特開2021-161390(P2021-161390A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-161390ポリ乳酸樹脂組成物、樹脂発泡体、樹脂粒子、およびポリ乳酸樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-161390(P2021-161390A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】ポリ乳酸樹脂組成物、樹脂発泡体、樹脂粒子、およびポリ乳酸樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20210913BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20210913BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20210913BHJP
   C08J 9/22 20060101ALI20210913BHJP
   C08J 5/14 20060101ALI20210913BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
   C08L67/04ZBP
   C08L71/02
   C08L101/16
   C08J9/22CEZ
   C08J5/14CFD
   C08J3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2021-42242(P2021-42242)
(22)【出願日】2021年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2020-63130(P2020-63130)
(32)【優先日】2020年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】工藤 美穂
(72)【発明者】
【氏名】福山 英司
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4F074
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB03
4F070AB09
4F070AB11
4F070AB14
4F070AB22
4F070AC40
4F070AC56
4F070FA03
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4F071AA43
4F071AA51
4F071AF23
4F071BA01
4F071BB03
4F071BC01
4F071DA18
4F071DA20
4F074AA65
4F074AA76
4F074AA98
4F074CA31
4F074DA56
4J002CF181
4J002CH022
4J002GD00
4J200AA04
4J200AA06
4J200AA28
4J200BA14
4J200CA09
4J200EA07
4J200EA09
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性の改善効果が顕著に発揮され得るポリ乳酸樹脂組成物の提供。
【解決手段】改質ポリ乳酸樹脂と、ポリロタキサンとを含み、前記改質ポリ乳酸樹脂が有機過酸化物と不飽和カルボン酸無水物とによるポリ乳酸樹脂の改質物であり、該ポリ乳酸樹脂との合計100質量部に対する前記ポリロタキサンの含有量が1質量部以上35質量部以下であるポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質ポリ乳酸樹脂と、ポリロタキサンとを含み、
前記改質ポリ乳酸樹脂が有機過酸化物と不飽和カルボン酸無水物とによるポリ乳酸樹脂の改質物であり、
該ポリ乳酸樹脂の含有量と前記ポリロタキサンの含有量との合計100質量部に占める前記ポリロタキサンの割合が1質量部以上35質量部以下であるポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
前記不飽和カルボン酸無水物が無水マレイン酸である請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリロタキサンが、複数の環状分子と、該複数の環状分子を貫通する軸分子と、前記複数の環状分子の内の少なくとも1つの環状分子から延びる側鎖とを備え、前記環状分子がシクロデキストリンで、前記軸分子がポリエチレングリコールで、前記側鎖がポリカプロラクトンである請求項1又は2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂組成物で構成されている樹脂発泡体であって、
前記ポリ乳酸樹脂組成物が請求項1乃至3の何れか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物である樹脂発泡体。
【請求項5】
ポリ乳酸樹脂組成物で構成されている樹脂粒子であって、
前記ポリ乳酸樹脂組成物が請求項1乃至3の何れか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物である樹脂粒子。
【請求項6】
研磨材である請求項5記載の樹脂粒子。
【請求項7】
ブラスト用研磨材である請求項6記載の樹脂粒子。
【請求項8】
ポリ乳酸樹脂を、有機過酸化物及び不飽和カルボン酸無水物とともに加熱溶融状態で混練する1次混練によって改質ポリ乳酸樹脂を得る第1工程と、
前記改質ポリ乳酸樹脂をポリロタキサンとともに加熱溶融状態で混練する2次混練によってポリ乳酸樹脂組成物を得る第2工程とを実施し、且つ、
該第2工程では、前記ポリ乳酸樹脂の含有量と前記ポリロタキサンの含有量との合計を100質量部とした際に、該ポリロタキサンの割合が1質量部以上35質量部以下となる前記ポリ乳酸樹脂組成物を前記2次混練によって作製するポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記1次混練される前記有機過酸化物の量を前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下とする請求項8記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記1次混練される前記不飽和カルボン酸無水物の量を前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.1質量部以上4質量部以下とする請求項8又は9記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記不飽和カルボン酸無水物が無水マレイン酸である請求項8乃至10の何れか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記ポリロタキサンが、複数の環状分子と、該複数の環状分子を貫通する軸分子と、前記複数の環状分子の内の少なくとも1つの環状分子から延びる側鎖とを備え、前記環状分子がシクロデキストリンで、前記軸分子がポリエチレングリコールで、前記側鎖がポリカプロラクトンである請求項8乃至11の何れか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、樹脂発泡体、樹脂粒子、およびポリ乳酸樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮から、バイオマスから製造可能な樹脂であるポリ乳酸樹脂を利用することが各方面で試みられている。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂組成物で構成された成形品は、他の樹脂組成物で構成された成形品に比べ耐衝撃性が劣る傾向にあり改善が求められている。
【0003】
ポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性を改善する方法として、ポリ乳酸樹脂、ポリロタキサン、及び、柔軟性高分子を含有するポリ乳酸樹脂組成物を調製する方法が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−84414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の実施例5〜7(段落0067−0070)では、−60℃付近から室温付近にかけてtanδの大きなピークが観察されることをもって耐衝撃性に優れることが示唆されている旨の説明がなされているが、その効果のほどが明らかではない。
本発明は、耐衝撃性の改善効果が顕著に発揮され得るポリ乳酸樹脂組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ポリロタキサンによる耐衝撃性の改善を行う場合、ポリ乳酸樹脂に対して不飽和カルボン酸無水物での改質を施すことが有効であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
上記課題を解決すべく本発明は、
改質ポリ乳酸樹脂と、ポリロタキサンとを含み、
前記改質ポリ乳酸樹脂が有機過酸化物と不飽和カルボン酸無水物とによるポリ乳酸樹脂の改質物であり、
該ポリ乳酸樹脂の含有量と前記ポリロタキサンの含有量との合計100質量部に占める前記ポリロタキサンの割合が1質量部以上35質量部以下であるポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【0008】
上記課題を解決すべく本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物で構成されている樹脂発泡体であって、該ポリ乳酸樹脂組成物が上記のポリ乳酸樹脂組成物である樹脂発泡体を提供する。
【0009】
上記課題を解決すべく本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物で構成されている樹脂粒子であって、該ポリ乳酸樹脂組成物が上記のポリ乳酸樹脂組成物である樹脂発泡体を提供する。
【0010】
上記課題を解決すべく本発明は、
ポリ乳酸樹脂を、有機過酸化物及び不飽和カルボン酸無水物とともに加熱溶融状態で混練する1次混練によって改質ポリ乳酸樹脂を得る第1工程と、
前記改質ポリ乳酸樹脂をポリロタキサンとともに加熱溶融状態で混練する2次混練によってポリ乳酸樹脂組成物を得る第2工程とを実施し、且つ、
該第2工程では、前記ポリ乳酸樹脂の含有量と前記ポリロタキサンの含有量との合計を100質量部とした際に、該ポリロタキサンの割合が1質量部以上35質量部以下となる前記ポリ乳酸樹脂組成物を前記2次混練によって作製するポリ乳酸樹脂組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐衝撃性の改善効果がより顕著に発揮され得るポリ乳酸樹脂組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例2で作製されたポリ乳酸樹脂組成物でのミクロ相分離構造を示した透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)。
図2】実施例2で作製されたポリ乳酸樹脂組成物でのミクロ相分離構造を示した透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
まず、ポリ乳酸樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物は、改質ポリ乳酸樹脂と、ポリロタキサンとを含み、前記改質ポリ乳酸樹脂が有機過酸化物と不飽和カルボン酸無水物とによるポリ乳酸樹脂の改質物である。
【0014】
ポリ乳酸樹脂組成物に含まれる前記ポリ乳酸樹脂は、乳酸の単独重合体であっても乳酸と他のモノマーとの共重合体であってもよい。
前記共重合体での他のモノマーとしては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
前記モノマーは、例えば、多官能多糖類などであってもよい。
【0015】
ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸は、L−体とD−体とのいずれか一方でも両方であってもよい。
前記単独重合体であるポリ乳酸樹脂は、ポリ(L−乳酸)樹脂、ポリ(D−乳酸)樹脂、及び、ポリ(DL−乳酸)樹脂の内のいずれであってもよい。
ポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸樹脂組成物に優れた強度を発揮させる上においてD−体に比べてL−体が多く含まれていることが好ましい。
但し、L−体が実質的に100質量%の割合で含まれているポリ(L−乳酸)樹脂は、機械的強度に優れるもののポリ乳酸樹脂組成物の脆性を顕在化させ易い。
そこで、本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物に含まれるポリ乳酸樹脂は、D−体とL−体との合計に占めるD−体の割合(質量割合)が0.1質量%以上であることが好ましい。
該質量割合は、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましい。
尚、D−体の割合が高くなると、ポリ乳酸樹脂組成物に優れた強度が発揮されないことにもなり得る。
そこで、D−体とL−体との合計に占めるD−体の割合は、4質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
即ち、D−体とL−体との質量比率(D−体/L−体)は、0.1/99.9〜4/96の範囲内であることが好ましい。
このようなD−体とL−体との質量比率が好ましいのは、共重合体においても同じである。
【0016】
前記共重合体を構成する脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。
脂肪族多価カルボン酸は、無水物であってもよい。
【0017】
前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0018】
前記共重合体を構成する乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
【0019】
前記多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガムなどが挙げられる。
【0020】
前記共重合体においては、分子中に乳酸(L−体及びD−体)に由来する構造部分が60質量%以上の割合で含有されていることが好ましい。
前記構造部分(L−体及びD−体)の含有量は、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0021】
前記ポリ乳酸は、温度210℃、公称荷重2.16kgでのメルトマスフローレイト(MFR)が、4g/10min以上であることが好ましく、5g/10min以上であることがより好ましく、6g/10min以上であることがさらに好ましい。
前記ポリ乳酸のMFRは、30g/10min以下であることが好ましく、25g/10min以下であることがより好ましく、20g/10min以下であることがさらに好ましい。
【0022】
ポリ乳酸樹脂やポリ乳酸樹脂組成物のメルトマスフローレイトは、例えば、(株)東洋精機製作所製の「セミオートメルトインデクサー2A」を用いて測定することができる。
MFRは、JIS K7210−1:2014「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方−第1部」B法記載のピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定することができる。
測定条件は、原則的に以下の通りとする。
試料:3〜8g
尚、測定用の試料は70℃、4時間真空乾燥し、乾燥後は測定直前まで真空パック用のナイロンポリ袋に入れて真空包装した上でデシケータに保存する。
予熱:270秒
ロードホールド:30秒
試験温度:210℃
試験荷重:2.16kg(21.18N)
ピストン移動距離(インターバル):25mm
そして、試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とする。
【0023】
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物には、上記のような単独重合体であるポリ乳酸樹脂や上記のような共重合体であるポリ乳酸樹脂を1種単独で含有させる必要はなく、2種以上のポリ乳酸樹脂を含有させてもよい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂の単独重合体のみを含有することが好ましい。
【0024】
本実施形態のポリロタキサンは、複数の環状分子と、該複数の環状分子を貫通する軸分子とを備えている。
本実施形態のポリロタキサンは、前記軸分子の末端に嵩高い末端基を備えていてもよい。
本実施形態のポリロタキサンは、上記のような末端基を備えていない、“擬ポリロタキサン”などと称されるものであってもよい。
本実施形態のポリロタキサンは、上記のような末端基を備えていることが好ましい。
【0025】
本実施形態のポリロタキサンは、前記複数の環状分子の内の少なくとも1つの環状分子から延びる側鎖を有していてもよい。
1つの環状分子から延びる側鎖は1本であっても複数本であってもよい。
本実施形態のポリロタキサンは、1つの環状分子から複数の側鎖が伸びていることが好ましい。
【0026】
本実施形態のポリロタキサンには、1本の軸分子が50以上200以下の環状分子を貫通しているポリマー分子が含まれていることが好ましい。
本実施形態のポリロタキサンは、このような分子を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましい。
【0027】
本実施形態のポリロタキサンには、全ての環状分子から複数(例えば2〜3)の側鎖が伸びているポリマー分子が含まれていることが好ましい。
【0028】
本実施形態のポリロタキサンにおける前記軸分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセタール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
本実施形態のポリロタキサンにおける前記軸分子としては、ポリエチレングリコールが好ましい。
ポリエチレングリコールは、質量平均分子量が5000〜100000であることが好ましい。
【0029】
前記末端基としては、アダマンタン基;トリチル基;ピレニル基、フェニル基等のアリール基;2−ブチルデシル基、2−ヘキシルデシル基等の長鎖分岐アルキル基等の嵩高い置換基が例示できる。
これらの末端基は、前記軸分子の末端に直接結合されていても、2価の有機基やヘテロ原子などを介して結合されていてもよい。
前記末端基と前記軸分子とは、アミド結合、エステル結合等により結合されていることが好ましい。
前記末端基は、1又は複数の水素原子が、アルキル基、アリール基、ニトロ基、アルコキシ基、アミド基等で置換されていてもよい。
【0030】
本実施形態のポリロタキサンにおける前記環状分子としては、例えば、5以上のグルコースが環状に連結されているものが挙げられ、より具体的には、6個以上8個以下のグルコースが環状に連結されているものが挙げられる。
即ち、本実施形態のポリロタキサンにおける前記環状分子としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンが挙げられる。
【0031】
該環状分子から延びる前記側鎖としては、例えば、ポリカプロラクトンやポリカプロラクタムなどが好ましい。
前記側鎖としては、ポリカプロラクトンがより好ましい。
側鎖であるポリカプロラクトンは、環状分子に直接的に結合されていても2価の有機基やヘテロ原子などを介して結合されていてもよい。
【0032】
一つの側鎖の分子量は、1000以上10000以下とすることができる。
ポリロタキサン1分子での側鎖についての質量平均分子量(Mw)は、100000以上1000000以下とすることができる。
ポリロタキサンとしての質量平均分子量(Mw)も、100000以上1000000以下とすることができる。
【0033】
本実施形態におけるポリロタキサンは複数の環状分子と、該複数の環状分子を貫通する軸分子と、前記複数の環状分子の内の少なくとも1つの環状分子から延びる側鎖とを備え、前記環状分子がシクロデキストリンで、前記軸分子がポリエチレングリコールで、前記側鎖がポリカプロラクトンであることが好ましい。
【0034】
本実施形態における前記有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、α’,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン,ジt−ブチルパーオキサイド、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどを挙げることが出来る。
これらの中では、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
本実施形態における前記有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイドであることがより好ましい。
【0035】
本実施形態における前記不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水ナジック酸などを挙げることができる。
本実施形態における前記不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸が好ましい。
【0036】
本実施形態での前記ポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸樹脂の含有量と前記ポリロタキサンの含有量との合計100質量部に占める前記ポリロタキサンの割合が、1質量部以上35質量部以下とされる。
即ち、前記ポリ乳酸樹脂組成物での前記ポリ乳酸樹脂と前記ポリロタキサンとの合計に占める前記ポリロタキサンの割合は、1質量%以上35質量%以下である。
本実施形態での前記ポリ乳酸樹脂組成物では、前記改質ポリ乳酸樹脂と前記ポリロタキサンとの合計に占める前記ポリロタキサンの割合も1質量部以上35質量部以下とすることができる。
即ち、前記ポリ乳酸樹脂組成物での前記改質ポリ乳酸樹脂と前記ポリロタキサンとの合計に占める前記ポリロタキサンの割合は、1質量%以上35質量%以下とすることができる。
【0037】
前記ポリ乳酸樹脂や前記改質ポリ乳酸樹脂との合計に占める前記ポリロタキサンの含有割合は、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂や前記改質ポリ乳酸樹脂との合計に占める前記ポリロタキサンの含有割合は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
前記ポリロタキサンの含有割合は、20質量%以下であってもよく15質量%以下であってもよい。
【0038】
以下に、上記のようなポリ乳酸樹脂組成物の製造方法について説明する。
本実施形態においては、前記ポリ乳酸樹脂を、有機過酸化物及び不飽和カルボン酸無水物とともに加熱溶融状態で混練する1次混練によって改質ポリ乳酸樹脂を得る第1工程が実施される。
次いで、本実施形態においては前記改質ポリ乳酸樹脂をポリロタキサンとともに加熱溶融状態で混練する2次混練によってポリ乳酸樹脂組成物を得る第2工程が実施される。
そして、前記2次混練される前記ポリロタキサンの量は、前記のように前記ポリ乳酸樹脂との合計100質量部に対して1質量部以上35質量部以下とされる。
【0039】
このようにして製造される本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物には、改質ポリ乳酸樹脂を含むマトリックス相と、ポリロタキサンを含むドメイン相とを備えたマトリックス・ドメイン構造(ミクロ相分離構造)が形成される。
そして、本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物は、前記ドメイン相を構成するドメイン粒子にポリロタキサンが含まれるとともに前記マトリックス相を構成するマトリックスポリマーと当該ドメイン粒子との間に良好な接着性が発揮されることでポリ乳酸樹脂組成物に耐衝撃性などにおいて良好な特性が発揮される。
【0040】
前記改質ポリ乳酸樹脂を調製する際、前記有機過酸化物がラジカルを発生するとともに前記不飽和カルボン酸無水物やその誘導体によってポリ乳酸樹脂のエステル化反応が好適に進行する。
同時にポリ乳酸樹脂への不飽和カルボン酸無水物の付加反応も進み、ポリ乳酸樹脂表面サイトヘのグラフト化反応を惹起する。
そして、不飽和カルボン酸無水物のポリ乳酸樹脂表面サイトヘのグラフト化反応により、前記ドメイン相を構成するドメイン粒子と前記マトリックス相を構成するマトリックスポリマーとの界面での接着性が確保され、最終的に得られるポリ乳酸樹脂組成物の物性を高める結果になる。
【0041】
前記改質ポリ乳酸樹脂を調製する一次混練での前記有機過酸化物は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下の割合で用いられることが好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂に対する前記有機過酸化物の割合が上記のような範囲に調整されることで、改質に適したラジカル発生量となり得る。
前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対する前記有機過酸化物の割合は、1.5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0042】
前記改質ポリ乳酸樹脂を調製する一次混練での前記不飽和カルボン酸無水物は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上4質量部以下の割合で用いられることが好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂に対する前記不飽和カルボン酸無水物の割合が上記のような範囲に調整されることで、ポリ乳酸樹脂にβ開裂に伴う分子量の過度な低下が生じてしまうことを抑制しつつポリ乳酸樹脂に対して高い改質効果を作用させ得る。
前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対する前記不飽和カルボン酸無水物の割合は、3.5質量部以下であることがより好ましい。
不飽和カルボン酸無水物の割合は、3質量部以下であってもよく、2.5質量部以下であってもよく、2質量部以下であってもよい。
【0043】
前記1次混練と前記2次混練とは、それぞれを1バッチごとの工程として実施してもよく、前記1次混練に連続して前記2次混練が行われるような連続工程としてもよい。
例えば、前記第1工程と前記第2工程とは1つの装置で連続的に実施することもできる。
【0044】
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法としては、反応性向上の点から、前記ポリ乳酸樹脂が加熱溶融された状態で前記1次混練や前記2次混練を実施することが好ましい。
溶融状態での混練を実施するための混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機などの多軸押出機、二軸単軸複合押出機などの押出機、ニーダーなどが挙げられる。
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法としては、生産性に優れる点から、連続的に製造可能な押出機が好ましく、混練性、反応性および生産性の向上の点から、二軸押出機を用いることがより好ましい。
【0045】
本実施形態においては2台の押出機が連結されたタンデム押出機を用い、上流側の押出機において前記ポリ乳酸樹脂を前記有機過酸化物及び前記不飽和カルボン酸無水物とともに加熱溶融状態で混練して第1工程を実施し、下流側の押出機で前記ポリロタキサンを加え、それまでに調製された改質ポリ乳酸樹脂と当該ポリロタキサンとをこの下流側の押出機で溶融混練させるようにして前記第2工程を実施することができる。
【0046】
本実施形態においては一つの押出機を用い、該押出機の上流側において前記ポリ乳酸樹脂を前記有機過酸化物及び前記不飽和カルボン酸無水物とともに加熱溶融状態で混練して第1工程を実施し、該押出機の途中で前記ポリロタキサンを加え、それまでに調製された改質ポリ乳酸樹脂と当該ポリロタキサンとをこれよりも下流側で溶融混練させるようにして前記第2工程を実施することもできる。
【0047】
二軸押出機を用いて樹脂組成物を製造する場合、ポリロタキサンの熱劣化を抑制させる観点から、第2工程での2次溶融における最高到達樹脂温度は、250℃以下とすることが好ましい。
また、有機過酸化物の一時間半減期速度と温度の関係、及び、ポリ乳酸樹脂および不飽和カルボン酸無水物との反応を向上させる観点より、二軸押出機での滞留時間は、60秒以上360秒以下が好ましい。
熱劣化を考慮すると、前記滞留時間は180秒以下がより好ましい。
【0048】
前記滞留時間は、シリンダーの内容積とスクリューの体積との差から求められる二軸押出機での空間容積と単位時間当たりの吐出量とに基づいて算出することができる。
【0049】
本実施形態において製造されるポリ乳酸樹脂組成物は、各種の樹脂成形品の原材料として好適に用いられ得る。
その際には、樹脂成形品を構成する原料組成物を当該ポリ乳酸樹脂組成物のみとしてもポリ乳酸樹脂組成物に各種の添加剤を含有させるようにしてもよい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物は、その効果をより顕著に発揮する上において、樹脂発泡体の原料組成物に含有されることが好ましい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物は、その効果をより顕著に発揮する上において、樹脂粒子の原料にされてもよい。
【0050】
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物を樹脂発泡体の原料組成物とする場合、その製法などについては従来公知の技術を採用できる。
【0051】
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物で構成される樹脂発泡体は、棒状やシート状に連続的に押出発泡されてなる押出発泡体であっても、細長な棒状の押出発泡体が押出直後に寸断されてなる粒状のものであってもよい。
本実施形態の樹脂発泡体は、押出発泡体に熱成形や外形加工などの二次加工が施されて3次元的な賦形が施されたものであってもよい。
本実施形態の樹脂発泡体は、非発泡な状態のもの、又は、予備発泡された状態のものが成形型で発泡されることによって形成される発泡成形体であってもよく、複数の樹脂発泡粒子どうしが成形型内で熱融着されてなるビーズ発泡成形体であってもよい。
【0052】
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物で構成される樹脂粒子は、研磨材、塗料用艶消し剤、ブロッキング防止剤、光拡散剤などに用いられ得る。
なかでも本実施形態の樹脂粒子は、研磨材として好適である。
【0053】
樹脂製の研磨材は、物品に付着している余分なバリや塗装を取り除くのに使用される。
例えば、樹脂成形品、ダイキャスト製品、半導体モールド、モーター部品において発生するバリを取り除いたり、自動車、航空機等の塗装を剥離したりするために、これらの物品に研磨材を吹き付けることが行われる。
このように研磨材を物品に吹き付けて余分なものを取り除く方法は、ブラストなどと称されている。本実施形態の樹脂粒子は、ブラスト用の研磨材として好適である。
本実施形態の樹脂粒子は、バレル研磨用の研磨材などにも用いられ得る。
【0054】
研磨材としては無機粉末などが広く用いられているが、無機粉末は物品に対して当たりが強過ぎて物品によっては物品の本体までも傷めるおそれがある。
これに対し、本実施形態の研磨材は、物品に対する当たりが柔らかで、物品の本体自体を傷めることが少ないために、上述のような分野で使用されるのに好適である。
【0055】
尚、ブラストには、乾式ブラストと湿式ブラストとがある。
乾式ブラストは、研磨材を気流によって研磨対象物に吹き付ける方法であり、湿式ブラストは、研磨材を水などの液体に浮遊させて液体と共に吹き付ける方法である。
【0056】
研磨材として用いる場合、樹脂粒子の一部に割れやかけが生じ、それらが研摩残渣として発生することがある。
本実施形態の樹脂粒子は、ポリ乳酸樹脂が主成分となっているため、そのような残渣を生分解処理に処することができ、環境面でも優れているといえる。
【0057】
本実施形態の樹脂粒子を研磨材として利用する場合、ポリ乳酸樹脂組成物には、例えば、0.1質量%以上15質量%以下の無機粉末(例えば、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム等の粉末)を含んでいてもよい。研磨材を構成するポリ乳酸樹脂組成物での無機粉末の割合は、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0058】
樹脂粒子を研磨材として使用する際には、適当な粒度を持つように調整することが好ましい。
その大きさは絶対値で云えば、おおよそ0.038mmから4.0mmの範囲である。
これを篩の大きさで云えば、公称目開き4.0mm篩を通過し、公称目開き0.038mmの篩で、おおよその樹脂粒子が止まる大きさである。
この場合の篩は、JIS Z8801−1:2019「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」の規定によるものである。
このうちで好ましい篩の範囲は公称目開き0.090〜2.36mmであり、さらに好ましい範囲は公称目開き0.15〜1.40mmである。
【0059】
研磨材として用いる場合、形状は、針状、方形状、球状、円柱状、円板状等の何れであってもよく、また無定形状であってもよい。
当該研磨材でのポリ乳酸樹脂組成物の密度は、例えば、1.2〜1.4g/cmとされ得る。
【0060】
前記研磨材は色々な方法によって製造することができる。
そのうちで最も好ましい方法は、押出機を用いてペレットを作る方法である。
すなわち、ポリ乳酸樹脂組成物を押出機に入れて溶融混練し、溶融混練物をノズル金型から多数の紐状に押し出し、押し出した紐状物を直ぐに水槽に入れて冷却し固化させたのち、切断してペレットとする方法である。
なお、要すれば、このペレットを熱風又はマイクロ波加熱ができる加熱装置に入れ、適当な温度に適当な時間加熱することによって結晶化させてもよい。
【0061】
上に述べた方法の代わりに、溶融混練物をTダイ、インフレーションダイ又はサーキュラーダイからシート状に押し出し、チルロール又は冷却用マンドレルで冷却し、得られたシートを粉砕して粒子とする方法も採用可能である。
【0062】
尚、本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物の用途は、上記のようなものに限られるわけではない。
また、本実施形態ではポリ乳酸樹脂組成物やその製造方法について上記のような例示を行っているが本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
1次混練では、ポリ乳酸樹脂(PLA:Nature works社製、商品名「Ingeo 4032D」、質量平均分子量10万)と、無水マレイン酸(MA:東京化成工業社製、商品名「Maleic Anhydride」)と、ジクミルパーオキサイド(DCP:日本油脂社製、「パークミルD」)とを表1の実施例1に示す質量割合(PLA:MA:DCP=90質量部:0.5質量部:0.5質量部)にてφ15mmの二軸押出機(L/D=45)に供給した。
二軸押出機にて、フィード部の温度を100℃、その他の温度を190℃にし、回転数200rpmの条件で前記混合物を溶融混練し、0.6kg/hの吐出量で、口径2mmの金型から、1次混練物をストランド状に押出した。
【0065】
押出されたストランド状の混練物を、吐出部から水面と接触するまでの距離を200mmに調整し、水温30℃の冷却水槽を通過させ、ペレタイザーでカットして、改質ポリ乳酸樹脂のペレットを得た。得られたペレットは円柱状であった。
【0066】
2次混練では、ポリロタキサン(アドバンスド・ソフトマテリアルズ社製、商品名「セルム スーパーポリマー SH2400P」、質量平均分子量35万)を先のポリ乳酸樹脂との比率が90質量部:10質量部(ポリ乳酸樹脂:ポリロタキサン)となるように改質ポリ乳酸樹脂にブレンドして、再びφ15mmの二軸押出機(L/D=45)に供給した。
1次混練と同様の条件にて二軸押出機で溶融混練し、ポリ乳酸樹脂組成物で構成された樹脂ペレットを得た。
得られた樹脂ペレットで耐衝撃性評価を行った結果、最大荷重は453Nであり耐衝撃性に優れるものであった。
【0067】
尚、耐衝撃性については以下のようにして評価した。
作製したポリ乳酸樹脂組成物を、70℃で5時間以上真空乾燥させた。
ポリ乳酸樹脂組成物を190℃で5分加熱プレスすることで、長さ150mm×幅150mm×厚み1±5%mmとなるシート状の測定試料を作製した。
【0068】
(落錘衝撃試験の試験方法)
最大荷重は、ASTM D-3763−15に準拠し測定を行った。
すなわち、CEAST社製「CEAST9350」落錘衝撃試験機、計測ソフト「CEAST VIEW」を用いて、試験片サイズは、長さ150mm×幅150mm×厚み1.0±5%mmで、試験速度4.56m/sec、落錘荷重1.9265kg、試験片支持スパンφ76mm、4.5kN計装化タップ(先端φ12.7mm半球状)で測定した。
なお、試験片の数は最小3個とし、試験片をASTM D618−13のProcedureA(23±2℃、相対湿度50±10%)の環境で40時間かけて状態調整した後、同じ温度環境下で測定を行った。
最大荷重は、測定で得られたグラフの積分値を該計測ソフトで自動計算にて算出した。
【0069】
(実施例2)
表1に示すように、使用する無水マレイン酸量を0.5質量部に代えて1質量部とし、使用するポリロタキサンの量を10質量部に代えて5質量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0070】
(実施例3)
表1に示すように、使用する無水マレイン酸量を0.5質量部に代えて1質量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0071】
(実施例4)
表1に示すように、使用する無水マレイン酸量を0.5質量部に代えて1質量部とし、使用するポリロタキサンの量を10質量部に代えて20質量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0072】
(実施例5)
表1に示すように、使用する無水マレイン酸量を0.5質量部に代えて2質量部とし、使用するポリロタキサンの量を10質量部に代えて5質量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0073】
(実施例6)
表1に示すように、使用する無水マレイン酸量を0.5質量部に代えて2質量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0074】
(比較例1)
表1に示すように、無水マレイン酸およびポリロタキサンを添加しないこと以外は、実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を調製して、実施例1と同様に評価した。
結果、耐衝撃性は120Nと十分なものではなかった。
【0075】
(比較例2)
表1に示すように、使用するポリロタキサンの量を10質量部に代えて5質量部とし、有機過酸化物および無水マレイン酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を調製して、実施例1と同様に評価した。
結果、耐衝撃性は、132Nと十分なものではなかった。
【0076】
以上の結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例2及び比較例2で作製したポリ乳酸樹脂組成物のモルフォロジーを以下のようにして評価した。
実施例2及び比較例2で作製したポリ乳酸樹脂組成物のペレットを70℃で5時間以上乾燥した。
ペレットから超薄切片試料(例えば、厚さ70nm)を作製して透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「H−7600」、AMT社製 カメラシステム「ER−B」)を使って写真(TEM写真)を撮影した。
超薄切片試料は、ライカマイクロシステムズ(株)製「ライカ EM UC7」ウルトラミクロトーム、DiATOME社製「UltraSonic」でスライスして作製し、四酸化ルテニウムおよび四酸化オスミウムで染色してから写真撮影した。
尚、観察面は、ペレットの流れ方向と、流れ方向に垂直な方向の2方向の評価を行った。
【0079】
ペレットの流れ方向に垂直な方向を観察した結果を、図1、2に示す。
図中の黒色部がポリロタキサンである。
比較例2、実施例2の両方においてポリ乳酸樹脂を含む母相(マトリックス)中に、ポリロタキサンを含む分散相(ドメイン)が点在する海島構造(ミクロ相分離構造)が見られた。
そして、耐衝撃性の向上が見られた実施例2については、耐衝撃性の低い比較例2と比べ、分散したポリロタキサンのドメイン粒子が半円になるような特徴的な変化が見られた。
【0080】
上記のことからも本発明によれば耐衝撃性の改善効果が顕著に発揮され得るポリ乳酸樹脂組成物が提供され得ることがわかる。
【0081】
(ブラスト用研磨材としての評価)
(実施例7)
実施例2で得られたポリ乳酸樹脂組成物のペレットを用いて、ブラスト用研磨材としての評価を行った。ペレットの形状は円柱状であり、平均長さL=1.36mm,平均直径D=0.82mm、L/D=1.66、であり、平均粒子径は0.88mmであった。
研磨効果の評価を行ったところ、得られた銅板はメッキが均一に乗り、メッキムラは見られなかった。
(平均長さL、平均直径Dの測定方法)
無作為に10個のペレットを選び、その長さ、直径をノギスで測定し、その平均を、平均長さL、平均直径Dとし、L/Dの測定を行った。
なお、ペレットの長さLは、押出方向の長さをいい、平均直径Dは平均長さLの方向に実質的に直交するペレットの切断面の直径をいう。
(平均粒子径の測定方法)
平均粒子径の測定はJIS Z8815:1994「ふるい分け試験方法通則」記載の「6.試験方法 6.1 乾式ふるい分け試験 6.1(2)機械ふるい分け」に準拠して測定を行い、得られた粒径分布から積算値50%の粒子径を平均粒子径とした。
【0082】
(比較例3)
比較例2で得られたポリ乳酸樹脂組成物のペレットを用いて、ブラスト用研磨材としての評価を行った。ペレットの形状は円柱状であり、平均長さL=1.38mm,平均直径D=0.88mm、L/D=1.57であり、平均粒子径は0.92mmであった。
実施例7と同様にして研磨効果の評価を行ったところ、銅板にポリ乳酸樹脂組成物の破片が付着し、付着した部分に錫メッキがのらず、メッキムラのあるものしか得られなかった。
【0083】
(研磨効果の評価)
ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを空気とともに銅板に対し10秒間噴射することによって行う。
その後、銅板は水に溶かした湿式振動バレルコンパウンドと5分間共摺りし、200℃で9時間アニーリングした後、2.5〜5.0μmの錫メッキを行い、得られた銅板のメッキムラを目視で確認する。
メッキムラがないものを「〇」、メッキムラがあるものを「×」として判定した。
以上の結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
上記の結果から、本発明でのポリ乳酸樹脂組成物は、研磨材として用いる樹脂粒子の形成材料として好適であることもわかる。
図1
図2