【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘る養生後の硬化物に、温度63℃、相対湿度70%の雰囲気下で紫外線を照度80mW/cm
2で800時間照射した後の、上記硬化物表面における水の接触角(W
2)が50°以下であることを特徴とする。すなわち、本発明の硬化性組成物を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させて得られた硬化物に温度63℃、相対湿度70%の雰囲気下で紫外線を照度80mW/cm
2で800時間照射した後の、上記硬化物表面における水の接触角(W
2)が50°以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の硬化性組成物を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させて得られた硬化物に温度63℃、相対湿度70%の雰囲気下で紫外線を照度80mW/cm
2で800時間照射した後の、上記硬化物表面における水の接触角を、単に「水の接触角(W
2)」とも言う。上記水の接触角(W
2)は、50°以下であるが、10〜45°が好ましく、15〜40°がより好ましい。水の接触角(W
2)が上記範囲内となる硬化性組成物によれば、硬化性組成物の硬化物表面に水が接触した場合に、硬化物表面において水が水滴とならずに薄く広がって容易に流れ落ちることができる。これにより、硬化物表面に埃や汚染物質などの汚れが付着した場合であっても、水と共に汚れを洗い流すことが可能となり、優れた防汚効果を発揮することが可能となる。さらに、水の接触角(W
2)を上記範囲内とすることによって、本発明の硬化性組成物は、優れた防汚効果を長期間に亘って発揮することが可能となる。
【0011】
本発明の硬化性組成物は、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘る養生後の硬化物表面における水の接触角(W
1)は、50°以下が好ましい。すなわち、本発明の硬化性組成物を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させて得られた硬化物表面における水の接触角(W
1)が50°以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の硬化性組成物を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させて得られた硬化物表面における水の接触角を、単に「水の接触角(W
1)」とも言う。上記水の接触角(W
1)は、50°以下が好ましく、10〜45°がより好ましく、15〜40°がより好ましく、15〜35°が特に好ましい。このような硬化性組成物は、硬化直後から優れた防汚効果を発揮することができる。
【0013】
本発明において、硬化性組成物の硬化物表面における水の接触角は、JIS R3257(1999)「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」の静滴法に準拠した測定方法で得られた接触角θ値を意味する。
【0014】
本発明において、硬化性組成物を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させて得られた硬化物に温度63℃、相対湿度70%の雰囲気下で紫外線を照度80mW/cm
2で800時間照射した後の、上記硬化物表面における水の接触角(W
2)の測定は、具体的には、下記手順に従って測定することができる。先ず、硬化性組成物をステンレス板上に塗工して、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させることにより、硬化性組成物を硬化させて、ステンレス板上に硬化性組成物の硬化物が形成されている積層体を得る。なお、硬化性組成物の硬化物の厚みは5mmとする。次に、硬化性組成物の硬化物の表面に、温度63℃、相対湿度70%の雰囲気下で、紫外線を照度80mW/cm
2で800時間照射する。紫外線の照射は、例えば、光源にメタルハライドランプを用いた促進耐候性試験機(例えば、ダイプラ・ウインテス株式会社製、商品名「KW-R5TP-A」、ランプ型式:MW−60Wランプ、フィルタ型式:KF−1フィルタ(透過光波長295〜780nm))内に上記積層体を設置して行うことができる。また、紫外線の照度の測定は、照度計(例えば、岩崎電気株式会社製 商品名「UVP365−01型」)を用いて、波長365nmの紫外線の照度を測定することにより行う。その後、硬化性組成物の硬化物表面の水の接触角を、固液界面解析装置を用いて、JIS R3257(1999)「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」の静滴法により測定する。滴下液は蒸留水で、液量は4μL、滴下から2分後の接触角を測定することにより求める。接触角の計算はθ/2法により算出する。硬化性組成物の硬化物表面における任意の10箇所において水の接触角を測定し、全ての接触角の測定値の相加平均値を、硬化性組成物の硬化物表面における水の接触角(W
2)とする。接触角の測定雰囲気は、温度23℃、相対湿度50%とする。また、固液界面解析装置としては、例えば、協和界面科学株式会社から商品名「DMs−401」にて市販されている装置を用いることができる。接触角の計算は、例えば、協和界面科学株式会社から商品名「DMs−401」にて市販されている固液界面解析装置に付属しているソフト「FAMAS」を用いて行うことができる。
【0015】
また、本発明において、硬化性組成物を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させて得られた硬化物表面における水の接触角(W
1)は、硬化性組成物の硬化物表面に、温度63℃、相対湿度70%の雰囲気下で、紫外線を照度80mW/cm
2で800時間照射することを除いて、上述した水の接触角(W
2)の測定方法と同様の手順に従って測定することができる。
【0016】
硬化性組成物を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させた後の硬化物を、温度30℃、相対湿度40%の雰囲気下に14日間に亘って放置した後の上記硬化物の最大荷重時の伸び率(%)をE
1とすると共に、硬化性組成物を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させた後の硬化物を、温度80℃、相対湿度15%の雰囲気下に90日間に亘って放置した後の上記硬化物の最大荷重時の伸び率(%)をE
2とした場合、本発明の硬化性組成物において、最大荷重時の伸び率の維持率[(100×E
2)/E
1]は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは70〜99%であり、より好ましくは74〜99%であり、特に好ましくは80〜99%である。
【0017】
夏場など、建築構造物は高温環境下に長時間に亘って晒された場合、目地部に充填された硬化性組成物の硬化物の伸び性が低下する場合がある。伸び性が低下すると、硬化性組成物の硬化物が目地部の幅の変化に追随できなくなり、外壁部材から硬化性組成物の硬化物が剥離して、外壁部材間の接合部から建築構造物内部へ雨水が浸入してしまう。しかしながら、本発明の硬化性組成物では最大荷重時の伸び率の維持率を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物が高温環境下に長時間亘って晒された場合であっても、伸び性の低下を少なくすることができ、これにより建築構造物内部への雨水の浸入を高く低減することができる。
【0018】
本発明の硬化性組成物を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させた後の硬化物を、温度30℃、相対湿度40%の雰囲気下に14日間に亘って放置した後の上記硬化物の最大荷重時の伸び率E
1は、400〜800%が好ましく、500〜750%がより好ましい。最大荷重時の伸び率E
1を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物が硬化直後から高い伸び性を発揮することができ、これにより硬化性組成物の接着性が向上する。
【0019】
本発明の硬化性組成物を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させた後の硬化物を、温度80℃、相対湿度15%の雰囲気下に90日間に亘って放置した後の上記硬化物の最大荷重時の伸び率E
2は、350〜800%が好ましく、400〜750%がより好ましく、510〜750%が特に好ましい。最大荷重時の伸び率E
2を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って高い伸び性を維持することができる。
【0020】
本発明において、硬化性組成物を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させた後の硬化物を、温度30℃、相対湿度40%の雰囲気下に14日間に亘って放置した後の上記硬化物の最大荷重時の伸び率E
1(%)の測定は、具体的には、下記手順に従って測定することができる。先ず、硬化性組成物を用いて、JIS A1439 5.17(2010年)に準拠して、H型試験体を作製する。具体的には、陽極酸化皮膜を施したアルミニウム板(縦50mm×横50mm×厚み3mm)2枚を用い、これらのアルミニウム板の間にスペーサーを挟むことによってアルミニウム板間の中央部に直方体状の空間(縦12mm×横50mm×高さ12mm)を形成する。この空間に硬化性組成物を空気が入らないように充填する。続いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で硬化性組成物を14日間に亘って養生させて硬化させた後にスペーサーを除去して、2枚のアルミニウム板が硬化性組成物の硬化物によって接着一体化されてなるH型試験体を得る。続いて、H型試験体を、温度30℃、相対湿度40%の雰囲気下で14日間放置する。そして、放置後のH型試験体について、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439の5.20.4(2010年)に準拠して行い、最大荷重時の伸び率[%]を測定する。これにより得られた測定値を、硬化性組成物の硬化物の最大荷重時の伸び率E
1とする。
【0021】
本発明において、硬化性組成物を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させた後の硬化物を、温度80℃、相対湿度15%の雰囲気下に90日間に亘って放置した後の上記硬化物の最大荷重時の伸び率E
2(%)の測定は、具体的には、下記手順に従って測定することができる。先ず、硬化性組成物を用いて、JIS A1439 5.17(2010年)に準拠して、H型試験体を作製する。具体的には、最大荷重時の伸び率E
1(%)の測定において上述した手順と同様にして、H型試験体を作製する。続いて、H型試験体を、温度80℃、相対湿度15%の雰囲気下で90日間放置する。そして、放置後のH型試験体について、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439の5.20.4(2010年)に準拠して行い、最大荷重時の伸び率[%]を測定する。これにより得られた測定値を、硬化性組成物の硬化物の最大荷重時の伸び率E
2とする。
【0022】
以下に、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含む加水分解性シリル基を有する重合体(I)、融点が50℃以上であるジアミン化合物(C1)、及び親水性可塑剤(D)を含有する硬化性組成物について説明する。
【0023】
[重合体(I)]
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)を含むことが好ましい。加水分解性シリル基を有する重合体(I)によれば、雰囲気中の湿気により硬化することができる湿気硬化性組成物を提供することが可能となる。
【0024】
加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有していないことが好ましい。側鎖のポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、及びポリオキシブチレン鎖などが挙げられる。特に、加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、側鎖にポリオキシエチレン鎖を有していないことが好ましい。
【0025】
加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、疎水性であることが好ましい。25℃の水100gに対して溶解可能なグラム数が0.01g未満である物質を疎水性と定義することが好ましい。加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、25℃の水100gに対して溶解可能なグラム数が、0.01g未満であることが好ましい。
【0026】
25℃の水100gに対して、物質の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かは下記の要領で判断される。水100gをガラス製の試験管に供給して25℃とした後、試験管に物質0.01gを供給して混合液を得る。この混合液を、150rpmの回転速度で30分間攪拌した後、25℃にて30分間静置する。混合液中に沈殿物が存在するか否かを目視観察し、沈殿物が存在する場合には、25℃の水100gに対して物質の溶解可能なグラム数が0.01g未満であると判断し、沈殿物が存在しない場合には、25℃の水100gに対して物質の溶解可能なグラム数が0.01g未満ではない(溶解可能なグラム数が0.01g以上)と判断する。
【0027】
25℃の水100gに対して、加水分解性シリル基を有する重合体(I)の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かの判断は、上記要領において、物質として加水分解性シリル基を有する重合体(I)を用いて行えばよい。
【0028】
(ポリアルキレンオキサイド(A))
加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含んでいる。ポリアルキレンオキサイド(A)は、加水分解性シリル基を有している。
【0029】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0030】
ポリアルキレンオキサイド(A)の加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ポリアルキレンオキサイド(A)の加水分解性シリル基としては、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0031】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個の加水分解性シリル基を有している。ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖が直鎖状である場合、ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、1〜2個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。また、ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖が分岐状である場合、ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、1〜3個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が上記上限値以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0032】
なお、ポリアルキレンオキサイド(A)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、
1H−NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0033】
ポリアルキレンオキサイド(A)としては、主鎖が、一般式:−(R
1−O)
n−(式中、R
1は炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0034】
ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化後に優れたゴム弾性及び接着性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
【0035】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有していないことが好ましい。側鎖のポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、及びポリオキシブチレン鎖などが挙げられる。特に、ポリアルキレンオキサイド(A)は、側鎖にポリオキシエチレン鎖を有していないことが好ましい。
【0036】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、疎水性であることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)は、25℃の水100gに対して溶解可能なグラム数が、0.01g未満であることが好ましい。なお、25℃の水100gに対してポリアルキレンオキサイド(A)の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かの判断は、25℃の水100gに対して物質の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かの判断について上述した要領において、物質としてポリアルキレンオキサイド(A)を用いて行えばよい。
【0037】
ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量は、15,000〜50,000が好ましく、16,000〜30,000がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が15,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0038】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0039】
加水分解性シリル基を含有しているポリアルキレンオキサイド(A)は、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり、主鎖骨格の末端にメチルジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイド(A)としては、旭硝子社製 商品名「エクセスター S4530」、「エクセスター S2730C」、「エクセスター S2420」などが挙げられる。
【0040】
加水分解性シリル基を有する重合体(I)中におけるポリアルキレンオキサイド(A)の含有量は、20〜100質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%がより好ましく、55〜70質量%が特に好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の含有量を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上する。
【0041】
(アクリル系重合体(B))
加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)をさらに含んでいることが好ましい。アクリル系重合体(B)を用いることにより、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。
【0042】
アクリル系重合体(B)が有している加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基及びトリアルコキシリル基がより好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0043】
アクリル系重合体(B)の主鎖骨格としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られるアクリル系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0044】
アクリル系重合体(B)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、及び2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0045】
アクリル系重合体(B)において、他のモノマーを共重合することも可能である。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0046】
なかでも、アクリル系重合体(B)の主鎖骨格としては、アルキル(メタ)アクリレートの重合体が好ましく、ブチル(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレートの共重合体がより好ましく、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートの共重合体がより好ましい。主鎖骨格が上記共重合体からなるアクリル系重合体(B)によれば、硬化後に伸び性及び柔軟性が両立された硬化物を形成することが可能な硬化性組成物が得られる。
【0047】
アクリル系重合体(B)は、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有していないことが好ましい。アクリル系重合体(B)は、主鎖及び側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有していないことがより好ましい。すなわち、アクリル系重合体(B)は、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有していないことがより好ましい。ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、及びポリオキシブチレン鎖などが挙げられる。
【0048】
アクリル系重合体(B)は、疎水性であることが好ましい。アクリル系重合体(B)は、25℃の水100gに対して溶解可能なグラム数が、0.01g未満であることが好ましい。なお、25℃の水100gに対してアクリル系重合体(B)の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かの判断は、25℃の水100gに対して物質の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かの判断について上述した要領において、物質としてアクリル系重合体(B)を用いて行えばよい。
【0049】
アクリル系重合体(B)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0050】
アクリル系重合体(B)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、分子中に不飽和基を導入したアクリル系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法など、公知の方法を利用することができる。
【0051】
アクリル系重合体(B)の数平均分子量は、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜30,000がより好ましい。アクリル系重合体(B)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。アクリル系重合体(B)の数平均分子量が1,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。
【0052】
なお、本発明において、アクリル系重合体(B)の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0053】
加水分解性シリル基を有する重合体(I)中におけるアクリル系重合体(B)の含有量は、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、30〜45質量%が特に好ましい。アクリル系重合体(B)の含有量が20質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物は長期間に亘って優れたゴム弾性を維持する。アクリル系重合体(B)の含有量が70質量%以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0054】
加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を少なくとも含んでいるが、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)の双方を含んでいることが好ましい。加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)のみからなることが特に好ましい。
【0055】
[ジアミン化合物(C1)]
硬化性組成物は、融点が50℃以上であるジアミン化合物(C1)を含有していることが好ましい。なお、本発明において、ジアミン化合物とは、一分子中に2個のアミノ基(−NH
2)を有している化合物を意味する。ジアミン化合物においてアミノ基が有している水素原子は、アルキル基やアリール基などの有機基によって置換されていてもよい。ジアミン化合物(C1)は、珪素原子を含有していないことが好ましい。
【0056】
ジアミン化合物(C1)によれば、硬化性組成物の硬化物表面のタックを低減させることができ、これにより上記硬化物表面に埃や汚染物質などの汚れが付着し難くなり、防汚効果を向上させることができる。また、ジアミン化合物(C1)によれば、硬化性組成物の硬化物表面の親水性を向上させることもできる。これにより、硬化性組成物の硬化物表面に水が接触した場合に、硬化物表面において水が水滴とならずに薄く広がって容易に流れ落ちることができる。したがって、硬化物表面に埃や汚染物質などの汚れが付着した場合であっても、水と共に汚れを洗い流すこと(自浄作用)が可能となり、優れた防汚効果を発揮することが可能となる。さらに、ジアミン化合物(C1)によれば、硬化性組成物の硬化物表面の優れた防汚効果を長期間に亘って発揮することも可能となる。
【0057】
ジアミン化合物(C1)の融点は、50℃以上であるが、50〜80℃がより好ましく、55〜70℃が特に好ましい。夏場などでは、建築構造物は高温環境下に長時間亘って晒される。このような場合、目地部に充填された硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生する場合がある。タックが発生すると、硬化性組成物の硬化物の表面に埃や汚染物質によって汚れが付着してしまう。しかしながら、上記融点を有するジアミン化合物(C1)によれば、高温下において硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することを高く低減できる。
【0058】
なお、硬化性組成物が複数種類のジアミン化合物を含んでいる場合には、ジアミン化合物の融点とは、各ジアミン化合物の融点とする。
【0059】
本発明において、ジアミン化合物(C1)の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。例えば、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、ジアミン化合物(C1)を加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、ジアミン化合物(C1)の融点とする。なお、試験片の状態調節としては、JIS K7121(1987年)の3.(1)に準拠した状態調節を行う。また、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0060】
ジアミン化合物(C1)としては、下記式(2)で示されるジアミン化合物が好ましく挙げられる。
R
2−NH−R
3−NH
2 (2)
(式(2)において、R
2は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、一価の飽和脂環式炭化水素基、又はアリール基であり、R
3は、アルキレン基である。)
【0061】
式(2)において、R
2としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。R
2における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、及びベヘニル基などが挙げられる。
【0062】
式(2)において、R
3はアルキレン基である。R
3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキサメチレン基、及びヘキシレン基などが挙げられる。
【0063】
式(2)で示されるジアミン化合物において、R
2及びR
3の合計の炭素数は、15〜40個が好ましく、15〜30個がより好ましく、15〜25個が特に好ましい。R
2及びR
3の合計の炭素数を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物表面が優れた防汚効果を長期間に亘って発揮できると共に、高温下において硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することも高く低減できる。
【0064】
ジアミン化合物(C1)としては、具体的には、ベヘニルプロピレンジアミン(C
22H
45−NH−C
3H
6−NH
2、融点63℃)などが挙げられる。ジアミン化合物(C1)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0065】
硬化性組成物中におけるジアミン化合物(C1)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。ジアミン化合物(C1)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物表面が優れた防汚効果を長期間に亘って発揮することができる。ジアミン化合物(C1)の含有量が20質量部以下であると、高温下において硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することを低減できる。
【0066】
[ジアミン化合物(C2)]
また、硬化性組成物は、融点が50℃未満であるジアミン化合物(C2)を含んでいることが好ましい。ジアミン化合物(C2)は、珪素原子を含有していないことが好ましい。ジアミン化合物(C2)によっても、硬化性組成物の硬化物表面におけるタックの低減や親水性の向上をさせることができる。特に、ジアミン化合物(C2)は硬化性組成物の硬化物表面に移行し易いため、ジアミン化合物(C2)を用いることにより、硬化後の硬化性組成物がより早期に高い親水性を発揮することができる。これにより、硬化性組成物の硬化物表面に埃や汚染物質などの汚れが付着した場合であっても、水と共に汚れを洗い流すこと(自浄作用)が可能となり、優れた防汚効果を早期に発揮することが可能となる。
【0067】
ジアミン化合物(C2)の融点は、50℃未満が好ましく、−5〜49℃がより好ましく、15〜49℃がより好ましく、25〜45℃が特に好ましい。
【0068】
なお、本発明において、ジアミン化合物(C2)の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。例えば、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、ジアミン化合物(C2)を加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、ジアミン化合物(C2)の融点とする。なお、試験片の状態調節としては、JIS K7121(1987年)の3.(1)に準拠した状態調節を行う。また、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0069】
ジアミン化合物(C2)としては、下記式(3)で示されるジアミン化合物が挙げられる。
R
4−NH−R
5−NH
2 (3)
(式(3)において、R
4は、不飽和脂肪族炭化水素基であり、R
5は、アルキレン基である。)
【0070】
式(3)のR
4における不飽和脂肪族炭化水素基としては、ウンデセニル基、cis−4−テトラデセニル基、cis−5−テトラデセニル基、cis−9−テトラデセニル基、cis−6−ヘキサデセニル基、パルミトレイル基、cis−6−オクタデセニル基、オレイル基、trans−9−オクタデセニル基、cis−11−オクタデセニル基、trans−11−オクタデセニル基、ミリストレイル基、パルミトレイル基、及びリノレイル基などが挙げられる。
【0071】
式(3)のR
5におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキサメチレン基、及びヘキシレン基などが挙げられる。
【0072】
ジアミン化合物(C2)としては、例えば、オレイルプロピレンジアミン(C
18H
35−NH−C
3H
6−NH
2、融点20℃)などが挙げられる。ジアミン化合物(C2)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
硬化性組成物中におけるジアミン化合物(C2)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が特に好ましい。
【0074】
[親水性可塑剤(D)]
硬化性組成物は、親水性可塑剤(D)をさらに含有していることが好ましい。親水性可塑剤(D)によれば、硬化性組成物の硬化物が優れた防汚効果をより長期に亘って発揮することができる。さらに、親水性可塑剤(D)によれば、硬化性組成物の硬化物が優れた伸び性をより長期間に亘って維持することが可能となる。
【0075】
親水性可塑剤(D)における親水性とは、水との親和力が強い性質を有していることを意味する。25℃の水100gに対して0.01g以上溶解する物質を親水性と定義することが好ましい。親水性可塑剤(D)は、25℃の水100gに対して0.01g以上溶解することが好ましい。
【0076】
物質が25℃の水100gに対して0.01g以上溶解するか否かは下記の要領で判断される。水100gをガラス製の試験管に供給して25℃とした後、試験管に物質0.01gを供給して混合液を得る。この混合液を、150rpmの回転速度で30分間攪拌した後、25℃にて30分間静置する。混合液中に沈殿物が存在するか否かを目視観察し、沈殿物が存在しない場合には、25℃の水100gに対して物質が0.01g以上溶解すると判断し、沈殿物が存在する場合には、25℃の水100gに対して物質が0.01g以上溶解しない(溶解量が0.01g未満)と判断する。なお、可塑剤が25℃の水100gに対して0.01g以上溶解するか否かを判断する際には、上記要領において物質として可塑剤を用いればよい。
【0077】
親水性可塑剤(D)としては、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル系重合体(D)が好ましく挙げられる。このようなアクリル系重合体(D)では、主鎖となるアクリル系重合体に、側鎖としてポリオキシアルキレン鎖が結合している。ポリオキシアルキレン鎖によって親水性可塑剤(D)の親水性を向上させることができる。
【0078】
アクリル系重合体(D)の主鎖は、アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合体が好ましく挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートなどが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0079】
アクリル系重合体(D)が側鎖に有するポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、及びポリオキシブチレン鎖などが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレン鎖が好ましい。
【0080】
アクリル系重合体(D)の重量平均分子量は、1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましく、2,000〜5,000が特に好ましい。アクリル系重合体(D)の重量平均分子量が10,000以下であると、硬化性組成物の硬化物表面へのアクリル系重合体(D)の移行性が向上する。アクリル系重合体(D)の重量平均分子量が1,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の優れた機械的強度及び伸び性を確保することができる。
【0081】
なお、本発明において、アクリル系重合体(D)の重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0082】
親水性可塑剤(D)として用いられるアクリル系重合体(D)は、加水分解性シリル基をさらに有していてもよい。アクリル系重合体(D)としては、加水分解性シリル基を有しておらず且つ側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル系重合体(d1)、及び加水分解性シリル基を有すると共に側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル系重合体(d2)が好ましく挙げられる。
【0083】
アクリル系重合体(D)として、アクリル系重合体(d1)及びアクリル系重合体(d2)は、いずれか一方のみが用いられてもよいが、双方が用いられることが好ましい。すなわち、アクリル系重合体(D)は、アクリル系重合体(d1)及びアクリル系重合体(d2)の双方を含んでいることが好ましい。このようなアクリル系重合体(D)によれば、硬化性組成物の硬化物が優れた防汚効果をより長期に亘って発揮することができる。このような効果が得られるメカニズムは不明であるが、本発明者の推測によると、アクリル系重合体(D)を、硬化性組成物の硬化物表面へ徐々に移行させることが可能となり、これにより硬化性組成物の硬化物表面がより長期間に亘って高い親水性を維持することができると考えられる。さらに、上記アクリル系重合体(D)によれば、硬化性組成物の硬化物が優れた伸び性をより長期に亘って発揮することもできる。
【0084】
アクリル系重合体(d1)は、加水分解性シリル基を有しておらず、且つ側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル系重合体である。
【0085】
アクリル系重合体(d2)は、加水分解性シリル基を有すると共に、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル系重合体である。
【0086】
アクリル系重合体(d2)の加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0087】
アクリル系重合体(D)がアクリル系重合体(d1)及びアクリル系重合体(d2)の双方を含む場合、アクリル系重合体(D)は、1分子中に平均して、好ましくは0.1個以上1.0個未満、より好ましくは0.12〜0.7個、特に好ましくは0.13〜0.4個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。アクリル系重合体(D)の加水分解性シリル基の平均個数が0.1個以上であると、硬化性組成物の硬化物の優れた機械的強度及び伸び性を確保することができる。アクリル系重合体(D)の加水分解性シリル基の数が1.0個未満であると、硬化性組成物の硬化物表面がより長期間に亘って高い親水性を維持することができる。
【0088】
なお、アクリル系重合体(D)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、
1H−NMRにより求められるアクリル系重合体(D)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるアクリル系重合体(D)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0089】
親水性可塑剤(D)におけるアクリル系重合体(D)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0090】
親水性可塑剤(D)におけるアクリル系重合体(D)へポリオキシアルキレン鎖を側鎖として導入する方法としては、特に限定されず、グラフト重合法など、公知の方法を用いて行うことができる。
【0091】
親水性可塑剤(D)のアクリル系重合体(D)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、分子中に不飽和基を導入したアクリル系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法など、公知の方法を利用することができる。
【0092】
硬化性組成物中における親水性可塑剤(D)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、15〜40質量部がより好ましい。親水性可塑剤(D)の含有量が5質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れた防汚効果を維持することができる。また、親水性可塑剤(D)の含有量が50質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の優れた機械的強度及び伸び性を確保することができる。
【0093】
[他の可塑剤]
硬化性組成物は、上述した親水性可塑剤(D)以外に、他の可塑剤を含んでいてもよい。他の可塑剤として、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド類、及びアクリル系重合体などが挙げられ、アクリル系重合体が好ましい。
【0094】
他の可塑剤として用いられるアクリル系重合体としては、加水分解性シリル基を有していないアクリル系重合体(E)が好ましく挙げられる。アクリル系重合体(E)は、加水分解性シリル基を有していないと共に側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有していないことがより好ましい。アクリル系重合体(E)は、主鎖及び側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有していないことがより好ましい。すなわち、アクリル系重合体(E)は、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有していないことがより好ましい。
【0095】
アクリル系重合体(E)は、疎水性であることが好ましい。アクリル系重合体(E)は、25℃の水100gに対して溶解可能なグラム数が、0.01g未満であることが好ましい。なお、25℃の水100gに対してアクリル系重合体(E)の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かの判断は、25℃の水100gに対して物質の溶解可能なグラム数が0.01g未満であるか否かの判断について上述した要領において、物質としてアクリル系重合体(E)を用いて行えばよい。
【0096】
アクリル系重合体(E)の主鎖骨格としては、(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られるアクリル系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0097】
アクリル系重合体(E)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、及び2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0098】
なかでも、アクリル系重合体(E)の主鎖骨格としては、ブチル(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましく、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートの共重合体がより好ましい。
【0099】
アクリル系重合体(E)の重量平均分子量は、1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましい。アクリル系重合体(E)の重量平均分子量が10,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。アクリル系重合体(E)の重量平均分子量が1,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。
【0100】
なお、本発明において、アクリル系重合体(E)の重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0101】
硬化性組成物中における他の可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、1〜70質量部が特に好ましい。可塑剤の含有量が高過ぎると、可塑剤がブリードを起こす虞れがある。
【0102】
[充填剤]
硬化性組成物は、充填剤を更に含んでいるのが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0103】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0104】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0105】
又、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシムが凝集することを抑制することができる。
【0106】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、1〜700質量部が好ましく、10〜200質量部がより好ましい。充填剤の含有量が1質量部以上であると、充填剤の添加による効果が十分に得られる。また、充填剤の含有量が700質量部以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が優れた伸び性を有する。
【0107】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0108】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0109】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0110】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、重合体(I)などが有する加水分解性シリル基が加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0111】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0112】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0113】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。また、シラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0114】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0115】
[チキソ性付与剤]
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0116】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜200質量部が好ましく、1〜150質量部がより好ましい。チキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、チキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0117】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0118】
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0119】
[光安定剤]
硬化性組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0120】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0121】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0122】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0123】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0124】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0125】
【化1】
【0126】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0127】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0128】
[アミノシランカップリング剤]
本発明の硬化性組成物は、アミノシランカップリング剤を含有していることが好ましい。アミノシランカップリング剤を用いることにより、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。なお、アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物を意味する。
【0129】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0130】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられ
る。
【0131】
硬化性組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。
【0132】
本発明の硬化性組成物は、接着性に優れていると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材、コーティング材、接着剤、及び塗料など各種用途に使用することができる。なかでも、シーリング材として用いられることが好ましく、目地構造用シーリング材として用いられることがより好ましい。
【0133】
更に、本発明の硬化性組成物の硬化物は、防汚効果に優れていることから、埃や汚染物質の付着を抑制し、特に屋外での使用にあっても、長期間に亘って美麗な外観を保持することができる。
【0134】
硬化性組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、硬化性組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられ、なかでも外壁が好ましい。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられ、外壁部材が好ましい。
【0135】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。本発明の硬化性組成物は、硬化後に長期間に亘って優れた防汚効果を維持することができる。従って、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる埃や汚染物質によって汚れ易い目地部をシーリングするために好適に用いられる。
【0136】
建築構造物の外壁における目地部としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、及び金属板などの外壁部材間の接合部にできる目地部が挙げられる。