【解決手段】 基板と、基板の一方側面に設けられ、入射された放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、基板とシンチレータ層との間設けられ、シンチレータ層で発生した蛍光を反射可能な反射層と、シンチレータ層を覆う防湿体と、を具備し、基板は、複数の炭素繊維を一方向で且つ平行に配置した第1プリプレグと、第1プリプレグに対して複数の炭素繊維を直交する方向で且つ平行に配置した第2プリプレグとで構成される一組のプリプレグを、1組以上積層してある。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の前記シンチレータパネルと、前記シンチレータパネルの一面側に設けて前記シンチレータ層から受けた蛍光を電気信号に変換するアレイ基板とを備える放射線検出器。
複数の炭素繊維を一方向で且つ平行に配置した第1プリプレグと、第1プリプレグに対して複数の炭素繊維を直交する方向で且つ平行に配置した第2プリプレグとで構成される一組のプリプレグを、1組以上を積層された基板と、
前記基板の一方側面に設けられ、入射された放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、を備えるシンチレータパネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
一実施形態に係る放射線検出器1は、放射線としてX線を検出する放射線検出器である。この放射線検出器1は、放射線画像であるX線画像を検出するX線平面センサであり、例えば、一般医療用途などに用いられる。放射線検出器1の用途は、一般医療用途に限定されず、例えば、非破壊検査などに用いることもできる。
図1および
図2に示すように、放射線検出器1には、アレイ基板2、信号処理部3、画像伝送部4、シンチレータパネル5、及び接合部6(
図2参照)が設けられている。
図1に示すように、アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、及びデータライン(又はシグナルライン)2c2を有する。
【0013】
アレイ基板2の基板2aは、板状を呈し、無アルカリガラスなどの透光性材料から形成されている。光電変換部2bは、基板2aの一方の表面に複数設けられている。光電変換部2bは、矩形状の平面形状を有し、制御ライン2c1とデータライン2c2とで画された領域に設けられている。
複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。なお、1つの光電変換部2bは、1つの画素(pixel)に対応する。複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)2b2が設けられている。
光電変換素子2b1は、例えば、ホトダイオードなどとすることができる。薄膜トランジスタ2b2は、蛍光が光電変換素子2b1に入射することで生じた電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。
薄膜トランジスタ2b2は、アモルファスシリコン(a−Si)やポリシリコン(P−Si)などの半導体材料を含むものとすることができる。薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極は、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極は、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極は、対応する光電変換素子2b1と図示しない蓄積キャパシタとに電気的に接続される。
【0014】
制御ライン2c1は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。制御ライン2c1は、例えば、行方向に延びている。
複数の制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1にそれぞれ電気的に接続されている。複数の配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の一端がそれぞれ電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、信号処理部3に設けられた図示しない制御回路とそれぞれ電気的に接続されている。
【0015】
データライン2c2は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。データライン2c2は、例えば、行方向に直交する列方向に延びている。複数のデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2とそれぞれ電気的に接続されている。複数の配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の一端がそれぞれ電気的に接続されている。信号処理部3は、基板2aの光電変換部2bが設けられる側とは反対側に設けられている。
【0016】
画像伝送部4は、配線4aを介して、信号処理部3の増幅・変換回路と電気的に接続されている。なお、画像伝送部4は、信号処理部3と一体化されている場合もある。画像伝送部4は、複数のアナログ−デジタル変換器によりデジタル信号に変換された画像データ信号に基づいて、X線画像を構成する。構成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0017】
図3はシンチレータパネル5の断面図である。
図2および
図3に示すように、シンチレータパネル5には、シンチレータ層7、反射層8A、緩和層8B、基板9及び防湿体10が設けられている。
シンチレータ層7は、反射層8Aを介して、基板9の一方面に設けられている。シンチレータ層7は、入射したX線を可視光すなわち蛍光に変換する。シンチレータ層7は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、あるいはヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)などを用いて形成することができる。シンチレータ層7の厚み寸法は、350から1000μm程度とすることができる。この場合、真空蒸着法などを用いて、柱状結晶の集合体が形成されるようにすることができる。
【0018】
反射層8Aは、基板9のシンチレータ層7が設けられる側に設けられている。また、緩和層8Bは、基板9において、シンチレータ層7が設けられる側とは反対側に剛性が一方向に集中しないように設けられている。
図2に示すように、X線は、緩和層8Bが設けられる側から入射する。
反射層8Aは、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために設けられている。すなわち、反射層8Aは、シンチレータ層7において生じた蛍光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射させて、光電変換部2bに向かうようにしている。
反射層8A及び緩和層8Bは、例えば、発泡ポリエチレンテレフタレート(発泡PET)で構成される反射シートやA1、Agなどからなる金属箔と樹脂材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))とで構成される反射シートなどで形成することができる。反射層8A及び緩和層8Bの厚みは、それぞれ、発泡ポリエチレンテレフタレートで構成される反射シートの場合、190μm程度とし、金属箔と樹脂材とで構成される反射シートの場合、金属箔の厚みは20〜50μm、樹脂層の厚みは50μm〜190μmとすることができる。
【0019】
接合部6(
図2参照)は、アレイ基板2とシンチレータパネル5との間に設けられている。
接合部6は、透光性を有し、アレイ基板2とシンチレータパネル5とを接合している。接合部6は、例えば、光学両面テープ(OCAテープ(Optical Clear Adhesive Tape))、光学接着剤や光学ジェルなどを硬化させることで形成されたものとすることもできる。 この場合、紫外線の照射により硬化するものとすることができる。
【0020】
図4は、シンチレータパネル5の基板9の分解斜視図である。
基板9は、板状を呈し、高いX線透過率を有する材料として炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)から形成されている。基板9は、炭素繊維9aを一方向に並べたものを樹脂に含浸させたプリプレグ11A、11B、12A、12Bを複数層積層させ、これを加圧加熱処理することにより板状に成型させたものである。
【0021】
基板9は、シンチレータパネル5の熱膨張を抑制する上で、できるだけ熱膨張が低い(熱膨張係数が小さい)もの、且つ異方性が少ないものを選定することが好ましい。また、基板9のコストはプリプレグ11A、11B、12A、12Bの積層数に依存し、コスト低減のために炭素繊維強化プラスチックの積層数を薄くすることが好ましい。
【0022】
第1実施形態では、基板9の任意の方向を0°(度)とし、この0°の方向に炭素繊維9aを配置して並べた第1プリプレグ11Aを基準とし、この第1プリプレグ11Aに対して、炭素繊維9aの方向を垂直方向となる角度に炭素繊維9aを配置した第2プリプレグ11Bを第1組11とし、基準となる0°の方向に対して、炭素繊維9aの方向が45°
方向の第1プリプレグ12Aと、炭素繊維9aの方向が−45°の方向に炭素繊維9aを配置した第2プリプレグ12Bを第2組12として、第2組12の上下(基板9の板厚方向)にそれぞれ第1組11を積層している。この第1実施形態では、炭素繊維の方向が互いに直交する2枚のプリプレグの組11、12を合計3組で、合計6枚のプリプレグを積層して基板9を形成している。
【0023】
ここで、基板9が任意の方向のプリプレグに対して、垂直方向に配置されていない成形方法であった場合、熱膨張の異方性が生じる。この時アレイ基板2にシンチレータパネル5を貼り合わせる工程での制約が生じてしまう恐れがある。例えば、高温環境に放置されたときに基板9が異方性を持って熱膨張し、その後冷却され熱収縮すると、接合部6がアレイ基板2とシンチレータパネル5との間で空間が生じたり、逆に接合部6が凝集したりすることで、画像に欠陥が生じる恐れがある。
図8に比較例を示した模式図では、第1プリプレグ11A、第2プリプレグ11B、第1プリプレグ11Aの3つのプリプレグを基板9の板厚方向に積層してあり、基板9の任意の方向を0°としたときに、炭素繊維9aの方向が第1プリプレグ11Aは0°、第2プリプレグ11Bは90°とした構成である。また、基板9の熱膨張を測定したところ、(90°方向の熱膨張係数)>(0°方向の熱膨張係数)の関係であった。
炭素繊維強化プラスチックは低熱膨張係数であることが知られているが、繊維方向(炭素繊維9aの方向)と垂直の方向には僅かに熱膨張を持っており、CsI:Tlを用いたシンチレータの熱膨張(熱膨張係数は一般的に40〜50×10
-6/℃)に引張られる形で90°方向の熱膨張係数が伸びているとことが判った。
【0024】
そのため、基板9の炭素繊維の方向を一方向に並べたプリプレグ(層)に対して、垂直方向となる角度のプリプレグ(層)を一組(セット)にして、複数の組を重ねることで、熱膨張の異方性を無くすことができる。例えば、炭素繊維9aの方向が任意の基準角度0°方向に配置したプリプレグ11Aに対して炭素繊維9aを90°方向に配置したプリプレグ11Bを一組(第1組11)にし、炭素繊維9aの配置方向が任意の基準方向に対して45°方向に配置したプリプレグ12Aに対しては炭素繊維9aの配置方向が-45°方向として配置したプリプレグ12Bを一組(第2組12)にして、板厚方向の中心部に対して均等に積層する。
ここで、コスト面も考慮し、炭素繊維の層(プリプレグ)は炭素繊維9aの方向が90°を成す2つの層(プリプレグ)を一組として、少なくとも1組が必要であることが言える。
このようにすることで、基板9の熱膨張における異方性を低減させ、シンチレータ層7に伴うシンチレータパネル5の熱膨張を抑制でき、アレイ基板2にシンチレータパネル5を貼り合わせ工程の制約を軽減し、且つコストメリットも考慮し、安定した品質が得られる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、防湿体10は、空気中に含まれる水蒸気により、シンチレータ層7の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。防湿体10は、シンチレータ層7、反射層8A、緩和層8B、基板9を覆うように設けられている。
防湿体10は、透光性を有し、透湿係数の小さい材料から形成することができる。防湿体10は、ポリパラキシリレン樹脂などの有機CVD膜の防湿膜が用いられており、ピラー構造をしたシンチレータ層7の隙間部分にある程度侵入する。有機CVD膜はピラー構造に伴う凹凸構造に沿ってほぼ均一な膜厚で塗布できる利点がある。
【0026】
反射層8A及び緩和層8Bは、ポリエチレンテレフタレートを含み、防湿体10が熱CVD法により形成されたポリパラキシリレンの他、ポリモノクロロパラキシリレン、ポリフルオロパラキシリレン、ポリジメチルパラキシリレン、ポリジエチルパラキシリレン等を含む場合には、反射層8A及び緩和層8Bと、防湿体10とが接する面の部分が水分の侵入に対して高い抑止効果を有するものとなる。そのため、高い防湿性能を有するシンチレータパネル5とすることができる。
【0027】
第1実施形態の効果について説明する。
図4に示すように、第1実施形態によれば、基板9の炭素繊維9aの方向を一方向に並べたプリプレグ11A(又は12A)に対して、炭素繊維9aの方向を垂直方向となる角度のプリプレグ11B(又は12B)を一組11(又は12)にして、1組以上積層することで、熱膨張の異方性を低減することができる。ここで、コスト面も考慮し、組は少なくとも1組が必要で且つ偶数毎のプリプレグが必要である。
【0028】
基板9には、反射層8A側とは反対側の面に蛍光を反射可能な緩和層8Bを設けているので、シンチレータ層7からアレイ基板2に向かう蛍光の利用効率を高めて、感度特性を改善することができる。
緩和層8Bは、反射層8Aと同様に、基板9に接合された発泡PET等の樹脂層と、樹脂層に接続されたAl、Ag等の金属層又はPET等の樹脂シートで形成されているので、簡易な構成にできる。
【0029】
以下に、他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施形態において、上述した一実施形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では一実施形態と主に異なる点を説明する。
図5に第2実施形態にかかる基板9の分解斜視図を示す。この第2実施形態では、基板9の任意の方向である0°の方向に炭素繊維9aを配置して並べたプリプレグ11Aと、このプリプレグ11Aに対して、炭素繊維9aの配置方向を垂直方向となるプリプレグ11Bとを第1組とし、基準となる0°の方向に対して、炭素繊維9aの方向が45°方向のプリプレグ12Aと、炭素繊維9aの方向が−45°方向のプリプレグ12Bを第2組として、第2組の上に第1組を基板9の板厚方向に積層している。この第2実施形態では、炭素繊維の方向が互いに直交する2枚のプリプレグの組を2組で、合計4枚のプリプレグを積層して形成している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
この第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
図6に第3実施形態にかかる基板9の分解斜視図を示す。この第3実施形態では、基準となる0°の方向に対して、炭素繊維9aの方向が45°方向のプリプレグ12Aと、炭素繊維9aの方向が−45°方向のプリプレグ12Bを第1組として、この第1組を上下に2組を板厚方向に積層している。この第2実施形態では、炭素繊維の方向が互いに直交する2枚のプリプレグの組を2組で、合計4枚のプリプレグを積層して形成している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
この第3実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0031】
図7に第4実施形態にかかる基板9の分解斜視図を示す。この第4実施形態では、基板9の任意の方向を0°の方向に炭素繊維9aを配置して並べたプリプレグ11Aと、このプリプレグ11Aに対して、炭素繊維9aの方向を垂直方向となる角度のプリプレグ11Bとを組とし、この組を2つ基板9の板厚方向に積層している。この第2実施形態では、炭素繊維の方向が互いに直交する2枚のプリプレグの組を2組で、合計4枚のプリプレグを積層して形成している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
この第4実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0032】
本発明の上記実施形態を説明したが、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、
図5に示す第2実施形態において、プリプレグ12A、12Bからなる第2組を2つ重ねて設け、合計3組で6枚のプリプレグからなる構成としても良い。
図7に示す第4実施形態において、プリプレグ11A、11Bからなる第1組を3つ重ねて合計3組で6枚のプリプレグからなる構成としても良いし、第1組を4つ重ねて合計4組で8枚のプリプレグからなる構成としても良い。