【解決手段】本発明によれば、ケーシング1内部にフィルタ2を備えた液体処理装置100であって、洗浄水供給手段5と、排出手段8と、制御手段10とを備え、洗浄水供給手段5は、ケーシング1内部に洗浄水を供給するよう構成され、排出手段8は、ケーシング1内部の液体を排出するよう構成され、制御手段10は、液体処理装置100による浄化処理の終了後、液体処理装置100を保管する前に、排出手段8によりケーシング1内部の液体を排出し、次いで洗浄水供給手段5によりケーシング1内に洗浄水を供給して、ケーシング1内部の下部に洗浄水を貯留させる、液体処理装置100が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0016】
本発明の実施形態に係る液体処理装置としてのバラスト水処理装置100は、船舶に設置されるバラスト装置において、バラスト水(液体)の浄化のために導入される。なお、本明細書における「バラスト水」については、バラストタンク(図示せず)に導入される前又はバラストタンクから排出された後に拘わらず、また、バラスト水処理装置100に導入(流入)される前又はバラスト水処理装置100から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現する。また、船内に取り込むバラスト水には、海水、淡水、汽水等が含まれるものとする。
【0017】
1.構成
本実施形態のバラスト水処理装置100は、
図1に示すように、円筒状のケーシング1と、円筒状のフィルタ2と、回転手段としてのフィルタ回転手段3とを備える。円筒状のフィルタ2は、その中心軸が鉛直方向と一致するようケーシング1内部に配置される。フィルタ2は、内部(一次側)に流入した海水等の濾過処理前のバラスト水を濾過して外部(二次側)へ流出させる。フィルタ回転手段3は、フィルタ2をその軸心を中心に回転させる。
【0018】
また、バラスト水処理装置100は、フィルタ2の洗浄のため、フィルタ2の一次側のバラスト水を排出する逆洗浄手段4と、フィルタ2の二次側に設けられ、フィルタ2に向かって洗浄水を噴出する洗浄水供給手段としての洗浄水噴出手段5とを備える。
【0019】
さらに、バラスト水処理装置100は、ケーシング1内部のバラスト水排出後のフィルタ2の洗浄(以下、空間洗浄と呼ぶ)のため、ケーシング1内部に圧縮ガスを供給(パージ)する圧縮ガス供給手段6と、ケーシング1内部のバラスト水を排出する排出手段8と、制御手段10とを備える。
【0020】
また、本実施形態のバラスト水処理装置100には、ケーシング1にバラスト水を導入する導入ラインL1と、濾過処理後のバラスト水をバラストタンク(図示せず)へと流通させる流出ラインL2とが接続される。以下、各構成を具体的に説明する。
【0021】
ケーシング1は、円筒状に形成され、上部開口部が蓋部11で、下部開口部が底部12で密閉されている。ケーシング1内部に配置された円筒状のフィルタ2は、その上部開口部が上閉止部13で密閉され、下部開口部が下閉止部14で閉止される。これらの構成により、フィルタ2内部(一次側)が、ケーシング1とフィルタ2の間(二次側)と隔てられている。フィルタ2は、例えば、多数の貫通孔が形成された金属板を円筒状に曲げ加工すると共に、円筒状の軸方向に延びる一対の側縁部を溶接することにより形成される。
【0022】
ケーシング1の下部には、濾過処理前のバラスト水をフィルタ2の内部に導入する導入口15が設けられる。導入口15には、導入ラインL1が接続される。導入ラインL1には、開閉弁V1を挟んで開閉弁バラスト水を圧送するバラスト装置のポンプXが接続される。また、ケーシング1の側部には、フィルタ2を通過した濾過処理後のバラスト水が流出する流出口16が設けられる。導入ラインL1を流れ導入口15から導入されたバラスト水は、下部回転軸部材32を通ってフィルタ2内に入る。その後、バラスト水は、フィルタ2を通過し濾過処理されてケーシング1とフィルタ2の間に形成される空間に入り、流出口16から流出する。流出口16から流出した濾過処理後のバラスト水は、流出ラインL2を流通してバラストタンク(図示せず)に貯留される。なお、流出ラインL2にも、開閉弁V2が設けられる。
【0023】
フィルタ回転手段3は、上部回転軸部材31と、下部回転軸部材32と、モータ33とを備える。上部回転軸部材31は、フィルタ2の上閉止部13を保持し、下部回転軸部材32は、下閉止部14を保持する。モータ33は、上部回転軸部材31を回転させる。また、上部回転軸部材31は、ケーシング1の蓋部11を貫通し、シーリングされた軸受部材18を介して蓋部11に回転自在に且つ液密に支持される。下部回転軸部材32は、ケーシング1の底部12を貫通し、シーリングされた軸受部材19を介して底部12に回転自在に且つ液密に支持される。下部回転軸部材32は、フィルタ2内と連通するとともにケーシング1の底部12からケーシング1の外に突出する管状体となっている。
【0024】
逆洗浄手段4は、複数のノズル41と、複数のノズルパイプ42と、集合管43と、排出管44とを備える。逆洗浄手段4は、濾過処理中にフィルタ2に付着した異物をバラスト水とともに濃縮水(逆洗水)としてケーシング1の外部へと排出するために用いられる。
【0025】
ノズル41は、その先端部がフィルタ2の内周面(一次側面)に向かってスリット状に開口し、フィルタ2に対向するよう配置される。ノズル41の基端部は、円筒形状となっており、ノズルパイプ42に接続される。
【0026】
ノズルパイプ42は、先端側がノズル41に接続され、基端側が集合管43に接続される円筒状の部材である。本実施形態において、ノズル41及びノズルパイプ42は、周方向に90度間隔で4列、それぞれ上下方向に3本づつ、合計12本設けられる(
図2では、右方向に延びるもの以外を省略している)。そして、上下に配置されているノズル41の間の未吸引部を無くすため、1方の列のノズル41の間に他の列のノズル41が位置するよう、列ごとに高さ方向の位置をずらして配置されている。
【0027】
集合管43は、フィルタ2の内部に配置される。より具体的には、集合管43は、フィルタ2の中心軸に一致する位置に配置され、上端部が閉鎖し下端部が開口している。集合管43の上端部は、フィルタ2の上部回転軸部材31の中央に設けられた孔に挿入されて支持されている。集合管43には、ノズル41及びノズルパイプ42を流通したバラスト水及び異物が集合して流通する。
【0028】
排出管44は、集合管43の下端部に接続され、下部回転軸部材32の内部を、フィルタ2の回転を妨げないように下方に延びる。排出管44の下端側は、屈曲して延びており、導入口15の周面を貫通している。排出管44は、集合管43を流通したバラスト水及び異物をケーシング1(バラスト水処理装置100)の外部へと排出する。また、本実施形態の排出管44には、開度調整が可能な調整弁(逆洗弁、図示せず)が設けられている。
【0029】
洗浄水噴出手段5は、2つの上部噴出ノズル51a,51bと、下部噴出ノズル51cと、洗浄水ライン52と、洗浄水ポンプ53とを備える。上部噴出ノズル51a,51b及び下部噴出ノズル51cは、ケーシング1の側部に設けられており、先端部がケーシング1内部、特にフィルタ2の外周面に向かって開口している。上部噴出ノズル51a,51b及び下部噴出ノズル51cは、
図1に示すように、上部噴出ノズル51a、上部噴出ノズル51b、下部噴出ノズル51cの順に、鉛直方向に並んで設けられる。これらの構成により、洗浄水噴出手段5は、フィルタ2に向けて高圧の洗浄水を噴出可能となっている。
【0030】
なお、噴出ノズル51a〜51cは、それぞれフィルタ2の軸方向全域に洗浄水を噴出できることが好ましいが、その構成は特に限定されるものではない。例えば、噴出ノズル51a〜51cを、フィルタ2の軸方向に直線状及び/又は周方向に角度を変えて配置することができる。
【0031】
洗浄水ライン52は、上部噴出ノズル51a,51b及び下部噴出ノズル51cの3つの噴出ノズル51a〜51cに対応して、下流側で3本の分岐ライン52a〜52cに分岐する。分岐ライン52a〜52cは、それぞれ噴出ノズル51a〜51cと接続され、洗浄水ライン52に設置される洗浄水ポンプ53によって圧送される洗浄水を噴出ノズル51a〜51cに供給する。分岐ライン52a〜52cには、上部噴出ノズル弁54a,54b及び下部噴出ノズル弁54cが設けられている。洗浄水ライン52の上流側は、洗浄水貯留タンク55に接続される。本実施形態では、洗浄水貯留タンク55に貯留される洗浄水として、清水が用いられる。なお、洗浄水貯留タンク55として、船舶に設置される生活水や飲料水として使用するためのタンクを利用することも可能である。
【0032】
圧縮ガス供給手段6は、圧縮ガス供給口61と、圧縮ガス供給ライン62と、圧縮ガス供給弁63とを備える。圧縮ガス供給口61は、ケーシング1の蓋部11に設けられ、蓋部11を貫通している。圧縮ガス供給口61には、圧縮ガス供給ライン62が接続される。圧縮ガス供給ライン62には、圧縮ガス供給弁63が設けられる。圧縮ガス供給ライン62の上流側には、コンプレッサ等の圧縮ガス供給源(図示せず)が接続される。
【0033】
排出手段8は、排出口81と、排出ライン82と、排出弁83とを備える。排出口81は、ケーシング1の底部12に設けられ、底部12を貫通している。排出口81には、排出ライン82が接続される。排出ライン82には、排出弁83が設けられる。排出手段8は、ケーシング1の内部に収容されたバラスト水をフィルタ2の二次側からケーシング1(バラスト水処理装置100)の外部へと排出する際に用いられる。
【0034】
制御手段10は、洗浄水噴出手段5によるケーシング1内部への洗浄水の供給、圧縮ガス供給手段6によるケーシング1内部への圧縮ガスの供給、及び排出手段8によるケーシング1内部のバラスト水の排出を制御するよう構成される。
【0035】
洗浄水の供給について、具体的には、制御手段10は、洗浄水噴出手段5の洗浄水ポンプ53を駆動することにより、洗浄水貯留タンク55に貯留された洗浄水を、洗浄水ライン52及び分岐ライン52a〜52cを介して上部噴出ノズル51a,51b及び下部噴出ノズル51cから噴出する。より具体的には、制御手段10は、洗浄水ポンプ53の駆動とともに、分岐ライン52a,52bに設けられる上部噴出ノズル弁54a,54b、及び分岐ライン52cに設けられる下部噴出ノズル弁54cの開閉を制御する。これにより、制御手段10は、上部噴出ノズル51a、上部噴出ノズル51b及び下部噴出ノズル51cからの洗浄水の噴出を切替え可能となっている。
【0036】
また、圧縮ガスの供給について、具体的には、制御手段10は、圧縮ガス供給手段6の圧縮ガス供給弁63の開閉を制御することにより、圧縮ガス供給ライン62を介した圧縮ガスの供給を制御する。また、バラスト水の排出について、具体的には、制御手段は10は、排出手段8の排出弁83の開閉を制御することにより、排出ライン82を介したバラスト水の排出を制御する。制御手段10が上記のような各制御を行う条件については、後述する。
【0037】
2.動作
次に、本実施形態のバラスト水処理装置100の動作を説明する。なお、本実施形態において、以下の動作は、制御手段10により制御される。ただし、一部の動作を、船員等により手動で行うことも可能である。
【0038】
ポンプXの駆動によりバラスト水が導入ラインL1を通って導入口15からバラスト水処理装置100に流入すると、バラスト水はフィルタ2内に入り、フィルタ2を通過し濾過処理される。この際、フィルタ回転手段3はフィルタ2を回転させる。これにより、フィルタ2は逆洗浄手段4に対し相対回転する。そして、バラスト水は、ケーシング1とフィルタ2の間に形成される空間に入り、流出口16から流出する。流出したバラスト水は、流出ラインL2を通ってバラストタンク(図示せず)に貯留される。
【0039】
<濾過処理中の洗浄動作>
バラスト水の濾過処理中の洗浄動作は、濾過処理中に連続あるいは間欠的に行われる。具体的には、逆洗浄手段4内部の圧力はフィルタ2の二次圧よりも低いため、排出管44に設置される調整弁を開いておくことで、フィルタ2に付着した異物がフィルタ2の二次側にある濾過後のバラスト水(濃縮水)と一緒にノズル41の開口から吸引され、ノズルパイプ42、集合管43及び排出管44を通って外部へ排出されるようになっている。
【0040】
また、濾過処理中の洗浄の際には、洗浄水噴出手段5が噴出ノズル51a〜51cからフィルタ2に対し洗浄水を噴出させる。これにより、フィルタ2に付着した異物がフィルタ2から剥離し、ノズル41から効果的に除去される。なお、濾過処理中の洗浄では、洗浄水噴出手段5から噴出させる洗浄水として、洗浄水貯留タンク55に貯留された清水ではなく、濾過処理後のバラスト水を用いることも可能である。ただし、この場合は、処理後のバラスト水を洗浄水ライン52へと供給する別ライン(図示せず)を設ける必要がある。
【0041】
<空間洗浄動作>
空間洗浄は、ケーシング1内部のバラスト水が排出された状態で、洗浄水噴出手段5により洗浄流体をフィルタ2に向かって噴出することで行われる。具体的には、まず、バラスト装置のポンプXを停止させるとともに導入ラインL1の開閉弁V1を閉じ、ケーシング1内部に新たなバラスト水が流入しないようにする。この状態で、制御手段10は、排出手段8の排出弁83を開き、排出ライン82を介してケーシング1内部のバラスト水を排出する。そして、排出手段8による排出動作と同時に、制御手段10は、圧縮ガス供給手段6の圧縮ガス供給弁63を開くことで、ケーシング1内部に圧縮ガスを供給(パージ)し、ケーシング1内部を加圧する。この際、圧縮ガスが流出しないよう、流出ラインL2の開閉弁V2及び逆洗浄手段4の排出管44に設けられた調整弁(図示せず)閉じておく。ケーシング1内部を加圧することで、ケーシング1内部に収容されたバラスト水を速やかに排出することができる。
【0042】
そして、制御手段10は、ケーシング1内部のバラスト水が排出された後、洗浄水噴出手段5の上部噴出ノズル弁54a,54b及び下部噴出ノズル弁54cを開き、フィルタ回転手段3によりフィルタ2を回転させながら、洗浄水を噴出ノズル51a〜51cからフィルタ2に向かって噴出させる。これにより、フィルタ2を圧縮ガスがパージされた状態で洗浄することができる。
【0043】
なお、空間洗浄は、フィルタ2への異物の堆積量が増加し、濾過処理中の洗浄動作では異物が除去しきれなくなった際に所定時間行う。空間洗浄のタイミングを決めるため、フィルタ2の一次側の水圧とフィルタ2の二次側の水圧から差圧を検出する差圧検出手段(図示せず)を設けることが好ましい。差圧(フィルタ2の一次側の圧力から二次側の圧力を引いた値)が大きい場合はフィルタ2への異物の堆積量が多くなっていることを示すので、差圧が大きくなったタイミングで空間洗浄を行うのが好適である。そして、空間洗浄が完了すれば、ケーシング1内部にバラスト水を導入し、濾過処理を再開する。
【0044】
ところで、バラスト水処理装置では一般に、濾過処理の終了後、次の濾過処理が開始されるまでの間、ケーシング内部には圧縮ガスがパージされ、ケーシング1内部にバラスト水がない空の状態で保存される。この場合、バラスト水がフィルタ等に付着していると、塩分を含むバラスト水(海水)により、ケーシング内部が腐食するおそれがある。この点、ケーシング上部では重力の作用によりバラスト水は落下して残存しにくいが、ケーシング底部では、バラスト水が残存しやすい。特に、フィルタ2の網と金具の溶接部や、樹脂充填などで表面が覆われている部分は、上述した空間洗浄時にも噴流が当たらないので、腐食が生じるおそれが生じやすい。そこで、本実施形態のバラスト水処理装置100では、制御手段10が、ケーシング1内部の腐食を抑制するため、浄化処理の終了後、以下に示す保管前動作を行う。
【0045】
<保管前動作>
図2は、浄化処理の終了後に行われる保管前動作のタイミングチャートである。濾過処理の終了後、まず、制御手段10は、第1排出工程と、洗浄水噴出工程とを順次行う。洗浄水噴出工程が終了した後は、ケーシング1内部に貯留された洗浄水を排出する第2排出工程が行われる。
【0046】
まず、第1排出工程において、制御手段10は、排出手段8の排出弁83を開くとともに、圧縮ガス供給弁63を開いて圧縮ガスをケーシング1内部に導入する。これにより、ケーシング1内部のバラスト水を排出口81及び排出ライン82を介して排出する。所定時間経過後、又はケーシング1の水位計(図示せず)の計測する水位が0になった後、制御手段10は、第1排出工程を終了し、洗浄水噴出工程を開始する。ただし、水位が0でなくケーシング1内部にバラスト水が残存していても、水位がフィルタ2の下端以下になれば、すなわちバラスト水が概ね排水されたら洗浄水噴出工程を開始するよう設定しても良い。
【0047】
洗浄水噴出工程において、制御手段10は、圧縮ガス供給弁63を閉じるとともに、洗浄水噴出手段5の洗浄水ポンプ53を駆動させ、まず、下部噴出ノズル弁54cを開く。このとき、上部噴出ノズル弁54a,54bは閉じておく。これにより、下部噴出ノズル51cから洗浄水が噴出され、ケーシング1内部に液体がない状態で、主にフィルタ2の下部が洗浄される。なお、この間、制御手段10は、排出弁83を開いておく。これにより、フィルタ2が液体に浸かっていない状態でフィルタ2を洗浄することができる(空間洗浄)。
【0048】
所定時間の経過後、制御手段10は、下部噴出ノズル弁54cを閉じ、上部噴出ノズル弁54bを開く。これにより、洗浄水を噴出するノズルが下部噴出ノズル51cから上部噴出ノズル51bへと切替わり、上部噴出ノズル51bから洗浄水が噴出される。これにより、主にフィルタ2の中央部分が洗浄される。また、上記洗浄水が噴出されるノズルの切替えと同時に、制御手段10は、排出弁83を閉じる。これにより、上部噴出ノズル51bから噴出される洗浄水がケーシング1内部に貯留されるようになる。
【0049】
上記切替からさらに所定時間の経過後、制御手段10は、上部噴出ノズル弁54bを閉じ、上部噴出ノズル弁54aを開く。これにより、洗浄水を噴出するノズルが上部噴出ノズル51bから上部噴出ノズル51aへと切替わり、上部噴出ノズル51aから洗浄水が噴出される。これにより、主にフィルタ2の上部が洗浄される。なお、この間も排出弁83は閉じられており、上部噴出ノズル51aから噴出される洗浄水もケーシング1内部に貯留される。
【0050】
そして、上部噴出ノズル弁54aが開かれてからさらに所定時間の経過後、制御手段10は洗浄水ポンプ53の駆動を停止し、上部噴出ノズル弁54aを閉じる。これにより、洗浄水噴出工程が終了する。上記のように、本実施形態の制御手段10は、下部噴出ノズル51cから洗浄水を噴出する場合にはケーシング1内部に洗浄水を貯留せず、上部噴出ノズル51a,bから洗浄水を噴出する場合にケーシング1内部に洗浄水を貯留するよう制御する。これにより、下部噴出ノズル51cから洗浄水を噴出する場合に、下部噴出ノズル51cが洗浄水に浸かってしまい、洗浄が不十分となることを回避することができる。同時に、上部噴出ノズル51a,51bから噴出された洗浄水をケーシング1内部に貯留することで、噴出後の洗浄水を有効利用することができる。
【0051】
洗浄水噴出工程の終了後は、制御手段10は、排出手段8の排出弁83を開くとともに、圧縮ガス供給弁63を開いて圧縮ガスをケーシング1内部に導入する。これにより、ケーシング1内部に貯留された洗浄水が排出口81及び排出ライン82を介して排出される(第2排出工程)。
【0052】
なお、上記洗浄水噴出工程における「所定時間」とは、例えば20秒であり、フィルタ2に付着した異物を除去するのに必要な時間とされる。
【0053】
上記のように、本実施形態のバラスト水処理装置100では、保管前動作において、制御手段10が、空間洗浄に類似する手順でケーシング1内部を洗浄する。しかしながら、保管前動作では、制御手段10は、上部噴出ノズル弁54a,54bによる洗浄水の噴出の際、すなわち、洗浄水噴出工程の開始から終了までの間の一部の時間において、排出弁83を閉じることで排出手段8による洗浄水の排出を中断する。これにより、ケーシング1内部の少なくとも一部、好ましくはケーシング1内部の下部に洗浄水が一度貯留され、ケーシング1内部に洗浄水が貯留された状態で洗浄水の噴出が継続されることになる。ここで、ケーシング1内部の下部とは、例えば下閉止部14よりも下部であり、また、フィルタ2よりも下部である。このような制御により、ケーシング1底部に残留したバラスト水が洗浄水により希釈され、ケーシング1内部の腐食を抑制することが可能となっている。なお、下閉止部14の近傍に残留するバラスト水を希釈するため、洗浄水を下閉止部14の上方、すなわちフィルタ2の下方の一部が洗浄水に浸かる高さまで洗浄水を貯留することも好適である。
【0054】
また、本実施形態の保管前動作における洗浄水噴出工程では、下部噴出ノズル弁54c、上部噴出ノズル弁54b、上部噴出ノズル弁54aを順次開くことで、洗浄水を噴出するノズルを下部噴出ノズル51c、上部噴出ノズル51b、上部噴出ノズル51aと順次切替えている。このように噴出ノズルを切替えて洗浄水を噴出させることで、全ての噴出ノズルから同時に洗浄水を噴出する場合と比較して、噴射力を向上させることが可能となっている。
【0055】
加えて、本実施形態の洗浄水噴出工程においては、上部噴出ノズル51b,51aから洗浄水を噴出させる際に排出弁83を閉じて洗浄水を貯留させている。すなわち、制御手段10は、洗浄水噴出工程の開始から終了までの間の一部の時間として、洗浄水噴出工程の最後の一部(途中から最後まで)に排出弁83を閉じている。このように、洗浄水噴出工程の後半に洗浄水を貯留することで、洗浄水噴出工程の初期に洗浄水を貯留する場合と比較して綺麗な水を貯留し、ケーシング1底部に残留したバラスト水の希釈をより効果的に行うことが可能となっている。
【0056】
なお、ケーシング内部の特に底部における腐食を抑制するためには、バラスト水の浄化処理の後、ケーシング内部を洗浄水(清水)で満たし、満水状態でバラスト水処理装置を保管することも考えられる。しかしながら、満水保管では、貴重な清水が余分に必要となるうえ、ケーシング外の管路との間の接続部分による異種金属接合による腐食が生じるおそれもある。したがって、バラスト水処理装置100が上述した保管前動作を行うことにより、より好適にケーシング1内部の腐食を抑制することができるのである。
【0057】
3.変形例
なお、本発明は、以下の形態でも実施することができる。
・上記実施形態におけるバラスト水処理装置100は、フィルタ2を逆洗浄手段4に対して相対回転させる構成であったが、これに限らない。すなわち、本発明を、固定されたフィルタ2に対して逆洗浄手段4(ノズル41)が回転する構成のバラスト水処理装置に適用しても良い。また、本発明を、ノズル41及びフィルタ2がともに回転しない構成のバラスト水処理装置に適用することも可能である。
・上記実施形態では、円筒状のフィルタ2の内側が一次側、外側が二次側であった。しかしながら、外側が二次側、内側が一次側となるよう、フィルタ2にバラスト水を流通させても良い。
・上記実施形態では、バラスト水処理装置100の洗浄水噴出手段5が、濾過処理中の洗浄動作時にも空間洗浄時にもフィルタ2に対して洗浄水を噴出する構成であったが、濾過処理中の洗浄動作と空間洗浄とで異なる手段を用いることも可能である。なお、この場合、保管前動作において洗浄水を噴出するのはいずれの手段であっても良い。
・上記実施形態では、洗浄水噴出手段5が3つの噴出ノズル51a〜51cを備えていたが、噴出ノズルの数はこれに限定されるものではない。噴出ノズルの数を1つ又は2つとすることや、4つ以上とすることも可能である。噴出ノズルを複数設ける場合、保管前動作においては、制御手段10は、最も下の噴出ノズル以外のノズルから洗浄水を噴射させる際に、排出弁83を閉じてケーシング1内部に洗浄水を貯留するよう制御することが好ましい。これにより、洗浄水が貯留されることにより最も下の噴出ノズルが洗浄水に浸かった状態で洗浄水を噴出することが回避され、適切に洗浄水を噴出することができる。
・上記実施形態では、保管前動作時にケーシング1内部に洗浄水を供給する洗浄水供給手段として、洗浄水噴出手段5が用いられたが、別構成である洗浄水供給手段によりケーシング1内部に洗浄水を供給しても良い。この際、洗浄水供給手段はフィルタ2に対して洗浄水を噴出する必要はなく、ケーシング1内部に洗浄水が貯留されるよう、ケーシング1内部に洗浄水が供給できさえすれば良い。この場合であっても、洗浄水供給手段によりケーシング1内部に洗浄水を一度貯留させて、再度排出することで、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。なお、別構成である洗浄水供給手段を設ける場合、洗浄水噴出手段5は必須ではない。
・上記実施形態では、洗浄水噴出工程において、制御手段10は、上部噴出ノズル51b,51bから洗浄水を噴出している期間(例えば、20秒)、排出弁83を閉じ、ケーシング1内部に洗浄水を貯留するようにしていた(
図2参照)。しかしながら、排出弁83を閉じる期間は、このような期間に限られるものではない。すなわち、洗浄水噴出工程における任意のタイミングで、排出弁83を閉じ、所定時間の経過後、ケーシング内部の下部まで洗浄水が貯留されたタイミングで再度排出弁83を開くことで、ケーシング1底部に残留したバラスト水が洗浄水により希釈され、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。また、排出弁83を閉じた後、ケーシング1内部に貯留された洗浄水の水位が所定の高さになるまで、排出弁83の閉状態を維持し、当該所定の高さを超えると、制御手段10が排出弁83を開く構成とすることも可能である。水位の所定の高さは、例えば、フィルタ2の下端の位置又は、フィルタ2の下端の位置以下とすることが好ましい。水位をフィルタ2の下端の位置までに抑えることで、洗浄水中を浮遊する汚物がフィルタ2に付着することを抑制することが可能となる。ただし、フィルタ2の下方側の一部が浸かる高さとすることも可能である。
・上記実施形態のバラスト水処理装置100は、保管前動作において制御手段10が洗浄水噴出工程の後に第2排出工程を行うことにより、ケーシング1内部の液体が排出された状態で保管される構成であった。しかしながら、洗浄水噴出工程の終了後にケーシング1内部に残存する液体は洗浄水であり、ケーシング1内部の腐食は起こりにくい状態である。したがって、第2排出工程を省略することも可能である。なお、洗浄水噴出工程後の保管時に洗浄水をケーシング1内部に残存させる場合には、洗浄水噴出工程の開始から終了までの間の一部の時間として、洗浄水噴出工程の最後の一部(途中から最後まで)に排出弁83を閉じることが必要である。
・上記実施形態では、本発明を、船舶で用いられバラスト水を処理するバラスト水処理装置に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、海、河川、湖沼、池等の水、及び工業水等を処理する水処理装置に適用してもよい。さらに、水を処理する水処理装置ではなく、水以外の液体(例えば、油)を処理する液体処理装置に適用することも可能である。