【解決手段】発電機能付軸受装置は、第1対向面を有する静止輪と、第1対向面に対向する第2対向面を有し、静止輪に対して回転する回転輪と、第1対向面と第2対向面との間に配置された転動体と、転動体を保持する保持器とを有する転がり軸受と、静止輪に対する位置が固定されているとともに、転がり軸受の内部に配置されている第1電極及び第2電極と、回転輪の静止輪に対する回転に伴って回転するとともに、転がり軸受の内部に配置されている第3電極と、第1電極及び第2電極の表面に形成された絶縁膜とを備える。第3電極の表面及び絶縁膜の表面の少なくとも一方には、第3電極と絶縁膜との間に動圧を発生させる複数の動圧溝が形成されている。
第1対向面を有する静止輪と、前記第1対向面に対向する第2対向面を有し、前記静止輪に対して回転する回転輪と、前記第1対向面と前記第2対向面との間に配置された転動体と、前記転動体を保持する保持器とを有する転がり軸受と、
前記静止輪に対する位置が固定されているとともに、前記転がり軸受の内部に配置されている第1電極及び第2電極と、
前記回転輪の前記静止輪に対する回転に伴って回転するとともに、前記転がり軸受の内部に配置されている第3電極と、
前記第1電極及び前記第2電極の表面に形成された絶縁膜とを備え、
前記第3電極の表面及び前記絶縁膜の表面の少なくとも一方には、前記第3電極と前記絶縁膜との間に動圧を発生させる複数の動圧溝が形成されており、
前記第3電極は、前記第1電極との間の距離である第1距離及び前記第2電極との間の距離である第2距離が前記回転輪の前記静止輪に対する回転に伴って変化するように配置されており、
前記第1距離の時間変化の位相は、前記第2距離の時間変化の位相とずれている、発電機能付軸受装置。
前記複数の動圧溝には、前記回転輪が前記静止輪に対して第1方向に沿って回転する際に前記第3電極と前記絶縁膜との間に動圧を発生させる第1動圧溝と、前記回転輪が前記静止輪に対して前記第1方向とは逆方向の第2方向に沿って回転する際に前記第3電極と前記絶縁膜との間に動圧を発生させる第2動圧溝とが含まれている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発電機能付軸受装置。
前記第3電極は、前記回転輪が前記静止輪に対して回転している際に、前記第1電極及び前記第2電極と前記転がり軸受の中心軸に沿う方向において対向可能な位置に配置されている、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の発電機能付軸受装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のクローポール型発電機は、コイル、永久磁石及びヨーク等を配置するためのスペースが必要になるため、軸受内部に収納することが困難である。すなわち、特許文献1に記載のクローポール型発電機は、既存の設備に導入しようとした場合には、当該設備の軸受周りの設計を見直す必要がある。また、特許文献1に記載のクローポール型発電機を新規設備に導入しようとする場合には、当該設備のサイズが大きくなる。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、軸受内部に発電機能が組み込まれた発電機能付軸受装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発電機能付軸受装置は、第1対向面を有する静止輪と、第1対向面に対向する第2対向面を有し、静止輪に対して回転する回転輪と、第1対向面と第2対向面との間に配置された転動体と、転動体を保持する保持器とを有する転がり軸受と、静止輪に対する位置が固定されているとともに、転がり軸受の内部に配置されている第1電極及び第2電極と、回転輪の静止輪に対する回転に伴って回転するとともに、転がり軸受の内部に配置されている第3電極と、第1電極及び第2電極の表面に形成された絶縁膜とを備える。第3電極の表面及び絶縁膜の表面の少なくとも一方には、第3電極と絶縁膜との間に動圧を発生させる複数の動圧溝が形成されている。第3電極は、第1電極との間の距離である第1距離及び第2電極との間の距離である第2距離が回転輪の静止輪に対する回転に伴って変化するように配置されている。第1距離の時間変化の位相は、第2距離の時間変化の位相とずれている。
【0007】
上記の発電機能付軸受装置において、第3電極は、回転輪に対する位置が固定されていてもよい。上記の発電機能付軸受装置において、第3電極は、保持器に対する位置が固定されていてもよい。
【0008】
上記の発電機能付軸受装置において、複数の動圧溝には、回転輪が静止輪に対して第1方向に沿って回転する際に第3電極と絶縁膜との間に動圧を発生させる第1動圧溝と、回転輪が静止輪に対して第1方向とは逆方向の第2方向に沿って回転する際に第3電極と絶縁膜との間に動圧を発生させる第2動圧溝とが含まれていてもよい。
【0009】
上記の発電機能付軸受装置は、転がり軸受の内部に配置されている基材をさらに備えていてもよい。基材の表面上には、第3電極が配置されていてもよい。
【0010】
上記の発電機能付軸受装置において、第3電極の表面と基材の表面とは、傾斜面を介して連なっていてもよい。
【0011】
上記の発電機能付軸受装置は、第3電極と基材との間に介在されている弾性部材をさらに備えていてもよい。弾性部材は、第3電極に対して、絶縁膜に向かう方向の付勢力を発生させてもよい。
【0012】
上記の発電機能付軸受装置は、第3電極を前記基材に取り付ける弾性ヒンジをさらに備えていてもよい。弾性ヒンジは、第3電極に対して、絶縁膜に向かう方向の付勢力を発生させてもよい。
【0013】
上記の発電機能付軸受装置において、絶縁膜は樹脂材料により形成されていてもよい。複数の動圧溝は、絶縁膜の表面に形成されていてもよい。
【0014】
上記の発電機能付軸受装置において、第3電極は、回転輪が静止輪に対して回転している際に、第1電極及び第2電極と転がり軸受の中心軸に沿う方向において対向可能な位置に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発電機能付軸受装置によると、軸受内部に発電機能が組み込むことができる。また、本発明の発電機能付軸受装置によると、第3電極と絶縁膜とが直接接触することに伴う摩擦等を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0018】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る発電機能付軸受装置(以下「軸受装置100」とする)の構成を説明する。
【0019】
図1は、軸受装置100の平面図である。
図2は、
図1のII−IIにおける断面図である。
図3は、
図2の領域IIIにおける拡大図である。
図1〜
図3に示されるように、軸受装置100は、転がり軸受10と、シール20と、ステータ30と、絶縁膜40と、ロータ50とを有している。
【0020】
転がり軸受10は、例えば、深溝玉軸受である。但し、転がり軸受10は、これに限られるものではない。転がり軸受10は、内輪11と、外輪12と、複数の転動体13と、保持器14とを有している。転がり軸受10は、中心軸Aを有している。以下において、中心軸Aに沿う方向を、軸方向とする。内輪11は、外輪12に対して回転可能である。すなわち、転がり軸受10においては、内輪11が回転輪であり、外輪12が静止輪である。
【0021】
内輪11は、環状(リング状)の形状を有している。内輪11は、内周面11aと、外周面11bと、幅面11cと、幅面11dとを有している。
【0022】
内輪11は、内周面11aにおいて、軸(図示せず)に取り付けられる。内周面11aは、中心軸Aを中心とする円周に沿う方向(以下「周方向」とする)に沿って延在している。内周面11aは、中心軸A側を向いている。
【0023】
外周面11bは、周方向に沿って延在している。外周面11bは、中心軸Aとは反対側を向いている。すなわち、外周面11bは、中心軸Aに直交する方向(以下「径方向」とする)における内周面11aの反対面である。外周面11bは、軌道面11baを有している。軌道面11baは、転動体13に接触する外周面11bの部分である。
【0024】
幅面11c及び幅面11dは、軸方向における端面を構成している。幅面11dは、軸方向における幅面11cの反対面である。径方向における幅面11cの両端は、それぞれ内周面11a及び外周面11bに連なっている。径方向における幅面11dの両端は、それぞれ内周面11a及び外周面11bに連なっている。
【0025】
外輪12は、リング状の形状を有している。外輪12は、内周面12aと、外周面12bと、幅面12cと、幅面12dとを有している。
【0026】
内周面12aは、周方向に沿って延在している。内周面12aは、中心軸A側を向いている。外輪12は、内周面12aが外周面11bに対向するように配置されている。内周面12aは、軌道面12aaを有している。軌道面12aaは、転動体13に接触する内周面12aの部分である。軌道面12aaは、軌道面11baに対向している。
【0027】
外輪12は、外周面12bにおいて、ハウジング(図示せず)に取り付けられる。外周面12bは、周方向に沿って延在している。外周面12bは、中心軸Aとは反対側を向いている。すなわち、外周面12bは、径方向における内周面12aの反対面である。
【0028】
幅面12c及び幅面12dは、軸方向における端面を構成している。幅面12dは、軸方向における幅面12cの反対面である。径方向における幅面12cの両端は、それぞれ内周面12a及び外周面12bに連なっている。径方向における幅面12dの両端は、それぞれ内周面12a及び外周面12bに連なっている。
【0029】
転動体13は、玉であり、球状の形状を有している。転動体13は、外周面11bと内周面12aとの間に配置されている。より具体的には、転動体13は、軌道面11baと軌道面12aaとの間に配置されている。
【0030】
保持器14は、内輪11と外輪12との間(より具体的には、外周面11bと内周面12aとの間)に配置されている。保持器14は、周方向において隣り合う2つの転動体13の間の距離が一定範囲内となるように、転動体13を保持している。
【0031】
以下において、外周面11bと内周面12aとの間の空間を、軸受空間とする。シール20は、軸方向における一方側から軸受空間を閉塞している。シール20は、外輪12に取り付けられている。より具体的には、シール20は、軌道面12aaよりも幅面12c側に位置している内周面12aに取り付けられている。シール20は、第1面20aと、第2面20bとを有している。第1面20aは、軸受空間側を向いている面である。第2面20bは、軸方向における第1面20aの反対面である。第1面20a及び第2面20bは、シール20の主面を構成している。
【0032】
ステータ30は、第1基材31と、複数の第1電極32と、複数の第2電極33とを有している。ステータ30は、シール20に取り付けられている。より具体的には、ステータ30は、第1面20a上に配置されている。そのため、第1電極32及び第2電極33は、軸受空間内(転がり軸受10の内部)に配置されているとともに、外輪12に対する位置が固定されていることになる。
【0033】
図4は、ステータ30の平面図である。
図5は、
図4のV−Vにおける断面図である。
図6は、
図4のVI−VIにおける断面図である。
図4〜
図6に示されるように、第1基材31は、リング状の形状を有している。第1基材31は、第1面31aと、第2面31bとを有している。第2面31bは、第1面31aの反対面であり、シール20側を向いている。第1面31a及び第2面31bは、第1基材31の主面を構成している。第1基材31は、第2面31bにおいて、シール20に取り付けられている。第1基材31は、絶縁材料により形成されている。
【0034】
第1電極32及び第2電極33は、第1面31a上に配置されている。第1電極32及び第2電極33は、周方向に沿って、等間隔で交互に配置されている。第1電極32の数は、第2電極33の数に等しい。第1電極32及び第2電極33は、導電性材料(例えば金属材料)により形成されている。複数の第1電極32の各々は、互いに電気的に接続されている。複数の第2電極33の各々は、互いに電気的に接続されている。但し、第1電極32と第2電極33とは、電気的に分離されている。
【0035】
絶縁膜40は、絶縁材料により形成されている。絶縁膜40は、樹脂材料により形成されていることが好ましい。絶縁膜40を構成する材料の具体例としては、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)が挙げられる。
図7は、絶縁膜40の平面図である。
図8は、
図7のVIII−VIIIにおける断面図である。
図7及び
図8に示されるように、絶縁膜40は、リング状の形状を有している。
【0036】
絶縁膜40は、第1面40aと、第2面40bを有している。第2面40bは、第1面40aの反対面であり、ステータ30側(第1電極32側及び第2電極33側)を向いている。第1面40a及び第2面40bは、絶縁膜40の主面を構成している。絶縁膜40は、第2面40bにおいて、ステータ30に取り付けられている。すなわち、絶縁膜40は、第1電極32及び第2電極33上に配置されている。
【0037】
第1面40aには、複数の動圧溝41が形成されている。第1面40aは、動圧溝41において、第2面40b側に窪んでいる。動圧溝41は、例えば、周方向に沿って等間隔で形成されている。動圧溝41は、平面視において(第1面40aに直交する方向から見て)、V字形状を有している。すなわち、動圧溝41は、平面視において、第1部分41aと、第2部分41bとを有している。図示されていないが、動圧溝41に対応した形状の溝が、第1電極32及び第2電極33の表面(絶縁膜40側の面)に形成されていてもよい。絶縁膜40が柔軟性のある薄膜で形成されている場合、絶縁膜40が当該溝に倣うことにより、第1面40aに動圧溝41が形成されることになる。
【0038】
第1部分41aは、直線状に延在している。第1部分41aは、一方端及び他方端を有している。第1部分41aの一方端は、絶縁膜40の径方向における中央部に位置している。第1部分41aの他方端は、第1部分41aの一方端よりも絶縁膜40の内周縁の近くに位置している。
【0039】
第2部分41bは、直線状に延在している。第2部分41bは、一方端及び他方端を有している。第2部分41bの一方端は、絶縁膜40の径方向における中央部に位置しており、第1部分41aの一方端に接続されている。なお、第1部分41aの一方端と第2部分41bの一方端とが互いに接続されている部分が、V字形状の先端となる。第2部分41bの他方端は、第2部分41bの一方端よりも絶縁膜40の外周縁の近くに位置している。第2部分41bの他方端は、径方向において、第1部分41aの他方端と対向する位置にある。
【0040】
ロータ50は、第2基材51と、第3電極52とを有している。
図9は、ロータ50の平面図である。
図10は、
図9のX−Xにおける断面図である。
図9及び
図10に示されるように、第2基材51は、リング状の形状を有している。第2基材51は、内周側において内輪11(より具体的には、軌道面11baよりも幅面11c側に位置している外周面11bの部分)に取り付けられている。第2基材51は、ステータ30及び絶縁膜40よりも保持器14に近い位置にある。
【0041】
第2基材51は、第1面51aと、第2面51bとを有している。第1面51aは、ステータ30及び絶縁膜40側を向いている面である。第2面51bは、第1面51aの反対面であり、保持器14側を向いている面である。第1面51a及び第2面51bは、第2基材51の主面を構成している。
【0042】
第3電極52は、第1面51a上に配置されている。上記のとおり、第2基材51が内輪11に取り付けられているため、第3電極52は、内輪11に対する位置が固定されているとともに、軸受空間内(転がり軸受10の内部)に配置されていることになる。第3電極52は、内輪11が回転する際に、軸方向において第1電極32及び第2電極33と対向可能に配置されている。第3電極52は、導電性材料(例えば金属材料)により形成されている。第3電極52の数は、第1電極32(第2電極33)の数に等しい。第3電極52は、周方向に沿って等間隔に配置されている。図示されていないが、第3電極52の表面(ステータ30と対向している面)に動圧溝を設ける場合、第3電極52の製造工程においてエッチングを行うことにより、当該動圧溝を形成することができる。
【0043】
第3電極52と第1電極32との間の距離を、第1距離とする。第3電極52と第2電極33との間の距離を、第2距離とする。内輪11の外輪12に対する回転に伴い、第3電極52が第1電極32と対向しているが第2電極33と対向していない状態と第3電極52が第1電極32と対向していないが第2電極33と対向している状態とが繰り返されることになる。すなわち、第1距離及び第2距離は、内輪11の外輪12に対する回転に伴って変化することになり、第1距離の時間変化の位相と第2距離の時間変化の位相とは互いにずれている。
【0044】
以下に、軸受装置100における発電動作を説明する。
図11Aは、第1電極32及び第2電極33から電流が出力される原理を説明するための第1説明図である。
図11Bは、第1電極32及び第2電極33から電流が出力される原理を説明するための第2説明図である。
図11Cは、第1電極32及び第2電極33から電流が出力される原理を説明するための第3説明図である。
図11Dは、第1電極32及び第2電極33から電流が出力される原理を説明するための第4説明図である。
【0045】
転がり軸受10の動作時には、軸受空間に潤滑剤Lが供給されている。そのため、
図11Aに示されるように、内輪11の回転に伴って、第1電極32上にある絶縁膜40と第3電極52とが潤滑剤Lを介して互いに摺動する。その結果、第1電極32に正の電荷が誘導されるとともに、第2電極33に負の電荷が誘導される。
【0046】
図11Aに示される状態から内輪11の回転が進むと、
図11Bに示されるように、各電極に誘導された電荷に起因した起電力に基づいて、第1電極32から第2電極33へと電流が流れる。
【0047】
図11Bに示される状態から内輪11の回転がさらに進むと、
図11Cに示されるように、第2電極33上にある絶縁膜40と第3電極52とが潤滑剤Lを介して互いに摺動する。その結果、第1電極32に負の電荷が誘導されるとともに、第2電極33に正の電荷が誘導される。
【0048】
図11Cに示される状態から内輪11の回転がさらに進むと、
図11Dに示されるように、各電極に誘導された電荷に起因した起電力に基づいて、第2電極33から第1電極32へと電流が流れる。
図11Dに示される状態から内輪11の回転がさらに進むと、
図11Aに示される状態に戻る。
【0049】
このように、軸受装置100においては、外輪12に対する内輪11の回転に伴って、第1電極32及び第2電極33からパルス状の電流(電圧)が出力される。
【0050】
<変形例>
図12は、変形例に係る軸受装置100の拡大断面図である。ロータ50は、
図12に示されるように、保持器14に取り付けられていてもよい。より具体的には、第2基材51が保持器14の軸方向における端面に取り付けられるとともに、第3電極52が第2基材51上に配置されていてもよい。保持器14は、内輪11の外輪12に対する回転に伴って回転するため、第2基材51を介して保持器14に取り付けられた第3電極52も、内輪11の外輪12に対する回転に伴って回転することになる。
【0051】
以下に、軸受装置100の効果を説明する。
軸受装置100においては、第1電極32、第2電極33、絶縁膜40及び第3電極52が軸受空間内(転がり軸受10の内部)に配置されているため、転がり軸受10の内部に発電機能を組み込むことが可能となる。その結果、軸受装置100の寸法は、発電機能を有しているにもかかわらず、既存の転がり軸受の寸法と大きな違いがなく、既存の転がり軸受と置き換えることが可能となる。
【0052】
軸受装置100においては、内輪11の回転(
図7中の矢印参照、この回転の方向を以下においては「第1方向」とする)に伴って潤滑剤Lが動圧溝41に引き込まれることにより、絶縁膜40と第3電極52との間に、絶縁膜40と第3電極52とを離間させるような動圧が発生する。この動圧により、絶縁膜40と第3電極52との直接接触が抑制される。その結果、軸受装置100においては、絶縁膜40と第3電極52との直接接触に起因する摩耗・摩擦や騒音の発生が抑制される。
【0053】
また、軸受装置100においては、上記の動圧により絶縁膜40と第3電極52との直接接触を抑制することができるため、絶縁膜40(第1電極32及び第2電極33)と第3電極52との間の距離を小さくして第1電極32及び第2電極33と第3電極52とにより構成されるコンデンサの静電容量を高めることができる。当該コンデンサの静電容量が高くなるほど発電量が大きくなるため、軸受装置100は、発電量を改善できる。
【0054】
軸受装置100においては、上記の動圧により絶縁膜40と第3電極52との間の間隔が保たれるため、加工バラつきに起因した各電極の間の距離のバラつきの発電量への影響を緩和することができる。なお、絶縁膜40が樹脂材料により形成されている場合、動圧溝41を例えばホットプレス等により容易に形成することができる。
【0055】
変形例に係る軸受装置100においては、第3電極52が第1電極32及び第2電極33に対向している保持器14の端面に配置されているため、第1電極32及び第2電極33が配置されている外輪12と保持器14との間の相対的な位置関係が安定化する。その結果、変形例に係る軸受装置においては、転動体13と保持器14との間の衝突音の発生を抑制することができる。
【0056】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る発電機能付軸受装置(以下「軸受装置200」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0057】
軸受装置200は、転がり軸受10と、シール20と、ステータ30と、ロータ50とを有している。この点に関し、軸受装置200の構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0058】
図13は、軸受装置200におけるステータ30の平面図である。
図14は、
図13のXIV−XIVにおける断面図である。
図15は、
図13のXV−XVにおける断面図である。軸受装置200は、絶縁膜40に代えて、複数の絶縁膜42及び絶縁膜43を有している。絶縁膜42は、第1電極32上に配置されている。絶縁膜43は、第2電極33上に配置されている。絶縁膜42及び絶縁膜43は、好ましくは、PTFE等の樹脂材料により形成されている。
【0059】
絶縁膜42の表面(第1電極32との対向面とは反対側の主面)上及び絶縁膜43の表面(第2電極33との対向面とは反対側の主面)上には、それぞれ、複数の動圧溝41及び動圧溝44が形成されている。動圧溝44は、動圧溝41と同様の形状を有している。但し、動圧溝44のV字形状の先端は、周方向において、動圧溝41のV字形状の先端とは逆側を向いている。
【0060】
以下に、軸受装置200の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0061】
軸受装置100において、動圧溝41は、そのV字形状の先端が、全て周方向において同一の側を向いている。そのため、内輪11が外輪12に対して第1方向に回転する際に絶縁膜40と第3電極52との間に動圧が発生する。しかしながら、内輪11が外輪12に対して第1方向とは逆方向(以下「第2方向」とする)に回転する際には、当該動圧が発生しがたい。
【0062】
軸受装置200は、絶縁膜42(絶縁膜43)の表面に、動圧溝41に加えて動圧溝44が形成されている。動圧溝44は、周方向において動圧溝41とは反対側を向いているため、内輪11が外輪12に対して第2方向に回転する際にも、絶縁膜40と第3電極52との間に動圧を発生させることができる。このように、軸受装置200によると、内輪11の外輪12に対する回転の方向にかかわらず、絶縁膜40と第3電極52との間に動圧を発生させることができるため、絶縁膜40と第3電極52との直接接触がさらに抑制される。
【0063】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る発電機能付軸受装置(以下「軸受装置300」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0064】
軸受装置300は、転がり軸受10と、シール20と、ステータ30と、ロータ50とを有している。この点に関して、軸受装置300の構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0065】
図16は、軸受装置300におけるロータ50の平面図である。
図16に示されるように、第3電極52の表面(第2基材51との対向面とは反対側の主面)には、複数の動圧溝53及び動圧溝54が形成されている。動圧溝53及び動圧溝54は、動圧溝41と同様のV字形状を有している。動圧溝53のV字形状の先端及び動圧溝54のV字形状の先端は、周方向において、互いに逆方向を向いている。なお、図示されていないが、軸受装置300において、動圧溝41は形成されていなくてもよい。
【0066】
第3電極52の表面は、周方向における両端において、傾斜面55を介して第1面51aに連なっている。傾斜面55は、第3電極52の表面側から第1面51a側へと向かうにしたがって第1面51aとの間の距離が小さくなるように傾斜している。
【0067】
以下に、軸受装置300の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0068】
軸受装置300においては、第3電極52の表面が傾斜面55を介して第1面51aに連なっているため、内輪11が外輪12に対して回転する際に、潤滑剤Lが動圧溝53及び動圧溝54に集められやすい。その結果、内輪11の外輪12に対する回転速度が低速である場合であっても、絶縁膜40と第3電極52との間に動圧が発生しやすい。このように、軸受装置300によると、絶縁膜40と第3電極52との直接接触がさらに抑制される。
【0069】
(第4実施形態)
以下に、第4実施形態に係る発電機能付軸受装置(以下「軸受装置400」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置300の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0070】
軸受装置400は、転がり軸受10と、シール20と、ステータ30と、ロータ50とを有している。第3電極52の表面には、複数の動圧溝53及び動圧溝54が形成されている。第1面40aには、動圧溝41が形成されていなくてもよい。これらの点に関し、軸受装置400の構成は、軸受装置300の構成と共通している。
【0071】
図17は、軸受装置400におけるロータ50の平面図である。
図18は、
図17の方向XVIIIから見た側面図である。
図17及び
図18に示されるように、第2基材51上には、第3電極52が間隔を空けて配置されている。第2基材51と第3電極52との間には、弾性部材56が介在されている。弾性部材56は、ウレタン、ゴム、スポンジ等の弾性材料により形成されている。弾性部材56は、第3電極52に対して、絶縁膜40側に向かう方向の付勢力を発生させている。
【0072】
第3電極52は、周方向における両端において、弾性ヒンジ57により、第2基材51に取り付けられている。弾性ヒンジ57は、第3電極52に対して、絶縁膜40側に向かう方向の付勢力を発生させている。軸受装置400は、弾性部材56及び弾性ヒンジ57の一方を有していなくてもよい。
【0073】
以下に、軸受装置400の効果を説明する。ここでは、軸受装置300の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0074】
絶縁膜40と第3電極52との間に発生する動圧により絶縁膜40と第3電極52との間の距離が過度に大きくなると、第1電極32及び第2電極33と第3電極52とにより構成されるコンデンサの静電容量が小さくなるため、発電量が低下する。軸受装置400においては、弾性部材56(弾性ヒンジ57)が絶縁膜40と第3電極52との間の距離を縮めるように付勢力を発生させるため、上記のコンデンサの静電容量を維持することができる。すなわち、軸受装置400によると、発電量を維持することができる。
【0075】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。