の見掛け上の体積(粒子間の空間込みの体積)は、約200cm
3であり、ここでは圧縮率約67%で型の開閉方向に圧力を加えた成形が実施されている。
得られたビーズ発泡成形体は樹脂発泡粒子どうしの接着も良好であり、全体での発泡倍率が6.0倍であった。
また、得られたビーズ発泡成形体の厚み中心部の発泡倍率を測定したところ6.2倍であることがわかった。
また、表層部の発泡倍率を測定したところ5.8倍であることがわかり、発泡倍率の差が0.4倍と非常に小さく、倍率偏り度も0.07と小さいことがわかった、
そして、この板状のビーズ発泡成形体の曲げ弾性率を測定したところ、125MPaであることがわかった。
【0072】
(比較例1)
実施例1と同様にして嵩倍数11.7倍の樹脂発泡粒子を作製した。
次いで、得られた樹脂発泡粒子を蒸気加熱型の高圧成形機を用いて成形した。
成形型は、縦400mm×横300mm×深さ30mmの直板状の成形空間を備えたものを用いた。
前記成形型に樹脂発泡粒子を充填し、高圧成形機で0.8MPaの過圧水蒸気により50秒間加熱して樹脂発泡粒子を二次発泡させるとともに樹脂発泡粒子どうしを融着させることによりビーズ発泡成形体を作製した。
尚、ここでは樹脂発泡粒子に対して実施例のような大きな圧縮を加えることなく成形を実施した。
ビーズ発泡成形体は、成形型での成形後、十分に冷却した後に成形型より取り出し、樹脂発泡成形体を50℃の乾燥室で8時間乾燥した後に発泡状態を測定したところ全体での発泡倍率が10.6倍であった。
また、得られたビーズ発泡成形体の厚み中心部の発泡倍率を測定したところ11.7倍であることがわかった。
また、表層部の発泡倍率を測定したところ9.8倍であることがわかり、発泡倍率の差が1.9倍と大きく、且つ、倍率偏り度も0.18と大きいことがわかった。
そして、この板状のビーズ発泡成形体の曲げ弾性率を測定したところ、40MPaであった。
【0073】
(比較例2)
使用する樹脂発泡粒子の嵩倍数を6.7倍としたほかは、比較例1と同様にビーズ発泡成形体を作製した。
尚、ここでも樹脂発泡粒子に対して実施例のような大きな圧縮を加えることなく成形を実施した。
得られたビーズ発泡成形体の全体での発泡倍率が6.4倍であった。
また、得られたビーズ発泡成形体の厚み中心部の発泡倍率を測定したところ7.2倍であることがわかった。
また、表層部の発泡倍率を測定したところ5.8倍であることがわかり、発泡倍率の差が1.4倍と大きく、且つ、倍率偏り度も0.21と大きいことがわかった。
そして、この板状のビーズ発泡成形体の曲げ弾性率を測定したところ、85MPaであり実施例のものに比べて強度が劣っていた。
これらの結果を下記の表に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
以上のことからも本発明によれば、ビーズ発泡成形体に優れた強度が発揮されることがわかる。