【実施例】
【0031】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。尚、実施例及び比較例において、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の評価は下記の方法で行った。
【0032】
〔評価方法〕
<1>表面状態
目視観察にて、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の表面状態を観察した。
<2>圧縮破壊強度
錠剤破壊強度測定器(富山産業社製、TH−203MP)を用いて、異形物を除いたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物20粒の圧縮破壊強度を測定し、平均値を圧縮破壊強度とした。
<3>ポロシティ
JIS R−1655:2003に従って測定した。
<4>比表面積
JIS Z 8830に従って測定した。
<5>X線多孔質解析
X線CTスキャン(Zeiss社製、商品名:「Xradia 520 Versa」)を用いて、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の断面状態を観察した。
【0033】
<6>水中からのオクタン除去率
1)オクタン水溶液の調製
a) 界面活性剤(カヨネ石鹸社製、商品名:「ソーブン」)0.0125gを500ml容のデュラン瓶にはかり取り、蒸留水を加え499.5gの水溶液とした。
b) 前記a)で調製した水溶液に約0.5gのオクタン(富士フィルム和光純薬社製、特級)を加え約500gとした。
c) 前記b)に続いて超音波ホモジナイザー(VibralSonics&Materials製、商品名:「Vibra Cell」)を使用し、均一な1000ppmオクタン水溶液を調製した。
d) 前記c)で調製したオクタン水溶液50gを25ppm界面活性剤水溶液450gが入った500ml容デュラン瓶に移した。
e)前記d)に続いて超音波ホモジナイザーを使用し、均一な100ppmオクタン水溶液を調製した。
2)検量線の作製
a) 前記1)で調製したオクタン1000及び100ppm水溶液を用いて、500から0.1ppmまでの検量線作成用水溶液の調製を、NaCl(和光純薬社製、特級)1gの入ったGC用ガラスバイアルで行った。尚、希釈の際には25ppm界面活性剤水溶液を使用した。
b) 25ppm界面活性剤水溶液1mlを別のNaCl(1g)の入ったGC用ガラスバイアルに入れ、検量線用空試験水溶液とした。
c)検量線用オクタン水溶液(1000〜0.1ppm)及び検量線用空試験水溶液をGC(島津製作所社製、商品名:「GC−2014」)にて測定し、検量線を作製した。
3)水中からのオクタン除去率の算出
a) ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物5gをはかりとり、ねじ口管瓶に入れた。
b) 前記a)でペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を入れたねじ口管瓶に前記1)で調製した1000及び100ppmのオクタン水溶液を加えた。
c) 前記b)でオクタン水溶液を加えたねじ口管瓶を卓上振とう器(日伸理化社製)にセットし、3時間振とうし、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物にオクタンを吸着させた。
d) 吸着後のオクタン水溶液1mlをNaCl(1g)の入ったGC用ガラスバイアルにマイクロピペットを用いて入れ、速やかに密栓した。
e) 吸着後のオクタン水溶液とNaClが混合するよう振り混ぜた。
f) 前記2)で作製した検量線から、吸着後のオクタン水溶液の濃度よりオクタン除去率を算出した。
【0034】
<7>水中からのテトラクロロエチレンの除去率
1)テトラクロロエチレン水溶液の調製
a)メタノール(富士フィルム和光純薬社製、特級)40g及びテトラクロロエチレン(富士フィルム和光純薬社製、特級)0.5gを500ml容のデュラン瓶にはかり取り、蒸留水を加え500gとした。
b)前記a)に続き、超音波ホモジナイザーを使用し、均一な1000ppmテトラクロロエチレン水溶液を調製した。
c)前記b)で調製したテトラクロロエチレン水溶液50gを8%メタノール水溶液450gが入った500ml容デュラン瓶に移した。
d)前記c)に続いて、超音波ホモジナイザーを使用し、均一な100ppmテトラクロロエチレン水溶液を調製した。
2)検量線の作製
a)前記1)で調製したテトラクロロエチレン1000及び100ppm水溶液を用いて、500から0.1ppmまでの検量線作成用水溶液の調製を、NaCl(和光純薬社製、特級)1gの入ったGC用ガラスバイアルで行った。尚、希釈の際には8%メタノール水溶液を使用した。
b)8%メタノール水溶液10gを別のNaCl 1gの入ったGC用ガラスバイアルに入れ、検量線用空試験水溶液とした。
c)検量線用テトラクロロエチレン水溶液(1000〜0.1ppm)及び検量線用空試験水溶液をGC(島津製作所社製、GC−2014)にて測定し、検量線を作成した。
3) 水中からのテトラクロロエチレン除去率の算出
a)ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物5gをはかりとり、ねじ口管瓶に入れた。
b)前記a)でペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を入れたねじ口管瓶に前記1)で調製した1000及び100ppmのテトラクロロエチレン水溶液を加えた。
c)前記b)でテトラクロロエチレン水溶液を加えたねじ口管瓶を卓上振とう器(日伸理化社製)にセットし、3時間振とうし、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物にテトラクロロエチレンを吸着させた。
d)吸着後のテトラクロロエチレン水溶液5mlをNaCl(1g)の入ったGC用ガラスバイアルにマイクロピペットを用いて入れ、速やかに密栓した。
e)吸着後のテトラクロロエチレン水溶液とNaClが混合するよう振り混ぜた。
f)前記2)で作製した検量線から、吸着後のテトラクロロエチレン水溶液の濃度よりテトラクロロエチレン除去率を算出した。
【0035】
<8>水中からの水銀除去率
1)水銀水溶液の調整
a)水銀標準液(関東化学社製、Hg1000)5gをPPチューブにはかり取り、0.3M硝酸水溶液(関東化学社製、超高純度試薬)を加え10gとし、500ppm水銀水溶液を調製した。
b)前記a)で調製した水銀水溶液0.5gをPP製コニカルチューブに入れ、蒸留水50gを加え、5000ppb水銀水溶液を調製した。
2)検量線の作製
a)前記1)で調製した500ppm水銀水溶液を用いて、1000から1ppbまでの検量線作成用水溶液の調製を、PPチューブで行った。尚、希釈の際には0.3M硝酸水溶液を使用した。
b)0.3M硝酸水溶液10gを別のPPチューブに入れ、検量線用空試験水溶液とした。
c)検量線用水銀水溶液(1000〜1ppb)及び検量線用空試験水溶液をICP−MS(島津製作所社製、商品名:「ICP−2030」)にて測定し、検量線を作成した。
3)水中からの水銀除去率の算出
a)ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物5gをはかりとり、PPチューブに入れた。
b)前記a)でペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を入れたPPチューブに前記1)で調製した5000ppbの水銀水溶液を加えた。
c)前記b)で水銀水溶液を入れたPPチューブを卓上振とう器(日伸理化社製)にセットし、3時間振とうし、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物に水銀を吸着させた。
d)吸着後の水銀水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、PPチューブへ入れた。
e)前記d)でろ液2mlを入れたPPチューブに0.375M硝酸水溶液(関東化学社製、特級)8mlを加え、良く混合した。
f)前記2)で作製した検量線から、吸着後の水銀水溶液の濃度より水銀除去率を算出した。
【0036】
(実施例1)
酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体(東ソー社製、商品名:「リューロンペースト(商標登録)」、G50)312.5gにフタル酸ジ2−エチルヘキシル(花王社製、商品名:「ビニサイザー(商標登録)、80K」)187.5gを添加し、バインダーゾルを調製した。
ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製、商品名:「FM10B」、9L)に塩化ビニル系重合体(大洋塩ビ社製、塩ビホモポリマー、商品名:「TH−3800」)1,000gと安定剤(ADEKA社製、商品名:「アデカスタブ(商標登録)、SC−308E」)30gを加えて1380回転/分で混合を開始した後、上記バインダーゾルを添加し、添加完了後から10分間混合し、コンパウンドを調製した。
このコンパウンドを500g分取して転動造粒装置(菊水製作所社製、商品名:「No.16D」)に移し、傾斜角75度、25回転/分の条件で転動を開始し、転動するコンパウンドに対し適宜造粒促進剤として水を噴霧する事で造粒した。造粒完了後、得られた造粒物に対し転動操作を2時間継続した。
前記造粒物をギヤーオーブン(ヤマト科学社製、定温乾燥器、商品名:「DX402」)に移し、80℃で8時間乾燥することで造粒促進剤である水を蒸発した。その後、同ギヤーオーブンにて130℃で5分間焼結することで、バインダーゾルをゲル化させ、造粒物を固化した。固化した造粒物を目開き10mmの仕上げ用篩を用いて分級し、篩上に残留したペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度40.4N、ポロシティ0.312ml/g、比表面積2.1m
2/gを有し、1000ppmのオクタン水溶液から60.5%、100ppmのオクタン水溶液から97.6%のオクタンを除去した(表1参照)。同組成物の表面写真を
図1、X線CT画像を
図2に示す。
図2より、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の内部に多くのマクロ孔が存在することが明らかである。
【0037】
(実施例2)
実施例1において、転動造粒法から打錠成形機(畑鐵工所社製、金型直径φ6mm)を使用した打錠成形法に変更し、乾燥操作を実施無しとした以外は、実施例1と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度10.2N、ポロシティ0.308ml/g、比表面積2.0m
2/gを有し、1000ppmのオクタン水溶液から97.0%、100ppmのオクタン水溶液から99.7%のオクタンを除去し、1000ppmのテトラクロロエタン水溶液から90.0%、100ppmのテトラクロロエタン水溶液から91.7%のテトラクロロエタンを除去した(表1参照)。同組成物の表面写真を
図3、X線CT画像を
図4に示す。
図4より、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の内部に多くのマクロ孔が存在することが明らかである。
【0038】
(実施例3)
実施例1において、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体(東ソー社製、商品名:「リューロンペースト(商標登録)、G50」)の添加量を156.3gとし、フタル酸ジ2−エチルヘキシル(花王社製、商品名:「ビニサイザー(商標登録)、80K」)の添加量を93.8gとした以外は、実施例1と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度32.4N、ポロシティ0.325ml/g、比表面積2.3m
2/gを有し、1000ppmのオクタン水溶液から58.2%、100ppmのオクタン水溶液から97.0%のオクタンを除去し、1000ppmのテトラクロロエタン水溶液から82.5%、100ppmのテトラクロロエタン水溶液から82.0%のテトラクロロエタンを除去した(表1参照)。
【0039】
(実施例4)
実施例1において、塩化ビニル系重合体(大洋塩ビ社製、塩ビホモポリマー、商品名:「TH−3800」)の添加量を575gとし、塩化ビニル系重合体と安定剤(ADEKA社製、商品名:「アデカスタブ(商標登録)、SC−308E」)を混合するタイミングで硫化亜鉛(富士フイルム和光純薬社製)を425g添加するとした以外は、実施例1と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度54.7N、ポロシティ0.143ml/g、比表面積1.6m
2/gを有し、5000ppbの水銀水溶液から92.4%の水銀を除去した(表1参照)。同組成物の表面写真を
図5、X線CT画像を
図6に示す。
図6より、白く見える硫化亜鉛の粉末がペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の内部に分散しており、この硫化亜鉛に繋がる多くのマクロ孔が存在することが明らかである。
【0040】
(実施例5)
実施例4において、硫化亜鉛の替わりにイソプロピルキサントゲン酸亜鉛(大内新興化学工業社製、商品名:「ノクセラー(商標登録)ZIX」)を425g添加するとした以外は、実施例4と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度41.6N、ポロシティ0.181ml/g、比表面積1.8m
2/gを有し、5000ppbの水銀水溶液から99.6%の水銀を除去した(表1参照)。
【0041】
(比較例1)
実施例1において、コンパウンド化する前の塩化ビニル系重合体をそのまま使用し、ポロシティを評価した結果、0.462ml/gであった。実施例1〜5は粉末の塩化ビニル系重合体と比較するとポロシティは低下するが、ペレット化の前後でポロシティの消失は見られなかった。
【0042】
【表1】