【解決手段】劣化検出装置は、橋梁に設けられたセンサから、橋梁のセンサが設けられた対象部分における走行方向の変位を表すパラメータの時系列データを収集する収集部と、時系列データから、特定車両が橋梁を通過時の特定部分データを抽出する抽出部と、特定部分データに基づき、特定車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を算出する振幅算出部と、振幅値が予め設定された基準値より大きくなった場合、橋梁が劣化したと判定する判定部と、を備える。
前記抽出部は、前記特定車両が前記橋梁を通過していることを検出する通過検出装置により検出された検出信号に基づき、前記時系列データから前記特定部分データを抽出する
請求項1または2に記載の劣化検出装置。
前記抽出部は、前記特定車両が予め定められた第1位置を通過したことを知らせる通過情報と、前記第1位置から前記橋梁までの前記特定車両の予測走行時間とに基づき、前記特定車両が前記橋梁を通過する予定時刻を推定し、推定した予定時刻に基づき前記特定部分データを抽出する
請求項1または2に記載の劣化検出装置。
前記振幅算出部は、前記特定車両における前記橋梁の通過時の速度が、予め設定された範囲内である前記時系列データから抽出された前記特定部分データに基づき、前記振幅値を算出する
請求項1から7の何れか1項に記載の劣化検出装置。
前記振幅算出部は、前記特定車両における前記橋梁の通過時の重量が、予め設定された範囲内である前記時系列データから抽出された前記特定部分データに基づき、前記振幅値を算出する
請求項1から8の何れか1項に記載の劣化検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る劣化検出システム10を示す図である。劣化検出システム10は、橋梁が劣化した場合、アラーム情報を出力する。
【0013】
劣化検出システム10は、センサ20と、送信装置22と、劣化検出装置30とを備える。
【0014】
センサ20は、橋梁における所定の対象部分に設けられる。センサ20は、橋梁のセンサ20が設けられた対象部分における走行方向の変位を表すパラメータを検出する。本実施形態においては、センサ20は、橋梁の対象部分における、走行方向の伸縮量を測定する。伸縮量は、例えば、数10センチメートル程度の距離の2点間における、数ナノメートルから数100ナノメートル程度の距離の変化である。
【0015】
なお、センサ20は、走行方向の変位を表すパラメータを検出することができれば、走行方向の伸縮量でなく、他の物理量を検出してもよい。例えば、センサ20は、橋梁の対象部分における走行方向のひずみを検出する歪計であってもよい。また、例えば、センサ20は、橋梁の対象部分における走行方向の固有振動数の大きさまたは橋梁の対象部分における垂直方向の固有振動数の大きさを検出する振動計であってもよい。
【0016】
センサ20は、橋梁の対象部分における走行方向の変位を表すパラメータ(例えば、伸縮量)を、所定の時間間隔毎に連続的に検出する。例えば、センサ20は、パラメータを数ミリ秒毎に検出する。センサ20は、例えば電源がオンされた期間において、パラメータを所定の時間間隔毎に連続的に検出する。センサ20は、常時(例えば、1日24時間連続して)、パラメータを所定の時間間隔毎に連続的に検出してもよい。
【0017】
送信装置22は、センサ20により検出されたパラメータをネットワークを介して劣化検出装置30に送信する。ネットワークは、有線であっても、無線であっても、有線と無線とが混在していてもよい。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)、VPN(Virtual Private Network)またはLANがルータを介して接続されたWAN(Wide Area Network)である。また、ネットワークは、インターネットまたは電話通信回線等を含んでいてもよい。
【0018】
劣化検出装置30は、送信装置22からネットワークを介して送信された、橋梁の対象部分における走行方向の変位を表すパラメータの時系列データを受信する。劣化検出装置30は、受信したパラメータの時系列データに基づき、橋梁が劣化したか否かを判定する。そして、劣化検出装置30は、橋梁が劣化したと判定した場合、アラーム情報を例えば管理者または管理者が保持する情報処理装置等に出力する。
【0019】
劣化検出装置30は、ネットワークに接続可能なサーバ装置等のコンピュータである。劣化検出装置30は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドシステムのように複数台のコンピュータにより構成されていてもよい。
【0020】
なお、劣化検出システム10は、送信装置22を備えない構成であってもよい。この場合、劣化検出装置30は、センサ20から、直接、橋梁の対象部分における走行方向の変位を表すパラメータを取得する。また、この場合、劣化検出装置30は、センサ20の近傍、すなわち、橋梁の近傍に設けられてもよい。
【0021】
図2は、橋梁を横から見たときのセンサ20の配置を示す図である。
図3は、橋梁を上から見たときのセンサ20の配置を示す図である。センサ20は、例えば、橋梁における走行方向の中心よりも端部側に取り付けられる。センサ20は、例えば、橋梁における下側の面であって、橋台の近傍に取り付けられる。これにより、作業者は、橋梁が完成した後であっても、センサ20を橋梁に容易に取り付けることができる。なお、センサ20は、橋梁における走行方向の何れの位置に取り付けられてもよい。例えば、センサ20は、作業者により取り付けが難しくはなる場合もあるが、橋梁における走行方向の中央部に取り付けられてもよい。
【0022】
図4は、センサ20および橋梁の主桁54の一部分を示す図である。センサ20は、橋梁の主桁54の下面56における第1点62と第2点64との間の距離の変化量(伸縮量)を測定する。
【0023】
第1点62および第2点64は、橋梁における幅員方向に対して同一、走行方向に対して異なる位置である。第1点62と第2点64との間は、例えば数10センチメートル程度である。
図4の例では、第1点62と第2点64との間は、35センチメートルである。センサ20は、第1点62と第2点64との間における走行方向の距離の変化量(伸縮量)を、例えば数ナノメートルから数百ナノメートルの単位で測定する。
【0024】
センサ20は、第1部材66と、第2部材68と、変位検出装置70とを有する。
【0025】
第1部材66は、支持部66aと梁部66bとを有する片持梁である。支持部66aの一端は、第1点62に固定される固定端66cである。支持部66aは、第1点62から、主桁54の下面56に対して垂直方向の下側に所定距離伸びる。梁部66bは、支持部66aにおける固定端66cとは反対側の端部から、走行方向の第2点64側に所定距離伸びる。梁部66bにおける支持部66aに接続されていない側の端部は、何れの部材とも接続されない自由端66dである。本実施形態において、第1部材66の自由端66dは、第1点62と第2点64との間を結ぶ線の略中心の近傍に配置される。
【0026】
第2部材68は、支持部68aと梁部68bとを有する片持梁である。支持部68aの一端は、第2点64に固定される固定端68cである。支持部68aは、第2点64から、主桁54の下面56に対して垂直方向の下側に所定距離伸びる。梁部68bは、支持部68aにおける固定端68cとは反対側の端部から、走行方向の第1点62側に所定距離伸びる。梁部68bにおける支持部68aに接続されていない側の端部は、何れの部材とも接続されない自由端68dである。本実施形態において、第2部材68の自由端68dは、第1点62と第2点64との間を結ぶ線の略中心の近傍に配置される。
【0027】
ここで、第1部材66の自由端66dおよび第2部材68の自由端68dとは、機械的な干渉が生じず、走行方向に重複した位置に配置される。これにより、第1部材66の自由端66dおよび第2部材68の自由端68dは、主桁54の下面56に対して垂直する方向に対向した位置に配置される。そして、第1点62と第2点64との間の距離が変化した場合、第1部材66の自由端66dと第2部材68の自由端68dとの相対位置は、走行方向にずれる。
【0028】
なお、
図4に示したセンサ20は、第1部材66および第2部材68の両方が片持梁である構成であった。しかし、第2部材68が片持梁であって、第1部材66は片持梁でなくてもよい。この場合、第2部材68は、自由端68dが第1部材66の少なくとも一部と、機械的な干渉はせずに、走行方向に重なる位置に配置される。このような構成であっても、第1点62と第2点64との間の距離が変化した場合、第1部材66と第2部材68の自由端68dとの相対位置は、走行方向にずれる。
【0029】
変位検出装置70は、第1部材66の自由端66dと第2部材68の自由端68dとが対向した部分に設けられる。変位検出装置70は、第1部材66の自由端66dと第2部材68の自由端68dとの相対位置の変位を検出する。そして、変位検出装置70は、検出した変位を、橋梁における走行方向の2点間の伸縮量として出力する。
【0030】
図5は、変位検出装置70を第1部材66および第2部材68とともに示す図である。変位検出装置70は、光学素子72と、検出器74とを含む。
【0031】
光学素子72は、第1部材66の自由端66dまたは第2部材68の自由端68dの一方に取り付けられる。検出器74は、第1部材66の自由端66dまたは第2部材68の自由端68dのうち、光学素子72が取り付けられていない他方に取り付けられる。
【0032】
光学素子72は、走行方向に対する光の照射位置に応じて、反射光量(または透過光量)が変化する光学部材である。例えば、光学素子72は、走行方向に所定の間隔の複数の光吸収材(ストライプ)が表面に塗布されたミラーである。また、光学素子72は、走行方向に所定の間隔の複数の光学スリット(ストライプ)が形成された回折格子であってもよい。
【0033】
検出器74は、ハーフミラー76と、発光部78と、受光部80と、検出回路82とを含む。ハーフミラー76は、照射された光の一部を反射し、他の一部を透過する。
【0034】
発光部78は、光学素子72に対してハーフミラー76を介して光を照射する。受光部80は、光学素子72により反射された光をハーフミラー76を介して受光する。検出回路82は、受光部80により検出された光の光量変化に基づき第1部材66と第2部材68との相対位置の変位を表す信号を、伸縮量として出力する。
【0035】
光学素子72に照射される光の位置は、第1部材66と第2部材68との相対位置の走行方向の位置のずれに応じて、走行方向にずれる。光学素子72には走行方向にストライプが形成されているので、光学素子72の反射光量は、光の照射位置の走行方向のずれに応じて増減する。具体的には、光学素子72の反射光量は、光学素子72に照射される光の位置がストライプの間隔分ずれると、光量の増減が1周期する。従って、例えば、検出回路82は、受光部80から出力された信号の増減をカウントすることにより、第1部材66と第2部材68との相対位置の変化量を取得することができる。
【0036】
また、変位検出装置70は、互いのストライプが1/4周期ずれた2つの光学素子72と、2つの光学素子72に対応する2つの発光部78および2つの受光部80とを含んでもよい。これにより、2つの受光部80は、第1部材66と第2部材68との相対位置の変化に対して1/4周期位相のずれた2つの周期信号を出力することができる。従って、例えば、検出回路82は、2つの信号の値に基づき、第1部材66と第2部材68との相対位置の変化方向、および、ストライプの周期より短い間隔での、第1部材66と第2部材68との相対位置の変化量を検出することができる。
【0037】
また、
図5の例では、光学素子72は、光を反射する構成となっている。これに代えて、光学素子72は、光を透過する構成であってもよい。この場合、光学素子72は、走行方向に対する光の照射位置に応じて、透過光量が変化する。例えば、光学素子72は、走行方向に所定の間隔の複数の光吸収材(ストライプ)が表面に塗布されたガラスまたはプラスチック等であってもよい。このような場合、受光部80は、光学素子72を透過した光を受光する。
【0038】
また、検出器74は、ハーフミラー76を含まない構成であってもよい。
図9は、ハーフミラー76を含まない検出器74における発光部78および受光部80の配置を示す図である。ここで、検出器74は、第1部材66に設けられるとする。また、光学素子72は、第2部材68に設けられるとする。そして、第1部材66における、光学素子72の幅員方向の中心に対向する位置を、Pとする。このような場合、発光部78は、第1部材66における、Pから、幅員方向に所定距離ずれた位置に配置される。また、受光部80は、Pから、幅員方向に発光部78とは反対側に所定距離ずれた位置に配置される。発光部78は、光学素子72の幅員方向の中心へと向かう方向に、光を出射する。光学素子72は、発光部78からの光が所定の角度で入射され、入射された光を受光部80の方向に反射する。そして、受光部80は、光学素子72により反射された光を受光する。このような検出器74は、
図5に示した構成と同様の機能を有することができる。
【0039】
このような構成の変位検出装置70は、橋梁における主桁54の下面56に取り付けることができる。例えば、変位検出装置70は、歪計のように橋梁に伸縮部材を埋め込んだりせずに、外部から取り付けることができる。これにより、変位検出装置70は、完成済みの橋梁に対して後から取り付けることができる。また、変位検出装置70は、橋梁の強度を低下させずに、取り付けることができる。また、変位検出装置70は、取り付け後にも容易にメンテナンスをすることもできる。
【0040】
また、このような構成の変位検出装置70は、片持梁を用いて2点間の距離の変化を光センサにより検出する。これにより、変位検出装置70は、簡単な構成でコストの小さい部材を用いて、橋梁における非常に小さい伸縮を精度良く検出することができる。
【0041】
図6は、劣化検出装置30の機能構成を示す図である。劣化検出装置30は、収集部112と、記憶部114と、抽出部116と、振幅算出部118と、判定部119と、アラーム出力部120とを備える。
【0042】
収集部112は、橋梁に設けられたセンサ20から、橋梁のセンサ20が設けられた対象部分における走行方向の変位を表すパラメータの時系列データを収集する。本実施形態においては、収集部112は、ネットワークを介してパラメータの時系列データを取得する。また、本実施形態においては、パラメータは、対象部分における走行方向の伸縮量である。パラメータの時系列データは、検出した時刻とパラメータとが対応付けられている。
【0043】
記憶部114は、収集部112により収集されたパラメータの時系列データを記憶する。
【0044】
抽出部116は、記憶部114に記憶されたパラメータの時系列データから、特定車両が橋梁を通過時の部分的なデータである特定部分データを抽出する。例えば、抽出部116は、パラメータの時系列データから、特定車両が橋梁を通過時の部分的な時系列データを切り出し、切り出した部分的な時系列データを特定部分データとして出力する。
【0045】
特定車両は、例えば、定期的に橋梁を通過する車両であって、毎回、ほぼ同一の速度およびほぼ同一重量で橋梁を通過する車両である。例えば、特定車両は、路線バスである。路線バスは、日毎に、予め定められた時刻表に従って走行をする。従って、路線バスは、日毎に、予め定められた時刻に橋梁を通過すると予定される。また、特定車両は、例えば、ゴミ収集車等であってもよい。ゴミ収集車は、走行する経路および時刻が予め定められている。従って、ゴミ収集車は、ゴミ収集日において予め定められた時刻に橋梁を通過すると予定される。
【0046】
特定車両が橋梁を通過した時における伸縮量の波形パターンは、毎回、ほぼ同一となる。そこで、抽出部116は、例えば、予め訓練されたニューラルネットワークを用いて、パラメータの時系列データから、特定部分データを抽出してもよい。この場合、ニューラルネットワークは、特定車両の波形パターンが示された教師データを用いて、学習処理がされている。また、抽出部116は、特定車両を表す波形パターンと時系列データとパターンマッチングをすることにより、パラメータの時系列データから特定部分データを切り出してもよい。
【0047】
振幅算出部118は、抽出部116が特定部分データを抽出する毎に、抽出した特定部分データに基づき、特定車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を算出する。例えば、パラメータが対象部分の伸縮量を表す場合には、振幅算出部118は、抽出した特定部分データにおける最大値と最小値との差を振幅値として算出する。
【0048】
パラメータが対象部分の伸縮量ではない場合には、振幅算出部118は、対象部分の伸縮量の振幅値に相関のある値を、振幅値として出力してもよい。例えば、パラメータが固有振動数の大きさである場合には、振幅算出部118は、抽出した特定部分データにおける最大値と最小値との差を、振幅値として算出してもよい。
【0049】
判定部119は、振幅算出部118が振幅値を算出する毎に、算出した振幅値と、予め設定された基準値とを比較する。そして、判定部119は、振幅値が基準値より大きくなった場合、橋梁が劣化したと判定する。
【0050】
判定部119は、直近の予め定められたサンプル数の振幅値の移動平均値を算出し、移動平均値が基準値より大きくなった場合に、橋梁が劣化したと判定してもよい。また、判定部119は、複数のサンプル数の振幅値に対して、ノイズ除去処理等の予め定められたフィルタリング処理を実行し、フィルタリング処理の結果が基準値より大きくなった場合に、橋梁が劣化したと判定してもよい。なお、判定部119は、複数の異なる基準値が予め設定されていてもよい。そして、判定部119は、振幅値がそれぞれの基準値より大きくなる毎に、橋梁が劣化したと判定してもよい。
【0051】
アラーム出力部120は、橋梁が劣化したと判定された場合、橋梁が劣化したことを示すアラーム情報を出力する。なお、アラーム出力部120は、判定部119に複数の異なる基準値が予め設定されている場合、振幅値がそれぞれの基準値より大きくなる毎に、基準値の大きさを表すレベル情報を含むアラーム情報を取得してもよい。これにより、アラーム出力部120は、橋梁の劣化度のレベルを管理者等に知らせることができる。
【0052】
図7は、路線バスが橋梁を通過した時の走行方向の伸縮量の時系列データの一例を示す図である。車両が橋梁を通過する場合、橋梁は、走行方向に対して、伸びる方向に変化し、最大値まで伸びた後、縮む方向に変化し、最小値まで縮んだ後に、元に戻るような変化をする。
【0053】
同一の種類の車両が、ほぼ同一の重量およびほぼ同一の速度で橋梁を通過した場合、橋梁における対象部分の伸縮量の波形は、橋梁の劣化度が同一であれば、ほぼ同一となる。例えば、同一の種類の車両が、ほぼ同一の重量およびほぼ同一の速度で橋梁を通過した場合、伸縮量の波形における振幅値(最大値と最小値との差)、および、変化時間(変化開始時刻から、変化終了時刻までの期間)は、橋梁の劣化度が同一であれば、ほぼ同一となる。なお、
図7は、センサ20が、橋梁における車両の進入側の端部に設けられている場合の例である。センサ20は、橋梁における車両の退出側の端部に設けられていてもよい。この場合、橋梁は、
図7とは逆に変化する。すなわち、この場合、橋梁は、走行方向に対して、縮む方向に変化し、最小値まで縮んだ後、伸びる方向に変化し、最大値まで伸びた後に、元に戻るような変化をする。
【0054】
図8は、振幅値の時間変化および振幅値の誤差範囲を示す図である。
【0055】
橋梁は、時間経過すると劣化する。橋梁の劣化が進行した場合、同一の種類の車両が、ほぼ同一の重量およびほぼ同一の速度で橋梁を通過した場合であっても、伸縮量の振幅値は、大きくなる。すなわち、同一の種類の車両が、ほぼ同一の重量およびほぼ同一の速度で橋梁を通過した場合における、橋梁の対象部分の伸縮量の振幅値は、時間経過に従って大きくなる。
【0056】
また、同一の種類の車両が、ほぼ同一の重量およびほぼ同一の速度で橋梁を通過した場合であっても、周囲の環境および測定条件等によって、伸縮量の振幅値に誤差が生じる。また、特定車両が路線バスの場合、乗客数および通過速度も日によって異なる。特定車両が橋梁を通過した時に算出された伸縮量の振幅値には、重量および通過速度による誤差も含まれる。
【0057】
しかし、例えば非特許文献1の実験結果を参照すると、
図8に示すように、路線バスが橋梁を通過した時に算出される振幅値の誤差分布範囲よりも、橋梁の経年劣化による振幅値の変化量の方が、十分に大きいと予測される。このため、路線バス等の特定車両が橋梁を通過した場合において、対象部分の伸縮量の振幅値が予め設定された基準値より大きくなった場合、その基準値が測定開始時の振幅値の誤差分布範囲よりも十分に大きく設定されていれば、橋梁は、測定開始時より劣化したといえる。
【0058】
従って、劣化検出装置30は、特定車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値が基準値より大きくなった場合、橋梁が劣化したと判定することができる。
【0059】
図9は、変形例に係る劣化検出装置30の機能構成を示す図である。
【0060】
劣化検出装置30は、通過時刻取得部122、通過検出情報取得部124、予定時刻推定部126、日付取得部132、通過速度取得部134および重量取得部136のうちの何れか1つまた複数をさらに備えてもよい。
【0061】
通過時刻取得部122は、特定車両が毎日同一の第1時刻に橋梁を通過する予定の車両である場合、特定車両の通過時刻である第1時刻を示す情報を外部装置等から取得する。例えば、特定車両が路線バスである場合、路線バスの時刻表情報等を取得し、取得した時刻表情報に基づき第1時刻を算出してもよい。そして、通過時刻取得部122が第1時刻を取得した場合、抽出部116は、取得した第1時刻に基づき、パラメータの時系列データにおける特定部分データを抽出する。例えば、抽出部116は、パラメータの時系列データにおける第1時刻の前後の予め定められた時間範囲を切り出し、切り出した範囲から特定部分データを抽出する。これにより、抽出部116は、パラメータの時系列データにおける一部分の時間帯に部分データに対して抽出処理を実行すればよいので、少ない処理量で、精度良く特定部分データを抽出することができる。
【0062】
通過検出情報取得部124は、特定車両が橋梁を通過していることを検出する通過検出装置により検出された検出信号を取得する。例えば、通過検出装置は、橋梁を通過する車両を撮像するカメラから画像データを取得し、取得した画像データを解析して特定車両が橋梁を通過しているか否かを判定する。通過検出装置は、特定車両が橋梁を通過していると判断した場合、特定車両が橋梁を通過していることを示す検出信号を劣化検出装置30に与える。また、例えば、通過検出装置は、特定車両に設けられた無線通信装置から、特定車両を識別する識別情報を無線信号により受信する受信装置であってもよい。この場合、通過検出装置は、橋梁の近傍に設けられており、特定車両から識別情報を受信した場合、特定車両が橋梁を通過していることを示す検出信号を劣化検出装置30に与える。
【0063】
そして、通過検出情報取得部124は、通過検出装置から特定車両が橋梁を通過していること示す検出情報を受け取った場合、検出情報を受け取った時刻を示す時刻情報を抽出部116に与える。抽出部116は、受け取った時刻情報に基づき、パラメータの時系列データにおける特定部分データを抽出する。例えば、抽出部116は、パラメータの時系列データから受け取った時刻情報に示された時刻の前後の予め定められた時間範囲を切り出し、切り出した範囲から特定部分データを抽出する。これにより、抽出部116は、パラメータの時系列データにおける一部分の時間帯に部分データに対して抽出処理を実行すればよいので、少ない処理量で、精度良く特定部分データを抽出することができる。
【0064】
予定時刻推定部126は、特定車両が予め定められた第1位置を通過したことを知らせる通過情報を取得する。例えば、特定車両が路線バスである場合、第1位置は、バス経路における橋梁の直前のバス停または特定のバス停である。特定車両が路線バスである場合、予定時刻推定部126は、第1位置を通過したことを示す通過情報を受信する。通過情報は、例えば、バス停に設けられた送信機、路線バスに設けられた送信機、または、路線バスの運行情報を管理する管理装置等から送信される。
【0065】
予定時刻推定部126は、通過情報を受信した場合、通過情報と、第1位置から橋梁までの特定車両の予測走行時間とに基づき、特定車両が橋梁を通過する予定時刻を推定する。例えば、予定時刻推定部126は、通過情報を受信した時刻に、予測走行時間に加えた時刻を予定時刻として算出する。
【0066】
そして、予定時刻推定部126は、推定した予定時刻を抽出部116に与える。抽出部116は、受け取った予定時刻に基づき、パラメータの時系列データにおける特定部分データを抽出する。例えば、抽出部116は、パラメータの時系列データから予定時刻に示された時刻の前後の予め定められた時間範囲を切り出し、切り出した範囲から特定部分データを抽出する。これにより、抽出部116は、パラメータの時系列データにおける一部分の時間帯に部分データに対して抽出処理を実行すればよいので、少ない処理量で、精度良く特定部分データを抽出することができる。
【0067】
日付取得部132は、予め設定された日付を示す日付情報を取得する。日付取得部132は、日付として、曜日を取得してもよい。この場合、特定車両は、橋梁を日毎に同一時刻に通過する予定の車両である。日付取得部132は、取得した日付情報を振幅算出部118に与える。
【0068】
日付情報を取得した場合、振幅算出部118は、取得した日付情報に示された日付における時系列データから抽出された特定部分データに基づき、振幅値を算出する。例えば、振幅算出部118は、平日の日付における時系列データから抽出された特定部分データに基づき振幅値を算出し、休日の日付における時系列データから抽出された特定部分データに基づき振幅値を算出しない。例えば、特定車両が路線バスの場合、平日と、休日とで、乗客数が大きく異なり、この結果重量が大きく異なる場合がある。また、特定車両が路線バスの場合、平日と休日とで、交通の混雑度が異なり、橋梁を通過する通過速度が大きく異なる場合がある。従って、特定車両が路線バスの場合、伸縮量の振幅値は、平日と休日とで、波形の特徴が大きく異なってしまう場合がある。
【0069】
従って、予め設定された日付における時系列データから抽出された特定部分データに基づき振幅値を算出することにより、振幅算出部118は、同一の種類の車両がほぼ同一の重量およびほぼ同一の速度で通過した場合における伸縮量の振幅値を出力することができる。これにより、劣化検出装置30は、精度良く橋梁が劣化したか否かを判断することができる。
【0070】
時間帯取得部133は、1日の中の予め設定された時間帯を示す時間帯情報を取得する。時間帯取得部133は、時間帯として、例えば、午前5時0分から午前7時0分までといったような情報を取得してもよい。時間帯取得部133は、取得した時間帯情報を振幅算出部118に与える。
【0071】
時間帯情報を取得した場合、振幅算出部118は、取得した時間帯情報に示された時間帯における時系列データから抽出された特定部分データに基づき、振幅値を算出する。例えば、振幅算出部118は、指定された時間帯における時系列データから抽出された特定部分データに基づき振幅値を算出し、指定された時間帯以外における時系列データから抽出された特定部分データに基づき振幅値を算出しない。例えば、1日の中の時間帯によって交通の混雑度が異なり、特定車両が橋梁を通過する通過速度が大きく異なる場合がある。従って、伸縮量の振幅値は、1日の中でも時間帯によって波形の特徴が大きく異なってしまう場合がある。
【0072】
従って、予め設定された時間帯における時系列データから抽出された特定部分データに基づき振幅値を算出ことにより、振幅算出部118は、同一の種類の車両がほぼ同一の重量およびほぼ同一の速度で通過した場合における伸縮量の振幅値を出力することができる。これにより、劣化検出装置30は、精度良く橋梁が劣化したか否かを判断することができる。
【0073】
通過速度取得部134は、特定車両における橋梁の通過時の速度を取得する。例えば、通過速度取得部134は、特定車両に設けられた速度計により測定されたログデータを取得してもよい。そして、通過速度取得部134は、ログデータから、特定車両が橋梁を通過した時刻の速度を取得してもよい。通過速度取得部134は、取得した速度を示す速度情報を振幅算出部118に与える。
【0074】
速度情報を取得した場合、振幅算出部118は、特定車両における橋梁の通過時の速度が予め設定された範囲内である時系列データから抽出された特定部分データに基づき、振幅値を算出する。これにより、振幅算出部118は、同一の種類の車両がほぼ同一の速度で通過した場合における伸縮量の振幅値を出力することができる。従って、劣化検出装置30は、より精度良く橋梁が劣化したか否かを判断することができる。
【0075】
重量取得部136は、特定車両における橋梁の通過時の重量を取得する。例えば、ゴミ収集車は、一般に、自重を測定する重量計を備える。重量取得部136は、ゴミ収集車等の特定車両に設けられた重量計により測定されたログデータを取得してもよい。そして、重量取得部136は、ログデータから、特定車両が橋梁を通過した時刻の重量を取得してもよい。また、特定車両が路線バスの場合、重量取得部136は、例えば、バス経路における橋梁の直前のバス停または特定のバス停での乗客数を取得し、取得した乗客数に基づき、重量を推定してもよい。そして、重量取得部136は、取得した重量を示す重量情報を振幅算出部118に与える。
【0076】
重量情報を取得した場合、振幅算出部118は、特定車両における橋梁の通過時の重量が予め設定された範囲内である時系列データから抽出された特定部分データに基づき、振幅値を算出する。これにより、振幅算出部118は、同一の種類の車両がほぼ同一の重量で通過した場合における伸縮量の振幅値を出力することができる。従って、劣化検出装置30は、より精度良く橋梁が劣化したか否かを判断することができる。
【0077】
図10は、劣化検出装置30の処理の流れを示すフローチャートである。劣化検出装置30は、一例として、
図10に示すような流れで処理を実行する。
【0078】
まず、S11において、劣化検出装置30は、特定車両である路線バスが、バス経路における橋梁の直前のバス停(または特定のバス停)を通過したか否かを判断する。直前のバス停を通過していない場合(S11のNo)、劣化検出装置30は、処理をS11で待機する。直前のバス停を通過した場合(S11のYes)、劣化検出装置30は、処理をS12に進める。
【0079】
S12において、劣化検出装置30は、橋梁を通過する予定時刻を推定する。続いて、S13において、劣化検出装置30は、予定時刻の所定時間前の時刻となったか否かを判断する。予定時刻の所定時間前の時刻となっていない場合には(S13のNo)、劣化検出装置30は、処理をS13で待機する。予定時刻の所定時間前の時刻となった場合には(S13のYes)、劣化検出装置30は、処理をS14に進める。
【0080】
S14において、劣化検出装置30は、センサ20の電源をオンとする。例えば、劣化検出装置30は、無線通信等により指示信号をセンサ20に与えて、電源をオンにさせる。
【0081】
続いて、S15において、劣化検出装置30は、センサ20により検出されたパラメータの時系列データを受信して記憶する。例えば、劣化検出装置30は、橋梁における対象部分の伸縮量の時系列データを受信して記憶する。
【0082】
続いて、S16において、劣化検出装置30は、予定時刻の所定時間後の時刻となったか否かを判断する。予定時刻の所定時間後の時刻となっていない場合には(S16のNo)、劣化検出装置30は、処理をS16で待機する。予定時刻の所定時間後の時刻となった場合には(S16のYes)、劣化検出装置30は、処理をS17に進める。
【0083】
S17において、劣化検出装置30は、センサ20の電源をオフとする。例えば、劣化検出装置30は、無線通信等により指示信号をセンサ20に与えて、電源をオフにさせる。
【0084】
続いて、S18において、劣化検出装置30は、記憶したパラメータの時系列データから、特定車両である路線バスが橋梁を通過時の部分的なデータである特定部分データを抽出する。続いて、S19において、劣化検出装置30は、抽出した特定部分データから、特定車両である路線バスの通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を算出する。例えば、パラメータが対象部分の伸縮量を表す場合には、劣化検出装置30は、抽出した特定部分データにおける最大値と最小値との差を振幅値として算出する。続いて、S20において、劣化検出装置30は、算出した振幅値を記憶する。
【0085】
続いて、S21において、劣化検出装置30は、算出した振幅値が基準値より大きいか否かを判断する。振幅値が基準値より大きくない場合(S21のNo)、劣化検出装置30は、処理をS11に戻し、S11から処理を繰り返す。振幅値が基準値より大きい場合(S21のYes)、劣化検出装置30は、処理をS22に進める。
【0086】
S22において、劣化検出装置30は、橋梁が劣化したことを示すアラーム情報を、例えば管理者または管理者が保持する情報処理装置等に出力する。S22が終了すると、劣化検出装置30は、本フローを終了する。なお、劣化検出装置30は、S22の後に、基準値を所定量増加させて、処理をS11に戻してもよい。
【0087】
以上のように、第1実施形態に係る劣化検出システム10は、路線バス等の特定車両が橋梁を通過した時の特定部分データに基づき、特定車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を算出し、算出した振幅値が予め設定された基準値より大きくなった場合、橋梁が劣化したと判定し、橋梁が劣化したことを示すアラーム情報を出力する。これにより、第1実施形態に係る劣化検出システム10によれば、橋梁の劣化を、簡単に且つ長期間継続的に検出することができる。従って、第1実施形態に係る劣化検出システム10によれば、橋梁の状態を低コストで常時モニタリングし、橋梁を計画的に管理することができる。
【0088】
(第2実施形態)
つぎに、第2実施形態に係る重量測定システム210について説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と略同一の構成を有する要素については同一の符号を付けて、相違点を除き詳細な説明を省略する。
【0089】
図11は、第2実施形態に係る重量測定システム210を示す図である。重量測定システム210は、橋梁の劣化に従って関係情報を補正しながら、橋梁を通過する車両の重量を精度良く測定する。
【0090】
重量測定システム210は、センサ20と、送信装置22と、重量測定装置230とを備える。
【0091】
重量測定装置230は、送信装置22からネットワークを介して送信された、橋梁の対象部分における走行方向の変位を表すパラメータの時系列データを受信する。重量測定装置230は、受信したパラメータの時系列データに基づき、車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を表す車両振幅値を算出する。そして、重量測定装置230は、振幅値と重量との対応関係を表す関係情報と、算出した車両振幅値とに基づき、車両の重量を算出する。さらに、重量測定装置230は、橋梁が劣化したと判断した場合には、振幅値と重量との対応関係を表す関係情報を補正する。
【0092】
重量測定装置230は、ネットワークに接続可能なサーバ装置等のコンピュータである。重量測定装置230は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドシステムのように複数台のコンピュータにより構成されていてもよい。
【0093】
なお、重量測定システム210は、送信装置22を備えない構成であってもよい。この場合、重量測定装置230は、センサ20から、直接、橋梁の対象部分における走行方向の変位を表すパラメータを取得する。また、この場合、重量測定装置230は、センサ20の近傍、すなわち、橋梁の近傍に設けられてもよい。
【0094】
図12は、重量測定装置230の機能構成を示す図である。重量測定装置230は、収集部112と、記憶部114と、車両抽出部242と、車両振幅算出部244と、関係情報記憶部246と、重量算出部248と、抽出部116と、振幅算出部118と、補正部250とを備える。
【0095】
収集部112および記憶部114は、第1実施形態と同様の機能および構成を有する。
【0096】
車両抽出部242は、記憶部114に記憶されたパラメータの時系列データから、車両が橋梁を通過した時の部分的なデータである車両部分データを抽出する。ここで、車両は、路線バス等の特定車両に限らず、あらゆる種類の車両であってよい。
【0097】
例えば、車両抽出部242は、パラメータの時系列データから、車両が橋梁を通過時の部分的な時系列データを切り出し、切り出した部分的な時系列データを車両部分データとして出力する。
【0098】
抽出部116は、例えば、予め訓練されたニューラルネットワークを用いて、パラメータの時系列データから、車両部分データを抽出してもよい。この場合、ニューラルネットワークは、様々な種類の車両の波形パターンが示された教師データを用いて、学習処理がされている。また、抽出部116は、一般的な車両を表す波形パターンと時系列データとパターンマッチングをすることにより、パラメータの時系列データから車両部分データを切り出してもよい。
【0099】
車両振幅算出部244は、車両抽出部242が車両部分データを抽出する毎に、抽出した車両部分データに基づき、車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を表す車両振幅値を算出する。例えば、パラメータが対象部分の伸縮量を表す場合には、車両振幅算出部244は、抽出した車両部分データにおける最大値と最小値との差を車両振幅値として算出する。
【0100】
パラメータが対象部分の伸縮量ではない場合には、車両振幅算出部244は、対象部分の伸縮量の振幅値に相関のある値を、車両振幅値として出力してもよい。例えば、パラメータが固有振動数の大きさである場合には、車両振幅算出部244は、抽出した車両部分データにおける最大値と最小値との差を、車両振幅値として算出してもよい。
【0101】
関係情報記憶部246は、振幅値と、車両の重量との対応関係を表す関係情報を記憶する。
【0102】
車両が橋梁を通過した時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値は、その車両の重量と相関性がある。より詳しくは、車両が橋梁を通過した時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値は、その車両の重量に従って大きくなる。そこで、管理者等は、振幅値と、橋梁を通過する車両の重量との対応関係を表す関係情報を予め生成し、関係情報記憶部246に記憶させる。
【0103】
管理者等は、例えば、橋梁に様々な重量の試験車両を走行させて、車両の重量と振幅値との対応関係を測定することにより、関係情報を生成してもよい。また、管理者等は、シミュレーション結果をさらに利用して関係情報を生成してもよい。また、管理者等は、他の橋梁に適用された関係情報等を利用して、当該橋梁の関係情報を生成してもよい。
【0104】
関係情報記憶部246は、関係情報として、複数の振幅値のそれぞれと、対応する重量とを関連付けたテーブルを記憶してもよい。また、関係情報記憶部246は、関係情報として、振幅値を入力することにより、重量が出力される関数または演算式等を記憶してもよい。
【0105】
重量算出部248は、車両振幅算出部244が車両振幅値を算出する毎に、車両の重量を算出する。より具体的には、重量算出部248は、関係情報記憶部246に記憶された振幅値と重量との対応関係を表す関係情報と、算出した車両振幅値とに基づき、車両の重量を算出する。重量算出部248は、算出した重量を例えば管理者が保持する情報処理装置またはサーバ等に出力する。この場合、重量算出部248は、車両が橋梁を通過した時刻等を併せて出力してもよい。これにより、管理者等は、橋梁を通過した車両と、重量とを対応付けることができる。
【0106】
抽出部116は、記憶部114に記憶されたパラメータの時系列データから、特定車両が橋梁を通過時の部分的なデータである特定部分データを抽出する。
【0107】
振幅算出部118は、抽出部116が特定部分データを抽出する毎に、特定部分データに基づき、特定車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を表す特定車両振幅値を算出する。
【0108】
補正部250は、振幅算出部118が特定車両振幅値を算出する毎に、算出した特定車両振幅値と、予め設定された基準値とを比較する。そして、補正部250は、特定車両振幅値が基準値より大きくなった場合、関係情報記憶部246に記憶された対応関係を補正する。
【0109】
補正部250は、直近の予め定められたサンプル数の特定車両振幅値の移動平均値を算出し、移動平均値が基準値より大きくなった場合に、関係情報を補正してもよい。また、補正部250は、複数のサンプル数の特定車両振幅値に対して、ノイズ除去処理等の予め定められたフィルタリング処理を実行し、フィルタリング処理の結果が基準値より大きくなった場合に、関係情報を補正してもよい。
【0110】
なお、重量測定装置230は、
図9に示した通過時刻取得部122、通過検出情報取得部124、予定時刻推定部126、日付取得部132、時間帯取得部133、通過速度取得部134および重量取得部136のうちの何れか1つまた複数をさらに備える構成であってもよい。
【0111】
図13は、試験車両の重量に対する、橋梁の伸縮量の振幅値との関係を表す図である。
図13は、黒丸印のグラフが橋梁の劣化が小さい時点での関係を表し、白抜きの四角印のグラフが橋梁の劣化が予め定められた基準値より大きくなった場合の関係を表す。
【0112】
橋梁は、劣化が大きくなるに従って、車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値が大きくなる。従って、
図13に示すように、橋梁の劣化が例えば基準値より大きくなった場合と、劣化が基準値より小さい場合とで、車両の重量と、車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値との関係が異なる。そこで、例えば、管理者は、橋梁の劣化が基準値以下である場合の第1の関係情報と、橋梁の劣化が基準値より大きい場合の第2の関係情報とを生成し、関係情報記憶部246に記憶させる。
【0113】
そして、補正部250は、特定車両振幅値が基準値以下である場合には、第1の関係情報を関係情報記憶部246から重量算出部248に出力させる。また、補正部250は、特定車両振幅値が基準値より大きい場合には、第2の関係情報を関係情報記憶部246から重量算出部248に出力させる。これにより、補正部250は、橋梁の劣化の度合いに関わらず、車両の重量を精度良く測定させることができる。
【0114】
なお、補正部250は、複数の異なる基準値が予め設定されていてもよい。そして、補正部250は、特定車両振幅値がそれぞれの基準値より大きくなる毎に、基準値の大きさに応じて、関係情報の補正量を調整してもよい。これにより、補正部250は、橋梁の劣化のレベルに応じて関係情報を適切に補正することができる。
【0115】
図14は、重量測定装置230による関係情報の補正処理の流れを示すフローチャートである。重量測定装置230は、一例として、
図14に示すような流れで処理を実行する。
【0116】
なお、
図14のS11からS21までの処理は、
図10の劣化検出装置30と同一の処理を実行する。ただし、重量測定システム210では、橋梁を通過する車両の重量を測定するため、センサ20の電源が常時オンとなっている。従って、重量の測定に用いるセンサ20と、特定車両が通過した場合に用いられるセンサ20とが同一である場合には、重量測定装置230は、S13、S14、S16およびS17の処理を実行しなくてよい。ただし、この場合、重量測定装置230は、S18において、パラメータの時系列データから、予定時刻の所定時間前から予定時刻の所定時間後までの範囲を切り出し、切り出した範囲から特定部分データを抽出する。
【0117】
S21において、重量測定装置230は、算出した振幅値が基準値より大きいか否かを判断する。振幅値が基準値より大きい場合(S21のYes)、重量測定装置230は、処理をS31に進める。
【0118】
S31において、重量測定装置230は、関係情報記憶部246に記憶された対応関係を補正する。S31が終了すると、重量測定装置230は、本フローを終了する。なお、重量測定装置230は、S31の後に、基準値に所定量増加させて、処理をS11に戻してもよい。
【0119】
以上のような第2実施形態に係る重量測定システム210は、車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を表す車両振幅値を算出し、振幅値と車両の重量との対応関係を表す関係情報と、算出した車両振幅値とに基づき、車両の重量を算出する。従って、重量測定システム210は、橋梁を通過する車両の重量を精度良く測定することができる。
【0120】
さらに、重量測定システム210は、特定車両の通過時における橋梁の走行方向の伸縮量の振幅値を表す特定車両振幅値が基準値より大きくなった場合、関係情報を補正する。従って、重量測定システム210は、橋梁の劣化に応じて関係情報を補正することができる。
【0121】
以上により、第2実施形態に係る重量測定システム210によれば、橋梁の劣化に伴い関係情報を補正しながら、橋梁を通過する車両の重量を精度良く測定することができる。
【0122】
(劣化検出装置30および重量測定装置230のハードウェア構成)
図15は、劣化検出装置30および重量測定装置230のハードウェア構成を示す図である。劣化検出装置30および重量測定装置230は、一例として、一般のコンピュータと同様のハードウェア構成により実現される。劣化検出装置30および重量測定装置230は、CPU(Central Processing Unit)301と、操作装置302と、表示装置303と、ROM(Read Only Memory)304と、RAM(Random Access Memory)305と、記憶装置306と、通信装置307と、バス309とを備える。各部は、バス309により接続される。
【0123】
CPU301は、RAM305の所定領域を作業領域としてROM304または記憶装置306に予め記憶された各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、劣化検出装置30または重量測定装置230を構成する各部の動作を統括的に制御する。また、CPU301は、ROM304または記憶装置306に予め記憶されたプログラムとの協働により、操作装置302、表示装置303および通信装置307等を動作させる。
【0124】
操作装置302は、タッチパネル、マウスやキーボード等の入力デバイスであって、ユーザから操作入力された情報を指示信号として受け付け、その指示信号をCPU301に出力する。
【0125】
表示装置303は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部である。表示装置303は、CPU301からの表示信号に基づいて、各種情報を表示する。
【0126】
ROM304は、劣化検出装置30または重量測定装置230の制御に用いられるプログラムおよび各種設定情報等を書き換え不可能に記憶する。RAM305は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体である。RAM305は、CPU301の作業領域として機能する。
【0127】
記憶装置306は、フラッシュメモリ等の半導体による記憶媒体、磁気的または光学的に記録可能な記憶媒体等の書き換え可能な記録装置である。記憶装置306は、劣化検出装置30または重量測定装置230の制御に用いられるプログラムを記憶する。
【0128】
通信装置307は、他の装置とデータの送受信をする。また、通信装置307は、ネットワークを介してサーバ等とデータの送受信をしてもよい。
【0129】
劣化検出装置30および重量測定装置230で実行されるプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供される。また、劣化検出装置30および重量測定装置230で実行されるプログラムは、持ち運び可能な記憶媒体等に予め組み込んで提供されてもよい。
【0130】
劣化検出装置30で実行されるプログラムは、収集モジュールと、抽出モジュールと、振幅算出モジュールと、判定モジュールと、アラーム出力モジュールとを含むモジュール構成となっている。CPU301(プロセッサ)は、記憶媒体等からこのようなプログラムを読み出して、上記各モジュールをRAM305(主記憶装置)にロードする。そして、CPU301(プロセッサ)は、このようなプログラムを実行することにより、収集部112、抽出部116、振幅算出部118、判定部119およびアラーム出力部120として機能する。なお、収集部112、抽出部116、振幅算出部118、判定部119およびアラーム出力部120の一部または全部がハードウェアにより構成されていてもよい。
【0131】
重量測定装置230で実行されるプログラムは、収集モジュールと、車両抽出モジュールと、車両振幅算出モジュールと、重量算出モジュールと、抽出モジュールと、振幅算出モジュールと、補正モジュールとを含むモジュール構成となっている。CPU301(プロセッサ)は、記憶媒体等からこのようなプログラムを読み出して、上記各モジュールをRAM305(主記憶装置)にロードする。そして、CPU301(プロセッサ)は、このようなプログラムを実行することにより、収集部112、車両抽出部242、車両振幅算出部244、重量算出部248、抽出部116、振幅算出部118および補正部250として機能する。なお、収集部112、車両抽出部242、車両振幅算出部244、重量算出部248、抽出部116、振幅算出部118および補正部250の一部または全部がハードウェアにより構成されていてもよい。
【0132】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。