排水栓装置は、操作部からの操作に基づいて変位し、排水口を開閉する弁体50と、弁体50を支持する弁軸45を備えている。弁体50は、上下方向に変位することで排水口を開閉するのに対して、略水平方向より弁軸45と連結している。従って、排水口の開閉に伴う弁体50の変位方向に対して90度傾斜する方向より、弁体50と弁軸45が連結しているため、弁体50の変位に伴い、弁体50の変位方向に沿って弁体50及び弁軸45を離間させる方向に力が加わったとしても、弁体50と弁軸45の連結が解除されてしまうことはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記排水栓装置は、弁体と弁軸の連結が不十分である場合、弁体が下降した際に排水口を密閉することができず、槽体内に湯水を貯留することが不可能となる。ここで、上記特許文献1は、操作部への操作に伴い弁体が変位する方向と、弁体と弁軸の連結を解除させる際に応力が加えられる方向が同一となっている。従って、排水口の開閉操作を繰り返すことによって、弁体と弁軸の連結が予期せず解除されてしまう恐れを有している。又、特許文献2に記載された排水栓装置は、弁体及び弁軸を排水口から取り外すことによって弁体やヘアキャッチャーを清掃可能としているが、当該取り外しの際に応力が加えられる方向と、弁体と弁軸の連結を解除させる際に応力が加えられる方向が同一となっている。従って、弁体を把持して排水口から取り外す際に弁体と弁軸の連結が予期せず解除されてしまう恐れを有している。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、確実に弁体と弁軸の連結を行うことを可能とするとともに、当該連結が予期せず解除されることのない排水栓装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、槽体に形成された排水口と、
操作部からの操作に基づいて変位し、排水口を開閉する弁体と、
弁体を支持する弁軸を備えた排水栓装置において、
弁体は、前記変位方向とは異なる方向より弁軸と連結することを特徴とする排水栓装置である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、前記弁体は、
弁体の変位方向に沿って弁体及び弁軸を離間させるよう力を加えた際、当該弁体を弁軸から取り外し不可能であることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、前記弁体は、
弁体の変位方向に対して傾斜する方向より弁軸と連結することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水栓装置である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、前記弁体は、上面に弁軸と連結する連結部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水栓装置である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、前記弁体は、下面に弁軸と連結する連結部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水栓装置である。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、前記弁体は、
弁軸に対する着脱の際に把持可能な取手を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の排水栓装置である。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明によれば、弁体の変位や取り外しの際に加わる応力によって、予期せず弁体と弁軸の連結が解除されることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0016】
(第一実施形態)
本実施形態における排水栓装置20が取り付けられる槽体10は、浴室に配置された浴槽であり、底面に形成された排水口19は排水栓装置20によって遠隔的に開閉可能となっている。
【0017】
図1に示すように、槽体10は底面を形成する底壁部11と、当該底壁部11の周囲から上方に向けて立設された側壁部12を有する箱体である。又、槽体10は側壁部12の内、洗い場と隣接する側壁部13下端において飛び出し部15が形成されている。
飛び出し部15は、平面視側壁部13の中央であって、
図2に示すように、底壁部11と側壁部13が交差する角部において、側壁部13の外側、即ち洗い場側に向けて形成された突出部である。飛び出し部15の下面は底壁部11と段差無く連続しているとともに、排水口19が形成されている。又、飛び出し部15の側面は、槽体10の側壁部13よりも洗い場側に突出しており、上面は弁軸45が貫通している。
排水口19は飛び出し部15の下面を上下方向に貫通する円形の開口であり、槽体10の底壁部11と飛び出し部15の下面の内、最も低い位置に形成されている。
上記排水口19は側壁部13の内側面よりも洗い場側、即ち槽体10の外側に配置されており、平面視において使用者からは目視不可能となっている。又、排水口19の下方には何の部材も取り付けられておらず、槽体10の下方には突出部が一切存在していない。
【0018】
図3に示すように、排水栓装置20は操作部25、ロック機構30、伝達部材35、昇降部41、弁体50から構成されている。
【0019】
操作部25は槽体10の縁部より浴室内に露出するスイッチ部26を有し、当該スイッチ部26に対して押動操作が加えられることによって排水栓装置20が作動し、弁体50を変位させることで排水口19を開閉する。
ロック機構30は上端より延設された棒状のロック軸がスイッチ部26裏面に連結されているとともに、下端には伝達部材35が連結されている。又、ロック機構30は内部にギアが配置されており、スイッチ部26に対する押動操作に伴い内部のギアの噛合/噛合の解除が繰り返されることによって、操作の都度排水口19の開口状態の保持と、当該保持の解除を切り替えることが可能となる。又、ロック機構30は内部にリターンスプリングが配置されており、後述するインナーワイヤ37をスイッチ部26側へと付勢している。
伝達部材35は樹脂製のアウターチューブ36及び金属製のインナーワイヤ37から成るレリースワイヤであって、スイッチ部26に連動してインナーワイヤ37がアウターチューブ36内を摺動可能となっている。又、伝達部材35は端部に内筒39と外筒40から成る筒部38を有しており、内筒39はインナーワイヤ37の進退に応じて外筒40から突出可能となっている。
【0020】
昇降部41は内部に操作部25からの指示によって可動する第一歯車42、第二歯車43、第三歯車44、及び弁軸45を備えている。
第一歯車42は円形の平歯車であって、第二歯車43と第三歯車44はそれぞれ第一歯車42と噛合する棒状のラックである。第二歯車43は第一歯車42の操作部25側に、第三歯車44は第一歯車42の弁体50側に配置されており、第二歯車43に伝達された応力は第一歯車42によって方向が反転し、第三歯車44ヘと伝達される。第二歯車43は上端が上記内筒39端部と当接する位置に配設されているが、係合等はしておらず、切り離されている。一方、第三歯車44は下端において弁軸45と嵌合されており、第三歯車44の動きに連動する。
弁軸45は飛び出し部15の上面を貫通する棒状体であり、
図4に示すように、端部に弁体50と係合する溝部46が全周に亘り形成されている。当該弁軸45は施工完了状態において端部が弁体50と連結しているとともに、スプリング47によって弁体50を排水口19に押し付ける方向に向けて付勢されている。
従って、スプリング47によって、弁軸45と係合されている第三歯車44は排水口19に近接する方向に向けて変位するように付勢されているとともに、第二歯車43は操作部25に近接する方向に向けて変位するように付勢されている。
【0021】
弁体50は排水口19の開閉を行う板状の蓋体であって、操作部25からの操作を受けて上下に変位する。又、弁体50は一端に直線部51が形成された平面視略U字状の上面と、パッキンが嵌着される円形の下面を備えている。又、弁体50は上面に連結部52、ガイド部54、取手55が形成されている。
連結部52は切り欠き部53を有する略C字状であって、
図3に示すように、施工完了時には弁軸45が係合されている。尚、連結部52の内径は弁軸45の外径よりも小径且つ弁軸45に形成された溝部46の外径よりも大径である。
ガイド部54は連結部52の両端部から弁体50の一端側に向けて平面視扇状に延設されたリブであり、弁軸45を連結部52へと誘導するよう形成されている。
取手55は弁体50の他端側へと延設され、使用者が弁体50と弁軸45を着脱させる際に指を掛けるための開口が形成されている。
【0022】
上記弁体50は連結部52が弁軸45の溝部46に配置されることによって連結されており、排水栓装置20の作動時において、弁軸45により上方より引き上げられることによって排水口19を開口するとともに、弁軸45により上方より押し下げられることによって排水口19を閉塞する。
【0023】
上記排水栓装置20において、弁体50と弁軸45は以下の様に組み立てられる。
まず、
図5(a)に示すように、取手55を把持し、弁軸45の軸方向に対して直交する方向、即ち略水平方向より連結部52の切り欠き部53を弁軸45の溝部46に押し当てる。この時、弁軸45によって連結部52が押し広げられるとともに、切り欠き部53の幅が弁軸45の外径よりも大きく広がると、弁軸45が切り欠き部53を通過して、連結部52の内側に配置される。尚、押し広げられていた連結部52は自身の弾性によって縮径し、元の形状へと復帰することで、
図5(b)に示すように、弁体50と弁軸45の連結が完了する。
上記連結完了時において、連結部52は弁軸45の溝部46内に配置され、弁軸45の軸方向に変位することはできない。又、弁体50の直線部51が飛び出し部15の奥側面に当接し、弁体50は回動不能となっている。
【0024】
上記組み立てに際し、弁体50にはガイド部54が形成されているため、押し当てる際に切り欠き部53と弁軸45の位置が多少相違していても、ガイド部54によって弁体50との連結箇所へと誘導され、確実に連結させることが可能となる。
又、取手55を把持して弁体50を略水平方向に引くと、弁軸45によって連結部52が再び押し広げられ、弁体50と弁軸45の連結を解除し、弁体50を取り外すことができる。
【0025】
上記排水栓装置20は以下のように作動する。
【0026】
まず、
図6に示すように、弁体50が下降状態にある時に、スイッチ部26に対して押動操作が加えられると、インナーワイヤ37がアウターチューブ36内を弁体50側へと摺動する。これにより、筒部38の内筒39が外筒40より下方へ向けて突出し、第二歯車43に当接するとともに、第二歯車43を下降させる。又、当該第二歯車43の下降に伴い第一歯車42が回転し、第三歯車44を上昇させる。
上記第三歯車44の上昇に連動し、弁軸45が上昇すると、弁軸45によって弁体50が上方より引き上げられて、
図7に示すように排水口19が開口する。この時、ロック機構30は内部のギアが噛合し、弁体50の上昇状態が保持される。そして、排水口19が開口することによって、槽体10内に貯留されていた湯水は排水口19より浴槽パン上に直接排出される。尚、浴槽パン上に排出された排水は排水トラップ(図示せず)を介して下水側へと排出される。
次に、上記弁体50が上昇した状態より再度スイッチ部26に押動操作が加えられると、ロック機構30内の上記ギアの噛合が解除され、リターンスプリングの作用によってインナーワイヤ37及び内筒39がスイッチ部26側へと後退する。この時、スプリング47の付勢によって弁軸45が下降し、弁体50に嵌着されたパッキンが排水口19の周縁に当接することにより、排水口19が閉塞され、槽体10内に湯水を貯留することが可能となる。
【0027】
上記排水栓装置20において、弁体50は上下方向に変位することで排水口19を開閉するのに対して、略水平方向より弁軸45と連結している。従って、排水口19の開閉に伴う弁体50の変位方向に対して90度傾斜する方向より、弁体50と弁軸45が連結しているため、弁体50の変位に伴い、弁体50の変位方向に沿って弁体50及び弁軸45を離間させる方向に力が加わったとしても、弁体50と弁軸45の連結が解除されてしまうことはない。
又、本実施形態における槽体10は、排水口19が飛び出し部15内に形成されており、弁体50を弁軸45に連結させるための空間が狭く、弁体50と弁軸45の連結作業は困難である。しかし、本発明の排水栓装置20は弁体50を弁軸45に対して略水平方向に押し付けることで連結させることが可能であるため、このような槽体10であっても容易に連結を行うことができる。
【0028】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
本実施形態における排水栓装置220が取り付けられる槽体210は、洗面所に配置された洗面ボウルであり、底面に形成された排水口219は排水栓装置220によって遠隔的に開閉可能となっている。
【0029】
図8に示すように、排水栓装置220は操作部225、伝達部材235、昇降部241、弁体250から構成されている。
【0030】
操作部225は直接操作が加えられる押動部分を有し、槽体210縁部に取り付けられている。又、操作部225は下端に伝達部材235が接続されており、当該伝達部材235を介して弁体250を遠隔的に操作する。
【0031】
伝達部材235は樹脂製のアウターチューブ236及び金属製のインナーワイヤ237から成るレリースワイヤであって、操作部225へ加えられた操作に連動してインナーワイヤ237がアウターチューブ236内を摺動可能となっている。又、伝達部材235は端部に昇降部241が取り付けられている。
【0032】
昇降部241はインナーワイヤ237の進退に連動して回動するよう構成されており、弁体250及び弁軸245が載置されている。
【0033】
弁体250は周囲に環状のパッキンが嵌着された板状の蓋体であって、操作部225からの操作を受けて上下に変位する。又、弁体250は下面に連結部252が形成されている。
連結部252は切り欠き部253を有する略C字状であって、弁軸245が係合されている。尚、連結部252の内径は弁軸245の外径よりも小径且つ溝部246の外径よりも大径である。
弁軸245は金属製の棒状体であって、上端に弁体250と係合する溝部246が全周に亘り形成されており、下端は昇降部241に載置されている。
【0034】
上記弁体250は連結部252が弁軸245の溝部246に配置されることによって連結されている。
【0035】
上記排水栓装置220において、弁体250と弁軸245は以下の様に組み立てられる。
まず、
図9(a)に示すように、弁軸245の軸方向に対して直交する方向より連結部252の切り欠き部253を弁軸245の溝部246に押し当てる。この時、弁軸245によって連結部252が押し広げられるとともに、切り欠き部253の幅が弁軸245の外径よりも大きく広がると、弁軸245が切り欠き部253を通過して、連結部252の内側に配置される。尚、押し広げられていた連結部252は自身の弾性によって縮径し、元の形状へと復帰することで、
図9(b)に示すように、弁体250と弁軸245の連結が完了する。
上記連結完了時において、連結部252は弁軸245の溝部246内に配置され、弁軸245の軸方向に変位することはできない。
【0036】
上記排水栓装置220は以下のように作動する。
【0037】
まず、弁体250が下降状態にある時に、操作部225が引き上げられると、インナーワイヤ237がアウターチューブ236内を操作部225側へ摺動するとともに、昇降部241は端部が上昇するように回動し、弁体250を上昇させる。この時、弁体250に嵌着されたパッキンが排水口219周縁から離間し、排水口219が開口する。
次に、上記弁体250が上昇した状態より操作部225に対して押し込み操作が加えられると、インナーワイヤ237が弁体250側へと摺動するととともに、昇降部241は端部が下降するように回動し、弁体250を下降させる。この時、弁体250に嵌着されたパッキンが排水口219の周縁に当接することにより、排水口219が閉塞され、槽体210内に湯水を貯留することが可能となる。
【0038】
上記排水栓装置220において、弁体250は弁軸245の軸方向に対して直交する方向より連結されることから、弁体250が排水口219に配置された状態において、上記連結方向は略水平となる。従って、排水栓装置220は弁体250が変位する方向に対して90度傾斜する方向より、弁体250と弁軸245が連結するため、弁体250の変位方向に沿って弁体250及び弁軸45を離間させるよう力を加えられても、弁体250と弁軸245の連結が解除されてしまうことはない。又、上記排水栓装置220は、弁体250を把持し、上方に向けて弁体250を引き上げることで排水口219から弁体250を取り外し、弁体250や排水流路の清掃を行うことができる。ここで、当該取り外しの際に弁体250に加えられる応力の方向と、弁体250と弁軸245が連結する方向が相違しているため、弁体250の取り外しの際に、弁体250の変位方向に沿って弁体250及び弁軸45を離間させるよう力を加えられても、誤って弁体250と弁軸245の連結が解除されてしまうことはない。
【0039】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について説明する。尚、これ以降に説明する実施形態においては、第二実施形態と共通する部材、形状については同一の番号を付してその説明を省略する。
弁体350は、下面に連結部352が形成されている。連結部352は
図10に示すように、弁軸245よりも大径の挿入部56と、弁軸245よりも小径且つ溝部246よりも大径の固定部57から構成されている。
上記弁体350と弁軸245は、以下の様に組み立てられる。
まず、弁軸245を連結部352の挿入部56に挿入する(
図10(a))。次に、挿入された弁軸245を略水平方向に向けて移動させ(
図10(b))、弁軸245を固定部57に配置することで弁体350と弁軸245の連結が完了する(
図10(c))。上述の通り、固定部57は弁軸245よりも小径且つ溝部246よりも大径であることから、弁体250の変位方向に沿って弁体250及び弁軸45を離間させるよう力を加えられても、弁体350と弁軸245の連結が解除されることはない。
【0040】
(第四実施形態)
上記実施形態において、弁体と弁軸は水平方向に応力が加えられることによって連結されていたが、
図12に示す第四実施形態のように、連結部452に弁軸445を挿入した後、弁軸445端部を中心に回転させることで弁体450と弁軸445を連結させても良い。
【0041】
本発明の実施形態は以上であるが、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。例えば、本発明の排水栓装置が取り付けられる槽体は浴槽や洗面ボウルに限られるものではなく、流し台その他の槽体であっても良い。又、上記各実施形態は適宜組み合わせても良い。