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特開2021-161225ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-161225(P2021-161225A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20210913BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20210913BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20210913BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20210913BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20210913BHJP
   C08F 14/06 20060101ALI20210913BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20210913BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210913BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20210913BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20210913BHJP
   C09K 3/00 20060101ALN20210913BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCEV
   C08K3/30
   C08K5/37
   C08K5/36
   C08L27/06
   C08F14/06
   B01J20/26 E
   B01J20/26 G
   B01J20/28 A
   B01J20/30
   C02F1/28 C
   C09K3/00 107
   C09K3/00 108
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-63784(P2020-63784)
(22)【出願日】2020年3月31日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「高分子吸着剤による可燃性ガス回収技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301018278
【氏名又は名称】大洋塩ビ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】徳弘 幹平
(72)【発明者】
【氏名】澤田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 泉
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 美知子
【テーマコード(参考)】
4D624
4F070
4G066
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4D624AA04
4D624AA05
4D624AB06
4D624AB18
4D624BA17
4D624BB05
4D624BC04
4F070AA22
4F070AC20
4F070AC43
4F070AC50
4F070AE02
4F070AE03
4F070DA25
4F070DA38
4F070DB01
4F070DC03
4F070DC06
4F070DC08
4F070DC15
4G066AA46D
4G066AB16D
4G066AB23D
4G066AC15B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA25
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA05
4G066CA12
4G066CA33
4G066CA47
4G066CA51
4G066DA07
4G066DA08
4G066FA03
4G066FA08
4G066FA21
4G066FA26
4G066FA28
4G066FA37
4J002BD03W
4J002BD03X
4J002BD04W
4J002BD04X
4J002BD05W
4J002BD05X
4J002DA066
4J002DA106
4J002DA116
4J002FD036
4J002FD207
4J002GD02
4J002GL00
4J100AC03P
4J100AG04Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100FA20
4J100FA21
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】安価で吸着性能に優れる新規吸着剤及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】懸濁重合法で得られた塩化ビニル系重合体、乳化重合法で得られた塩化ビニル系重合体および5〜40重量部の可塑剤の混合物を含むバインダーゾル、ならびに安定剤を含み、球形または円柱状の形状に造粒されてなり、該バインダーゾルにより造粒物の形状が固定化され、0.1〜0.5ml/gのポロシティを有するペレット状塩化ビニル系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁重合法で得られた塩化ビニル系重合体(以下「塩化ビニル系重合体(A)」という)、バインダーゾルおよび安定剤を含み、球形または円柱状の形状に造粒されてなり、該バインダーゾルにより造粒物の形状が固定化され、0.1〜0.5ml/gのポロシティを有するペレット状塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記塩化ビニル系重合体(A)100重量部当たり、15〜105重量部の前記バインダーゾル、および1〜10重量部の前記安定剤を主成分とし、該バインダーゾルは、上記重量尺度で10〜65重量部の乳化重合法で得られた塩化ビニル系重合体(以下、「塩化ビニル系重合体(B)」という)、および5〜40重量部の可塑剤の混合物からなる、請求項1に記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
吸着補助剤を前記塩化ビニル系重合体(A)100重量部当たり10〜90重量部の範囲で含有する請求項2に記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物からなる不純物吸着剤。
【請求項5】
前記吸着補助剤として金属硫化物を含む請求項4に記載の不純物吸着剤。
【請求項6】
前記金属硫化物が硫化亜鉛またはイソプロピルキサントゲン酸亜鉛である請求項5に記載の不純物吸着剤。
【請求項7】
ハロゲンを含んでもよい有機物を除去する請求項4〜6の何れか1項に記載の不純物吸着剤。
【請求項8】
重金属を除去する請求項5又は6に記載の不純物吸着剤。
【請求項9】
請求項2又は3に記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を製造する方法であって、下記の工程(a)〜(d)を含む、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法。
工程(a):乳化重合法で得られた塩化ビニル系重合体と可塑剤を混合しバインダーゾルとする、
工程(b):懸濁重合法で得られた塩化ビニル系重合体、該バインダーゾル及び安定剤、必要に応じ吸着補助剤を添加し、粉体ミキサーを用いて混合し、コンパウンドとする、
工程(c):該コンパウンドを、所定の回転方向に回転自在のパンまたはドラムを有する転動造粒装置を用い、造粒促進液を用いて、転動造粒法により球状に造粒する(工程(c)−1)か、あるいは
該コンパウンドを、所定の回転方向に回転自在の同心円上に設置された固定金型と上下金型とを有する打錠成形装置を用い、打錠成形法により柱状に造粒する(工程(c)−2)、
工程(d):該造粒物を、ギヤーオーブンを用いて加熱して乾燥後、焼結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の1次エネルギー需要は経済成長に伴って増加すると考えられ、今後も石油・天然ガスなどのエネルギー需要の増加が見込まれる。この需要増加に対応すべく、これまでは技術的に困難であった油田やガス田の開発も進むものと考えられる。一方、世界的な環境意識の高まりの中で、石油・天然ガス開発における要求も増えている。具体的には、地球温暖化の原因となるメタン等の温室効果ガスの放出量の抑制、海洋汚染対策としての随伴水処理の厳格化などが求められており、原油からの水銀や放射性物質の除去なども重要な技術課題である。これらの技術課題の解決のために、膜分離技術や気液抽出などの技術の高度化が進められているが、経済的な理由から安価な固体吸着剤への期待も大きい。
本発明は、随伴水中のオイルや水銀などの有害物質を除去するための新規な固体吸着剤を提供するものである。その技術背景を議論する前に、例として、石油・天然ガス開発における(1)随伴水の処理、(2)採掘時の廃棄物の処理に関する技術を概観する。
【0003】
(1)随伴水の処理
石油採掘工程では、石油の産出とともに地層から大量の石油含有水が排出される。このような石油含有水を随伴水という。随伴水には、水と分離している粒子の大きな油滴やエマルジョン、あるいは微細なコロイドまで多くの石油系油分及び塩素系有機物等の有害物質が含まれている。随伴水の発生量は膨大であり、石油採掘量の3〜6倍と言われている。石油価格の変動は大きく、随伴水の処理方法は簡便且つ低コストで処理できなければ実用化する事は困難である。
現在、随伴水の主な処理方法は、経済性を考慮して注入井への圧入処理が一般的になっている。また随伴水は「マルポール条約(規制物質の投棄・排出の禁止、通報義務、その手続き等について規定するための国際条約とその議定書)」に規定されている油分などの物質が含まれている場合、これらを除去せずに海洋放流する事が出来ない。
また随伴水中に含まれる油分及び塩素系有機物等の有害物質の回収は、環境保護の観点からのみならず、収益性の観点からも有意義である。含まれる有害物質が少ない場合は、処理水の再利用という観点からも、近年石油随伴水の処理技術が検討されている。
随伴水の処理技術として、凝固剤や凝集剤による凝集法、多孔質セラミックフィルタによる濾過法、オゾン酸化処理法などがある(特許文献1)。
【0004】
(2)採掘時の廃棄物の処理
石油採掘時に発生する廃棄物は、主に掘削屑と掘削泥水からなる。海洋でのロータリー式掘削において、海底下の地層に対しドリルパイプを回転させることによって掘り進められるが、掘削により生成される掘削屑はパイプを通して循環される掘削泥水により海上の掘削リグまで運ばれ取り除かれる。この掘削泥水を未処理のまま放出すると環境汚染に繋がる可能性がある。
これら掘削屑及び掘削泥水には重金属が含まれることが分かっており、特に水銀は環境中から食物連鎖に取り込まれた後、生物濃縮される事で人類を含むすべての生物に影響を及ぼすことから、適切に処理することが求められる。溶液中の水銀の吸着方法としては、ポリチオアミド(特許文献2)やセルロースカルバメート(特許文献3)を用いた吸着法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−180213号公報
【特許文献2】特開2007−297653号公報
【特許文献3】特開平9−99238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、石油開発事業における環境課題としては、随伴水の処理、採掘時の廃棄物の処理などが挙げられる。従来の処理方法では、薬剤の使用費用や廃棄物の処理費用といったランニングコスト面の問題がある。今後の石油需要増加に伴い、更なる環境保全、各国の環境規制等の対応が必要となる中、これらを打開する新たな処理技術の提案が求められており、とりわけ経済的に優位な固体吸着剤の利用が望まれている。従来の代表的な固体吸着剤として挙げられる活性炭は購入コストが低く、有機物を強吸着するものの、再利用する為には流動炉やロータリーキルンなどの設備を用いて高温条件下で熱成処理する必要があり、実運用に当たってはエネルギーコストや設備投資コストなどの課題がある。また、高分子系の多孔質材料に吸着液を含浸させた固形吸着剤を用いた随伴水からの有機物除去技術が検討されているが、固形吸着剤の製造コストが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系重合体のポロシティを保持した状態で該重合体をペレット状に成形することで、安価で吸着性能に優れる新規吸着剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
詳しくは、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 懸濁重合法で得られた塩化ビニル系重合体(以下「塩化ビニル系重合体(A)」という)、バインダーゾルおよび安定剤を含み、球形または円柱状の形状に造粒されてなり、該バインダーゾルにより造粒物の形状が固定化され、 0.1〜0.5ml/gのポロシティを有するペレット状塩化ビニル系樹脂組成物。
[2] 懸濁重合法で得られた前記塩化ビニル系重合体(A)100重量部当たり(以下「塩化ビニル系重合体」という)、15〜105重量部の前記バインダーゾル、および1〜10重量部の前記安定剤を主成分とし、該バインダーゾルは、上記重量尺度で10〜65重量部の乳化重合法で得られた塩化ビニル系重合体(以下、「塩化ビニル系重合体(B)」という)、および5〜40重量部の可塑剤の混合物からなる前記[1]に記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物。
[3] 吸着補助剤を前記塩化ビニル系重合体(A)100重量部当たり10〜90重量部の範囲で含有する前記[2]に記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物。
[4] 前記[1]〜[3]の何れか1つに記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物からなる不純物吸着剤。
[5] 前記吸着補助剤として金属硫化物を含む前記[4]に記載の不純物吸着剤。
[6] 前記金属硫化物が硫化亜鉛またはイソプロピルキサントゲン酸亜鉛である前記[5]に記載の不純物吸着剤。
[7] ハロゲンを含んでもよい有機物を除去する前記[4]〜[6]の何れか1つに記載の不純物吸着剤。
[8] 重金属を除去する前記[5]又は[6]に記載の不純物吸着剤。
[9] 前記[2]又は[3]に記載のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を製造する方法であって、下記の工程(a)ないし(d)を含む、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法。
工程(a):乳化重合法で得られた塩化ビニル系重合体と可塑剤を混合しバインダーゾルとする、
工程(b):懸濁重合法で得られた塩化ビニル系重合体、該バインダーゾル及び安定剤、必要に応じ吸着補助剤を添加し、粉体ミキサーを用いて混合し、コンパウンドとする、
工程(c):該コンパウンドを、所定の回転方向に回転自在のパンまたはドラムを有する転動造粒装置を用い、造粒促進液を用いて、転動造粒法により球状に造粒する(工程(c)−1)か、あるいは
該コンパウンドを、所定の回転方向に回転自在の同心円上に設置された固定金型と上下金型とを有する打錠成形装置を用い、打錠成形法により柱状に造粒する(工程(c)−2)、
工程(d):該 造粒物を、ギヤーオーブンを用いて加熱して乾燥後、焼結する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、多孔質高分子の吸着性能を利用した安価で吸着性能に優れる新規吸着剤として好適なペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができ、工業的及び環境的価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の表面写真である。
図2】実施例1で得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物のX線CT画像である。
図3】実施例2で得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の表面写真である。
図4】実施例2で得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物のX線CT画像である。
図5】実施例4で得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の表面写真である。
図6】実施例4で得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物のX線CT画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系重合体(A)、バインダーゾルおよび安定剤を含む。
【0011】
塩化ビニル系重合体(A)は、通常知られている水性溶媒中で塩化ビニル系単量体を懸濁させて重合する、いわゆる懸濁重合法により得られる塩化ビニルの単独重合体、または塩化ビニル共重合体である。
塩化ビニル系単量体としては、塩化ビニル単量体、または塩化ビニル単量体を主体とし、該塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との混合物が挙げられる。
塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、酢酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸のエステル類或いは酸無水物、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物等を挙げることが出来る。
【0012】
本発明で使用される塩化ビニル系重合体(A)のように、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系重合体は、一般に、塩化ビニル単量体の液滴が重合中に凝集することにより直径0.5〜2マイクロメートルの一次粒子を形成し、この一次粒子同士の凝集が進行する事で直径100〜150マイクロメートルの粒子(以下、「グレイン」と言う)を形成する。一次粒子間には微小な隙間が存在する為、グレインは内部に空隙(以下、「ポロシティ」という)を有している。
本発明では、この懸濁重合法で得られる塩化ビニル系重合体(A)を造粒するに際し、バインダーゾルにより造粒物の形状を固定化し、当該塩化ビニル系重合体(A)のポロシティを、0.1〜0.5ml/gの範囲、好ましくは0.14〜0.33ml/gの範囲に保持した状態で該重合体をペレット状に成形する。なお、本明細書では、実施例にも記載しているとおり、ポロシティは、JIS R−1655:2003に従って測定した値を採用する。
【0013】
塩化ビニル系重合体(A)の形状を固定化するバインダーゾル(ゾル状バインダー)は、塩化ビニル系重合体(A)のポロシティを0.1〜0.5ml/gの範囲に保持できる限り、特に制限されないが、塩化ビニル系重合体(A)との親和性の点から、塩化ビニル系重合体(B)、および可塑剤の混合物からなることが好ましい。
【0014】
塩化ビニル系重合体(B)は、塩化ビニル系単量体、または塩化ビニル系単量体を主体とし、該塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との混合物、重合開始剤、乳化剤を用いて、水性溶媒中で塩化ビニル系単量体を乳化させて粒子径0.1〜数μmのラテックスを重合し、その後噴霧乾燥によりパウダー状にする、いわゆる乳化重合法により得られた塩化ビニル系重合体である。
【0015】
塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、酢酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸のエステル類或いは酸無水物、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物等を挙げることが出来る。
【0016】
バインダーゾルに添加する可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂に使用される可塑剤であれば制限なく使用することができるが、例えば、フタル酸ジ2−エチルヘキシルをはじめ、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸系可塑剤;アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジ−n−デシル、アゼライン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−(2−エチルヘキシル)等の脂肪酸エステル系可塑剤;リン酸トリブチル、リン酸トリ−(2−エチルヘキシル)、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤;トリメリット系可塑剤、ピロメリテート系可塑剤、安息香酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤等を挙げることができる。これらの可塑剤は、そのいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
バインダーゾルに添加する塩化ビニル系重合体(B)は、塩化ビニル系重合体(A)100重量部当たり好ましくは10〜65重量部、特に15〜55重量部とすることが好ましい。また、バインダーゾルに添加する可塑剤は、塩化ビニル系重合体(A)100重量部当たり好ましくは5〜40重量部、特に9〜35重量部とすることが好ましい。バインダーゾルにおいて、塩化ビニル系重合体(B)および可塑剤の添加量を上記の範囲とすることで、ペレットの形状を保持することができる。
【0018】
この乳化重合法で得られた塩化ビニル系重合体(B)及び可塑剤の混合物(バインダーゾル)は非ニュートン流体であり、加熱により液体状態(ゾル)から固体状態(ゲル)へと変化し、更に加熱を続けると溶融し、ペレットの機械的強度を増加させるという特性を有する。バインダーゾルの添加量はペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の強度に影響する。本発明のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は、上述した塩化ビニル系重合体(A)及びバインダーゾルに加えて、安定剤を必須の成分として含むが、この安定剤の添加量を一定とした場合、バインダーゾルの添加量の増加に伴いペレットの強度も増大する傾向にある。しかし、過剰に添加すると安定剤が不足して塩化ビニル系重合体の熱分解が進行し強度が低下する傾向にある事から、例えば、後述する安定剤の特に好ましい添加量の下限値に固定した場合、バインダーゾルの添加量は、塩化ビニル系重合体(A)100重量部並びに安定剤3重量部に対しては好ましくは35〜60重量部、特に25〜50重量部とすることが好ましい。また安定剤の添加量を後述の好ましい添加量の範囲とすると、バインダーゾルの添加量は、塩化ビニル系重合体(A)100重量部並びに安定剤1〜10重量部に対し、好ましくは15〜105重量部、特に24〜90重量部とすることが好ましい。
【0019】
本発明における安定剤としては、例えばカルシウム−亜鉛系、バリウム−亜鉛系、スズ系、鉛系等の安定剤を挙げることが出来る。この中でも環境への負荷が小さい点からカルシウム-亜鉛系の安定剤が好ましい。安定剤はペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の熱安定性を向上させるだけでなく、乾燥処理や焼結処理の過程で塩化ビニル系重合体から塩酸が発生を防ぎ、機器の腐食を抑制する効果がある。このため、塩化ビニル系重合体100重量部当たり好ましくは1〜10重量部、特に3〜6重量部の安定剤を添加することが好ましい。
【0020】
本発明のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物には、後述するように、ある特定の物質(以下、「吸着補助剤」ともいう)を添加する事で、吸着の対象となる範囲を広げることも可能である。この吸着剤の添加量は、塩化ビニル系重合体(A)100重量部当たり好ましくは10〜90重量部、特に50〜75重量部とすることが好ましい。
【0021】
本発明のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物では、添加する吸着補助剤のサイズは、特に限定されない。しかしながら、吸着剤の吸着速度は、一般にその表面積とともに増加するため、パウダー状の吸着補助剤であることが望ましい。
パウダー状で比表面積が大きな様々な吸着補助剤を内包したペレットを作製できることは、本発明のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の大きな優位性となる。
【0022】
以上説明した本発明のペレット状塩化ビニル系組成物は、バインダーゾルによりその造粒物の形状が球形または円柱状に固定化されている。造粒物のサイズは、径1〜20mm程度であるが、後述する打錠成形法で使用する金型のサイズや篩の目開きサイズによってはこの限りではない。
造粒物の内部には、塩化ビニル系重合体(A)のグレイン間の空隙とグレイン中のポロシティが保持されていることから、水溶液等の液体に含まれる不純物を吸着により除去する不純物吸着剤(不純物除去材ともいう)として好適である。
【0023】
また、本発明の本発明のペレット状塩化ビニル系組成物は、ヘキサンなどの炭化水素を吸着しても構造的に安定である。このためナフサ中の水銀等の不純物の除去にも利用できる。
【0024】
本発明の不純物吸着剤は、本発明のペレット状塩化ビニル系組成物(の造粒物)からなる。本発明の不純物吸着剤は、0.1〜0.5ml/gのポロシティを有することから、石油含有水(随伴水)などの液体に含まれる油分、ハロゲン系有機物などのハロゲンを有してもよい有機物の吸着(除去)に効果的である。
吸着(除去)対象である油分としては、炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素、炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素が挙げられ、例えば、炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素としては、オクタンをはじめ、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素原子数1〜8の飽和炭化水素や、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの炭素原子数2〜4の不飽和炭化水素などが挙げられる。
炭素原子数が5以上の場合は、常温常圧で液体として存在できるが、炭素原子数が4以下の場合、ガスとして存在する。ガス状態での炭化水素の吸着量は、液体状態と比較して小さい。このようなガス状態の炭化水素は、低温高圧の条件にすることで、吸着量が著しく大きくなる。塩化ビニル系重合体の多孔体は、一般に、高圧下でエタンやプロパン等を吸収するが、本発明のペレット状塩化ビニル系組成物は、高圧かつ低温にすることで、ガス状態の炭化水素の吸収が可能になる。
また吸着対象であるハロゲン系有機物としては、油分として例示した炭化水素の水素原子の一部を、フッ素、塩素、臭素等などで置換した化合物が挙げられる。具体的には、テトラクロロエチレンのはじめ、クロロホルム、ブロモホルム、ヨードホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、塩化ビニルモノマー、1,2−ジクロロエチレンなどが挙げられる。
さらに、本発明のペレット状塩化ビニル系組成物は、低温高圧の条件では、硫化水素や二酸化炭素などの有毒ガスの吸着にも利用できる。
【0025】
本発明の不純物吸着剤では、本発明のペレット状塩化ビニル系組成物に、前述の吸着補助材を添加することで、例えば、水銀、鉛、カドミウム、クロム、ヒ素などの有害な重金属等を吸着する性能を付与することができる。
例えば、重金属である水銀を吸着対象とする場合、金属硫化物である硫化亜鉛や硫化モリブデン、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛などの有機硫黄化合物の塩等を添加することで、液体に含まれる水銀を吸着できるペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得ることが出来る。水銀除去の関連からは、上記有機硫黄化合物の塩のほか、硫黄を含む化合物であれば、特に制限されず、配位性の硫黄を含む高分子化合物や硫黄ポリマーなどを添加してもよい。また、一般に水銀吸着剤として使用されている粘土鉱物や活性炭、ゼオライトなどを、本発明のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物に吸着補助剤として添加することも可能である。
一方、石油や天然ガス開発で問題となる有害物質としては、ヒ素や鉛も挙げられるが、本発明のペレット状塩化ビニル系樹脂組成物にこれらの吸着補助剤を添加してもよい。このような吸着補助剤としては、ゼオライト、水酸化鉄、水酸化アルミなどを無機化合物のパウダーが挙げられる。
【0026】
本発明の不純物吸着剤に関し、吸着対象がオクタン、テトラクロロエチレン、水銀である場合、以下のとおりの除去率を有する。
吸着対象がオクタンである場合、界面活性剤を添加して均一分散させた1000ppmのオクタンを含む水溶液から58%以上、同条件下で100ppmのオクタンを含む水溶液から97%以上のオクタンを除去できる。一般に石油随伴水中のコロイド状のオイルは、有機酸等の働きにより強く安定化しているが、本発明の不純物吸着剤は、超音波ホモジナイザーと界面活性剤を用いて強く乳化したコロイド状のオイル成分でも除去する能力がある。
当然のことであるが、本発明の不純物吸着剤は、粒子の大きな油滴や不安定なエマルジョン状のオイル成分であれは、より効率的に除去することが可能である。
吸着対象がテトラクロロエチレンである場合、アルコールを添加して均一分散させた1000ppmのテトラクロロエチレンを含む水溶液から82%以上、同条件下で100ppmのテトラクロロエチレンを含む水溶液から82%以上のテトラクロロエチレンを除去できる。
吸着対象が水銀である場合、5000ppbの水銀を含む水溶液から92%以上の水銀を除去できる。
【0027】
本発明のペレット状塩化ビニル系組成物(の造粒物)あるいは不純物吸着剤は、塩化ビニル系重合体(A)、バインダーゾル、安定剤を混合し、該混合物を球形または円柱状に造粒した後、加熱処理によりバインダーゾルをゲル化することで造粒物の形状が固定化され、塩化ビニル系重合体の有するポロシティを維持したペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得ることを特徴とする。
具体的には、下記の工程(a)〜(d)を含む、方法により好ましく製造される。
まず、乳化重合法で得られた塩化ビニル系重合体と可塑剤を混合しバインダーゾルとする(工程(a))。
【0028】
次に、懸濁重合法で得られた塩化ビニル系重合体、前記(a)工程で調製したバインダーゾル及び安定剤、必要に応じ吸着補助剤を添加し、粉体ミキサーを用いて混合し、コンパウンドとする(工程(b))。
具体的には、工程(a)で調製したバインダーゾルと塩化ビニル系重合体(A)及び安定剤をあわせて粉体ミキサーで10分間程度混合する。混合に使用する粉体ミキサーとしては、例えばヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0029】
続いて、前記工程(b)で得られたコンパウンドを、造粒する。
造粒方法としては、塩化ビニル系重合体(A)の有するポロシティを維持するために、押出成形等のせん断を伴う方法は好ましくなく、例えば転動造粒法、打錠成形法等が挙げられる。転動造粒法の造粒過程においては、水等の造粒促進剤を噴霧する必要がある。最終的に得られる造粒物のサイズは径1〜20mm程度であるが、打錠成形法で使用する金型のサイズや篩の目開きサイズによってはこの限りではない。
具体的には、以下の工程(c)を行う。工程(c)は、造粒後の造粒物の形状が球状の場合は、工程(c)−1を行い、造粒後の造粒物の形状が円柱状の場合は、工程(c)−2を行う。
工程(c):
1):工程(c)−1:所定の回転方向に回転自在のパンまたはドラムを有する転動造粒装置を用い、造粒促進液を用いて、転動造粒法により球状に造粒する。
2):工程(c)−2
前記工程(b)で得られやコンパウンドを、所定の回転方向に回転自在の同心円上に設置された固定金型と上下金型とを有する打錠成形装置を用い、打錠成形法により柱状に造粒する。
【0030】
そして、最後に、前記(c)工程で造粒された造粒物を、ギヤーオーブンを用いて加熱して乾燥後、焼結する((d)工程)。
加熱方法としては、塩化ビニル系重合体の有するポロシティを維持するために、ガラス転移温度以上での加熱は最小限に留める必要がある。転動造粒法の造粒促進剤として水を使用する場合、造粒物内部の水の残存は造粒物の強度低下に繋がる事から、80℃程度で8時間程度乾燥する事が好ましい。また造粒物の固定化にあたっては、バインダーゾルのゲル化及び溶融化を促進する為に130℃程度で焼結する必要があるが、ガラス転移温度以上となる為、焼結時間を5分間程度とすることでポロシティを維持することが出来る。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。尚、実施例及び比較例において、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の評価は下記の方法で行った。
【0032】
〔評価方法〕
<1>表面状態
目視観察にて、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の表面状態を観察した。
<2>圧縮破壊強度
錠剤破壊強度測定器(富山産業社製、TH−203MP)を用いて、異形物を除いたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物20粒の圧縮破壊強度を測定し、平均値を圧縮破壊強度とした。
<3>ポロシティ
JIS R−1655:2003に従って測定した。
<4>比表面積
JIS Z 8830に従って測定した。
<5>X線多孔質解析
X線CTスキャン(Zeiss社製、商品名:「Xradia 520 Versa」)を用いて、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の断面状態を観察した。
【0033】
<6>水中からのオクタン除去率
1)オクタン水溶液の調製
a) 界面活性剤(カヨネ石鹸社製、商品名:「ソーブン」)0.0125gを500ml容のデュラン瓶にはかり取り、蒸留水を加え499.5gの水溶液とした。
b) 前記a)で調製した水溶液に約0.5gのオクタン(富士フィルム和光純薬社製、特級)を加え約500gとした。
c) 前記b)に続いて超音波ホモジナイザー(VibralSonics&Materials製、商品名:「Vibra Cell」)を使用し、均一な1000ppmオクタン水溶液を調製した。
d) 前記c)で調製したオクタン水溶液50gを25ppm界面活性剤水溶液450gが入った500ml容デュラン瓶に移した。
e)前記d)に続いて超音波ホモジナイザーを使用し、均一な100ppmオクタン水溶液を調製した。
2)検量線の作製
a) 前記1)で調製したオクタン1000及び100ppm水溶液を用いて、500から0.1ppmまでの検量線作成用水溶液の調製を、NaCl(和光純薬社製、特級)1gの入ったGC用ガラスバイアルで行った。尚、希釈の際には25ppm界面活性剤水溶液を使用した。
b) 25ppm界面活性剤水溶液1mlを別のNaCl(1g)の入ったGC用ガラスバイアルに入れ、検量線用空試験水溶液とした。
c)検量線用オクタン水溶液(1000〜0.1ppm)及び検量線用空試験水溶液をGC(島津製作所社製、商品名:「GC−2014」)にて測定し、検量線を作製した。
3)水中からのオクタン除去率の算出
a) ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物5gをはかりとり、ねじ口管瓶に入れた。
b) 前記a)でペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を入れたねじ口管瓶に前記1)で調製した1000及び100ppmのオクタン水溶液を加えた。
c) 前記b)でオクタン水溶液を加えたねじ口管瓶を卓上振とう器(日伸理化社製)にセットし、3時間振とうし、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物にオクタンを吸着させた。
d) 吸着後のオクタン水溶液1mlをNaCl(1g)の入ったGC用ガラスバイアルにマイクロピペットを用いて入れ、速やかに密栓した。
e) 吸着後のオクタン水溶液とNaClが混合するよう振り混ぜた。
f) 前記2)で作製した検量線から、吸着後のオクタン水溶液の濃度よりオクタン除去率を算出した。
【0034】
<7>水中からのテトラクロロエチレンの除去率
1)テトラクロロエチレン水溶液の調製
a)メタノール(富士フィルム和光純薬社製、特級)40g及びテトラクロロエチレン(富士フィルム和光純薬社製、特級)0.5gを500ml容のデュラン瓶にはかり取り、蒸留水を加え500gとした。
b)前記a)に続き、超音波ホモジナイザーを使用し、均一な1000ppmテトラクロロエチレン水溶液を調製した。
c)前記b)で調製したテトラクロロエチレン水溶液50gを8%メタノール水溶液450gが入った500ml容デュラン瓶に移した。
d)前記c)に続いて、超音波ホモジナイザーを使用し、均一な100ppmテトラクロロエチレン水溶液を調製した。
2)検量線の作製
a)前記1)で調製したテトラクロロエチレン1000及び100ppm水溶液を用いて、500から0.1ppmまでの検量線作成用水溶液の調製を、NaCl(和光純薬社製、特級)1gの入ったGC用ガラスバイアルで行った。尚、希釈の際には8%メタノール水溶液を使用した。
b)8%メタノール水溶液10gを別のNaCl 1gの入ったGC用ガラスバイアルに入れ、検量線用空試験水溶液とした。
c)検量線用テトラクロロエチレン水溶液(1000〜0.1ppm)及び検量線用空試験水溶液をGC(島津製作所社製、GC−2014)にて測定し、検量線を作成した。
3) 水中からのテトラクロロエチレン除去率の算出
a)ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物5gをはかりとり、ねじ口管瓶に入れた。
b)前記a)でペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を入れたねじ口管瓶に前記1)で調製した1000及び100ppmのテトラクロロエチレン水溶液を加えた。
c)前記b)でテトラクロロエチレン水溶液を加えたねじ口管瓶を卓上振とう器(日伸理化社製)にセットし、3時間振とうし、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物にテトラクロロエチレンを吸着させた。
d)吸着後のテトラクロロエチレン水溶液5mlをNaCl(1g)の入ったGC用ガラスバイアルにマイクロピペットを用いて入れ、速やかに密栓した。
e)吸着後のテトラクロロエチレン水溶液とNaClが混合するよう振り混ぜた。
f)前記2)で作製した検量線から、吸着後のテトラクロロエチレン水溶液の濃度よりテトラクロロエチレン除去率を算出した。
【0035】
<8>水中からの水銀除去率
1)水銀水溶液の調整
a)水銀標準液(関東化学社製、Hg1000)5gをPPチューブにはかり取り、0.3M硝酸水溶液(関東化学社製、超高純度試薬)を加え10gとし、500ppm水銀水溶液を調製した。
b)前記a)で調製した水銀水溶液0.5gをPP製コニカルチューブに入れ、蒸留水50gを加え、5000ppb水銀水溶液を調製した。
2)検量線の作製
a)前記1)で調製した500ppm水銀水溶液を用いて、1000から1ppbまでの検量線作成用水溶液の調製を、PPチューブで行った。尚、希釈の際には0.3M硝酸水溶液を使用した。
b)0.3M硝酸水溶液10gを別のPPチューブに入れ、検量線用空試験水溶液とした。
c)検量線用水銀水溶液(1000〜1ppb)及び検量線用空試験水溶液をICP−MS(島津製作所社製、商品名:「ICP−2030」)にて測定し、検量線を作成した。
3)水中からの水銀除去率の算出
a)ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物5gをはかりとり、PPチューブに入れた。
b)前記a)でペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を入れたPPチューブに前記1)で調製した5000ppbの水銀水溶液を加えた。
c)前記b)で水銀水溶液を入れたPPチューブを卓上振とう器(日伸理化社製)にセットし、3時間振とうし、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物に水銀を吸着させた。
d)吸着後の水銀水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、PPチューブへ入れた。
e)前記d)でろ液2mlを入れたPPチューブに0.375M硝酸水溶液(関東化学社製、特級)8mlを加え、良く混合した。
f)前記2)で作製した検量線から、吸着後の水銀水溶液の濃度より水銀除去率を算出した。
【0036】
(実施例1)
酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体(東ソー社製、商品名:「リューロンペースト(商標登録)」、G50)312.5gにフタル酸ジ2−エチルヘキシル(花王社製、商品名:「ビニサイザー(商標登録)、80K」)187.5gを添加し、バインダーゾルを調製した。
ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製、商品名:「FM10B」、9L)に塩化ビニル系重合体(大洋塩ビ社製、塩ビホモポリマー、商品名:「TH−3800」)1,000gと安定剤(ADEKA社製、商品名:「アデカスタブ(商標登録)、SC−308E」)30gを加えて1380回転/分で混合を開始した後、上記バインダーゾルを添加し、添加完了後から10分間混合し、コンパウンドを調製した。
このコンパウンドを500g分取して転動造粒装置(菊水製作所社製、商品名:「No.16D」)に移し、傾斜角75度、25回転/分の条件で転動を開始し、転動するコンパウンドに対し適宜造粒促進剤として水を噴霧する事で造粒した。造粒完了後、得られた造粒物に対し転動操作を2時間継続した。
前記造粒物をギヤーオーブン(ヤマト科学社製、定温乾燥器、商品名:「DX402」)に移し、80℃で8時間乾燥することで造粒促進剤である水を蒸発した。その後、同ギヤーオーブンにて130℃で5分間焼結することで、バインダーゾルをゲル化させ、造粒物を固化した。固化した造粒物を目開き10mmの仕上げ用篩を用いて分級し、篩上に残留したペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度40.4N、ポロシティ0.312ml/g、比表面積2.1m/gを有し、1000ppmのオクタン水溶液から60.5%、100ppmのオクタン水溶液から97.6%のオクタンを除去した(表1参照)。同組成物の表面写真を図1、X線CT画像を図2に示す。図2より、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の内部に多くのマクロ孔が存在することが明らかである。
【0037】
(実施例2)
実施例1において、転動造粒法から打錠成形機(畑鐵工所社製、金型直径φ6mm)を使用した打錠成形法に変更し、乾燥操作を実施無しとした以外は、実施例1と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度10.2N、ポロシティ0.308ml/g、比表面積2.0m/gを有し、1000ppmのオクタン水溶液から97.0%、100ppmのオクタン水溶液から99.7%のオクタンを除去し、1000ppmのテトラクロロエタン水溶液から90.0%、100ppmのテトラクロロエタン水溶液から91.7%のテトラクロロエタンを除去した(表1参照)。同組成物の表面写真を図3、X線CT画像を図4に示す。図4より、ペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の内部に多くのマクロ孔が存在することが明らかである。
【0038】
(実施例3)
実施例1において、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体(東ソー社製、商品名:「リューロンペースト(商標登録)、G50」)の添加量を156.3gとし、フタル酸ジ2−エチルヘキシル(花王社製、商品名:「ビニサイザー(商標登録)、80K」)の添加量を93.8gとした以外は、実施例1と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度32.4N、ポロシティ0.325ml/g、比表面積2.3m/gを有し、1000ppmのオクタン水溶液から58.2%、100ppmのオクタン水溶液から97.0%のオクタンを除去し、1000ppmのテトラクロロエタン水溶液から82.5%、100ppmのテトラクロロエタン水溶液から82.0%のテトラクロロエタンを除去した(表1参照)。
【0039】
(実施例4)
実施例1において、塩化ビニル系重合体(大洋塩ビ社製、塩ビホモポリマー、商品名:「TH−3800」)の添加量を575gとし、塩化ビニル系重合体と安定剤(ADEKA社製、商品名:「アデカスタブ(商標登録)、SC−308E」)を混合するタイミングで硫化亜鉛(富士フイルム和光純薬社製)を425g添加するとした以外は、実施例1と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度54.7N、ポロシティ0.143ml/g、比表面積1.6m/gを有し、5000ppbの水銀水溶液から92.4%の水銀を除去した(表1参照)。同組成物の表面写真を図5、X線CT画像を図6に示す。図6より、白く見える硫化亜鉛の粉末がペレット状塩化ビニル系樹脂組成物の内部に分散しており、この硫化亜鉛に繋がる多くのマクロ孔が存在することが明らかである。
【0040】
(実施例5)
実施例4において、硫化亜鉛の替わりにイソプロピルキサントゲン酸亜鉛(大内新興化学工業社製、商品名:「ノクセラー(商標登録)ZIX」)を425g添加するとした以外は、実施例4と同様にしてペレット状塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状塩化ビニル系樹脂組成物は圧縮破壊強度41.6N、ポロシティ0.181ml/g、比表面積1.8m/gを有し、5000ppbの水銀水溶液から99.6%の水銀を除去した(表1参照)。
【0041】
(比較例1)
実施例1において、コンパウンド化する前の塩化ビニル系重合体をそのまま使用し、ポロシティを評価した結果、0.462ml/gであった。実施例1〜5は粉末の塩化ビニル系重合体と比較するとポロシティは低下するが、ペレット化の前後でポロシティの消失は見られなかった。
【0042】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6