【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、柑橘果実抽出物がHDLによるコレステロールの引き抜きを促進する作用を有することを見出した。本発明はこの新規な知見に基づき、新規なコレステロール引き抜き促進剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、柑橘果実抽出物を有効成分として含有する、コレステロール引き抜き促進剤に関する。
【0007】
本発明に係るコレステロール引き抜き剤は、柑橘果実抽出物を有効成分として含有しているため、柑橘果実抽出物の作用により、HDLによるコレステロールの引き抜きを促進することができる。
【0008】
上記柑橘果実抽出物は、柑橘類の果皮、パルプ又は果汁由来のものであってよい。
【0009】
上記柑橘果実抽出物は、水、アルコール及びこれらの混合溶媒から選択される溶媒で得られたものであってよい。
【0010】
本発明に係るコレステロール引き抜き剤は、HDLによるコレステロールの引き抜きを促進することにより、HDLのコレステロールのスカベンジャーとしての機能を増強し、組織におけるコレステロールの過剰蓄積に起因する様々な状態又は疾患(例えば、脂質代謝異常、動脈硬化、動脈硬化に起因する疾患)を予防又は改善することが期待できる。
【0011】
したがって、本発明に係るコレステロール引き抜き剤は、脂質代謝異常、動脈硬化又は動脈硬化に起因する疾患の予防又は改善剤として構成されていてもよい。
【0012】
本発明はまた、柑橘果実抽出物を有効成分として含有する、コレステロール引き抜き促進用食品組成物にも関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規なコレステロール引き抜き剤を提供することができる。
【0014】
本発明に係るコレステロール引き抜き剤は、柑橘果実抽出物を有効成分として含有しているため、柑橘果実抽出物の作用により、HDLによるコレステロールの引き抜きを促進することができる。これにより、HDLのコレステロールのスカベンジャーとしての機能を増強し、組織におけるコレステロールの過剰蓄積に起因する様々な状態又は疾患(例えば、脂質代謝異常、動脈硬化、動脈硬化に起因する疾患)を予防又は改善することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、柑橘果実抽出物を有効成分として含有する。
【0017】
本明細書において「柑橘果実抽出物」は、柑橘類の果実の一部又は全部に含まれる成分のうち、特定の溶媒に溶け込む成分の混合物(組成物)を意味する。
【0018】
柑橘果実抽出物は、例えば、柑橘類の果実の一部又は全部と溶媒を充分に接触させた後、溶媒を回収し、必要に応じて濃縮、又は溶媒を除去することで得ることができる。また、溶媒(第1の溶媒)を回収した後、極性の異なる他の溶媒(第2の溶媒)で液液抽出して、第1の溶媒に溶け込む成分以外の成分を第2の溶媒中に除去してもよい。なお、柑橘類の果汁は、柑橘類の果実の一部又は全部に含まれる成分のうち、水に溶け込む成分の混合物(組成物)と捉えられる。
【0019】
柑橘類は、ミカン科のミカン属、キンカン属及びカラタチ属に属する植物を含む。柑橘類としては、例えば、レモン、ライム、シークワサー、スダチ、ユズ、ダイダイ、カボス、グレープフルーツ、ミネオラオレンジ、ブラッドオレンジ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、サワーオレンジ、ミカン(温州ミカン)、イヨカン、ポンカン、あま夏、ブンタン等が挙げられる。
【0020】
柑橘類の果実は、果皮(フラベド及び/又はアルベド)、種子、じょうのう、じょうのう膜、砂のう及び砂のう膜等で構成されている。柑橘類の果実の一部又は全部としては、例えば、全果(柑橘類の果実の全部)であってもよく、果皮、種子、じょうのう、じょうのう膜、砂のう若しくは砂のう膜、若しくはパルプ等のこれらの一部、又はこれらの混合物(柑橘類の果実の一部)であってもよい。なお、パルプとは、さじょう膜及びじょうのう膜等に由来する果汁中の不溶性成分を指す。柑橘果実抽出物のコレステロール引き抜き促進作用がより優れるという観点から、柑橘類の果実の一部又は全部としては、果皮、パルプ又は果汁が好ましい。
【0021】
溶媒としては、例えば、水、食塩水、アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、二酸化炭素等を用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。柑橘果実抽出物のコレステロール引き抜き促進作用がより優れるという観点から、溶媒としては、水、アルコール及びこれらの混合溶媒から選択される溶媒であることが好ましく、水、エタノール及びこれらの混合溶媒から選択される溶媒であることがより好ましい。
【0022】
水とアルコールの混合溶媒(アルコール水溶液)を使用する場合、アルコール水溶液中のアルコールの濃度は、0.5質量%以上、0.8質量%以上又は1.0質量%以上であってよく、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってよい。
【0023】
柑橘果実抽出物の調製方法としては、例えば、柑橘類の果実の一部又は全部と溶媒を充分に接触させた後、溶媒を回収して抽出液を得る工程(抽出液取得工程)を備える方法が例示できる。当該調製方法は、必要に応じて、抽出液取得工程で得た抽出液を濃縮する工程(濃縮工程)、又は抽出液取得工程で得た抽出液から溶媒を除去する工程(除去工程)を備えていてもよい。当該調製方法はまた、必要に応じて、抽出液取得工程で得た抽出液を、当該抽出液の溶媒(第1の溶媒)とは極性の異なる他の溶媒(第2の溶媒)で液液抽出して、第1の溶媒に溶け込む成分以外の成分を第2の溶媒中に除去する工程(精製工程)を更に備えていてもよい。
【0024】
抽出液取得工程では、柑橘類の果実の一部又は全部と溶媒を充分に接触させた後、溶媒を回収して抽出液を得る。溶媒の使用量(添加量)は、柑橘類の果実の一部又は全部1質量部に対して、例えば、1.0質量部以上、又は2質量部以上であってよく、50質量部以下、30質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下又は3質量部以下であってよい。
【0025】
柑橘類の果実の一部又は全部と溶媒の接触時間及び接触温度は、溶媒に溶け込む成分が溶媒に移動するのに充分な接触時間及び接触温度とすればよく、適宜設定することができる。これに限られるものではないが、一例として、接触温度は、例えば、0℃以上98℃以下、5℃以上95℃以下、10℃以上80℃以下、15℃以上65℃以下、20℃以上60℃以下、25℃以上55℃以下、30℃以上50℃以下又は35℃以上45℃以下であってよい。接触時間(上記接触温度で保持する時間)は、上記接触温度に応じて、適宜設定してよい。例えば、接触時間は、5分以上、30分以上又は60分以上であってよく、300分以下、150分以下又は90分以下であってよい。
【0026】
抽出液取得工程にて、溶媒を回収して抽出液を得る方法に特に制限はなく、例えば、ろ過、遠心分離等の固液分離方法が制限なく利用できる。
【0027】
濃縮工程又は除去工程は、抽出液取得工程で得た抽出液から溶媒の一部又は全部を除去する工程ともいえる。溶媒の除去方法は、使用する溶媒の種類に応じて、適宜設定することができる。溶媒の除去は、常圧で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。溶媒の除去は、例えば、エバポレーター、凍結乾燥等により実施することができる。
【0028】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、柑橘果実抽出物1種を単独で含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0029】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状であってもよい。また、本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠等)、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤(シロップ剤、ゼリー剤等)、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形であってもよい。
【0030】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、有効成分である柑橘果実抽出物のみからなるものであってもよく、またコレステロール引き抜き促進剤の具体的態様に応じて、有効成分の他、例えば、食品、医薬部外品又は医薬品に許容されるその他成分を含有するものであってもよい。
【0031】
その他成分としては、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等、また着色料、香料、甘味料、苦味料、酸味料、保存料、防カビ剤、酸化防止剤、乳化剤、pH調整剤、増粘安定剤等が挙げられる。
【0032】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
また例えば、着色料としては、ベータカロチン、カラメル、又は紅麹色素等が挙げられる。香料としては、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド等が挙げられる。甘味料としては、糖類又は糖アルコール類、ステビア、又はアスパルテーム等が挙げられる。苦味料としては、カフェイン等が挙げられる。塩味料としては、食塩、又は塩化カリウムが挙げられる。酸味料としては、酢酸、乳酸、又はグルコン酸等が挙げられる。保存料としては、メチルパラベン、プロピルパラベン等が挙げられる。防カビ剤としては、イマザリル、オルトフェニルフェノール、チアベンダゾール、フルジオキソニル等が挙げられる。酸化防止剤としては、トコフェロール、又は茶抽出物等が挙げられる。乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、リン酸等が挙げられる。増粘安定剤としては、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、又は化工澱粉等が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、例えば、食品組成物(飲料及び食品)、医薬部外品又は医薬品として調製することができる。すなわち、本発明の一実施形態として、柑橘果実抽出物を有効成分として含有するコレステロール引き抜き促進用食品組成物(飲料及び食品)、コレステロール引き抜き促進用医薬部外品又はコレステロール引き抜き促進用医薬品が提供される。
【0035】
飲料の具体的な形態としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品の具体的な形態としては、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。また、食品組成物には、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。
【0036】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、日常的に手軽に摂取できることから、食品組成物(コレステロール引き抜き促進用食品組成物)であることが好ましい。本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進用食品組成物の形態としては、上述したものが挙げられ、日常的に手軽に摂取できるという観点から、飲料(コレステロール引き抜き促進用飲料)であることが好ましい。
【0037】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進用食品組成物には、例えば、「コレステロールが気になる方に」、「HDLの機能を高める」、「コレステロールの排出を高める」、「しなやかで柔らかい血管を保つ」、「血管の内側をなめらかにする」、「血管年齢を若く保つ」等の表示が付されていてもよい。
【0038】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤における有効成分の含有量は、コレステロール引き抜き促進剤の具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、適宜設定することができる。
【0039】
例えば、本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤が経口投与(経口摂取)される場合、有効成分が1日あたり0.5g以上経口投与(経口摂取)されるように用いられるものであってよい。有効成分が1日あたり0.5g以上経口投与(経口摂取)されることによって、充分なコレステロール引き抜き促進作用が得られる。例えば、本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤が、1日あたり3回経口投与(経口摂取)されるように用いられるものである場合、コレステロール引き抜き促進剤が0.167g以上の有効成分を含有することで、1日あたりの経口投与(経口摂取)量が0.5g以上となる。
【0040】
上記の1日あたりの経口投与(経口摂取)量(有効成分の量)は、例えば、0.6g以上、0.7g以上、0.8g以上、0.9g以上、又は1g以上であってよい。また、コレステロール引き抜き促進作用の観点からは、上述の1日あたりの経口投与(経口摂取)量の上限に特に制限はないが、製造原価を下げるという観点から、例えば、8g以下、7g以下、6g以下、5g以下、又は4g以下であってよい。また、上記の1日あたりの経口投与(経口摂取)量は、体重60kgあたりの量とするのが好ましい。
【0041】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤における有効成分の含有量は、コレステロール引き抜き促進剤の具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、適宜設定されるものであるが、一態様において、本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤における有効成分の含有量は、コレステロール引き抜き促進剤全量を基準として、例えば、0.5g以上、0.6g以上、0.7g以上、0.8g以上、0.9g以上、又は1g以上であってよい。これにより、上述した1日あたりの経口投与(経口摂取)量を簡便に達成することができる。本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤における有効成分の含有量の上限は、例えば、8g以下、7g以下、6g以下、5g以下、又は4g以下であってよい。
【0042】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、ヒトに投与(摂取)されても、非ヒト哺乳動物に投与(摂取)されてもよい。
【0043】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、経口投与(経口摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与(経口摂取)されることが好ましい。本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、1日1回投与(摂取)されてもよく、1日複数回に分けて投与(摂取)されてもよい。
【0044】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、その具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、例えば、有効成分である柑橘果実抽出物を配合することで得ることができる。
【0045】
本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、柑橘果実抽出物の作用により、HDLによるコレステロールの引き抜きを促進することができる。これにより、HDLのコレステロールのスカベンジャーとしての機能を増強し、組織におけるコレステロールの過剰蓄積に起因する様々な状態(例えば、生活習慣病)又は疾患(例えば、脂質代謝異常、動脈硬化、動脈硬化に起因する疾患)を予防又は改善することが期待できる。
【0046】
したがって、本実施形態に係るコレステロール引き抜き促進剤は、脂質代謝異常、動脈硬化又は動脈硬化に起因する疾患の予防又は改善剤として構成することもできる。動脈硬化に起因する疾患としては、例えば、心筋梗塞等の心疾患、脳梗塞等の脳疾患等が挙げられる。脂質代謝異常、動脈硬化又は動脈硬化に起因する疾患の予防又は改善剤に関するその他の実施形態は、上述したコレステロール引き抜き促進剤の実施形態と同様である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0048】
〔試験例1:コレステロール引き抜き作用の評価〕
<柑橘果実抽出物の調製1>
レモンの混濁果汁(2つの異なる混濁果汁サンプルA及びBを使用した。)、レモンのパルプ、レモンの果皮(2つの異なる果皮サンプルA及びBを使用した。)、及びグレープフルーツの果汁から、それぞれ柑橘果実抽出物を調製した。なお、パルプとは、さじょう膜及びじょうのう膜等に由来する果汁中の不溶性成分を指す。
【0049】
(果汁からの柑橘果実抽出物の調製)
混濁果汁に0.5等量の酢酸エチルを加えて混和した後、水相を回収した(精製工程)。これを3回繰り返した。最後に回収した水相から凍結乾燥で水分を除去し(除去工程)、残った固形分を柑橘果実抽出物(水に溶け込む成分の混合物)として回収した。回収した柑橘果実抽出物を水に再溶解させ(濃度:10g/L)、試験溶液とした。
【0050】
(パルプからの柑橘果実抽出物の調製)
パルプ50gに溶媒として水200mLを加え、室温で撹拌して抽出した。抽出後、8000rpm,10分間の条件で遠心分離し、沈殿物を除去して、上清を回収した(抽出液取得工程)。回収した上清から凍結乾燥で水分を除去し(除去工程)、残った固形分を柑橘果実抽出物として回収した。回収した柑橘果実抽出物を水に再溶解させ(濃度:10g/L)、試験溶液とした。
【0051】
(果皮からの柑橘果実抽出物の調製)
果皮50gに溶媒として水200mLを加え、室温で撹拌して抽出した。抽出後、8000rpm,10分間の条件で遠心分離し、沈殿物を除去して、上清を回収した(抽出液取得工程)。回収した上清から凍結乾燥で水分を除去し(除去工程)、残った固形分を柑橘果実抽出物として回収した。回収した柑橘果実抽出物を水に再溶解させ(濃度:10g/L)、試験溶液とした。
【0052】
<柑橘果実抽出物の調製2>
ブラッドオレンジ、きんかん及びミネオラオレンジの果皮から、それぞれ柑橘果実抽出物を調製した。
【0053】
(果皮からの柑橘果実抽出物の調製)
果皮50gに溶媒としてエタノール200mLを加え、室温で撹拌して抽出した。抽出後、8000rpm,10分間の条件で遠心分離し、沈殿物を除去して、上清を回収した(抽出液取得工程)。回収した上清からエバポレーターでエタノールを除去し(除去工程)、残った固形分を柑橘果実抽出物として回収した。回収した柑橘果実抽出物をジメチルスルホキシド(DMSO)に再溶解させ(濃度:10g/L)、試験溶液とした。
【0054】
<コレステロール引き抜き試験>
コレステロール引き抜き試験は、以下に示す手順で実施した。なお、各試験溶液それぞれについて、n=2で測定を実施した。
【0055】
THP−1マクロファージ様細胞を、320nMのホルボールミリステートアセテート(PMA)及び10%FBSを含むRPMI1640培地にて4×10
5細胞/mLに調製し、1mLづつ12ウェルプレートに播種し、5%CO
2、37℃の条件下で72時間培養した。
【0056】
その後、各ウェルの培地を取り除き、細胞を10%FBS含有RPMI1640培地で洗浄後、[
3H]コレステロール(0.33μCi/mL)を含む10%FBS含有RPMI1640培地1mLを各ウェルに添加して、同様に24時間培養し、細胞内に[
3H]コレステロールを取り込ませた。
【0057】
次いで、各ウェルの培地を取り除き、細胞を10%FBS含有RPMI1640培地で洗浄後、試験溶液(水溶性エキスは20μg/mL、脂溶性エキスは4μg/mL。)及び高比重リポ蛋白質(HDL)(50μg/mL)を含む10%FBS含有RPMI1640培地1mLを各ウェルに添加して、同様に24時間培養した。コントロールとして、試験溶液に代えて、水又はDMSOと、HDLを含む10%FBS含有RPMI1640培地1mLを各ウェルに添加して、同様に24時間培養した。
【0058】
24時間の培養後、各ウェルの培地を回収し、10000rpmで5分間遠心分離して、上清を回収して放射能測定用サンプル(培地サンプル)とした。また、各ウェルの細胞をPBSで洗浄して放射能測定用サンプル(細胞サンプル)とした。
【0059】
培地サンプル及び細胞サンプルの放射能をトリチウム(パーキンエルマー社製)で測定し、下記式に従ってコレステロール引き抜き能を算出した。
コレステロール引き抜き能=培地サンプル中の[
3H]量/(培地サンプル中の[
3H]量+細胞サンプル中の[
3H]量)
【0060】
各試験溶液のコレステロール引き抜き能をコントロールのコレステロール引き抜き能でそれぞれ除して、コレステロール引き抜き能の増加率を算出した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すとおり、柑橘果実抽出物を添加することにより、コレステロール引き抜き能が増加した。すなわち、柑橘果実抽出物は、コレステロール引き抜きを促進する作用を有していることが分かる。なお、レモンの混濁果汁、及びグレープフルーツの果汁から調製した柑橘果実抽出物中には、ヘスペレチンは含まれていなかった(検出限界以下であった。)。