【解決手段】少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系硬化剤とともに接着剤の成分として用いられる接着剤用樹脂組成物である。この接着剤用樹脂組成物は、ポリヒドロキシウレタン樹脂を含有する。このポリヒドロキシウレタン樹脂は、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(A)と少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)とが重合した構造単位を含むとともに、その構造単位中に、ウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含む。また、このポリヒドロキシウレタン樹脂は、アミン価が1〜50mgKOH/gであり、水酸基価が10〜230mgKOH/gである。
前記ポリヒドロキシウレタン樹脂は、前記構造単位中に、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造をさらに含む請求項1又は2に記載の接着剤用樹脂組成物。
前記化合物(A)は、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造をさらに有する化合物(aII)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤用樹脂組成物。
前記化合物(B)は、両末端に第一級アミノ基を有するとともに分子内に少なくとも1つの第二級アミノ基を有する化合物(b)を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
<接着剤用樹脂組成物>
本発明の一実施形態の接着剤用樹脂組成物は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系硬化剤とともに接着剤の成分として用いられる接着剤用樹脂組成物である。エポキシ系硬化剤については後述することとし、まず、接着剤用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と記載することがある。)について説明する。
【0012】
接着剤用樹脂組成物は、ポリヒドロキシウレタン樹脂を含有する。このポリヒドロキシウレタン樹脂は、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(A)と少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)とが重合した構造単位を含むとともに、上記構造単位中に、ウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含む。このポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン価は1〜50mgKOH/gである。また、このポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価は10〜230mgKOH/gである。なお、本明細書において、ポリヒドロキシウレタン樹脂に含まれる「第二級アミノ基」は、ウレタン結合(−NHCOO−)における−NH−を意味するものではない。
【0013】
上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂を含有する樹脂組成物を、2以上のエポキシ基を有するエポキシ系硬化剤とともに接着剤の成分として用いることで、ガラスに対する接着性が良好であり、かつ、接着後の外観が良好な接着剤を得ることが可能となる。上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂中の第二級アミノ基と、エポキシ系硬化剤中のエポキシ基とで硬化反応が生じると考えられ、それにより、上記効果が奏されるものと考えられる。
【0014】
ガラスに対する接着性をさらに高めやすくなる観点から、後述する通り、上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂は、上記構造単位中に、さらに、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造を含むことが好ましい。さらには、上記ポリオールに由来する構造の含有割合は、上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂の全質量を基準として、5〜70質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、20〜65質量%であることがさらに好ましい。このようなポリヒドロキシウレタン樹脂を用いることにより、接着剤に適度な柔軟性及び強度を発現させやすい。
【0015】
上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂は、樹脂組成物の主成分であることが好ましい。樹脂組成物中の樹脂分は、実質的に上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂からなるものであってもよく、上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂とともに、他の樹脂(上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂以外のポリヒドロキシウレタン樹脂も含む)を含有するものであってもよい。樹脂組成物中の上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂の含有量は、樹脂組成物中の全固形分質量を基準として、50〜100質量%であることが好ましく、60〜100質量%であることがより好ましく、70〜100質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
[ポリヒドロキシウレタン樹脂]
以下、上記特定のポリヒドロキシウレタン樹脂について詳細に説明するが、その説明の便宜上、まず、ポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法について説明する。
【0017】
ポリヒドロキシウレタン樹脂は、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(A)と、少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)とが重合した構造単位を含む。本明細書において、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(A)を、「環状カーボネート化合物(A)」又は単に「化合物(A)」と記載することがある。また、本明細書において、少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)を、「アミン化合物(B)」又は単に「化合物(B)」と記載することがある。
【0018】
化合物(A)及び化合物(B)が重合した構造単位、及びそれを含むポリヒドロキシウレタン樹脂は、化合物(A)と化合物(B)とを重付加反応させることによって得ることができる。化合物(A)及び化合物(B)などの各モノマー成分は、それぞれについて複数種が用いられてもよく、また、それにより、ポリヒドロキシウレタン樹脂は共重合体の場合も含まれるため、上記構造単位は複雑となり、一つの化学式で表すことは困難である。そのため、以下では例を挙げて、ポリヒドロキシウレタン樹脂の構造について説明する。
【0019】
少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(A)と、少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)との反応スキームから、ポリヒドロキシウレタン樹脂の構造を説明する。その前提として、五員環環状カーボネート構造を有する化合物と、アミンとの反応においては、下記の一般反応式(R−i)で表されるモデル反応のように、五員環環状カーボネート構造が開裂することにより水酸基を有する構造が得られる。また、五員環環状カーボネート構造の開裂の仕方は2種あり、それにより、第一級水酸基(第一級炭素に結合した水酸基)を有する構造の生成物と、第二級水酸基(第二級炭素に結合した水酸基)を有する構造の生成物の両方が得られることとなる。
【0021】
したがって、ポリヒドロキシウレタン樹脂には、環状カーボネート化合物(A)とアミン化合物(B)とが重合した構造単位中に、ウレタン結合及び水酸基が含まれることとなる。例えば、下記一般式(A−1)で表される2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物と、下記一般式(B−1)で表されるジアミン化合物との重付加反応により得られる高分子は、下記一般式(I)〜(IV)で表される4種類の化学構造が生じ、これらはランダム位に混在すると考えられる。また、例えば、下記一般式(A−2)で表される2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物と、一般式(B−1)で表されるジアミン化合物との重付加反応により得られる高分子は、下記一般式(V)〜(VIII)で表される4種類の化学構造が生じ、これらはランダム位に混在すると考えられる。
【0032】
一般式(A−1)、(A−2)、及び(I)〜(VIII)中のXは直接結合又は2価の有機基を表し、R
1は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。一般式(B−1)、及び(I)〜(VIII)中のZ
1は2価の有機基を表す。X及びZ
1が表す2価の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基)をとることができる。
【0033】
(環状カーボネート化合物(A))
ポリヒドロキシウレタン樹脂の原料成分の1つである環状カーボネート化合物(A)は、1分子中に少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造のほか、さらに、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造を有する化合物(aII)を含むことが好ましい。これにより、ポリヒドロキシウレタン樹脂における構造単位中に、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造を含ませることが可能となり、ガラスに対する接着性がさらに高まりやすくなる。この観点から、化合物(A)は、上記化合物(aII)、及び上記化合物(aII)以外の化合物(A)に該当する化合物(aI)の両方を含むことがより好ましい。
【0034】
なお、本明細書では、1分子中に少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造と、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造とを有する化合物(aII)を、「環状カーボネート化合物(aII)」又は単に「化合物(aII)」と記載することがある。また、本明細書では、化合物(aII)と区別するために、その化合物(aII)以外の化合物(A)に該当する化合物(aI)を、「環状カーボネート化合物(aI)」又は単に「化合物(aI)」と記載することがある。
【0035】
(環状カーボネート化合物(aI))
環状カーボネート化合物(aI)は、例えば、下記一般反応式(R−ii)で表されるモデル反応のように、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と二酸化炭素との反応によって得ることができる。例えば、原材料であるエポキシ化合物を、触媒の存在下、0〜160℃の温度にて、大気圧〜1MPa程度に加圧した二酸化炭素雰囲気下で4〜24時間反応させる。この結果、二酸化炭素をエステル部位に固定化した化合物(五員環環状カーボネートを2以上有する化合物)を得ることができる。なお、一般反応式(R−ii)中のXは、上述のXをとることができる。
【0037】
エポキシ化合物と二酸化炭素との反応に使用される触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及びヨウ化ナトリウムなどのハロゲン化塩類;並びに4級アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。触媒の使用量は、エポキシ化合物100質量部に対して、1〜50質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがさらに好ましい。
【0038】
また、エポキシ化合物と二酸化炭素との反応は、有機溶剤の存在下で行うこともできる。有機溶剤は、触媒を溶解しうるものであればよい。このような有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤;メタノール、エタノール、及びプロパノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤を挙げることができる。
【0039】
上述した化合物(aI)の構造は、1分子中に2以上の五員環環状カーボネート構造を有していれば、特に制限されない。例えば、ベンゼン骨格、芳香族多環骨格、縮合多環芳香族骨格を持つものや、脂肪族系や脂環式系のいずれの環状カーボネート構造を有する化合物も使用可能である。ベンゼン骨格、芳香族多環骨格、縮合多環芳香族骨格を有するものとしては、以下の構造式(a1)〜(a7)でそれぞれ表される化合物を例示することができる。また、脂肪族系や脂環式系の構造を有するものとしては、以下の構造式(a8)〜(a15)でそれぞれ表される化合物を例示することができる。以下の構造式中のRは、H又はCH
3を表す。
【0055】
上述した環状カーボネート化合物(aI)のなかでも、上記一般式(A−1)で表される化合物が好ましく、一般式(A−1)中のXが2つのエーテル結合を含む2価の有機基を表し、R
1が水素原子を表す、下記一般式(A−3)で表される化合物がさらに好ましい。下記一般式(A−3)中のR
Xは2価の有機基を表す。その2価の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基)をとることができる。化合物(A)として一般式(A−3)で表される化合物と、化合物(B)として上記一般式(B−1)で表される化合物との重付加反応により得られる高分子は、上記一般式(I)〜(IV)中のR
1が水素原子でXが−O−R
X−O−である4種類の化学構造が生じ、これらはランダム位に混在すると考えられる。
【0057】
(環状カーボネート化合物(aII))
環状カーボネート化合物(aII)は、例えば、次のようにして得ることができる。すなわち、数平均分子量が500〜3000であるポリオール(以下、「ポリオール(D)」と記載することがある。)と、2以上のイソシアネート基を有する化合物(以下、「イソシアネート化合物(E)」と記載することがある。)とを、ポリオール(D)における水酸基に対してイソシアネート化合物(E)におけるイソシアネート基が過剰となる条件で反応させる。その後に、未反応で残ったイソシアネート基と、下記一般式(F)で表される化合物(以下、「化合物(F)」と記載することがある。)とを反応させることによって、化合物(aII)を得ることができる。
【0059】
一般式(F)中、R
fは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルカンジイル基(アルキレン基)を表す。このアルカンジイル基(−C
nH
2n−;n=1〜10)の炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。好適なアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基(エタン−1,1−ジイル基)、プロピレン基(プロパン−1,2−ジイル基)、プロピリデン基(プロパン−1,1−ジイル基)、イソプロピリデン基(プロパン−2,2−ジイル基)、トリメチレン基(プロパン−1,3−ジイル基)、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、及びテトラメチレン基(ブタン−1,4−ジイル基)などを挙げることができる。
【0060】
より具体的には、次のようにして、環状カーボネート化合物(aII)を合成することができる。まず、ポリオール(D)と、イソシアネート化合物(E)であるジイソシアネート化合物とを、イソシアネート基が水酸基に対して過剰となる配合比で混合し、20〜150℃の温度で理論イソシアネート%(NCO%)になるまで反応させる。これにより、ポリオールの末端にイソシアネート化合物が結合した、主鎖の両末端にイソシアネート基を有する化合物を得ることができる。次いで、化合物(F)を加えて20〜150℃の温度で、1〜24時間反応させることで、ポリオール(D)由来の構造と、両末端に五員環環状カーボネート構造とを有する環状カーボネート化合物(aII)を得ることができる。
【0061】
環状カーボネート化合物(aII)を得る際に用い得るポリオール(D)は、1分子中に2以上の水酸基を有する、数平均分子量500〜3000の化合物である。ポリオール(D)の数平均分子量が上記範囲であることにより、ポリオール(D)に由来する構造を含むポリヒドロキシウレタン樹脂に適度な柔軟性が発現され、また、化合物(B)との重合反応を生じやすい化合物(aII)が得られやすい。
【0062】
ポリオール(D)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらのポリオールはいずれも、市販品を用いてもよい。
【0063】
ポリエーテルポリオールは、例えば、多価アルコール又はアミンに、アルキレンオキシドを付加重合させることにより得ることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールなどが挙げられる。アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、及びジエチレントリアミンなどが挙げられる。アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、及び2,3−ブチレンオキシドなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールに用いられる多価アルコール、アミン、及びアルキレンオキシドは、いずれも1種又は2種以上が用いられてもよい。このようなポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などが挙げられる。また、ポリエーテルポリオールの別な重合方法としては、環状エーテルの開環重合が挙げられ、具体例としてはテトラヒドロフランの重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
【0064】
ポリエステルポリオールは、例えば、多価アルコールと、ジカルボン酸又はその誘導体とを脱水縮合することにより得ることができる。多価アルコールとしては、例えば、上記の通りのものが挙げられ、ポリエステルポリオールには、1種又は2種以上の多価アルコールを用いることができる。ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、及びアゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、並びにイソフタル酸、及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。ポリエステルポリオールには、1種又は2種以上のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができる。また、ポリエステルポリオールの別な重合方法としては、2価アルコール類を開始剤としたラクトンの開環重合などが挙げられる。
【0065】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、及びポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、並びにそれらのランダム/ブロック共重合体などが挙げられる。
【0066】
環状カーボネート化合物(aII)におけるポリオール(D)の含有割合は、前述の通り、ポリヒドロキシウレタン樹脂に、ポリオール(D)に由来する構造を5〜70質量%含ませ得る量とすることが好ましい。この観点から、化合物(aII)中のポリオール(D)の含有割合は、環状カーボネート化合物(aII)の全質量を基準として、40〜90質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましく、60〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0067】
環状カーボネート化合物(aII)を合成する際に用い得るイソシアネート化合物(E)は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であればよい。イソシアネート化合物(E)としては、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、及び4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、及び水添XDIなどの脂環式ジイソシアネート;末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
【0068】
環状カーボネート化合物(aII)を合成する際に用い得る化合物(F)は、上記一般式(F)の通り、1つの五員環環状カーボネート構造と、1つの水酸基を有する化合物である。化合物(F)としては、例えば、グリセリンカーボネート、1,3−ジオキソラン−2−オン−エタノール、1,3−ジオキソラン−2−オン−プロパノール、及び1,3−ジオキソラン−2−オン−イソブタノールなどが挙げられる。
【0069】
環状カーボネート化合物(aII)を合成するに当たり、ポリオール(D)とイソシアネート化合物(E)との反応や、未反応で残ったイソシアネート基と化合物(F)との反応の際には、必要に応じて触媒や有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、及びメチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;ジオキサン、及びテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、及び酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。
【0070】
(アミン化合物(B))
次に、ポリヒドロキシウレタン樹脂の原料成分の1つである、1分子中に少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)(アミン化合物(B))について説明する。アミン化合物(B)は、両末端に第一級アミノ基を有するとともに分子内に少なくとも1つの第二級アミノ基を有する化合物(b)(以下、「アミン化合物(b)」又は単に「化合物(b)」と記載することがある。)を含むことが好ましい。このアミン化合物(b)を用いることにより、ポリヒドロキシウレタン樹脂における、環状カーボネート化合物(A)とアミン化合物(B)とが重合した構造単位中に、第二級アミノ基を含ませることができる。
【0071】
アミン化合物(b)としては、以下に述べる化合物(bI)(以下、「アミン化合物(bI)」と記載することがある。)及び化合物(bII)(以下、「アミン化合物(bII)」と記載することがある。)のうちの少なくとも一方を用いることがより好ましい。
【0072】
(アミン化合物(bI))
アミン化合物(b)として、下記一般式(B−1)で表されるように、分子の両末端に第一級アミノ基(−NH
2)を有し、分子内に少なくとも1つの第二級アミノ基(−NH−;イミノ基と称してもよい。)を有する化合物(bI)を用いることができる。このアミン化合物(bI)中の第二級アミノ基は、前述の環状カーボネート化合物(A)との反応が起こらずにそのまま残る。そのため、アミン化合物(bI)を化合物(B)として用いることで、アミン化合物(bI)に由来する第二級アミノ基を、主鎖における、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位に含んだポリヒドロキシウレタン樹脂を得ることができる。
【0074】
一般式(B−1)中、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立に、その構造中にエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。aは0〜3の整数を表し、bは1〜5の整数を表す。エーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。アルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4の直鎖のアルキレン基がより好ましく、エチレン基、及びトリメチレン基(プロパン−1,3−ジイル基)がさらに好ましい。
【0075】
上記一般式(B−1)で表されるアミン化合物(bI)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブチレンジアミンなどを挙げることができる。これらの1種又は2種類以上を使用することが可能である。上記アミン化合物(bI)のなかでも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンがさらに好ましい。
【0076】
(アミン化合物(bII))
また、アミン化合物(b)として、分子の両末端に第一級アミノ基(−NH
2)を有し、分子内に少なくとも2つの第二級アミノ基(−NH−;イミノ基と称してもよい。)及び水酸基を有する化合物(bII)を用いることもできる。このアミン化合物(bII)としては、例えば、下記一般式(B−2)で表されるアミン化合物(bII)を好適に用いることができる。アミン化合物(bII)は、下記一般反応式(R−iii)で表されるモデル反応に例示されるように、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物(一般式(W)参照;以下、「エポキシ化合物(W)」と記載することがある。)と、1分子中に少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(一般式(B−3)参照;以下、「アミン化合物(B−3)」と記載することがある。)とを、エポキシ基に対してアミノ基が過剰となる条件下で反応させて得られる。このアミン化合物(bII)中の第二級アミノ基は、前述の環状カーボネート化合物(A)との反応が起こらずにそのまま残る。そのため、アミン化合物(bII)を化合物(B)として用いることで、アミン化合物(bII)に由来する第二級アミノ基を、主鎖における、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位に含んだポリヒドロキシウレタン樹脂を得ることができる。
【0078】
一般式(B−2)中のWは、エポキシ化合物(W)に由来する2価基を表し、R
6は、それぞれ独立に、アミン化合物(B−3)に由来する2価基を表す。Wとしては、例えば、2価の、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基が挙げられ、これらの基の構造中に、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基、及びハロゲン原子、並びにアルキレン基の炭素数が2〜6であり、かつ、繰り返し単位が1〜30であるポリアルキレングリコール鎖を含んでいてもよい。R
6としては、例えば、2価の、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜15芳香族炭化水素基が挙げられ、これらの基の構造中に、エーテル結合、スルホニル結合、水酸基及びハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0079】
アミン化合物(bII)を得る際に、エポキシ基に対してアミノ基が過剰となる条件としては、例えば、アミノ基とエポキシ基の当量比がアミノ基/エポキシ基=4/1以上の条件が好ましい。これにより、上記当量比が4/1の場合についての上記一般反応式(R−iii)で表されるモデル反応に例示するように、上記アミン化合物(bII)と、未反応で残ったアミン化合物(B−3)との混合物が得られる。この混合物をアミン化合物(B)として用いて、ポリヒドロキシウレタン樹脂を製造することもできる。すなわち、エポキシ化合物(W)と過剰量のアミン化合物(B−3)とを反応させた後、その反応により得られた上記アミン化合物(bII)と未反応のアミン化合物(B−3)との混合物を含む反応液に、前述の環状カーボネート化合物(A)を加えて反応させることで、ポリヒドロキシウレタン樹脂を製造することもできる。このように、ポリヒドロキシウレタン樹脂を得る際には、上述の第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)(アミン化合物(bI)及び(bII))とともに、そのアミン化合物(b)以外のアミン化合物(B−3)を併用してもよい。
【0080】
アミン化合物(bII)の原料として用いることが可能なアミン化合物(B−3)としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノへキサン(別名:ヘキサメチレンジアミン)、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、及び1,12−ジアミノドデカンなどの鎖状脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,6−シクロヘキサンジアミン、ピペラジン、及びビス(アミノプロピル)ピペラジンなどの環状脂肪族ポリアミン;キシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及び2,5−ジアミノピリジンなどの芳香族ポリアミンなどを挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらのなかでも、鎖状脂肪族ポリアミンが好ましい。
【0081】
また、アミン化合物(bII)の原料として用いることが可能なエポキシ化合物(W)には、前述の少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(aI)の原料成分に使用したエポキシ化合物と同様の構造を有する化合物を用いることが好ましい。具体的には、一般式(W)中のWが、前述の一般式(A−1)、(A−2)、及び(I)〜(VIII)中のXと同じ構造をとるエポキシ化合物(W)を用いることがより好ましい。
【0082】
以上に述べたアミン化合物(B)(アミン化合物(bI)、(bII)、及び(bI)と(B−3)の混合物、並びにそれらの混合物)と、前述の環状カーボネート化合物(A)(環状カーボネート化合物(aI)、(aII)、及びそれらの混合物)とを重付加反応させる。これにより、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位を含むとともに、その構造単位中に、ウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂を得ることができる。
【0083】
化合物(A)と化合物(B)との反応条件としては、例えば、化合物(A)と化合物(B)とを混合し、40〜200℃の温度で4〜24時間反応させればよい。この反応は、触媒の存在下で行うことも可能であり、また、無溶剤で行うことも可能であるが、溶剤中で行うことが好ましい。好適な溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル,トルエン、及びキシレンなどが挙げられる。
【0084】
上述したポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法において、化合物(A)及び化合物(B)の各種類、並びにそれらの使用量の調整などによって、アミン価が1〜50mgKOH/g、及び水酸基価が10〜230mgKOH/gであるポリヒドロキシウレタン樹脂を得ることができる。この特定のアミン価、及び水酸基価を有するポリヒドロキシウレタン樹脂を、本発明の一実施形態の樹脂組成物に用いる。
【0085】
(ポリヒドロキシウレタン樹脂の特性)
ポリヒドロキシウレタン樹脂を含有する樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系硬化剤とともに接着剤の成分として用いられる。この際、ポリヒドロキシウレタン樹脂中の第二級アミノ基と、エポキシ系硬化剤中のエポキシ基とを硬化反応させ得る観点から、ポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン価が低すぎると、硬化後の接着剤の架橋密度が低くなりすぎると考えられる。その結果、硬化後の接着剤において、十分な接着強度や耐熱性を発現し難くなると考えられる。一方で、ポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン価が高すぎると、架橋密度が高くなりすぎ、その結果、硬化後の接着剤において、柔軟性に乏しく硬脆い樹脂となり、十分な接着強度を発現し難くなると考えられる。このような観点から、ポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン価を1〜50mgKOH/gとする。ポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン価は、2mgKOH/g以上であることが好ましく、5mgKOH/g以上であることがより好ましく、また、40mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以下であることがより好ましく、20mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。本明細書において、「アミン価」は、試料(ポリヒドロキシウレタン樹脂)1g中に含まれるアミンを中和するのに要する酸と当量の水酸化カリウム(KOH;分子量約56.1)のmg数をいい、電位差滴定法により測定される値をとる。
【0086】
また、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価を10〜230mgKOH/gとする。ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価が10mgKOH/g以上であることにより、接着力を高めやすくなる。一方、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価が230mgKOH/g以下であることにより、水素結合による凝集力を適度に抑えやすく、接着剤としての適度な柔軟性が得られやすくなる。これらの観点から、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価は、10〜200mgKOH/gであることが好ましく、30〜180mgKOH/gであることがより好ましく、40〜150mgKOH/gであることがさらに好ましい。本明細書において、「水酸基価」は、試料(ポリヒドロキシウレタン樹脂)1g当たりの水酸基の含有量を、KOHのmg当量で表したものであり、JIS K 1557−1に規定される滴定法に準じて測定される値をとる。
【0087】
さらに、ポリヒドロキシウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000〜100000であることが好ましい。ポリヒドロキシウレタン樹脂のMnが3000以上であることにより、接着力をより高めやすくなる。一方、ポリヒドロキシウレタン樹脂のMnが100000以下であることにより、接着剤を調製した際の接着剤の粘度を、接着剤を塗工しやすい程度に適度に抑えやすくなる。これらの観点から、ポリヒドロキシウレタン樹脂のMnは、3000〜80000であることが好ましく、5000〜50000であることがさらに好ましい。本明細書において、「数平均分子量」は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を移動相としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算の値をとる。
【0088】
なお、樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。樹脂組成物は、接着剤に用いやすい観点から、有機溶剤を含有することが好ましく、液状(溶液状)の形態であることが好ましい。例えば、ポリヒドロキシウレタン樹脂の合成に使用可能な前述の溶剤、並びにポリヒドロキシウレタン樹脂の原料として用いられた環状カーボネート化合物(A)及びアミン化合物(B)の各合成に用いられた有機溶剤が、樹脂組成物に含有されていてもよい。また、樹脂組成物は、後述する各種添加剤を含有してもよい。
【0089】
以上詳述したポリヒドロキシウレタン樹脂を含有する樹脂組成物は、エポキシ系硬化剤とともに接着剤の成分として用いられる。これにより、接着剤において、ポリヒドロキシウレタン樹脂中の第二級アミノ基と、エポキシ系硬化剤中のエポキシ基とで硬化反応が生じると考えられ、ガラスに対する接着性が良好であり、かつ、接着後の外観が良好である接着剤を得ることが可能となる。そのため、上記ポリヒドロキシウレタン樹脂を含有する樹脂組成物は、ガラス用接着剤としてより好適である。
【0090】
[エポキシ系硬化剤]
エポキシ系硬化剤は、少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物である。エポキシ系硬化剤として、前述の環状カーボネート化合物(aI)の合成に用い得るエポキシ化合物を用いることもできる。そのようなものとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの脂肪族2官能エポキシ系硬化剤;グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びエポキシ化ポリブタジエンなどの脂肪族多官能エポキシ系硬化剤;並びにビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、及びジグリシジルフタレートなどの芳香族2官能エポキシ系硬化剤;などを挙げることができる。エポキシ系硬化剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のエポキシ系硬化剤のなかでも、脂肪族多官能エポキシ系硬化剤が好ましく、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、及びエポキシ化ポリブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0091】
樹脂組成物をエポキシ系硬化剤とともに接着剤の成分として用いる際の樹脂組成物とエポキシ系硬化剤との配合比率は、樹脂組成物中のポリヒドロキシウレタン樹脂の第二級アミノ基、及びエポキシ系硬化剤のエポキシ基の当量バランスを考慮して決めることが好ましい。樹脂組成物中のポリヒドロキシウレタン樹脂の第二級アミノ基に対する、エポキシ系硬化剤のエポキシ基の当量比(エポキシ基/第二級アミノ基)は、0.5〜2.0であることが好ましく、0.5〜1.8であることがより好ましく、0.7〜1.6であることがさらに好ましい。上記配合比率を決める際には、ポリヒドロキシウレタン樹脂(HPU)のアミン当量(g/eq.)、及びエポキシ系硬化剤のエポキシ当量(g/eq.)を用いることができる。例えば、上記当量比を1.0としてエポキシ系硬化剤を用いる場合、エポキシ系硬化剤の配合量は、[当量比1.0]×[HPUの配合量/HPUのアミン当量]×[エポキシ系硬化剤のエポキシ当量]により、算出することができる。また、ポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン当量は、KOHの分子量を56.1として上述したアミン価(mgKOH/g)から、56100/アミン価により算出することができる。
【0092】
<接着剤>
本発明の一実施形態の接着剤は、前述の接着剤用樹脂組成物と、前述のエポキシ系硬化剤とを含有する。この接着剤は、前述の接着剤用樹脂組成物を主剤成分とし、エポキシ系硬化剤を硬化剤成分とする2液硬化型の接着剤とすることができる。この接着剤は、接着剤用樹脂組成物とエポキシ系硬化剤とを混合することにより調製することができる。接着剤用樹脂組成物とエポキシ系硬化剤との配合比率は、接着剤用樹脂組成物中のポリヒドロキシウレタン樹脂の第二級アミノ基に対する、エポキシ系硬化剤のエポキシ基の当量比が前述の範囲となるようにすることが好ましい。
【0093】
接着剤は、必要に応じて、ポリヒドロキシウレタン樹脂の第二級アミノ基と、エポキシ系硬化剤のエポキシ基との反応を促進させるための触媒を含有してもよい。触媒としては、例えば、イミダゾール化合物、有機リン系化合物、三級アミン化合物、四級アンモニウム塩、環状アミン類、及びアルカリ金属化合物などを挙げることができる。触媒の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
また、接着剤は、必要に応じて、前述のポリヒドロキシウレタン樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びフェノール系樹脂などを挙げることができる。他の樹脂の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
さらに、接着剤は、必要に応じて、種々の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤、シランカップリング剤、粘着付与剤(ロジン、テルペンなど)、可塑剤、充填剤、増粘剤、及び顔料などを挙げることができる。各添加剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
上述した接着剤は、前述の接着剤用樹脂組成物及びエポキシ系硬化剤を含有するため、ガラスに対する接着性が良好であり、かつ、接着後の外観が良好である。そのため、この接着剤は、ガラス用接着剤であることが好ましく、以下に述べるように、接着剤により接着させる対象の少なくとも一方として、ガラス製の基材に適用されることが好ましい。
【0097】
<接着構造体>
本発明の一実施形態の接着構造体は、ガラス製の第1の基材と、第2の基材とが、上述した接着剤を介して接着されているものである。第2の基材の材質は特に制限されず、例えば、ガラス、プラスチック、金属、及び紙などを挙げることができ、これらのなかでもガラス、及びプラスチックが好ましく、ガラスがより好ましい。基材の形態としては、特に制限されないが、シートやフィルムが好ましく、接着構造体の形態としては、第1の基材及び第2の基材が接着剤を介して貼り合わされた積層体が好ましい。接着構造体の好適な用途としては、例えば、少なくともガラス製の部品(第1の基材)を備える、ディスプレイ用部材などを挙げることができる。ディスプレイ用部材を構成する部品としては、例えば、ガラス基板、偏光板、電極シート、及びカラーフィルターなどを挙げることができる。
【0098】
接着構造体を製造するに当たり、上述した接着剤は、ガラス製の第1の基材及び第2の基材のいずれに設けられてもよい。また、接着剤は、基材に直接塗布されてもよいし、離型シート(離型紙や樹脂製の離型フィルムなど)に塗布された後、基材に転写されてもよい。基材及び離型シートなどへの接着剤の塗布方法としては、例えば、ナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター、ロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーター及びディッピングなどの方法を採ることができる。
【0099】
なお、本発明の一実施形態の接着剤用樹脂組成物は、以下の構成を採ることが可能である。
[1]少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系硬化剤とともに接着剤の成分として用いられる接着剤用樹脂組成物であって、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(A)と少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)とが重合した構造単位を含むとともに、前記構造単位中に、ウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂を含有し、前記ポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン価が1〜50mgKOH/gであり、前記ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価が10〜230mgKOH/gである、接着剤用樹脂組成物。
[2]前記ポリヒドロキシウレタン樹脂の数平均分子量が3000〜100000である上記[1]に記載の接着剤用樹脂組成物。
[3]前記ポリヒドロキシウレタン樹脂は、前記構造単位中に、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造をさらに含む上記[1]又は[2]に記載の接着剤用樹脂組成物。
[4]前記ポリオールに由来する構造の含有割合が、前記ポリヒドロキシウレタン樹脂の全質量を基準として、5〜70質量%である上記[3]に記載の接着剤用樹脂組成物。
[5]前記化合物(A)は、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造をさらに有する化合物(aII)を含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
[6]前記化合物(B)は、両末端に第一級アミノ基を有するとともに分子内に少なくとも1つの第二級アミノ基を有する化合物(b)を含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
[7]前記接着剤が、ガラス用接着剤である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の接着剤用樹脂組成物。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の接着剤用樹脂組成物と、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系硬化剤とを含有する接着剤。
[9]ガラス製の第1の基材と、第2の基材とが、上記[8]に記載の接着剤を介して接着されている接着構造体。
【実施例】
【0100】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の一実施形態の接着剤用樹脂組成物をさらに具体的に説明するが、それは以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中において、「部」及び「%」との記載は、特に断らない限り、質量基準(それぞれ「質量部」及び「質量%」)である。
【0101】
<環状カーボネート化合物(A)の合成>
(合成例1;化合物(aI−1))
撹拌機、温度計、ガス導入管、及び還流冷却器を備えた反応容器に、エポキシ当量187g/eq.のビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名「エポトートYD−128」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)100部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100部、及びヨウ化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)20部を入れて均一に溶解し、溶液を調製した。その溶液を撹拌下、反応容器内に、炭酸ガスを0.5L/minの速度で導入しながら、100℃で10時間反応した。反応終了後、イソプロピルアルコールを2000部加えて、析出した白色沈殿をろ取し、乾燥機で乾燥して白色の粉末を得た。
【0102】
赤外分光光度計(商品名「FT−720」、株式会社堀場製作所製)を使用して、得られた粉末をIR分析したところ、910cm
−1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収ピークが消失し、新たに1800cm
−1付近にカーボネート基(カルボニル基)由来の吸収ピークが生じていることが分かった。このため、得られた粉末は、エポキシ基と二酸化炭素との反応により形成された環状構造のカーボネート基を有する、下記化学式(aI−1)で表される化合物(以下、「化合物(aI−1)」と記載する。)と確認された。なお、以下の合成例及び製造例においても、IR分析は上記した装置を用いて行った。
【0103】
【0104】
(合成例2;化合物(aI−2))
合成例1で使用したビスフェノールAジグリシジルエーテルを、エポキシ当量117g/eq.のレゾルシノールジグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX−201」、ナガセケムテックス株式会社製)に変更したこと以外は、上記合成例1で述べた反応手順及び反応後の手順と同様にして、白色の粉末を得た。合成例1で述べた分析方法と同様にして、得られた粉末をIR分析した結果、下記化学式(aI−2)で表される化合物(以下、「化合物(aI−2)」と記載する。)と確認された。
【0105】
【0106】
(合成例3;化合物(aI−3))
合成例1で使用したビスフェノールAジグリシジルエーテルを、エポキシ当量138g/eq.のネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX−211」、ナガセケムテックス株式会社製)に変更したこと以外は、上記合成例1で述べた反応手順と同様にして、反応を行った。反応終了後、酢酸エチル400部及び水800部を加え、1時間撹拌した。その後、酢酸エチル相を回収し、エバポレーターにて溶剤除去を行い、粘稠液体状の化合物を得た。合成例1で述べた分析方法と同様にして、得られた化合物をIR分析した結果、下記化学式(aI−3)で表される化合物(以下、「化合物(aI−3)」と記載する。)と確認された。
【0107】
【0108】
(合成例4;化合物(aII−1))
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリエステルポリオール(商品名「クラレポリオールP−1010」、株式会社クラレ製)100部、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)33.6部を入れた。そして、固形分が30%になるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れて均一に溶解した後、60℃で7時間反応させた。そして、イソシアネート%(NCO%)が1.6%となったことを確認した後、グリセリンカーボネート23.6部を加え、さらに5時間反応させた。IR分析によって、2260cm
−1付近のNCOピークが消失していることで、反応の終了を確認した。このようにして、2つの五員環環状カーボネート構造と、数平均分子量が1000のポリエステルポリオールに由来する構造を有する化合物(以下、「化合物(aII−1)」と記載する。)を得た。
【0109】
(合成例5;化合物(aII−2))
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1500のポリエチレングリコール100部と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)29.6部を入れた。そして、固形分が30%になるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れて均一に溶解した後、60℃で7時間反応させた。そして、イソシアネート%(NCO%)が1.16%となったことを確認した後、グリセリンカーボネート15.75部を加え、さらに5時間反応させた。IR分析によって、2260cm
−1付近のNCOピークが消失していることで、反応の終了を確認した。このようにして、2つの五員環環状カーボネート構造と、数平均分子量が1500のポリエーテルポリオールに由来する構造を有する化合物(以下、「化合物(aII−2)」と記載する。)を得た。
【0110】
(合成例6;化合物(aII−3))
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール(商品名「エタナコールUH200」、宇部興産株式会社製)100部と、トリレンジイソシアネート(TDI)17.42部を入れた。そして、固形分が30%になるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れて均一に溶解した後、60℃で7時間反応させた。そして、イソシアネート%(NCO%)が0.98%となったことを確認した後、グリセリンカーボネート11.81部を加え、さらに5時間反応させた。IR分析によって、2260cm
−1付近のNCOピークが消失していることで、反応の終了を確認した。このようにして、2つの五員環環状カーボネート構造と、数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールに由来する構造を有する化合物(以下、「化合物(aII−3)」と記載する。)を得た。
【0111】
<ポリヒドロキシウレタン樹脂の製造>
(製造例1;HPU1)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器を用意して内部を窒素置換した後、合成例1で得た化合物(aI−1)30部、合成例4で得た化合物(aII−1)70部、ヘキサメチレンジアミン(HMD)8.90部、ジエチレントリアミン(DETA)3.39部を入れた。そして、固形分が35%となるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れ、均一に溶解させた後、撹拌しながら80℃で10時間反応させて、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU1」と記載する。)の溶液を得た。得られた樹脂(HPU1)をIR分析したところ、1800cm
−1付近のカーボネート基(カルボニル基)由来の吸収ピークが消失しており、新たに1760cm
−1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収ピークが生じていることが分かった。以上より、化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)を含む化合物(A)と、HMD及びDETAを含む化合物(B)とが重合した構造単位中にウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むHPU1が得られたことが確認された。
【0112】
(製造例2;HPU2)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例3で得た化合物(aI−3)5部、合成例5で得た化合物(aII−2)95部、メタキシレンジアミン(MXDA)7.02部、及びトリエチレンテトラミン(TETA)0.84部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU2」と記載する。)の溶液を得た。製造例1で述べた分析方法と同様にして、HPU2をIR分析した結果、HPU1と同様、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位中にウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むHPU2が得られたことが確認された。
【0113】
(製造例3;HPU3)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器を用意して内部を窒素置換した後、ビスフェノールAグリシジルエーテル(商品名「エポトートYD−128」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製;後記表2中「エポキシ化合物1」と記載する。)10部と、1,12−ジアミノドデカン(DAD)45.9部を入れた。そして、固形分が35%となるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れ、均一に溶解させた後、撹拌しながら80℃で10時間反応させた。次いで、合成例2で得た化合物(aI−2)50部、合成例6で得た化合物(aII−3)50部を入れ、80℃でさらに10時間反応を行い、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU3」と記載する。)の溶液を得た。製造例1で述べた分析方法と同様にして、HPU3をIR分析した結果、HPU1と同様、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位中にウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むHPU3が得られたことが確認された。
【0114】
(製造例4;HPU4)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例1で得た化合物(aI−1)30部、合成例4で得た化合物(aII−1)70部、HMD3.82部、及びDETA7.90部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU4」と記載する。)の溶液を得た。製造例1で述べた分析方法と同様にして、HPU4をIR分析した結果、HPU1と同様、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位中にウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むHPU4が得られたことが確認された。
【0115】
(製造例5;HPU5)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例1で得た化合物(aI−1)30部、合成例4で得た化合物(aII−1)70部、HMD11.45部、及びDETA1.13部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU5」と記載する。)の溶液を得た。製造例1で述べた分析方法と同様にして、HPU5をIR分析した結果、HPU1と同様、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位中にウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むHPU5が得られたことが確認された。
【0116】
(製造例6;HPU6)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例1で得た化合物(aI−1)50部、HMD11.32部、及びDETA1.12部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU6」と記載する。)の溶液を得た。製造例1で述べた分析方法と同様にして、HPU6をIR分析した結果、HPU1と同様、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位中にウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むHPU6が得られたことが確認された。
【0117】
(製造例7;HPU7)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例3で得た化合物(aI−3)50部、DAD24.77部、及びTETA2.01部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU7」と記載する。)の溶液を得た。製造例1で述べた分析方法と同様にして、HPU7をIR分析した結果、HPU1と同様、化合物(A)と化合物(B)とが重合した構造単位中にウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むHPU7が得られたことが確認された。
【0118】
(製造例8;HPU8)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例1で得た化合物(aI−1)30部、合成例4で得た化合物(aII−1)70部、及びDETA11.29部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU8」と記載する。)の溶液を得た。
【0119】
(製造例9;HPU9)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例2で得た化合物(aI−2)90部、合成例4で得た化合物(aII−1)10部、HMD29.90部、及びDETA2.95部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU9」と記載する。)の溶液を得た。
【0120】
(製造例10;HPU10)
製造例1で用いた化合物(aI−1)及び化合物(aII−1)、並びにHMD及びDETAに替えて、合成例1で得た化合物(aI−1)30部、合成例4で得た化合物(aII−1)70部、及びHMD12.72部を用いた。それ以外は、製造例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、「HPU10」と記載する。)の溶液を得た。
【0121】
(製造例11;PU1)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器を用意して内部を窒素置換した後、数平均分子量1000のポリエステルポリオール(商品名「クラレポリオールP−1010」、株式会社クラレ製;後記表2中「ポリオール化合物1」と記載する。)50部、2,2’−[イソプロピリデンビス[(p−フェニレン)(オキシ)]]ジエタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製;後記表2中「ジオール化合物1」と記載する。)50部、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)29.20部を入れた。そして、固形分が35%となるようにDMFを入れて均一に溶解させた後、撹拌しながら80℃で10時間反応させた。IR分析によって、2260cm
−1付近のNCOピークが消失していることで、反応の終了を確認し、ポリウレタンプレポリマー(以下、「PU1」と記載する。)の溶液を得た。
【0122】
上記各製造例で得られた樹脂(HPU1〜10、PU1)について、以下に述べる方法にて、アミン価、水酸基価、数平均分子量を測定した。
【0123】
(アミン価)
上記各製造例で得られた樹脂(HPU1〜10)について、以下の通り、アミン価を測定した。樹脂の溶液を固形分(樹脂)として1g秤量し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。溶解した樹脂溶液に、電位差滴定法により、0.05mol/L塩酸で滴定を行い、下記式(1)にてアミン価(mgKOH/g)を算出した。
【0124】
【0125】
(水酸基価)
上記各製造例で得られた樹脂(HPU1〜10、PU1)について、JIS K 1557−1に規定される中和滴定法に準じて、以下の通り、水酸基価(mgKOH/g)を測定した。試料を下記表1に基づき秤量し、アセチル化試薬(無水酢酸25gにピリジンを加え100mLとしたもの)5mLを加えて、95〜100℃で1時間反応を行った。反応後、放冷し、水1mLを加えて振り動かし、再び95〜100℃で10分間加熱し、無水酢酸を分解した。放冷後、フェノールフタレイン数滴を指示薬として加え、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が約30秒間続いた時を終点とした。空試験として、試料を入れないで同様の操作を行った。そして、下記式(2)により水酸基価を算出した。
【0126】
【0127】
A:空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
B:滴定に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
【0128】
(数平均分子量)
上記各製造例で得られた樹脂(HPU1〜10、PU1)について、GPCにより、以下の条件で数平均分子量を測定した。
装置:GPC装置(商品名「GPC−8820」、東ソー株式会社製)
カラム:4本(商品名「Super AW2500,AW3000,AW4000,AW5000」、東ソー株式会社製)
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
注入量:50μL
流速:0.5mL/min
測定温度:40℃
検出器:GPC−8820内蔵RI検出器
標準物質:標準ポリスチレン
【0129】
上記各製造例で得られた樹脂についてのアミン価、水酸基価、及び数平均分子量の測定結果を、各樹脂の製造に用いた材料及びその量(単位:部)とともに、表2(表2−1及び表2−2)に示す。表2には、樹脂(固形分)の全質量を基準とした、ポリオールに由来する構造の含有割合(%)についても、「ポリオール含有率(%)」と記載して示した。このポリオール含有率は、樹脂を構成するモノマー原料の使用量から算出した。
【0130】
【0131】
【0132】
<接着剤組成物の調製>
上記各製造例で得られた樹脂(HPU1〜10、PU1)の溶液、並びに以下に示すエポキシ系硬化剤(EP1、EP2、EP3)及びイソシアネート系硬化剤(NCO1)を用いて、実施例1〜7及び比較例1〜5の各接着剤組成物を調製した。使用した樹脂と硬化剤の種類及び配合量は、表3(表3−1及び表3−2)の上段(単位;固形分換算の部)に示す通りとした。なお、実施例並びに比較例1及び2におけるエポキシ系硬化剤の配合量は、ポリヒドロキシウレタン樹脂(HPU)の第二級アミノ基に対する、エポキシ系硬化剤のエポキシ基の当量比が、表3中の「当量比(E/A)」欄に示す値となる量とした。
【0133】
EP1:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量168g/eq.、商品名「デナコールEX−512」、ナガセケムテックス株式会社製)
EP2:エポキシ化ポリブタジエン(エポキシ当量200g/eq.、商品名「NISSO−PB JP−100」、日本曹達株式会社製)
EP3:グリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量144g/eq.、商品名「デナコールEX−314」、ナガセケムテックス株式会社製)
NCO1:HDIのビウレット体(NCO%=23.5%、商品名「デュラネート24A−100」、旭化成株式会社製)
【0134】
<評価方法>
(接着強さ)
各実施例及び比較例について、調製した接着剤組成物を用いて、以下に述べるように試験体を作製した。被着材として、幅25mm、長さ150mm、厚さ3mmのガラス板を2枚用意し、ガラス板の表面をエタノールで洗浄した。1枚のガラス板の一端(幅25mm)から長さ10mmの領域(25mm×10mmの一端側領域)に接着剤組成物をバーコーターにより、乾燥後の厚さが0.2mmとなるように塗布した。次いで、その塗布面に、もう1枚のガラス板を、その一端(幅25mm)から長さ10mmの領域で重ね合わせ、2枚のガラス板の重なり領域が塗布面の領域と一致するように貼り合わせ、クリップで仮固定を行った。その状態で、60℃で24時間の条件で硬化反応させ、引張せん断接着強さ試験用の試験体を作製した(JIS K6850「剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」に記載の試験片参照)。
【0135】
作製した各試験体について、20℃、60%RHの環境下、引っ張り速度50mm/分の条件にて、引張試験装置(商品名「AGS−X 10kN」、株式会社島津製作所製)を用いて、引張せん断接着強さ(MPa)を測定した。その接着強さの測定値を記録し、また、その測定値に基づいて、以下の評価基準にしたがって、ガラスに対する接着性を評価した。
A:引張せん断接着強さが5MPa以上であった。
B:引張せん断接着強さが3MPa以上5MPa未満であった。
C:引張せん断接着強さが3MPa未満であった。
【0136】
(接着後の外観)
作製した各試験体について、試験体を目視で確認することにより、以下の評価基準にしたがって、接着後の外観を評価した。
〇:試験体において、気泡が全く確認されなかった。
×:試験体において、気泡が確認された。
【0137】
上記の評価結果を表3(表3−1及び表3−2)に示す。
【0138】
【0139】
【0140】
表3に示す通り、実施例1〜7の接着剤組成物は、ガラスに対して良好な接着力を示すことが確認された。一方、比較例1〜5の接着剤組成物は、いずれも十分な接着力が得られなかった。比較例1の接着剤組成物では、その成分として使用されたHPU8のアミン価が高すぎたために、接着後(硬化後)において、架橋密度が高くなりすぎたことが原因と考えられる。比較例2の接着剤組成物では、その成分として使用されたHPU9の水酸基価が高すぎたために、接着後(硬化後)の樹脂が柔軟性に乏しく硬脆い性質のため接着力が出なかったと考えられる。比較例3の接着剤組成物は、第二級アミノ基を有しないHPU10に対して、硬化剤を使用しなかったものであり、また、比較例4の接着剤組成物は、第二級アミノ基を有しないHPU10に対して、イソシアネート系硬化剤を使用したものであった。この比較例3及び4の結果と、実施例の結果とから、特定のポリヒドロキシウレタン樹脂における第二級アミノ基と、エポキシ系硬化剤におけるエポキシ基との硬化反応が、接着性に寄与していると推測された。
【0141】
接着後の外観については、実施例1〜7及び比較例1〜3において、良好な結果であったことから、ポリヒドロキシウレタン樹脂に対して、イソシアネート系硬化剤を使用せず、エポキシ系硬化剤を使用することで接着後の外観を良好にできることがわかった。
前記ポリヒドロキシウレタン樹脂は、前記構造単位中に、数平均分子量が500〜3000であるポリオールに由来する構造をさらに含む請求項1又は2に記載の接着剤用樹脂組成物。
前記化合物(B)は、両末端に第一級アミノ基を有するとともに分子内に少なくとも1つの第二級アミノ基を有する化合物(b)を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤用樹脂組成物。
着剤用樹脂組成物であって、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物(A)と少なくとも2つの第一級アミノ基を有する化合物(B)とが重合した構造単位を含むとともに、前記構造単位中に、ウレタン結合、水酸基、及び第二級アミノ基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂を含有し、前記ポリヒドロキシウレタン樹脂のアミン価が1〜50mgKOH/gであり、前記ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価が10〜230mgKOH/gである、接着剤用樹脂組成物を提供する。