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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-160376(P2021-160376A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20210913BHJP
【FI】
   B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-60797(P2020-60797)
(22)【出願日】2020年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 康典
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA22
3D246GB37
3D246GC14
3D246HA43A
3D246HA45C
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB11
3D246JB32
3D246LA04Z
3D246LA52Z
3D246LA61Z
3D246LA63Z
3D246LA73Z
3D246LA75Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電動シリンダ等の加圧部とリザーバとの接続状態が切り替わるピストンの切替位置を精度良く推定する。
【解決手段】本発明は、シリンダ21と、シリンダ21内で摺動可能なピストン23と、ピストン23を駆動する電気モータ22と、シリンダ21及びピストン23により区画された出力室24と、を有し、ピストン23の位置に応じて出力室24とリザーバ45との接続状態が連通状態と遮断状態とで切り替わるように構成され、ピストン23の軸方向一方への移動により出力室24の容積が減少することでフルードを加圧可能な第1加圧部2と、出力室24の圧力を検出する圧力センサ73と、ピストン23を移動させるとともに、圧力センサ73の検出値に基づいて出力室24とリザーバ45の接続状態が切り替わるピストン23の切替位置を推定する位置推定処理を実行する推定部91と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバと、
シリンダと、前記シリンダ内で摺動可能なピストンと、前記ピストンを駆動する電気モータと、前記シリンダ及び前記ピストンにより区画され前記ピストンの移動により容積が変化する出力室と、を有し、前記ピストンの位置に応じて前記出力室と前記リザーバとの接続状態が連通状態と遮断状態とで切り替わるように構成され、且つ前記ピストンの軸方向一方への移動により前記出力室の容積が減少することでフルードを加圧可能な第1加圧部と、
前記出力室の圧力を検出する圧力センサと、
前記ピストンを移動させるとともに、前記圧力センサの検出値に基づいて前記出力室と前記リザーバの接続状態が切り替わる前記ピストンの切替位置を推定する位置推定処理を実行する推定部と、
を備える、車両用制動装置。
【請求項2】
前記推定部により前記位置推定処理が実行されるに際し、前記出力室の剛性を高くする剛性変更処理を実行する剛性変更部を備え、
前記出力室の剛性は、前記出力室を単位容積だけ変化させた場合の液圧変化量である、請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記出力室に接続されたホイールシリンダと、
前記ホイールシリンダを加圧可能な第2加圧部と、
を備え、
前記剛性変更部は、前記剛性変更処理として、前記第2加圧部により前記ホイールシリンダを加圧する、請求項2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記位置推定処理は、前記ピストンを前記軸方向一方に移動させる第1移動処理と、前記第1移動処理の後に前記ピストンを軸方向他方に移動させる第2移動処理と、前記第2移動処理中に前記圧力センサの検出値に基づいて前記切替位置を検出する検出処理と、を含み、
前記剛性変更部は、前記第1移動処理の前に前記ホイールシリンダと前記出力室とを遮断した状態で前記第2加圧部により前記ホイールシリンダを加圧し、前記第2移動処理の前に前記ホイールシリンダと前記出力室とを連通させる、請求項3に記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記出力室とホイールシリンダとを接続する出力液路と、
前記出力液路に設けられ、閉弁により前記ホイールシリンダの液圧を保持可能な電磁弁と、
を備え、
前記剛性変更部は、前記剛性変更処理として、前記電磁弁を閉弁させる、請求項2に記載の車両用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用制動装置には、電気モータによりピストンを移動させて液圧を発生させる液圧発生装置(例えば電動シリンダ)を備えるものがある。電動シリンダには、構成上、電気モータの駆動に対して液圧が発生しない無効ストロークが存在し得る。ここで、例えば特許5856021号明細書には、液圧発生の起点となる原点位置に係るモータの回転角度を、復帰区間を考慮して設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5856021号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両用制動装置では、電気モータの回転角度に関する固定値(原点位置情報、復帰区間情報)に基づいて制御が行われており、例えば電気モータの出力誤差、直動機構の誤差、モータ回転角度センサの検出誤差、又は外気温の高低などによって、固定値による制御位置と実際のピストンの位置との間にズレが生じる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、電動シリンダ等の加圧部とリザーバとの接続状態が切り替わるピストンの切替位置を精度良く推定することができる車両用制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用制動装置は、リザーバと、シリンダと、前記シリンダ内で摺動可能なピストンと、前記ピストンを駆動する電気モータと、前記シリンダ及び前記ピストンにより区画され前記ピストンの移動により容積が変化する出力室と、を有し、前記ピストンの位置に応じて前記出力室と前記リザーバとの接続状態が連通状態と遮断状態とで切り替わるように構成され、且つ前記ピストンの軸方向一方への移動により前記出力室の容積が減少することでフルードを加圧可能な第1加圧部と、前記出力室の圧力を検出する圧力センサと、前記ピストンを移動させるとともに、前記圧力センサの検出値に基づいて前記出力室と前記リザーバの接続状態が切り替わる前記ピストンの切替位置を推定する位置推定処理を実行する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力室とリザーバとが連通状態である場合、ピストンが移動しても出力室に液圧は発生しない。一方、出力室とリザーバとが遮断状態である場合、ピストンの移動に応じて出力室の液圧が変化する。加圧時、圧力センサの検出値は、ピストン23が切替位置を超えると0(リザーバの液圧)から上昇し始める。減圧時、圧力センサの検出値は、切替位置を超えると0になる。
【0008】
推定部は、位置推定処理において、ピストンを移動させつつ圧力センサの検出値をモニターし、上記のような出力室の液圧変化を検出することで、ピストンの切替位置を推定することができる。実際の液圧変化に基づいてピストンの切替位置が推定されるため、位置推定処理実行時の車両状況に応じた切替位置を取得することができる。このように、本発明によれば、出力室とリザーバとの接続状態が切り替わるピストンの切替位置を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の車両用制動装置の構成図である。
図2】本実施形態のピストンの切替位置を説明するための概念図である。
図3】本実施形態のアクチュエータの構成図である。
図4】本実施形態の具体例1の制御の流れを示すフローチャートである。
図5】本実施形態の具体例1での液圧の変化を示す概念図である。
図6】本実施形態の具体例2の制御の流れを示すフローチャートである。
図7】本実施形態の具体例2での液圧の変化を示す概念図である。
図8】本実施形態の変形例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。説明に用いる各図は概念図である。本実施形態の車両用制動装置1は、図1に示すように、上流ユニット11と、下流ユニットを構成するアクチュエータ3と、第1ブレーキECU901と、第2ブレーキECU902と、電源装置903と、を備えている。上流ユニット11は、下流ユニットに基礎液圧を供給可能に構成されている。
【0011】
上流ユニット11は、電動シリンダ(「第1加圧部」に相当する)2と、マスタシリンダユニット4と、リザーバ45と、第1液路51と、第2液路52と、連通路53と、ブレーキ液供給路54と、連通制御弁61と、マスタカット弁62と、を備えている。第1ブレーキECU901は、少なくとも上流ユニット11を制御する。第2ブレーキECU902は、少なくともアクチュエータ3を制御する。なお、図1は、車両用制動装置1の非通電状態を表している
【0012】
(電動シリンダ)
電動シリンダ2は、リザーバ45に接続され、ホイールシリンダ81、82、83、84を加圧可能な加圧ユニット(調圧ユニット)である。ホイールシリンダ81、82は第1系統のホイールシリンダであり、ホイールシリンダ83、84は第2系統のホイールシリンダである。配管の接続は、例えば第1系統が前輪に対して配置され、第2系統が後輪に対して配置された前後配管であってもよい。また、配管の接続は、第1系統及び第2系統のそれぞれに前輪と後輪が配置されたクロス配管であってもよい。
【0013】
電動シリンダ2は、シリンダ21と、電気モータ22と、ピストン23と、出力室24と、付勢部材25と、を有する。電気モータ22は、回転運動を直線運動に変換する直動機構22aを介してピストン23に接続されている。電動シリンダ2は、シリンダ21内に単一の出力室24が形成されているシングルタイプの電動シリンダである。
【0014】
ピストン23は、電気モータ22の駆動によりシリンダ21内を軸方向に摺動する。ピストン23は、軸方向一方側に開口し軸方向他方側に底面を有する有底円筒状に形成されている。つまり、ピストン23は、開口を形成する筒状部分と、底面(受圧面)を形成する円柱部分と、を備えている。
【0015】
出力室24は、シリンダ21とピストン23により区画されており、ピストン23の移動により容積が変化する。出力室24は、リザーバ45及びアクチュエータ3に接続されている。ピストン23は、図2に示すように、軸方向において、出力室24の容積が最小となる位置と、出力室24の容積が最大となる位置とを含む摺動領域R内で摺動する。摺動領域Rは、出力室24とリザーバ45との間を連通させる連通領域R1、及び出力室24とリザーバ45との間を遮断する遮断領域R2で構成されている。連通領域R1は、出力室24の容積が最大となるピストン23の初期位置を含んでいる。遮断領域R2は、出力室24の容積が最小となるピストン23の位置を含んでいる。遮断領域R2は、軸方向において、連通領域R1よりも大きい。なお、図2では、各領域R、R1、R2がピストン23の軸方向一端(先端)の位置を基準に表されている。
【0016】
より詳細に、シリンダ21には、入力ポート211及び出力ポート212が形成されている。出力ポート212は、出力室24と第2液路52とを連通させている。入力ポート211は、ピストン23が初期位置にある際に、ピストン23の筒状部分とオーバーラップしている。ピストン23の筒状部分には、貫通孔231が形成されている。貫通孔231は、ピストン23が初期位置にある場合に、入力ポート211に対向する位置(オーバーラップする位置)に形成されている。
【0017】
入力ポート211と貫通孔231がオーバーラップしている状態で、出力室24とリザーバ45とが連通する。ピストン23が軸方向一方側に移動することで、入力ポート211と貫通孔231とがオーバーラップしている幅は減少する。入力ポート211と貫通孔231とがオーバーラップしない状態になると、出力室24とリザーバ45との間が遮断される。
【0018】
シリンダ21には、シール部材X1、X2が設けられている(図2参照)。入力ポート211は、シール部材X1とシール部材X2の間に形成されている。シール部材X1は、環状のカップシールである。シール部材X1は、ピストン23の基準位置が遮断領域R2にある状態(遮断状態)において、出力室24からリザーバ45へのフルードの流通を禁止し、リザーバ45から出力室24へのフルードの流通を許可する。
【0019】
オーバーラップ距離(貫通孔231及び/又は入力ポート211の軸方向の幅)が大きいほど、連通領域R1が大きくなる。本実施形態では、入力ポート211と貫通孔231とは同レベルの軸方向幅を有している。ピストン23の軸方向一方側への移動において、連通領域R1は、ピストン23が初期位置から所定量(オーバーラップ距離)移動するまで継続する。所定量は、初期位置と切替位置との離間距離に相当する。付勢部材25は、出力室24に配置され、ピストン23を軸方向他方側に(初期位置に向けて)付勢するばねである。
【0020】
連通領域R1は、ピストン23の初期位置と切替位置との間の領域である。図2に示すように、ピストンが初期位置から軸方向一方側に移動して切替位置に到達すると、貫通孔231と入力ポート211とのオーバーラップがなくなり、出力室24とリザーバ45との接続状態が連通状態から遮断状態に切り替わる。つまり、電動シリンダ2は、出力室24に液圧が発生する液圧発生状態になるといえる。反対に、遮断状態(液圧発生状態)において、ピストン23が軸方向他方側に移動して切替位置に到達すると、貫通孔231と入力ポート211とがオーバーラップし始め、接続状態が遮断状態から連通状態に切り替わる。
【0021】
(アクチュエータ)
アクチュエータ3は、ホイールシリンダ81、82を調圧可能に構成された第1液圧出力部31と、ホイールシリンダ83、84を調圧可能に構成された第2液圧出力部32と、を備える調圧ユニット(下流ユニット)である。アクチュエータ3は、電動シリンダ2に接続されている。
【0022】
第1液圧出力部31は、入力された液圧とホイールシリンダ81、82の液圧との間に差圧を発生させることでホイールシリンダ81、82を加圧するように構成されている。同様に、第2液圧出力部32は、入力された液圧とホイールシリンダ83、84の液圧との間に差圧を発生させることでホイールシリンダ83、84を加圧するように構成されている。
【0023】
アクチュエータ3は、いわゆるESCアクチュエータであって、各ホイールシリンダ81〜84の液圧を独立に調圧することができる。アクチュエータ3は、第2ブレーキECU902の制御に応じて、例えばアンチスキッド制御(ABS制御とも呼ばれる)、横滑り防止制御(ESC)、又はトラクションコントロール等を実行する。第1液圧出力部31と第2液圧出力部32とは、アクチュエータ3の液圧回路上、互いに独立している。アクチュエータ3の構成については後述する。
【0024】
(マスタシリンダユニット)
マスタシリンダユニット4は、リザーバ45に接続され、ブレーキ操作部材Zの操作量(ストローク及び/又は踏力)に応じて機械的にアクチュエータ3の第1液圧出力部31にブレーキ液を供給するユニットである。マスタシリンダユニット4と電動シリンダ2とは、互いに独立して液圧を発生させることができる。マスタシリンダユニット4は、第1液圧出力部31を介してホイールシリンダ81、82を加圧可能に構成されている。マスタシリンダユニット4は、マスタシリンダ41と、マスタピストン42と、を備えている。
【0025】
マスタシリンダ41は、有底円筒状の部材である。マスタシリンダ41には、入力ポート411と出力ポート412が形成されている。マスタピストン42は、ブレーキ操作部材Zの操作量に応じて、マスタシリンダ41内を摺動するピストン部材である。マスタピストン42は、軸方向一方側に開口し軸方向他方側に底面を有する有底円筒状に形成されている。
【0026】
マスタシリンダ41内には、マスタピストン42により単一のマスタ室41aが形成されている。換言すると、マスタシリンダ41には、マスタシリンダ41とマスタピストン42とによりマスタ室41aが形成されている。マスタ室41aの容積は、マスタピストン42の移動により変化する。マスタピストン42が軸方向一方側に移動すると、マスタ室41aの容積が小さくなり、マスタ室41aの液圧(以下「マスタ圧」という)が増大する。マスタ室41aには、マスタピストン42を初期位置に向けて(軸方向他方側に)付勢する付勢部材41bが設けられている。本実施形態のマスタシリンダユニット4は、シングルタイプのマスタシリンダユニットである。
【0027】
出力ポート412は、マスタ室41aと第1液路51とを連通させる。入力ポート411は、マスタピストン42の筒状部分に形成された貫通孔421を介して、マスタ室41aとリザーバ45とを連通させる。マスタ室41aの容積が最大となるマスタピストン42の初期位置において、入力ポート411と貫通孔421とはオーバーラップし、マスタ室41aとリザーバ45とが連通する。マスタピストン42が初期位置から軸方向一方側に所定量(オーバーラップ距離)移動すると、マスタ室41aとリザーバ45との接続が遮断される。
【0028】
マスタシリンダユニット4には、ストロークシミュレータ43及びシミュレータカット弁44が設けられている。ストロークシミュレータ43は、ブレーキ操作部材Zの操作に対して反力(負荷)を発生させる装置である。ブレーキ操作が解除されると、付勢部材41bによりマスタピストン42が初期位置に戻される。ストロークシミュレータ43は、例えばシリンダ、ピストン、及び付勢部材により構成される。ストロークシミュレータ43とマスタシリンダ41の出力ポート412とは、液路43aにより接続されている。シミュレータカット弁44は、液路43aに設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。
【0029】
(液路と電磁弁)
第1液路51は、マスタ室41aと第1液圧出力部31とを接続している。第2液路52は、電動シリンダ2と第2液圧出力部32とを接続している。連通路53は、第1液路51と第2液路52とを接続している。
【0030】
連通制御弁61は、連通路53に設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。連通制御弁61は、電動シリンダ2による第1液圧出力部31へのブレーキ液の供給を許可又は禁止する。連通制御弁61は、閉弁時のホイールシリンダ81、82から電動シリンダ2へのブレーキ液の逆流を防ぐため、弁体が弁座よりもホイールシリンダ81、82側(第1系統側)に配置されている。これにより、連通制御弁61閉弁時にホイールシリンダ81、82の液圧が電動シリンダ2の出力液圧よりも高くなっても、弁体には弁座に押し付けられる方向に力が加わるため(セルフシールされ)、閉弁が維持される。
【0031】
マスタカット弁62は、第1液路51のうち、第1液路51と連通路53との接続部50と、マスタシリンダ41との間に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。マスタカット弁62は、マスタシリンダユニット4から第1液圧出力部31へのブレーキ液の供給を許可又は禁止する。
【0032】
ブレーキ液供給路54は、リザーバ45と電動シリンダ2の入力ポート211とを接続している。リザーバ45は、ブレーキ液を貯留し、内部の圧力は大気圧に保たれている。また、リザーバ45の内部は、各々ブレーキ液が貯留された2つの部屋451、452に区画されている。リザーバ45の一方の部屋451にはマスタシリンダユニット4が接続され、他方の部屋452にはブレーキ液供給路54を介して電動シリンダ2が接続されている。リザーバ45は、2つの部屋でなく、2つの別々のリザーバで構成されてもよい。
【0033】
(構成まとめ)
電動シリンダ2は、シリンダ21と、シリンダ21内で摺動可能なピストン23と、ピストン23を駆動する電気モータ22と、シリンダ21及びピストン23により区画されピストン23の移動により容積が変化する出力室24と、を有し、ピストン23の移動により出力室24の容積が減少することでフルードを加圧可能に構成されている。車両用制動装置1は、電動シリンダ2と、出力室24に接続されたリザーバ45と、を備え、ピストン23の位置に応じて出力室24とリザーバ45との接続状態が連通状態と遮断状態とで切り替わるように構成されている。
【0034】
(アクチュエータの構成例)
アクチュエータ3の構成例について、ホイールシリンダ81に接続された液路を例に簡単に説明する。アクチュエータ3の第1液圧出力部31は、図3に示すように、主に、液路311と、差圧制御弁312と、保持弁(「電磁弁」に相当する)313と、減圧弁314と、ポンプ315と、電気モータ316と、リザーバ317と、を備えている。
【0035】
液路311は、第1液路51とホイールシリンダ81とを接続している。液路311には、圧力センサ75が設置されている。差圧制御弁312は、ノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。差圧制御弁312の開度(電磁力による閉弁側への力)が制御されることで、上下流間に差圧を発生させることができる。第1液路51からホイールシリンダ81へのブレーキ液の流通のみを許可するチェックバルブ312aが差圧制御弁312と並列に設けられている。
【0036】
保持弁313は、液路311のうち差圧制御弁312とホイールシリンダ81との間に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。また、チェックバルブ313aが保持弁313と並列に設けられている。減圧弁314は、減圧液路314aに設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。減圧液路314aは、液路311のうち保持弁313とホイールシリンダ81との間の部分と、リザーバ317とを接続している。
【0037】
ポンプ315は、電気モータ316の駆動力により作動する。ポンプ315は、ポンプ液路315aに設けられている。ポンプ液路315aは、液路311のうち差圧制御弁312と保持弁313との間の部分(以下「分岐部X」という)と、リザーバ317とを接続している。ポンプ315が作動すると、リザーバ317内のブレーキ液が分岐部Xに吐出される。
【0038】
リザーバ317は、調圧リザーバである。還流液路317aは、第1液路51とリザーバ317とを接続している。リザーバ317は、ポンプ315の作動により、リザーバ317内のブレーキ液が優先的に吸入され、リザーバ317内のブレーキ液が減少すると開弁して還流液路317aを介して第1液路51からブレーキ液が吸入されるように構成されている。
【0039】
第2ブレーキECU902は、アクチュエータ3によりホイールシリンダ81を加圧する場合、差圧制御弁312に目標差圧(ホイールシリンダ81の液圧>第1液路51の液圧)に応じた制御電流を印加し、差圧制御弁312を閉弁させる。この際、保持弁313は開弁しており、減圧弁314は閉弁している。また、ポンプ315が作動することで、第1液路51からリザーバ317を介して分岐部Xにブレーキ液が供給される。これにより、ホイールシリンダ81が加圧される。
【0040】
ホイールシリンダ81の液圧(以下「第1ホイール圧」という)と第1液路51の液圧との差が目標差圧を超えて高くなろうとすると、力の大小関係から差圧制御弁312が開弁する。加圧後の第1ホイール圧は、第1液路51の液圧と目標差圧との和になる。このように、アクチュエータ3は、電動シリンダ2の出力液圧と第1ホイール圧との間に差圧を発生させることで、ホイールシリンダ81を加圧する。他のホイールシリンダ82、83、84の加圧も同様である。
【0041】
第2ブレーキECU902は、アンチスキッド制御等でアクチュエータ3により第1ホイール圧を減圧する場合、減圧弁314を開弁させ且つ保持弁313を閉弁させた状態でポンプ315を作動させ、ホイールシリンダ81内のブレーキ液をポンプバックさせる。第2ブレーキECU902は、アクチュエータ3により第1ホイール圧を保持する場合、保持弁313及び減圧弁314を閉弁させる。電動シリンダ2又はマスタシリンダユニット4の作動のみにより第1ホイール圧を加圧又は減圧する場合、第2ブレーキECU902は、差圧制御弁312及び保持弁313を開弁し、減圧弁314を閉弁させる。
【0042】
第2液圧出力部32の構成は、第1液圧出力部31と同じであるため、説明は省略する。また、第1液圧出力部31の液路311に相当する第2液圧出力部32の液路321は、第2液路52とホイールシリンダ83、84とを接続している。このように、第2液圧出力部32は、液路311に相当する液路321と、差圧制御弁312に相当する差圧制御弁322と、保持弁313に相当する保持弁323と、減圧弁314に相当する減圧弁324と、ポンプ315に相当するポンプ325と、リザーバ317に相当するリザーバ327と、を備えている。アクチュエータ3は、電動シリンダ2とは独立して、ホイールシリンダ81〜84を加圧可能に構成されている。なお、以下、説明において、ホイールシリンダ81〜84の液圧をホイール圧ともいう。
【0043】
(ブレーキECU及び各種センサ)
第1ブレーキECU901及び第2ブレーキECU902(以下「ブレーキECU901、902」ともいう)は、それぞれCPUやメモリを備える電子制御ユニットである。各ブレーキECU901、902は、各種処理(制御)を実行する1つ又は複数のプロセッサを備えている。第1ブレーキECU901と第2ブレーキECU902とは、別個のECUであって、互いに情報(制御情報等)を通信可能に接続されている。
【0044】
第1ブレーキECU901は、電動シリンダ2及び各電磁弁61、62、44に制御可能に接続されている。第2ブレーキECU902は、アクチュエータ3に制御可能に接続されている。各ブレーキECU901、902は、各種センサの検出結果に基づいて各種制御を実行する。各種センサとして、車両用制動装置1には、例えば、ストロークセンサ71、圧力センサ72、73、75、回転角センサ74、車輪速度センサ(図示略)、ヨーレートセンサ(図示略)、及び加速度センサ(図示略)等が設けられている。
【0045】
ストロークセンサ71は、ブレーキ操作部材Zのストロークを検出する。車両用制動装置1には、各ブレーキECU901、902に一対一で対応するように、2つのストロークセンサ71が設けられている。ブレーキECU901、902は、それぞれ対応するストロークセンサ71からストローク情報を取得する。圧力センサ72は、マスタ圧を検出するセンサであって、例えば第1液路51のうちマスタカット弁62よりもマスタシリンダ41側の部分に設けられている。圧力センサ73は、電動シリンダ2の出力液圧すなわち出力室24の圧力を検出するセンサであって、例えば第2液路52に設けられている。回転角センサ74は、電動シリンダ2の電気モータ22に対して設けられ、電気モータ22の回転角(回転位置)を検出する。圧力センサ75は、第1液路51から第1液圧出力部31への入力液圧を検出する。各種センサの検出値は、両方のブレーキECU901、902に送信されてもよい。
【0046】
第1ブレーキECU901は、ストロークセンサ71、圧力センサ72、73、及び回転角センサ74の検出結果を受信し、当該検出結果に基づいて電動シリンダ2及び各電磁弁61、62、44を制御する。第1ブレーキECU901は、圧力センサ72、73の検出結果及びアクチュエータ3の制御状態に基づいて、各ホイール圧を演算することができる。
【0047】
第2ブレーキECU902は、ストロークセンサ71及び圧力センサ75の検出結果を受信し、当該検出結果に基づいてアクチュエータ3を制御する。第2ブレーキECU902は、圧力センサ75及びアクチュエータ3の制御状態に基づいて、各ホイール圧を演算することができる。第2ブレーキECU902は、第1差圧(入力圧とホイールシリンダ81、82の液圧との差圧)の目標値である第1目標差圧、及び第2差圧(入力圧とホイールシリンダ83、84の液圧との差圧)の目標値である第2目標差圧を設定する。
【0048】
電源装置903は、各ブレーキECU901、902に電力を供給する装置である。電源装置903は、バッテリを備えている。電源装置903は、両ブレーキECU901、902に接続されている。つまり、本実施形態では、2つのブレーキECU901、902に共通の電源装置903から電力が供給される。
【0049】
(位置推定処理)
第1ブレーキECU901は、位置推定処理を実行する推定部91を備えている。位置推定処理は、ピストン23を移動させるとともに、圧力センサ73の検出値に基づいて出力室24とリザーバ45の接続状態が切り替わるピストン23の切替位置を推定する処理である。
【0050】
推定部91は、所定のタイミングで位置推定処理を実行する。推定部91は、位置推定処理において、ピストン23を初期位置から軸方向一方に移動させ、圧力センサ73の検出値が閾値以上となったときの回転角センサ74の検出値を切替位置(加圧時切替位置)として記憶する。また、推定部91は、位置推定処理によって液圧発生状態となった電動シリンダ2に対して、ピストン23を軸方向他方に移動させ、圧力センサ73が閾値以下となったときの回転角センサ74の検出値を切替位置(減圧時切替位置)として記憶する。推定部91は、位置推定処理において、加圧時切替位置及び減圧時切替位置の少なくとも一方を記憶すればよい。推定部91は、切替位置情報について、ピストン23の移動方向に基づく補正を加えてもよい。
【0051】
位置推定処理は、例えば、車両が停止しホイール圧がなくても停車維持できる状態である時(例えばEPB稼働時やシフトレバーがPレンジである時)、又は車両走行時(ブレーキ操作がなされていない時)に実行される。
【0052】
(位置推定処理による効果)
本実施形態によれば、出力室24とリザーバ45とが連通状態である場合、ピストン23が移動しても出力室24に液圧は発生しない。一方、出力室24とリザーバ45とが遮断状態である場合、ピストン23の移動に応じて出力室24の液圧が変化する。加圧時、圧力センサ73の検出値は、切替位置を超えると0(リザーバ45の液圧)から上昇し始める。減圧時、圧力センサ73の検出値は、切替位置を超えると0になる。
【0053】
推定部91は、位置推定処理において、ピストン23を移動させつつ圧力センサ73の検出値をモニターし、上記のような出力室24の液圧変化(0に対する変化)を検出することで、ピストンの切替位置を推定することができる。実際の液圧変化に基づいてピストン23の切替位置が推定されるため、位置推定処理実行時の車両状況に応じた切替位置を取得することができる。推定部91は、例えば電気モータ22の回転位置の情報(回転角情報)を、切替位置の情報として記憶する。例えば電気モータ22の回転位置と直動機構22aのギヤ比からピストン23の位置は演算できる。このように、本実施形態によれば、電動シリンダ2の出力室24とリザーバ45との接続状態が切り替わるピストン23の切替位置を精度良く推定することができる。
【0054】
(剛性変更処理)
第2ブレーキECU902は、剛性変更部92を備えている。剛性変更部92は、推定部91により位置推定処理が実行されるに際し、出力室24の剛性を高くする剛性変更処理を実行する。出力室24の剛性は、出力室24を単位容積だけ変化させた場合の液圧変化量である。出力室24の剛性は、出力室24を単位容積だけ小さくしたときに増大する液圧量ともいえる。出力室24の剛性が高いほど、出力室24を単位容積小さくした際に増大する液圧量が大きくなる。
【0055】
出力室24の剛性は、出力室24とホイールシリンダ81〜84とを接続する出力液路201、202の容積及びホイールシリンダ81〜84の剛性の影響を受ける。出力室24の剛性が高くなる事例としては、例えば、ホイールシリンダ81〜84の剛性が高くなった場合、又は出力液路201、202の容積が小さくなった場合等である。
【0056】
出力液路201は、第2液路52の一部、連通路53、第1液路51の一部、及び液路311により構成されている。出力液路202は、第2液路52及び液路321により構成されている。ホイールシリンダ81〜84の剛性は、ホイール圧が初期領域内の値である場合(0≦ホイール圧≦所定圧)、出力液路201、202の剛性よりも低い。したがって、低圧領域において、出力室24の剛性は、ホイールシリンダ81〜84の剛性の影響を受ける。ホイールシリンダ81〜84の剛性(液圧変化量/容積変化量)は、ホイール圧によって変化する。
【0057】
(剛性変更処理の具体例1)
剛性変更処理の具体例1として、剛性変更部92は、アクチュエータ3によりホイールシリンダ81〜84を加圧する。剛性変更部92は、推定部91が位置推定処理を実行する前に、アクチュエータ3を制御してホイールシリンダ81〜84にフルードを供給する。アクチュエータ3によるホイールシリンダ81〜84の加圧は、上記のように、差圧制御弁312、322に制御電流を供給し、且つポンプ315、325を作動させることで実行される。これにより、ホイール圧が高くなり、ホイールシリンダ81〜84の剛性が高くなり、出力室24の剛性も高くなる。
【0058】
より詳細に、図4に示すように、ブレーキECU901、902は、加圧処理S101、第1移動処理S102、連通処理S103、第2移動処理S104、及び検出処理S105を実行する。まず、剛性変更処理が実行されると、差圧制御弁312、322が目標差圧に応じて閉弁され、ポンプ315、325の作動によりホイールシリンダ81〜84が加圧される(S101)。
【0059】
出力室24の容積減少量に対する出力室24の液圧増大量(増大勾配)は、加圧処理S101実行前と比べて急峻になる。つまり、出力室24の剛性は高くなる。
【0060】
推定部91は、差圧制御弁312、322の上下流間の差圧が目標差圧に到達した後(加圧処理S101完了後)に、電気モータ22を駆動させて電動シリンダ2のピストン23を初期位置から軸方向一方に移動させる(S102)。ピストン23が連通領域R1を移動し切替位置を超えて遮断領域R2に入ると、出力室24の液圧が上昇し、ホイールシリンダ81〜84には出力室24の液圧に差圧制御弁312、322の目標差圧を加算した液圧が発生する。なお、推定部91は、圧力センサ73の検出値(出力室24の液圧)が閾値を超えたときの電気モータ22の回転位置を記憶してもよいが、本例では減圧時に検出される切替位置を記憶する。
【0061】
推定部91は、第1移動処理S102において、ピストン23を所定量移動させて停止させる。換言すると、推定部91は、ホイール圧が目標ホイール圧に到達したらピストン23を停止させる。そして、剛性変更部92は、ポンプ315、325を停止し、差圧制御弁312、322への制御電流の供給を停止して差圧制御弁312、322を開弁(目標差圧=0)させる(S103)。これにより、相対的に高圧のホイールシリンダ81〜84と相対的に低圧の出力室24とが連通し、フルードが出力室24に流入する。フルードの流入により出力室24の液圧が上昇し、当該液圧上昇によりピストン23が軸方向他方に押し戻される。出力室24には、ホイール圧に相当する液圧、すなわちアクチュエータ3により嵩上げされた液圧が発生する。
【0062】
推定部91は、液圧が嵩上げされた状態で、電気モータ22の出力(トルク)を下げて、ピストン23を軸方向他方に移動させる(S104)。これにより、図5に示すように、嵩上げされた出力室24の液圧は徐々に低下する。そして、出力室24とリザーバ45との接続状態が遮断状態から連通状態に切り替わると、出力室24が大気圧のリザーバ45に連通し、フルードがリザーバ45に高い流速で流出する。これにより、嵩上げされていた出力室24の液圧が一気に0まで低下し、圧力センサ73の検出値が、切替位置を検出(判定)するための閾値を下回る。
【0063】
推定部91は、圧力センサ73の検出値が閾値(閾値以下)となったときを検出し、そのときの回転角センサ74の検出値を記憶する(S105)。つまり、推定部91は、圧力センサ73の検出値が閾値となったときのピストン23の位置に対応する電気モータ22の回転位置を記憶する。推定部91は、圧力センサ73の検出値が閾値となったときに、ピストン23が切替位置に位置すると推定し、その位置に関する情報を記憶する。
【0064】
このように、具体例1の位置推定処理は、ピストン23を軸方向一方に移動させる第1移動処理S102と、第1移動処理S102の後にピストン23を軸方向他方に移動させる第2移動処理S104と、第2移動処理中に圧力センサ73の検出値に基づいて切替位置を検出する検出処理S105と、を含んでいる。また、剛性変更部92は、第1移動処理S102の前にホイールシリンダ81〜84と出力室24とを遮断した状態でアクチュエータ3によりホイールシリンダ81〜84を加圧し(加圧処理S101)、第2移動処理S104の前にホイールシリンダ81〜84と出力室24とを連通させる(連通処理S103)。連通処理S103が実行されることで、ホイール圧に相当する液圧が出力室24に発生する。加圧処理S101と連通処理S103は、第2移動処理S104の前に出力室24の液圧を嵩上げする嵩上げ処理ともいえる。
【0065】
(具体例1の効果)
具体例1によれば、加圧処理S101によりホイールシリンダ81〜84が加圧される。その後、第1移動処理S102により出力室24とリザーバ45の接続状態が遮断される。連通処理S103によりホイールシリンダ81〜84と出力室24との接続状態が遮断状態から連通状態に切り替わったとき、出力室24の液圧が嵩上げされ、ピストン23が軸方向他方に移動して切替位置に到達する直前における出力室24の液圧は、電動シリンダ2による加圧とアクチュエータ3による加圧の合成特性となる。そのため、ピストンが実際に切替位置に到達して出力室24がリザーバ45と連通するまでは加圧処理S101によって、マスタカット弁62に対してホイールシリンダ81〜84側の液量が増加しているため、圧力センサ73の検出値が閾値以下とならず、出力室24とリザーバ45が連通して初めて検出値が閾値以下となる。両者の連通により、出力室24の液圧及びホイール圧は、嵩上げ分高い状態から0まで一気に低下する。これにより、より精度良くピストンの切替位置を推定することができる。
【0066】
剛性変更部92は、加圧処理S101において、差圧制御弁312、322の目標差圧(大気圧に対する差圧)を閾値より高い値に設定することが好ましい。これにより、ピストン23が切替位置に到達するまでに出力室24の液圧が閾値未満となることが抑制される。なお、具体例1において、第1移動処理S102の際に、圧力センサ73の検出値(出力室24の液圧)が0から上昇し始め、閾値(閾値以上)に到達したタイミングでの位置情報を記憶してもよい。ただし、具体例1では、第2移動処理S104において出力室24とリザーバ45とが連通した時のほうが、第1移動処理S102の時よりもフルードの流速が高い(液圧の変化勾配が大きい)。したがって、剛性変更処理が加圧処理S101である場合、第2移動処理S104の時に切替位置を検出することで、より精度良く切替位置を推定することができる。
【0067】
(剛性変更処理の具体例2)
剛性変更処理の具体例2として、図6に示すように、剛性変更部92は、保持弁313、323を閉弁させる(S201:閉弁処理)。保持弁313、323は、上述のように、出力液路201、202に設けられ、閉弁によりホイールシリンダ81〜84の液圧を保持可能に構成されている。すべての保持弁313、323が閉弁されることで、電動シリンダ2から流出したフルードは、ホイールシリンダ81〜84に達する前に保持弁313、323で遮断される。なお、保持弁313の代わりに連通制御弁61にて電動シリンダ2から流出したフルードを遮断してもよい。
【0068】
閉弁処理S201により、出力室24とホイールシリンダ81〜84とが遮断されるため、出力液路201、202の容積は小さくなる。これにより、出力室24において、単位容積小さくなったときの液圧の増大勾配は大きくなる。つまり、出力室24の剛性は高くなる。また、出力液路201、202が遮断されることで、出力室24の剛性は、ホイールシリンダ81〜84の剛性に影響を受けなくなる。このように、閉弁処理S201により、出力室24の剛性は高くなる。
【0069】
推定部91は、閉弁処理S201の後、ピストン23を初期位置から軸方向一方に移動させる(S202:移動処理)。そして、図7に示すように、推定部91は、圧力センサ73の検出値が閾値(閾値以上)となったときを検出し、そのときの回転角センサ74の検出値を記憶する(S203:検出処理)。
【0070】
(具体例2の効果)
具体例2によれば、閉弁処理S201により出力室24の剛性が高くなっているため、移動処理S202によりピストン23が切替位置を超えた際、圧力センサ73の検出値の増大勾配は大きくなる。したがって、ピストン23が切替位置に到達した後、早いタイミングで、圧力センサ73の検出値が閾値以上となる。つまり、より精度良く、切替位置を検出することができる。
【0071】
また、剛性変更処理が閉弁処理S201である場合、切替位置の検出精度の観点では、加圧時の検出と減圧時の検出とでそれほど違いがないと推測できる。したがって、具体例2の場合、位置推定処理の時間短縮の観点で、推定部91は、加圧時(移動処理S202の時)に切替位置を検出することが好ましい。
【0072】
(位置推定処理後の制御)
位置推定処理により切替位置が検出・記憶された後、第1ブレーキECU901は、所定のタイミングで(例えば車両走行開始時)、ピストン23を初期位置から切替位置まで移動させる。これにより、無効ストロークが小さく又は0となり、制動力発生に対する応答性は向上する。また、第1ブレーキECU901は、所定のタイミングで、実質的に制動力が発生しない範囲で出力室24に液圧が発生するように、ピストン23を切替位置を超えて軸方向一方に移動させてもよい。これにより、より確実に無効ストロークを0にすることができる。本実施形態のように切替位置の情報を精度良く取得することで、無効ストロークによる応答性の低減や、不要な制動力の発生による引きずり発生を抑制することができる。本実施形態によれば、例えば衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の応答性が向上する。また、加圧時に切替位置を検出する場合は、切替位置に到達した時点でピストン23の移動を止め、その位置で停止させるのが好適である。これにより、例えば、再度切替位置までピストン23を移動させる処理が不要となる。
【0073】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、マスタシリンダユニット4の変形例として、図8に示すように、マスタシリンダユニット40は、2つのマスタ室410a、410bを有するタンデム型のシリンダユニットであってもよい。マスタシリンダユニット40は、マスタシリンダ410と、第1マスタピストン401と、第2マスタピストン402と、付勢部材403、404と、を備えている。
【0074】
マスタシリンダ410には、第1マスタピストン401及び第2マスタピストン402で区画された第1マスタ室410aと、第2マスタピストン402で区画された第2マスタ室410bとが形成されている。付勢部材403は、第1マスタ室410aに配置され、第1マスタピストン401を初期位置に向けて付勢する。付勢部材404は、第2マスタ室410bに配置され、第2マスタピストン402を初期位置に向けて付勢する。
【0075】
マスタシリンダユニット40は、第1マスタ室410aと第2マスタ室410bとが同圧になるように構成されている。リザーバ45とマスタ室410a、410bとの連通は、マスタピストン401、402が初期位置から所定量前進することで遮断される。第1マスタ室410aは、液路52aを介して第2液路52に接続されている。液路52aにはマスタカット弁62aが配置されている。また、第2液路52のうち、液路52aと第2液路52との接続点と出力室24との間の部分には、連通制御弁61aが配置されている。各電磁弁61a、62aの構成及び機能は、電磁弁61、62と同様である。
【0076】
この構成によれば、マスタカット弁62、62aが開弁されることで、マスタシリンダユニット40からすべてのホイールシリンダ81〜84に液圧(マスタ圧)を供給することができる。この構成の場合、加圧処理S101は、マスタシリンダユニット40の作動によって実行されてもよい。
【0077】
例えば、液圧制動力以外の制動力による停車状態において、剛性変更部92は、位置推定処理が実行される前に、運転者(又は点検作業者)に対しブレーキ操作部材Zの操作を例えば音声や表示画面により指示する。この際の電磁弁の状態は、非通電状態であって、マスタカット弁62、62aは開弁し、連通制御弁61、61aは閉弁し、シミュレータカット弁44は閉弁している。
【0078】
運転者がブレーキ操作部材Zを踏み込むと、マスタピストン401、402が移動し、各マスタ室410a、410bからフルードがホイールシリンダ81〜84に供給される。剛性変更部92は、例えば、運転者がブレーキ操作部材Zを所定のストロークだけ操作すると、操作停止の指示を運転者に提示する。そして、剛性変更部92は、例えば差圧制御弁312、322を閉弁する。これにより、加圧処理S101が完了する。その後、推定部91及び剛性変更部92は、図4のフローと同様の制御を実行する。このように、剛性変更処理は、マスタシリンダユニット40によって実行されてもよい。この場合、マスタシリンダユニット40が第2加圧部に相当する。
【0079】
(位置推定処理の実行タイミングの別例)
推定部91及び剛性変更部92は、キャリパノックバックが発生している可能性が高い場合に、位置推定処理及び加圧処理S101を実行してもよい。キャリパノックバックは、車両が旋回した際に、ブレーキパッドがロータに押され、キャリパ内のピストンが後退する現象である。キャリパノックバックが発生するとピストンの無効ストローク(制動力が発生しないストローク)が大きくなる。
【0080】
ブレーキECU901、902は、例えばヨーレートセンサや操舵角センサ等の検出値に基づいて、車両の旋回状態と直進状態とを検出(判定)することができる。剛性変更部92は、車両旋回後の直進状態が検出されると、位置推定処理のための加圧処理S101を実行する。そして、推定部91は、例えば図4に示すように、位置推定処理を実行する。
【0081】
この構成によれば、加圧処理S101によってキャリパ内のピストンがブレーキパッド側に押圧され、無効ストロークが小さくなる。つまり、この構成によれば、位置推定処理及び剛性変更処理を、キャリパノックバックの解消に利用することができる。
【0082】
また、推定部91は、フルードの温度変化に応じて、位置推定処理を実行してもよい。圧力センサ73は、温度センサを備えており、フルードの温度を検出することができる。例えば、電動シリンダ2の無効ストロークを0にするために第1ブレーキECU901がピストン23を切替位置よりも軸方向一方に移動させている場合、電動シリンダ2とホイールシリンダ81〜84との間の液路は密閉状態となる。例えば、密閉状態でフルードの温度が高くなる場合、フルード体積が増大することで圧力が発生し、装置に負荷がかかりうる(負荷トルクが上昇する)。このようなタイミングで、位置推定処理を実行することで、出力室24とリザーバ45とが連通するため、温度変化による負荷状態をリセットすることができる。
【0083】
このように、位置推定処理及び剛性変更処理は、例えば、液圧制動力なく停車している所定停車状態時、車両走行時、車両旋回後の直進時、又は、温度変化が所定値以上である時に実行される。なお、加圧処理S101では制動力が発生し得るが、位置推定処理及び剛性変更処理は、短時間(例えば数百ミリ秒)で実行可能であるため、走行中に行われても運転者のドライブフィーリングにはほとんど影響しない。
【0084】
(その他)
本発明は、例えば、回生制動装置を含む車両(ハイブリッド車や電気自動車)、自動ブレーキ制御を実行する車両、又は自動運転車両にも適用できる。また、車両用制動装置は、1つのブレーキECUで制御されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…車両用制動装置、2…電動シリンダ(第1加圧部)、21…シリンダ、22…電気モータ、23…ピストン、24…出力室、3…アクチュエータ(第2加圧部)、313、323…保持弁(電磁弁)、45…リザーバ、73…圧力センサ、81〜84…ホイールシリンダ、91…推定部、92…剛性変更部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8