【実施例】
【0009】
図1は、本発明に係る空気調和機の室外機1の実施例を示す縦断面図であり、
図2は、本発明に係る空気調和機の室外機1の実施例を示す平面図である。室外機1は、図示しない室内機と配管で接続されて、冷媒が循環する冷凍回路の一部を構成しており、後述する圧縮機6、室外熱交換器7、送風機2と、および、図示しないオイルセパレータ、四方弁、室外機膨張弁と、を備えている。
【0010】
室外機1は、上部に吹出口33及び下部に吸込み口36を有する円筒状のベルマウス3と、ベルマウス3の下方に配置され上部が開口する機械室5とを備えている。ベルマウス3の内部には送風機2が配置され、機械室5の内部には、圧縮機6、室外熱交換器7、電装箱8などが配置されている。本実施例では2つの室外機1を設けているが、室外機1は1つであっても良い。2つの室外機1は同じ構造なので、以下では、一方の室外機について説明する。
機械室5は、前面板51、両側の側面板52、背面板53、底板54を備えた箱型形状であり、前面板51と外部に面する側の側面板52には図示しない吸入口が設けられ、圧縮機6、電装箱8は、底板54の上に配置されている。
【0011】
室外熱交換器7は、前面板51と外部に面する側の側面板52のそれぞれに設けられた吸入口に対向して配置された2枚の熱交換器によって構成され、2枚の熱交換器は、冷凍回路の一部を構成する配管によって一体に接続されている。送風機2は、プロペラファン21とモータ22で構成されている。プロペラファン21は、モータ22の回転軸に取り付けられている。機械室5の上部には、送風機2を取付けるためのモータ台座9が配置されており、モータ22がモータ台座9に対して図示しないボルトにより取付けられて、送風機2は機械室5の上面から突出し、プロペラファン21はベルマウス3に囲われるように配置される。
室外機1は、モータ22を駆動することによりプロペラファン21を回転させて、機械室5の吸入口から機械室5の内部に空気を吸い込み、吸い込まれた空気は室外熱交換器7を通過することにより冷媒と熱交換し、熱交換した空気はベルマウス3の上部に形成された吹出口33から吹き出すようになっている。
【0012】
図4は、ベルマウス3と送風機2の縦断面図である。ベルマウス3は、上部に吹出口33を有し、吹き出す風を上向きにする楕円筒状の拡径ダクト部34と、拡径ダクト部34の下側に配置する円筒状のダクト部35と、ダクト部35の下側に配置し下部に吸込み口36を有する吸込みダクト部37と、拡径ダクト部34とダクト部35を接続する段差部38とで構成されている。吸込みダクト部37の下部は機械室5に取付くベルマウス台座部39を備えている。拡径ダクト部34及びダクト部35の外周面とベルマウス台座部39の上面との間には、拡径ダクト部34及びダクト部35を補強するための縦リブ40が周方向に間隔をおいて配置され、また、拡径ダクト部34及びダクト部35の外周面には、同様に拡径ダクト34部及びダクト部35を補強するための周面リブ41が高さ方向に間隔をおいて配置されている。
【0013】
ダクト部35はプロペラファン21を囲う部分であり内周面は、プロペラファン21の回転軸に直交する方向の断面が円形である。拡径ダクト部34の内周面は、プロペラファン21の回転軸に直交する方向の断面が楕円形であって、短径はダクト部35の内周面の直径と同一であり、長径はダクト部35の内周面の直径より長くなっている。拡径ダクト部34とダクト部35を接続する段差部38は、向かい合うように長径側に設けられており、短径側には設けられていない。
【0014】
図5は、
図4のA部を概略的に示した図である。拡径ダクト部34とダクト部35とに接続する段差部38の内面側には、ダクト部35の内周面の上端から拡径ダクト部34の内周面の下端まで径方向外側に向かって延在する平面部42を有している。平面部42とダクト部35の内周面との交わる角度と、平面部42と拡径ダクト部34の内周面との交わる角度は、それぞれ90°である。つまり、段差部38の平面部42は回転軸に直交する方向に対して平行であって、回転軸に対して傾斜していない。
【0015】
平面部42は、
図2に示すように上方から見たとき、一対の三日月形状であって、三日月形状の両端部が互いに接続し凹側が対向するように配置されている。従って、三日月形状の両端部が互いに接続している部分は、平面部42が存在しないため、縦断面において、拡径ダクト部34の内周面とダクト部35の内周面に段差はなく一直線となる。
【0016】
図6は、
図4のB部を概略的に示した図である。ダクト部35の下部側に位置する吸込みダクト部37は、ダクト部35の下端と接続して内周径が下側に向かうに従い拡径するベル部43と、ベル部43の下端と接続する矩形状のベルマウス台座部39とを備えている。ベル部43の内周は、軸線方向の断面は円弧状の曲線であり、回転軸と直交する方向の断面は円形である。ベルマウス台座部39は上面が矩形状の上面部44と、上面部44の外縁から下方に向かって折り曲がる外縁部45を備えており、外縁部45が機械室5の上部に固定される。ベルマウス台座部39の内周側がベルマウス3の吸込み口36を構成する。
【0017】
図2に示すように、プロペラファン21は、円柱状のハブ23の周りに4枚の翼24が取り付けられている。ハブ2の形状は円柱状に限らず、三角柱状、円錐状など任意の形状でよい。
図2に示す矢印がプロペラファンの回転方向を示す。翼24は、回転方向前側に位置する前側辺25と、回転方向後側に位置する後側辺26と、前側辺25及び後側辺26を結ぶように半径方向の外側に位置する外側辺27と、ハブ23に固定される内側辺とに囲まれた3次元曲面で形成されている。前側辺25は半径方向外側に向かうにしたがって回転方向前側に向かうような凹状の曲線で形成され、後側辺26は半径方向外側に向かうにしたがって回転方向前側に向かうような凸状の緩やかな曲線で形成されている。外側辺27とダクト部35の内周面と間は、外側辺27がダクト部35の内周面に接触しない程度に僅かなクリアランスが設けられている。
【0018】
回転軸線方向においては、後側辺26が前側辺25より上に配置され、後側辺26から前側辺25に向かって緩やかに傾斜している。前側辺25の外側辺27側の端部である下部前端28は、前側辺25がハブ23と接続する前側ハブ接続部29より低くなっており、後側辺26の外側辺27側の端部である上部後端30は、ハブ23と接続する後側ハブ接続部31より低くなっている。プロペラファン21は、回転軸線方向において、後側ハブ接続部31が最も高い最上端であり、下部前端28が最も低い最下端となっている。なお、回転軸線はプロペラファン21の回転軸、および、モータ22の回転軸のそれぞれが重なる。
【0019】
次に、
図5と
図6を用いて、ベルマウス3とプロペラファン21の回転軸線方向における位置関係について説明する。
図5に示すように、回転軸線方向高さにおいて、プロペラファン21の後側ハブ接続部31とベルマウス3に設けられた段差部38の平面部42は同じ高さの位置にある。本実施例では、後側ハブ接続部31が最も高い位置となるプロペラファン21であるため、後側ハブ接続部31が平面部42と同じ高さになっているが、例えば、上部後端30が最も高い位置になるように形成されたプロペラファン21の場合は、上部後端30が平面部42と同じ高さになっていればよい。すなわち、プロペラファン21全体が、回転軸と直交する方向から見た場合に、回転軸線方向においてダクト部35に納まっていればよい。
【0020】
後側ハブ接続部31を平面部42と同じ高さにすることにより、拡径ダクト部34が、プロペラファン21の最も高い位置にある後側ハブ接続部31よりも上側に配置されるため、径方向に広がりながら流れていくプロペラファン21から吹き出す空気の流れが、拡径ダクト部34によって抵抗を受けずに維持することができ、騒音を軽減することができる。また、段差部38の平面部42は回転軸に直交する方向に対して平行であって、回転軸に対して傾斜していないため、段差部38がリブとして機能し、ベルマウス3の強度を保つことができる。
【0021】
次に、軸方向における翼24の高さhと拡径ダクト部34の高さHとの関係、および、平面部42の径方向幅Lと拡径ダクト部34の高さHとの関係について説明する。翼24の高さhは、翼24の下部前端28から後側ハブ接続部31までの軸方向の長さ、つまり、翼24の軸方向における全長であって、翼24の最下端部から最高端部までの長さである。拡径ダクト部34の高さHは、軸方向における、平面部42から拡径ダクト部34の上端までの長さである。平面部42の径方向幅Lは、拡径ダクト部34は楕円形状であることから、長径における幅である。拡径ダクト部34の高さHを翼高さhで除した値(H/h)は、0.2≦H/h≦0.5であることが望ましい。また、平面部42の径方向幅Lを拡径ダクト部34の高さHで除した値(L/H)は、0<L/H≦0.4であることが望ましい。拡径ダクト部34の高さHの最小値は、径方向に広がりながら上側に流れていくプロペラファン21から吹き出す空気の流れが、径方向に広がり過ぎないようガイドするのに必要な高さである。拡径ダクト部34の高さHの最大値は、プロペラファン21から吹き出す空気の流れが拡径ダクト部34の内周に沿って流れていくと、抵抗が生ずるため、その抵抗を最小限にする高さである。
【0022】
本実施例では、拡径ダクト部34の内周面は横断面が楕円形であるが、必ずしも楕円形である必要はなく円であっても構わない。ただし、室外機1の設置場所に制約があり、拡径ダクト部34の径を大きく出来ないような場合には、楕円形にすることにより、限られた設置場所でも騒音を軽減することができる効果がある。
次に、
図6を用いて、軸方向における、プロペラファン21の下部前端28とベルマウス3のダクト部35の下端46との位置関係について説明する。
図6に示すように、円筒状のダクト部35の下端46は、吸込みダクト部37の曲線状に拡径するベル部43の上端と接続しており、内周径が拡径しない部分の最下点である。
図6に示すように、軸方向高さにおいて、プロペラファン21の下部前端28はダクト部35の下端46と同じ高さに配置されている。
【0023】
プロペラファン21の下部前端28とダクト部35の下端46の位置と、風量比との関係、および、プロペラファン21の下部前端28とダクト部35の下端46の位置と、入力比との関係について、実験により得られた結果を
図7と
図8に基づいて説明する。
図7の風量比は、同じモータ出力とした場合における風量の相違を比で示した値であり、値が高いほど能力が高いことを示す。
図8の入力比は、同じ風量を出すために必要なモータ出力の相違を比で示した値であり、値が低いほど能力が高いことを示す。
図7と
図8における横軸は、プロペラファンの下部前端28とダクト部35の下端46との距離X(mm)を表し、距離Xが0(mm)は、プロペラファン21の下部前端28とダクト部35の下端46が同じ高さであることを表し、距離Xがマイナス(−)とは、プロペラファン21の下部前端28がダクト部35の下端46よりも高いことを表し、距離Xがプラス(+)とは、プロペラファン21の下部前端28がダクト部35の下端46よりも低いことを表す。尚、
図7と
図8の縦軸における数値100%は、従来技術として、プロペラファン21の下部前端28がダクト部35の下端46よりも99(mm)低かった場合の風量比と入力比を示している。
【0024】
図7、
図8から明らかのように、プロペラファン21の下部前端28とダクト部35の下端46が同じ高さの場合(X=0)に、入力比、風量比における能力が最も高くなる結果が得られた。そして、−20(mm)≦X≦+20(mm)において、入力比は約94.0%以下、風量比においても約104.0%以上が見込めるため能力が高く、X<−20(mm)、及び、20(mm)<Xにおいては、入力比、風量比における能力が低くなる結果が得られた。
【0025】
次に、ダクト部35の下端からベルマウス台座部39に渡って内周径が拡径するベル部43の曲率半径Rと騒音との関係について説明する。Rが50(mm)以下の場合、騒音値は60.8dBであったのに対し、Rが50(mm)より大きい場合は、騒音値は62.3dBであった。従って、ベル部43の曲率半径Rは50(mm)以下であることが望ましいことが得られた。
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。