【解決手段】検査装置(20)は、搬送路に沿って搬送される複数の鋳型の各々を撮影するセンサにより生成された画像データを用いて鋳型(2)を検査する。表示制御装置(10)は、鋳型(2)毎の検査結果をメモリに記憶する記憶処理と、前記搬送路に沿って搬送される前記複数の鋳型(2)の中から、ディスプレイとの位置関係が所定の条件を満たす鋳型(2)を特定する特定処理と、前記特定処理により特定された鋳型(2)の検査結果を、ディスプレイに表示させる表示制御処理とを実行する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の一実施形態に係る表示制御装置を含む鋳造システム1を概略的に示す構成図である。鋳造システム1は、搬送路にそって搬送される複数の鋳型2に注湯することによって鋳物を製造するシステムである。鋳造システム1は、表示制御装置10、検査装置20、入出力装置30、造型機40、ラインコントローラ50、注湯機60、搬送装置70、及び型合わせ装置110を備える。
【0025】
表示制御装置10は、鋳造において鋳型2の不良を検査した検査結果をディスプレイ31に表示させる装置である。表示制御装置10は例えば、ラップトップ型やデスクトップ型のパーソナルコンピュータである。表示制御装置10は、作業者により携帯されるスマートフォン又はタブレット端末であってもよい。
【0026】
検査装置20は、搬送路上の鋳型2を検査する装置である。検査装置20は、搬送路に沿って搬送される複数の鋳型2の各々を撮影するセンサ21を備える。センサ21は、例えばカメラである。センサ21は、搬送路に沿って搬送される上型と下型とが枠合わせされるまでに、抜枠鋳型の製品面(キャビティ面)を撮像し、その鋳型を被写体として含む画像データを生成する。
【0027】
表示制御装置10は、撮像された画像(以下「撮像画像」という)と基準画像とを比較することにより、鋳型の欠陥の検査を行い、検査結果を検査結果テーブルに蓄積する。上型と下型とは交互に中子セット場まで搬送される。
【0028】
図2は、表示制御装置10の構成を概略的に示すブロック図である。表示制御装置10は、コントローラ106を備える。コントローラ106は、プロセッサ101、主メモリ102、補助メモリ103、入力インタフェース104、及び出力インタフェース105を備える。プロセッサ101は、表示制御装置10を制御するプロセッサであり、例えば、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、又はこれらの組み合わせ等である。主メモリ102及び補助メモリ103(メモリの一例)は、例えば半導体RAM(random access memory)である。主メモリ102と補助メモリ103は同じメモリを領域/又はアドレスで区別することで一体(物理的に同じひとつのメモリ)であってもよい。補助メモリ103には、表示制御装置10の動作をプロセッサ101に実行させるためのプログラムが格納されている。プロセッサ101は、補助メモリ103に格納された制御プログラムを主メモリ102上に展開し、展開した制御プログラムに含まれる各命令を実行する。
【0029】
主メモリ102には、主に型落ち判定のためのアプリケーション/ソフトが記憶される。補助メモリ103には、鋳型2の検査の際に参照される基準画像データ、入力された撮像画像、表示オブジェクトデータ、及びその他の各種データが記憶される。本実施形態では、補助メモリ103には、基準画像テーブル及び検査結果テーブルが記憶されている。基準画像テーブルは、鋳型2の検査を行う際に用いられる基準画像が模型毎に記憶されたテーブルである。検査結果テーブルは、鋳型2の欠陥検査の結果を、鋳型2を識別する識別情報と対応付けて記憶するテーブルである。
【0030】
入力インタフェース104は、検査装置20から撮像画像を取得する。取得された撮像画像は、鋳型2を識別する識別情報と紐付けて補助メモリ103に記憶される。出力インタフェース105は、ディスプレイ31に画像を表すデータを出力する。なお、
図2にはひとつの入力インタフェース104及びひとつの出力インタフェース105が図示されているが、表示制御装置10が複数の入力インタフェース及び/又は複数の出力インタフェースを備えていてもよい。この例で、プロセッサ101が補助メモリ103に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、
図2に示した取得部11、記憶処理部12、特定部13、及び表示制御部14が実現される。
【0031】
図3は、基準画像テーブルの内容を例示する図である。
図3の例では、基準画像テーブルは、「パターンコード」及び「基準画像フォルダNo」の各項目を互いに関連付けて記憶する。これらの項目のうち、「パターンコード」の項目には、模型を識別する識別情報(ID)が格納される。パターンコードは、或る造型に用いる模型、つまりその模型を用いて造型される鋳型に対応している。そのうち、例えば、「10」は或る模型で造型される下型のID、「11」はその下型に合わせられる上型のIDとなる。すなわち、パターンコードは、或る模型による上型と下型とを区分けしている。したがって、同じ模型で造型すると、造型ラインに流れる鋳型IDが「10」、「11」といったように、上型のIDと下型のIDとが交互で連続する(
図5参照)。
【0032】
「基準画像フォルダNo」の項目には、その模型に対応する基準画像のデータの格納場所を示す情報が格納される。なお、基準画像テーブルに含まれる項目は上述したものに限定されず、他の項目が基準画像テーブルに含まれていてもよい。基準画像は、鋳型2が欠陥なしに造型されたときの鋳型2を上面から撮影した画像データである。この基準画像と撮像画像とを比較することで造型する鋳型2の欠陥を確認する。或る模型に基づく造型のパターンコードが「10」(下型)の場合は、表示制御装置10は、「基準画像フォルダNo」が「S10」の基準画像と比較することで欠陥を判定する。その次にはパターンコードが「11」(上型)の鋳型2が搬送されるので、表示制御装置10は、「基準画像フォルダNo」が「S11」の基準画像フォルダに記憶した基準画像と撮像画像を比較することで、欠陥を判定する。
図3の基準画像テーブルは、このような画像比較による欠陥判定をするためのデータ構造となっている。
【0033】
図4は、基準画像G0を例示した図である。基準画像G0は、予め用意され補助メモリ103に記憶される。基準画像G0は例えば、欠陥のない鋳型2を検査装置20が撮影した画像である。
【0034】
図5は、検査結果テーブルの内容を例示する図である。
図5の例では、検査結果テーブルは、「鋳型ID」、「パターンコード」、「検査日時」及び「検査結果」の各項目を互いに関連付けて記憶する。これらの項目のうち、「鋳型ID」の項目には、鋳型2を識別する識別情報が格納される。「パターンコード」の項目に格納されるIDは、上述の基準画像テーブルの「パターンコード」に格納されるIDと同様である。「検査日時」の項目には、欠陥検査が行われた日時を示す情報が格納される。「検査結果」の項目には、欠陥検査の結果を示す情報が格納される。
【0035】
「検査結果」の項目は、「判定」及び「検査結果画像フォルダNo」の項目を含む。「判定」の項目には、欠陥検査の判定結果を示す情報が格納される。欠陥検査の判定は、補助メモリ103に記憶された基準画像と撮像画像との比較により行われるもので、表示制御装置10のプログラムによって実行される。この
図5のデータテーブルは、上述したように、表示制御装置10の補助メモリ103に記憶される。判定結果を示す情報は例えば、「OK」、「NG」、又は「Fail」である。「OK」は、鋳型2が正常であることを示す。「NG」は、鋳型2が異常である(欠陥を有する)ことを示す。「Fail」は、検査自体に失敗したことを示す。「検査結果画像フォルダNo」の項目には、鋳型2の欠陥検査の結果を示す画像(以下「検査結果画像」という)の格納場所を示す情報が格納される。このように、表示制御装置10の補助メモリ103には、鋳型2の検査結果が、鋳型2を識別する識別情報と対応付けて記憶される。なお、検査結果テーブルに含まれる項目は上述したものに限定されず、他の項目が検査結果テーブルに含まれていてもよい。例えば、検査結果は、鋳型の欠陥を表すデータを含んでもよい。鋳型の欠陥を表すデータは、例えば、欠陥の位置、形状及び大きさの少なくともいずれかを示すデータである。
【0036】
図2の説明に戻る。表示制御装置10は、取得部11、記憶処理部12、特定部13、及び表示制御部14を備える。取得部11は、検査装置20から撮像画像を取得する取得処理を行う。また、取得部11は、撮像画像に基づいて鋳型を検査した検査結果を生成する。撮像画像は順次入力インタフェース104に入力されてプロセッサ101により補助メモリ103にストアされる。取得部11は、補助メモリ103に記憶されている基準画像と撮像画像を比較することで、欠陥の大きさの特定、及び、その大きさに伴う重畳画像の生成を行う。生成された重畳画像はディスプレイ31に表示される。そのようなプログラムは補助メモリ103に記憶されていて、プロセッサ101が補助メモリ103に或るプログラムに従って、一連の画像処理を行う。重畳画像は、鋳型の検査結果の一例である。
【0037】
取得部11は、撮像画像を基準画像と比較して、比較結果に応じて欠陥箇所を特定し、その欠陥箇所の結果の大きさを閾値との関係で特定し、その結果に応じて画像に重畳するオブジェクトを決定してから、撮像画像にオブジェクトを重畳した合成画像を生成する。生成した合成画像を記憶処理部12がメモリに一時ストアする(読み出し待ちの状態)。この読み出し待ちの合成画像が、表示すべきタイミング(具体的にはその画像を表示すべき鋳型が中子作業場に来たタイミング)でのラインコントローラ50のトリガーによりディスプレイ31に表示される。
【0038】
記憶処理部12は、検査結果をメモリに記憶する記憶処理を行う。検査結果が記憶されるメモリは、例えば自装置の補助メモリ103又は他の装置(例えば、ラインコントローラ)に設けられた補助メモリを含む。検査結果は例えば、鋳型2の欠陥の位置や程度を示すデータを含む。
【0039】
特定部13は、搬送路に沿って搬送される複数の鋳型2の中から、ディスプレイ31との位置関係が所定の条件を満たす鋳型を1又は複数特定する特定処理を行う。所定の条件は、例えば、ディスプレイ31との距離が予め定められた閾値未満である、ディスプレイ31との距離が最も近い、又は、ディスプレイ31の正面に位置している、といった条件である。表示制御部14は、特定処理により特定された鋳型2の検査結果を、ディスプレイ31に表示させる。
【0040】
上記の構成によれば、搬送路に沿って搬送される複数の鋳型2のうち、ディスプレイ31との位置関係が所定の条件を満たす鋳型2の検査結果がディスプレイ31に表示される。したがって、ディスプレイ31の近くに居る作業者は、作業対象である鋳型2の検査結果をディスプレイ31に表示される内容により把握することができる。
【0041】
なお、この実施形態では、検査装置20と表示制御装置10とが別体の装置として記載されているが、検査装置20と表示制御装置10とが一体の装置として構成されていてもよい。すなわち、検査装置20が表示制御装置10に係る機能を備えていてもよい。また、上述の表示制御装置10が、複数の別体の装置が協働することにより実現されてもよい。例えば、取得部11及び記憶処理部12を備える第1の装置と、特定部13及び表示制御部14を備える第2の装置とが別体の装置として構成されていてもよい。
【0042】
図1の説明に戻る。造型機40は、鋳型2を製造する装置である。造型機40は、上型と下型とを交互に造型し、搬送装置70は上型と下型とを交互に搬送する。造型機40は、鋳型2に関する情報(以下「鋳型情報」という)をラインコントローラ50から受信し、受信した鋳型情報に含まれるパターンコードで示される鋳型2を製造する。パターンコードは、造型パターンを一意に示す情報である。造型機40は、模型(図示略)とともにセットされた鋳枠(図示略)内に砂を投入し、鋳枠内の砂を加圧して固める。造型機40は、固められた砂から模型を取り出すことにより鋳型2を造型する。造型機40は鋳型2を造型する毎に、型送り情報をラインコントローラ50に送信する。ラインコントローラ50は、造型機40から型送り情報を受信する毎に、後述する鋳型情報を生成し、生成した鋳型情報を鋳型管理テーブルに登録する。
【0043】
入出力装置30は、作業者が各種の操作を行うための装置である。入出力装置30は、作業者により操作される操作部(図示略)、及び、鋳型2の検査結果を表示するディスプレイ31を備える。入出力装置30には、ディスプレイ31のほか、この中子セット場に居る作業者がディスプレイ31に表示された画像検査結果を目視して、その欠陥が注湯を止めるべき程度の欠陥なのか、画像判定では欠陥とされながらも目視・作業者の経験として注湯OKなのかを判断して注湯可否を指示する入力手段(例えばOK/NGのボタンや、ディスプレイ/タッチパネル上に表示されたOK/NGボタン等)もしくは音声でOK/NGを入力する入力装置が設けられている。入出力装置30は、検査装置20のセンサ21が撮影を行う場所よりも後の工程に対応する場所に設置される。
図1の例では、入出力装置30は中子セット場A1に設置されている。
【0044】
ディスプレイ31は、例えば液晶ディスプレイであり、表示制御装置10から供給されるデータに従い画面を表示する。ディスプレイ31は例えば、鋳型2の中子セット場に設置された表示装置であってもよく、また、例えば、作業者が携帯するスマートフォンやタブレット端末に含まれる液晶ディスプレイであってもよい。また、ディスプレイ31は、スマートグラス等のウェアラブルコンピュータであってもよい。なお、
図1の例では、表示制御装置10とディスプレイ31とが別体の装置である場合を図示しているが、表示制御装置10がディスプレイ31を備える構成であってもよい。
【0045】
ラインコントローラ50は、鋳造システム1を統括制御するコントローラである。この実施形態では、ラインコントローラ50は特に、造型機40、注湯機60、及び搬送装置70を制御する。ラインを流れる鋳型2の位置は、ラインコントローラ50による一括管理になっている。
【0046】
注湯機60は、鋳型2に溶湯を流し込む装置である。注湯機60は、ラインコントローラ50から送信される制御信号に従い、注湯エリアに位置する鋳型2を注湯対象として、鋳型2に溶湯を流し込む(注湯を行う)。注湯機60は、ラインコントローラ50から受信される制御信号に従って注湯の可否を判定し、注湯が不可である場合は、鋳型2への注湯を行わない。
【0047】
搬送装置70は、造型機40から注湯機60に鋳型2を搬送する装置である。搬送装置70は、例えばローラコンベヤ(図示略)又はレール(図示略)を有し、ローラコンベヤ又はレール上の搬送路に沿って複数の鋳型2を順次搬送する。搬送装置70は、ラインコントローラ50から送信される制御信号に従い、鋳型2を搬送する。
【0048】
検査装置20と注湯機60の間には、中子セット場A1が設けられている。中子セット場A1には、作業者が駐留しており、鋳型2に中子をセットする作業を行う。
【0049】
中子セット場A1を通過した鋳型(上型及び下型)は、注湯前に、上下枠を合わせる型合わせ装置110により、上下枠が型合わせされる。上下枠の型合わせの方法としては、例えば、上型を持ち上げ、反転させて下型に合わせる、といった方法が用いられる。
【0050】
型合わせされた上下枠は、搬送装置70により注湯エリアに搬送される。型合わせされた上下枠が注湯エリアに入ったときに、注湯前にラインコントローラ50の後述する鋳型管理テーブルに基づいて注湯の可否が判定される。上型または下型のいずれかがNGと目視判定されているものは、注湯が行われないように、ラインコントローラ50からの信号に基づいて注湯機60が制御される。
【0051】
なお、本実施形態では、造型機40が上型と下型とを交互に造型する場合を説明するが、造型の方法はこれに限られない。造型機40が、上型と下型とを一度に造型し、鋳型2が2つずつ搬送される(すなわち、上型と下型とがセットとして搬送される)方式であってもよい。この場合、造型機40、及び検査装置20はそれぞれ2台設けられる。また、搬送装置70は鋳型2を2つずつ搬送する。
【0052】
この場合、上型と下型とが一度に撮像され、基準画像とも一度に2つ比較してディスプレイ31には上下枠の検査結果が表示される。中子の作業者は、その2つの画像をみて、注湯可否を判断する。
【0053】
ラインコントローラ50は、鋳型情報を管理する鋳型管理テーブルを備えている。鋳型管理テーブルは例えば、ラインコントローラ50の補助メモリに記憶されている。鋳型情報は、鋳型2に関する情報であり、例えば、鋳型2を識別する識別情報、及び鋳型2の搬送路における位置を示す位置情報を含む。すなわち、鋳型管理テーブルには、鋳型2の識別情報が鋳型2の位置情報と対応付けて記憶される。
図6は、鋳型管理テーブルの内容を例示する図である。鋳型管理テーブルは、「鋳型ID」、「パターンコード」、「位置」、及び「鋳型検査結果」等の各項目が互いに関連付けられた鋳型情報を記憶している。これらの項目のうち、「鋳型ID」の項目には、鋳型2を識別する識別情報が格納される。「パターンコード」の項目には、対応する鋳型IDによって識別される鋳型2を製造するために用いられる模型(造型パターン)を識別する識別情報が格納される。
【0054】
「位置」の項目には、対応する鋳型IDによって識別される鋳型2の搬送路上の位置を示す情報(以下「位置情報」という)が格納される。この実施形態では、搬送路上における鋳型2の位置として、位置P1〜P19が設定されている。この位置情報Pは、造型機40でひとつの鋳型2が造型されて鋳型2が一つ分搬送されることで順次P1からP19まで順にインクリメントされていく。位置P1が搬送装置70の搬送方向の最上流に位置し、下流にいくに従って、位置P2、位置P3、…と位置情報が割り振られている。位置P1は、造型機40による造型が行われる位置である。位置P2〜P4は、造型機40と検査装置20との間の位置である。位置P5は、検査装置20による撮影が行われる位置である。位置P6〜P17は、検査装置20と注湯機60との間の位置である。位置P9は、ディスプレイ31の正面の位置である。位置P18は、注湯機60による注湯が行われる位置である。位置P19は、注湯された鋳型2を含む鋳枠が搬出される位置である。
【0055】
搬送装置70は、複数の鋳型2を搬送路上で順次移動させ、鋳型2を移動させる毎に、移動が完了した旨を示す信号(以下、「枠送り完了信号」という)を出力する。ラインコントローラ50は、搬送路において複数の鋳型2が移動される度に、鋳型2の識別情報に対応付ける位置情報を更新する更新処理を実行する。この実施形態では、搬送装置70から枠送り完了信号を受信するたびに、鋳型管理テーブルに記憶されている鋳型情報に含まれる「位置情報」を1つ進めるとともに、新たな鋳型情報を鋳型管理テーブルに追加する。追加された鋳型情報には「位置」に位置P1を示す位置情報が格納される。なお、位置P19にある鋳枠が枠送りされると、鋳造システム1から搬出されることになる。
【0056】
すなわち、ラインコントローラ50は、鋳型2を造型した際に新しい鋳型情報を生成する。また、鋳型2の造型が完了して鋳型2を排出するときに、搬送装置70が1つの鋳型2を移動させ、それに伴って、他のライン上の鋳型2もすべて型ひとつ分だけ移動し、各鋳型2の位置情報(P1、P2、…PN)が順次インクリメントされていく。インクリメントされた位置情報は、ラインコントローラ50の鋳型情報テーブルに記憶される。ラインコントローラ50は、鋳型管理テーブルに記憶されている位置情報により、ラインのどこにどの鋳型2があるかを把握する。
【0057】
「鋳型検査結果」の項目は、「判定」及び「注湯可否」の項目を含む。「判定」の項目には、欠陥検査の判定結果を示す情報が格納される。「判定」の項目に格納される情報は、表示制御装置10の検査結果テーブルの「判定」の項目に格納される情報と同様である。
【0058】
「注湯可否」の項目には、注湯を行うか否かを示す情報(以下「注湯可否情報」という)が格納される。本実施形態では、中子をセットする作業者が、ディスプレイ31に表示される検査結果を視認することにより、鋳型2が注湯可能であるかを判断する。注湯可能であるかは、鋳型2に注湯することにより鋳造される鋳物に欠陥が発生しないかを、ディスプレイ31に表示される検査結果を作業者が目視することにより判断する。作業者は、入出力装置30を用いて判断結果を入力する。入出力装置30は、作業者の操作に応じて注湯可否情報をラインコントローラ50に送信する。ラインコントローラ50は、入出力装置30から受信した注湯可否情報を鋳型管理テーブルの「注湯可否」の項目に記憶する。ラインコントローラ50は、鋳型管理テーブルの「注湯可否」の項目に記憶されている情報に従い、注湯機60へ制御信号を送信する。なお、鋳型管理テーブルに含まれる項目は上述したものに限定されず、他の項目が鋳型管理テーブルに含まれていてもよい。
【0059】
(動作)
図7は、鋳造システム1における鋳物の製造工程を示す工程図である。造型工程S01において、ラインコントローラ50は、造型機40に造型を指示する旨の制御信号及び位置Pの鋳型情報を送信する。造型機40は、ラインコントローラ50から受信される鋳型情報に含まれるパターンコードで示される種類の鋳型2を製造する。
【0060】
搬送工程S02において、ラインコントローラ50は、搬送装置70に鋳型2の1ピッチ分の搬送を指示する制御信号(以下「搬送指示信号」という)を送信する。搬送装置70は、ラインコントローラ50から搬送指示信号を受信する毎に、搬送路上の鋳型2を1ピッチずつ搬送する制御を行う。鋳型2の搬送が完了すると、搬送装置70は、ラインコントローラ50に枠送り完了信号を送信する。ラインコントローラ50は、搬送装置70から枠送り完了信号を受信するたびに、搬送路上の鋳型2の鋳型情報に含まれる位置情報を更新する。搬送装置70により搬送路上の鋳型2が1ピッチずつ移動し、この移動が繰り返されることで、造型機40の位置にある鋳型2が検査装置20の位置まで移動する。
【0061】
検査工程S03において、検査装置20のセンサ21は、検査エリア(位置P5)に位置する鋳枠に形成された鋳型2を撮像(画像化)する。本実施形態では、センサ21は、位置P5に移動してきた鋳型2の上方から鋳型2を撮像する。センサ21の撮像範囲は、少なくとも位置P5にある鋳型2の表面(上面の全体)が撮像されるように予め設定されている。表示制御装置10は、位置P5にある鋳型2の鋳型情報に含まれるパターンコードと、生成した撮影データとを用いて、鋳型2の検査を行う。
【0062】
鋳型2の検査は、例えば以下のようにして行われる。表示制御装置10は、センサ21により撮像された画像と予め登録された基準画像との差分を表す差分画像を生成し、生成した差分画像を粒子解析し、差分画像内の塊(ブロブ)を検出することにより、欠陥部分を特定する処理を行う。
【0063】
表示制御装置10は、検査結果を自装置の補助メモリ103に記憶する。検査結果は例えば、特定された欠陥部分を表す画像データを含む。この記憶処理が繰り返され、複数の鋳型2の検査結果が補助メモリ103に蓄積される。
【0064】
搬送工程S04において、ラインコントローラ50は、搬送工程S02と同様の処理を行い、搬送路上の鋳型2を1ピッチずつ搬送する。搬送装置70により搬送路上の鋳型2が1ピッチずつ移動し、この移動が繰り返されることで、検査装置20の位置にある鋳型2が中子セット場A1まで移動する。
【0065】
中子セット工程S05において、表示制御装置10は、位置P9に位置する鋳枠に形成された鋳型2の検査結果をディスプレイ31に表示させる。ディスプレイ31は、鋳型2が中子セット場A1に停止している間、検査結果を表示し続ける。中子セット場A1の作業者は、ディスプレイ31に表示される鋳型2の検査結果に応じて、鋳型2に中子をセットする。例えば、作業者は、検査結果が正常である鋳型2に中子をセットし、検査結果が異常である鋳型2に中子をセットしない、といった作業を行う。この中子セットの作業と併せて、作業者は、正常と目視判定した場合には注湯OK、異常と目視判定した場合にはNGの注湯可否操作を行う。
【0066】
搬送工程S06において、ラインコントローラ50は、搬送工程S02と同様の処理を行い、搬送路上の鋳型2を1ピッチずつ搬送する。搬送装置70により搬送路上の鋳型2が1ピッチずつ移動し、この移動が繰り返されることで、中子セット場A1の鋳型2が注湯機60の位置まで移動する。
【0067】
注湯工程S07において、ラインコントローラ50は、注湯を指示する制御信号及び鋳型情報を注湯機60に送信する。注湯機60は、ラインコントローラ50から受信される制御信号に従い、鋳型情報に含まれるパターンコードに基づいて注湯を行う。このとき、ラインコントローラ50は、鋳型2の検査結果が正常である場合、鋳型2への注湯を指示する制御信号を注湯機60に送信し、検査結果が異常である場合、鋳型2への注湯を行わない旨の制御信号を注湯機60に送信する。
【0068】
搬送工程S08において、ラインコントローラ50は、搬送工程S02と同様の処理を行い、搬送路上の鋳型2を1ピッチずつ搬送する。搬送装置70により搬送路上の鋳型2が1ピッチずつ移動し、この移動が繰り返されることで、注湯機60の位置で注湯が行われた鋳型が鋳造システム1から搬出される。
【0069】
以上のように、鋳造システム1では、造型機40が鋳型2を製造し、表示制御装置10が鋳型2を検査する。そして、検査結果が正常である鋳型2に中子がセットされ、その後、中子がセットされた鋳型2に注湯機60が注湯を行う。また、鋳造システム1では、複数の鋳型2が搬送装置70により位置P1〜P19まで順に搬送される。すなわち、ひとつの鋳型2に対する造型工程S01と、別の鋳型2に対する検査工程S03と、さらに別の鋳型2に対する中子セット工程S05と、またさらに別の鋳型2に対する注湯工程S07とは、並行して行われる。
【0070】
図8は、表示制御装置10及びラインコントローラ50が行う検査結果の表示処理の流れを例示するフローチャートである。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行されてもよい。
【0071】
本実施形態において、中子セット場A1に在る、作業者の目の前にある鋳型2の識別情報は、その位置との関係でラインコントローラ50が把握している。中子セット場A1に在る、作業者の目の前にある鋳型2の検査結果の画像を、中子セット場A1に在るディスプレイ31に表示するため、ラインコントローラ50は、表示制御装置10に、中子セット場A1の作業者の目の前にある鋳型2の検査画像を読み出すよう、鋳型2の識別情報を表示制御装置10に送信する。
【0072】
ステップS101において、ラインコントローラ50は、搬送路において複数の鋳型2が移動される毎に、鋳型2の検査結果に対応付ける位置情報を更新する。
【0073】
ステップS102において、記憶処理部12は、センサ21により撮像された画像を用いて検査された鋳型2の検査結果を示す検査結果データを、鋳型2の識別情報と紐付けて自装置の補助メモリ103に記憶する。検査結果は例えば、表示制御装置10により特定された欠陥部分を表す画像データを含む。鋳型2が検査される毎にこの記憶処理が繰り返され、複数の鋳型2の検査結果が補助メモリ103に蓄積される。
【0074】
ステップS103において、ラインコントローラ50は、表示対象とする鋳型2を特定する。本実施形態では、ラインコントローラ50は、搬送路に沿って搬送される複数の鋳型2の中から、ディスプレイ31との位置関係が所定の条件を満たす鋳型2を特定する。この実施形態では、特定部13は、ディスプレイ31に最も近い位置を表す位置情報(位置P9の位置情報)が対応付けられた鋳型を、所定の条件を満たす鋳型2として特定する。なお、ラインコントローラ50が、検査結果を表示する鋳型2として、複数の鋳型2を特定してもよい。例えば、ラインコントローラ50が、ディスプレイ31からの距離が閾値以下である1又は複数の鋳型2を、所定の条件を満たす鋳型として特定してもよい。ラインコントローラ50は、特定した鋳型2の識別情報を表示制御装置10に送信する。表示制御装置10は、ラインコントローラ50から識別情報を受信する。表示制御装置10の特定部13は、受信した識別情報に対応する鋳型2を、表示対象とする鋳型2として特定する。
【0075】
ステップS104において、特定部13は、特定した鋳型2の検査結果画像(合成済みの表示用画像)を補助メモリ103から読み出す。本実施形態では、表示制御装置10は、ラインコントローラ50からの識別情報に基づいて、補助メモリ103に記憶されている検査結果画像(撮像画像と基準画像とを比較し、その差分に基づいて撮像画像上の型落ち部分にオブジェクト表示を重畳した合成画像)を読み出し、その表示用の画像データを入出力装置30に送る。入出力装置30はその検査結果画像をディスプレイ31に表示する。
【0076】
ステップS105において、表示制御部14は、特定された鋳型の鋳型情報の示す検査結果を、ディスプレイ31に表示させる。すなわち、ディスプレイ31には、ディスプレイ31との距離が最も近い鋳型2の検査結果が表示される。なお、ディスプレイ31に、複数の鋳型2の検査結果が表示されてもよい。
【0077】
図9は、ディスプレイ31に表示される画面を例示した図である。画面G1において、検出された欠陥に対応する領域に矩形画像f1〜f3が表示される。この例では、欠陥が検出された部分の大きさに相当する矩形図形を、撮像画像に重畳して表示することにより、どの位置にどの程度の大きさの欠陥が検出されたかが表されている。なお、検査結果の表示方法はこれに限定されず、他の画面により検査結果が表示されてもよい。
【0078】
ところで、検査装置20における画像判定で型落ちのOK/NGを判定しても、鋳型2の形状によっては、型落ちのNGにする必要のない部分、例えば湯道と呼ばれる鋳物製品から切り離されるような部分にも、NG判定がされることがある。これをそのままNGとして注湯不可とすると、ライン全体の歩留まりが悪くなる。
【0079】
逆に、検査装置20における画像での型落ち判定がOKとなるような比較的小さな鋳型上の欠陥であっても、実際の鋳物製品になったときの製品不良として容認できないような欠陥もあり、このような鋳型に注湯して鋳物を制作すると、不良率が高まりライン全体の歩留まりが悪くなる。
【0080】
従い、その鋳型に注湯してよいか否かは、機械的な画像判定だけでなく、最終的に作業者がその画像による判定情報を参考にしながら、目視により最終判定をする必要がある。
【0081】
鋳造ライン上に居る作業者は、基本的に中子セット場A1か、注湯機60の周辺のみであり、型落ちを目視確認できるのは、現状の鋳造ラインでは中子セット場A1の作業者となる。
【0082】
一方で、型落ちを画像判定するための検査装置20は、中子セット場A1より少し手前の位置で撮像し、OK/NG判定することになるので、中子セット場A1の作業者に、目の前にある鋳型2の判定結果の画像を表示して見せるには、先に検査して記憶した画像を、その鋳型2が中子セット場A1にきた時点で、ラインコントローラ50の位置制御信号により表示制御装置10の検査結果テーブルから読み出して、ディスプレイ31に表示する。
【0083】
中子セット場A1の作業者は、ディスプレイ31に表示された画像を見ながら、目の前にある鋳型の画像、特に型落ち(NG)であると表示された部分を目視し、画像判定通りにNGとするか、そのまま注湯しても問題ないかを判定する。作業者は、自身の判定結果(OK/NG)を入出力装置30の操作部を用いて入力する。
【0084】
作業者による目視判定結果の入力は、簡易な2つのボタンでもよいし、PCのキーでもよいし、音声による入力その他、各種の公知の入力手段が採用され得る。中子セット場A1の作業者は、中子セットのほか、型合わせ前の各種作業があり、型落ちの目視判定・結果の入力をゆっくり行う時間がない。そのため、簡易に目視による判定結果を入力できることが好ましい。
【0085】
作業者の入力した目視判定結果(OK/NG)は、ラインコントローラ50に送信され、鋳型管理テーブルの目視判定結果として記憶される。
【0086】
以下に、
図10(a)にラインコントローラ50における鋳型管理テーブルの更新プロセスのフローチャートを示す。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行されてもよい。
【0087】
ステップS201において、ラインコントローラ50は、入出力装置30から作業者による判定結果を示す情報を受信する。
【0088】
ステップS202において、ラインコントローラ50は、受信した判定結果を鋳型管理テーブルに登録する。
【0089】
このように、中子セット場に居る作業者の目視による判定結果がラインコントローラ50に更新されることにより、
図6に示すように、個々の鋳型ごとに、注湯可否の情報が鋳型管理テーブルに登録されていくことになる。
【0090】
次に、上記のように注湯可否情報を更新登録した鋳型管理テーブルに基づき、ラインコントローラ50による注湯制御について、
図10(b)を用いて説明する。
【0091】
図10(b)はラインコントローラ50による注湯機60への注湯制御のフローチャートを示す。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行されてもよい。
【0092】
ステップS203において、ラインコントローラ50は、注湯機60に到着している鋳型2を鋳型IDにて特定する。
【0093】
ステップS204において、注湯機60に到着している鋳型2を鋳型IDに基づき、その鋳型の注湯可否を示す注湯可否信号を読み出す。
【0094】
ステップS205において、注湯可否信号が「注湯不可」の場合、ラインコントローラ50は、注湯機60に対し、注湯不可信号を出力する(ステップS206)。注湯機60は、この「注湯不可」の信号を受信すると、その鋳型には注湯を行わずに工程を進める。
【0095】
一方、ステップS205において、注湯可否信号が「注湯可」の場合、ラインコントローラ50は、注湯機60に対し、注湯可信号を出力する(ステップS207)。なお、この注湯機60に対するラインコントローラ50による「注湯可」信号の出力は、場合によっては無くても良い。これは、注湯機60が通常は到着した鋳型すべてに順次注湯することを基本に動作するため、注湯機60がラインコントローラ50から「注湯不可」の信号を受信しなければ、すべて注湯するように制御されることにより実現される。
【0096】
このようにして、注湯機60は、注湯機60の位置に到着した鋳型2に対し、ラインコントローラ50から受信した注湯可否信号に基づき注湯制御を行う。受信した注湯可否信号が「可」を示す場合、もしくは何も信号を受信しない場合、注湯機60は鋳型2に対し注湯を行う。一方、受信した注湯可否信号が「不可」を示す場合、注湯機60は鋳型2に対し注湯を行わない。
【0097】
ところで、従来の装置では、鋳型2の検査結果は検査装置20が設置されている場所において表示されることが一般的であった。そのため、例えば中子セット場A1にいる作業者が検査結果を把握するためには、検査装置20が設置されている場所まで移動する必要があった。それに対しこの実施形態では、搬送路に沿って搬送される複数の鋳型2のうち、ディスプレイ31の近傍に位置する鋳型2の検査結果がディスプレイ31に表示される。したがって、ディスプレイ31の近くに居る作業者は、作業対象である鋳型2の検査結果を、ディスプレイ31に表示される内容により把握することができる。このように、この実施形態では、検査結果がすぐに表示されるのではなく、検査対象である鋳型2が下流の工程の作業場(例えば、中子セット場A1)に移動したタイミングで表示される。作業者が作業する場所で検査結果が表示されることにより、作業対象である鋳型2の検査結果の把握に要する時間が削減される。
【0098】
なお、この実施形態1では、表示制御装置10はラインコントローラ50とは別体の装置として構成されていた。これに代えて、ラインコントローラ50が表示制御装置10の機能を有していてもよい。すなわち、ラインコントローラ50と表示制御装置10とが一体の装置として構成されていてもよい。
【0099】
また、この実施形態1では、鋳型管理テーブルがラインコントローラ50の補助メモリに記憶されている構成を説明したが、鋳型管理テーブルは、表示制御装置10の補助メモリ103に記憶されていてもよく、また、他の装置に記憶されていてもよい。また、実施形態2では、鋳型2の検査結果が表示制御装置10の補助メモリ103に記憶されている構成を説明したが、鋳型2の検査結果が表示制御装置10に記憶されておらず、他の装置に記憶されていてもよい。
【0100】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態が上述した実施形態1と異なる点は、表示制御装置が行う鋳型の特定処理(
図8のステップS103の処理)の内容が異なる点である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0101】
図11は、この実施形態に係る表示制御装置10A及び入出力装置30の構成を示すブロック図である。上述の実施形態1では、表示制御装置10Aの特定部13は、鋳型情報に含まれる位置情報により、ディスプレイ31に検査結果を表示する鋳型2を特定した。それに対しこの実施形態では、特定部13は、搬送路に沿って搬送される複数の鋳型2のうち、鋳型2に付された識別情報を読み取る読取装置により読み取られた識別情報を用いて、表示対象とする鋳型2を特定する。
【0102】
この実施形態において、入出力装置30は、例えばラップトップ型のパーソナルコンピュータである。入出力装置30は、作業者により携帯されるスマートフォン又はタブレット端末であってもよい。入出力装置30は、プロセッサ301、主メモリ302、補助メモリ303、入力インタフェース304、出力インタフェース305、読取装置306、及びディスプレイ31を備える。プロセッサ301は、入出力装置30を制御するプロセッサであり、例えば、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、又はこれらの組み合わせ等である。主メモリ302は、例えば半導体RAMである。補助メモリ303は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせ等である。補助メモリ303には、入出力装置30の動作をプロセッサ301に実行させるためのプログラムが格納されている。プロセッサ301は、補助メモリ303に格納された制御プログラムを主メモリ302上に展開し、展開した制御プログラムに含まれる各命令を実行する。
【0103】
読取装置306は、ディスプレイ31との位置関係が所定の条件を満たす鋳型2に付された識別情報を読み取る。読み取られる識別情報は、例えば、鋳型2(又は鋳枠)に記された識別番号を表す文字列、二次元バーコード、又は無線タグに書き込まれた識別情報である。入出力装置30の読取装置306は、例えば二次元バーコードや文字列を撮影するカメラ、又は近傍に位置する無線タグから情報を読み取るリーダである。すなわち、この例で、読取装置306は、ディスプレイ31の近傍に位置する鋳型に付された識別情報を読み取る。読取方法としては、例えば、読取装置306は、ディスプレイ31の正面に位置する鋳型2(又は鋳枠)に付された二次元バーコード又は文字列を撮影することにより、識別情報を読み取ってもよい。また、例えば、読取装置306は、ディスプレイ31の正面に位置する鋳型2(又は鋳枠)に付された無線タグから識別情報を読み取ってもよい。
【0104】
入力インタフェース304は、ディスプレイ31に表示する検査結果を表示制御装置10Aから取得する。出力インタフェース305は、読取装置306が読み取った識別情報を表示制御装置10Aに出力する。なお、
図8にはひとつの入力インタフェース304及びひとつの出力インタフェース305が図示されているが、入出力装置30が複数の入力インタフェース及び/又は複数の出力インタフェースを備えていてもよい。
【0105】
読取装置306が読み取った識別情報は、表示制御装置10Aに出力される。表示制御装置10Aは、入出力装置30から識別情報を取得する取得処理を実行する。取得される識別情報は、読取装置306が読み取った識別情報、すなわちディスプレイ31の近傍に位置する鋳型に付された識別情報である。表示制御装置10Aは、入出力装置30から取得した識別情報に対応する検査結果を補助メモリ103から取得し、取得した検査結果を入出力装置30に供給する。入出力装置30は、表示制御装置10Aから取得した検査結果をディスプレイ31に表示させる。
【0106】
この実施形態では、入出力装置30の近傍に位置する鋳型2に付された識別情報を読取装置306が読み取り、表示制御装置10Aが、読み取られた識別情報に対応する鋳型2の検査結果をディスプレイ31に表示させる。これにより、作業者は、作業対象である鋳型2の検査結果を、ディスプレイ31に表示される内容により把握することができる。
【0107】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。この実施形態において、表示制御装置10は例えば、作業者により携帯されるスマートフォン又はタブレット端末である。上述の実施形態1では、表示制御装置10の特定部13は、鋳型情報に含まれる位置情報により、ディスプレイ31に検査結果を表示する鋳型2を特定した。それに対しこの実施形態では、表示制御装置10の特定部13は、鋳型2(又は鋳枠)に付された識別情報を用いて、ディスプレイ31に表示する検査結果を特定する。なお、実施形態3では、鋳型2の検査結果は、表示制御装置10には記憶されておらず、ラインコントローラ50の鋳型管理テーブルに記憶されている。
【0108】
表示制御装置10は読取装置(図示略)を備える。読取装置は鋳型2(又は鋳枠)に付された識別情報を読み取る。読み取られる識別情報は、例えば、鋳型2(又は鋳枠)に記された文字列、二次元バーコード、又は無線タグに書き込まれた識別情報である。読取装置は、例えば二次元バーコードや文字列を撮影するカメラ、又は近傍に位置する無線タグから情報を読み取るリーダである。
【0109】
読取装置は、近傍に位置する鋳型2(又は鋳枠)に付された識別情報を読み取る。表示制御装置10は、表示する検査結果の取得要求を、通信インタフェース(図示略)を介してラインコントローラ50に送信する。この取得要求には、読取装置により読み取られた識別情報が含まれる。ラインコントローラ50は、取得要求を受信すると、受信した取得要求に含まれる識別情報を自装置(ラインコントローラ50)に記憶された鋳型管理テーブルから検索し、検索された識別情報に対応付けられた検査結果データを読み出す。ラインコントローラ50は、読み出した検査結果データを表示制御装置10に送信する。表示制御装置10は、ラインコントローラ50から検査結果データを受信すると、受信した検査結果データの示す検査結果を、ディスプレイ31に表示させる。これにより、読取装置が読み取った識別情報に対応する鋳型2の検査結果がディスプレイ31に表示される。
【0110】
この実施形態では、作業者が表示制御装置10を携帯して移動する場合であっても、移動先の位置の近傍にある鋳型2の検査結果がディスプレイ31に表示される。作業者は、作業対象である鋳型2の検査結果を、ディスプレイ31に表示される内容により把握することができる。
【0111】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態が上述の実施形態1と異なる点は、表示制御装置10が行う検査結果の表示制御処理の内容が異なる点である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0112】
図12は、表示制御装置10及びラインコントローラ50が行う検査結果の表示制御処理の流れを例示するフローチャートである。
図12に示される処理が上述の実施形態1において説明した
図8の処理と異なる点は、ステップS102とステップS103との間で、ステップS201の処理が行われる点である。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行されてもよい。
【0113】
ステップS201において、表示制御装置10は、ディスプレイ31の位置を特定する位置特定処理を行う。位置の特定方法としては、例えば、作業者が入出力装置30を用いてディスプレイ31の位置を示す情報を入力し、入力された情報を表示制御装置10が取得し、取得した情報を用いてディスプレイ31の位置を特定してもよい。また、他の例として、例えば、表示制御装置10が、ディスプレイ31が受信するGPS信号に従って位置を特定してもよい。
【0114】
ステップS103において、特定部13は、ステップS201で特定したディスプレイ31の位置との位置関係が所定の条件を満たす鋳型2を特定する。この実施形態では、例えばディスプレイ31が移動された場合であっても、ディスプレイ31の近傍の鋳型2の検査結果がディスプレイ31に表示される。これにより、ディスプレイ31の近くに居る作業者は、作業対象である鋳型2の検査結果を、ディスプレイ31に表示される内容により把握することができる。
【0115】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0116】
この実施形態が上述した実施形態1と異なる点は、表示制御装置10が行う検査処理の内容が異なる点、及びラインコントローラ50が検査結果の内容により後工程での制御内容を異ならせる点である。この実施形態では、表示制御装置10は、センサ21により撮影される鋳型2の画像を解析することにより、鋳型2における型落ちを検査する。また、表示制御装置10は、撮影された鋳型2の画像において、型落ちが検出された領域が予め定められた部分領域に含まれているか否かを判定することにより、鋳型2を用いて形成される鋳物が修復可能であるか修復不能であるかを判定する。
【0117】
鋳型2に型落ちが発生することにより、その鋳型を用いて形成される鋳物には欠け等の不良が発生する場合がある。しかしながら、形成された鋳物に欠け等の不良が発生した場合であっても、不良が発生した箇所によっては、修復が可能な場合がある。この実施形態では、ラインコントローラ50は、鋳物の修復が可能な場合、型落ちが発生している場合でも鋳型2を用いて鋳物を製造する一方、修復が不可能な場合、型落ちが発生している鋳型は注湯を行わない、といった制御を行う。
【0118】
図13は、部分領域を例示する図である。
図13の例では、部分領域R1〜R4が設定されている。部分領域は、パターンコード毎に予め設定されている。また、部分領域毎に、鋳物が修復可能であるか修復不能であるかが設定されている。造型パターン毎の部分領域及び修復可能か否かの情報は、鋳造システム1の作業者等により登録及び変更される。
【0119】
図14は、部分領域毎に修復可能であるか修復不可能であるかが設定された、修復判定テーブルの内容を例示した図である。この修復判定テーブルは、例えば表示制御装置10のメモリに記憶される。修復判定テーブルは、「パターンコード」、「部分領域」、及び「修復の可否」の各項目が互いに関連付けられている。これらの項目のうち、「パターンコード」の項目には、鋳型2を製造するために用いられる造型パターンを識別する識別情報が格納される。「部分領域」の項目には、対応する造型パターンにおいて設定された部分領域を識別する識別情報が格納される。
図14の例では、パターンコードが「A」の造型パターンの部分領域として、部分領域R1〜R4が設定されている。
【0120】
「修復の可否」の項目には、鋳型2の対応する部分領域に型落ちがある場合において、型落ちが発生した鋳型2を用いて鋳物を生成した場合に、その鋳物が修復可能であるかを示す情報(以下「修復可否情報」という)が格納される。
図14の例では、「可」又は「不可能」の値が設定される。「可」は修復が可能である旨を示す。「不可能」は修復が不可能である旨を示す。
【0121】
図14の例において、例えば、部分領域R3において型落ちが検出された場合、表示制御装置10は、鋳物の修復が不可能である旨を検査結果として特定する。一方、部分領域R1、R2又はR4において型落ちが検出された場合、表示制御装置10は、型落ちが発生しているものの、鋳物の修復が可能である旨を検査結果として特定する。その後、鋳型2が中子セット場A1に移動したタイミングにおいて、検査結果データの示す検査結果の内容がディスプレイ31に表示される。
【0122】
また、ラインコントローラ50は、鋳物の修復が可能な鋳型2については注湯を行う一方、鋳物の修復が不可能な鋳型2については注湯を行わないよう、注湯機60に制御信号を送信する。注湯機60は、ラインコントローラ50から受信される制御信号に従い、鋳型2に対する注湯制御を行う。
【0123】
鋳型2に型落ちが発生している場合において、型落ちが発生している領域によっては、形成される鋳物が修復可能である場合がある。また、特定の領域に型落ちが発生している場合には、その鋳型で形成される鋳物は修復不可能である場合もある。このように、鋳型2のどの箇所に型落ちが発生しているかによって、その鋳型で形成される鋳物が修復可能であるか修復不可能であるかが異なってくる。従来では、鋳型2に型落ちが発生している場合において、鋳物が修復可能であるか否かについては、作業者等が目視により判断を行っていた。それに対しこの実施形態では、表示制御装置10が、鋳物が修復不能であるか否かを注湯する前に判定し、ディスプレイ31が判定結果を作業者等に提示することができる。
【0124】
この実施形態において、ラインコントローラ50は、型落ちの発生が検出された部分領域に応じた注湯制御を行ってもよい。例えば、ラインコントローラ50は、型落ちの発生が検出された部分領域には注湯を行わず、それ以外の領域にのみ注湯を行うように、注湯機60を制御してもよい。注湯機60は、ラインコントローラ50から受信される制御信号に応じて、指定された部分領域には注湯を行わない、といった制御を行う。
【0125】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0126】
図15は、本実施形態に係る表示制御装置10Bの構成を示すブロック図である。表示制御装置10Bが、上述した実施形態1に係る表示制御装置10と異なる点は、表示制御装置10Bが出力部15を更に有している点である。
【0127】
出力部15は、補助メモリ103に記憶された鋳型毎の検査結果の全部又は一部を、ディスプレイ31と異なる第2のディスプレイ32に出力する出力処理を行う。第2のディスプレイ32は、鋳型2が搬送される作業場とは異なる場所、例えば管理事務所に設置されている。この実施形態では、出力部15は、補助メモリ103に記憶された検査結果のうち、所定の条件を満たすものを第2のディスプレイ32に出力する。所定の条件は、例えば、検査結果がNGである、NGであるが修復可能である、又は、NGであって修復不可能である、といった条件である。
【0128】
この実施形態によれば、補助メモリ103に記憶された鋳型毎の検査結果の全部又は一部が第2のディスプレイ32に表示される。したがって、表示制御装置10Bは、鋳型2についての検査結果の全部又は一部を、例えば鋳造ラインの管理者等に第2のディスプレイ32により提示することができる。
【0129】
〔実施形態7〕
図16は、本実施形態に係る鋳造システム1Cの概略構成を示す図である。
図16の例では、1つの工場の中に複数の鋳造ラインL1、L2、L3、…が併設されている。鋳造ラインL1、L2、L3、…はそれぞれ、
図2に示した鋳造システム1を含む。特に、鋳造ラインL1、L2、L3、…はそれぞれ、表示制御装置10、入出力装置30、ラインコントローラ50、及びゲートウェイGWを含む。表示制御装置10、入出力装置30、及びラインコントローラ50は、上述の実施形態1のそれらと同様である。
【0130】
表示制御装置10、ラインコントローラ50、及び入出力装置30に記憶されている各データは、ゲートウェイGW、及びネットワーク4を通じてその工場の管理サーバ5に統合して整理及び管理される。
【0131】
統合・整理された管理サーバ5のデータは、現状の、あるいは過去データを含むトレーサビリティデータとして工場管理のPC又はモバイル端末等の監視モニタ6に、その状況が表示される。監視モニタ6には、各ラインの稼働状況、型落ち状況(不良率、等)、不良原因の解析、対策アドバイス、等が表示される。例えば、その工場の各ラインでの全体の不良率のほか、型落ちの有無、どのラインでいつ型落ちが発生したか、といった内容がグラフィックで表示される。
【0132】
型落ちしているとの情報に関しては、その鋳型2に関する他の情報、例えば、その鋳型2に関する砂性状データ、造型時の制御データ、鋳型強度の特定結果データ、気温、温度等の外部情報、実際の検査結果画像、も表示される。
【0133】
トレーサビリティデータとしては、過去の不良率と、不良に占める型落ちによる不良発生率の表示、対策のアドバイス等を行えるようになっている。
【0134】
〔実施形態8〕
図17は、本実施形態に係る鋳造システム1Dの概略構成を示す図である。鋳造システム1Dは、1つの工場8の中に複数の鋳造ラインが併設された鋳造システム1Cを、複数備える。各鋳造システム1Cでは、鋳造ライン毎に管理が行われる。各鋳造システム1Cの管理サーバ5は、ネットワーク4を介して統合監視サーバ7と接続される。統合監視サーバ7は、複数の管理サーバ5からデータを受信し、データの整理及び管理を行う。
【0135】
本実施形態では、複数ラインを含む工場を、複数監視することができる。この場合、工場毎の管理は、上述の実施形態7のそれと同様である。
【0136】
多工場の管理においては、各工場の統合監視サーバ7に整理、記憶された各種データが、ネットワーク4を通じて、各工場8の管理サーバ5に集められる。集められた各種データは、実施形態7と同様に、整理及び記憶され、各工場8において、不良率や、型落ちの状況を画面等で監視できるようになっている。
【0137】
〔変形例〕
上述の各実施形態では、表示制御装置10は、鋳型2を撮影した撮像画像と予め登録された基準画像との差分を表す差分画像を生成し、生成した差分画像内の塊を検出することにより、欠陥部分を特定する処理を行った。表示制御装置10が行う検査処理の内容は上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、表示制御装置10(又は他の装置)が、機械学習により鋳型2の検査を行ってもよい。この場合、表示制御装置10(又は他の装置)は、鋳型2を撮影した画像を表す撮影データと、撮影データに対応する検査結果との組を用いて、撮影データと検査結果との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成する。その後、表示制御装置10(又は他の装置)は、生成した学習済モデルを用いて検査結果を推定する。学習済モデルは例えば、CNN(Convolution al Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)構造を有するモデルで実現可能である。
【0138】
この場合、センサ21により撮影された画像データが入力データとして学習済モデルに入力される。学習済モデルは例えば、畳み込み層、プーリング層、結合層とから成る。畳み込み層において、入力データはフィルタリングによる情報の畳み込みがなされる。畳み込みを経たデータは、プーリング層においてプーリング処理が施される。これにより、データ中の特徴の位置変化に対するモデルの認識能力が向上する。プーリング処理を経たデータは、結合層で処理されることによって、学習済モデルの出力データ、すなわち、鋳型2の欠陥の検査結果の形式に変換されて出力される。
【0139】
すなわち、学習済モデルに入力された画像データを、上記の各層をこれらの順に通過させることにより、鋳型2の欠陥の検査結果が出力される。なお、学習済モデルは、CNN構造を有するモデルに限られない。学習済モデルとして、例えば、MTRNN(Multi Timescale RNN)、LSTM(Long Short Term Memory)等のRNN(Recurrent Neural Network)、ARIMA(AutoRegressive, Integrated and Moving Average)モデル等が用いられてもよい。
【0140】
上述の実施形態5では、鋳造システム1の作業者等により鋳物の修復が不可能な部分領域が設定された。修復が不可能な部分領域の設定方法は、上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、表示制御装置10(又は他の装置)が、機械学習により修復が不可能な部分領域を特定してもよい。この場合、表示制御装置10(又は他の装置)は、鋳型2を撮影した画像を表す撮影データと、撮影データに対応する、修復が不可能な部分領域を示す部分領域データとの組を用いて、撮影データと部分領域データとの相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成する。その後、表示制御装置10(又は他の装置)は、生成した学習済モデルを用いて、修復が不可能な部分領域を推定する。学習済モデルは例えば、CNN構造を有するモデルで実現可能である。
【0141】
この場合、センサ21により撮影された画像データが入力データとして学習済モデルに入力される。学習済モデルは例えば、畳み込み層、プーリング層、結合層とから成る。畳み込み層において、入力データはフィルタリングによる情報の畳み込みがなされる。畳み込みを経たデータは、プーリング層においてプーリング処理が施される。これにより、データ中の特徴の位置変化に対するモデルの認識能力が向上する。プーリング処理を経たデータは、結合層で処理されることによって、学習済モデルの出力データ、すなわち、修復の可否の判定結果の形式に変換されて出力される。
【0142】
すなわち、学習済モデルに入力された画像データを、上記の各層をこれらの順に通過させることにより、修復の可否の判定結果が出力される。なお、学習済モデルは、CNN構造を有するモデルに限られない。学習済モデルとして、例えば、MTRNN、LSTM等のRNN、ARIMAモデル等が用いられてもよい。
【0143】
また、この態様において、作業者が部分領域の設定操作を行う際に、表示制御装置が機械学習の結果により特定される部分領域をディスプレイに表示する等して作業者に提示してもよい。作業者は、表示される機械学習の結果を参照しつつ、部分領域の設定を行う。
【0144】
上述の実施形態1では、ディスプレイ31が中子セット場A1に設置される場合について説明した。ディスプレイ31は、中子セット場A1以外の場所に設置されていてもよい。ディスプレイ31は、検査対象である鋳型2の移動先である下流の工程に設置されていればよい。ディスプレイ31は例えば、注湯機60により注湯が行われる場所に設置されていてもよい。
【0145】
上述の各実施形態における表示制御装置10が実装する機能が、複数の装置により分担されて実装されてもよい。例えば、上記実施形態1に係る表示制御装置10の少なくとも一部の機能が、クラウド上のサーバに実装されていてもよい。この場合、表示制御装置10とサーバがネットワークを介して通信することにより、上記実施形態1に係る表示制御装置10が実現される。
【0146】
この場合、サーバは、型落ち検出装置として演算と画像データの保管機能に加えて、型落ちが発生しないようにするために砂性状や造型時のデータとの関連を分析して、対策などをアドバイスする。
【0147】
サーバには例えば、鋳型2の検査に関するデータ、及び、ライン上の各装置から得られる分析用データが蓄積される。鋳型2の検査に関するデータは例えば、検査装置20で撮影した画像と検査に使用した基準画像、検査画像に型落ち部分をマーキングした合成画像、検査処理に関するパラメータである。分析用データは例えば、造型前の砂性状(CB、水分、砂温、圧縮強度、通気度、等)、造型時の制御データ(エアレーション波形、スクイズ圧力波形、離型剤の塗布量、等)、造型後の鋳型強度測定データ、工場の環境データ(気温、湿度、等)、である。ライン上の分析用データは、検査データと紐付けされて保管される。
【0148】
サーバが提供する機能は例えば、過去の不要発生状況の推移確認(年/月/日別や製品別の見える化など)、過去の蓄積データから不良率予測や対策のアドバイス、である。
【0149】
〔ソフトウェアによる実現例〕
表示制御装置10、検査装置20、入出力装置30、造型機40、ラインコントローラ50、注湯機60、及び搬送装置70の制御ブロック(特に取得部11、記憶処理部12、特定部13、表示制御部14、及び出力部15)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0150】
後者の場合、表示制御装置10、検査装置20、入出力装置30、造型機40、ラインコントローラ50、注湯機60、及び/又は搬送装置70は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0151】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態に含まれる個々の技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。