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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-161834(P2021-161834A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/04 20060101AFI20210913BHJP
【FI】
   E04H1/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-67545(P2020-67545)
(22)【出願日】2020年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】520119529
【氏名又は名称】株式会社マックスネット・コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 進
(57)【要約】
【課題】各のプライバシーを保ちつつ、各利用可能なスペースとして使用される部分を広く確保して、利用者に対して快適な空間を提供することが可能な建築物を提供することを目的とする。
【解決手段】集合住宅Rは、2階に設けられた住戸3及び住戸4と、1階に設けられた玄関と住戸3を結ぶ階段32と、1階に設けられた玄関と住戸4を結ぶ階段42とを備え、階段32と階段42が、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さで交差している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2階に設けられた第1住戸及び第2住戸と、
1階に設けられた第1出入口と前記第1住戸を結ぶ第1階段と、
1階に設けられた第2出入口と前記第2住戸を結ぶ第2階段と、
を備え、
前記第1階段と前記第2階段が、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さで交差している集合住宅。
【請求項2】
前記第1階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第1踊り場を有し、
前記第2階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第2踊り場を有し、
前記第1階段と前記第2階段が、同一の領域において重ねて設けられ、前記第1踊り場及び前記第2踊り場よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
前記第1出入口は、人が通行可能に前記第2踊り場の下方に設けられ、前記第2出入口は、人が通行可能に前記第1踊り場の下方に設けられる請求項2に記載の集合住宅。
【請求項4】
前記第1階段は、2階床の高さで前記第1住戸の前に設けられた第3踊り場を有し、
前記第2階段は、2階床の高さで前記第2住戸の前に設けられた第4踊り場を有し、
前記第1踊り場は、人が通行可能に前記第4踊り場の下方に設けられ、前記第2踊り場は、人が通行可能に前記第3踊り場の下方に設けられる請求項2又は3に記載の集合住宅。
【請求項5】
1階に設けられた少なくとも一つの第3住戸を更に備え、
前記第3住戸の室内には、1階床と1階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の集合住宅。
【請求項6】
前記第1住戸又は前記第2住戸の室内には、2階床と2階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の集合住宅。
【請求項7】
前記ロフトは、前記第1階段及び前記第2階段の上部に設けられた領域を有している請求項6に記載の集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物として、主に賃貸住宅として用いられる木造2階建て長屋がある。長屋は、二つ以上の住戸を1棟に建て連ねたもので、各住戸が壁を共通にし、それぞれ別々に外部への出入口を有している。また、木造2階建て長屋の場合、例えば、1階と2階とでは、異なる住戸が重層しており、1階に二つの住戸、2階に二つの住戸を設けて、1棟に四つの住戸が設けられ、4世帯が居住できる。
【0003】
また、木造2階建て長屋は、完全分離型二世帯住宅としても用いられる。例えば、1階に二つの住戸、2階に二つの住戸を設けて、1棟に四つの住戸が設けられる場合、それぞれ1階に親世帯が、2階に子世帯が居住するといった使われ方がある。
【0004】
なお、下記の特許文献1には、3階建て集合住宅の例であるが、各住戸のプライバシーを重視し、各住戸の側を他の住戸の居住者が通行することを防止するため、各住戸に至る入口及び通路を別個独立に設けて共用部分をなくした発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−145174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、都市では、限られた建築面積に建てられる集合住宅において、居住者に対して快適な空間を提供するため、居住スペースとして使用される部分をできるだけ広く確保することが求められている。
【0007】
長屋と異なり、二つ以上の住戸が階段、廊下、ホール等を共有している共同住宅では、居住者等が共用スペースを通行することから、各住戸のプライバシーが保たれにくい。これに対し、特許文献1でも記載されているとおり、各住戸それぞれが1階に専用玄関(出入口)を有し、2階以上の住戸がそれぞれ専用階段を有している集合住宅を建築することが考えられる。
【0008】
しかし、このような長屋形式の集合住宅では、1階よりも上階の住戸のための階段は、住戸の数だけ設けられる必要があり、それぞれの階段は別の位置に設けられていた。例えば、1階に二つの住戸、2階に二つの住戸が設けられる場合、四つの玄関と二つの階段が設けられ、その二つの階段は一つの敷地内で別々の領域に設けられていた。
【0009】
そのため、各住戸のプライバシーが保たれるものの、建築面積に対して階段が占有する割合が高くなり、各住戸で居住スペースとして使用される部分が相対的に低減している。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、各住戸のプライバシーを保ちつつ、各住戸で居住スペースとして使用される部分を広く確保して、居住者に対して快適な空間を提供することが可能な集合住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の集合住宅は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る集合住宅は、2階に設けられた第1住戸及び第2住戸と、1階に設けられた第1出入口と前記第1住戸を結ぶ第1階段と、1階に設けられた第2出入口と前記第2住戸を結ぶ第2階段とを備え、前記第1階段と前記第2階段が、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さで交差している。
【0012】
この構成によれば、第1住戸及び第2住戸が2階に設けられており、1階の第1出入口と第1住戸を結ぶ第1階段、及び、1階の第2出入口と第2住戸を結ぶ第2階段が設けられている。第1階段と第2階段は、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さで交差している。
【0013】
これにより、第1住戸の居住者は第1階段を使用し、第2住戸の居住者は第2階段を使用して、それぞれの住戸を出入りでき、住戸のプライバシーが保たれる。また、第1階段と第2階段は一つの敷地内で離れた領域に設けられるのではなく、隣接して設けられ、かつ、1階床と2階床の間の高さで交差している。これにより、1階の第1出入口と第2出入口も離れた位置となり、住戸のプライバシーが保たれやすい。
【0014】
上述した本発明に係る集合住宅において、前記第1階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第1踊り場を有し、前記第2階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第2踊り場を有し、前記第1階段と前記第2階段が、同一の領域において重ねて設けられ、前記第1踊り場及び前記第2踊り場よりも低い位置と高い位置の2か所で交差してもよい。
【0015】
この構成によれば、第1階段と第2階段は、それぞれ第1踊り場と第2踊り場を有し、第1踊り場と第2踊り場は、それぞれ1階床と2階床の間の高さで階段方向が180度方向転換する。また、第1階段と第2階段は、同一の領域において重ねて設けられ、第1踊り場及び第2踊り場よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している。
【0016】
これにより、第1住戸の居住者は第1階段を使用し、第2住戸の居住者は第2階段を使用して、それぞれの住戸を出入りでき、住戸のプライバシーが保たれる。また、第1階段と第2階段は一つの敷地内で別々の領域に設けられるのではなく、同一の領域に設けられることから、建築面積に対して階段が占有する割合が低くなり、各住戸で居住スペースとして使用される部分が相対的に増加する。その結果、各住戸で居住スペースとして使用される部分を広く確保でき、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【0017】
上述した本発明に係る集合住宅において、前記第1出入口は、人が通行可能に前記第2踊り場の下方に設けられ、前記第2出入口は、人が通行可能に前記第1踊り場の下方に設けられてもよい。
【0018】
この構成によれば、第2踊り場の下方に第1出入口が設けられ、第1出入口を通過する居住者は第2踊り場の下の空間を通過する。反対に、第1踊り場の下方に第2出入口が設けられ、第2出入口を通過する居住者は第1踊り場の下の空間を通過する。第1踊り場と第2踊り場の高さ位置は、それぞれ下の第1出入口と第2出入口の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0019】
上述した本発明に係る集合住宅において、前記第1階段は、2階床の高さで前記第1住戸の前に設けられた第3踊り場を有し、前記第2階段は、2階床の高さで前記第2住戸の前に設けられた第4踊り場を有し、前記第1踊り場は、人が通行可能に前記第4踊り場の下方に設けられ、前記第2踊り場は、人が通行可能に前記第3踊り場の下方に設けられてもよい。
【0020】
この構成によれば、2階床の高さで第2住戸の前に設けられた第4踊り場の下方に第1踊り場が設けられ、第1踊り場を通過する居住者は第4踊り場の下の空間を通過する。反対に、2階床の高さで第1住戸の前に設けられた第3踊り場の下方に第2踊り場が設けられ、第2踊り場を通過する居住者は第3踊り場の下の空間を通過する。第3踊り場と第4踊り場の高さ位置(2階床の高さ)は、それぞれ下の第1踊り場と第2踊り場の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0021】
上述した本発明に係る集合住宅において、1階に設けられた少なくとも一つの第3住戸を更に備え、前記第3住戸の室内には、1階床と1階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されてもよい。
【0022】
この構成によれば、少なくとも一つの、例えば二つの第3住戸が1階に設けられており、1階の第3住戸の室内には、ロフトが設けられつつ、ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている。ロフトは、1階床と1階天井の間の高さに設けられる。これにより、1階の住戸で居住スペースとして使用される部分を広く確保でき、また、吹き抜け空間によって天井高の高い開放性のある居室となることから、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【0023】
上述した本発明に係る集合住宅において、前記第1住戸又は前記第2住戸の室内には、2階床と2階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されてもよい。
【0024】
この構成によれば、2階の第1住戸又は第2住戸の室内には、ロフトが設けられつつ、ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている。ロフトは、2階床と2階天井の間の高さに設けられる。これにより、2階の住戸で居住スペースとして使用される部分を広く確保でき、また、吹き抜け空間によって天井高の高い開放性のある居室となることから、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、各住戸のプライバシーを保ちつつ、各住戸で居住スペースとして使用される部分を広く確保して、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る集合住宅の階段を示す概略斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る集合住宅の1階を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る集合住宅の1階のロフト部分を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る集合住宅の2階を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る集合住宅の2階のロフト部分を示す平面図である。
図6図2図5のA−A’線で切断した縦断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る集合住宅の階段を示す縦断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第1変形例の1階のロフト部分を示す平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第1変形例の2階のロフト部分を示す平面図である。
図10図8及び図9のA−A’線で切断した縦断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第1変形例を模式的に示す縦断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第2変形例を模式的に示す縦断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第3変形例を模式的に示す縦断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第4変形例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態に係る集合住宅Rについて、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る集合住宅Rは、図2図7に示すように、1階の住戸1及び住戸2と、2階の住戸3及び住戸4を備える1棟の建築物である。住戸1及び住戸2は隣接しており、住戸3及び住戸4は隣接している。また、1階の住戸1の上に2階の住戸3が位置して、住戸1及び住戸3が重層しており、1回の住戸2の上に2階の住戸4が位置して、住戸2及び住戸4が重層している。住戸1,2は、第3住戸の一例であり、住戸3は、第1住戸の一例であり、住戸4は、第2住戸の一例である。
【0028】
各住戸1〜4の室内には、居住に必要な水廻り(例えば流し台、風呂、トイレ)などが設けられている。住戸1〜4には、それぞれ玄関11,21,31,41が1階に設けられる。
【0029】
集合住宅Rは、例えば、木造2階建て長屋であり、各住戸1〜4は賃貸、分譲のいずれでもよい。また、集合住宅Rは、完全分離型二世帯住宅としても用いられてもよい。例えば、1階の住戸1に親世帯が、2階の住戸3に子世帯が居住するといった使われ方がある。
【0030】
図1図2図4及び図7に示すように、2階の住戸3には、1階の玄関31と住戸3を結ぶ階段32が設けられ、2階の住戸4には、1階の玄関41と住戸4を結ぶ階段42が設けられている。玄関31は、第1出入口の一例であり、階段32は、第1階段の一例である。また、玄関41は、第2出入口の一例であり、階段42は、第2階段の一例である。
【0031】
階段32は、1階床と2階床の間の高さで設けられた踊り場33と、2階床の高さで住戸3の前に設けられた踊り場34を有する。また、階段42は、1階床と2階床の間の高さで設けられた踊り場43と、2階床の高さで住戸4の前に設けられた踊り場44を有する。
【0032】
図1及び図7に示すように、1階床と2階床の間の高さの踊り場33,43は、階段方向が180度方向転換するように設けられている。
【0033】
階段32と階段42は、隣接して設けられる。また、階段32と階段42は、同一の領域において重ねて設けられ、踊り場33,43よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している。すなわち、図7に示すように、階段32と階段42は、横方向から見ると、2箇所でX字状に交差する。
【0034】
図2及び図7に示すように、住戸3のための玄関31は、人が通行可能に階段42の踊り場43の下方に設けられる。玄関31を通過する居住者等は踊り場43の下の空間を通過する。また、住戸4のための玄関41は、人が通行可能に階段32の踊り場33の下方に設けられる。玄関41を通過する居住者等は踊り場33の下の空間を通過する。このように踊り場33,43の高さ位置は、人の背丈よりも高く、それぞれ下の玄関41,31の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0035】
踊り場33,43の下方の空間は、人が通行可能であるから、1階床から踊り場43,33までの階段32,42の下部も天井高の高い空間となっており、図2及び図7に示すように、例えば下駄箱(SIC)などの収納スペースとして活用できる。
【0036】
階段32の中間に設けられた踊り場33は、人が通行可能に階段42の2階床の高さに設けられた踊り場44の下方に設けられる。踊り場33を通過する居住者等は踊り場44の下の空間を通過する。また、階段42の中間に設けられた踊り場43は、人が通行可能に階段32の2階床の高さに設けられた踊り場34の下方に設けられる。踊り場43を通過する居住者等は踊り場34の下の空間を通過する。このように踊り場34,44の高さ位置は、2階床の高さであって、それぞれ下の踊り場43,33の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0037】
2階床高さの踊り場34,44の下方の空間は、人が通行可能であるから、2階床高さの踊り場34,44は、平面視したとき中間高さの踊り場33,43と重複するように設置されることができる。例えば、図4に示すように、住戸3,4の2階の出入口を階段32,42の目の前ではなく、集合住宅Rの外壁近傍に設けることができる。また、住戸4の場合、天井高の高い踊り場44が広く、2階の出入口の脇のスペースを有効利用できる。
【0038】
上述したとおり、階段32,42は、それぞれ住戸3,4のための専用の階段である。したがって、住戸3の居住者等は階段32を使用し、住戸4の居住者等は階段42を使用して、それぞれの住戸3,4を出入りでき、住戸3,4のプライバシーが保たれる。階段32と階段42は隣接しかつ交差していることから、玄関31と玄関41も離れた位置となり、住戸のプライバシーが保たれやすい。
【0039】
また、階段32と階段42は、同一の領域において重ねて設けられ、踊り場33,43よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している。すなわち、住戸3,4のための専用の階段が、一つの敷地内で別々の領域に設けられるのではなく、階段32,42が同一の領域で効率的に設けられている。したがって、建築面積に対して階段が占有する割合が低くなり、各住戸1〜4で居住スペースとして使用される部分が相対的に増加する。その結果、各住戸1〜4で居住スペースとして使用される部分を広く確保でき、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【0040】
また、図3図5及び図6に示すように、各住戸1〜4の室内には、ロフト15,25,35,45が設けられ、さらに、ロフト15,25,35,45とは別の領域に吹き抜け空間16,26,36,46が形成されている。1階の住戸1,2の室内のロフト15,25は、1階床と1階天井の間の高さに設けられる。2階の住戸3,4の室内のロフト35,45は、2階床と2階天井の高さの間の高さに設けられる。
【0041】
これにより、各住戸1〜4で居住スペースとして使用される部分を広く確保でき、また、吹き抜け空間16,26,36,46によって天井高の高い開放性のある居室となることから、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【0042】
本実施形態に係る集合住宅Rでは、上述したとおり、階段32,42の中間に設けられた踊り場33,43の高さ位置は、人の背丈よりも高く、それぞれ下の玄関41,31の空間で人が通行可能な高さに設定されている。また、2階床の高さに設けられた踊り場34,44の高さ位置は、それぞれ下の踊り場43,33の空間で人が通行可能な高さに設定されている。したがって、2階床高さが例えば約4,600mm、1階天井高さが例えば約3,700mmとなる。集合住宅Rに対して階段32,42が設けられると、少なくとも1階の住戸1,2において天井高が高い居室が得られ、ロフト15,25及び吹き抜け空間16,26を設けることができる。
【0043】
なお、各住戸1〜4に設けられるロフトと吹き抜け空間の形状や配置位置は、上述した例に限定されない。例えば図8及び図9に示すように、各住戸1〜4の吹き抜け空間18,28,38,48は、図3で示した吹き抜け空間16,26や、図5で示した吹き抜け空間36,46よりも広くしてもよい。この場合、図8に示すように、1階の住戸1,2のロフト17,27は、図3で示したロフト15,25よりも狭くなる。他方、図9図10及び図11に示すように、2階の住戸3,4のロフト37,47は、階段32,42の上部に設けることができ、ロフト37,47の面積を広く確保できる。住戸3,4の2階の出入口の前の空間は、人が通行できる高さが必要であることから(図4参照)、住戸3,4のロフト37,47の高さが十分に高い位置に設けられ、かつ、ロフト37,47が階段32,42の上部に設けられる。
【0044】
また、上述した実施形態では、2階建て長屋の集合住宅Rの例を示したが、本発明はこの例に限定されず、階数や用途を問わない。例えば、図12に示すように、3階建ての集合住宅Rでもよく、本発明は3階建て以上の集合住宅にも適用可能である。この場合、集合住宅Rは、上述した例に追加して、3階の住戸5及び住戸6を備える。また、本発明は、3階建て以上の集合住宅の場合、用途が長屋である場合に限定されず、用途が共同住宅でもよい。
【0045】
以下、図12を参照して、3階建て共同住宅の集合住宅Rについて説明する。この場合、1階の玄関31と2階の住戸3を結ぶ階段32の延長上に、3階の住戸5にアクセス可能なように、階段32が設けられる。2階の住戸3及び3階の住戸5には、1階の玄関31と住戸3及び住戸5を結ぶ階段32が設けられる。住戸3の2階の出入口の前と、住戸5の3階の出入口の前を結ぶ階段32は、2階床と3階床の間の高さで設けられた踊り場53と、3階床の高さで住戸5の前に設けられた踊り場54を有する。
【0046】
また、1階の玄関41と2階の住戸4を結ぶ階段42の延長上に、3階の住戸6にアクセス可能なように、階段42が設けられる。2階の住戸4及び3階の住戸6には、1階の玄関41と住戸4及び住戸6を結ぶ階段42が設けられている。住戸4の2階の出入口の前と、住戸6の3階の出入口の前を結ぶ階段42は、2階床と3階床の間の高さで設けられた踊り場63と、3階床の高さで住戸6の前に設けられた踊り場64を有する。
【0047】
上述した図12に示す例では、住戸3の2階の出入口の前に踊り場34が設けられ、住戸4の2階の出入口の前に踊り場44が設けられる。したがって、2階の住戸3又は住戸4へアクセスする人と3階の住戸5又は住戸6へアクセスする人は、玄関31又は玄関41から2階部分まで、階段32又は階段42をそれぞれ共有することになる。したがって、図12に示す集合住宅Rの用途は、共同住宅である。
【0048】
これに対し、図13に示すように、3階建て共同住宅の集合住宅Rには、2方向階段が設けられてもよく、これにより、集合住宅R内における共有部分を減らすことができる。すなわち、階段32,42は、図13に示すように、踊り場の位置を2階の床高さとは異なる位置にずらすようにして設けられてもよい。図13に示す例では、踊り場33,43は、1階床高さと2階床高さのちょうど中間の高さよりも高い位置に設けられる。2階の住戸4及び3階の住戸6には、1階の玄関31と住戸4及び住戸6を結ぶ階段32が設けられ、2階の住戸3及び3階の住戸5には、1階の玄関41と住戸3及び住戸5を結ぶ階段42が設けられている。ここで、住戸4は、第1住戸の一例であり、住戸3は、第2住戸の一例である。
【0049】
そして、踊り場33と住戸6の3階の出入口の前を結ぶ階段32は、2階床と3階床の間の高さで設けられた踊り場55と、3階床の高さで住戸6の前に設けられた踊り場56を有する。また、踊り場43と住戸5の3階の出入口の前を結ぶ階段42は、2階床と3階床の間の高さで設けられた踊り場65と、3階床の高さで住戸5の前に設けられた踊り場66を有する。この場合、踊り場33と住戸4の2階の出入口の前は、階段71で結ばれ、踊り場43と住戸3の2階の出入口の前は、階段72で結ばれる。
【0050】
図13に示す例では、図12に示す例に比べて、階段32,42の踊り場の数が減少する。また、2階の住戸3又は住戸4へアクセスする人と3階の住戸5又は住戸6へアクセスする人が共有する部分は、玄関31又は玄関41から踊り場33又は踊り場43の間のみであり、両者が共有する部分を減らすことができ、プライバシーがより保たれやすくなる。
【0051】
なお、3階建て以上の集合住宅の場合、共同住宅とせずに、プライバシーを完全に確保するために長屋とするには、階段32,42以外に、中間階(3階建ての場合は2階)専用にアクセスする別の階段を設ければよい。この場合、1階の玄関と2階の住戸の2階の出入口を結ぶ階段と、1階の玄関と3階の住戸の3階の出入口を結ぶ階段が設けられる。
【0052】
3階建て長屋の集合住宅Rでは、図12又は図13に示した共同住宅の場合と比べて、階段を多く設ける必要がある。しかし、従来の形式の3階建て長屋で、計12戸(各階4戸)を有する場合では、各住戸専用の階段を設けると、8箇所に階段を設ける必要があった。これに対し、本発明では、2階以上の住戸2戸に対して階段が1箇所設けられればよい。したがって、2階の住戸4戸に対して階段が2箇所設けられ、3階の住戸4戸に対して階段が2箇所設けられ、合計4か所の階段が設けられればよい。
【0053】
また、図14に示す2階建て長屋の集合住宅Rの例では、1階床と2階床の間で踊り場が設置されずに、階段32と階段42が設けられる。2階の住戸4には、1階の玄関31と住戸4を結ぶ階段32が設けられ、2階の住戸3には、1階の玄関41と住戸3を結ぶ階段42が設けられている。階段32と階段42は、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さ、すなわち、2階床高さよりも低い位置の1か所で交差している。すなわち、図14に示すように、階段32と階段42は、横方向から見ると、1箇所でX字状に交差する。ここで、住戸4は、第1住戸の一例であり、住戸3は、第2住戸の一例である。
【0054】
これにより、住戸4の居住者は階段32を使用し、住戸3の居住者は階段42を使用して、それぞれの住戸を出入りでき、住戸のプライバシーが保たれる。また、階段32と階段42は交差していることから、玄関31と玄関41も離れた位置となり、住戸のプライバシーが保たれやすい。住戸3のための玄関41は、人が通行可能に階段32の下方に設けられる。玄関41を通過する居住者等は階段32の下の空間を通過する。このように2階の住戸4近傍での階段32の高さ位置は、人の背丈よりも高く、下の玄関41の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0055】
住戸3,4の2階の出入口の下方の空間は、人が通行可能であるから、1階床から2階床までの階段32,42の下部も天井高の高い空間となっており、例えば下駄箱(SIC)などの収納スペースとして活用できる。
【0056】
なお、上述した実施形態では、踊り場に段がない場合について図示して説明したが、本発明は、この例に限定されない。すなわち、本発明の階段の踊り場において段が設けられてもよい。これにより、各住戸の階高が踊り場に設けた段の高さ分調整される。
【符号の説明】
【0057】
1,2 :住戸(第3住戸)
3 :住戸(第2住戸,第1住戸)
4 :住戸(第1住戸,第2住戸)
5,6 :住戸
11 :玄関
15,17 :ロフト
16,18 :吹き抜け空間
21 :玄関
25,27 :ロフト
26,28 :吹き抜け空間
31 :玄関(第1出入口)
32 :階段(第1階段)
33 :踊り場(第1踊り場)
34 :踊り場(第3踊り場)
35,37 :ロフト
36,38 :吹き抜け空間
41 :玄関(第2出入口)
42 :階段(第2階段)
43 :踊り場(第2踊り場)
44 :踊り場(第4踊り場)
45,47 :ロフト
46,48 :吹き抜け空間
53,54,55,56,63,64,65,66 :踊り場
71,72 :階段
R :集合住宅

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2020年12月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2階に設けられた第1及び第2と、
1階に設けられた第1出入口と前記第1を結ぶ第1階段と、
1階に設けられた第2出入口と前記第2を結ぶ第2階段と、
を備え、
前記第1階段と前記第2階段が、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さで交差している建築物
【請求項2】
前記第1階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第1踊り場を有し、
前記第2階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第2踊り場を有し、
前記第1階段と前記第2階段が、同一の領域において重ねて設けられ、前記第1踊り場及び前記第2踊り場よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している請求項1に記載の建築物
【請求項3】
前記第1出入口は、人が通行可能に前記第2踊り場の下方に設けられ、前記第2出入口は、人が通行可能に前記第1踊り場の下方に設けられる請求項2に記載の建築物
【請求項4】
前記第1階段は、2階床の高さで前記第1の前に設けられた第3踊り場を有し、
前記第2階段は、2階床の高さで前記第2の前に設けられた第4踊り場を有し、
前記第1踊り場は、人が通行可能に前記第4踊り場の下方に設けられ、前記第2踊り場は、人が通行可能に前記第3踊り場の下方に設けられる請求項2又は3に記載の建築物
【請求項5】
1階に設けられた少なくとも一つの第3を更に備え、
前記第3の室内には、1階床と1階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の建築物
【請求項6】
前記第1又は前記第2の室内には、2階床と2階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の建築物
【請求項7】
前記ロフトは、前記第1階段及び前記第2階段の上部に設けられた領域を有している請求項6に記載の建築物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差する階段を備える建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物として、主に賃貸住宅として用いられる木造2階建て長屋がある。長屋は、二つ以上の住戸を1棟に建て連ねたもので、各住戸が壁を共通にし、それぞれ別々に外部への出入口を有している。また、木造2階建て長屋の場合、例えば、1階と2階とでは、異なる住戸が重層しており、1階に二つの住戸、2階に二つの住戸を設けて、1棟に四つの住戸が設けられ、4世帯が居住できる。
【0003】
また、木造2階建て長屋は、完全分離型二世帯住宅としても用いられる。例えば、1階に二つの住戸、2階に二つの住戸を設けて、1棟に四つの住戸が設けられる場合、それぞれ1階に親世帯が、2階に子世帯が居住するといった使われ方がある。
【0004】
なお、下記の特許文献1には、3階建て集合住宅の例であるが、各住戸のプライバシーを重視し、各住戸の側を他の住戸の居住者が通行することを防止するため、各住戸に至る入口及び通路を別個独立に設けて共用部分をなくした発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−145174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、都市では、限られた建築面積に建てられる集合住宅において、居住者に対して快適な空間を提供するため、居住スペースとして使用される部分をできるだけ広く確保することが求められている。
【0007】
長屋と異なり、二つ以上の住戸が階段、廊下、ホール等を共有している共同住宅では、居住者等が共用スペースを通行することから、各住戸のプライバシーが保たれにくい。これに対し、特許文献1でも記載されているとおり、各住戸それぞれが1階に専用玄関(出入口)を有し、2階以上の住戸がそれぞれ専用階段を有している集合住宅を建築することが考えられる。
【0008】
しかし、このような長屋形式の集合住宅では、1階よりも上階の住戸のための階段は、住戸の数だけ設けられる必要があり、それぞれの階段は別の位置に設けられていた。例えば、1階に二つの住戸、2階に二つの住戸が設けられる場合、四つの玄関と二つの階段が設けられ、その二つの階段は一つの敷地内で別々の領域に設けられていた。
【0009】
そのため、各住戸(室)のプライバシーが保たれるものの、建築面積に対して階段が占有する割合が高くなり、各住戸(室)で居住スペース又は利用可能なスペースとして使用される部分が相対的に低減している。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、各のプライバシーを保ちつつ、各利用可能なスペースとして使用される部分を広く確保して、利用者に対して快適な空間を提供することが可能な建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の建築物は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る建築物は、2階に設けられた第1及び第2と、1階に設けられた第1出入口と前記第1を結ぶ第1階段と、1階に設けられた第2出入口と前記第2を結ぶ第2階段とを備え、前記第1階段と前記第2階段が、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さで交差している。
【0012】
この構成によれば、第1及び第2が2階に設けられており、1階の第1出入口と第1を結ぶ第1階段、及び、1階の第2出入口と第2を結ぶ第2階段が設けられている。第1階段と第2階段は、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さで交差している。
【0013】
これにより、第1利用者は第1階段を使用し、第2利用者は第2階段を使用して、それぞれのを出入りでき、各室のプライバシーが保たれる。また、第1階段と第2階段は一つの敷地内で離れた領域に設けられるのではなく、隣接して設けられ、かつ、1階床と2階床の間の高さで交差している。これにより、1階の第1出入口と第2出入口も離れた位置となり、各室のプライバシーが保たれやすい。
【0014】
上述した本発明に係る建築物において、前記第1階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第1踊り場を有し、前記第2階段は、1階床と2階床の間の高さに設けられた階段方向を180度方向転換する第2踊り場を有し、前記第1階段と前記第2階段が、同一の領域において重ねて設けられ、前記第1踊り場及び前記第2踊り場よりも低い位置と高い位置の2か所で交差してもよい。
【0015】
この構成によれば、第1階段と第2階段は、それぞれ第1踊り場と第2踊り場を有し、第1踊り場と第2踊り場は、それぞれ1階床と2階床の間の高さで階段方向が180度方向転換する。また、第1階段と第2階段は、同一の領域において重ねて設けられ、第1踊り場及び第2踊り場よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している。
【0016】
これにより、第1利用者(例えば居住者は第1階段を使用し、第2利用者(例えば居住者は第2階段を使用して、それぞれのを出入りでき、各室のプライバシーが保たれる。また、第1階段と第2階段は一つの敷地内で別々の領域に設けられるのではなく、同一の領域に設けられることから、建築面積に対して階段が占有する割合が低くなり、各利用可能なスペース(例えば居住スペースとして使用される部分が相対的に増加する。その結果、各利用可能なスペースとして使用される部分を広く確保でき、利用者に対して快適な空間を提供することができる。
【0017】
上述した本発明に係る建築物において、前記第1出入口は、人が通行可能に前記第2踊り場の下方に設けられ、前記第2出入口は、人が通行可能に前記第1踊り場の下方に設けられてもよい。
【0018】
この構成によれば、第2踊り場の下方に第1出入口が設けられ、第1出入口を通過する利用者は第2踊り場の下の空間を通過する。反対に、第1踊り場の下方に第2出入口が設けられ、第2出入口を通過する利用者は第1踊り場の下の空間を通過する。第1踊り場と第2踊り場の高さ位置は、それぞれ下の第1出入口と第2出入口の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0019】
上述した本発明に係る建築物において、前記第1階段は、2階床の高さで前記第1の前に設けられた第3踊り場を有し、前記第2階段は、2階床の高さで前記第2の前に設けられた第4踊り場を有し、前記第1踊り場は、人が通行可能に前記第4踊り場の下方に設けられ、前記第2踊り場は、人が通行可能に前記第3踊り場の下方に設けられてもよい。
【0020】
この構成によれば、2階床の高さで第2の前に設けられた第4踊り場の下方に第1踊り場が設けられ、第1踊り場を通過する利用者は第4踊り場の下の空間を通過する。反対に、2階床の高さで第1の前に設けられた第3踊り場の下方に第2踊り場が設けられ、第2踊り場を通過する利用者は第3踊り場の下の空間を通過する。第3踊り場と第4踊り場の高さ位置(2階床の高さ)は、それぞれ下の第1踊り場と第2踊り場の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0021】
上述した本発明に係る建築物において、1階に設けられた少なくとも一つの第3を更に備え、前記第3の室内には、1階床と1階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されてもよい。
【0022】
この構成によれば、少なくとも一つの、例えば二つの第3が1階に設けられており、1階の第3の室内には、ロフトが設けられつつ、ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている。ロフトは、1階床と1階天井の間の高さに設けられる。これにより、1階の利用可能なスペースとして使用される部分を広く確保でき、また、吹き抜け空間によって天井高の高い開放性のある居室となることから、利用者に対して快適な空間を提供することができる。
【0023】
上述した本発明に係る建築物において、前記第1又は前記第2の室内には、2階床と2階天井の間の高さにロフトが設けられ、前記ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されてもよい。
【0024】
この構成によれば、2階の第1又は第2の室内には、ロフトが設けられつつ、ロフトとは別の領域に吹き抜け空間が形成されている。ロフトは、2階床と2階天井の間の高さに設けられる。これにより、2階の利用可能なスペースとして使用される部分を広く確保でき、また、吹き抜け空間によって天井高の高い開放性のある居室となることから、利用者に対して快適な空間を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、各のプライバシーを保ちつつ、各利用可能なスペースとして使用される部分を広く確保して、利用者に対して快適な空間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る集合住宅の階段を示す概略斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る集合住宅の1階を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る集合住宅の1階のロフト部分を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る集合住宅の2階を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る集合住宅の2階のロフト部分を示す平面図である。
図6図2図5のA−A’線で切断した縦断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る集合住宅の階段を示す縦断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第1変形例の1階のロフト部分を示す平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第1変形例の2階のロフト部分を示す平面図である。
図10図8及び図9のA−A’線で切断した縦断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第1変形例を模式的に示す縦断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第2変形例を模式的に示す縦断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第3変形例を模式的に示す縦断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る集合住宅の第4変形例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態に係る集合住宅Rについて、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る集合住宅Rは、図2図7に示すように、1階の住戸1及び住戸2と、2階の住戸3及び住戸4を備える1棟の建築物である。住戸1及び住戸2は隣接しており、住戸3及び住戸4は隣接している。また、1階の住戸1の上に2階の住戸3が位置して、住戸1及び住戸3が重層しており、1回の住戸2の上に2階の住戸4が位置して、住戸2及び住戸4が重層している。住戸1,2は、第3の一例であり、住戸3は、第1の一例であり、住戸4は、第2の一例である。
【0028】
各住戸1〜4の室内には、居住に必要な水廻り(例えば流し台、風呂、トイレ)などが設けられている。住戸1〜4には、それぞれ玄関11,21,31,41が1階に設けられる。
【0029】
集合住宅Rは、例えば、木造2階建て長屋であり、各住戸1〜4は賃貸、分譲のいずれでもよい。また、集合住宅Rは、完全分離型二世帯住宅としても用いられてもよい。例えば、1階の住戸1に親世帯が、2階の住戸3に子世帯が居住するといった使われ方がある。
【0030】
図1図2図4及び図7に示すように、2階の住戸3には、1階の玄関31と住戸3を結ぶ階段32が設けられ、2階の住戸4には、1階の玄関41と住戸4を結ぶ階段42が設けられている。玄関31は、第1出入口の一例であり、階段32は、第1階段の一例である。また、玄関41は、第2出入口の一例であり、階段42は、第2階段の一例である。
【0031】
階段32は、1階床と2階床の間の高さで設けられた中2階踊り場33と、2階床の高さで住戸3の前に設けられた2階床踊り場34を有する。また、階段42は、1階床と2階床の間の高さで設けられた中2階踊り場43と、2階床の高さで住戸4の前に設けられた2階床踊り場44を有する。
【0032】
図1及び図7に示すように、1階床と2階床の間の高さの中2階踊り場33,43は、階段方向が180度方向転換するように設けられている。
【0033】
階段32と階段42は、隣接して設けられる。また、階段32と階段42は、同一の領域において重ねて設けられ、中2階踊り場33,43よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している。すなわち、図7に示すように、階段32と階段42は、横方向から見ると、2箇所でX字状に交差する。
【0034】
図2及び図7に示すように、住戸3のための玄関31は、人が通行可能に階段42の中2階踊り場43の下方に設けられる。玄関31を通過する居住者等は中2階踊り場43の下の空間を通過する。また、住戸4のための玄関41は、人が通行可能に階段32の中2階踊り場33の下方に設けられる。玄関41を通過する居住者等は中2階踊り場33の下の空間を通過する。このように中2階踊り場33,43の高さ位置は、人の背丈よりも高く、それぞれ下の玄関41,31の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0035】
中2階踊り場33,43の下方の空間は、人が通行可能であるから、1階床から中2階踊り場43,33までの階段32,42の下部も天井高の高い空間となっており、図2及び図7に示すように、例えば下駄箱(SIC)などの収納スペースとして活用できる。
【0036】
階段32の中間に設けられた中2階踊り場33は、人が通行可能に階段42の2階床の高さに設けられた2階床踊り場44の下方に設けられる。中2階踊り場33を通過する居住者等は2階床踊り場44の下の空間を通過する。また、階段42の中間に設けられた中2階踊り場43は、人が通行可能に階段32の2階床の高さに設けられた2階床踊り場34の下方に設けられる。中2階踊り場43を通過する居住者等は2階床踊り場34の下の空間を通過する。このように2階床踊り場34,44の高さ位置は、2階床の高さであって、それぞれ下の中2階踊り場43,33の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0037】
2階床高さの2階床踊り場34,44の下方の空間は、人が通行可能であるから、2階床高さの2階床踊り場34,44は、平面視したとき中間高さの中2階踊り場33,43と重複するように設置されることができる。例えば、図4に示すように、住戸3,4の2階の出入口を階段32,42の目の前ではなく、集合住宅Rの外壁近傍に設けることができる。また、住戸4の場合、天井高の高い2階床踊り場44が広く、2階の出入口の脇のスペースを有効利用できる。
【0038】
上述したとおり、階段32,42は、それぞれ住戸3,4のための専用の階段である。したがって、住戸3の居住者等は階段32を使用し、住戸4の居住者等は階段42を使用して、それぞれの住戸3,4を出入りでき、住戸3,4のプライバシーが保たれる。階段32と階段42は隣接しかつ交差していることから、玄関31と玄関41も離れた位置となり、住戸のプライバシーが保たれやすい。
【0039】
また、階段32と階段42は、同一の領域において重ねて設けられ、中2階踊り場33,43よりも低い位置と高い位置の2か所で交差している。すなわち、住戸3,4のための専用の階段が、一つの敷地内で別々の領域に設けられるのではなく、階段32,42が同一の領域で効率的に設けられている。したがって、建築面積に対して階段が占有する割合が低くなり、各住戸1〜4で居住スペースとして使用される部分が相対的に増加する。その結果、各住戸1〜4で居住スペースとして使用される部分を広く確保でき、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【0040】
また、図3図5及び図6に示すように、各住戸1〜4の室内には、ロフト15,25,35,45が設けられ、さらに、ロフト15,25,35,45とは別の領域に吹き抜け空間16,26,36,46が形成されている。1階の住戸1,2の室内のロフト15,25は、1階床と1階天井の間の高さに設けられる。2階の住戸3,4の室内のロフト35,45は、2階床と2階天井の高さの間の高さに設けられる。
【0041】
これにより、各住戸1〜4で居住スペースとして使用される部分を広く確保でき、また、吹き抜け空間16,26,36,46によって天井高の高い開放性のある居室となることから、居住者に対して快適な空間を提供することができる。
【0042】
本実施形態に係る集合住宅Rでは、上述したとおり、階段32,42の中間に設けられた中2階踊り場33,43の高さ位置は、人の背丈よりも高く、それぞれ下の玄関41,31の空間で人が通行可能な高さに設定されている。また、2階床の高さに設けられた2階床踊り場34,44の高さ位置は、それぞれ下の中2階踊り場43,33の空間で人が通行可能な高さに設定されている。したがって、2階床高さが例えば約4,600mm、1階天井高さが例えば約3,700mmとなる。集合住宅Rに対して階段32,42が設けられると、少なくとも1階の住戸1,2において天井高が高い居室が得られ、ロフト15,25及び吹き抜け空間16,26を設けることができる。
【0043】
なお、各住戸1〜4に設けられるロフトと吹き抜け空間の形状や配置位置は、上述した例に限定されない。例えば図8及び図9に示すように、各住戸1〜4の吹き抜け空間18,28,38,48は、図3で示した吹き抜け空間16,26や、図5で示した吹き抜け空間36,46よりも広くしてもよい。この場合、図8に示すように、1階の住戸1,2のロフト17,27は、図3で示したロフト15,25よりも狭くなる。他方、図9図10及び図11に示すように、2階の住戸3,4のロフト37,47は、階段32,42の上部に設けることができ、ロフト37,47の面積を広く確保できる。住戸3,4の2階の出入口の前の空間は、人が通行できる高さが必要であることから(図4参照)、住戸3,4のロフト37,47の高さが十分に高い位置に設けられ、かつ、ロフト37,47が階段32,42の上部に設けられる。
【0044】
また、上述した実施形態では、2階建て長屋の集合住宅Rの例を示したが、本発明はこの例に限定されず、階数や用途を問わない。例えば、図12に示すように、3階建ての集合住宅Rでもよく、本発明は3階建て以上の集合住宅にも適用可能である。この場合、集合住宅Rは、上述した例に追加して、3階の住戸5及び住戸6を備える。また、本発明は、3階建て以上の集合住宅の場合、用途が長屋である場合に限定されず、用途が共同住宅でもよい。
【0045】
以下、図12を参照して、3階建て共同住宅の集合住宅Rについて説明する。この場合、1階の玄関31と2階の住戸3を結ぶ階段32の延長上に、3階の住戸5にアクセス可能なように、階段32が設けられる。2階の住戸3及び3階の住戸5には、1階の玄関31と住戸3及び住戸5を結ぶ階段32が設けられる。住戸3の2階の出入口の前と、住戸5の3階の出入口の前を結ぶ階段32は、2階床と3階床の間の高さで設けられた中3階踊り場53と、3階床の高さで住戸5の前に設けられた3階床踊り場54を有する。
【0046】
また、1階の玄関41と2階の住戸4を結ぶ階段42の延長上に、3階の住戸6にアクセス可能なように、階段42が設けられる。2階の住戸4及び3階の住戸6には、1階の玄関41と住戸4及び住戸6を結ぶ階段42が設けられている。住戸4の2階の出入口の前と、住戸6の3階の出入口の前を結ぶ階段42は、2階床と3階床の間の高さで設けられた中3階踊り場63と、3階床の高さで住戸6の前に設けられた3階床踊り場64を有する。
【0047】
上述した図12に示す例では、住戸3の2階の出入口の前に2階床踊り場34が設けられ、住戸4の2階の出入口の前に2階床踊り場44が設けられる。したがって、2階の住戸3又は住戸4へアクセスする人と3階の住戸5又は住戸6へアクセスする人は、玄関31又は玄関41から2階部分まで、階段32又は階段42をそれぞれ共有することになる。したがって、図12に示す集合住宅Rの用途は、共同住宅である。
【0048】
これに対し、図13に示すように、3階建て共同住宅の集合住宅Rには、2方向階段が設けられてもよく、これにより、集合住宅R内における共有部分を減らすことができる。すなわち、階段32,42は、図13に示すように、踊り場の位置を2階の床高さとは異なる位置にずらすようにして設けられてもよい。図13に示す例では、中2階踊り場33,43は、1階床高さと2階床高さのちょうど中間の高さよりも高い位置に設けられる。2階の住戸4及び3階の住戸6には、1階の玄関31と住戸4及び住戸6を結ぶ階段32が設けられ、2階の住戸3及び3階の住戸5には、1階の玄関41と住戸3及び住戸5を結ぶ階段42が設けられている。ここで、住戸4は、第1の一例であり、住戸3は、第2の一例である。
【0049】
そして、中2階踊り場33と住戸6の3階の出入口の前を結ぶ階段32は、2階床と3階床の間の高さで設けられた中3階踊り場55と、3階床の高さで住戸6の前に設けられた3階床踊り場56を有する。また、中2階踊り場43と住戸5の3階の出入口の前を結ぶ階段42は、2階床と3階床の間の高さで設けられた踊り場65と、3階床の高さで住戸5の前に設けられた3階床踊り場66を有する。この場合、中2階踊り場33と住戸4の2階の出入口の前は、付属階段71で結ばれ、中2階踊り場43と住戸3の2階の出入口の前は、付属階段72で結ばれる。
【0050】
図13に示す例では、図12に示す例に比べて、階段32,42の踊り場の数が減少する。また、2階の住戸3又は住戸4へアクセスする人と3階の住戸5又は住戸6へアクセスする人が共有する部分は、玄関31又は玄関41から中2階踊り場33又は中2階踊り場43の間のみであり、両者が共有する部分を減らすことができ、プライバシーがより保たれやすくなる。
【0051】
なお、3階建て以上の集合住宅の場合、共同住宅とせずに、プライバシーを完全に確保するために長屋とするには、階段32,42以外に、中間階(3階建ての場合は2階)専用にアクセスする別の階段を設ければよい。この場合、1階の玄関と2階の住戸の2階の出入口を結ぶ階段と、1階の玄関と3階の住戸の3階の出入口を結ぶ階段が設けられる。
【0052】
3階建て長屋の集合住宅Rでは、図12又は図13に示した共同住宅の場合と比べて、階段を多く設ける必要がある。しかし、従来の形式の3階建て長屋で、計12戸(各階4戸)を有する場合では、各住戸専用の階段を設けると、8箇所に階段を設ける必要があった。これに対し、本発明では、2階以上の住戸2戸に対して階段が1箇所設けられればよい。したがって、2階の住戸4戸に対して階段が2箇所設けられ、3階の住戸4戸に対して階段が2箇所設けられ、合計4か所の階段が設けられればよい。
【0053】
また、図14に示す2階建て長屋の集合住宅Rの例では、1階床と2階床の間で踊り場が設置されずに、階段32と階段42が設けられる。2階の住戸4には、1階の玄関31と住戸4を結ぶ階段32が設けられ、2階の住戸3には、1階の玄関41と住戸3を結ぶ階段42が設けられている。階段32と階段42は、隣接して設けられ、1階床と2階床の間の高さ、すなわち、2階床高さよりも低い位置の1か所で交差している。すなわち、図14に示すように、階段32と階段42は、横方向から見ると、1箇所でX字状に交差する。ここで、住戸4は、第1の一例であり、住戸3は、第2の一例である。
【0054】
これにより、住戸4の居住者は階段32を使用し、住戸3の居住者は階段42を使用して、それぞれの住戸を出入りでき、住戸のプライバシーが保たれる。また、階段32と階段42は交差していることから、玄関31と玄関41も離れた位置となり、住戸のプライバシーが保たれやすい。住戸3のための玄関41は、人が通行可能に階段32の下方に設けられる。玄関41を通過する居住者等は階段32の下の空間を通過する。このように2階の住戸4近傍での階段32の高さ位置は、人の背丈よりも高く、下の玄関41の空間で人が通行可能な高さに設定されている。
【0055】
住戸3,4の2階の出入口の下方の空間は、人が通行可能であるから、1階床から2階床までの階段32,42の下部も天井高の高い空間となっており、例えば下駄箱(SIC)などの収納スペースとして活用できる。
【0056】
なお、上述した実施形態では、踊り場に段がない場合について図示して説明したが、本発明は、この例に限定されない。すなわち、本発明の階段の踊り場において段が設けられてもよい。これにより、各住戸の階高が踊り場に設けた段の高さ分調整される。
【符号の説明】
【0057】
1,2 :住戸(第3
3 :住戸(第2,第1
4 :住戸(第1,第2
5,6 :住戸
11 :玄関
15,17 :ロフト
16,18 :吹き抜け空間
21 :玄関
25,27 :ロフト
26,28 :吹き抜け空間
31 :玄関(第1出入口)
32 :階段(第1階段)
33 :中2階踊り場(第1踊り場)
34 :2階床踊り場(第3踊り場)
35,37 :ロフト
36,38 :吹き抜け空間
41 :玄関(第2出入口)
42 :階段(第2階段)
43 :中2階踊り場(第2踊り場)
44 :2階床踊り場(第4踊り場)
45,47 :ロフト
46,48 :吹き抜け空間
53,55,63,65中3階踊り場
54,56,64,66 :3階床踊り場
71,72 :付属階段
R :集合住宅(建築物)