【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 馬淵みちる,他3名,「コンクリートの表面特性に及ぼす新型ハイブリッド被膜養生剤の影響に関する研究」,令和元年度土木学会全国大会第74回年次学術講演会 DVD版講演概要集,公益社団法人 土木学会,2019年8月1日 〔刊行物等〕 馬淵みちる,他3名,「コンクリートの表面特性に及ぼす新型ハイブリッド被膜養生剤の影響に関する研究」,令和元年度土木学会全国大会第74回年次学術講演会,公益社団法人 土木学会,2019年9月3日(発明を発表した日)
【解決手段】コンクリート表面にシラン系表面含浸材を含浸させ、次いで、該シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面を、シリコーン変性フッ素樹脂を含む液状撥水剤で塗装して塗膜を形成させることを含むコンクリートの養生方法であって、前記シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面は、水の接触角が50°以下であることを特徴とするコンクリートの養生方法である。
コンクリート表面にシラン系表面含浸材を含浸させ、次いで、該シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面を、シリコーン変性フッ素樹脂を含む液状撥水剤で塗装して塗膜を形成させることを含むコンクリートの養生方法であって、前記シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面は、水の接触角が50°以下であることを特徴とするコンクリートの養生方法。
前記塗膜が、ハイドロカルマイト及びハイドロタルサイトからなる群より選択される塩分吸着剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンクリートの養生方法。
シラン系表面含浸材が含浸してなるコンクリート表面を有し、該コンクリート表面上にシリコーン変性フッ素樹脂を含む液状撥水剤から形成された塗膜を備えるコンクリートであって、前記シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面は、水の接触角が50°以下であることを特徴とするコンクリート。
JIS K5600−7−7:2008「塗膜の長期耐久性 促進耐久性および促進耐光性(キセノンランプ法)」に準拠し、以下の暴露試験及び吸水性試験から求められる吸水率が3.0質量%未満であることを特徴とする請求項7に記載のコンクリート。
(暴露試験)
放射照度:180W/m2(キセノンアークランプ)
暴露方法:方法1(紫外域および可視域で水平面全天放射の分光分布に一致させる)、温度38±3℃、連続運転、試験片ぬれサイクル:ぬれ時間 3分、乾燥時間 117分の繰り返し(ぬれ時間においては降雨と照射を行い、乾燥時間では照射を行う)、相対湿度40〜60%
暴露期間:4600時間
(吸水性試験)
暴露試験後のコンクリートを40℃で24時間乾燥した後、20℃の水中で24時間吸水させる。
(吸水率)
暴露試験後のコンクリートの40℃で24時間乾燥した後の質量(W1)と20℃の水中で24時間吸水した後の質量(W2)で、[(W2−W1)/W1×100質量%で吸水率を求める。
シラン系表面含浸材による含浸処理前のコンクリートの質量(W1)と、W1測定後に温度20℃、相対湿度60%の室内で4週間乾燥し、更に20℃の水中で4週間吸水させた後に測定されるコンクリートの質量(W2)について、[(W2−W1)/W1]×100で求められる質量%が1.0質量%未満であることを特徴とする請求項7又は8に記載のコンクリート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のコンクリートの養生方法を詳細に説明する。本発明のコンクリートの養生方法は、コンクリート表面にシラン系表面含浸材を含浸させ、次いで、該シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面を、シリコーン変性フッ素樹脂を含む液状撥水剤で塗装して塗膜を形成させることを含むコンクリートの養生方法であって、前記シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面は、水の接触角が50°以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明のコンクリートの養生方法においては、コンクリート表面にシラン系表面含浸材を含浸させる(含浸工程)。コンクリートは多孔質構造であることから、該コンクリート表面にシラン系表面含浸材を含浸させる技術などを適用することで、水、酸素、二酸化炭素、塩化物イオン等の劣化因子の侵入を抑制することが好ましい。
本発明のコンクリートの養生方法は、上記含浸工程によりシラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面を更に液状撥水剤で塗装することによって、コンクリート内の水分逸散を抑制する効果(養生効果)と共に、劣化因子の侵入を抑制する効果を発揮することができ、コンクリートの耐久性を向上させることができる。
【0023】
コンクリートは、セメント、水、細骨材、粗骨材及び必要に応じて加える混和材料を構成材料とし、これらを練り混ぜその他の方法によって混合したもの、又は硬化させたものと定義され、本明細書においては、まだ固まらない状態にあるコンクリート(具体的には、構成材料を練り混ぜてから、型枠内に打ち込まれて、凝結に至るまでの状態にあるコンクリート)をフレッシュコンクリートなどと称し、凝結後、硬化に至るまでのコンクリートを硬化コンクリート又はコンクリート硬化体などと称する。
【0024】
本発明のコンクリートの養生方法においては、コンクリートの養生効果の観点から、脱枠後の硬化コンクリートの表面にシラン系表面含浸材を含浸させる。なお、シラン系表面含浸材は、脱枠後、すぐに塗布してもよいし、一定の期間(例えば1〜28日程度)空けてから塗布してもよい。
【0025】
本発明のコンクリートの養生方法において、コンクリートの構成材料は、特に制限されるものではない。セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、混合セメント(例えば高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、アルミナセメント等が使用できる。骨材(細骨材や粗骨材)としては、例えば、砂、砂利、砕砂、砕石、スラグ骨材、再生骨材、軽量骨材等が使用できる。また、混和材料としては、例えば、天然ポラゾン混和材、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、膨張材、ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂、混和剤、AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化剤、防錆剤、急結剤、硬化促進剤、凍結遅延剤等が使用できる。
【0026】
コンクリートは、補強されたコンクリートであってもよい。ここで、補強されたコンクリートは、通常、鋼材や短繊維などの補強材で補強されものであり、例えば、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、プレストレスコンクリート、短繊維補強コンクリート等が挙げられる。本発明のコンクリートの養生方法は、劣化因子の侵入抑制効果に優れることから、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート等の鋼材で補強されたコンクリートである場合に特に有効である。
【0027】
コンクリートの用途としては、例えば、高架橋、橋梁、橋脚、橋台、橋桁、床版、高欄、ドルフィン、トンネル、道路、導水路、貯蔵槽、壁、建物等の各種構造物やその部材等が挙げられる。
【0028】
また、コンクリートと異なり、粗骨材を構成材料に含まないもの、具体的には、セメント、水、細骨材及び必要に応じて加える混和材料を構成材料とし、これらを練り混ぜその他の方法によって混合したもの、又は硬化させたものは、モルタルと定義されている。本発明のコンクリートの養生方法は、特に制限されることなく、コンクリートに代えてモルタルに適用することもでき、コンクリートである場合と同様の効果を発揮することが可能である。
【0029】
本発明のコンクリートの養生方法において、シラン系表面含浸材は、アルコキシシランを含む表面含浸材であり、下記式(1):
R
1nSi(OR
2)
4-n (1)
(ここで、R
1は、炭素数1〜8のアルキル基であり、R
2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、nは、1又は2の整数である)で表されるアルキルアルコキシシランを含むことが好ましい。上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランは、上記含浸工程によりコンクリートの表層内部に浸透し、コンクリート内で加水分解・縮合反応を起こし、コンクリートの表層内部にアルコキシシランがシロキサン結合により結合してなる層を形成することができる。
【0030】
本明細書においては、上記シラン系表面含浸材により形成される層をシラン系表面含浸層とも称する。このシラン系表面含浸層は、劣化因子の侵入抑制効果を付与できる層であるが、本発明のコンクリートの養生方法においては、液状撥水剤から形成される塗膜(撥水層ともいう)のコンクリート表面への付着性を向上させる観点から好適である。
コンクリートの養生においては、コンクリート中の水分蒸発を抑制することで、コンクリート中のセメントの水和反応が長時間にわたり続き、コンクリートを緻密性の高いものとすることができ、それにより、外部からの劣化因子が侵入し難く、コンクリートの耐久性を向上させることができる。本発明のコンクリートの養生方法によれば、コンクリート表面への撥水層の優れた付着性によって、養生効果を向上させ、延いてはコンクリートの耐久性を向上できるものと推測される。実際、本発明のコンクリートの養生方法は、同一の液状撥水剤でコンクリート表面を直接塗装した場合(シラン系表面含浸材を用いずに塗装した場合)と比較して、養生効果や劣化因子の侵入抑制効果を改善できるため、コンクリートの耐久性を大幅に向上させることができる。
【0031】
上記式(1)において、R
1は、炭素数1〜8のアルキル基であり、炭素数4〜8のアルキル基であることが好ましい。ここで、アルキル基は、直鎖でも枝分れ鎖でもよく、具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。また、アルキル基は、ハロゲン、グリシジル基、グリシジルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の置換基で置換されていてもよい。上記式(1)においてnが2である場合、2つのR
1は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0032】
上記式(1)において、R
2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。ここで、アルキル基は、直鎖でも枝分れ鎖でもよく、具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。また、アルキル基は、ハロゲン等の置換基で置換されていてもよい。上記式(1)において、複数のR
2は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0033】
上記式(1)において、nは1又は2の整数であり、1であることが好ましい。
【0034】
上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランは、その一部が加水分解縮合物として存在している場合もある。本発明のコンクリートの養生方法においては、加水分解縮合物が存在する場合であっても、アルキルアルコキシシランをコンクリート表層内部に浸透させる観点から、加水分解縮合物の割合は低いことが好ましい。
【0036】
上記シラン系表面含浸材中において、上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランの含有量は、20〜100質量%であることが好ましく、50〜99質量%がより好ましく、80〜98質量%がより好ましい。なお、この含有量は、上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランの加水分解縮合物が存在している場合、上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランとその加水分解縮合物の合計の含有量である。
【0037】
上記シラン系表面含浸材中においては、上記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランの他に、重量平均分子量が400〜6000のシリコーンオリゴマーが含まれていてもよい。上記シリコーンオリゴマーが含まれることにより、コンクリート表面が緻密化しやすくなり、耐久性をより高めることができる。尚、シリコーンオリゴマーの重量平均分子量は400〜6000の範囲であることが好ましいが、400〜3000の範囲であることがより好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
上記シリコーンオリゴマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学工業社の「KC89」(重量平均分子量400)、「KR500」(重量平均分子量1000)、「X−40−9225」(重量平均分子量3000)、「X−40−9246」(重量平均分子量6000)等が挙げられる。
上記シラン系表面含浸材中においては、上記シリコーンオリゴマーの含有量は、粘度の観点も考慮し、10質量%以下であることが好ましく、1〜7質量%であることがより好ましい。
【0038】
上記シラン系表面含浸材は、溶媒を含むことができる。溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類(ラクトンを含む)、窒素含有化合物(アミド、ラクタムなど)、硫黄含有化合物、炭化水素(脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素など)等の各種溶媒が使用でき、これら溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。上記シラン系表面含浸材中において、溶媒の含有量は、例えば75質量%以下である。
【0039】
上記シラン系表面含浸材は、硬化触媒を含んでいてもよい。硬化触媒を用いることで、アルコキシシランの縮合反応を促進させることができる。硬化触媒としては、公知のものを使用することができるが、中でも有機金属触媒を用いることが好ましい。有機金属触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、トリブチル錫ジラウレート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムキレート化合物、ジブチル錫ジアセチルアセトナート等の有機金属化合物が挙げられる。なお、硬化触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記シラン系表面含浸材中において、硬化触媒の含有量は例えば1.0質量%以下である。
【0040】
上記シラン系表面含浸材には、その他の成分として、他のアルコキシシラン、硬化剤、表面調整剤、乳化剤、pH調整剤、防錆剤、消泡剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。上記シラン系表面含浸材は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【0041】
上記シラン系表面含浸材は、10〜500mPa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度はB型粘度計を用い、液温を23℃に調整した後測定される。
【0042】
上記シラン系表面含浸材は、塗装手段等によってコンクリート表面に含浸させることができる。塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装、コテ塗装、ヘラ塗装等が利用できる。本発明のコンクリートの養生方法において、コンクリート表面へのシラン系表面含浸材の塗布量は、50〜500g/m
2であることが好ましい。なお、複数回に分けて塗布を行う場合は、上記塗布量は合計の塗布量を意味する。
【0043】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面は、水の接触角が50°以下であることが好ましく、30°以下であることが更に好ましい。このような接触角は、コンクリート表面上に形成されるシラン系表面含浸層の程度を示す指標となる。例えば、含浸材で処理されていない通常のコンクリート表面における水の接触角(通常、35〜50°)と同程度の値か、それ以下であれば、シラン系表面含浸層はコンクリート表層内部に形成されていることが示唆される。本発明のコンクリートの養生方法においては、シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面の水に対する接触角を50°以下にすることで、シラン系表面含浸層による撥水作用を抑え、液状撥水剤から形成される塗膜(撥水層)の優れた付着性を確保することができる。
【0044】
本明細書において、水の接触角は、コンクリート表面に2mlの蒸留水を滴下し、20℃の雰囲気下で1分経過した後に測定される水の接触角である。測定装置には、接触角測定装置(具体的には協和界面化学株式会社CA−X)を使用できる。
また、シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面については、コンクリート及びシラン系表面含浸層を硬化させたものに対して水の接触角の測定が行われる。
【0045】
本発明のコンクリートの養生方法においては、上記含浸工程によりシラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面を、シリコーン変性フッ素樹脂を含む液状撥水剤で塗装して塗膜を形成させる(塗装工程)。コンクリート表面に撥水層を形成させることで、水、酸素、二酸化炭素、塩化物イオン等の劣化因子の侵入を抑制することができる。特に、コンクリート表面に撥水性を与えることで、コンクリート表面に塩水が吸着しにくく、コンクリート内部への侵入を抑え、コンクリートの耐久性を向上させることができ、また、コンクリート表面に対する雨水の洗浄効果も得られることから、コンクリートの美観を維持することができる。また、本発明のコンクリートの養生方法によれば、シリコーン変性フッ素樹脂を含む液状撥水剤から形成される塗膜(撥水層)によって、コンクリートに優れた養生効果及び劣化因子の侵入抑制効果を付与することができる。これは、シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面に対する撥水層の優れた付着性によって達成されるものと推測される。
【0046】
本発明のコンクリートの養生方法において、液状撥水剤は、シリコーン変性フッ素樹脂を含む。フッ素樹脂は紫外線等に強く劣化しにくい樹脂であるが、本発明においてはそのシリコーン変性部分により、撥水性を付与し、更にはシラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面に対する付着性を改善することができる。
【0047】
シリコーン変性フッ素樹脂は、通常、フッ素樹脂を構成するような繰り返し単位からなるブロックと、シリコーン樹脂を構成するような繰り返し単位からなるブロックとを有する樹脂であり、例えば、フッ素含有モノマーと、必要に応じて他のモノマーとを重合させて得られる重合体に、ケイ素含有モノマーと、必要に応じて他のモノマーとをグラフト重合させたり、シリコーン重合体を付加させたりすることによって合成できる。
また、上記シリコーン変性フッ素樹脂には、水酸基や酸性基、アミノ基、エポキシ基等の反応性官能基を付与させてもよく、液状撥水剤には、これらの反応性官能基と反応し、架橋する硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネートやポリアミン等を挙げることができる。このような反応性官能基を有するシリコーン変性フッ素樹脂と硬化剤を含む液状撥水剤を用いることにより、耐久性をより高めることができる。
【0048】
上記液状撥水剤中において、シリコーン変性フッ素樹脂の含有量は、10〜60質量%であることが好ましい。また、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜中において、シリコーン変性フッ素樹脂の含有量は、50〜100質量%であることが好ましい。
【0049】
上記液状撥水剤は、溶媒を含む。溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類(ラクトンを含む)、窒素含有化合物(アミド、ラクタムなど)、硫黄含有化合物、炭化水素(脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素など)等の各種溶媒が使用でき、これら溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。上記液状撥水剤中において、溶媒の含有量は、10〜90質量%であることが好ましい。なお、本明細書において「液状撥水剤」とは、シリコーン変性フッ素樹脂が溶媒中に溶解している状態を意味する。
【0050】
上記液状撥水剤は、無水系液状撥水剤であることが好ましい。無水系液状撥水剤とは、溶媒として水を使用しない、即ち溶媒が有機溶剤のみからなる液状撥水剤を意味する。溶媒が有機溶剤であれば、撥水剤中の樹脂量を増加させることが可能であり、コンクリート中の水分蒸発を抑制する効果を更に向上させることができる。
【0051】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜(撥水層)は、シリコーン変性フッ素樹脂を含むものであるが、更に、塩分吸着剤を含むことが好ましい。塩分吸着剤は、塩化物イオンを捕集(吸着)することが可能であるため、コンクリート内への塩化物イオンの侵入抑制効果を向上させることができる。塩分吸着剤としては、ハイドロカルマイト及びハイドロタルサイト等が好適に挙げられる。これら塩分吸着剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。上記撥水層中において、塩分吸着剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0052】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜(撥水層)は、更に着色顔料を含んでもよい。上記撥水層に使用できる着色顔料としては、特に限定されるものではなく、塗料業界において通常使用されている顔料を使用できる。具体例としては、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料や、フタロシアニン銅、アゾ系顔料、縮合多環式顔料等の有機顔料が挙げられる。なお、着色顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜(撥水層)は、更に、防錆顔料、体質顔料、光輝顔料等の他の顔料を含むこともできる。上記撥水層に使用できる顔料としては、特に限定されるものではなく、塗料業界において通常使用されている顔料を使用できる。具体例としては、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料、亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ハイドロカルマイト等の防錆顔料、アルミニウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、ステンレス、ガラスフレーク等の光輝顔料等が挙げられる。これら顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記撥水層中に含まれる顔料の総量は、例えば10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
【0055】
本発明のコンクリートの養生方法において、撥水層中に塩分吸着剤等の他の成分を配合する場合は、例えば、液状撥水剤と、必要に応じて適宜選択される成分とを混合し、得られた混合物を用いてコンクリート表面を塗装すればよい。なお、その際に、上記塩分吸着剤や顔料の他、他の樹脂、溶媒、分散剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、硬化促進剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0056】
上記液状撥水剤又はそれと他の成分との混合物は、フォードカップ#4で5〜30秒の粘度であることが好ましい。なお、本発明において、粘度は液温を23℃に調整した後測定される。
【0057】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記液状撥水剤又はそれと他の成分との混合物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装、コテ塗装、ヘラ塗装等が利用できる。液状撥水剤又はそれと他の成分との混合物の塗布量は、50〜300g/m
2であることが好ましい。なお、複数回に分けて塗布を行う場合は、上記塗布量は合計の塗布量を意味する。また、液状撥水剤又はそれと他の成分との混合物による塗装は、優れた養生効果を早い段階で確保する観点から、含浸工程が完了した後、あまり期間を置かずに行うことが好ましく、本発明のコンクリートの養生方法においては、指触乾燥後に行うことも可能である。
【0058】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜(撥水層)は、膜厚が10〜100μmであることが好ましい。
【0059】
本発明のコンクリートの養生方法において、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜(撥水層)は、コンクリート表面に撥水性を付与する観点から、水の接触角が90°以上であることが好ましく、90〜130°であることが更に好ましい。上述のとおり、コンクリート表面(具体的には撥水層表面)に2mlの蒸留水を滴下し、20℃の雰囲気下で1分経過した後の水の接触角が測定される。
【0060】
本発明のコンクリートの養生方法によれば、養生効果を向上できると共に、水、酸素、二酸化炭素、塩化物イオン等の劣化因子の侵入を抑制することができ、延いては耐久性に優れるコンクリートを製造することができる。このため、本発明のコンクリートの養生方法によれば、二酸化炭素の侵入を抑制する中性化防止性能、塩化物イオンの侵入を抑制する塩害防止性能、アルカリ骨材反応を抑制する吸水防止性能などに優れるコンクリートを製造することができる。
【0061】
次に、本発明のコンクリートを詳細に説明する。本発明のコンクリートは、シラン系表面含浸材が含浸してなるコンクリート表面を有し、該コンクリート表面上にシリコーン変性フッ素樹脂を含む液状撥水剤から形成された塗膜を備えるコンクリートであって、前記シラン系表面含浸材が含浸したコンクリート表面は、水の接触角が50°以下であることを特徴とする。
【0062】
本発明のコンクリートは、その表層内にシラン系表面含浸材層が形成され、そのコンクリート表面上にシリコーン変性フッ素樹脂を含む撥水層を備えることから、耐久性に優れるコンクリートであって、例えば二酸化炭素の侵入を抑制する中性化防止性能、塩化物イオンの侵入を抑制する塩害防止性能、アルカリ骨材反応を抑制する吸水防止性能などに優れるコンクリートである。
【0063】
本発明のコンクリートは、JIS K 5600−7−7:2008「塗膜の長期耐久性 促進耐久性および促進耐光性(キセノンランプ法)」に準拠し、以下の暴露試験及び吸水性試験から求められる吸水率が3.0質量%未満であることが好ましい。
(暴露試験)
放射照度:180W/m
2(キセノンアークランプ)
暴露方法:方法1(紫外域および可視域で水平面全天放射の分光分布に一致させる)、温度38±3℃、連続運転、試験片ぬれサイクル:ぬれ時間 3分、乾燥時間 117分の繰り返し(ぬれ時間においては降雨と照射を行い、乾燥時間では照射を行う)、相対湿度40〜60%
暴露期間:4600時間
(吸水性試験)
暴露試験後のコンクリートを40℃で24時間乾燥した後、20℃の水中で24時間吸水させる。
(吸水率)
暴露試験後のコンクリートの40℃で24時間乾燥した後の質量(W1)と20℃の水中で24時間吸水した後の質量(W2)で、[(W2−W1)/W1×100質量%で吸水率を求める。
【0064】
本発明のコンクリートは、JSCE−K 571−2004「表面含浸材の試験方法(案)」に準拠した方法にて、塩化物イオン濃度が3質量%の塩化ナトリウム水溶液にコンクリートを浸漬し、63日間静置した後に測定される塩化物イオンの浸透深さが3mm未満であるか、JIS A 1153:2012「コンクリートの促進中性化試験方法」とJIS A 1152:2018「コンクリートの中性化深さの測定方法」に準拠し、26週間の促進中性化試験を行った後に測定した中性化深さが10mm未満であることが好ましい。
【0065】
本発明のコンクリートは、シラン系表面含浸材による含浸処理前のコンクリートの質量(W1)と、W1測定後に該コンクリートを温度20℃、相対湿度60%の室内で4週間乾燥し、更に20℃の水中で4週間吸水させた後に測定されるコンクリートの質量(W2)について、[(W2−W1)/W1]×100で求められる質量%が1.0質量%未満であることが好ましい。なお、上記質量(W1)を測定される「シラン系表面含浸材による含浸処理前のコンクリート」は、型枠内に打ち込まれてから少なくとも5日間養生した後のコンクリートであることが望ましい。
【0066】
本発明のコンクリートは、上述した本発明のコンクリートの養生方法を行うことで製造することができる。なお、本発明のコンクリートは、フレッシュコンクリートと区別するため、硬化コンクリート又はコンクリート硬化体などとも称される。
【0067】
本発明のコンクリートの実施態様については、上述した本発明のコンクリートの養生方法で説明した内容を適用することによって理解される。例えば、本発明のコンクリートにおいて、コンクリート、シラン系表面含浸材及び液状撥水剤などは、本発明のコンクリートの養生方法の説明において記載されたとおりである。また、具体的には、本発明のコンクリートにおいて、シラン系表面含浸材が含浸してなるコンクリート表面は、水の接触角が50°以下であることが好ましく、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜(撥水層)は、水の接触角が90°以上であることが好ましく、上記液状撥水剤の塗装により形成される塗膜(撥水層)は、膜厚が10〜100μmであることが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
[含浸材の製造]
<含浸材A>
ヘキシルトリエトキシシラン90質量部と重量平均分子量3000のシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、X−40−9225)9質量部、反応触媒0.5質量部、シリコーン系表面調整剤0.5質量部を混合し、十分に撹拌することにより含浸材Aを調製した。
<含浸材B>
含浸材A 30質量部にキシレンを70質量部混合し、十分に撹拌することにより含浸材Bを調製した。
<含浸材C>
キュアブリッド(特殊シラン系化合物とアルケニル系エステル化合物を混合したもの) 太平洋マテリアル社製
<含浸材D>
バーティキュア(商標)(パラフィンワックスの水性エマルジョン) ノックス社製
【0070】
[液状撥水剤の製造]
<水酸基含有シリコーン変性フッ素樹脂の合成>
1.ラジカル重合性を有するフッ素樹脂(A)の合成例
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー、乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、ルミフロン(商標)LF−600(水酸基価54、数平均分子量15,000、固形分率50%、AGC社製)100質量部、キシレン6.3質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート6.3質量部を入れ、乾燥窒素雰囲気下80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、上記ラジカル重合性を有するフッ素樹脂(A)を含有する樹脂溶液(不揮発分50質量%)を得た。
2.水酸基含有シリコーン変性フッ素樹脂の合成
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー、乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、「1.ラジカル重合性を有するフッ素樹脂(A)の合成例」で得た樹脂溶液40質量部、キシレン80質量部を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、予め混合したメチルメタクリレート30質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート17質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23質量部、X−22−174DX(片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、数平均分子量4,600、信越化学工業社製)110質量部,パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂社製)2質量部、キシレン22質量部の混合物を同温度で2時間かけて滴下した。2時間同温度で保持した後パーブチルO 1質量部を追加し、更に90℃で5時間保持することによって、水酸基含有シリコーン変性フッ素樹脂を含有する樹脂溶液(不揮発分45質量%)を得た。
<撥水剤A>
上記「2.水酸基含有シリコーン変性フッ素樹脂の合成」で得た樹脂溶液を66.7質量部、キシレン33.3質量部からなる主剤とポリイソシアネート(コロネートHX、東ソー社製)60質量部、キシレン40質量部からなる硬化剤を調製した後、主剤と硬化剤を80:20の質量比率で混合することにより液状撥水剤を調製した。これを撥水剤Aとした。
<撥水剤組成物B>
撥水剤A 100質量部に、亜硝酸型ハイドロカルマイト(ソルカットC、東邦顔料社製)0.6質量部を混合し、十分に撹拌することにより混合物を調製した。これを撥水剤組成物Bとした。
【0071】
[試験用フレッシュコンクリートの製造]
<コンクリートの使用材料>
セメント(C):普通ポルトランドセメント、Na
2Oeq=0.55%、密度=3.16g/cm
3、太平洋セメント社製
粗骨材(G):2005砕石、(滋賀県米原市大久保産硬質石灰石、FM=6.68、粒形判定実積率=60.9%、表乾密度=2.70g/cm
3、吸水率=0.27%)、滋賀鉱産社産
細骨材(S):M砕砂(滋賀県米原市大久保産硬質石灰石、FM=2.68、表乾密度=2.67g/cm
3、吸水率=0.85%)、滋賀鉱産社産
AE減水剤(SP):高機能AE減水剤、チューポールEX60、竹本油脂社製
【0072】
<コンクリートの配合>
コンクリートの計画配合を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
<フレッシュコンクリートの製造>
パン型強制練ミキサを用いて、1バッチ0.050m
3のコンクリートを製造した。各バッチコンクリートの使用材料の計量値を表1に示す。
コンクリートの練混ぜは下記の手順で行う。
細骨材とセメントを投入 → 空練り30秒 → 水と混和剤を投入 → 練混ぜ30秒 → かき落とし → 練混ぜ30秒 → 粗骨材を投入 → 練混ぜ60秒 → コンクリート排出
【0075】
[試験体の製造(含浸材・液状撥水剤の塗装)]
試験体製作用型枠にフレッシュコンクリート(300mm×300mm×60mm)を打ち込み、表2に示される材齢まで20℃の室内で封緘養生を行い、その後脱枠したコンクリートの表面全体に刷毛で含浸材を塗布した。含浸材が指触乾燥した後、液状撥水剤を塗布した。含浸材の塗布量は150g/m
2程度であり、表面撥水剤の塗布量は80g/m
2であった。塗布後のコンクリートを温度20℃、相対湿度60%の室内で4週間保管し、コンクリート試験体を調製した。
なお、使用した含浸材及び液状撥水剤については、表2に示す。表2に示されるように比較例1では液状撥水剤による処理を、比較例2では含浸材による処理を行わなかった。
【0076】
[水接触角の測定]
水の接触角は、コンクリート表面に2mlの蒸留水を滴下し、20℃の雰囲気下で1分経過した後に測定した。測定装置には、接触角測定装置(具体的には協和界面化学株式会社CA−X)を使用した。
含浸層形成後及び撥水層形成後のコンクリート表面に対して、水の接触角の測定を行った。結果を表2に示す。
【0077】
[付着性評価]
付着性評価はJIS A 6909:2014に準拠する方法で行った。結果を表2に示す。
具体的に、コンクリート試験体に接着剤を用いて40×40mmの鋼製ジグを貼り付け、接着剤が硬化した後、鋼製ジグの周り4辺にコンクリートまで到達する切込みを入れる。引張試験機等を用いて鉛直方向に引張力を加え、最大引張荷重を求め、付着強さを算出し、下記評価基準に従い付着性を評価する。
○:1.5N/mm
2以上
△:1.0N/mm
2以上、1.5N/mm
2未満
×:1.0N/mm
2未満
付着強さ(N/mm
2)=最大引張荷重(N)/接着面積(mm
2)
【0078】
[CO
2透過阻止性評価]
CO
2透過阻止性評価は、CO
2濃度5%、温度20℃、相対湿度60%の環境下において、コンクリート試験体に対して促進中性化試験を行い、コンクリートの中性化深さを測定し、下記評価基準に従ってCO2透過阻止性を評価した。JIS A 1153:2012「コンクリートの促進中性化試験方法」とJIS A 1152:2018「コンクリートの中性化深さの測定方法」に準拠し、26週間の促進中性化試験を行った後に測定されるコンクリート中性化深さの値である。結果を表2に示す。
○:中性化深さは10mm未満
△:中性化深さは10mm以上、15mm未満
×:中性化深さは15mm以上
【0079】
[塩化物イオン透過阻止性評価]
塩化物イオン透過阻止性評価は、塩化物イオン濃度が3質量%の塩化ナトリウム水溶液にコンクリート試験体を浸漬し、63日後に塩化物イオンの浸透深さを測定し、下記評価基準に従って塩化物イオン透過阻止性を評価した。この試験は、JSCE−K 571−2004「表面含浸材の試験方法(案)」に準拠する。結果を表2に示す。
○:塩化物イオン浸透深さは3mm未満
△:塩化物イオン浸透深さは3mm以上、8mm未満
×:塩化物イオン浸透深さは8mm以上
【0080】
[保湿性評価]
上記[試験体の製造(含浸材・液状撥水剤の塗装)]に記載の製造方法に従い含浸材・液状撥水剤の塗布を行った後のコンクリート試験体の質量(M1)を測定し、次いで、該コンクリート試験体を温度20℃、相対湿度60%の室内で4週間乾燥した後にコンクリート試験体の質量(M2)を測定し、[(M2−M1)/M1]×100から水分蒸発率を算定して、下記評価基準に従い保湿性を評価した。結果を表2に示す。
○:水分蒸発率は0.9質量%未満
△:水分蒸発率は0.9質量%以上、1.1質量%未満
×:水分蒸発率は1.1質量%以上
【0081】
[吸水阻止性評価]
保湿性評価試験においてコンクリート試験体の質量(M2)を測定した後、該コンクリート試験体を20℃の水中で4週間吸水させ、コンクリート試験体の質量(M3)を測定し、M3−M2を吸水量とし、M2から質量の増加率を吸水率として算定して、下記評価基準に従い吸水阻止性を評価した。結果を表2に示す。
○:吸水率は1.0質量%未満
△:吸水率は1.0質量%以上、2.0質量%未満
×:吸水率は2.0質量%以上
【0082】
[長期耐久性評価]
JIS K 5600−7−7:2008「塗膜の長期耐久性促進耐久性および促進耐光性(キセノンランプ法)」を参考して、コンクリート試験体に対して下記の条件で暴露試験及び吸水性試験を行った。結果を表2に示す。
(暴露試験)
放射照度:180W/m
2(キセノンアークランプ)
暴露方法:方法1(紫外域および可視域で水平面全天放射の分光分布に一致させる)、温度38±3℃、連続運転、試験片ぬれサイクル:ぬれ時間 3分、乾燥時間 117分の繰り返し(ぬれ時間においては降雨と照射を行い、乾燥時間では照射を行う)、相対湿度40〜60%
暴露期間:4600時間
(暴露試験後の吸水性試験)
暴露試験後のコンクリート試験体の質量(M4)を測定し、該コンクリート試験体を40℃で24時間乾燥した後、20℃の水中で24時間吸水させ、コンクリート試験体の質量(M5)を測定し、M5−M4を吸水量とし、M4から質量の増加率を吸水率として算定して、下記評価基準に従い長期耐久性を評価した。結果を表2に示す。
○:吸水率は3.0質量%未満
△:吸水率は3.0質量%以上、4.0質量%未満
×:吸水率は4.0質量%以上
【0083】
【表2】