【解決手段】本発明のタイヤは、少なくとも2本の周方向主溝1によって、少なくとも3つの陸部が区画形成され、かつ接地端25を含むタイヤ幅方向最外陸部2の少なくとも一方に、上記接地端25を含むラグ溝21が形成されており、かつ上記ラグ溝21の周囲の少なくとも一部に面取り部23が設けられている、タイヤであって、タイヤ平面視において、上記ラグ溝21のタイヤ幅方向最内部がタイヤ幅方向最外陸部2内にあり、かつ上記面取り部23は、接地端25からタイヤ幅方向内側に向かうにつれて幅が大きくなる部分を含むことを特徴とする。
少なくとも2本の周方向主溝によって、少なくとも3つの陸部が区画形成され、かつ接地端を含むタイヤ幅方向最外陸部の少なくとも一方に、前記接地端を含むラグ溝が形成されており、かつ前記ラグ溝の周囲の少なくとも一部に面取り部が設けられている、タイヤであって、
タイヤ平面視において、
前記ラグ溝のタイヤ幅方向最内部がタイヤ幅方向最外陸部内にあり、かつ
前記面取り部は、接地端からタイヤ幅方向内側に向かうにつれて幅が大きくなる部分を含むことを特徴とする、
タイヤ。
タイヤ子午断面視で、前記ラグ溝がないとした場合のタイヤ表面プロファイルから、前記面取り部のタイヤ径方向最内側位置までのタイヤ径方向の深さは、0.5mm以上3.0mm以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
タイヤ幅方向最外陸部のタイヤ幅方向内側端から前記接地端までのタイヤ幅方向に関する長さを100%としたときに、前記面取り部は、前記タイヤ幅方向内側端から90%以上110%以下の長さの位置にタイヤ幅方向外側の終端を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るタイヤの実施形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1から6)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態及び図面は、本発明を限定するものではない。また、当該実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、当該実施形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0011】
以下の説明において、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、「タイヤ径方向内側」とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、「タイヤ径方向外側」とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。
【0012】
また、「タイヤ周方向」とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいい、タイヤの回転方向が指定されている場合には、タイヤ周方向に関して「踏込み側」とは走行時においてタイヤの陸部が最初に地面と接する側、「蹴り出し側」とは走行時においてタイヤの陸部が最後に地面から離れる側をいう。
【0013】
更に、「タイヤ幅方向」とは上記回転軸と平行な方向をいい、「タイヤ幅方向内側」とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に向かう側、「タイヤ幅方向外側」とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。なお、「タイヤ赤道面」とは、タイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0014】
《基本形態》
以下に、本発明に係るタイヤについて、その基本形態を説明する。なお、以下に示すタイヤは、空気入りタイヤの例である。
【0015】
図1は、発明の基本形態に従うタイヤ100を示すタイヤ子午断面図である。本発明の基本形態に従うタイヤ100は、
図1に示すように、少なくとも2本(同図に示すところでは4本)の周方向主溝1a〜1dによって、少なくとも3つ(同図に示すところでは5つ)の陸部(タイヤ幅方向最外陸部2、タイヤ幅方向中間陸部3、タイヤ幅方向最内陸部4)が区画形成され、かつ接地端25を含むタイヤ幅方向最外陸部2の少なくとも一方に、接地端25を含むラグ溝21が形成されている。なお、
図1では、タイヤ幅方向中間陸部3及びタイヤ幅方向最内陸部4にはラグ溝等を図示していないが、これらの陸部3及び4にも、
図1とはタイヤ周方向において異なるタイヤ子午断面において、適宜ラグ溝等が形成されていてもよい。
【0016】
図2は、
図1に示した本発明の基本形態に従うタイヤについて、
図1の右側に配置されているタイヤ幅方向最外陸部2を含む領域を示す平面図である。本発明の基本形態に従うタイヤは、
図2に示すように、タイヤ平面視において、周方向主溝1aによってタイヤ幅方向最外陸部2とタイヤ幅方向中間陸部3が区画形成されている。そして、タイヤ幅方向最外陸部2にはラグ溝21が形成されている。ここで、ラグ溝21のタイヤ幅方向最内部はタイヤ幅方向最外陸部2内にあり、かつラグ溝21をタイヤ幅方向内側から取り囲むように形成された面取り部23は、接地端25からタイヤ幅方向内側に向かうにつれて幅が大きくなる部分を含む。
【0017】
なお、
図2に示す態様では、ラグ溝21はタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かって、接地端25よりもタイヤ幅方向外側まで延在している。また、同図に示す態様では、面取り部23はラグ溝21のタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ幅方向内側の端部の周囲にわたって形成されており、かつタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ幅方向内側の端部に向かうにつれて幅が増加している。
【0018】
なお、本明細書において、接地幅は以下のように定義する。即ち、本実施形態のタイヤが空気入りタイヤである場合には、接地幅は、規定リムに組み込んで規定内圧を付与し、さらに規定荷重を加えた場合に生じる接地面のタイヤ幅方向最大長さとする。これに対し、本実施形態のタイヤがエアレスタイヤである場合には、接地幅は、車両に装着して規定荷重を加えた場合に生じる接地面のタイヤ幅方向最大長さを意味する。なお、接地端とは、接地面のうちタイヤ幅方向の端を意味する。
【0019】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。さらに、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0020】
なお、本発明の基本形態に従うタイヤにおいて、ラグ溝21の深さ、即ちタイヤ子午断面視で、ラグ溝21及び面取り部23がないとした場合のタイヤ表面プロファイルからラグ溝のタイヤ径方向最内側位置までのタイヤ径方向の深さは、5.6mm以上7.0mm以下とすることができる。また、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤにおいて、ラグ溝21の幅は、7.0mm以上10.0mm以下とすることができる。
【0021】
また、本発明の基本形態に従うタイヤにおいて、面取り部23の深さ、即ちタイヤ子午断面視で、ラグ溝21及び面取り部23がないとした場合のタイヤ表面プロファイルから面取り部23のタイヤ径方向最内側位置までのタイヤ径方向の深さは、0.5mm以上2.5mm以下とすることができる。また、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤにおいて、面取り部23の幅は、0.5mm以上1.5mm以下とすることができる。
【0022】
(作用等)
従来技術において、ラグ溝の周囲に面取り部を形成して排水性を向上させた場合、ラグ溝が形成されている部分の周辺において陸部の体積が減少してブロック剛性が低下することにより、ドライ操安性が低下してしまう問題があった。
【0023】
これに対して、本発明の基本形態に従うタイヤでは、ラグ溝21の周囲の少なくとも一部分に面取り部23を設けることによって排水性を向上させつつ、接地端に向かうにつれて面取り幅が小さくなるように面取り部23を形成している。本発明の基本形態に従うタイヤでは、面取り部23のタイヤ幅方向内側において、面取り幅が広くなっていることによって、ラグ溝21に加えて面取り部23によってもより多くの水を取り込んでラグ溝21のタイヤ幅方向外側に排出することができる。このため、高い排水性が実現され、従ってウェット操安性を改善することができる。加えて、本発明の基本形態に従うタイヤでは、特に接地圧が大きく陸部のブロック剛性によるドライ操安性への影響が大きいラグ溝21の接地端側において、面取り部23の幅が狭くなっている。このため、当該部分の周辺において陸部の体積の減少が抑制されてブロック剛性が維持され、従ってドライ操安性を改善することができる。
【0024】
以上により、本発明の基本形態に従うタイヤでは、ドライ操安性とウェット操安性とがバランス良く改善される。
【0025】
なお、以上に示す、基本形態に係るタイヤが空気入りタイヤである場合、図示しないが、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、タイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れるタイヤの断面形状をいう。基本形態に係る空気入りタイヤは、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部を有する。そして、上記空気入りタイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
【0026】
また、以上に示す基本形態に係る空気入りタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得ることができる。基本形態の空気入りタイヤを製造する場合には、加硫用金型の内壁に、例えば、
図1に示す溝に対応する凸部等を形成し、この金型を用いて加硫を行うことができる。
【0027】
《付加的形態1〜6》
次に、本発明の基本形態に従うタイヤに関して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1〜6を説明する。
【0028】
〈付加的形態1〉
本発明の基本形態に従うタイヤにおいては、ラグ溝21と面取り部23を合わせた幅が、接地端25からタイヤ幅方向内側に向かうにつれて大きくなる部分を含む(付加的形態1)ことが好ましい。
【0029】
ラグ溝21と面取り部23を合わせた幅が、接地端25からタイヤ幅方向内側に向かうにつれて大きくなることにより、ラグ溝21と面取り部23とを合わせた凹形状部分の体積は、タイヤ幅方向最外陸部2のタイヤ幅方向内側において大きく、かつ接地端25周辺において小さくなる。したがって、ラグ溝21のタイヤ幅方向内側において、ラグ溝21と面取り部23とを合わせた凹形状部分によってより多くの水を取り込んでラグ溝のタイヤ幅方向外側に排出することができるため、高い排水性が実現され、従ってウェット操安性を改善することができる。加えて、特に接地圧が大きく陸部のブロック剛性によるドライ操安性への影響が大きいラグ溝の接地端25側において、ラグ溝21と面取り部23とを合わせた凹形状部分が狭くなっているため、当該部分の周辺において陸部の体積の減少が抑制されてブロック剛性が維持され、従ってドライ操安性を改善することができる。
【0030】
〈付加的形態2〉
基本形態又は基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、タイヤ子午断面視で、ラグ溝21がないとした場合のタイヤ表面プロファイルから、面取り部23のタイヤ径方向最内側位置までのタイヤ径方向の深さが0.5mm以上3.0mm以下である(付加的形態2)ことが好ましい。
【0031】
面取り部23のタイヤ径方向最内側位置までのタイヤ径方向の深さを0.5mm以上とすることにより、面取り部23の体積が十分に大きくなり、高い排水性を実現することができ、即ち高いウェット操安性を実現することができる。面取り部23のタイヤ径方向最内側位置までのタイヤ径方向の深さを3.0mm以下とすることにより、面取り部23周辺の陸部の体積が小さくなりすぎず、ブロック剛性の低下をより抑制することができ、即ち高いドライ操安性を実現することができる。
【0032】
なお、タイヤ径方向の深さは、規定内圧を付与した無負荷状態において測定される。
【0033】
〈付加的形態3〉
基本形態又は基本形態に付加的形態1又は2を加えた形態においては、タイヤ幅方向最外陸部2のタイヤ幅方向内側端から接地端25までのタイヤ幅方向に関する長さを100%としたときに、面取り部23は、タイヤ幅方向内側端から90%以上110%以下の長さの位置にタイヤ幅方向外側の終端を有している(付加的形態3)のが好ましい。
【0034】
面取り部23のタイヤ幅方向外側の終端の位置をタイヤ幅方向内側端から90%以上の長さの位置とすることにより、面取り部23がタイヤ接地端からタイヤ幅方向内側に大きく離れた地点で終端しないため、ラグ溝21と面取り部23とを合わせた凹形状部分に取り込まれる水を効率よく接地端25よりもタイヤ幅方向外側に排水させやすくなるため高い排水性を実現することができ、即ち高いウェット操安性を実現することができる。また、面取り部23のタイヤ幅方向外側の終端の位置をタイヤ幅方向内側端から110%以下の長さの位置とすることにより、面取り部23がタイヤ接地端25よりもタイヤ幅方向外側に大きく離れた地点で終端しないため、タイヤ接地端周辺における陸部の体積を大きくすることができ、それによってブロック剛性の低下をより抑制することができ、即ち高いドライ操安性を実現することができる。
【0035】
〈付加的形態4〉
基本形態又は基本形態に付加的形態1〜3の少なくともいずれか一つを加えた形態においては、タイヤの回転方向が指定されており、かつラグ溝21の踏込み側に設けられている踏み込み側面取り部の幅をD
sとし、蹴り出し側に設けられている蹴り出し側面取り部の幅をD
kとしたときに、D
s<D
k<3D
sである(付加的形態4)ことが好ましい。
【0036】
図3は、本発明の付加的形態4に従うタイヤのタイヤ幅方向最外陸部2のラグ溝21の幅方向に沿った断面図である。
【0037】
図3に示す本発明の付加的形態4に従うタイヤにおいて、タイヤ幅方向最外陸部2のうちラグ溝21が形成されている部分では、タイヤ幅方向最外陸部2は、ラグ溝21の左側の陸部2aとラグ溝21の右側の陸部2bに区画されている。
【0038】
ここで、タイヤ幅方向最外陸部2にラグ溝21が形成されていることにより、走行時においてラグ溝21の左側の陸部2aのうちラグ溝21側の部分は、ラグ溝21の左側の陸部2aのうち最後に地面から離れる側になるため、ラグ溝21の左側の陸部2aにおける蹴り出し側となる。同様に、走行時においてラグ溝21の右側の陸部2bのうちラグ溝21側の部分は、ラグ溝21の左側の陸部2bのうち最初に地面と接する側になるため、ラグ溝21の右側の陸部2bにおける踏込み側となる。
【0039】
そして、
図3に示す本発明の付加的形態4に従うタイヤでは、ラグ溝21の左側の陸部2aには蹴り出し側面取り部23kが、ラグ溝21の右側の陸部2bには踏込み側面取り部23sが、それぞれ形成されている。なお、図示しないが、蹴り出し側面取り部23kの幅D
kと踏込み側面取り部23sの幅D
sとは、D
s<D
k<3D
sを満たしている。
【0040】
一般に、蹴り出し側の排水性を向上させる観点からは、蹴り出し側のラグ溝の体積を増加させることが考えられる。しかしながら、蹴り出し側のラグ溝の体積が増加することは、蹴り出し側の陸部の体積を低下させ、当該部分のブロック剛性を低下させることにつながり、ひいてはドライ操安性の低下をもたらしうる。
【0041】
この点に関して、
図3に示す本発明の付加的形態4に従うタイヤでは、ラグ溝21の左側の陸部2aにおける蹴り出し側面取り部23kの幅を踏込み側面取り部23sの幅よりも大きいため、蹴り出し側の排水性を向上させることができる。他方、本発明の付加的形態4に従うタイヤでは、ラグ溝21の左側の陸部2aにおける蹴り出し側面取り部23kの幅を踏込み側面取り部23sの幅の3倍未満とすることで、蹴り出し側の陸部の体積が低下しすぎることを抑制し、それによってブロック剛性の低下を抑制している。
【0042】
これにより、
図3に示す本発明の付加的形態4に従うタイヤでは、高いウェット操安性を実現することができるとともに、高いドライ操安性を実現することができる。
【0043】
〈付加的形態5〉
基本形態又は基本形態に付加的形態1〜4の少なくともいずれか一つを加えた形態においては、タイヤの回転方向が指定されており、かつラグ溝の幅方向に沿った断面視で、タイヤ径方向に対するラグ溝の踏込み側の溝壁とのなす角度をθ
sとし、タイヤ径方向に対するラグ溝の蹴り出し側の溝壁とのなす角度をθ
kとしたときに、θ
s<θ
kである(付加的形態5)ことが好ましい。
【0044】
図4は、本発明の付加的形態5に従うタイヤのタイヤ幅方向最外陸部のラグ溝21の幅方向に沿った断面図である。
【0045】
図4に示すように、に示す本発明の付加的形態5に従うタイヤにおいて、タイヤ幅方向最外陸部2のうちラグ溝21が形成されている部分では、タイヤ幅方向最外陸部2は、ラグ溝21の左側の陸部2aとラグ溝21の右側の陸部2bに区画されている。
【0046】
ここで、タイヤ幅方向最外陸部2にラグ溝21が形成されていることにより、走行時においてラグ溝21の左側の陸部2aのうちラグ溝21側の部分は、ラグ溝21の左側の陸部2aのうち最後に地面から離れる側になるため、ラグ溝21の左側の陸部2aにおける蹴出し側となる。同様に、走行時においてラグ溝21の右側の陸部2bのうちラグ溝21側の部分は、ラグ溝21の左側の陸部2bのうち最初に地面と接する側になるため、ラグ溝21の右側の陸部2bにおける踏込み側となる。
【0047】
図4に示すように、タイヤ径方向の直線L
4とラグ溝21の踏込み側の溝壁21sからの延長線L
3とのなす角度、即ちタイヤ径方向に対するラグ溝21の踏込み側の溝壁21sとのなす角度をθ
sとする。また、
図4に示すように、タイヤ径方向の直線L
6とラグ溝21の蹴出し側の溝壁21sからの延長線L
5とのなす角度、即ちタイヤ径方向に対するラグ溝21の蹴出し側の溝壁21kとのなす角度をθ
kとする。本発明の付加的形態5に従うタイヤでは、角度θ
sと角度θ
kとは、θ
s<θ
kの関係を満たしている。
【0048】
ここで、ラグ溝21の踏込み側の端部を通るタイヤ径方向の直線L
1と、ラグ溝の底面に沿った延長線L
8と、ラグ溝21の踏込み側の溝壁21sとによって囲まれている部分の面積をS
k1とする。また、ラグ溝21の蹴出し側の端部を通るタイヤ径方向の直線L
2と、ラグ溝の底面に沿った延長線L
8と、ラグ溝の蹴出し側の溝壁21kと、によって囲まれている部分の面積をS
s1とする。
図4に示すように、角度θ
sと角度θ
kとが上記関係を満たしている場合、S
k1はS
s1よりも大きくなる。即ち、したがって、ラグ溝21の左側の陸部2aの体積がラグ溝21の右側の陸部2bの体積よりも大きくなる。
【0049】
これにより、ラグ溝21の左側の陸部2aの蹴出し側のブロック剛性を高めることができ、ドライ操安性を向上させることができる。
【0050】
更に、ラグ溝21の踏込み側の端部を通るタイヤ径方向の直線L
2と、ラグ溝21の底面に沿った延長線L
8と、ラグ溝21の踏込み側の溝壁21sと、ラグ溝21及び面取り部23がないとした場合のタイヤ表面プロファイルL
7と、ラグ溝21の中央部分を通るタイヤ径方向の直線L
9とによって囲まれている部分の面積をS
s2とする。また、ラグ溝21の蹴出し側の端部を通るタイヤ径方向の直線L
1と、ラグ溝21の底面に沿った延長線L
8と、ラグ溝21の蹴出し側の溝壁21kと、ラグ溝21及び面取り部23がないとした場合のタイヤ表面プロファイルL
7と、ラグ溝21の中央部分を通るタイヤ径方向の直線L
9とによって囲まれている部分の面積をS
k2とする。
図4に示すように、角度θ
sと角度θ
kとが上記関係を満たしている場合、S
s1はS
k2よりも大きくなる。したがって、ラグ溝21の右側、すなわちラグ溝21の右側の陸部2bの踏込み側の体積は、ラグ溝21の左側、すなわちラグ溝21の左側の陸部2aの踏込み側の体積よりも大きくなる。
【0051】
これにより、ラグ溝21の右側の陸部2aの踏込み側における排水性を高めることができ、ウェット操安性を向上させることができる。
【0052】
〈付加的形態6〉
付加的形態5においては、上記の角度θ
sと上記の角度θ
kとが、2°<θ
k−θ
s<10°の関係を満たす(付加的形態6)ことが好ましい。
【0053】
θ
k−θ
sが2°より大きい場合、S
s1に対してS
k1を十分大きくすることができ、したがって、ラグ溝21の左側の陸部2aの体積を、ラグ溝21の右側の陸部2bの体積と比較して十分に大きくすることができる。これによって、ラグ溝21の左側の陸部2aの蹴出し側のブロック剛性を適度に保つことができる。他方、S
k1に対してS
s1を十分大きくすることができ、したがって、ラグ溝21の右側、すなわちラグ溝21の右側の陸部2bの踏込み側の体積を、ラグ溝21の左側、すなわちラグ溝21の左側の陸部2aの踏込み側の体積と比較して十分に大きくすることができる。これによって、ラグ溝21の右側の陸部2aの踏込み側における排水性を適度に保つことができる。したがって、本発明の付加的形態6に従うタイヤでは、ドライ操安性を向上させつつウェット操安性を向上させることができる。
【実施例】
【0054】
タイヤサイズを255/45R17(JATMAにて規定)とし、トレッド表面に設けられている複数の周方向主溝によって3つの陸部が区画形成され、かつ接地端を含むタイヤ幅方向最外陸部に接地端を含むラグ溝が形成されており、かつラグ溝の周囲の少なくとも一部に面取り部が設けられている、発明例1〜7の空気入りタイヤ及び従来例1の空気入りタイヤを作製した。なお、これらの空気入りタイヤの細部の諸条件については、以下の表1に示すとおりである。
【0055】
このように作製した、発明例1〜7の空気入りタイヤ及び従来例1の空気入りタイヤについて、以下の要領に従い、ドライ操安性及びウェット操安性についての評価を行った。
【0056】
(ドライ操安性についての評価)
各例のタイヤをリムサイズ17×7.0JのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を240kPaに調整し、試験車両としての2.0Lエンジン搭載のFR車の総輪に装着した。
【0057】
そして、平坦な周回路を有するドライ路面のテストコースを、試験車両によって10km/hから180km/hで走行し、テストドライバーがレーンチェンジ時及びコーナリング時における操舵性、及び直進時における安定性についての官能評価を行った。ドライ操安性は、従来例を100とする評点で表示され、その数値が大きいほど優れていることを示す。その結果を表1に併記する。
【0058】
(ウェット操安性についての評価)
各例のタイヤをリムサイズ17×7.0JのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を240kPaに調整し、試験車両としての2.0Lエンジン搭載のFR車の総輪に装着した。
【0059】
そして、平坦な周回路を有するウェット路面のテストコースを、試験車両によって180km/hから停止するまで減速走行し、走行距離の逆数を算出した。ウェット操安性は、従来例を100とする評点で表示され、その数値が大きいほど優れていることを示す。その結果を表1に併記する。
【0060】
【表1】
【0061】
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(即ち、面取り部について改良を加えた)発明例1から発明例7の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属さない、従来例1の空気入りタイヤに比べて、ドライ操安性及びウェット操安性の改善がバランス良く実現されていることが判る。