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特開2021-1613ゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造、及びその取付構造を有するゲート弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-1613(P2021-1613A)
(43)【公開日】2021年1月7日
(54)【発明の名称】ゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造、及びその取付構造を有するゲート弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/16 20060101AFI20201204BHJP
   F16K 51/02 20060101ALN20201204BHJP
【FI】
   F16K3/16
   F16K51/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-113993(P2019-113993)
(22)【出願日】2019年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋己
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】長尾 格
(72)【発明者】
【氏名】越智 健
【テーマコード(参考)】
3H053
3H066
【Fターム(参考)】
3H053AA25
3H053AA26
3H053AA31
3H053BA19
3H053BA23
3H053BD02
3H053DA09
3H066AA03
3H066BA17
3H066BA18
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】弁板を弁ロッドに対して精度良く且つ確実に固定することにより、ゲート弁作動時におけるパーティクルの発生を防止する。
【解決手段】弁板3の取付孔13の孔端壁面13dと弁ロッド4の取付部14のロッド先端面15との間に、楔形の平板部36及び係合突部37を有するスペーサ部材30を介在させて、スペーサ部材と孔端壁面との間に前方に開口する楔形の空隙G2を形成し、弁板固定螺子20の締結力によって、空隙G2を狭窄する方向に弁板を変形させるモーメントMを発生させると共に、スペーサ部材の係合突部をロッド先端面の傾斜面部15bと取付孔の孔後壁面13bとの間に形成された楔形の隙間に圧入させ、それにより、弁板の取付孔の孔前壁面13aを弁ロッドの取付部のロッド前壁面14aに対して圧接させた。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる弁ロッドの先端に取り付けられた弁板を弁箱内に収容し、該弁箱の側壁に形成されたゲート開口を前記弁板で開閉するように構成されたゲート弁における、前記弁ロッドに対する弁板の取付構造であって、
前記弁板は、前記ゲート開口周りの弁シートに接離させるシール部材が取り付けられた弁前面と、該弁前面の反対側に位置する弁背面と、弁上面及び弁下面と、該弁下面に開設されて前記弁ロッドの先端の取付部を挿入する取付孔と、前記弁上面と該取付孔との間に貫設されて弁板固定螺子を挿通させる螺子挿通孔とを有していて、該弁板固定螺子で前記弁ロッドに対して取り付けられており、
前記取付孔は、前記弁前面側に位置する孔前壁面と、前記弁背面側に位置する孔後壁面と、該取付孔の深さ方向の端面である孔端壁面とを有していて、該孔端壁面に前記螺子挿通孔が開口しており、
前記弁ロッドの取付部は、前記取付孔の孔前壁面に対向するロッド前壁面と、前記取付孔の孔後壁面に対向するロッド後壁面と、該取付部の先端に位置するロッド先端面とを有していて、該ロッド先端面には、前記弁板の螺子挿通孔に挿通した前記弁板固定螺子を螺合させて締め付ける螺子孔が開設されており、
前記弁板の取付孔に対して前記弁ロッドの取付部を前記ロッド先端面が当接する終端まで挿入し、且つ、前記弁板固定螺子を前記螺子孔に螺合させていない状態において、該取付孔の孔端壁面と弁ロッドのロッド先端面とによって挟まれた部分に、前記取付部のロッド前壁面側に開口すると共に前記螺子孔の中心軸よりもロッド後壁面側おいて閉じる水平方向の空隙が形成されており、
それにより、前記弁板固定螺子を前記螺子孔に螺合させて締め付けることで、該弁板の孔前壁面が、該弁ロッドのロッド前壁面に対して圧接されるように構成されている、
ことを特徴とするゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項2】
前記空隙が、ロッド前壁面側からロッド後壁面側に向けて上下方向の開口幅が徐々に小さくなっていく楔形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項3】
前記取付孔の孔端壁面と前記取付部のロッド先端面との間にはスペーサ部材が設けられ、
該スペーサ部材は、前記孔端壁面に当接させる上面と、前記ロッド先端面に当接させる下面と、これら上面と下面との間に貫設されて前記弁板固定螺子を挿通させる貫通孔とを有しており、
前記スペーサ部材の上面と前記取付孔の孔端壁面との間に前記空隙が形成され、該空隙が、前記取付部のロッド前壁面側に開口すると共に、前記貫通孔よりもロッド後壁面側おいて、前記スペーサ部材の上面と前記取付孔の孔端壁面との当接よって閉じられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項4】
前記スペーサ部材の上面及び下面が平坦面によって形成されていて、該スペーサ部材が、これら上面及び下面によって形成された平板部と、前記ロッド前壁面側の前端縁と、前記ロッド後壁面側の後端縁とを有しており、
該平板部は、前記上面と下面との間の厚さが前記前端縁から前記後端縁側に向けて徐々に大きくなる楔形状に形成されており、
それにより、前記空隙が、前記前端縁から前記後端縁側に向けて徐々に小さくなる楔形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項5】
前記スペーサ部材は、さらにその後端に、下方に向けて突設された係合突部を有し、該係合突部は、前記後端縁から下方に向けて立設された第1面と、前記下面の後縁から下方に向けて立設された第2面とによって、下方の先端に向けて徐々に前後方向の幅が狭くなっていく楔形状に形成されており、
前記取付部のロッド先端面は、その前縁側から後縁側へ前記中心軸と直角を成して延びる平坦面部と、該平坦面部の後縁から取付部の基端部側に向けて、該取付部の前後方向の幅が徐々に拡大していくように傾斜する傾斜面部とによって形成されており、
前記弁板固定螺子を前記螺子孔に螺合させて締め付けることで、前記弁板が前記弁ロッドの取付部に対して固定的に取り付けられた状態において、前記スペーサ部材の係合突部が前記取付孔の孔後壁面と前記ロッド先端面の傾斜面部との間に圧入され、それにより、該係合突部の第1面が該孔後壁面に圧接されると共に、該係合突部の第2面が該傾斜面部に圧接される、
ことを特徴とする請求項4に記載のゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項6】
前記スペーサ部材において、前記係合突部の第1面は、前記平板部の上面と鋭角を成すと共に、該平板部の下面と直角を成している、
ことを特徴とする請求項5に記載のゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項7】
前記弁板固定螺子は、前記螺子孔に螺合させる螺子本体部と、該螺子本体部の基端に一体に連結された操作用の螺子頭部とを有しており、
前記螺子本体部は、外周に螺子山が形成された雄螺子部と、該雄螺子部よりも前記基端側に隣接して設けられた円柱状の軸部とを有しており、
前記螺子孔は、前記雄螺子部を螺合させる螺子山が内周面に形成された雌螺子部と、該雌螺子部よりも前記ロッド先端面側に隣接して設けられた断面円形の円筒部とを有しており、
前記スペーサ部材の貫通孔の内周面には、前記弁板固定螺子の雄螺子部と螺合可能な螺子山が形成されており、
前記中心軸方向において、前記弁板固定螺子の雄螺子部の長さが、前記螺子孔の円筒部の長さよりも短く形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のゲート弁によける弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項8】
上下方向に延びる弁ロッドの先端に取り付けられた弁板を弁箱内に収容し、該弁箱の側壁に形成されたゲート開口を前記弁板で開閉するように構成されたゲート弁において、
前記弁板が、前記弁ロッドに対して、請求項1に記載の取付構造によって取り付けられている、
ことを特徴とするゲート弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート弁の弁板を弁ロッドの先端に対して取り付けるための取付構造、及び、そのような弁板の取付構造を有するゲート弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体処理装置においては、真空チャンバに通じる開口を開閉するためにゲート弁が使用されている。このゲート弁は、弁ロッドの先端に取り付けた弁板を弁箱内に収容し、この弁箱を真空チャンバに取り付けて、該弁箱の側壁に形成された前記開口を前記弁板で開閉するように構成されている。その際、前記開口の閉鎖は、前記弁板に取り付けられたシール部材を前記開口の周囲の弁シートに押し付けることにより行われる。
【0003】
例えば、特許文献1のゲート弁は、そのメンテナンス性を改善するため、前記弁箱の上部壁を着脱可能とすると共に、前記弁板を弁ロッドの上端に対して螺子で軸線方向に固定することにより、前記弁箱の外部からの操作で前記弁板を弁ロッドから取り外し可能としたものである。そして、このゲート弁においては、前記弁板が弁ロッドに対して軸周りに回転可能に取り付けられていて、該弁板が弁シートに押し付けられるとき、該弁板が前記弁シートに倣って回転することにより、該弁板のシール面(シール部材)を弁シートに対して均一に押し付けることができるようになっている。
【0004】
ところで、近年、半導体の小型化や高性能化に伴って、半導体の線幅の微細化がますます進んできており、そのため、半導体の処理工程時に発生するパーティクルが限りなくゼロに近づくよう、その低減が強く求められている。
しかしながら、前記特許文献1に開示されたゲート弁は、その弁作動時に、前記弁ロッドと弁板との間や、前記弁板と弁シートとの間において擦れが発生するため、その擦れによってパーティクルが発生し易いという問題点を有する。よって、このようなパーティクルが発生しないようにするには、前記弁板を前記弁ロッドに対して、精度良く且つ確実に固定することが必要不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、弁板を弁ロッドに対して精度良く且つ確実に固定することにより、ゲート弁作動時におけるパーティクルの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、上下方向に延びる弁ロッドの先端に取り付けられた弁板を弁箱内に収容し、該弁箱の側壁に形成されたゲート開口を前記弁板で開閉するように構成されたゲート弁における、前記弁ロッドに対する弁板の取付構造であって、前記弁板は、前記ゲート開口周りの弁シートに接離させるシール部材が取り付けられた弁前面と、該弁前面の反対側に位置する弁背面と、弁上面及び弁下面と、該弁下面に開設されて前記弁ロッドの先端の取付部を挿入する取付孔と、前記弁上面と該取付孔との間に貫設されて弁板固定螺子を挿通させる螺子挿通孔とを有していて、該弁板固定螺子で前記弁ロッドに対して取り付けられており、前記取付孔は、前記弁前面側に位置する孔前壁面と、前記弁背面側に位置する孔後壁面と、該取付孔の深さ方向の端面である孔端壁面とを有していて、該孔端壁面に前記螺子挿通孔が開口しており、前記弁ロッドの取付部は、前記取付孔の孔前壁面に対向するロッド前壁面と、前記取付孔の孔後壁面に対向するロッド後壁面と、該取付部の先端に位置するロッド先端面とを有していて、該ロッド先端面には、前記弁板の螺子挿通孔に挿通した前記弁板固定螺子を螺合させて締め付ける螺子孔が開設されており、前記弁板の取付孔に対して前記弁ロッドの取付部を前記ロッド先端面が当接する終端まで挿入し、且つ、前記弁板固定螺子を前記螺子孔に螺合させていない状態において、該取付孔の孔端壁面と弁ロッドのロッド先端面とによって挟まれた部分に、前記取付部のロッド前壁面側に開口すると共に前記螺子孔の中心軸よりもロッド後壁面側おいて閉じる水平方向の空隙が形成されており、それにより、前記弁板固定螺子を前記螺子孔に螺合させて締め付けることで、該弁板の孔前壁面が、該弁ロッドのロッド前壁面に対して圧接されるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
前記本発明において、好ましくは、前記空隙が、ロッド前壁面側からロッド後壁面側に向けて上下方向の開口幅が徐々に小さくなっていく楔形状に形成されている。
また、前記本発明の具体例においては、前記取付孔の孔端壁面と前記取付部のロッド先端面との間にはスペーサ部材が設けられ、該スペーサ部材は、前記孔端壁面に当接させる上面と、前記ロッド先端面に当接させる下面と、これら上面と下面との間に貫設されて前記弁板固定螺子を挿通させる貫通孔とを有しており、前記スペーサ部材の上面と前記取付孔の孔端壁面との間に前記空隙が形成され、該空隙が、前記取付部のロッド前壁面側に開口すると共に、前記貫通孔よりもロッド後壁面側おいて、前記スペーサ部材の上面と前記取付孔の孔端壁面との当接よって閉じられている。
【0009】
このとき、好ましくは、前記スペーサ部材の上面及び下面が平坦面によって形成されていて、該スペーサ部材が、これら上面及び下面によって形成された平板部と、前記ロッド前壁面側の前端縁と、前記ロッド後壁面側の後端縁とを有しており、該平板部は、前記上面と下面との間の厚さが前記前端縁から前記後端縁側に向けて徐々に大きくなる楔形状に形成されており、それにより、前記空隙が、前記前端縁から前記後端縁側に向けて徐々に小さくなる楔形状に形成されている。
【0010】
そして、より好ましくは、前記スペーサ部材は、さらにその後端に、下方に向けて突設された係合突部を有し、該係合突部は、前記後端縁から下方に向けて立設された第1面と、前記下面の後縁から下方に向けて立設された第2面とによって、下方の先端に向けて徐々に前後方向の幅が狭くなっていく楔形状に形成されており、前記取付部のロッド先端面は、その前縁側から後縁側へ前記中心軸と直角を成して延びる平坦面部と、該平坦面部の後縁から取付部の基端部側に向けて、該取付部の前後方向の幅が徐々に拡大していくように傾斜する傾斜面部とによって形成されており、前記弁板固定螺子を前記螺子孔に螺合させて締め付けることで、前記弁板が前記弁ロッドの取付部に対して固定的に取り付けられた状態において、前記スペーサ部材の係合突部が前記取付孔の孔後壁面と前記ロッド先端面の傾斜面部との間に圧入され、それにより、該係合突部の第1面が該孔後壁面に圧接されると共に、該係合突部の第2面が該傾斜面部に圧接される。ここで、さらに好ましくは、前記スペーサ部材において、前記係合突部の第1面は、前記平板部の上面と鋭角を成すと共に、該平板部の下面と直角を成している。
【0011】
また、本発明の前記具体例において、より好ましくは、前記弁板固定螺子は、前記螺子孔に螺合させる螺子本体部と、該螺子本体部の基端に一体に連結された操作用の螺子頭部とを有しており、前記螺子本体部は、外周に螺子山が形成された雄螺子部と、該雄螺子部よりも前記基端側に隣接して設けられた円柱状の軸部とを有しており、前記螺子孔は、前記雄螺子部を螺合させる螺子山が内周面に形成された雌螺子部と、該雌螺子部よりも前記ロッド先端面側に隣接して設けられた断面円形の円筒部とを有しており、前記スペーサ部材の貫通孔の内周面には、前記弁板固定螺子の雄螺子部と螺合可能な螺子山が形成されており、前記中心軸方向において、前記弁板固定螺子の雄螺子部の長さが、前記螺子孔の円筒部の長さよりも短く形成されている。
【0012】
そして、本発明によれば、上下方向に延びる弁ロッドの先端に取り付けられた弁板を弁箱内に収容し、該弁箱の側壁に形成されたゲート開口を前記弁板で開閉するように構成されたゲート弁において、前記弁板が、前記弁ロッドに対して、前記取付構造によって取り付けられているものを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁板の取付孔に対して弁ロッドの取付部をロッド先端面が当接する終端まで挿入し、且つ、弁板固定螺子の螺子本体部を前記ロッド先端面の螺子孔に螺合させていない状態において、該取付孔の孔端壁面と弁ロッドのロッド先端面とによって挟まれた部分に、前記取付部のロッド前壁面側に開口すると共に前記螺子孔の中心軸よりもロッド後壁面側おいて閉じる水平方向の空隙が形成されている。
【0014】
そのため、前記弁板固定螺子を前記螺子孔に螺合させて締め付けることで、前記弁板が前記弁ロッドの取付部に対して固定的に取り付けられた(締結された)状態においては、その締め付けによる締結力が、前記空隙を狭めるように弁板に対して作用し、その締結力によるモーメントによって、弁板の前記孔前壁面が、弁ロッドのロッド前壁面に対して圧接されるようになっている。したがって、弁ロッドに対して弁板を精度良く且つ強固に固定することができ、前記弁板と弁ロッドとの擦れによるパーティクルの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用したゲート弁の正面図である。
図2図1のA−A’線に沿った部分拡大断面図である。
図3】弁板の正面図である。
図4図3のB−B’線に沿った部分拡大断面図である。
図5】弁板と弁ロッドと弁板固定螺子とスペーサ部材とを分離して示す断面図である。
図6】弁ロッドの取付部の斜視図である。
図7】スペーサ部材の形状を表す図であり(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のC−C’線に沿った断面図、(d)は正面図、(e)は背面図である。
図8】弁板を弁ロッドに対して固定する前の状態を示す部分拡大断面図である。
図9】弁板を弁ロッドに対して固定した状態を示す部分断面図である。
図10】弁板を待避位置に移動させた状態におけるゲート弁の斜視図である。
図11】弁箱上面の蓋を取り外した状態のゲート弁の斜視図である。
図12】弁板と弁ロッドとを締結している弁板固定螺子を緩めているときのゲート弁の斜視図である。
図13】弁板を弁箱から取り出した状態のゲート弁の斜視図である。
図14】弁ロッドから弁板を取り外すときの状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2には、本発明に係る取付構造が、弁ロッド4に対する弁板3の取り付けに適用されたゲート弁の一実施形態が示されている。このゲート弁は、不図示の真空チャンバの開口部に取り付けて使用するもので、該真空チャンバの開口部に通じるゲート開口2を備えた弁箱1と、該弁箱1の内部に収容されて前記ゲート開口2を開閉する前記弁板3と、軸線L1を有して該弁板3に固定された開閉操作用の前記弁ロッド4と、該弁ロッド4を駆動する弁駆動部5とを有している。
【0017】
そして、該弁駆動部5で前記弁ロッド4を駆動することにより、前記弁板3を、図2に示すように、前記ゲート開口2を閉塞する位置である実線の閉塞位置と、前記ゲート開口2を開放する位置である二点鎖線の開放位置(待避位置)との間を往復動させるようになっている。なお、前記弁駆動部5には、エアシリンダやカム機構等から成る駆動機構が設けられているが、このような弁駆動部5の各種構造及びその作用は既に周知であるため、ここでの説明は省略するものとする。
【0018】
前記弁箱1は、外観が横に細長い直方体で中空の箱形に形成されており、該弁箱1の前後の側壁1a,1cのうち真空チャンバに接続される前方の側壁1aには、横に細長い矩形の前記ゲート開口2と、該ゲート開口2を環状に取り囲む平面状の弁シート1bとが形成されている。そして、前記閉塞位置において、前記弁板3の前面に取り付けられたシール部材7が、前記弁駆動部5によって、該弁シート1bに押し付けられることにより、前記ゲート開口2が閉塞されるようになっている。
【0019】
前記弁箱1の上面には、図10及び図11からも明らかなように、蓋10が複数の蓋取付螺子11により着脱自在に取り付けられており、該蓋10を取り外すことによって該弁箱1の上面が開放可能となっている。そして、図12及び図13からも明らかなように、開放した上面の窓孔12から、前記弁板3を前記弁ロッド4から取り外して、弁箱1の外部に取り出すことができるようになっている。
【0020】
なお、図2に示すように、前記弁箱1においては、後方の側壁1cにも第2のゲート開口1dが形成されているが、このゲート開口1dは、弁板3が前記待避位置に在るときに、開放された前記第1のゲート開口2と共に、前記真空チャンバに対してワーク等を出し入れするための通路を該弁箱1内に形成するものであり、前記弁板3によって直接的に開閉されるものではない。
【0021】
前記弁板3は、アルミニウムによって一体に形成されたもので、図2図5から明らかなように、横に細長い矩形の板状をしていて、前記シール部材7が取り付けられた弁前面3aと、該弁前面3aの反対側の弁背面3bと、弁上面3c及び弁下面3dと、該弁下面3dに開設された取付孔13とを有している。このとき、弁前面3a、弁背面3b、弁上面3c及び弁下面3dは、何れも平坦面によって形成されている。
【0022】
前記取付孔13は、軸線L1方向における前記弁ロッド4の先端(図中上端)の取付部14を挿入して固定するための孔であり、該取付孔13の横断面形状は、前記弁板3の長手方向(図中左右方向)に細長い長孔状をしている。また、該取付孔13は、前記弁前面3a側に位置する孔前壁面13aと、前記弁背面3b側に位置する孔後壁面13bと、左右の孔側壁面13c,13cと、該取付孔13の深さ方向の端部である孔端壁面13dとを有している。
【0023】
ここで、前記孔前壁面13a及び孔後壁面13bは、互いに平行を成す平坦面であり、前記孔側壁面13c,13cも、互いに平行を成す平坦面であり、前記孔端壁面13dは、前記孔前壁面13a及び孔後壁面13b並びに前記孔側壁面13c,13cと直角を成す平坦面である。そして、前記孔前壁面13aから前記弁前面3aまでの距離は、前記孔後壁面13bから前記弁背面3bまでの距離よりも大きく形成されている。なお、図4に示すように、孔前壁面13aの左右両端に、軸線L1方向に延びるS,Sがそれぞれ形成されているが、これらの溝S,Sは弁板3に取付孔13を切削加工するにあたって形成されるものであるため、ここでは説明を省略する。
【0024】
一方、前記弁ロッド4は、ステンレス鋼から成るもので、図2図6から明らかなように、円柱状をした本体部4aの先端に、前記取付孔13に挿入するための前記取付部14を有している。該取付部14は、円柱の側面を、弁ロッド4の軸線L1に沿って、2つの互いに平行を成す平坦面で切除したような形をしている。すなわち、該弁ロッド4は、前記取付孔13の孔前壁面13aに対向して当接するロッド前壁面14aと、前記取付孔13の孔後壁面13bに対向するロッド後壁面14bと、前記取付孔13の左右の孔側壁面13c,13cに対向する左右のロッド側壁面14c,14cと、軸線L1方向における前記取付部14の先端面(すなわち、弁ロッド4の先端面)を形成するロッド先端面15とを有している。
【0025】
すなわち、前記ロッド前壁面14a及びロッド後壁面14bは、軸線L1に沿って互いに平行を成す平坦面であり、前記ロッド側壁面14c,14cは、外側に円弧状を成した凸曲面である。また、ロッド先端面15は、前記ロッド前壁面14aに連接された前縁から、ロッド後壁面14b側へと延びる平坦面部15aと、その平坦面部15aの後縁から前記取付部14の基端部14d側に向けて、該取付部14の前後方向の幅が徐々に拡大していくように傾斜する傾斜面部15bとによって形成されている。
【0026】
そして、前記平坦面部15aは、軸線L1及び後述する中心軸L2と直交する水平方向に延びており、前記傾斜面部15bは、平坦面に形成されると共に、その後縁が前記ロッド後壁面14bに連接されている。前記平坦面部15aと傾斜面部15bとが成す角度は、鈍角であれば特に限定されるものではないが、好ましくは約120度である。
【0027】
ここで、前記取付孔13における孔前壁面13aと孔後壁面13bとの間の距離W1は、前記取付部14におけるロッド前壁面14aとロッド後壁面14bとの間の距離W2よもよりも僅かに大きく形成されている。そして、上述のように、弁板3を弁ロッド4に取り付けた状態において、前記取付孔13の孔前壁面13aに対して前記取付部14のロッド前壁面14aが当接されるようになっている。そのため、弁板3を弁ロッド4に取り付けた状態においては、前記ロッド後壁面14bと孔後壁面13bとの間にW1−W2の僅かな隙間G1が形成されている(図2図8及び図9)。さらに、前記取付部14の軸線L1方向の長さは、前記取付孔13の深さ、すなわち前記弁下面3dから孔端壁面13dまでの距離よりも大きく形成されている。
【0028】
ところで、図5図14に示すように、前記弁板3は、前記弁ロッド4の先端に、弁板固定螺子20によって、該弁ロッド4の軸線L1方向に着脱可能なるように取り付けられている。この取り付けのため、前記弁板3の弁上面3cには、前記弁板固定螺子20を挿通するための螺子挿通孔16が、前記軸線L1と平行を成す中心軸L2上に形成され、弁ロッド4のロッド先端面15には、前記弁板固定螺子20を螺合させて締め付ける(ねじ込む)ための螺子孔17が前記中心軸L2上に形成されている。さらに、本実施形態では、前記弁板3を前記弁ロッド4に取り付けた状態において、前記取付孔13の孔端壁面13dと前記取付部14のロッド先端面15との間に板状のスペーサ部材30を挟持させている。
【0029】
また、弁板3を弁ロッド4に取り付けた状態において、前記中心軸L2は、前記弁ロッド4の軸線L1よりも後方(ロッド後壁面14b側)に位置し、前記弁板3における弁前面3aと弁背面3bとの間の中央よりも後方(弁背面3b側)に位置している。そして、該中心軸L2は、前記取付孔13における前記孔前壁面13aと孔後壁面13bとの間の中央よりも前方(孔前壁面13a側)に位置し、前記取付部14における前記ロッド前壁面14aとロッド後壁面14bとの間の中央よりも前方(ロッド前壁面14a側)に位置している。
【0030】
さらに、前記中心軸L2と前記孔前壁面13aとの間の距離は、該中心軸L2と前記ロッド前壁面14aとの間の距離と等しくなっている。それにより、前記弁板固定螺子20を、弁板3の螺子挿通孔16を通じて弁ロッド4の螺子孔17に螺合させた際に、前記取付孔13内において、前記ロッド前壁面14aを前記孔前壁面13aに当接させた状態で、前記取付部14が位置決めされるようになっている。なお、該中心軸L2は、左右方向において、前記取付孔13における一対の孔側壁面13c,13c間の中央に位置し、前記取付部14における一対のロッド側壁面14c,14c間の中央に位置している。
【0031】
前記弁板固定螺子20は、雄螺子が形成された螺子本体部21と、該螺子本体部の基端に連結された操作用の螺子頭部22とによって形成されている。前記螺子本体部21は、外周面に螺子山が形成された先端側の雄螺子部21aと、該雄螺子部21aよりも前記基端側に該雄螺子部21aと隣接させて設けられた円柱状の(外周面に螺子山が形成されていない)軸部21bとを有しており、該軸部21bの基端が前記螺子頭部22の下面に一体に連結されている。また、前記螺子頭部22の上面には、六角レンチ25aを差し込んで操作するための操作用六角穴22aが開設されている。
【0032】
さらに、前記操作用六角穴22aの底面と前記螺子本体部21の先端面との間には空気孔23が貫設されており、前記弁板固定螺子20を前記螺子孔17に螺合させる際に、該螺子孔17内の空気を、前記空気孔23を通じて外部に排出することができるようになっている。
ここで、前記螺子頭部22の外径は、前記雄螺子部21aの外径(螺子山の先端同士を結ぶ円筒の直径)d1及び前記軸部21bの直径d2よりも大きく形成されており、該雄螺子部21aの外径d1は、該軸部21bの直径d2よりも大きく形成されている。また、前記中心軸L2方向において、前記雄螺子部21aの長さS1は、前記軸部21bの長さS2よりも短く形成されている。
【0033】
前記弁板3の螺子挿通孔16は、前記弁板3の弁上面3cと前記取付孔13の孔端壁面13dとの間に貫設されたもので、該弁上面3cに開口して前記弁板固定螺子20の螺子頭部22が収容される大径部16aと、該大径部16aの底面と前記孔端壁面13dとの間に設けられて前記弁板固定螺子20の螺子本体部21(すなわち、雄螺子部21a及び軸部21b)が挿通される小径部16bとを有している。それにより、前記大径部16aの底面と前記孔端壁面13dとの間に、環状の鍔部18が形成されている。
【0034】
前記大径部16aの内径及び深さは、前記螺子頭部22が緩み止め用のワッシャ29と共に完全に納まるようなサイズに形成されており、前記小径部16bの内径d3は、前記大径部16aの内径や螺子頭部22の外径よりも小さいが、前記弁板固定螺子20の雄螺子部21aの外径d1及び軸部21bの直径d2よりも大きく形成されている。また、前記大径部16aの内径は、前記孔前壁面13aと孔後壁面13bとの間の距離W1や、ロッド前壁面14aとロッド後壁面14bとの間の距離W2よりも若干小さく形成されている。
【0035】
前記螺子孔17は、内周面に螺子山が形成されて前記弁板固定螺子20の雄螺子部21aを螺合させる雌螺子部17aと、横断面の形状が直径d4の円形に形成された(すなわち、内周面に螺子山が形成されていない)円筒部17bとを有している。前記円筒部17bは、前記ロッド先端面15の平坦面部15aに開設され、該平坦面部15aから前記中心軸L2に沿って長さ(深さ)S3の位置まで形成されている。また、該円筒部17bは、前記雌螺子部17aよりも前記ロッド先端面15側に該雌螺子部17aと隣接させて形成されている。
【0036】
ここで、前記円筒部17bの長さ(すなわち、前記ロッド先端面15の平坦面部15aから前記雌螺子部17aの始端までの距離)S3は、前記弁板固定螺子20における雄螺子部21aの長さS1と同じかそれよりも大きく形成されている。また、前記雌螺子部17aの中心軸L2方向の長さも、前記雄螺子部21aの長さS1よりも大きく形成されていて、前記弁板3を弁ロッド4の取付部14に対して締結する(すなわち、固定的に取り付ける)にあたって、前記弁板固定螺子20の雄螺子部21aを前記螺子孔17の雌螺子部17aに螺合させて締め付けた際に、該雄螺子部21aの全体が該雌螺子部17aに螺合されるようになっている。
【0037】
前記スペーサ部材30は、ステンレス鋼により一体に形成されていて、図5図9に示すように、前記ロッド前壁面14a側に配される前端縁31及び前記ロッド後壁面14b側に配される後端縁32と、前記ロッド側壁面14c,14c側に配される一対の側端面33,33とを有しており、平面視において、左右方向(前端縁31及び後端縁32に沿った方向)に長い矩形に形成されている。すなわち、前記前端縁31と後端縁32とは互いに平行を成していて、前記一対の側端面33,33も互いに平行を成しており、前記前端縁31及び後端縁32の両端に配された一対の側端面33,33は、これら前端縁31及び後端縁32と互いに直角を成している。
【0038】
さらに、前記スペーサ部材30は、前記孔端壁面13dに当接させる上面34と、前記ロッド先端面15に当接させる下面35とを有している。これら上面34及び下面35は平坦面によって形成されている。そして、これら上面34と下面35との間には、前記中心軸L2上に配されて前記弁板固定螺子20の螺子本体部21を挿通させる貫通孔36aが貫設されている。また、該スペーサ部材30は、その前端部に、これら上面34及び下面35により形成されて前記前端縁31を含む平板部36を有していると共に、該平板部36の後端であって該スペーサ部材30の後端部に、前記後端縁32を含んで下方に向けて突設された係合突部37を有している。
【0039】
前記下面35は、中心軸L2と直角を成していて、前記前端縁31から前記貫通孔36aよりも後端縁32側へと延びている。一方、前記上面34は、前記前端縁31から後端縁32側に向けて徐々に下面35との距離が離間していくように僅かに(好ましくは約3度)傾斜していて、前記前端縁31から中心軸L2よりも後端縁32側(好ましくは、本実施形態のように、前記貫通孔36aよりも後端縁32側)へと延びている。すなわち、前記平板部36は、その中心軸L2方向の厚さが前記前端縁31から前記後端縁32側に向けて徐々に大きくなる楔形状に形成されている。
【0040】
そのため、図8に示すように、前記弁板3の取付孔13に対して前記弁ロッド4の取付部14をロッド先端面15が当接する終端まで挿入し、且つ、前記弁板固定螺子20を前記螺子孔17に螺合させていない状態においては、中心軸L2方向において前記孔端壁面13dと前記ロッド先端面15とで挟まれた部分(好ましくは、本実施形態のように、前記孔端壁面13dと該スペーサ部材30の上面34との間)に、水平方向の空隙G2が形成されている。このとき、この空隙G2は、前記ロッド前壁面14a側に開口すると共に、前記中心軸L2(好ましくは、本実施形態のように、該スペーサ部材30の貫通孔36a)よりもロッド後壁面14b側において閉じられた楔形状に形成されている。
【0041】
そして、前記弁板3を前記弁ロッド4の取付部14に対して固定的に取り付ける(締結する)にあたって、図9に示すように、前記弁板固定螺子20を前記取付部14の螺子孔17に螺合させて締め付けた際に、その締め付けによる締結力が、前記空隙G2を狭窄するように弁板3の鍔部18に作用し、その締結力により生じるモーメントMによって、弁板3の前記孔前壁面13aが、弁ロッド4のロッド前壁面14aに対して圧接されるようになっている。
【0042】
また、本実施形態においては、前記貫通孔36aの内周面に、前記弁板固定螺子20の雄螺子部21aを螺合させて該貫通孔36aを通過させることが可能な螺子山が形成されている。そして、該貫通孔36aの内径(すなわち、該螺子山の先端同士を連結する円筒の直径)d5は、前記雄螺子部21aの外径d1よりも小さく、且つ、前記軸部21bの直径d2よりも僅かに大きくなっている。そうすることにより、図14に示すように、弁板3を弁ロッド4から取り外すにあたって前記弁板固定螺子20を緩めた際に、スペーサ部材30が、弁板固定螺子20の螺子本体部21から抜脱することなく、その軸部21bに留まるようになっている。
【0043】
一方、前記係合突部37は、図7に示すように、前記後端縁32から下方に向けて鉛直に立設された第1面37aと、前記下面35の後縁から下方に向けて斜めに立設された第2面37bとによって形成されている。そして、該係合突部37の第1面37aが前記取付孔13の孔後壁面13bに当接され、該第2面37bが前記ロッド先端面15の傾斜面部15bに当接されるようになっている。
【0044】
すなわち、前記係合突部37は、前記貫通孔36aよりも後端縁32寄りに配置されていて、下方の先端に向けて徐々に前後方向の幅(第1面37aと第2面37bとの距離)が狭くなっていく楔形状に形成されている。そして、該係合突部37は、前記弁板固定螺子20を螺子孔17に対して締め付けた際に、前記傾斜面部15bと孔後壁面13bとの間に形成された楔形状の隙間に圧入され、それにより、前記第1面37aが孔後壁面13bに圧接されると同時に。前記第2面37bが傾斜面部15bに圧接されるように形成されている。
【0045】
ここで、前記第1面37aは、前記下面35と直角を成す(すなわち、中心軸L2と平行を成す)平坦面に形成されていて、前記上面34とは、直角よりも僅かに小さい鋭角(好ましくは約87度)を成している。また、前記第2面37bは、前記下面35と鈍角を成す平坦面を有していて、その角度は、好ましくは約120度であり、前記ロッド先端面15における平坦面部15aと傾斜面部15bとが成す角度と等しくなっている。さらに、前記貫通孔36aの中心(中心軸L2)から前記第1面37aすなわち前記後端縁32までの距離は、前記ロッド前壁面14aを孔前壁面13aに当接させた状態における中心軸L2から孔後壁面13bまでの距離と等しくなるように形成されている。
【0046】
続いて、図8図14に基づき、上述のような構成を有するゲート弁における、前記弁ロッド4に対する弁板3の着脱方法について説明する。
まず、弁板3を弁ロッド4に対して最初に取り付ける組み立て工程においては、図8に示すように、前記スペーサ部材30を、その前端縁31が前記取付孔13の孔前壁面13aに対向し、後端縁32が前記孔後壁面13bに対向し、一対の側端面33,33が前記孔側壁面13c,13cに対向するようにして、弁板3の弁下面3dから取付孔13内に挿入し、前記孔端壁面13dに当接する終端まで移動させる。
【0047】
また同時に、弁ロッド4の取付部14を、同じく弁下面3dから前記取付孔13内に、そのロッド先端面15が該取付孔13内の前記スペーサ部材30に当接する終端まで挿入する。この状態では、上述のように、前記スペーサ部材30の上面34がその下面35に対して傾斜しているため、該上面34と前記孔端壁面13dとの間に、前記ロッド前壁面14a側に開口すると共に、前記中心軸L2(好ましくは、貫通孔36a)よりもロッド後壁面14b側で、前記上面34と前記孔端壁面13dとの当接によって閉じられた楔形状の空隙G2が形成されている。
【0048】
次に、前記弁板固定螺子20の螺子本体部21を、弁板3の弁上面3cから螺子挿通孔16内に挿入し、該螺子本体部21の雄螺子部21aの先端が前記スペーサ部材30の貫通孔36aに至るまで差し込む。そして、該貫通孔36aの螺子山に該雄螺子部21aを螺合させていき、さらに、該雄螺子部21a全体が該貫通孔36aを通過するまでその螺合を進めると、該雄螺子部21a全体が前記螺子孔17の円筒部17b内に収容される。続いて、図9に示すように、該雄螺子部21aを該螺子孔17の雌螺子部17aに螺合させていき、所定のトルクで締め付けると、前記螺子頭部22による押圧力が前記ワッシャ29を通じて前記鍔部18に作用し、それにより、弁板3が弁ロッド4の取付部14に対して締結される。
【0049】
そのとき、前記弁板固定螺子20の締め付けによる締結力、すなわち前記螺子頭部22による押圧力が、前記空隙G2を狭窄するように弁板3の鍔部18に対して作用するところ、前後方向における該空隙G2の閉鎖位置(すなわち、スペーサ部材30の上面34に対する孔端壁面13dの圧接位置)が、前記中心軸L2(好ましくは、貫通孔36a)よりもロッド後壁面14b側にあるため、図9に示すように、該弁板3に対して前記中心軸L2(好ましくは、貫通孔36a)よりも後方を中心とした図中左回りのモーメントMが作用する。そして、そのモーメントMにより、前記弁板3が、前記空隙G2を狭窄するように微小に変形し、その結果、前記ロッド前壁面14aに当接した状態にある孔前壁面13aが、該ロッド前壁面14aに対して圧接される。
【0050】
それと同時に、前記弁板固定螺子20の締め付けによる締結力で、前記スペーサ部材30の下面35がロッド先端面15の平坦面部15aに対して圧接されると共に、該スペーサ部材30の係合突部37が、前記ロッド先端面15の傾斜面部15bと前記取付孔13の孔後壁面13bとの間に形成された楔形状の隙間に対して圧入される。それにより、前記スペーサ部材30の第1面37aが孔後壁面13bに対して圧接されると共に、第2面37bが前記傾斜面部15bに圧接され、その結果、弁板3に対して後方への押圧力Fが作用し、該弁板3の孔前壁面13aが前記弁ロッド4のロッド前壁面14aに対して更に圧接される。
【0051】
このように、本実施形態によれば、弁ロッド4のロッド先端面15と弁板3の孔端壁面13dとの間に前記スペーサ部材30を介在させるという極めて簡単な構造を用いて、しかも、弁板3の螺子挿通孔16を通じて弁ロッド4の螺子孔17に弁板固定螺子20を螺合させて締め付けるという極めて単純な操作により、弁ロッド4に対して弁板3を精度良く且つ強固に固定することができ、その結果、ゲート弁動作時に、前記弁板3と弁ロッド4との擦れによるパーティクルの発生を防止することができる。
【0052】
その一方で、弁板3のシール部材7を交換する等のメンテナンスのために、該弁板3を弁ロッド4から外して弁箱1内から取り出すにあたっては、図10に示すように、まず、前記弁駆動部5を動作させることにより、該弁板3を、図2に実線で示す上昇位置(閉塞位置)から、同図に二点鎖線で示す下降位置(待避位置)まで移動させる。
次に、図11に示すように、弁箱1の上面の蓋取付螺子11を取り外すことによって蓋10を取り外し、該弁箱1の上面の窓孔12を開放する。
【0053】
続いて、図12に示すように、前記窓孔12から六角レンチ25aを差し込んで弁板固定螺子20を緩め、弁ロッド4の螺子孔17内において、雄螺子部21aと雌螺子部17aとの螺合を完全に解除すると共に、該雄螺子部21a全体を前記円筒部17b内に収容する。
次に、図13に示すように、雌螺子が形成された2つの工具装着孔26,26に対して、雄螺子が形成された2つの把持工具25b,25bを螺合させた上で、これら2つの把持工具25b,25bを両手に持って弁板3を引き上げる。すると、前記弁板3が弁ロッド4から分離され、該弁板3を前記弁箱1の上面の窓孔12を通じて外部に取り出すことができる。
【0054】
このとき、上述のように、前記スペーサ部材30の貫通孔36aの内周面には、前記弁板固定螺子20の雄螺子部21aと螺合する螺子山が形成されていて、該貫通孔36aの内径d5が、該雄螺子部21aの外径d1よりも小さく形成されている。そのため、図14に示すように、前記スペーサ部材30を、弁板固定螺子20の螺子本体部21及び弁板3の取付孔13から抜脱させることなく、該弁板固定螺子20の軸部21bに残した状態で、前記弁板3を弁ロッド4から分離して弁箱1から取り出すことができる。
【0055】
メンテナンスが終了した前記弁板3は、再び前記2つの把持工具25b,25bを2つの工具装着孔26,26に取り付けて、これら把持工具25b,25bを手に持って前記弁箱1内に収容する。そして、弁板3の取付孔13内に弁ロッド4の取付部14を挿入した後、前記把持工具25b,25bを取り外し、前記六角レンチ25aで弁板固定螺子20を螺子孔17に螺合させて締め付けることにより、該弁板3を前記弁ロッド4に対して固定する。最後に、前記弁箱1の上面に蓋10を蓋取付螺子11で取り付けることにより、図10に示すように、前記ゲート弁は再び使用可能な状態になる。
【0056】
以上、本発明に係るゲート弁における弁ロッドに対する弁板の取付構造、及びその取付構造を有するゲート弁の一実施形態について詳細に説明してきたが、本実施形態においては、例えば、前記空隙G2を形成するにあたって、必ずしも前記形態を有するスペーサ部材30を、ロッド先端面15と孔端壁面13dとの間に設ける必要性はなく、ロッド先端面15自体に傾斜面を形成して、これらロッド先端面15と孔端壁面13dとによって、前記空隙G2が形成されるようにしても良い。また、本実施形態においては、図9に示す前記モーメントM及び押圧力Fを、1つのスペーサ部材30によって発生させているが、これらモーメントM及び押圧力Fを個別の部材によって発生させても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 弁箱
1a 側壁
1b 弁シート
2 ゲート開口
3 弁板
3a 弁前面
3b 弁背面
3c 弁上面
3d 弁下面
4 弁ロッド
5 弁駆動部
7 シール部材
10 蓋
11 蓋取付螺子
12 窓孔
13 取付孔
13a 孔前壁面
13b 孔後壁面
13c 孔側壁面
13d 孔端壁面
14 取付部
14a ロッド前壁面
14b ロッド後壁面
14c ロッド側壁面
14d 基端部
15 ロッド先端面
15a 平坦面部
15b 傾斜面部
16 螺子挿通孔
16a 大径部
16b 小径部
17 螺子孔
17a 雌螺子部
17b 円筒部
20 弁板固定螺子
21 螺子本体部
21a 雄螺子部
21b 軸部
22 螺子頭部
30 スペーサ部材
31 前端縁
32 後端縁
33 側端面
34 上面
35 下面
36 平板部
36a 貫通孔
37 係合突部
37a 第1面
37b 第2面
W1 孔前壁面13aと孔後壁面13bとの間の距離
W2 ロッド前壁面14aとロッド後壁面14bとの間の距離
G1 隙間
G2 空隙
L1 軸線
L2 中心軸
d1 雄螺子部21aの外径
d2 軸部21bの直径
d3 小径部16bの内径
d4 円筒部17bの内径
d5 貫通孔36aの内径
S1 雄螺子部21aの長さ
S2 軸部21bの長さ
S3 円筒部17bの長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14