【実施例】
【0015】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部車体構造を示し、
図1は当該車両の前部車体構造を示す斜視図、
図2は
図1の車両左側の側面図、
図3は
図1のA−A線矢視断面図、
図4(a)は整流部材の拡大断面図、
図4(b)は整流部材の斜視図である。また、
図5は実施例の剥離後の走行風の流れを示す説明図、
図6は
図1の要部拡大図である。
なお、図中、矢印(F)は車両前方を示し、矢印(R)は車両後方を示し、矢印(UP)は車両上方を示す。
【0016】
図1、
図3に示すように、エンジンルームERの上方を覆う外装部材としてのボンネット10(後部外装部材)およびバンパフェースアッパ20(前部外装部材)を設けている。
また、上述のエンジンルームERの前方は、車両前面を構成するバンパフェース30と格子構造のフロントグリル40とで覆われている。上述のフロントグリル40は、車両前部において上記バンパフェースアッパ20の前部下側に配置されている。
【0017】
詳しくは、上記フロントグリル40は、バンパフェース30とバンパフェースアッパ20との間に配置されたものである。
さらに、上述のフロントグリル40の下側から当該フロントグリル40の左右両側部における上下方向中間部にわたって設けられた加飾部材としてのシグネチャウイング(signature wing)50を備えている。
【0018】
また、上述のフロントグリル40の前端よりも車両後方で、かつ、フロントグリル40の車幅方向外側にはヘッドランプユニット60を設けている。
さらに、上述のエンジンルームERの左右の両側方は、フロントフェンダパネル70で覆われている。但し、図面では図示の便宜上、車両左側のフロントフェンダパネル70のみを示している。
【0019】
図3に示すように、上述のボンネット10は、車両上側に位置するボンネットアウタ11と、当該ボンネットアウタ11の下側に位置するボンネットインナ12とを、ヘミング加工により一体化したものである。
【0020】
同図に示すように、ボンネットアウタ11の下面には、接着剤13を用いてボンネットレインフォースメント14が接着固定されており、このボンネットレインフォースメント14によりボンネットアウタ11の張り剛性を確保している。
【0021】
また、ボンネットインナ12の前部内面にはストライカブラケット15を固定しており、このストライカブラケット15には、ボンネットインナ12の開口部16から下方へ突出するようにストライカ17が設けられている。
【0022】
ここで、上述のストライカ17は、車体側のラッチ装置にて係合されるものである。また、上述のボンネット10は当該ボンネット10の後端側がボンネットヒンジにより車体側に取付けられており、ボンネット10の前端側が開閉するように構成されている。
【0023】
図1、
図3に示すように、上述のバンパフェースアッパ20は、左右一対のヘッドランプユニット60における上面の長手方向中間部まで車幅方向に延びるものである。
図3に示すように、このバンパフェースアッパ20は、前低後高状に傾斜した上面部20aと、この上面部20aの前端位置20fから下方に延びる湾曲形状の前面部20bと、この前面部20bの下端から車両後方に延びる下面部20cと、を備えている。また、
図3に示すように、上述のバンパフェースアッパ20における上面部20aの後端位置20dには、下方に段下げ形成された段下げ部20eが一体形成されている。
【0024】
図3に示すように、バンパフェースアッパ20の上面部20aと、ボンネット10のボンネットアウタ11上面とは、車両前方が低く、車両後方が高くなる傾斜状に車両前後方向に滑らかに連続している。
図1に示すように、上述のバンパフェース30(詳しくは、フロントバンパフェース)は、車両前面を構成する主面部31と、この主面部31の車幅方向側部において、フロントフェンダパネル70の前端まで回り込んだラウンド部32と、を備えている。
【0025】
また、同図に示すように、バンパフェース30の下部には、外気導入口33を形成する下部グリル34が形成されている。この下部グリル34は、上下方向に延びる複数の縦棧35と、ライセンスプレート取付け部36と、を備えている。
【0026】
図1、
図3に示すように、上述のバンパフェース30は、上記主面部31の上端からフロントグリル40と対応する部分にかけて、当該フロントグリル40の車両後方に位置するように後退部37が一体形成されている。
そして、
図3に示すように、上述の後退部37の上片部37aにおける後端37bには、取付け部材38を用いて、センタブラケット39が取付けられている。
【0027】
図1、
図2に示すように、上述のフロントグリル40は、上下に隣接して車幅方向に延びる一対の横棧41,41を、車両上下方向に間隔を隔てて複数組設け、一対の横棧41,41の上側の組と下側の組との間に外気導入口42を形成したものである。
【0028】
図2に示すように、上述のフロントグリル40は、上下の横棧41を上下方向に連結する縦棧43を有すると共に、当該フロントグリル40の車幅方向中央上部には、エンブレム44が設けられている。
図3に示すように、上述のフロントグリル40の上端と、バンパフェースアッパ20における上面部20aの前側下面との間には、ラバーシール45が介設されている。
【0029】
図1に示すように、上述のシグネチャウイング50は、バンパフェース30の主面部31と、フロントグリル40下部との間に位置して車幅方向に延びる前面部51と、この前面部51の車幅方向端部からフロントグリル40側部の上下方向中間まで上方に延びる側面部52と、を備えている。
この側面部52は車両下側の車幅方向の寸法が相対的に小さく、車両上側の車幅方向の寸法が相対的に大きくなるテーパ形状に形成されている。
また、
図1に示すように、上述のシグネチャウイング50は、上記側面部52の上端からヘッドランプユニット60の車幅方向内側前面に向けて、車両後方へ略水平に延びる上面部53を備えている。
【0030】
上述のシグネチャウイング50の側面部52および上面部53は、バンパフェースアッパ20に対して当接しない非当接構造に形成されており、シグネチャウイング50の上面部53とバンパフェースアッパ20との間には空間部が形成されている。
【0031】
ところで、
図1に示すように、バンパフェース30のラウンド部32と、フロントフェンダパネル70と、の前輪71と対向する端部には、これらの各部材に連続するようにオーバフェンダ72が設けられている。
また、
図1に示すように、前輪71と対向すべく当該前輪71の前方部におけるバンパフェース30の下部には、空力性能の向上を図るためにデフレクタ(deflector、いわゆる、そらせ板)73が設けられている。
【0032】
さらに、
図1、
図2、
図3に示すように、外装部材としてのバンパフェースアッパ20の下部には、当該バンパフェースアッパ20の車幅方向の略全幅にわたって延びる整流部材80(いわゆる、ノーズブレード)が設けられている。
【0033】
図3、
図4の(a),(b)に示すように、上述の整流部材80は、車幅方向に延びる上片部81と、この上片部81の下方において車幅方向に延びる下片部82と、これら上片部81、下片部82の後端部相互を上下方向に連結して車幅方向に延びる後片部83と、を合成樹脂により一体形成したものである。
【0034】
また、
図3、
図4に示すように、上述の整流部材80における下片部82の前端には、当該前端から下方に延びる前片部84が、車幅方向に延びて一体形成されており、この前片部84の下端には、走行風を剥離する剥離部85が形成されている。
【0035】
すなわち、
図3に示すように、上述の整流部材80はその前端が外装部材であるバンパフェースアッパ20(特に、その前端位置20f参照)から下方に延びており、当該整流部材80の下端に走行風を剥離する剥離部85が形成されたものである。
【0036】
これにより、
図5に示すように、車両前方から流れてくる走行風をバンパフェース30に当てた後、バンパフェースアッパ20の下端よりも下方において、車両下側から車両上側に向かう走行風の流れe1を、上記剥離部85に当てて剥離する。剥離部85で剥離した風e2を、バンパフェースアッパ20の上面部20aに回り込ませ、バンパフェースアッパ20の上面部20aに再付着した後の風e3を、当該上面部20aおよびボンネット10のボンネットアウタ11上面に沿わせて車両後方に流す。以て、空力性能を確保するように構成したものである。
【0037】
図4の(a),(b)に示すように、上述の整流部材80における上片部81の前端面から下面にかけて補強用のリブ86が一体形成されている。
同図に示すように、上記リブ86は上片部81の車幅方向に所定間隔を隔てて複数設けられている。
【0038】
図3、
図4に示すように、上述の整流部材80は、外装部材としてのバンパフェースアッパ20の下面部20cを車両上下方向に挟持して取付けられている。この実施例では、バンパフェースアッパ20の下面部20cを、整流部材80の複数のリブ86の下面と、下片部82の上面との間で、車両上下方向から挟持して取付けている。
【0039】
これにより、整流部材80の前片部84に走行風が当たった際、前片部84を下方に押し下げる方向の力が作用することで、当該整流部材80にはバンパフェースアッパ20の下面部20cを下方に下げる方向の力が作用し、車両走行時において、バンパフェースアッパ20が外れるのを防止すべく構成している。
【0040】
ところで、
図2、
図6に示すように、車両側面視で、上述のフロントグリル40には、当該フロントグリル40の前端側から上述のヘッドランプユニット60の車幅方向の内側に向けて上下方向に傾斜した傾斜部、具体的には、第1傾斜部46と第2傾斜部47とが設けられている。
【0041】
すなわち、
図6に拡大図で示すように、フロントグリル40の車幅方向側方において、一対の横棧41,41のうちの上側の横棧41には、車両側面視で当該フロントグリル40前端側から車両後方に向けて車両上方に傾斜する第1傾斜部46を一体形成している。
【0042】
また、フロントグリル40の車幅方向側方において、一対の横棧41,41のうちの下側の横棧41には、車両側面視で当該フロントグリル40前端側から車両後方に向けて車両下方に傾斜する第2傾斜部47を一体形成している。
ここで、上述の一対の横棧41,41は、上下に隣接しているので、後上に延びる第1傾斜部46と、後下に延びる第2傾斜部47と、の車両側面視形状は、車両後方側が開放された横向きのV字形状となる。
【0043】
また、上述の第1傾斜部46の後端には、車両後方に向けて略水平に延びる第1エクステンション部48を一体連設している。同様に、上述の第2傾斜部47の後端にも、車両後方に向けて略水平に延びる第2エクステンション部49を一体連設している。
図2、
図6に示すように、上述の第1エクステンション部48と第2エクステンション部49とは、互いに平行に形成されている。
【0044】
上述の傾斜部としての第1傾斜部46および第2傾斜部47を設けることで、
図6に示すように、車両の前方からの空気(走行風)の流れe4を、上述の第1傾斜部46、第2傾斜部47に当てることで、車両前後方向にずれた位置に、複数の小さな渦e5,e6が発生する。
この小さな渦e5,e6はエネルギが小さいので、車体側面流に及ぼす影響が少なく、当該車体側面流の乱れを抑制して、空力性能を確保すべく構成したものである。
【0045】
図8は従来の車両の前部車体構造を示す部分拡大図であり、説明の便宜上、
図8において
図6と同一の部分には、同一符号を付している。
図8に示す従来構造の加飾部材としてのシグネチャウイング90は、バンパフェース30の主面部31と、フロントグリル40下部との間に位置して車幅方向に延びる前面部(図示せず)と、この前面部の車幅方向端部からフロントグリル40側部を上方に延びる側面部92と、を備えている。
【0046】
そして、
図8に示すように、従来構造のシグネチャウイング90の上記側面部92の上端は、バンパフェースアッパ20の車幅方向外端下部と当接している。
この場合、
図8に示すように、車両前方からの空気(走行風)e4が、シグネチャウイング90における側面部92の車幅方向内端部92aに当たると、大きな渦e7が発生する。
この大きな渦e7はエネルギが大きいので、車体側面流に及ぼす影響が大きく、当該車体側面流の乱れが発生して、空力性能が悪化するものである。
【0047】
これに対して、この実施例のフロントグリル40は、
図6に示すように、当該フロントグリル40の側方において、複数の傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47参照)を備えており、これら複数の傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)は、車両前方から車両後方に向けて車両上方または車両下方に傾斜するものである。
【0048】
これにより、
図6に示すように、車両上方または車両下方に傾斜する複数の傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)により、複数の小さな渦e5,e6を発生させて、車両側部の空気抵抗を改善すべく構成したものである。
【0049】
さらに、
図6に示すように、上記第1傾斜部46は、車両側面視でフロントグリル40の前端側から車両後方に向けて車両上方に傾斜する一方、上記第2傾斜部47は、車両側面視でフロントグリル40の前端側から車両後方に向けて車両下方に傾斜している。
【0050】
これにより、
図6に示すように、上述の第1傾斜部46と上述の第2傾斜部47とで、異なる向きの複数の小さな渦e5,e6が発生し、異なる向きの渦e5,e6同士が干渉することにより、さらに小さい渦となり、この結果、車体側面流に及ぼす影響をより一層僅少にすべく構成したものである。
さらにまた、
図6に示すように、上述の第1傾斜部46および第2傾斜部47の角度、詳しくは、これら各傾斜部46,47の仮想水平線に対する開き角度は、10度〜20度の範囲内に設定されている。
【0051】
このように、上述の第1傾斜部46および第2傾斜部47の角度を最適な角度範囲(車両水平面に対して10度〜20度)に特定することで、フロントグリル40側方の空気の流れ(車体側面流)が乱れることを防止すべく構成したものである。
因に、傾斜部の角度が10度未満の場合には、渦それ自体が発生しない一方で、傾斜部の角度が20度を超過する場合には、走行風が当該傾斜部に当たった際、大きい渦が発生するので好ましくない。
【0052】
図7は車両の前部車体構造の他の実施例を示す部分拡大側面図である。
図7で示すこの実施例においては、フロントグリル40の車幅方向側方において、一対の横棧41,41の上側および下側の各横棧41,41には、車両側面視で当該フロントグリル40の前端側から車両後方に向けて車両上方に傾斜する第1傾斜部46を一体形成している。
すなわち、
図7の実施例においては、
図2の実施例の第2傾斜部47が存在しないものである。
【0053】
さらに、
図7に示すように、この実施例では、第1傾斜部46の後端から、当該第1傾斜部46の延長線方向に沿って車両後方に延びる複数の第1エクステンション部48Eを設けている。
そして、上述の各第1傾斜部46および第1エクステンション部48Eを、互いに平行になるように形成している。
また、
図7に示すこの実施例においても、上記第1傾斜部46の傾斜角度、詳しくは、当該第1傾斜部46の仮想水平線に対する開き角度を、10度〜20度の範囲内に設定している。
【0054】
このように構成しても、小さい渦e5,e6の相互干渉以外の点については、
図1〜
図6で示した先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、
図7において前図(特に、
図2)と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0055】
さらに、他の実施例として図示はしないが、フロントグリル40の車幅方向側方において、一対の横棧41,41の上側および下側の各横棧41,41に、車両側面視で当該フロントグリル40の前端側から車両後方に向けて車両下方に傾斜する第2傾斜部47を一体形成してもよい。この場合には、上記第2傾斜部47の後端から、当該第2傾斜部47の延長線方向に沿って車両後方に延びる複数の第2エクステンション部を互いに平行になるように形成するとよい。さらに、この場合においても、第2傾斜部47の傾斜角度は、10度〜20度の範囲内に設定されるものである。
【0056】
このように、上記実施例の車両の前部車体構造は、車両前方に設けられたフロントグリル40と、上記フロントグリル40下側に車幅方向に沿って設けられた加飾部材としてのシグネチャウイング50と、上記フロントグリル40の前端よりも車両後方で、かつ当該フロントグリル40の車幅方向外側に設けられたヘッドランプユニット60と、を備えた車両の前部車体構造であって、車両側面視で、上記フロントグリル40には、当該フロントグリル40前端側から上記ヘッドランプユニット60の車幅方向内側に向けて車両上下方向に傾斜した傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47参照)が設けられたものである(
図1、
図2、
図6参照)。
【0057】
この構成によれば、車両前方からの空気の流れe4を上記傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)に当てることで、車両前後方向にずれた位置に、複数の小さな渦e5,e6が発生し、この小さな渦e5,e6はエネルギが小さいので、車体側面流に及ぼす影響が少なく、当該車体側面流の乱れを抑制して、空力性能を確保することができる。
【0058】
また、この発明の一実施形態においては、上記フロントグリル40は、複数の上記傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)を備えており、上記複数の傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)は、車両上方または車両下方の何れか一方に傾斜するものである(
図2、
図7参照)。
【0059】
この構成によれば、車両上方または車両下方の何れか一方に傾斜する複数の傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)により、複数の小さな渦e5,e6を発生させて、車両側部の空気抵抗を改善することができる。
【0060】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記フロントグリル40は、車両側面視で当該フロントグリル40前端側から車両後方に向けて車両上方に傾斜する第1傾斜部46と、車両下方に傾斜する第2傾斜部47とを備えたものである(
図2、
図6参照)。
【0061】
この構成によれば、上述の第1傾斜部46と上述の第2傾斜部47とで、異なる向きの複数の小さな渦e5,e6が発生し、異なる向きの渦e5,e6同士が干渉することで、さらに小さい渦となるため、車体側面流に及ぼす影響がさらに僅少となる。
加えて、この発明の一実施形態においては、上記傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)の角度は、車両水平面に対して10度〜20度の範囲内に設定されたものである(
図2、
図6、
図7参照)。
【0062】
この構成によれば、傾斜部(第1傾斜部46、第2傾斜部47)の角度を最適な角度範囲に特定することで、フロントグリル40側方の流れ(車体側面流)が乱れることを防止することができる。
因に、傾斜部の角度が10度未満の場合には、渦それ自体が発生しない。逆に、傾斜部の角度が20度を超過する場合には、当該傾斜部走行風が当たって大きい渦が発生するので好ましくない。
【0063】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の加飾部材は、実施例のシグネチャウイング50に対応し、
以下同様に、
傾斜部は、第1傾斜部46と第2傾斜部47とのうちの少なくとも何れか一方に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。