【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含む加水分解性シリル基を有する重合体(I)と、モノアミン化合物(C)と、上記モノアミン化合物(C)の融点以下である融点を有するジアミン化合物(D)を含むジアミン化合物とを含むことを特徴とする。
【0013】
[重合体(I)]
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)を含む。加水分解性シリル基を有する重合体(I)によれば、雰囲気中の湿気により硬化することができる湿気硬化性組成物を提供することが可能となる。
【0014】
(ポリアルキレンオキサイド(A))
加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含んでいる。ポリアルキレンオキサイド(A)は、加水分解性シリル基を有している。
【0015】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0016】
ポリアルキレンオキサイド(A)の加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ポリアルキレンオキサイド(A)の加水分解性シリル基としては、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0017】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個の加水分解性シリル基を有している。ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖が直鎖状である場合、ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、1〜2個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。また、ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖が分岐状である場合、ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、1〜3個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が上記上限値以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0018】
なお、ポリアルキレンオキサイド(A)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、
1H−NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0019】
ポリアルキレンオキサイド(A)としては、主鎖が、一般式:−(R
1−O)
n−(式中、R
1は炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0020】
ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化後に優れたゴム弾性及び接着性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
【0021】
ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量は、15,000〜50,000が好ましく、16,000〜30,000がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が15,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0022】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0023】
加水分解性シリル基を含有しているポリアルキレンオキサイド(A)は、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり、主鎖骨格の末端にメチルジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイド(A)としては、旭硝子社製 商品名「エクセスター S4530」、「エクセスター S2730C」、「エクセスター S2420」などが挙げられる。
【0024】
加水分解性シリル基を有する重合体(I)中におけるポリアルキレンオキサイド(A)の含有量は、20〜100質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%がより好ましく、55〜70質量%が特に好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の含有量を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上する。
【0025】
(アクリル系重合体(B))
加水分解性シリル基を有する重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)をさらに含んでいることが好ましい。アクリル系重合体(B)を用いることにより、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。
【0026】
アクリル系重合体(B)が有している加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基及びトリアルコキシリル基がより好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0027】
アクリル系重合体(B)の主鎖骨格としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られるアクリル系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0028】
アクリル系重合体(B)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、及び2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0029】
アクリル系重合体(B)において、他のモノマーを共重合することも可能である。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
なかでも、アクリル系重合体(B)の主鎖骨格としては、ブチル(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましく、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートの共重合体がより好ましい。主鎖骨格が上記共重合体からなるアクリル系重合体(B)によれば、硬化後に伸び性及び柔軟性が両立された硬化物を形成することが可能な硬化性組成物が得られる。
【0031】
アクリル系重合体(B)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0032】
アクリル系重合体(B)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、分子中に不飽和基を導入したアクリル系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法など、公知の方法を利用することができる。
【0033】
アクリル系重合体(B)の数平均分子量は、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜30,000がより好ましい。アクリル系重合体(B)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。アクリル系重合体(B)の数平均分子量が1,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。
【0034】
なお、本発明において、アクリル系重合体(B)の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0035】
加水分解性シリル基を有する重合体(I)中におけるアクリル系重合体(B)の含有量は、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、30〜45質量%が特に好ましい。アクリル系重合体(B)の含有量が20質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物は長期間に亘って優れたゴム弾性を維持する。アクリル系重合体(B)の含有量が70質量%以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0036】
[モノアミン化合物(C)]
本発明の硬化性組成物は、モノアミン化合物(C)を含んでいる。なお、本発明において、モノアミン化合物とは、一分子中に1個のアミノ基(−NH
2)を有している化合物を意味する。モノアミン化合物においてアミノ基が有している水素原子は、アルキル基やアリール基などの有機基によって置換されていてもよい。また、モノアミン化合物(C)は、珪素原子を含有していないことが好ましい。
【0037】
本発明の硬化性組成物では、モノアミン化合物(C)及びジアミン化合物を併用することによって、硬化後に光沢の発生が低減されていると共に、長期間に亘って優れた防汚効果を発揮することが可能となる。
【0038】
モノアミン化合物(C)の融点は、65℃以下が好ましく、20〜65℃がより好ましく、25〜65℃がより好ましく、40〜50℃が特に好ましい。モノアミン化合物(C)の融点を65℃以下とすることによって、モノアミン化合物(C)が硬化性組成物の硬化物表面に移動し易くなる。これにより、硬化後に光沢の発生が低減されていると共に、長期間に亘って優れた防汚効果を発揮する硬化性組成物を提供することができる。また、モノアミン化合物(C)の融点を20℃以上とすることによって、硬化性組成物の硬化物表面におけるタックの発生を低減することができる。
【0039】
なお、硬化性組成物が複数種類のモノアミン化合物(C)を含んでいる場合には、モノアミン化合物(C)の融点とは、各モノアミン化合物(C)の融点とする。
【0040】
モノアミン化合物(C)の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。例えば、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、モノアミン化合物(C)を加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、モノアミン化合物(C)の融点とする。なお、試験片の状態調節としては、JIS K7121(1987年)の3.(1)に準拠した状態調節を行う。また、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0041】
モノアミン化合物(C)としては、下記式(1)で示されるモノアミン化合物が好ましく挙げられる。
R
2−NH
2 (1)
(式(1)において、R
2は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は一価の飽和脂環式炭化水素基である。)
【0042】
式(1)において、R
2は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。R
2における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、及びベヘニル基などが挙げられる。
【0043】
式(1)で示されるモノアミン化合物(C)において、R
2の炭素数は、12〜40個が好ましく、15〜30個がより好ましく、15〜25個が特に好ましい。R
2の炭素数が上記範囲内であるモノアミン化合物(C)を用いることにより、硬化性組成物の硬化物表面のタックを短時間で低くすることができると共に、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れた防汚効果を発揮することができる。
【0044】
モノアミン化合物(C)として、具体的には、ベヘニルアミン(C
22H
45−NH
2、融点63℃)、ステアリルアミン(C
18H
37−NH
2、融点50℃)、セチルアミン(C
16H
33−NH
2、融点47℃)、ミリスチルアミン(C
14H
29−NH
2、融点38℃)、及びラウリルアミン(C
12H
25−NH
2、融点28℃)などが挙げられる。なかでも、ベヘニルアミン及びステアリルアミンが好ましい。モノアミン化合物(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0045】
硬化性組成物中におけるモノアミン化合物(C)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。モノアミン化合物(C)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物表面が優れた防汚効果を長期間に亘って発揮することができる。また、モノアミン化合物(C)の含有量が20質量部以下であると、高温下において硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することを低減することができる。
【0046】
[ジアミン化合物]
本発明の硬化性組成物は、ジアミン化合物を含む。なお、本発明において、ジアミン化合物とは、一分子中に2個のアミノ基(−NH
2)を有している化合物を意味する。ジアミン化合物においてアミノ基が有している水素原子は、アルキル基やアリール基などの有機基によって置換されていてもよい。また、ジアミン化合物は、珪素原子を含有していないことが好ましい。
【0047】
ジアミン化合物は、モノアミン化合物(C)の融点以下である融点を有するジアミン化合物(D)を含む。このようなジアミン化合物(D)を用いることによって、硬化前後の色差が小さく、硬化後に光沢の発生がより低減されている硬化性組成物を提供することが可能となる。
【0048】
なお、硬化性組成物が複数種類のジアミン化合物を含んでいる場合には、ジアミン化合物の融点とは、各ジアミン化合物の融点とする。
【0049】
また、「モノアミン化合物(C)の融点以下である融点を有するジアミン化合物(D)」との関係において、複数種類のモノアミン化合物(C)が用いられている場合には、複数種類のモノアミン化合物(C)のうち最も低い融点(P
Low)を有するモノアミン化合物(C
Low)の上記融点(P
Low)以下の融点を有するジアミン化合物を「ジアミン化合物(D)」とする。
【0050】
本発明において、ジアミン化合物の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。例えば、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、ジアミン化合物を加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、ジアミン化合物の融点とする。なお、試験片の状態調節としては、JIS K7121(1987年)の3.(1)に準拠した状態調節を行う。また、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0051】
ジアミン化合物(D)の融点は、65℃以下が好ましく、−1〜65℃がより好ましく、30〜65℃がより好ましく、35〜65℃がより好ましく、40〜65℃が特に好ましい。ジアミン化合物(D)の融点を65℃以下とすることにより、ジアミン化合物(D)が硬化性組成物の硬化物表面に移動し易くなる。これにより、硬化後に光沢の発生が低減されていると共に、長期間に亘って優れた防汚効果を発揮する硬化性組成物を提供することができる。また、ジアミン化合物(D)の融点を−1℃以上とすることによって、硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することを高く低減でき、これにより優れた防汚効果を維持することができる。特に、ジアミン化合物(D)の融点を30℃以上とすることによって、夏場などの高温下であっても硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することを高く低減でき、優れた防汚効果を維持することができる。ジアミン化合物(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0052】
硬化組成物中において、モノアミン化合物(C)及びジアミン化合物(D)の質量比[モノアミン化合物(C)の質量:ジアミン化合物(D)の質量]は、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましく、3:7〜7:3がより好ましい。モノアミン化合物(C)とジアミン化合物(D)の質量比が上記範囲であると、硬化後に光沢の発生が低減されていると共に、長期間に亘って優れた防汚効果を発揮することが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0053】
ジアミン化合物中におけるジアミン化合物(D)の含有量は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。ジアミン化合物(D)の含有量を上記範囲内とすることにより、硬化前後の色差がより小さく、硬化後に光沢の発生がより低減されている硬化性組成物を提供することができる。
【0054】
ジアミン化合物は、硬化性組成物の特性に悪影響を与えない範囲で、モノアミン化合物(C)の融点を超える融点を有するジアミン化合物(E)をさらに含んでいてもよい。ジアミン化合物中におけるジアミン化合物(E)の含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、0〜10質量%が特に好ましい。ジアミン化合物(E)の含有量が低い方が、硬化前後の色差がより小さく、硬化後に光沢の発生がより低減されている硬化性組成物を提供することができる。
【0055】
なお、「モノアミン化合物(C)の融点を超える融点を有するジアミン化合物(E)」との関係において、複数種類のモノアミン化合物(C)が用いられている場合には、複数種類のモノアミン化合物(C)のうち最も高い融点(P
High)を有するモノアミン化合物(C
High)の上記融点(P
High)を超える融点を有するジアミン化合物を「ジアミン化合物(E)」とする。
【0056】
ジアミン化合物としては、下記式(2)で示されるジアミン化合物が好ましく挙げられる。
R
3−NH−R
4−NH
2 (2)
(式(2)において、R
3は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、一価の飽和脂環式炭化水素基、又はアリール基であり、R
4は、アルキレン基である。)
【0057】
式(2)において、R
3における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、及びベヘニル基などが挙げられる。R
3における不飽和脂肪族炭化水素基としては、ウンデセニル基、cis−4−テトラデセニル基、cis−5−テトラデセニル基、cis−9−テトラデセニル基、cis−6−ヘキサデセニル基、パルミトレイル基、cis−6−オクタデセニル基、オレイル基、trans−9−オクタデセニル基、cis−11−オクタデセニル基、trans−11−オクタデセニル基、ミリストレイル基、パルミトレイル基、及びリノレイル基などが挙げられる。
【0058】
式(2)において、R
4はアルキレン基である。R
4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキサメチレン基、及びヘキシレン基などが挙げられる。
【0059】
式(2)で示されるジアミン化合物において、R
3及びR
4の合計の炭素数は、15〜40個が好ましく、15〜30個がより好ましく、15〜25個が特に好ましい。R
3及びR
4の合計の炭素数を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物表面が優れた防汚効果を長期間に亘って発揮できると共に、高温下において硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することも高く低減できる。
【0060】
ジアミン化合物としては、具体的には、ベヘニルプロピレンジアミン(C
22H
45−NH−C
3H
6−NH
2、融点63℃)、及びオレイルプロピレンジアミン(C
18H
35−NH−C
3H
6−NH
2、融点20℃)などが挙げられる。なかでも、ベヘニルプロピレンジアミンが好ましい。
【0061】
硬化性組成物中におけるジアミン化合物の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。ジアミン化合物の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物表面が優れた防汚効果を長期間に亘って発揮することができる。また、ジアミン化合物の含有量が20質量部以下であると、高温下において硬化性組成物の硬化物表面におけるタックの発生を低減することができる。
【0062】
[可塑剤]
硬化性組成物は、さらに可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤として、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド類、及びアクリル系重合体などが挙げられ、アクリル系重合体が好ましい。
【0063】
可塑剤として用いられるアクリル系重合体は、加水分解性シリル基を有していないことが好ましい。
【0064】
可塑剤として用いられるアクリル系重合体の主鎖骨格としては、(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られるアクリル系重合体が挙げられる。
【0065】
可塑剤として用いられるアクリル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、及び2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0066】
可塑剤として用いられるアクリル系重合体の重量平均分子量は、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜30,000がより好ましい。可塑剤として用いられるアクリル系重合体の重量平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。可塑剤として用いられるアクリル系重合体の重量平均分子量が1,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。
【0067】
なお、本発明において、可塑剤として用いられるアクリル系重合体の重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0068】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、1〜70質量部がより好ましく、20〜50質量部が特に好ましい。可塑剤の含有量が高過ぎると、可塑剤が硬化性組成物の硬化物表面に析出する場合がある。
【0069】
[充填剤]
硬化性組成物は、充填剤を更に含んでいるのが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0070】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0071】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0072】
炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシムが凝集することを抑制することができる。
【0073】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、1〜700質量部が好ましく、10〜200質量部がより好ましい。充填剤の含有量が1質量部以上であると、充填剤の添加による効果が十分に得られる。また、充填剤の含有量が700質量部以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が優れた伸び性を有する。
【0074】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0075】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0076】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤による効果が十分に得られる。また、脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0077】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、重合体(I)が含有する加水分解性シリル基などが加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0078】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0079】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0080】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。また、シラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0081】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0082】
[チキソ性付与剤]
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0083】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜200質量部が好ましく、1〜150質量部がより好ましい。チキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、チキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0084】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0085】
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0086】
[光安定剤]
硬化性組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0087】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0088】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0089】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0090】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0091】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0092】
【化1】
【0093】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0094】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0095】
[アミノシランカップリング剤]
本発明の硬化性組成物は、アミノシランカップリング剤を含有していることが好ましい。アミノシランカップリング剤を用いることにより、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。なお、アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物を意味する。
【0096】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0097】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられ
る。
【0098】
硬化性組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体(I)100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。
【0099】
本発明の硬化性組成物は、接着性に優れていると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材、コーティング材、接着剤、及び塗料など各種用途に使用することができる。
【0100】
特に、本発明の硬化性組成物は、硬化前後の色差が小さいことから、硬化後に所望の色に調整し易い。例えば、塗工後の硬化初期段階の硬化性組成物と、硬化が完了又は概ね完了した硬化性組成物との間で色差(ΔE)を小さくすることができる。さらに、本発明の硬化性組成物は、太陽光などの光の反射による光沢の発生を低減しつつ、防汚効果が付与されていることから、特に屋外での使用にあっても、長期間に亘って美麗な外観を保持することができる。したがって、本発明の硬化性組成物は、シーリング材又は接着剤として用いられることが好ましく、目地構造用シーリング材として用いられることがより好ましい。
【0101】
硬化性組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、硬化性組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられ、なかでも外壁が好ましい。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられ、外壁部材が好ましい。
【0102】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。本発明の硬化性組成物は、硬化後に長期間に亘って優れた防汚効果を維持することができる。従って、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる埃や汚染物質によって汚れ易い目地部をシーリングするために好適に用いられる。
【0103】
建築構造物の外壁における目地部としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、及び金属板などの外壁部材間の接合部にできる目地部が挙げられる。