(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-161744(P2021-161744A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】温水洗浄便座及びそれを用いた汚物の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20210913BHJP
【FI】
E03D9/08 F
E03D9/08 L
E03D9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-64272(P2020-64272)
(22)【出願日】2020年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】519392948
【氏名又は名称】株式会社Water X Technologies
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕司
(72)【発明者】
【氏名】羅 丹
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038JA05
2D038JC11
2D038JC15
2D038JF04
2D038JH06
2D038KA03
2D038KA08
2D038KA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紙を必要としない温水洗浄便座、及び、そのような温水洗浄便座を用いた汚物の洗浄方法を提供する。
【解決手段】使用者の被洗浄領域に対して洗浄水を噴出するように構成された洗浄ノズルと、被洗浄領域に付着した汚物成分又は被洗浄領域から滴り落ちる洗浄水中の汚物成分を検知するための汚物センサ40と、汚物センサ40からの入力に基づいて、被洗浄領域から汚物成分が除去されたと認識したときに、洗浄の完了を使用者に通知するか、又は、洗浄ノズルによる洗浄水の噴出を自動的に停止するように構成されている制御部60と、被洗浄領域を乾燥させるための乾燥装置50と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の被洗浄領域に対して洗浄水を噴出するように構成された洗浄ノズルと、
前記被洗浄領域に付着した汚物成分又は前記被洗浄領域から滴り落ちる前記洗浄水中の汚物成分を検知するための汚物センサと、
前記汚物センサからの入力に基づいて、前記被洗浄領域から前記汚物成分が除去されたと認識したときに、洗浄の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記洗浄ノズルによる前記洗浄水の噴出を自動的に停止するように構成されている制御部と、
前記被洗浄領域を乾燥させるための乾燥装置と、
を備えた温水洗浄便座。
【請求項2】
前記汚物センサは、予め記憶させた前記汚物成分の特徴を検知するように構成されている、請求項1に記載の温水洗浄便座。
【請求項3】
前記特徴の少なくとも一部は、人工知能による学習済モデルに基づいて定められている、請求項2に記載の温水洗浄便座。
【請求項4】
前記汚物センサは、少なくとも、前記洗浄ノズルによる前記洗浄水の噴出の開始がされてから、前記制御部による前記使用者への洗浄の完了の通知又は前記洗浄ノズルによる前記洗浄水の噴出の停止がされるまで、前記汚物成分の検知を継続するように構成されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載の温水洗浄便座。
【請求項5】
前記汚物センサは、前記被洗浄領域に付着した水成分も検知できるように構成されている、請求項1乃至4の何れか1項に記載の温水洗浄便座。
【請求項6】
前記制御部は、前記汚物センサからの入力に基づいて、前記被洗浄領域から前記水成分が除去されたと認識したときに、乾燥の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥を自動的に停止するように更に構成されている、請求項5に記載の温水洗浄便座。
【請求項7】
前記汚物センサは、少なくとも、前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥が開始されてから、前記制御部による前記使用者への乾燥の完了の通知又は前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥の停止がされるまで、前記水成分の検知を継続するように構成されている、請求項5又は6に記載の温水洗浄便座。
【請求項8】
前記汚物センサは、イメージセンサ、温度センサ、マイクロ波センサ、又はこれらの組合せである、請求項1乃至7の何れか1項に記載の温水洗浄便座。
【請求項9】
前記汚物センサは、前記洗浄ノズルと一体的に設置されている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の温水洗浄便座。
【請求項10】
前記汚物センサは、前記洗浄ノズルとは別体のノズル上に設置されている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の温水洗浄便座。
【請求項11】
前記汚物センサは、温水洗浄便座の本体に設置されている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の温水洗浄便座。
【請求項12】
温水洗浄便座を用いた汚物の洗浄方法であって、
使用者の被洗浄領域に対して洗浄水を噴出することにより、前記被洗浄領域を洗浄することと;
汚物センサを用いて前記被洗浄領域に付着した汚物成分又は前記被洗浄領域から滴り落ちる前記洗浄水中の汚物成分を検知することと;
前記汚物センサからの入力に基づいて、前記被洗浄領域から前記汚物成分が除去されたと認識されたときに、洗浄の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記被洗浄領域に対する前記洗浄水の噴出を自動的に停止することと、
を含んだ方法。
【請求項13】
前記汚物センサを用いて前記被洗浄領域に付着した水成分を検知することを更に含んだ請求項12に記載の方法。
【請求項14】
乾燥装置を用いて前記被洗浄領域を乾燥させることと、
前記汚物センサからの入力に基づいて、前記水成分が除去されたと認識されたときに、乾燥の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥を自動的に停止することと、
を更に含んだ請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水洗浄便座及びそれを用いた汚物の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄機能を有する種々の便座が開発されている。例えば、特許文献1には、人の肛門部の位置を検知する赤外線検知装置を備えた洗浄機能付便座が記載されている。また、特許文献2には、撮像装置を用いて使用者の被洗浄領域の面積に対する付着物の面積の割合を算出し、それに基づいて間接画像を出力するように構成された温水洗浄便座装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−277564号公報
【特許文献2】特開2019−108741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、便座を使用する場合、トイレットペーパーなどの紙が必要である。紙は、以下の3つの機能を担っている。
(1)汚れを落とす
(2)水分を取り除く
(3)汚れが落ちたことを確認する
しかしながら、紙の使用には、幾つかの不利益が伴う。例えば、使用者が腰痛や痔などの疾患を有していたり、妊婦であったりする場合、紙の使用は物理的に困難である。また、紙を使用する際に、手が汚れてしまうリスクがある。更に、便器の排水性能に不安のある地域では、紙をゴミ箱等に捨てるなどして、使用環境の衛生や美観を損なうことがある。紙を便器中に流す場合にも、地球環境への負荷がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、紙を必要としない温水洗浄便座を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような温水洗浄便座を用いた汚物の洗浄方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
[1]使用者の被洗浄領域に対して洗浄水を噴出するように構成された洗浄ノズルと、前記被洗浄領域に付着した汚物成分又は前記被洗浄領域から滴り落ちる前記洗浄水中の汚物成分を検知するための汚物センサと、前記汚物センサからの入力に基づいて、前記被洗浄領域から前記汚物成分が除去されたと認識したときに、洗浄の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記洗浄ノズルによる前記洗浄水の噴出を自動的に停止するように構成されている制御部と、前記被洗浄領域を乾燥させるための乾燥装置と、を備えた温水洗浄便座。
[2]前記汚物センサは、予め記憶させた前記汚物成分の特徴を検知するように構成されている、[1]に記載の温水洗浄便座。
[3]前記特徴の少なくとも一部は、人工知能による学習済モデルに基づいて定められている、[2]に記載の温水洗浄便座。
[4]前記汚物センサは、少なくとも、前記洗浄ノズルによる前記洗浄水の噴出の開始がされてから、前記制御部による前記使用者への洗浄の完了の通知又は前記洗浄ノズルによる前記洗浄水の噴出の停止がされるまで、前記汚物成分の検知を継続するように構成されている、[1]〜[3]の何れかに記載の温水洗浄便座。
[5]前記汚物センサは、前記被洗浄領域に付着した水成分も検知できるように構成されている、[1]〜[4]の何れかに記載の温水洗浄便座。
[6]前記制御部は、前記汚物センサからの入力に基づいて、前記被洗浄領域から前記水成分が除去されたと認識したときに、乾燥の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥を自動的に停止するように更に構成されている、[5]に記載の温水洗浄便座。
[7]前記汚物センサは、少なくとも、前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥が開始されてから、前記制御部による前記使用者への乾燥の完了の通知又は前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥の停止がされるまで、前記水成分の検知を継続するように構成されている、[5]又は[6]に記載の温水洗浄便座。
[8]前記汚物センサは、イメージセンサ、温度センサ、マイクロ波センサ、又はこれらの組合せである、[1]〜[7]の何れかに記載の温水洗浄便座。
[9]前記汚物センサは、前記洗浄ノズルと一体的に設置されている、[1]〜[8]の何れかに記載の温水洗浄便座。
[10]前記汚物センサは、前記洗浄ノズルとは別体のノズル上に設置されている、[1]〜[8]の何れかに記載の温水洗浄便座。
[11]前記汚物センサは、温水洗浄便座の本体に設置されている、[1]〜[8]の何れかに記載の温水洗浄便座。
[12]温水洗浄便座を用いた汚物の洗浄方法であって、使用者の被洗浄領域に対して洗浄水を噴出することにより、前記被洗浄領域を洗浄することと;汚物センサを用いて前記被洗浄領域に付着した汚物成分又は前記被洗浄領域から滴り落ちる前記洗浄水中の汚物成分を検知することと;前記汚物センサからの入力に基づいて、前記被洗浄領域から前記汚物成分が除去されたと認識されたときに、洗浄の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記被洗浄領域に対する前記洗浄水の噴出を自動的に停止することと、を含んだ方法。
[13]前記汚物センサを用いて前記被洗浄領域に付着した水成分を検知することを更に含んだ[12]に記載の方法。
[14]乾燥装置を用いて前記被洗浄領域を乾燥させることと、前記汚物センサからの入力に基づいて、前記水成分が除去されたと認識されたときに、乾燥の完了を前記使用者に通知するか、又は、前記乾燥装置による前記被洗浄領域の乾燥を自動的に停止することとを更に含んだ[13]に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、紙を必要としない温水洗浄便座が提供される。また、本発明によると、そのような温水洗浄便座を用いた汚物の洗浄方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一態様に係る温水洗浄便座の全体斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す温水洗浄便座のブロック構成図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の変形例に係る温水洗浄便座の部分拡大図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の他の変形例に係る温水洗浄便座の部分拡大図である。
【
図4A】
図4Aは、従来の温水洗浄便座を使用する場合のフロー図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の一態様に係る温水洗浄便座を使用する場合のフロー図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の一態様に係る温水洗浄便座を使用した汚物検知の方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6B】
図6Bは、本発明の一態様に係る温水洗浄便座を使用した水検知の方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一態様に係る温水洗浄便座について説明する。なお、図面を参照する場合、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の一態様に係る温水洗浄便座の全体斜視図である。
図2は、
図1に示す温水洗浄便座のブロック構成図である。
図1及び
図2に示す温水洗浄便座100は、着座センサ10と、操作部20と、洗浄装置30と、汚物センサ40と、乾燥装置50と、制御部60と、出力部70とを備えている。
【0011】
着座センサ10は、使用者が温水洗浄便座100に着座しているか否かを検知するためのセンサである。着座センサ10は、典型的には、赤外線センサ又は静電容量センサである。着座センサ10は、省略してもよい。或いは、後述する汚物センサ40を着座センサ10として使用してもよい。
【0012】
操作部20は、使用者が洗浄装置30及び乾燥装置50のON/OFFを手動で操作できるように構成されている。
図2に示す構成では、操作部20は、洗浄ONスイッチ22、洗浄OFFスイッチ24、乾燥ONスイッチ26、及び乾燥OFFスイッチ28を備えている。洗浄OFFスイッチ24及び乾燥OFFスイッチ28は、単一のOFFボタンによって構成されていてもよい。なお、洗浄装置30及び乾燥装置50のON/OFFを全て自動で行う場合には、操作部20は省略してもよい。
【0013】
洗浄装置30は、使用者の被洗浄領域に対して洗浄水を噴出するように構成された洗浄ノズルである。洗浄装置30は、典型的には、温水洗浄便座の本体に伸縮可能に保持されている。洗浄装置30の伸縮動作は、例えば、モータ(図示せず)によって調節される。洗浄装置30から噴出する洗浄水の量は、例えば、流量制御弁(図示せず)によって調節される。なお、ここで「被洗浄領域」とは、人体の局部を含む、温水洗浄便座による洗浄の対象となり得る領域を意味している。
【0014】
汚物センサ40は、被洗浄領域に付着した汚物成分又は被洗浄領域から滴り落ちる洗浄水中の汚物成分を検知するように構成されている。したがって、汚物センサ40を用いることにより、洗浄装置30による洗浄の完了を機械的に判断することが可能となる。なお、ここで「汚物」とは、便、尿、及び経血などの排泄物を意味している。汚物センサ40は、上述した通り、着座センサ10を兼ねていてもよい。
【0015】
図1に示す構成では、汚物センサ40は、洗浄装置30と一体的に設置されている。汚物センサ40は、例えば、イメージセンサ、温度センサ、マイクロ波センサ、又はこれらの組合せである。汚物センサ40としてイメージセンサを用いる場合、光源を併用してもよい。この光源としては、例えば、LED光源を用いることができる。
【0016】
上述した通り、汚物センサ40は、汚物成分自体を検知できるように構成されている。このような構成を採用すると、汚物成分以外の検知によるノイズが生じ難くなる。これに対し、例えば、特許文献2に記載されているように、被洗浄領域の面積に対する付着物の面積の割合に基づいた検知を行う場合、紙の切れ端などの汚物以外の付着物も検出されてしまう可能性がある。或いは、撮像装置が撮像する領域中に衣服の一部などが映り込んだ場合にも、誤検知が生じ得る。汚物成分自体を検知できるように構成した汚物センサ40を用いることにより、これらの問題を解決することができる。
【0017】
汚物センサ40が被洗浄領域に付着した汚物成分を検知するように構成されている場合、検知対象の流動性が比較的少ないため、安定的な検知が可能となる。汚物センサ40が被洗浄領域から滴り落ちる洗浄水中の汚物成分を検知するように構成されている場合、被洗浄領域中の汚物成分以外の部分からのノイズが少なくなる。
【0018】
汚物センサ40は、典型的には、予め記憶させた汚物成分の特徴を検知するように構成されている。汚物成分の特徴は、色や温度などの物理的な情報であってもよく、マイクロ波特性や含有成分などの化学的な情報であってもよい。例えば、汚物センサ40がイメージセンサである場合、汚物の色情報を実験的に記憶させておくことにより、汚物成分の検知が可能となる。或いは、汚物センサ40が温度センサである場合、汚物の温度特性を実験的に記憶させておくことにより、汚物成分の検知が可能となる。また、汚物センサ40がマイクロ波センサである場合、汚物のマイクロ波吸収又は反射特性を実験的に記憶させておくことにより、汚物成分の検知が可能となる。
【0019】
上記の汚物成分の特徴の少なくとも一部は、人工知能による学習済モデルに基づいて定めてもよい。この学習済モデルは、典型的には、ディープラーニングなどの機械学習により作成される。この機械学習は、例えば、実験的に収集した被洗浄領域のデータ群に対して、人工知能に教師あり学習を行わせることにより実行される。このデータ群としては、例えば、被洗浄領域の画像データ、温度マップデータ、及び/又はマイクロ波解析データを使用することができる。
【0020】
汚物センサ40は、被洗浄領域に付着した水成分を更に検知できるように構成されていてもよい。このような構成を採用すると、被洗浄領域における汚物成分の有無だけでなく、水成分の有無も検知することが可能となる。即ち、このような構成を採用すると、汚物センサ40により、上述した洗浄の完了のみならず、後述する乾燥の完了も機械的に判断することが可能となる。汚物センサ40が水成分も検知可能である場合、汚物センサ40は、典型的には、予め記憶させた水成分の特徴を検知するように構成されている。この特徴の少なくとも一部は、先に汚物成分の検知について説明したのと同様に、人工知能による学習済モデルに基づいて定めてもよい。
【0021】
乾燥装置50は、使用者の被洗浄領域を乾燥させるための装置である。乾燥装置50は、典型的には、被洗浄領域に温風を吹きかけるように構成されている。
【0022】
制御部60は、温水洗浄便座100における洗浄及び乾燥機能を制御するためのユニットである。制御部60は、汚物センサ40からの入力に基づいて、被洗浄領域から汚物成分が除去されたと認識したときに、洗浄の完了を使用者に通知するか、又は、洗浄装置30による洗浄水の噴出を自動的に停止するように構成されている。また、汚物センサ40が水成分の検知もできる場合には、制御部60は、汚物センサ40からの入力に基づいて、被洗浄領域から水成分が除去されたと認識したときに、乾燥の完了を使用者に通知するか、又は、乾燥装置50による被洗浄領域の乾燥を自動的に停止するように更に構成されていてもよい。
図2に示す構成では、制御部60は、取得部62と、識別部64と、洗浄制御部66と、乾燥制御部68とを含んでいる。
【0023】
取得部62は、着座センサ10、操作部20、及び汚物センサ40からの情報を取得するためのユニットである。取得部62は、入力された情報に基づいて、例えば、識別部64、洗浄制御部66、及び乾燥制御部68の少なくとも1つに指示を出力する。
【0024】
識別部64は、主に、汚物センサ40からの入力に基づいて、汚物成分が除去されたか否かを識別するためのユニットである。識別部64は、汚物センサ40からの入力に基づいて、被洗浄領域から汚物成分が除去されたと認識した場合、その旨を出力部70に伝達する。或いは、識別部64は、被洗浄領域から汚物成分が除去されたと認識した場合、その旨を洗浄制御部66に伝達することもできる。
【0025】
汚物センサ40が水成分の検知もできる場合には、識別部64は、汚物センサ40によって水成分が除去されたか否かを識別するためのユニットとしても機能し得る。この場合、識別部64は、汚物センサ40からの入力に基づいて、被洗浄領域から水成分が除去されたと認識した場合、その旨を出力部70に伝達する。或いは、識別部64は、被洗浄領域から水成分が除去されたと認識した場合、その旨を乾燥制御部68に伝達することもできる。
【0026】
なお、識別部64による汚物成分及び/又は水成分が除去されたか否かの判断は、典型的には、所定の閾値を基準として行われる。この閾値は、各成分の特徴量ごとに、実験などにより、予め定めておくことができる。
【0027】
洗浄制御部66は、取得部62又は識別部64からの入力に基づいて、洗浄装置30を制御するためのユニットである。洗浄制御部66は、例えば、操作部20を構成している洗浄スイッチのON/OFFに基づいて、洗浄装置30を制御している。また、洗浄制御部66は、識別部64が被洗浄領域から汚物成分が除去されたと認識した場合に、洗浄装置30による洗浄水の噴出を自動的に停止できるように構成されていてもよい。なお、洗浄装置30の制御は、典型的には、上述したモータ及び流量制御弁の調節によって行われる。
【0028】
乾燥制御部68は、取得部62又は識別部64からの入力に基づいて、乾燥装置50を制御するためのユニットである。乾燥制御部68は、例えば、操作部20を構成している乾燥スイッチのON/OFFに基づいて、乾燥装置50を制御している。また、乾燥制御部68は、識別部64が被洗浄領域から水成分が除去されたと認識した場合に、乾燥装置50による被洗浄領域の乾燥を自動的に停止できるように構成されていてもよい。
【0029】
出力部70は、使用者への通知を出力するためのユニットである。出力部70は、制御部60の識別部64が被洗浄領域から汚物成分及び/又は水成分が除去されたと認識した場合に、その旨を使用者へ通知する。この通知の方法としては、例えば、音、光、振動、又はそれらの組合せを用いることが可能である。典型的には、出力部70は、ブザー音を発するように構成されている。
【0030】
本発明の一態様に係る温水洗浄便座を構成する各要素は、上述した機能を発揮できるかぎり、任意の場所に配置することができる。特に、汚物センサ40は、様々な箇所に設置することができる。
【0031】
図3Aは、
図1に示す温水洗浄便座の部分拡大図である。
図3Bは、本発明の変形例に係る温水洗浄便座の部分拡大図である。
図3Cは、本発明の他の変形例に係る温水洗浄便座の部分拡大図である。
【0032】
図3Aに示す構成では、上述した通り、汚物センサ40は、洗浄装置30と一体的に設置されている。この例では、汚物センサ40は、洗浄ノズルの先端部に配置されている。このような構成を採用すると、汚物センサ40が被洗浄領域の近傍に必然的に配置されるため、効率的に汚物成分及び/又は水成分の検知を行うことができる。
【0033】
図3Bに示す構成では、汚物センサ40は、洗浄装置30とは別体のノズル上に設置されている。このような構成を採用すると、洗浄装置30の位置と汚物センサ40の位置とを独立的に調節することができる。これにより、汚物センサ40による汚物成分及び/又は水成分の検知を、洗浄ノズルの動作によらず独立させることができる。
【0034】
図3Cに示す構成では、汚物センサ40は、温水洗浄便座の本体に設置されている。このような構成を採用すると、汚物センサ40が、洗浄ノズルの動作によらず独立して汚物成分及び/又は水成分を独立して検知できる。また、着座時から汚物成分を検知することも可能になる。それゆえ、このような構成を採用すると、比較的安定的に汚物成分及び/又は水成分の検知を行うことができる。
【0035】
次に、上述した温水洗浄便座を使用方法の一例について説明する。
図4Aは、従来の温水洗浄便座を使用する場合のフロー図である。
図4Bは、本発明の一態様に係る温水洗浄便座を使用する場合のフロー図である。
【0036】
図4Aに示す通り、従来の温水洗浄便座では、洗浄工程と乾燥工程との間に、紙で汚れを拭く、水分を取り除く、及び汚れを確認するという3つの動作が必要である。これらの動作は、先に説明した紙の3つの機能に対応している。
【0037】
これに対し、
図4Bに示す通り、本発明の一態様に係る温水洗浄便座では、洗浄工程において汚物センサを使用することにより、上述した3つの動作を省略することが可能となる。即ち、本発明の一態様に係る温水洗浄便座では、紙を用いる必要がない。これにより、先に説明した紙の使用に伴う不利益を解消することができる。
【0038】
図5は、
図4B中の洗浄工程の詳細の一例を示すフロー図である。
図5には、洗浄のON/OFFを使用者が操作する場合の流れを示している。まず、使用者によって洗浄スイッチがONされると、洗浄ノズルが延伸する。それと同時に又はその後に、汚物センサによる汚物成分の検知が開始される。次いで、洗浄ノズルから洗浄水が噴出される。その間、汚物センサによる汚物成分の検知は継続される。一定時間経過後、制御部によって汚物成分が除去されたと判断された場合、その旨が使用者に通知される。使用者は、その通知にしたがって、洗浄スイッチをOFFにする。このようにして、使用者の被洗浄領域の洗浄が完了する。
【0039】
図5の破線中には、任意の内部処理工程を示している。上述した通り、汚物センサは、典型的には、予め記憶させた汚物成分の特徴を検知するように構成されている。また、汚物センサによる汚物成分の検知又は汚物成分の有無の判定に関する情報は、暗号化した上で、製品中に保存できるようにしてもよい。更に、これらの暗号化された情報は、外部に取り出し可能な形で製品中に保存できるようにしてもよい。このような構成を採用すると、例えば、上記の情報を、使用者の健康管理や人工知能による汚物検知の学習などに用いることが可能となる。
【0040】
図6Aは、本発明の一態様に係る温水洗浄便座を使用した汚物検知の方法の一例を示すフローチャートである。
図6Aには、洗浄のON/OFFを使用者が操作する場合の流れを示している。
図6Aに示す通り、温水洗浄便座の制御部は、洗浄スイッチがONされたという入力を取得すると、汚物センサに対して、汚物成分の検知を開始させる命令を出力する。その後、洗浄スイッチがOFFされるまで、汚物成分の検知を継続する。汚物成分が除去されたと認識した場合、制御部は、出力部に対して、その旨を使用者に通知するよう命令する。この通知は、洗浄スイッチがOFFされるまで、複数回繰り返されてもよい。洗浄スイッチがOFFされると、汚物成分の検知及び使用者への通知は終了し、初期状態に戻る。このようにして、一連の洗浄プロセスが完了する。
【0041】
汚物センサは、典型的には、少なくとも、洗浄装置による洗浄水の噴出の開始がされてから、制御部による使用者への洗浄の完了の通知又は洗浄装置による洗浄水の噴出の停止がされるまで、汚物成分の検知を継続するように構成されている。このように、洗浄工程中に汚物成分の検知を継続する構成とすることにより、被洗浄領域の洗浄状況の時間変化を的確に監視することが可能となる。なお、ここで「継続する」とは、連続的及び非連続的な動作の双方を意味しており、例えば、断続的又は間欠的な動作も含まれる。例えば、汚物センサが温水洗浄便座における洗浄工程のタイムスケールと比較して充分に短い時間間隔で動作している場合には、その動作が「継続している」とみなすことができる。
【0042】
図5及び
図6Aでは、洗浄のON/OFFを使用者が操作する場合の流れについて説明したが、上述した通り、被洗浄領域から汚物成分が除去されたときに、洗浄装置による洗浄水の噴出を自動的に停止するような構成としてもよい。このような構成を採用すると、使用者が洗浄スイッチのOFFを手動で行う必要がなくなり、温水洗浄便座の使用性を向上させることができる。
【0043】
図6Bは、本発明の一態様に係る温水洗浄便座を使用した水検知の方法の一例を示すフローチャートである。
図6Bには、乾燥のON/OFFを使用者が操作する場合の流れを示している。
図6Bに示す通り、温水洗浄便座の制御部は、乾燥スイッチがONされたという入力を取得すると、汚物センサに対して、水成分の検知を開始させる命令を出力する。その後、乾燥スイッチがOFFされるまで、水成分の検知を継続する。水成分が除去されたと認識した場合、制御部は、出力部に対して、その旨を使用者に通知するよう命令する。この通知は、乾燥スイッチがOFFされるまで、複数回繰り返されてもよい。乾燥スイッチがOFFされると、水成分の検知及び使用者への通知は終了し、初期状態に戻る。このようにして、一連の乾燥プロセスが完了する。
【0044】
汚物センサが水成分の検知も可能である場合、汚物センサは、典型的には、少なくとも、乾燥装置による被洗浄領域の乾燥が開始されてから、制御部による使用者への乾燥の完了の通知又は乾燥装置による被洗浄領域の乾燥の停止がされるまで、水成分の検知を継続するように構成されている。このように、乾燥工程中に水成分の検知を継続する構成とすることにより、被洗浄領域の乾燥状況の時間変化を的確に監視することが可能となる。なお、先と同様に、ここで「継続する」とは、連続的及び非連続的な動作の双方を意味しており、例えば、断続的又は間欠的な動作も含まれる。例えば、汚物センサが温水洗浄便座における乾燥工程のタイムスケールと比較して充分に短い時間間隔で動作している場合には、その動作が「継続している」とみなすことができる。
【0045】
図6Bでは、乾燥のON/OFFを使用者が操作する場合の流れについて説明したが、上述した通り、被洗浄領域から水成分が除去されたときに、乾燥装置による被洗浄領域の乾燥を自動的に停止するような構成としてもよい。このような構成を採用すると、使用者が乾燥スイッチのOFFを手動で行う必要がなくなり、温水洗浄便座の使用性を向上させることができる。なお、被洗浄領域から汚物成分が除去されたときに、洗浄装置による洗浄水の噴出を自動的に停止するような構成を採用している場合、洗浄装置の停止と同時に、又は、その後に、乾燥装置が自動的に始動するような構成としてもよい。こうすると、乾燥スイッチのONの動作も省略することが可能となる。
【0046】
以上の通り、本発明の一態様によると、使用者の被洗浄領域に対して洗浄水を噴出することにより、前記被洗浄領域を洗浄することと、汚物センサを用いて被洗浄領域に付着した汚物成分又は被洗浄領域から滴り落ちる洗浄水中の汚物成分を検知することと、汚物センサからの入力に基づいて、被洗浄領域から汚物成分が除去されたと認識されたときに、洗浄の完了を使用者に通知するか、又は、被洗浄領域に対する洗浄水の噴出を自動的に停止することと、を含んだ汚物の洗浄方法が提供される。この方法は、汚物センサを用いて被洗浄領域に付着した水成分を検知することを更に含んでいてもよい。また、この方法は、乾燥装置を用いて被洗浄領域を乾燥させることと、汚物センサからの入力に基づいて、水成分が除去されたと認識されたときに、乾燥の完了を使用者に通知するか、又は、乾燥装置による被洗浄領域の乾燥を自動的に停止することと、を更に含んでいてもよい。このような方法を採用すれば、使用者が紙を使用しなくても、汚物を除去することが可能となる。