【解決手段】注入制御装置13によって、注入機10の注入ポンプ11を制御するとともに、注入材4の注入量を含む注入データを一次注入データとして取得する。注入制御装置13と接続された情報処理装置20によって、一次注入データを受け取って二次注入データとして記憶する。情報処理装置20は、注入ポンプの実注入データ又は一次注入データと、二次注入データとの整合確認のための整合確認帳票の出力指令を受け付けたときは、これに応じて、前記注入ポンプの実注入データと前記一次注入データとの整合確認を行ったときに得た二次注入データを読み出して整合確認帳票として出力する。
前記情報処理装置が、前記受付工程では、前記出力指令を、前記注入ポンプの実注入データと前記一次注入データとの整合確認を行った時間情報とともに受け付け、前記作成工程では、前記時間情報に対応する二次注入データを前記記憶部から読み出して整合確認帳票を作成することを特徴とする請求項3に記載のトンネル補助工法支援方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の補助工法における注入材の注入施工は、各注入孔への注入材の注入量(kg)などを指標にして管理している。注入量は、注入機の注入ポンプを制御するプログラマブルロジックコントローラ(以下、適宜「PLC」と称す)によって取得されてモニタに数値表示される。しかし、数値を読み取るだけでは、注入状況を直観的に把握するのが難しい。そこで、ノートPCやタブレットPCなどの情報処理装置と前記PLCとを接続し、PLCが取得した注入量などの注入データを情報処理装置に取り込んで、該情報処理装置によって注入状況をグラフや図表にして表示する提案がなされている(特願2019−039899)。さらに、情報処理装置によって、前記注入データから日報などの作業帳票を作成する提案もなされている(特願2019−207343)。
【0005】
しかし、情報処理装置で作成されたグラフ、図表、作業帳票などに示された注入量などのデータが、実際の注入ポンプによる実注入データやモニタの表示データと本当に整合しているかどうかの検証が求められることが有り得る。
本発明は、かかる事情に鑑み、トンネル補助工法における注入材の注入施工を支援するシステムにおいて、情報処理装置のデータの検証を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明システムは、施工中のトンネルの周辺地山に注入機の注入ポンプから注入材を注入するトンネル補助工法における支援システムであって、
前記注入機に搭載されて前記注入ポンプを制御するとともに、前記注入材の注入量を含む注入データを一次注入データとして取得する注入制御装置と、
前記注入制御装置と接続された情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置が、
前記注入制御装置から前記一次注入データを受け取って二次注入データとして記憶する記憶部と、
前記注入ポンプの実注入データ又は前記一次注入データと、前記二次注入データとの整合確認のための整合確認帳票の出力指令を受け付ける受付部と、
前記受け付けに応じて、前記実注入データと前記一次注入データとの整合確認期間中の二次注入データを前記記憶部から読み出して整合確認帳票として出力する作成部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
前記受付部は、前記出力指令を、前記注入ポンプの実注入データと前記一次注入データとの整合確認を行った時間情報とともに受け付け、
前記作成部は、前記時間情報に対応する二次注入データを前記記憶部から読み出して整合確認帳票を作成することが好ましい。
【0008】
本発明方法は、施工中のトンネルの周辺地山に注入機の注入ポンプから注入材を注入するトンネル補助工法における支援方法であって、
前記注入機に搭載された注入制御装置が、前記注入ポンプを制御するとともに、前記注入材の注入量を含む注入データを一次注入データとして取得する工程と、
前記注入制御装置と接続された情報処理装置が、前記注入制御装置から前記一次注入データを受け取って二次注入データとして記憶する工程と、
前記情報処理装置が、前記注入ポンプの実注入データ又は前記一次注入データと、前記二次注入データとの整合確認のための整合確認帳票の出力指令を受け付ける工程と、
前記情報処理装置が、前記受け付けに応じて、前記注入ポンプの実注入データと前記一次注入データとの整合確認期間中の二次注入データを前記記憶部から読み出して整合確認帳票として作成する工程と
を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記情報処理装置が、前記受付工程では、前記出力指令を、前記注入ポンプの実注入データと前記一次注入データとの整合確認を行った時間情報とともに受け付け、前記作成工程では、前記時間情報に対応する二次注入データを前記記憶部から読み出して整合確認帳票を作成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トンネル補助工法における注入材の注入施工の支援システムにおいて、情報処理装置側の二次注入データと、注入ポンプの実注入データ又は注入制御装置側の一次注入データとの整合性の検証を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、トンネル補助工法支援システム9は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)からなる注入制御装置13と、ノートパソコン又はデスクトップパソコンなどのコンピュータからなる情報処理装置20と、タブレット、スマートフォン、ノートパソコンなどの携帯可能かつ無線通信可能なコンピュータからなる遠隔情報処理装置30とを備えている。
【0013】
図1に示すように、トンネル補助工法支援システム9は、NATM工法等によって施工中の山岳トンネル1における補助工法を支援するものである。
トンネル1の周辺の地山2には多数(
図1では1つだけ図示)の先受け鋼管(又は中空ボルト)3が打ち込まれている。トンネル1内に注入機10が設置されている。注入機10は、複数(例えば6つ、図では一部だけ図示)の注入ポンプ11と、操作盤12と、前記PLC13(注入制御装置)を備えている。注入ポンプ11から延びる注入ホース14が、注入材を注入しようとする先受け鋼管3に接続されている。注入材4として例えばシリカレジンなどのウレタン系発泡樹脂が、注入ポンプ11から送出され、注入ホース14及び先受け鋼管3内を経て、周辺地山2に注入されて硬化する。これによって、地山2が安定化される。
【0014】
先受け鋼管3の内部空間は、注入材4の注入孔3aを構成する。施工管理上、1つのトンネル断面の複数(
図1では1つだけ図示)の注入孔3aには、互いを区別するために、例えばトンネル周方向の並び順の孔ナンバーが付けられている。通常、注入は、先ず奇数番の孔ナンバーの一定順に行われ、次に偶数番の孔ナンバーの一定順に行われる。
さらに、各注入孔3aの長手方向に例えば3つ(複数)の注入領域が設定されている。
【0015】
シリカレジン等の発泡樹脂からなる注入材4は、A液原料及びB液原料を含む。
注入機10には、一系統ごとにA液用とB液用の2つの注入ポンプ11が用意されている。各系統の前記2つの注入ポンプ11からの注入ホース14が合流して、注入孔3a内に挿し入れられ、対応する注入領域まで延びている。
【0016】
図2に示すように、操作盤12には、注入ポンプ11の運転開始つまみ12a、運転停止つまみ12b、注入流速設定ボリューム12c、ポンプ選択ボタン12d、リセットボタン12e、トータルリセットボタン12f、モニタ12gなどが設けられている。
ポンプ選択ボタン12dによって、駆動する注入ポンプ11を選択できる。
【0017】
リセットボタン12eは、注入孔3aごとの積算注入量などのデータをリセットするものである。リセットボタン12eの押下は、1つの注入孔3aの注入完了の合図となる。
トータルリセットボタン12fは、1のトンネル断面における注入作業が完了したときに押下される。トータルリセットボタン12fの押下は、1のトンネル断面におけるトンネル補助工法が完了した合図となる。
モニタ12gには、注入量、注入圧等が表示される。モニタ12gが、前記つまみ12a〜12fなどが表示されてタッチ操作可能なタッチパネルであってもよい。
【0018】
図2に示すように、前記PLC13(注入制御装置)は、演算処理部13aと、入出力部13bと、LAN通信部13cと、記憶部13mを含む。演算処理部13aは、マイクロプロセッサやマイクロコントロールユニットによって構成されている。入出力部13bには、操作盤12及び注入圧センサ15等の入力機器、並びにインバータ18(ポンプ駆動回路)、チャート出力部19等の出力機器が接続されている。チャート出力部19は、注入機10の運転中、常時作動し、チャート60を印刷出力している。
【0019】
PLC13は、運転開始つまみ12a及び運転停止つまみ12b等による指令に基づいて、インバータ18を介して注入ポンプ11を運転制御しながら、注入材4の注入データを取得する。該PLC13によって取得される注入データを「一次注入データ」と称す。一次注入データは、注入孔3aごとの注入材4の注入流速(kg/min)、積算注入量(kg)ないしは最終的なトータル注入量(kg)、注入圧センサ15による注入圧(MPa)、注入時刻などを含む。
積算注入量ないしはトータル注入量(kg)は、注入ポンプ11の1回転あたりの吐出流量と回転回数の積によって算出しているが、これに限らず、注入ポンプ11の単位時間あたりの吐出流量すなわち流速(kg/min)の時間積分によって算出してもよく、流量計(図示せず)を設けてその流速測定値(kg/min)を積算して算出してもよく、流量計による積算流量測定値(kg)を用いてもよい。
一次注入データは、記憶部13mに記憶されるとともに情報処理装置20に送信される。
【0020】
図1に示すように、さらに注入機10には、前記ノートPC等からなる情報処理装置20が搭載されている。
図2に示すように、情報処理装置20は、CPU21、ディスプレイ22、記憶部23、通信部24、キーボード、タッチパネル等の入力部25を含む。情報処理装置20とPLC13とは、有線のローカルエリアネットワーク(LAN)16によって相互にデータ通信可能に接続されている。
【0021】
記憶部23には、支援プログラム23pと、支援データ23dが格納されている。支援プログラム23pは、例えばC#等のプログラミング言語で記述されたコンピュータ実行可能なプログラムであり、PLC13の一次注入データを経時的に受け取って、二次注入データとして蓄積(記憶)する処理、蓄積した二次注入データから注入状況表示画面を作成する処理、蓄積した二次注入データから作業日報、整合確認帳票50その他の各種帳票を作成する処理などを、情報処理装置20に実行させる。
二次注入データは、注入孔3aごとの注入材4の注入流速、積算注入量ないしは最終的なトータル注入量、注入圧、注入時刻などを含む。
支援データ23dは、前記二次注入データの他、注入状況表示画面のフォーマットデータ、作業日報、整合確認帳票50等の各種帳票のフォーマットデータを含む。
【0022】
図3に例示するように、注入状況表示画面40は、各トンネル断面の注入孔ごと、更に注入領域ごとの注入量や注入圧などの注入状況を
図41、表42、棒グラフ43、折れ線グラフ44などにして表示したものである。好ましくは、
図41としては、トンネル断面を模した図中に注入孔ごとの注入状況をトータル注入量に応じて色分け表示したものが作成される。これによって、注入状況をリアルタイムで直観的に把握できる。
【0023】
図4に例示するように、整合確認帳票50は、注入ポンプ11ごとのトータル注入量を表記した表51、積算注入量の経時変化52aを表したチャート52などを含む。整合確認帳票50は、注入ポンプ11の実注入データ又はPLC13の一次注入データと、二次注入データとの整合性を確認するのに用いられる。
【0024】
CPU21(処理部)は、整合確認帳票50の出力指令を受け付ける受付部21aとしての機能、及び受け付けに応じて整合確認帳票50を作成する作成部21bとしての機能を有している。
【0025】
図1及び
図2に示すように、前記タブレット等からなる遠隔情報処理装置30は、PLC13及び情報処理装置20と無線LAN接続されている。詳細な図示は省略するが、遠隔情報処理装置30の記憶部には、情報処理装置20と同様の支援プログラム及び支援データが格納されている。管理者や作業者などが遠隔情報処理装置30を携帯することで、遠隔で注入状況表示画面、整合確認帳票などを閲覧できる。
【0026】
整合確認帳票50は、次のような場面で作成される。
図5に示すように、注入機10の運転に先立ち、キャリブレーション(較正)試験を行う。
試験には、計量器70と、空の容器71を用意する。
容器71を計量器70に載せ、試験対象の注入ポンプ11から延びる注入ホース14の先端を容器71に差し入れる。
そして、ポンプ選択ボタン12d(
図2)によって、前記試験対象の注入ポンプ11を選択したうえで、運転開始つまみ12a(
図2)を押下する。
【0027】
これによって、試験対象の注入ポンプ11が駆動されて、注入材4が容器71内に吐出される。併行して、PLC13によって、所定時間(例えば0.1秒から0.数秒)間隔で注入流速(kg/min)、ポンプ回転数(rpm)等に基づく積算注入量(kg)、注入圧(MPa)等の注入データが取得される。これら注入データは、取得された時刻の情報と共に一次注入データとして記憶部13mに記憶されるとともに、積算注入量(kg)等の所定のデータはモニタ12gに表示される。同時に、一次注入データが、PLC13から情報処理装置20へ送信される。
情報処理装置20においては、前記一次注入データが受け取られて、二次注入データとして記憶部23に記憶される。
【0028】
容器71に所定量の注入材4が充填されたとき、運転停止つまみ12bを押下する。これによって、注入ポンプ11が停止され、注入が終了する。
試験者Aは、計量器70によって容器71内の注入材4の重さ(kg)を測定し、記録する。該測定値は、試験対象の注入ポンプ11のトータル注入量(kg)の実注入データとなる。
【0029】
図2に示すように、この時点のモニタ12gには、注入終了時の積算注入量(トータル注入量)の表示12hがなされている。
試験者Aは、該表示12hの積算注入量を記録するとともに、その積算注入量(一次注入データ)と計量器70による実測値(実注入データ)との整合性を確認する。すなわち、一次注入データが実注入データと一致しているか否か、一致していない場合、一次注入データと実注入データとの差が許容範囲内であるか否かを確認する。これによって、PLC13による一次注入データの正確度を判定でき、誤差が大きいときは許容範囲に収まるようにキャリブレーション(較正)できる。
【0030】
更に、常時作動中のチャート出力部19によって、記憶部13mの記憶情報に基づいてチャート60が作成されて印刷される。チャート60には、PLC13が算出した積算注入量の経時変化61などが表示される。
【0031】
その後、試験者Aがリセットボタン12eを押下すると、モニタ12gの注入量表示がゼロにリセットされる。
PLC13においては、リセットボタン12eの押下時点における積算注入量が、トータル注入量(kg)を表す一次注入データとして記憶部13mに記憶されるとともに、情報処理装置20に送信される。情報処理装置20においては、受信された一次注入データが、トータル注入量を表す二次注入データとして記憶部23に記憶される。
【0032】
続いて、試験者Aは、注入機10の別の注入ポンプ11を試験対象として選択して、同様の操作を行う。
容器71を2つ用意して、同一系統(注入領域)のA液用注入ポンプとB液用注入ポンプを同時に試験してもよい。
【0033】
試験者Aは、すべての注入ポンプ11のキャリブレーション試験が終了したときは、トータルリセットボタン12fを押下する。
トータルリセットボタン12fの押下情報は、その時刻情報とともにPLC13から情報処理装置20に送信され、情報処理装置20の記憶部23に記憶される。
【0034】
その後、試験者A等が情報処理装置20の入力部25を操作して、整合確認帳票50の出力指令を出したものとする。出力指令には、前記キャリブレーション試験を行った時間(整合確認期間)の入力情報が含まれる。キャリブレーション試験期間であれば、該期間中の任意の時刻が指定されていればよい。
【0035】
出力指令は、受付部21aとしてのCPU21によって受け付けられる。
これに応じて、作成部21bとしてのCPU21が、前記任意の時刻(時間情報)が含まれる注入期間中の二次注入データを記憶部23から読み出す。
前記注入期間は、トータルリセットボタン12fの押下日時によって区切られる。
要するに、前記任意の時刻より前かつ直近のトータルリセットボタン12fの押下日時から、前記任意の時刻より後かつ直近のトータルリセットボタン12fの押下日時までの期間に取得された二次注入データを読み出す。これによって、キャリブレーション試験期間のデータと、実際の地山2への注入工程でのデータとを混同するのを防止できる。
【0036】
更に作成部21bとしてのCPU21は、記憶部23から整合確認帳票のフォーマットデータを読み出す。そして、前記読み出した二次注入データと整合確認帳票のフォーマットデータとによって整合確認帳票50(
図4)を作成し、ディスプレイ22に表示(出力)する。プリンターで印刷してもよい。
【0037】
これによって、試験者Aは、整合確認帳票50を確認することで、情報処理装置20の二次注入データが、実注入データや一次注入データと整合しているかを検証できる。具体的には、整合確認帳票50中の表51に表記されたトータル注入量と、前記キャリブレーション試験時に記録しておいたトータル注入量の実測値やモニタ12の表示値と整合しているかを確認する。また、整合確認帳票50におけるチャート52中の積算注入量の経時変化52aが、チャート出力部19から出力させておいたチャート60中の積算注入量の経時変化61と整合しているかを確認する。
同様にして、遠隔情報処理装置30の二次注入データについても、整合確認を行うことができる。
【0038】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲におい
て種々の改変をなすことができる。
例えば、操作盤12などに、キャリブレーション試験と実際の注入工程とを識別するボタンが設けられていてもよい。整合確認帳票作成工程では、情報処理装置20が、前記識別ボタンの入力情報に基づいて、整合確認帳票50の作成に用いる二次注入データを読み出してもよい。
注入材2は、ウレタン系発泡樹脂に限らず、モルタル、セメントなどであってもよい。