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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-161075(P2021-161075A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】ハーバリウム用容器
(51)【国際特許分類】
   A01N 3/00 20060101AFI20210913BHJP
【FI】
   A01N3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-65005(P2020-65005)
(22)【出願日】2020年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】520114340
【氏名又は名称】合同会社オーエイチピー
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100215393
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 祐資
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】歳森 麻美
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011CA03
4H011CB10
4H011CC01
4H011CD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透明容器に入れられた植物が蓋で遮られないようにして、植物を見えやすくするだけでなく、植物を明るく見せることもできるハーバリウム用容器を提供する。また、大きな植物や多数本の植物を透明容器に入れることができ、アレンジの自由度が高いハーバリウム用容器を提供する。
【解決手段】ハーバリウム用容器10を、植物50を入れるための植物差入口11aを底面部に有する透明容器11と、植物差入口11aを塞ぐための底蓋12とを備えたものとし、透明容器11の上下を逆さにし、植物差入口11aを通じて透明容器11内に植物50を保存液60ともに入れ、植物差入口11aを底蓋12で塞いだ後、透明容器11の上下を戻して設置するものとした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を入れるための植物差入口を底面部に有する透明容器と、
植物差入口を塞ぐための底蓋と
を備え、
透明容器の上下を逆さにし、植物差入口を通じて透明容器内に植物を保存液ともに入れ、植物差入口を底蓋で塞いだ後、透明容器の上下を戻して設置するようにした
ことを特徴とするハーバリウム用容器。
【請求項2】
植物差入口が、透明容器の底面部における略全体に広がって形成された請求項1記載のハーバリウム用容器。
【請求項3】
透明容器の上面部が半球状に形成された請求項1又は2記載のハーバリウム用容器。
【請求項4】
透明容器の上部に、中空な膨出部が形成され、
膨出部内の空間と、透明容器内の空間とが連通された
請求項1〜3いずれか記載のハーバリウム用容器。
【請求項5】
膨出部の付根近傍が、ネック状に絞られた首部とされた請求項4記載のハーバリウム用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーバリウムを作るために、植物を保存液とともに入れるためのハーバリウム用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハーバリウム(植物標本)を室内装飾として楽しむ人が増えてきている。なかでも、特許文献1〜4に示されるように、透明容器の中に花と保存液(オイル等)を入れて蓋で密封した状態で飾るハーバリウムは、花の瑞々しさや鮮やかな色合を長期間保つことができるため、人気が高くなっている。透明容器と蓋とで構成されるハーバリウム用容器のうち、透明容器としては、口径の大きなガラス瓶(広口瓶)を用いるよりも、口径の小さなガラス瓶(細口瓶)を用いることが多い。
【0003】
というのも、ガラス瓶(透明容器)の口が大きいと、それを塞ぐ蓋も大きくなり、蓋の下側に位置する花が見えにくくなったり、ガラス瓶(透明容器)の内部に入る光量が減少して花が暗く見えたりする等、ハーバリウムの意匠性が低下するおそれがあるからである。この問題は、蓋を透明な素材で形成すればいくらか解消される。しかし、その場合でも、透明容器と蓋の境界部では、やはり花が見えにくくなるし、その境界部付近で光の屈折具合が大きく変化するため、花が歪で不自然な形に見えるようになってしまう。
【0004】
そこで、従来のハーバリウム用容器では、ガラス瓶(透明容器)の口を小さくし、その口を小さな蓋で塞ぐことで、花を明るく見えやすくしている。実際、上記の特許文献1〜4に示されたハーバリウム用容器においても、ガラス瓶(透明容器)として、口が小さいものを用いており、その口を塞ぐ蓋も寸法が小さなものを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3215468号公報
【特許文献2】特開2019−182773号公報
【特許文献3】実用新案登録第3220343号公報
【特許文献4】実用新案登録第3223178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ハーバリウム用容器において、透明容器の口を小さくし、蓋を小さくしても、花等の植物の上側を蓋が覆うことには変わらない。このため、植物の見えやすさや明るさの面では、まだ改善の余地がある。加えて、透明容器の口が小さいと、透明容器に入れることができる植物のサイズや本数が著しく制限されてしまう。このため、アレンジの自由度が低いという欠点もある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、透明容器に入れられた植物が蓋で遮られないようにして、植物を見えやすくするだけでなく、植物を明るく見せることもできるハーバリウム用容器を提供するものである。また、大きな植物や多数本の植物を透明容器に入れることができ、アレンジの自由度が高いハーバリウム用容器を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
植物を入れるための植物差入口を底面部に有する透明容器と、
植物差入口を塞ぐための底蓋と
を備え、
透明容器の上下を逆さに(植物差込口が上向きとなるように)し、植物差入口を通じて透明容器内に植物を保存液ともに入れ、植物差入口を底蓋で塞いだ後、透明容器の上下を戻して(植物差込口が下向きとなるように)設置するようにした
ことを特徴とするハーバリウム用容器
を提供することによって解決される。
【0009】
ここで、「透明」という語は、狭義には、無色透明を意味する場合がある。しかし、本発明のハーバリウム用容器における「透明容器」は、無色透明のものに限定されず、有色透明や半透明のものも含む。ハーバリウム用容器として必要な視認性を確保できる(透明容器に入れられた植物を所望のレベルで視認することができる)のであれば、透明容器には、スリ等が形成されていてもよい。
【0010】
このように、本発明のハーバリウム用容器では、透明容器内に植物を入れるための口(植物差込口)を、透明容器の上側ではなく下側(底面部)に設けており、この植物差込口を塞ぐ蓋も、透明容器の底面部に取り付ける底蓋として設けている。このため、透明容器の側面部や上面部が蓋で覆われない。したがって、透明容器の上方や側方のあらゆる方向から、透明容器内の植物を見ることができる。また、透明容器の上方や側方のあらゆる方向から、透明容器の内部に光が入るようになるため、透明容器内の植物を明るく美しく見せることもできる。
【0011】
加えて、本発明のハーバリウム用容器では、植物差込口を、透明容器の底面部における略全体に広がった状態に形成する等、植物差込口を広く確保することもできる。既に述べたように、植物差込口を広くすると、それを塞ぐ蓋(本願発明のハーバリウム用容器では底蓋)も必然的に大きくなるところ、本発明のハーバリウム用容器では、蓋(底蓋)が透明容器の下側となるため、蓋(底蓋)を大きくしても、透明容器内に入れられた植物の視認性や、透明容器内に入る光量には、悪影響を及ぼさないからである。植物差込口を広くすると、大きな植物や多数本の植物を透明容器に入れることができるようになり、ハーバリウムのアレンジの自由度が高くなるというメリットがある。
【0012】
本発明のハーバリウム用容器において、透明容器の形態は、特に限定されない。しかし、透明容器が角(かど)のある形態を有していると、その角の付近で光の屈折具合が大きく変化するため、植物が歪で不自然な形に見えやすくなる。このため、透明容器は、角の少ない形態とすることが好ましい。特に、透明容器の上部の形態は、それに入れられた植物の見えやすさに大きな影響を与えるため、透明容器の上部は、角のない形態とすることが好ましい。例えば、透明容器の上面部は、半球状(ドーム状)に形成すると好ましい。これにより、透明容器の外面を滑らかに形成して、透明容器内の植物を違和感のない自然な状態で見せることができる。
【0013】
ただし、本発明のハーバリウム用容器のように、透明容器の下側に蓋(底蓋)を配すると、透明容器内に形成された空気溜まりが目立ちやすくなり、ハーバリウムの意匠性が低下するおそれがある。というのも、保存液を透明容器に一杯一杯に入れると、透明容器に蓋(底蓋)をしたときに、保存液が漏れ出るおそれがある。このため、保存液は、透明容器の容量よりもやや少なめに入れることが一般的である。ところが、植物差込口を上向きとした状態で、透明容器に植物と保存液を入れて蓋(底蓋)をした後に、透明容器の上下を戻して(植物差込口を下向きとして)ハーバリウム用容器を設置すると、透明容器内の上部に空気が浮いてきて、その場所に空気溜まりが形成される。この空気溜まりが目立つと、ハーバリウムの意匠性が低下するところ、本発明のハーバリウム用容器では、透明容器の上側を蓋で覆わないため、その空気だまりを蓋で隠すことができないからである。
【0014】
以上のことを踏まえて、本発明のハーバリウム用容器では、透明容器内の空気溜まりが目立たないような工夫を施すことが好ましい。具体的には、透明容器の上部に、中空な膨出部を形成し、膨出部内の空間と、透明容器内の空間とを連通することが好ましい。これにより、透明容器内で浮いてきた空気を膨出部内に逃し、空気溜まりが膨出部内に形成されるようにする(空気溜まりが透明容器における膨出部以外の部分(以下においては「透明容器の本体部」と呼ぶことがある。)には形成されないようにする)ことができる。このため、ハーバリウム用容器を設置したときに、空気溜まりが目立たないようにすることが可能になる。
【0015】
この場合(透明容器の上部に膨出部を設ける場合)には、膨出部の付根近傍を、ネック状に絞られた首部とすることが好ましい。これにより、透明容器の側方から透明容器内を見たときに、空気(空気溜まり)と保存液との界面が首部と重なるようにすることで、その界面を目立ちにくくすることができる。すなわち、保存液が、透明容器の本体部だけでなく、膨出部内にも一杯に入っているかのように見せることができる。したがって、ハーバリウムの意匠性が損なわれないようにすることが可能になる。また、膨出部とその付根部(首部)とを、小口のボトル瓶における頭の部分(蓋がされた口の部分)に擬態させて、膨出部が形成された透明容器の見た目を小口のボトル瓶に似せることで、膨出部の違和感を無くすこともできる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、透明容器に入れられた植物が蓋で遮られないようにして、植物を見えやすくするだけでなく、植物を明るく見せることもできるハーバリウム用容器を提供することが可能になる。また、大きな植物や多数本の植物を透明容器に入れることができ、アレンジの自由度が高いハーバリウム用容器を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のハーバリウム用容器に植物を入れた状態を示した斜視図である。
図2】本発明のハーバリウム用容器に植物を入れて設置した状態を鉛直な平面で切断して示した断面である。
図3図2のハーバリウム用容器における膨出部の近傍を拡大して示した拡大断面図である。
図4】本発明のハーバリウム用容器を鉛直な平面で破断して示した破断斜視図である。
図5】本発明のハーバリウム用容器に植物を入れている様子を示した斜視図である。
図6】本発明のハーバリウム用容器に植物を入れた状態(上下が逆さの状態)を示した斜視図である。
図7】本発明のハーバリウム用容器に植物を入れた状態を側方から撮影した写真である。
図8】本発明のハーバリウム用容器に植物を入れた状態を斜め上方から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のハーバリウム用容器の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明のハーバリウム用容器10に植物50を入れた状態を示した斜視図である。本発明のハーバリウム用容器10は、図1に示すようなハーバリウムを作るために、植物50を保存液60(後掲する図2を参照。)とともに入れるためのものとなっている。
【0019】
ハーバリウム用容器10に入れる植物50は、葉物植物(花のない葉だけの植物)としてもよい。しかし、植物50の全てが葉物植物だと、華やかなハーバリウムを作りにくい。このため、植物50の少なくとも一部を、花とすることが好ましい。この種のハーバリウムは、花の有する瑞々しさや鮮やかな色合を長期間保つことができるため、花を美しく装飾的に見せるのに適している。花(植物)は、通常、プリザーブドフラワーやドライフラワー等にされて乾燥された状態で保存液60に浸される。
【0020】
一方、保存液60としては、通常、シリコーンオイルやミネラルオイル等のオイルが使用される。保存液60には、必要に応じて、保存料や香料等を添加する場合もある。また、保存液60は、顔料等を添加して着色してもよい。しかし、この場合には、植物50が本来の色彩で見えなくなってしまう。このため、変わった趣向のハーバリウムを作る等の意図がないのであれば、保存液60は、通常、無色透明(又は無色透明に近い状態のもの)とされる。
【0021】
図2は、本発明のハーバリウム用容器10に植物50を入れて設置した状態を鉛直な平面で切断して示した断面である。図3は、図2のハーバリウム用容器10における膨出部11bの近傍を拡大して示した拡大断面図である。図4は、本発明のハーバリウム用容器10を鉛直な平面で破断して示した破断斜視図である。本発明のハーバリウム用容器10は、図2に示すように、透明容器11と底蓋12とで構成されている。透明容器11の底面部には、透明容器11内に植物50を入れるための植物差込口11aが設けられている。底蓋12は、この植物差込口11aを塞ぐためのものとなっている。
【0022】
図5は、本発明のハーバリウム用容器10に植物50を入れている様子を示した斜視図である。図6は、本発明のハーバリウム用容器10に植物50を入れた状態(上下が逆さの状態)を示した斜視図である。本発明のハーバリウム用容器10は、図5に示すように、透明容器11の上下を逆さにし、植物差入口11aを通じて透明容器11内に植物50を保存液(図2)ともに入れ、植物差入口11aを底蓋12で塞いで、図6に示す状態とした後、透明容器11の上下を戻すことで、図1に示す状態で設置するものとなっている。
【0023】
図5に示した例においては、植物50の茎の下端部を固定部材20に固定した状態で、植物50を透明容器11内に入れるようにしている。これにより、植物50のレイアウトを大まかに決めてから、植物50を透明容器11内に入れることができる。このため、透明容器11内に入れた植物50のレイアウトの調整(通常、ピンセット等の道具を用いて行う。)を最小限で済ませることが可能になる。
【0024】
この固定部材20としては、通常、ガラスや金属やプラスチック等の板材を用いるところ、固定部材20にタイル等のウエイトを固定することも好ましい。これにより、透明容器11内に入れた植物50が浮き上がりにくくすることができる。また、固定部材20には、上下方向の貫通孔を設けてもよい。これにより、透明容器11の上下を戻す際に、固定部材20が底蓋12の位置まで沈み込みやすくするだけでなく、固定部材20の面積が広く、透明容器11内に保存液60を注ぎ入れにくい場合に、その貫通孔を通じて保存液60を注ぎ入れることも可能になる。さらに、その貫通孔から針金等の部材を通すことで、植物50のレイアウトの調整を行うことも可能になる。
【0025】

固定部材20に対して植物50を固定する方法は、特に限定されない。植物50の固定には、ワイヤー等を用いる場合もあるが、接着剤を用いることが多い。本実施態様のハーバリウム用容器10においては、接着剤を用いて粒状のシリカゲルを固定部材20に付け、さらにその上側に植物50を接着することによって、植物50を固定部材20に固定している。これにより、植物50の固定を容易に行うことができる。また、シリカゲルを用いることで、植物(プリザーブドフラワーやドライフラワー等)をより長持ちさせることができる。同様の作用は、固定部材20をシリカゲルによって形成する(タブレット型のシリカゲルを固定部材20として用いる)ことによっても得ることができる。
【0026】
本発明のハーバリウム用容器10では、それを設置するとき(ハーバリウムとして飾るとき)には、図2に示すように、植物差込口11aが、透明容器11の下側(底面部)に位置するようになっており、この植物差込口11aを塞ぐ蓋も、透明容器11の底面部に取り付ける底蓋12として設けられている。このため、透明容器11を上方や側方から見たときに、蓋(底蓋12)が植物50を遮らないようになっている。また、透明容器11の外部から内部に入る光(日光や照明光等)も、蓋(底蓋12)で遮られないようになっている。したがって、透明容器11内の植物50の略全体を明るく美しく見せることができ、ハーバリウムの意匠性を高めることが可能となっている。
【0027】
植物差込口11aは、透明容器11の底面部における一部の領域のみに小さく形成してもよいが、本実施態様のハーバリウム用容器10においては、図5に示すように、透明容器11の底面部における略全体に広がった状態に形成している。これにより、植物差込口11aを広く確保し、大きな植物50や多数本の植物50を透明容器11に入れることができるようになる。このため、ハーバリウムのアレンジの自由度を高めることができる。本発明のハーバリウム用容器10では、蓋(底蓋12)が透明容器11の下側となるため、蓋(底蓋12)を大きくしても、透明容器11内に入れられた植物50の視認性や、透明容器11内に入る光量には、悪影響を及ぼさない。
【0028】
また、底蓋12は、透明容器11を下側から支える基台部としての機能も発揮するところ、植物差込口11aを広く確保すると、植物差込口11aを塞ぐ底蓋12の寸法も必然的に大きくなる。このため、ハーバリウム用容器10の設置面積を広くして、ハーバリウム用容器10の設置安定性を高める(ハーバリウム用容器10を倒れにくくする)ことも可能になる。底蓋12の底面を凹凸の少ない平坦な形状とすると、ハーバリウム用容器10の設置安定性をさらに高めることができる。
【0029】
透明容器11の形態は、特に限定されない。しかし、透明容器11を、多角柱状(多角筒状)等、角(かど)のある形態とすると、その中の植物50が歪に見えるようになる。このため、本実施態様のハーバリウム用容器10においては、透明容器11をどの高さで水平に切断しても、その断面が円形に現れる形態とすることで、透明容器11を角のない形態としている。具体的には、図4に示すように、透明容器11の側面部を円柱状(円筒状)に形成し、透明容器11の上面部を半球状(ドーム状)に形成するとともに、側面部と上面部とが滑らかに接続するようにしている。これにより、透明容器11内の植物50を自然で違和感のない状態で見せることが可能になる。透明容器11の水平断面は、楕円形等で現れるようにしても、透明容器11を角のない形態とすることができる。
【0030】
加えて、上記のように、透明容器11を角のない形態、言い換えると、その表面が滑らかな曲面で凸状に膨らんだ形態とすることで、透明容器11が、その中に入れられた保存液60と相まって、レンズとして機能するようになる。このため、透明容器11の中の植物50を実際よりも大きくして華やかに見せることができる。特に、透明容器11の上面部は、半球状(ドーム状)に形成されていて、レンズ作用がより顕著に現れるようになっている。したがって、本実施態様のハーバリウム用容器10は、それを上方から見たときに、植物50が特に大きく見えるようになっている。
【0031】
また、本実施態様のハーバリウム用容器10では、図4に示すように、透明容器11の上部中央(透明容器11における最も高くなる箇所)に、中空な膨出部11bを形成している。この膨出部11bは、透明容器11の本体部とは別個に成形したものを事後的に一体化させたものであってもよいが、通常、透明容器11の本体部と一体的に成形されたものとされる。膨出部11b内の空間αは、透明容器11の本体部内の空間αと、上下に連通している。このため、透明容器11に生じ得る空気溜まりを目立ちにくくすることが可能となっている。
【0032】
すなわち、図5に示すように、上下逆さの透明容器11内に植物50を入れる場合には、透明容器11の容量よりもやや少なめに保存液60(図2)を入れることについては既に述べた通りであるが、この場合には、底蓋12をした後の透明容器11の上下を戻して、図2に示す向きで設置すると、透明容器11の最上部まで保存液60が入らず、透明容器11の上部に空気溜まりが形成されるようになる。本実施態様のハーバリウム用容器10のように、透明容器11の上面部を半球状(ドーム状)に形成した場合には、この空気溜まりが特に目立ちやすく、ハーバリウムの意匠性が低下するおそれがある。この点、上記のように、中空な膨出部11bを設けることで、透明容器11内で浮いてきた空気を膨出部11c内の空間αに逃し、空気溜まりが膨出部11c内に形成されるようにする(空気溜まりが透明容器11の本体部に形成されないようにする)ことができる。したがって、空気溜まりを目立ちにくくすることができる。保存液60の界面(液面)が透明容器11の本体部と膨出部11bとの境界部に重なるようにすると、空気溜まりをさらに目立ちにくくすることができる。
【0033】
膨出部11bの形態は、特に限定されないが、透明容器11の本体部と同様の理由で、できるだけ角(かど)のない形態とすることが好ましい。例えば、球状や回転楕円形状等とすることが好ましい。これにより、透明容器11を上方から見たときの植物50を自然に見せることが可能になる。本実施態様のハーバリウム用容器10においては、膨出部11bを回転楕円形状に形成しており、膨出部11bの付根近傍を、ネック状に絞った首部11cとしている。
【0034】
このように、膨出部11bの付根近傍を首部11cとすることで、空気(空気溜まり)と保存液60との界面をより目立ちにくくすることができる。また、膨出部11bと首部11cとを、小口のボトル瓶における頭の部分(蓋がされた口の部分)に擬態させ、透明容器11をあたかも小口のボトル瓶かのように見せることが可能になる。このため、ハーバリウムを楽しむ人に、膨出部11bの存在を違和感なく受け入れさせることが可能になる。
【0035】
ところで、膨出部11bの寸法は、小さくしすぎると好ましくない。というのも、膨出部11bが小さすぎると、その内側の空間αも小さくなり、透明容器11内で生じた空気溜まりが膨出部11b内の空間αに収まらなくなるおそれがあるからである。このため、膨出部11bは、その内側の空間αの容積(首部11cにおける最も狭くなった部分よりも上側の部分の容積。以下同じ。)を0.5cc以上確保できる寸法にすることが好ましい。空間αの容積は、1cc以上であることがより好ましく、1.5cc以上であることがさらに好ましい。このような容積の膨出部11bは、その形態や厚さ(板厚)等にもよるが、概ね、その横幅(最も広くなった部分の外幅。以下同じ。)を10mm以上とし、その高さ(首部11cにおける最も狭くなった部分よりも上側の部分の高さ。以下同じ。)も5mm以上とすれば、得ることができる。
【0036】
ただし、膨出部11bを大きくしすぎると、透明容器11において膨出部11bの存在が目立つようになってしまう。このため、膨出部11bの寸法は、大きくしすぎるのも好ましくない。具体的には、膨出部11bは、その内側の空間αの容積を10cc以下に抑えることができる寸法にすることが好ましい。空間αの容積は、7cc以下に抑えることがより好ましく、5cc以下に抑えることがさらに好ましい。このような容積の膨出部11bは、その形態や厚さ(板厚)等にもよるが、概ね、その横幅を50mm以下に抑え、その高さを40mm以下に抑えれば、得ることができる。本実施態様のハーバリウム用容器10においては、膨出部11bの横幅が約30mmで高さが約15mmとなっており、膨出部11b内の空間αの容積は、約3cc(2〜4ccの範囲)となっている。
【0037】
また、首部11cの曲率半径R図3)を小さくしすぎると、透明容器11の本体部と膨出部11bとの境界が目立ちやすくなる。首部11cは、その下側の透明容器11の本体部や、その上側の膨出部11bに対して滑らかに接続させることが好ましい。このため、首部11cの曲率半径Rは、2mm以上とすることが好ましい。首部11cの曲率半径Rは、3mm以上とすることがより好ましく、4mm以上とすることがさらに好ましい。
【0038】
ただし、首部11cの曲率半径Rを大きくしすぎると、必然的に、透明容器11の本体部の上面部から上側に膨出部11bが大きく突き出るようになり、膨出部11bが目立ちやすくなる。また、ハーバリウム用容器10を側方から見たときに保存液60の界面(液面)が首部11cに重なるようにしても、保存液60の界面(液面)が見えやすくなるおそれもある。このため、首部11cの曲率半径Rは、30mm以下とすることが好ましい。首部11cの曲率半径Rは、20mm以下とすることがより好ましく、10mm以下とすることがさらに好ましい。本実施態様のハーバリウム用容器10において、首部11cの曲率半径Rは、約5mm(4〜6mmの範囲)となっている。
【0039】
透明容器11の素材は、所望の透明性(透光性)を有するのであれば、特に限定されない。透明容器11の素材としては、ガラスや透明樹脂が挙げられる。ただし、ハーバリウムには、高級感や重厚感が要求されることが多いところ、透明樹脂で透明容器11を形成すると、透明容器11が安っぽく軽く見えやすくなる。このため、透明容器11は、ガラスで形成することが好ましい。透明容器11を形成するのに適したガラスとしては、ソーダ石灰ガラスや、カリガラスや、クリスタルガラスや、石英ガラス等が例示される。この種のガラス原料を溶融した材料を型内に注入して固化させることで、透明容器11を成形することができる。本実施態様のハーバリウム用容器10において、透明容器11は、図4に示した形態の部材(2分の1形状の部材)を一対に貼り合わせることで製造している。
【0040】
底蓋12は、通常、金属、ガラス、樹脂又は木等で形成される。本実施態様のハーバリウム用容器10において、底蓋12は、金属(スチール)によって形成している。底蓋12は、透明容器11の植物差込口11aに篏合するだけのものであってもよい。しかし、本実施態様のハーバリウム用容器10では、保存液60が入れられた透明容器11の下側を底蓋12で塞ぐようになる。このため、底蓋12と植物差込口11aとの隙間から保存液60が漏れ出ないように、植物差込口11aを底蓋12でしっかりと密封する必要がある。
【0041】
このため、本実施態様のハーバリウム用容器10において、底蓋12は、透明容器11の底部外周面に対して螺合するものとしている。加えて、底蓋12の内底面における縁部(透明容器11における植物差込口11a周りの端面に重なる箇所)には、シリコーン樹脂等の封止部材(図示省略)を環状に設けており、底蓋12の内底面と透明容器11の下端面との間に隙間が形成されないようにしている。このため、透明容器11に保存液60が入れられたハーバリウム用容器10を図2の向きで設置しても、透明容器11の下側から保存液60が漏れ出ないようになっている。
【0042】
図7は、本発明のハーバリウム用容器10に植物50を入れた状態を側方から撮影した写真である。図8は、本発明のハーバリウム用容器10に植物50を入れた状態を斜め上方から撮影した写真である。図7及び図8を見ると分かるように、本発明のハーバリウム容器10は、その上側に蓋が存在しないため、側方及び上方のいずれからでも、植物50を見やすくなっている。加えて、その側方及び上方のいずれからも光(日光や照明光等)が入るため、植物50を明るく見せることが可能となっている。
【0043】
また、膨出部11bを設けたことによって、透明容器11内で生じた空気溜まりが目立ちにくくなっている。さらに、従来のハーバリウム容器10よりも、大きな植物50を多数本レイアウトすることができるため、華やかで迫力のあるハーバリウムを楽しむことも可能となっている。このように、本発明のハーバリウム容器10では、意匠性に優れたハーバリウムを楽しむことができる。底蓋12を隠したい場合には、意匠性の高い素材(山栗や黒柿等の木材や陶磁器等)で形成した下皿(図示省略)に底蓋12を嵌め込み、底蓋12を隠してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 ハーバリウム用容器
11 透明容器
11a 植物差込口(口)
11b 膨出部
11c 首部
12 底蓋(蓋)
20 固定部材
50 花(植物)
60 保存液
α 透明容器(透明容器の本体部)内の空間
α 膨出部内の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8