【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)、融点が55℃以上であるアミン化合物(C)、アミノシラン化合物(D)、及びシラノール縮合触媒(E)を含有することを特徴とする。
【0011】
[加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)]
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)を含有している。加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)によれば、雰囲気中の湿気により硬化することができる湿気硬化性組成物を提供することが可能となる。
【0012】
(ポリアルキレンオキサイド(A))
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含んでいることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)によれば、硬化性組成物の接着性を向上させることができる。
【0013】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、加水分解性シリル基を有している。
【0014】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0015】
ポリアルキレンオキサイド(A)が有している加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。ジアルコキシシリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)によれば、硬化後に優れたゴム弾性及び接着性を発揮する硬化性組成物を提供することができる。
【0016】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、1〜2個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が2個以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)は、その分子鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0017】
なお、ポリアルキレンオキサイド(A)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、
1H−NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0018】
ポリアルキレンオキサイド(A)としては、主鎖が、一般式:−(R−O)
n−(式中、Rは炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0019】
ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化後に優れたゴム弾性及び接着性を発揮する硬化性組成物を提供することができる。
【0020】
ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量は、20,000〜50,000が好ましく、20,000〜40,000がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が20,000以上であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0021】
ポリアルキレンオキサイド(A)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.0〜1.3がより好ましく、1.0〜1.2が特に好ましい。分子量分布が1.5以下であるポリアルキレンオキサイドによれば、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。
【0022】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量及び重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。
【0023】
具体的には、ポリアルキレンオキサイド6〜7mgを採取し、採取したポリアルキレンオキサイドを試験管に供給する。0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むオルトジクロロベンゼン(o−DCB)溶液を用意し、この溶液を試験管に加えて、ポリアルキレンオキサイドの濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリアルキレンオキサイドを溶液中に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いて、GPC法によってポリアルキレンオキサイドの数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0024】
ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC−8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR−H(20)HT×3本
TSKguardcolumn−HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0025】
加水分解性シリル基を含有しているポリアルキレンオキサイド(A)は、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり、メチルジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、AGC株式会社製 製品名「エクセスター S4530」、「エクセスター S6735」、及び「エクセスター SAX720」などが挙げられる。
【0026】
(アクリル系重合体(B))
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)をさらに含んでいることが好ましい。アクリル系重合体(B)によれば、硬化性組成物の接着性を向上させることができる。さらに、アクリル系重合体(B)を、上述したポリアルキレンオキサイド(A)と組み合わせて用いることにより、硬化後の硬化性組成物の耐候性を向上させることができる。
【0027】
アクリル系重合体(B)が有している加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0028】
アクリル系重合体(B)の主鎖骨格は、アクリル系単量体の重合体が好ましく挙げられる。アクリル系単量体はエチレン性不飽和二重結合を有しており、このようなアクリル系単量体を、エチレン性不飽和二重結合において、付加重合させることによりアクリル系単量体の重合体が得られる。
【0029】
アクリル系重合体(B)におけるアクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、及びアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートなどが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
【0030】
アクリル系重合体(B)の主鎖骨格としては、メチル(メタ)アクリレート、及びブチル(メタ)アクリレートを含む単量体の共重合体が好ましく、メチルメタクリレート、及びブチルアクリレートを含む単量体の共重合体がより好ましい。主鎖骨格が上記共重合体からなるアクリル系重合体(B)によれば、硬化後の硬化性組成物の引張せん断接着強度を向上させることができる。
【0031】
アクリル系重合体(B)において、主鎖骨格を構成している重合体に用いられる単量体は、アクリル系単量体以外に、さらに他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
アクリル系重合体(B)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0033】
アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、2,000〜50,000が好ましく、3,000〜20,000がより好ましい。アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が2,000以上であると、硬化後に熱劣化が低減され、優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の優れた糸切れ性を確保することができ、これにより硬化性組成物を良好に施工することができる。
【0034】
なお、アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によってポリスチレン換算されて測定された値である。具体的な測定方法や測定条件は、上述したポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量の測定要領と同様である。
【0035】
硬化性組成物中におけるアクリル系重合体(B)の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましく、30〜100質量部が特に好ましい。アクリル系重合体(B)の含有量が10質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物の光劣化を低減して耐久性を向上させることができる。アクリル系重合体(B)の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の伸び性を向上させることができる。これにより、目地幅の変化に対して上記硬化物の追随性が良好になる。
【0036】
[アミン化合物(C)]
硬化性組成物は、融点が55℃以上であるアミン化合物(C)を含む。アミン化合物(C)によれば、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0037】
アミン化合物の融点は、55℃以上であるが、58℃以上が好ましく、58〜100℃がより好ましく、58〜90℃が特に好ましい。
【0038】
なお、本発明において、アミン化合物の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。具体的には、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、アミン化合物を10℃から150℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、アミン化合物の融点とする。なお、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0039】
本発明において、アミン化合物(C)とは、一分子中に少なくとも1個のアミノ基(−NH
2)を有している化合物を意味する。アミン化合物(C)においてアミノ基が有している水素原子は、アルキル基やアリール基などの有機基によって置換されていてもよい。アミン化合物(C)は、加水分解性シリル基を有していないことが好ましい。また、アミン化合物(C)は、ケイ素原子を含んでいないことが好ましい。
【0040】
アミン化合物(C)としては、例えば、モノアミン化合物、ジアミン化合物、及びトリアミン化合物などが挙げられる。なかでも、モノアミン化合物、及びジアミン化合物が好ましく、ジアミン化合物がより好ましい。
【0041】
アミン化合物(C)としては、下記式(1)で示されるモノアミン化合物、下記式(2)で示されるジアミン化合物、及び下記式(3)で示されるジアミン化合物が好ましく挙げられる。なかでも、下記式(2)で示されるジアミン化合物、及び下記式(3)で示されるジアミン化合物が好ましく、下記式(2)で示されるジアミン化合物がより好ましい。
R
1−NH
2 (1)
R
2−NH−R
3−NH
2 (2)
NH
2−R
4−NH
2 (3)
(式(1)において、R
1は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、一価の飽和脂環式炭化水素基、又はアリール基である。式(2)において、R
2は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、一価の飽和脂環式炭化水素基、又はアリール基であり、R
3は、アルキレン基である。式(3)において、R
4は、アルキレン基である。)
【0042】
式(1)で示されるモノアミン化合物において、R
1の炭素数は、15〜35個が好ましく、15〜30個がより好ましく、15〜25個がより好ましい。R
1の炭素数を上記範囲内とすることにより、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。R
1としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。
【0043】
式(2)で示されるジアミン化合物において、R
2及びR
3の合計の炭素数は、15〜40個が好ましく、15〜30個がより好ましく、15〜25個が特に好ましい。R
2及びR
3の合計の炭素数を上記範囲内とすることにより、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。R
2としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。
【0044】
式(3)で示されるジアミン化合物において、R
4の炭素数は、10〜40個が好ましく、15〜40個がより好ましく、15〜30個がより好ましく、15〜25個が特に好ましい。R
4の炭素数を上記範囲内とすることにより、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0045】
アミン化合物(C)として、具体的には、ベヘニルアミン(C
22H
45−NH
2、融点63℃)、ベヘニルプロピレンジアミン(C
22H
45−NH−C
3H
6−NH
2、融点60℃)、1,10−ジアミノデカン(NH
2−C
10H
20−NH
2、融点62℃)、1,12−ジアミノドデカン(NH
2−C
12H
24−NH
2、融点70℃)、ジオクタデシルアミン((C
18H
37)
2−NH、融点72℃)、及び1−テトラトリアコンタンアミン(C
34H
69−NH
2、融点84℃)などが挙げられる。なかでも、ベヘニルプロピレンジアミン、1,10−ジアミノデカン、及び1,12−ジアミノドデカンが好ましく、ベヘニルプロピレンジアミンがより好ましい。アミン化合物(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0046】
硬化性組成物中におけるアミン化合物(C)の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、1〜3質量部が特に好ましい。アミン化合物(C)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。アミン化合物(C)の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。
【0047】
[アミノシラン化合物(D)]
硬化性組成物はアミノシラン化合物(D)を含む。アミノシラン化合物(D)としては、アミノアルコキシシランが好ましく挙げられる。また、アミノシラン化合物(D)としては、アミノアルコキシシランを含むアルコキシシランの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマーも好ましく挙げられる。また、アミノシラン化合物(D)は、ケイ素原子を含有している。アミノシラン化合物(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
(アミノアルコキシシラン)
アミノアルコキシシランとは、1分子中に、アミノ基含有官能基を少なくとも1個有し、且つ少なくとも2個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合している化合物を意味する。アミノ基含有官能基は、ケイ素原子に直接結合していることが好ましい。アミノアルコキシシランは、一分子中に、アミノ基含有官能基を1個有し、且つ3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合している化合物が好ましい。
【0049】
アミノ基含有官能基としては、硬化性組成物の接着性が向上することから、アミノプロピル官能基が好ましい。アミノプロピル官能基としては、−(CH
2)
3−NH
2、−(CH
2)
3−NHR
5、−(CH
2)
3−NH(CH
2)
2−NH
2(3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基)、及び、−(CH
2)
3−NH(CH
2)
2−NH(CH
2)
2−NH
2(3−[[2−(2−アミノエチルアミノ)エチル]アミノ]プロピル基)からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノプロピル官能基が好ましい。アミノプロピル官能基としては、−(CH
2)
3−NH
2、−(CH
2)
3−NH(CH
2)
2−NH
2がより好ましい。
【0050】
−(CH
2)
3−NHR
5において、R
5は、炭素数が1〜18個のアルキル基、炭素数が3〜18個の一価の飽和脂環式炭化水素基、又は、炭素数が6〜12個のアリール基である。
【0051】
R
5における、炭素数が1〜18のアルキル基としては、直鎖状のアルキル基及び分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びn−ブチル基が好ましい。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0052】
R
5における、炭素数が3〜18個の一価の飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基,シクロヘプチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられ、シクロヘキシル基が好ましい。
【0053】
R
5における、炭素数が6〜12個のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0054】
アミノアルコキシシランとしては、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]トリメトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]トリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジエトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]メチルジメトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]メチルジエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、及びN,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。アミノアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランが好ましく、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0055】
(アルコキシシランオリゴマー)
また、アミノシラン化合物(D)としては、アミノアルコキシシランを含むアルコキシシランの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマーが挙げられる。即ち、硬化性組成物は、アミノシラン化合物(D)として、アミノアルコキシシランを含むアルコキシシランを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマーを含むことが好ましい。なお、アルコキシシランオリゴマーにおけるアミノアルコキシシランについては、上述したアミノアルコキシシランと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。アルコキシシランオリゴマーにおけるアミノアルコキシシランは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
アルコキシシランオリゴマーにおけるアミノアルコキシシランとしては、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランが好ましく、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0057】
アルコキシシランンオリゴマーにおいて、アルコキシシランは、アミノアルコキシシランの他に、アルキルアルコキシシランをさらに含んでいることが好ましい。すなわち、アミノシラン化合物(D)としては、アミノアルコキシシラン及びアルキルアルコキシシランを含むアルコキシシランの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマーが好ましく挙げられる。硬化性組成物は、アミノシラン化合物(D)として、アミノアルコキシシラン及びアルキルアルコキシシランを含むアルコキシシランを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマーを含むことが好ましい。
【0058】
アルキルアルコキシシランとは、少なくとも1個のアルキル基と、少なくとも2個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合している化合物を意味する。アルキルアルコキシシランとしては、1個のアルキル基と、3個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合しているモノアルキルトリアルコキシシラン、及び2個のアルキル基と、2個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合しているジアルキルジアルコキシシランが挙げられる。モノアルキルトリアルコキシシランとして、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びヘキシルトリメトキシシランなどが挙げられる。ジアルキルジアルコキシシランとして、具体的には、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、及びジエチルジエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、モノアルキルトリアルコキシシランが好ましく、エチルトリエトキシシランがより好ましい。なお、アルキルアルコキシシランは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0059】
アルコキシシランオリゴマーとしては、アミノアルコキシシランの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマー(d1)が好ましく挙げられる。すなわち、アミノアルコキシシランのみを含むアルコキシシランを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマー(d1)が好ましく挙げられる。アルコキシシランオリゴマー(d1)としては、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリアルコキシシランの加水分解縮合物、及び3−アミノプロピルトリアルコキシシランの加水分解縮合物が好ましく、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリアルコキシシランの加水分解縮合物がより好ましい。
【0060】
また、アルコキシシランオリゴマーとしては、アルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマー(d2)が好ましく挙げられる。
【0061】
アルコキシシランオリゴマー(d2)としては、モノアルキルトリアルコキシシランと、1個のアミノプロピル官能基及び3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合しているアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物が好ましい。すなわち、アルコキシシランオリゴマー(d2)としては、モノアルキルトリアルコキシシランと、1個のアミノプロピル官能基及び3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合しているアミノアルコキシシランとを含むアルコキシシランを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマーが好ましく挙げられる。なかでも、モノアルキルトリアルコキシシランと、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリアルコキシシランとの加水分解縮合物がより好ましく、エチルトリエトキシシランと、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランとの加水分解縮合物がより好ましい。
【0062】
アルコキシシランオリゴマー(d2)としては、ジアルキルジアルコキシシランと、1個のアミノプロピル官能基及び3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合しているアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物が好ましい。すなわち、アルコキシシランオリゴマー(d2)としては、ジアルキルジアルコキシシランと、1個のアミノプロピル官能基及び3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合しているアミノアルコキシシランとを含むアルコキシシランを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマーが好ましく挙げられる。
【0063】
アルコキシシランオリゴマーは、アミノプロピル官能基を有していることが好ましい。アルコキシシランオリゴマーが有しているアミノプロピル官能基としては、上述したアミノアルコキシシランが有しているアミノプロピル官能基と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0064】
アルコキシシランオリゴマーは、市販されているものを用いることができる。例えば、エボニックデクサ社製 製品名「ダイナシラン1146」、及びモメンティブ社製「VX225」などが挙げられる。
【0065】
アルコキシシランオリゴマーにおいて、窒素原子の含有量は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が特に好ましい。窒素原子の含有量が1質量%以上であると、接着性に優れると共に、硬化後の伸び性にも優れる硬化性組成物を提供することができる。窒素原子の含有量の上限は、特に限定されないが、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。窒素原子の含有量が20質量%以下であると、硬化性組成物の硬化物が高温となった場合であっても優れたゴム弾性を維持することができる。
【0066】
なお、アルコシキシランオリゴマー中の窒素原子の含有量は、CHN元素分析に基づいて測定された値をいう。例えば、下記の測定条件で求めることができる。
・装置:CHN元素分析装置(Elementar製 vario EL III)
・試料の量:10mg
・燃焼管温度:950℃
・還元管温度:500℃
・キャリアーガス:200mL/min
・検出器:TCD
・標準試料:Acetanilide(元素分析用標準試料)C=71.09%, H=6.710%, N=10.36%)
・定量法:標準試料による多点検量線方式
【0067】
アミノシラン化合物(D)は、アミノアルコキシシラン及びアルコキシシランオリゴマーのうち少なくとも一方を含むのが好ましいが、アルコキシシランオリゴマーを含んでいることがより好ましく、アミノアルコキシシラン及びアルコキシシランオリゴマーの双方を含んでいることがより好ましい。
【0068】
アミノシラン化合物(D)は、25℃、0.10MPaの条件下にて液状であることが好ましい。液状のアミノシラン化合物(D)を用いることにより、硬化性組成物が良好な接着性を発現することができる。
【0069】
アミノシラン化合物(D)の20℃における粘度は、1〜200mPa・sが好ましく、5〜100mPa・sが好ましい。なお、アミノシラン化合物(D)の20℃における粘度は、JIS Z8803に準拠して測定された値をいう。
【0070】
硬化性組成物中におけるアミノシラン化合物(D)の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、1〜3質量部が特に好ましい。アミノシラン化合物(D)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の接着性が向上する。アミノシラン化合物(D)の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。
【0071】
[シラノール縮合触媒(E)]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒(E)を含有している。シラノール縮合触媒(E)とは、ポリアルキレンオキサイド(A)が含有する加水分解性シリル基、及び、アミノシラン化合物(D)が含有するアルコキシシリル基などが加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0072】
シラノール縮合触媒(E)としては、特に限定されず、例えば、ジオクチル錫モノデカネート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられ、有機錫系化合物が好ましく、ジオクチル錫オキサイドがより好ましい。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒(E)の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒(E)の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を高くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。また、硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒(E)の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0074】
[可塑剤]
硬化性組成物は可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤としては、ポリマー及びオリゴマー以外の場合、分子量が300〜10,000の化合物が用いられる。ポリマー及びオリゴマーである場合、可塑剤としては、数平均分子量が400〜11,000のポリマー又はオリゴマーが用いられる。具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド、及びアクリル系重合体などが挙げられ、アクリル系重合体が好ましい。
【0075】
可塑剤として用いられるアクリル系重合体は、加水分解性シリル基を含有していないことが好ましい。可塑剤として用いられるアクリル系重合体の重量平均分子量は、500〜10,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましい。アクリル系重合体の重量平均分子量が500以上であると、アクリル系重合体のブリードアウトを抑制することができる。また、アクリル系重合体の重量平均分子量が10,000以下であると。硬化性組成物を十分に可塑化して、硬化性組成物の硬化物が優れたゴム弾性を有する。
【0076】
なお、可塑剤として用いられるアクリル系重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によってポリスチレン換算されて測定された値である。具体的な測定方法や測定条件は、上述したポリアルキレンオキサイドの測定要領と同様である。
【0077】
可塑剤として用いられるアクリル系重合体は、好ましくは、エチレン性不飽和二重結合を有するアクリル系単量体を、上記エチレン性不飽和二重結合において、付加重合させることにより得られる重合体である。
【0078】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、1〜85質量部が特に好ましい。硬化性組成物中における可塑剤の含有量が100質量部以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制し、硬化性組成物の硬化物の汚染を抑制することができる。
【0079】
[充填剤]
硬化性組成物は充填剤をさらに含んでいるのが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0080】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができ、炭酸カルシウムが好ましく、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムが好ましい。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0081】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシウムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0082】
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシウムが凝集することを抑制することができる。
【0083】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して1〜700質量部が好ましく、10〜250質量部がより好ましく、10〜200質量部が特に好ましい。硬化性組成物中における充填剤の含有量が1質量部以上であると、充填剤の添加による効果が十分に得られる。また、硬化性組成物中における充填剤の含有量が700質量部以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が優れたゴム弾性を有する。
【0084】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0085】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0086】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。硬化性組成物中における脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、硬化性組成物中における脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0087】
[光安定剤]
硬化性組成物は、光安定剤をさらに含んでいるのが好ましく、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることがより好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0088】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0089】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0090】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0091】
(チキソ性付与剤)
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0092】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、0.1〜200質量部が好ましく、1〜150質量部がより好ましい。チキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、チキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0093】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0094】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0095】
硬化性組成物は、接着性に優れていると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材、コーティング材、接着剤、及び塗料など各種用途に使用することができる。なかでも、シーリング材として用いられることが好ましく、目地構造用シーリング材として用いられることがより好ましい。
【0096】
硬化性組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、硬化性組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられる。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられる。
【0097】
壁部材を構成する材料は、特に制限されない。壁部材としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、陶板、及び金属板などが挙げられる。従来の硬化性組成物では、陶板、軽量セメント板等のセメント板などの壁部材に接着し難かったが、このような難接着性壁部材であっても、本発明の硬化性組成物は、優れた接着性を発揮することができる。したがって、本発明による効果を特に発揮できることから、壁部材としては、陶板、セメント板などの難接着性壁部材が好ましく用いられる。陶板は、好ましくは陶磁器製の板である。陶磁器とは、鉱物粉末の焼結性を利用した焼結製品の総称である。陶磁器としては、磁器及び陶器が挙げられる。磁器は、陶磁器のうち生地の吸水性が全くない程度によく焼き締まったものである。また、陶器は、陶磁器のうち生地の焼締りが、やや吸水性のある程度で釉薬を施したものである。
【0098】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができることから、気温や日照等の温度変化による部材の膨張や収縮による、或いは振動や風圧などの作用による目地部の幅の変化に対して優れた追随性を呈し、部材の損傷や建築構造物内への漏水を防止することができる。したがって、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる幅の変化が大きい目地部をシーリングするために好適に用いられる。